JP3873398B2 - 酸素センサ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,主に自動車内燃機関等の燃焼制御に用いられる酸素センサ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
自動車内燃機関の排ガス中の酸素濃度を検出するために,該内燃機関の排気系に設置されるガスセンサとしては,ZrO2 固体電解質体を利用した,例えば酸素濃淡起電力式の酸素センサ素子を備えたものがよく知られており,実用化されている。
このようなガスセンサは,例えば後述する図4に示すごとく,ハウジングと該ハウジングに挿入配置された酸素センサ素子とよりなる。
【0003】
上記酸素センサ素子はコップ型の固体電解質体とその内部に設けた内室とよりなり,かつ上記固体電解質体の外表面には測定電極を,上記内室に面する内表面には基準電極を設けてなる。また,上記測定電極にはこれを保護するための保護層が設けてある。また,上記内室にはヒータが挿入配置されている。
なお,上記保護層はセラミックコーティング層から形成されている。または,セラミックコーティング層の表面に例えばγ−Al2 O3 層を設けたものから形成されている。
【0004】
上記酸素センサ素子においては,上記排ガスが上記保護層(セラミッククコーティング層,γ−Al2 O3 層)を通過して測定電極に到達することによりセンサ出力を得ることができる。
また,上記保護層は,排ガス中のP,Pb等の被毒物によって測定電極の触媒作用が劣化しないようこれを保護すると共に,固体電解質体から測定電極が剥離することを防止する作用を有する。
【0005】
しかしながら,内燃機関の運転条件が燃料リッチである場合,つまり排ガスが酸素リーンとなるような条件下においては,排ガス中の一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等の炭素化合物中の炭素原子が測定電極の触媒作用によりカーボン化して,上記測定電極と上記保護層との界面に付着することがある。
【0006】
このため,上記酸素センサ素子を長時間に渡って使用する際に,カーボンの付着量が増大し,上記保護層に亀裂が生じる,あるいは保護層が剥離する等の現象が発生し,酸素センサ素子の特性が著しく低下するという問題が生じていた。
【0007】
そこで,従来,特にカーボンが付着しやすい部分を中心として,上記測定電極に対し排ガスを通過させない緻密なガラス質被膜を設けることが提案されていた(特開昭54−97490号)。
この技術においては,炭素化合物を含む排ガスを上記ガラス質被膜で遮断することができる。このため,上記測定電極と上記保護層との界面におけるカーボンの析出を防止することができる。
よって,長期に渡って良好なセンサ特性を維持可能な酸素センサ素子を得ることができる。
【0008】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来技術には以下に記載する問題点が生じる。
ここに自動車内燃機関等の燃焼制御において使用される酸素センサ素子の設置環境は,頻繁に高温雰囲気と共に冷熱サイクルに曝される厳しい条件下にある環境である。
このため,通常,酸素センサ素子を構成する各物質には,高い融点を有すること,更に適切な熱膨張係数を有することが要求される。
【0009】
ここに,上記従来技術にかかるガラス質被膜の熱膨張係数について考察すると,この値は40〜70×10-7/℃と開示されている。
しかしながら,この範囲では酸素センサ素子を構成する固体電解質体(熱膨張係数は75〜85×10-7/℃)との間の熱膨張係数の差が大きいため,熱応力によって上記ガラス質被膜には亀裂,剥離が発生するおそれがある。
亀裂,剥離の生じたガラス質被膜においては,充分な排ガスの遮断効果を発揮することはできない。
【0010】
更に,上記ガラス質被膜の表面は滑らかである。よって,上記ガラス質被膜と上記保護層との間の付着力は弱く,酸素センサ素子の使用中に上記保護層に亀裂,剥離が発生するおそれもある。更に,この亀裂や剥離はガラス質被膜を設けていない部分の保護層に到達するおそれもある。
亀裂,剥離の生じた保護層においては,測定電極に対する保護作用を充分発揮することはできない。
【0011】
更に,上述の従来技術において,ガラス質被膜の厚みが20〜100μmと厚いことから,ガラス質被膜の端部において,保護層の表面との間に段差が生じ,該段差の部分に応力が集中し,その結果,保護層に亀裂や剥離が発生するおそれもある。
【0012】
このような問題を解決するために,特にカーボンの付着しやすい部分の保護層の厚みを厚くして,炭素化合物等の通過を防止することが提案されている(実公昭57−30604号)。また,上記保護層で上記炭素化合物を捕獲する方法(特開昭63−19549号)や上記保護層の上に炭素化合物を捕獲するトラップ層を形成する方法(特開昭63−306279号)等が提案されている。
【0013】
しかしながらいずれの方法においても,酸素センサ素子を長時間使用した場合には炭素化合物の捕獲能力が低下してしまうため,カーボンの析出を充分に防止することは困難であった。
また,特にガス状の一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等は保護層やトラップ層を容易に通過して測定電極に達することができるため,従来技術で充分な効果を得ることは困難であった。
【0014】
本発明は,かかる問題点に鑑み,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持することができる酸素センサ素子及その製造方法を提供しようとするものである。
【0015】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層はその表面部分の一部に内部より緻密化した緻密層を形成しており,
上記緻密層は,気孔率が4%以下であり,上記酸素センサ素子の取付根元部分近傍のみに形成してあることを特徴とする酸素センサ素子にある。
【0016】
上記酸素センサ素子としては,後述するごとく,いわゆるコップ型の固体電解質体とその内部に設けた内室とよりなり,かつ上記固体電解質体の外表面には,被測定ガスと接触する測定電極を有し,上記内室に面する内表面には基準電極を有する酸素センサ素子を挙げることができる。
【0017】
あるいは,上記酸素センサ素子としては,板状の固体電解質体よりなる基板と該基板に設けた一対の測定電極及び基準電極とよりなり,上記測定電極は被測定ガスと接触するよう構成されている積層型の酸素センサ素子を挙げることができる。
いずれの構成においても,被測定ガスと接触する電極には(上述の構成においては測定電極がこれに相当する)該電極を被覆する保護層が設けてある。
【0018】
なお,これ以外の構成の酸素センサ素子についても本発明を適用することができる。その他の構造としては,ポンピング作用を有する電極を設けたもの,上述した一対の電極以外の電極を有するもの等を挙げることができる。
【0019】
また,上記保護層及び緻密層は電極のすべてを被覆する必要はなく,部分的に設けるだけでよい。特に上記緻密層は被測定ガスを遮断することから,電極における酸素濃度検出にかかる部分を避けて設けることが好ましい。
【0020】
本発明の作用につき,以下に説明する。
本発明にかかる酸素センサ素子の保護層の表面部分は緻密層を形成している。
よって,被測定ガスの電極への到達を防止することができ,電極におけるカーボンの析出を防止することができる。
また,本発明においては被測定ガスの電極到達を防止できることから,特にガス状の炭素化合物の電極到達も防止することができる。
【0021】
また,本発明にかかる緻密層は,保護層の一部である。
このため,保護層と緻密層との間の熱膨張率の差が殆どなく,冷熱サイクル,高温雰囲気に曝されることによる緻密層の剥離,亀裂の発生等を防止できる。
よって,長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子を得ることができる。
また,上記保護層と上記電極との間には他の被膜等が存在しないため,上記保護層は強く電極に付着することができる。このため,上記保護層の亀裂,剥離等も防止することができる。
【0022】
以上のように,本発明によれば,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持することができる酸素センサ素子を提供することができる。
【0023】
また,上記保護層と上記緻密層とを覆うようにトラップ層を設けることができる(後述する図6参照)。これにより,被測定ガス中の被毒物の電極への到達を防止することができる。よって,更に長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子を得ることができる。
【0024】
なお,上記トラップ層とは多数の粒子により形成された多孔質な層であり,被測定ガス中に含まれるP,Ca,Pb等の被毒物を捕獲する機能を有する。
また,上記トラップ層は,例えば,γ−Al2 O3 等の耐熱粒子に水,無機バインダー,分散剤を加えて作成したスラリーを,上記保護層と上記緻密層とを覆うように,これらの表面にディッピングまたはスプレーにより付着させ,更に500〜900℃で焼付けることによって形成することができる。
なお,上記トラップ層の焼付け温度は後述する緻密層を形成する際の加熱温度より低いことが好ましい。
【0025】
また,上記緻密層の気孔率は4%以下である。
これにより,本発明にかかる効果を確実に得ることができる。
上記気孔率が4%より大である場合には被測定ガスの遮断が不充分であり,緻密層中に存在する細孔を通じて被測定ガスが保護層を拡散しつつ電極に到達するおそれがある。また,上記気孔率は3%以下とすることがより好ましい。
【0026】
次に,請求項2の発明のように,上記緻密層の気孔率は4%以下で,厚みは5〜20μmであることが好ましい。
これにより,本発明にかかる効果を確実に得ることができる。
上記気孔率が4%より大である場合には,上述と同様に被測定ガスを遮断できないおそれがある。
また,上記緻密層の厚みが5μm未満である場合には,緻密層が薄すぎて気孔率が大きい場合,ガスが通過してしまい,ガス遮断の効果が発揮できないおそれがある。一方,厚みが20μmより厚い場合には,保護層内部まで緻密化物質を侵入させることが難しく,製造が困難となるおそれがある。
【0027】
また,上記緻密層は,酸素センサ素子の取付根元部分近傍に形成してある。
この部分は後述するごとく最もカーボンが析出しやすい部分であるため,本発明にかかる効果をより確実に得ることができる。
【0028】
ここに上記取付根元部分について説明する。
一般に酸素センサ素子はハウジング,大気側カバー等により構成された酸素センサ内に取付けて使用する。そして,酸素センサに酸素センサ素子を取付けるに当たっては,例えば後述の図4に示すごとく,酸素センサ素子をハウジングに対して当接させて取付ける。この場合,酸素センサ素子とハウジングとが接触する部分が取付根元部分となる。
【0029】
そして,上記取付根元部分の近傍は,同図より明らかであるが,酸素センサ素子とハウジングとが近接しており,被測定ガスの流れが淀みやすい。
従って,上記取付根元部分近傍においては,炭素化合物に曝される時間が他の部分に比べて長くなる。このため,この取付根元部分の近傍の電極はカーボンが付着しやすい部分である。
【0030】
更に,酸素センサ素子の下端部分は被測定ガスに曝されることから,仮にカーボンが付着しても,該カーボンは被測定ガスの流れにより剥離除去される。
しかしながら,酸素センサ素子の取付根元部分近傍においては,この被測定ガスの流れが淀み易いことから,上記剥離除去も生じ難い。
以上の点からも上記取付根元部分近傍はカーボンが付着しやすい部分である。
【0031】
また,上記緻密層の上端を上記取付根元部分とし,上記緻密層の下端を酸素センサ素子の先端から10mm上方とすることが好ましい(図5参照)。
上記上端部が取付根元部分よりも下方にある場合には,被測定ガスが緻密層の存在しない部分の保護層を通じて侵入し,電極にカーボン析出を生じせしめるおそれがある。
上記下端部が10mm上方よりも下方にある場合,酸素センサ素子において酸素濃度検出に対して支配的な役割を持った部分の電極に対し被測定ガスが到達し難くなり,酸素センサ素子の応答性が低下するおそれがある。
【0032】
次に,請求項3の発明のように,上記緻密層はAl,Mgの少なくとも一方のリン酸塩を含有していることが好ましい。
これにより,耐熱性がある緻密層が形成され,高温雰囲気での熱劣化がなく,また保護層を形成するMgO・Al2 O3 スピネルと化学的に結合しているため,保護層との熱膨張係数差が少ない緻密層が形成され,使用中の冷熱サイクル等による緻密層の亀裂,剥離が防止できる。
【0033】
次に,請求項4の発明のように,上記緻密層は粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子を充填し,またその微粒子を焼結してなることが好ましい。
セラミック微粒子を用いることで耐熱性が確保され,また保護層との熱膨張係数が小さいため,使用中の冷熱サイクル等による緻密層の亀裂,剥離が防止できる。なお,より好ましくは,請求項5に記載の発明のように,0.05μm以下である微粒子を使用することが好ましい。
また,請求項6に記載の発明のように,上記緻密層は,上記保護層と上記ハウジングとが接触する部分と,酸素センサ素子の先端より10mm上方の部分との間に設けることが好ましい。これにより,初期応答性が高く,耐久性の高い酸素センサ素子を得ることができる。
【0034】
上記粒径が0.1μmより大である場合には,保護層の細孔に充填される粒子の数が少なく,粒子間の隙間が大きい。また,焼結後の空隙が大きいため,細孔の閉塞が不充分で被測定ガスが通過してしまい,ガス遮断の効果が発揮できないおそれがある。
【0035】
次に請求項7の発明は,先端部が閉塞され,基端部が開放され,内部に内室を設けたコップ状の固体電解質体と,
該固体電解質体の先端部及び基端部の外表面の少なくとも一部に形成され,かつ被測定ガスに曝される測定電極と,
上記内室に面する内表面に設けられ,上記固体電解質体を介して上記測定電極と対向するよう設けられた基準電極と,
上記内室に挿入され,上記固体電解質体の先端部側を加熱するヒータとよりなると共に,上記測定電極は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,気孔率が4%以下の緻密層を形成していることを特徴とする酸素センサ素子にある(後述の図1参照)。
【0036】
本発明にかかる保護層の基端部側は緻密層となっており,この緻密層の気孔率は保護層よりも小さい。つまり,保護層よりも緻密である。
このため,上記緻密層が存在する部分では測定電極に対する被測定ガスの到達を防止することができ,よって,この部分における測定電極でのカーボンの析出を防止することができる。また,本発明においては特にガス状の炭素化合物に対しての有効な効果を得ることができる。
【0037】
また,本発明にかかる緻密層は保護層の一部である。
このため,保護層と緻密層との間の熱膨張率の差が殆どなく,冷熱サイクル,高温雰囲気に曝されることによる緻密層の剥離,亀裂の発生等を防止できる。
よって,長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子を得ることができる。
また,上記保護層と上記測定電極との間には他の被膜等が存在しないため,上記保護層は強く測定電極に付着することができる。このため,上記保護層の亀裂,剥離等も防止することができる。
【0038】
更に,上記酸素センサ素子にはヒータが挿入配置されており,このヒータは酸素センサ素子の先端部側を主として加熱するよう構成されている。このため,仮に酸素センサ素子の先端部側においてカーボンが付着したとしても,付着したカーボンはヒータの熱により燃焼除去される。
しかしながら,酸素センサ素子の基端部側においては,ヒータの熱による燃焼除去が殆ど生じず,カーボンの付着が生じやすい。
従って,基端部側に緻密層を設けることで,より本発明の効果を確実とすることができる。
【0039】
以上のように,本発明によれば,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持することができる酸素センサ素子を提供することができる。
【0040】
なお,上記基端部側とは後述する図1に示したとおり,保護層においてより酸素センサ素子のより基端部に近い側を示している。上記先端部側も同様に保護層においてより酸素センサ素子の先端部に近い側を示している。
【0041】
また,上記保護層の上記基端部側に形成された部分の気孔率は4%以下である。
これにより,本発明にかかる効果を確実に得ることができる。
上記気孔率が4%より大である場合には,請求項1の発明における場合と同様に被測定ガスを遮断できないおそれがある。
【0042】
次に,請求項8の発明のように,上記保護層の上記基端部側に形成された部分の厚みは5〜20μmであることが好ましい。
これにより,本発明にかかる効果を確実に得ることができる。
また,上記緻密層の厚みが5μm未満である場合には,請求項1の発明における場合と同様に緻密層が薄すぎてガスが通過してしまい,ガス遮断の効果が発揮できないおそれがある。一方,請求項2と同様に厚みが20μmより厚い場合には,保護層内部まで緻密化物質を侵入させることが難しく,製造が困難となるおそれがある。
【0043】
次に,請求項9の発明は,固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,内部より緻密化した気孔率4%以下の緻密層を形成している酸素センサ素子を製造する方法であって,
上記保護層を構成する保護層材料と反応する物質を該保護層に塗布し,また含浸させ,その後加熱することにより上記緻密層を形成することを特徴とする酸素センサ素子の製造方法にある。
【0044】
上記加熱温度は500〜1000℃とすることが望ましい。
加熱温度が500℃未満である場合には,酸素センサ素子を使用する際の熱履歴が上記加熱温度を越えてしまうおそれがあり,上記保護層材料と上記物質との反応が酸素センサ素子使用中に発生し,保護層に亀裂が発生するおそれがある。
【0045】
一方,加熱温度が1000℃を越えた場合には,電極作製時の加熱温度を越えてしまうおそれがあり,該電極に凝集等が生じるおそれがある。凝集の発生した電極は触媒性能が低下することから,酸素センサ素子の性能も低下するおそれがある。
【0046】
なお,上記酸素センサ素子の作製に当たっては,固体電解質体を作製後,これに電極を作製し,該電極を覆うように保護層を作製する。その後,上記保護層に緻密層を作製することができる。
【0047】
本発明において,上記物質を塗布し,加熱することにより,上記物質は保護層材料と反応し,化合物を形成する。この時,上記化合物は体積膨張し,保護層の表面近傍の細孔を閉塞することができる(図3参照)。
【0048】
このため,本発明にかかる製造方法によれば,保護層の表面の一部が緻密層を形成するため,請求項1に示したごとく,保護層と緻密層との間の熱膨張率の差が殆どなく,冷熱サイクル,高温雰囲気に曝されることによる緻密層の剥離,亀裂の発生等が殆どない酸素センサ素子を得ることができる。
よって,長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子を得ることができる。
【0049】
また,上記保護層と上記電極との間には他の被膜等が存在しないため,上記保護層は強く電極に付着することができる。このため,上記保護層の亀裂,剥離等も防止することができる。
そして,上記緻密層が被測定ガスの電極への到達を防止することができるため,該電極におけるカーボンの析出の殆どない酸素センサ素子を得ることができる。
【0050】
以上により,本発明によれば,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持可能な酸素センサ素子の製造方法を提供することができる。
【0051】
なお,上記緻密層を作製する際の物質の種類は保護層材料の種類に依存するが,保護層の構成材料と反応し,反応後,熱的及び化学的に安定な化合物を形成するものが好ましく,例えば,上記保護層がMgO・Al2 O3 スピネルよりなる場合には,リン酸を使用することが好ましい。
これにより,保護層を形成するMg,Alとリン酸とが反応し,リン酸塩となり,更に体積膨張することで保護層の細孔が閉塞され,被測定ガスを遮断することができる。
【0052】
また,上記緻密層を作製するに当たっては,上記物質を液状または2倍希釈溶液等の状態となし,これを筆塗り,ディッピング等の方法を利用して上記保護層における所望の部分に塗布,その後これを加熱することが好ましい。
また,塗布が不要となる部分,即ち緻密層が不要である部分に対しては,予めマスキングを施しておくことが好ましい。
【0053】
または,上記物質の5〜10倍希釈溶液を準備し,これを保護層に塗布して,加熱する。更に,上記5〜10倍希釈溶液を塗布して,加熱することを繰り返す。以上のような方法にて上記緻密層を作製することもできる。
【0054】
また,請求項10の発明は,固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,内部より緻密化した気孔率4%以下の緻密層を形成している酸素センサ素子を製造する方法であって,
上記保護層にある細孔に粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子で充填し,これら微粒子を焼結させて上記緻密層を形成していることを特徴とする酸素センサ素子の製造方法にある。
なお,より好ましくは微粒子の粒径を0.05μm以下とする。
【0055】
上記の微粒子としては保護層と同質の材料,或いは,焼結後に保護層と同質となる材料よりなるものが望ましい。また,上記微粒子としては,例えばアルミナ,シリカ等の耐熱性粒子,または焼結後に耐熱性を獲得可能な粒子を使用することができる。
【0056】
そして,これらの微粒子はゾル等の状態となし,このゾルを含む水溶液を筆塗り,ディッピング等により保護層の表面に付着させて,また含浸させることで保護層の細孔を上記微粒子で充填することが好ましい。
また,上記微粒子の付着は減圧雰囲気で行うことが好ましい。これにより,上記細孔の内部まで上記微粒子を充填することができる。
【0057】
なお,上記微粒子の粒径(直径)が0.1μmより大である場合には,上記保護層の細孔に充填される微粒子の数が減少し,細孔の閉塞が不充分となり,被測定ガスを十分遮断することができない緻密層が得られるおそれがある。
【0058】
また,上記焼結は温度500〜1000℃の加熱により行うことが望ましい。
温度が500℃未満である場合には,酸素センサ素子を使用する際の熱履歴が上記温度を越えてしまうおそれがあり,微粒子の焼結が酸素センサ素子使用中に発生し,保護層に亀裂が発生するおそれがある。
【0059】
一方,温度が1000℃を越えた場合には,電極作製時の加熱温度を越えてしまうおそれがあり,該電極に凝集等が生じるおそれがある。凝集の発生した電極は触媒性能が低下することから,酸素センサ素子の性能も低下するおそれがある。
【0060】
本発明においては,保護層にある細孔に粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子で充填し,これら微粒子を焼結させる。これにより,上記微粒子は互いに結合し,更に上記保護層を構成する保護層材料と結合することができる。このため,上記保護層の表面近傍の細孔を閉塞することができる(図7,図8参照)。
なお,より好ましくは微粒子の粒径を0.05μm以下とする。
【0061】
よって,本発明にかかる製造方法によれば,保護層の表面の一部が緻密層を形成するため,請求項1に示したごとく,保護層と緻密層との間の熱膨張率の差が殆どなく,冷熱サイクル,高温雰囲気に曝されることによる緻密層の剥離,亀裂の発生等が殆どない酸素センサ素子を得ることができる。
よって,長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子を得ることができる。
【0062】
また,上記保護層と上記電極との間には他の被膜等が存在しないため,上記保護層は強く電極に付着することができる。このため,上記保護層の亀裂,剥離等も防止することができる。
そして,上記緻密層が被測定ガスの電極への到達を防止することができるため,該電極におけるカーボンの析出の殆どない酸素センサ素子を得ることができる。
【0063】
以上により,本発明によれば,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持可能な酸素センサ素子の製造方法を提供することができる。
【0064】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる酸素センサ素子及びその製造方法につき,図1〜図6を用いて説明する。
図1,図2に示すごとく,本例にかかる酸素センサ素子1は,固体電解質体10と該固体電解質体10の表面に設けられた一対の測定電極11,基準電極14とよりなる。
上記測定電極11は保護層12により被覆されてなり,かつ上記保護層12はその表面部分の一部に内部より緻密化した緻密層13を形成している。
【0065】
上記酸素センサ素子1の構造につき,詳細に説明する。
図1に示すごとく,上記酸素センサ素子1は先端部191が閉塞され,基端部192が開放されたコップ型の固体電解質体10とその内部に設けた内室19とよりなり,かつ上記固体電解質体10の外表面101には測定電極11を,上記内室19に面する内表面109には基準電極14を設けてなる。また,上記内室19には図示を略したヒータが挿入され,上記測定電極11にはこれを保護するための保護層12が設けてある。
【0066】
上記保護層12はMgO・Al2 O3 スピネルよりなる。また,図3に示すごとく,上記保護層12はプラズマ溶射にて形成された多孔質層である。なお,符号129はMgO・Al2 O3 スピネル粒子である。
また,上記保護層12の表面にある緻密層13は上記多孔質な保護層12の表面に存在する細孔を塞ぐように形成されており,リン酸アルミニウム等を含有している。
【0067】
また,上記固体電解質体10の外周には凸部105が形成され,該凸部105はテーパ部108を有している。上記テーパ部108にも上記保護層12,緻密層13は形成されている。
上記テーパ部108において,本例にかかる酸素センサ素子1は,後述する酸素センサ3のハウジング30に対し取付けられる(図4参照)。つまり,上記テーパ部108が酸素センサ素子1の取付根元部分となる。
【0068】
次に,上記酸素センサ素子1を取付けた酸素センサ3につき説明する。
図4に示すごとく,上記酸素センサ3は,ハウジング30と該ハウジング30に挿入配置された酸素センサ素子1とよりなる。上記ハウジング30の下方には被測定ガス室33を形成し,酸素センサ素子1の先端を保護するための二重の被測定ガス側カバー330が設けてある。また,上記被測定ガス側カバーには被測定ガス導入用の導入孔331が設けてある。
【0069】
また,上記酸素センサ素子1の内室19には棒状のヒータ34が挿入配置されている。上記ヒータ34は内室19の内表面109との間に所望のクリアランスを確保して,挿入配置されている。
【0070】
上記ハウジング30の上方には,三段の大気側カバー31,32,33が設けてある。上記大気側カバー32及び33の上端には,リード線391〜393を挿通させた弾性絶縁部材39が設けてある。上記リード線391,392は,固体電解質体2において発生した電流を信号として取出し,外部に送るものである。また,上記リード線393は,上記ヒータ34に対し通電し,これを発熱させるためのものである。
【0071】
上記リード線391,392の下端には接続端子383,384が設けてあり,該接続端子383,384により,上記酸素センサ素子1に固定したターミナル381,382との導通が取られている。
なお,上記ターミナル381,382は,上記酸素センサ素子1における測定電極及び基準電極の端部に対し接触固定されている。
【0072】
次に,上記酸素センサ素子1の製造方法について詳細に説明する。
ZrO2 等の原料粉末を秤量,混合し,図1に示すごときコップ型の成形体を作製する。次いで,上記成形体を焼成し,固体電解質体10を形成する。
次いで,上記固体電解質体10の外表面101及び内表面109にPtを化学メッキ,蒸着法,ペースト塗布,焼付等のいずれかの方法を利用して付着させ,測定電極11及び基準電極14を形成する。
【0073】
次いで,上記測定電極11の表面にMgO・Al2 O3 スピネルをプラズマ溶射して保護層12を形成する。上記保護層12は厚み50〜300μm,気孔率が5〜30%,平均細孔径500〜5000Åである。
次いで,上記保護層12の表面に対し,100%濃度のリン酸を筆塗りによって塗布する。
その後,上記固体電解質体10を温度900℃に加熱する。
【0074】
この加熱により,上記リン酸と保護層12におけるMgO・Al2 O3 スピネルとが反応し,リン酸アルミニウム等が形成される。更に,このリン酸アルミニウム等が体積膨張することにより,上記保護層12の表面部分の細孔が閉塞される。この結果,上記保護層12の表面の気孔率は3%程度となり,被測定ガスを通過させない緻密層13が形成される。なお,この緻密層の厚みは10μmである。
以上により,本例にかかる酸素センサ素子1を得た。
【0075】
次に,本例にかかる酸素センサ素子の性能につき,図5,表1を用いて説明する。
本例にかかる酸素センサ素子について,緻密層を設けた位置と緻密層の厚みTとを表1に示すごとく種々に変化させて製造した試料1〜13を準備した。これらの試料の耐久性及び初期応答性について以下に示すごとく測定した。
【0076】
まず,緻密層を設けた位置について説明する。
同表におけるFとは,図5に示すごとく,酸素センサ素子−ハウジングの接触位置と緻密化開始位置(緻密層の上端)との間の距離である。なお,この酸素センサ素子−ハウジングの接触位置が本例における取付根元部分となる。
【0077】
また,同表におけるGとは,図5に示すごとく,緻密化終了位置(緻密層下端)と酸素センサ素子先端との間の距離である。
そして,Fを5〜−5mm,Gを0〜10mmの範囲で変化させた酸素センサ素子を作製した。
なお,Fにおける「−」とは,酸素センサ素子−ハウジングの接触位置を越えて,ハウジングの内部と対面する位置まで緻密層を設けたことを表している。
また,上記緻密層の厚みTを2〜20μmの範囲で変化させた酸素センサ素子を作製した。なお,上記緻密層の厚みTについては,図3に例示した。
【0078】
次に,上記酸素センサ素子の性能は,表1に示すごとく耐久性と初期応答性で示した。
上記耐久性は,加速耐久試験後の保護層の付着力及び外観により判定した。
上記加速耐久試験においては,燃料噴射装置付2000cc直列4気筒エンジンの排気系に各試料となる酸素センサ素子を取付けた図4にかかる酸素センサを配置した。また,排ガス温度を850℃,排ガス中の空気過剰率を0.90(還元雰囲気)に設定して行った。なお,耐久時間は100時間であった。
【0079】
上記加速耐久試験終了後,各試料にかかる酸素センサ素子の保護層をテーピング評価した。この評価で保護層が剥離した場合を×,剥離しなかった場合を○と判定し,表1にかかる付着力の欄に記載した。
また,各試料にかかる酸素センサ素子にかかる保護層の外観を肉眼で観察し,亀裂や剥離の有無を確認した。上記保護層に亀裂や剥離がある場合を×,亀裂や剥離がない場合を○と判定し,外観の欄に記載した。
【0080】
また,上記初期応答性の測定は以下に示すごとく行った。
燃料噴射装置付2000cc直列6気筒エンジンの排気系に各試料となる酸素センサ素子を取付けた図4にかかる酸素センサを配置した。
【0081】
そして,無鉛ガソリンを用いて,回転数1100r.p.m.で上記エンジンを運転し,かつ上記酸素センサ素子の先端温度を690〜710℃に保持した。その上で,λ=0.9からλ=1.1への切換時において,酸素センサ素子の出力が0.6Vから0.3Vに変化する時間について測定した。
この時間が150ms未満の場合を○,150ms以上200ms未満の場合を△,200ms以上の場合を×と判定し,表1に初期応答性の欄に記載した。
なお,上記測定は耐久試験の前後にて行った。
【0082】
同表における試料3〜試料9,試料12,13により,上記保護層と上記ハウジングとが接触する部分と,酸素センサ素子の先端より10mm上方の部分との間に少なくとも緻密層を設けることにより,初期応答性が高く,耐久性の高い酸素センサ素子が得られたことが分かった。
【0083】
次に,本例における作用効果につき説明する。
本例にかかる酸素センサ素子1の保護層12の表面部分は緻密層13を形成していおり,これにより,被測定ガスの測定電極11への到達を防止することができる。よって,測定電極11におけるカーボンの析出を防止することができる。
【0084】
また,本例にかかる緻密層13は,保護層12の一部である。
このため,保護層12と緻密層13との間の熱膨張率の差が殆どなく,冷熱サイクル,高温雰囲気に曝されることにより両者の間に熱応力が発生し,上記緻密層13の剥離,亀裂の発生等を防止できる。
よって,長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子1を得ることができる。
【0085】
また,上記保護層12と上記測定電極11との間には他の被膜等が存在しないため,上記保護層12は強く上記測定電極11に付着することができる。このため,上記保護層12の亀裂,剥離等も防止することができる。
【0086】
以上のように,本例によれば,電極においてカーボンの析出が殆どなく,長期間の使用において安定した出力を維持することができる酸素センサ素子及びこれを製造する方法を提供することができる。
また,本例の製造方法によれば,上述したごとき優れた酸素センサ素子を作製することができる。
【0087】
また,本例において上記緻密層13は酸素センサ素子1の取付根元部分となるテーパー部108に形成してある。
この部分は後述するごとく最もカーボンが析出しやすい部分であるため,本例にかかる効果をより確実に得ることができる。
【0088】
即ち,上記酸素センサ素子1にはヒータ34が挿入配置されており,更にこのヒータ34は酸素センサ素子1の先端部101の近傍を主として加熱するよう構成されている。このため,仮に酸素センサ素子1の先端部101の近傍においてカーボンが付着したとしても,付着したカーボンはヒータ34の熱により燃焼除去される。しかしながら,上記取付根元部分においては,ヒータ34の熱による燃焼除去が殆ど生じない。
【0089】
更に,図4に示すごとく,酸素センサ素子1の先端部101は被測定ガスを被測定ガス室33に導入する導入穴331と対面しており,仮にカーボンが付着しても,該カーボンは被測定ガスの流れにより剥離除去される。
しかしながら,酸素センサ素子1の取付根元部分においては,この被測定ガスの流れが淀み易いことから,上記剥離除去も生じ難い。
【0090】
なお,図6に示すごとく,上記保護層12及び緻密層13の外側にトラップ層15を設けることもできる。
これにより,被測定ガス中の被毒物の測定電極11への到達を防止することができる。よって,更に長期間の使用において安定した出力を維持できる酸素センサ素子1を得ることができる。
【0091】
【表1】
【0092】
実施形態例2
本例は,保護層にある細孔を粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子で充填し,これら微粒子を焼結させて作製した緻密層を有する酸素センサ素子及び本例にかかる緻密層の製造方法について,図7,図8を用いて説明する。
【0093】
本例にかかる酸素センサ素子は実施形態例1と同様の構造を有しており,コップ型の固体電解質体10と該固体電解質体10の表面に設けられた一対の測定電極11,基準電極とよりなる。
上記測定電極11は保護層12により被覆されてなり,かつ上記保護層12はその表面部分の一部に内部より緻密化した緻密層13を形成している。
また,上記固体電解質体10には内室19が設けてあり,該内室19には図示を略したヒータが挿入されている。
【0094】
本例にかかる保護層12,緻密層13につき説明する。
本例にかかる保護層12も実施形態例1と同様にMgO・Al2 O3 スピネルよりなる。また,図7に示すごとく,上記保護層12はプラズマ溶射にて形成された多孔質層である。なお,符号129はMgO・Al2 O3 スピネル粒子である。
そして,上記保護層12の表面における細孔は多数の微粒子139により閉塞されており,ここに緻密層13が形成されることとなる。
上記微粒子139はAl2 O3 粒子よりなり,その粒径は0.1μm以下である。また,上記緻密層13の気孔率は3%である。
その他は実施形態例1の酸素センサ素子と同様である。
【0095】
本例にかかる緻密層の製造方法について以下に説明する。
実施形態例1と同様にして,固体電解質体10,測定電極11,保護層12等を作製する。
次いで,上記保護層12に対して,アルミナゾル溶液を筆塗りにより塗布した。これにより,上記アルミナゾル中に存在するアルミナの微粒子139が上記保護層12の表面の細孔に充填された。
【0096】
次いで,上記固体電解質体ごと塗布したアルミナゾル溶液を加熱する。これにより,上記微粒子139は互いに焼結し,あるいは微粒子139と保護層12を構成する粒子129とが焼結し,緻密層13を形成した。
【0097】
次に,本例にかかる酸素センサ素子の性能につき,前述の図5,表2を用いて説明する。
本例にかかる酸素センサ素子について,緻密層13を設けた位置を表2に示すごとく種々に変化させて製造した試料21〜29を準備した。これらの試料の耐久性及び初期応答性について実施形態例1と同様に測定した。なお,同表におけるF,Gは実施形態例1,表1,図5と同様の意味である。
【0098】
表2における試料23〜試料25,試料28,29により,実施形態例1と同様に上記保護層と酸素センサにかかるハウジングとが接触する部分と,酸素センサ素子の先端より10mm上方の部分との間に少なくとも緻密層を設けることにより,初期応答性が高く,耐久性の高い酸素センサ素子が得られたことが分かった。また,本例にかかる製造方法においても,実施形態例1と同様に優れた酸素センサ素子を作製できることが分かった。
【0099】
【表2】
【0100】
実施形態例3
本例は,図9に示すごとく,ガラス質よりなる緻密層を有する酸素センサ素子について説明するものである。
本例にかかる酸素センサ素子は実施形態例1と同様の構造を有しており,コップ型の固体電解質体10と該固体電解質体10の表面に設けられた一対の測定電極11,基準電極とよりなる。
上記測定電極11は保護層12により被覆されてなり,かつ上記保護層12はその表面部分の一部に内部より緻密化した緻密層13を形成している。
また,上記固体電解質体10には内室が設けてあり,該内室には図示を略したヒータが挿入されている。
【0101】
上記緻密層について説明する。
本例にかかる緻密層13はガラス質の耐熱性被膜よりなる。
具体的には,MgO及びAl2 O3 の粉末と,硼珪酸ガラス等の低融点ガラスをエチルセルロース等の樹脂を溶かした溶液をスリップ状となし,これを筆塗りによって,上記保護層12の所望の部分に付着させ,温度800〜1000℃で焼き付けることによって形成された被膜よりなる。
【0102】
なお,上記温度が800℃未満である場合は,材料中のガラスが充分溶けず,保護層との付着力が不充分となり,酸素センサ素子の使用中に緻密層が剥離するおそれがある。一方,上記温度が1000℃より高い場合には,電極が凝集するおそれがある。
【0103】
そして,本例にかかる緻密層13の熱膨張率は保護層と略等しい膨張率を有している。つまり,保護層12の熱膨張率は75〜85×10-7/℃,緻密層13の膨張率は75〜85×10-7/℃である。
【0104】
なお,上記被膜としては,熱膨張率が保護層12と同一か近似したもの,更に酸素センサ素子の使用温度となる500〜700℃程度の温度において軟化しない材料であれば,上述した材料以外の物質で構成されていてもよい。
【0105】
次に,本例にかかる酸素センサ素子の性能につき,前述の図5,表3を用いて説明する。
即ち,図5にかかるF及びGが表3に示す値となるような緻密層を設けた酸素センサ素子(試料31)を準備し,実施形態例1と同様に耐久性と初期応答性について測定した。
その結果,同表より知れるごとく,本例にかかる緻密層を有する酸素センサ素子は優れた耐久性及び初期応答性を有することが分かった。
【0106】
【表3】
【0107】
実施形態例4
本例は図10に示すごとく,限界電流式の酸素センサ素子4である。
本例にかかる酸素センサ素子4は,コップ型の固体電解質体10とその内部に設けた内室19とよりなり,かつ上記固体電解質体10の外表面には測定電極421及び絶縁層411,412を,上記内室19に面する内表面には基準電極14を設けてなる。
また,上記内室19には図示を略したヒータが挿入され,上記測定電極421にはこれを保護するための保護層43,422が,更にその外側には被毒物トラップ層423が設けてある。
【0108】
そして,上記保護層43はMgO・Al2 O3 スピネルよりなり,プラズマ溶射にて形成された多孔質層である。そして,上記保護層43の表面にある緻密層13は上記多孔質な保護層43の表面に存在する細孔を塞ぐように形成されており,リン酸アルミニウムを含有している。
また,上記緻密層13は,実施形態例1に示したごとく,上記保護層43の表面にリン酸を筆塗りによって塗布し,これを加熱することにより作製する。
その他は実施形態例1と同様である。
また,本例の酸素センサ素子4は実施形態例1と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1にかかる,酸素センサ素子の縦断面説明図。
【図2】実施形態例1にかかる,酸素センサ素子の図1にかかるA−A矢視断面図。
【図3】実施形態例1にかかる,酸素センサ素子の要部拡大説明図。
【図4】実施形態例1にかかる,本例にかかる酸素センサ素子を設けた酸素センサの断面説明図。
【図5】実施形態例1にかかる,表1のF及びGを示す説明図。
【図6】実施形態例1にかかる,トラップ層を設けた酸素センサ素子の縦断面説明図。
【図7】実施形態例2にかかる,酸素センサ素子の要部拡大説明図。
【図8】実施形態例2にかかる,保護層と緻密層との説明図。
【図9】実施形態例3にかかる,酸素センサ素子の要部拡大説明図。
【図10】実施形態例4にかかる,酸素センサ素子の縦断面説明図。
【符号の説明】
1,4...酸素センサ素子,
10...固体電解質体,
101...外表面,
109...内表面,
11...測定電極,
12,43...保護層,
13...緻密層,
14...基準電極,
191...先端部,
192...基端部,
Claims (10)
- 固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層はその表面部分の一部に内部より緻密化した緻密層を形成しており,
上記緻密層は,気孔率が4%以下であり,上記酸素センサ素子の取付根元部分近傍のみに形成してあることを特徴とする酸素センサ素子。 - 請求項1において,上記緻密層の気孔率は4%以下で,厚みは5〜20μmであることを特徴とする酸素センサ素子。
- 請求項1又は2において,上記緻密層はAl,Mgの少なくとも一方のリン酸塩を含有していることを特徴とする酸素センサ素子。
- 請求項1〜3のいずれか一項において,上記緻密層は粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子を充填し,またその微粒子を焼結してなることを特徴とする酸素センサ素子。
- 請求項1〜4のいずれか一項において,上記緻密層は,粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子を充填してなることを特徴とする酸素センサ素子。
- 請求項1〜5のいずれか一項において,上記緻密層は,上記保護層と上記ハウジングとが接触する部分と,酸素センサ素子の先端より10mm上方の部分との間に設けることを特徴とする酸素センサ素子。
- 先端部が閉塞され,基端部が開放され,内部に内室を設けたコップ状の固体電解質体と,
該固体電解質体の先端部及び基端部の外表面の少なくとも一部に形成され,かつ被測定ガスに曝される測定電極と,
上記内室に面する内表面に設けられ,上記固体電解質体を介して上記測定電極と対向するよう設けられた基準電極と,
上記内室に挿入され,上記固体電解質体の先端部側を加熱するヒータとよりなると共に,上記測定電極は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,気孔率が4%以下の緻密層を形成していることを特徴とする酸素センサ素子。 - 請求項7において,上記緻密層の厚みは5〜20μmであることを特徴とする酸素センサ素子。
- 固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,内部より緻密化した気孔率4%以下の緻密層を形成している酸素センサ素子を製造する方法であって,
上記保護層を構成する保護層材料と反応する物質を該保護層に塗布し,また含浸させ,その後加熱することにより上記緻密層を形成することを特徴とする酸素センサ素子の製造方法。 - 固体電解質体と該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とよりなる酸素センサ素子において,上記電極の少なくとも一方は保護層により被覆されてなり,
かつ上記保護層における基端部側の表面部分のみに,内部より緻密化した気孔率4%以下の緻密層を形成している酸素センサ素子を製造する方法であって,
上記保護層にある細孔に粒径0.1μm以下のセラミックの微粒子で充填し,これら微粒子を焼結させて上記緻密層を形成していることを特徴とする酸素センサ素子の製造方法。
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