JP3872917B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャパシタ絶縁膜の材料に強誘電体または高誘電体を用いたキャパシタの作成工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、電荷蓄積メモリとして登場して以来、年々その集積度を増しつつ、半導体記憶装置として広く用いられている。集積化が進み素子寸法が小さくなっても、キャパシタの電気容量は約30fFに保つ必要があり、素子の微細化に対して、キャパシタの有効面積を大きくする、誘電体膜を薄膜化するなどの検討がなされてきた。
【0003】
しかし、電子デバイスの高機能化を、金属もしくは単一金属化合物膜(例えばタングステンシリサイド膜)と、シリコン膜と、シリコン系化合物(例えばシリコン酸化膜)とを用いた回路構成のみで達成することはもはや困難であり、電子デバイス材料の種類は世代毎に増加しているのが実状である。
【0004】
ギガビット世代に向けて求められる技術として、リソグラフィ技術によるものだけでなく、微細化時の性能を確保するために、キャパシタや配線などに新機能性材料を導入する必要が高まってきており、実用化に向けた開発が始めっている。
【0005】
一方、記憶情報用キャパシタのキャパシタ絶縁膜として、ペロブスカイト型酸化物誘電体であるチタン酸鉛ペロブスカイト化合物もしくはビスマス層状化合物などからなる強誘導体薄膜を用いた不発揮性強誘電動体メモリセルおよびそのアレイを有するFRAM(Ferroelectric RAM)が注目を集めている。
【0006】
FRAMは、大容量メモリの代表であるDRAMと比較すると、不揮発性であるためにデータ保持にリフレッシュ動作が不要であって、待機時の消費電力が不要であるという特徴を持つ。
【0007】
また、同じ不揮発性メモリであるフラッシュメモリと比較しても、データ書き換え回数が多く、かつデータ書き換え速度が著しく速いという特徴を併せ持っている。
【0008】
加えて、フラッシュメモリ、FEPROM(Electrocally Erasable Programmable Read Only Memory)には、その動作上、少なくとも3種類の電源電圧が必要で消費電力も増大すること、情報の記憶は、トンネル酸化膜と呼ばれる絶縁膜を介したフローティングゲートへの電子の注入・引き出しで行うが、その絶縁膜の破壊(疲労)により電気的特性の劣化が生じることなどの難点もある。
【0009】
さらに、メモリカードなどに使用される電池パックアップ可能なSRAM(Static RAM)と比べても、消費電力が小さく、集積度においても大幅にセル面積を小さくすることができる特徴を持つ。
【0010】
上記のような特徴を持っFRAMは、既存のフラッシュメモリ、ARAM、DRAMとの置き換え、ロジック混載デバイスへの適用など、次世伏メモリとしての期待は極めて大きい。また、FRAMは、バブデリーレスで高速動作が可能とい利点から、非接触カード(RF-ID:Radio Frequency-Indentification)への展開が始まっている。
【0011】
しかし、既存のFRAMデバイスにおいては、DRAM、ロジックなど、他のデバイスとの混載、ならびに高集積化に不可欠となる技術が未だ確立していない状況である。
【0012】
強誘電体膜にはPb(Zrx Ti1-x)03 膜(PZT膜)などが用いられ、これを上部および下部キャパシタ電極で挟むことによりキャパシタを構成している。上部および下部キャパシタ電極の材料にはPt,Ir,Ruなどの貴金属が多く用いられる。
【0013】
PZTなどの強誘電体膜の形成にはスパッタリング法やゾルゲル法が、Pt,Tiなどの金属膜の形成にはスパッタリング法が使用される。その結晶化については、主にスパッタリング法で強誘電体膜を形成する揚合において、基板温度を結晶化温度以上に保って結晶成長させながら形成する方法と、低温でアモルファス状態のPZT膜(アモルファスPZT膜)を一旦形成した後、それに結晶化アニールを施すことによって、ペロブスカイト構造のPZT膜(結晶性PZT膜)を形成する方法がある。
【0014】
前者結晶化法では非常に困難な基板温度制御が必要であり、多少の温度ずれで結晶配向性や結晶構造自体の変化を来たしやすいなどの問題があるのに対し、後者結晶化法では、アモルファスPZT膜の結晶化アニールを高速の昇降温で行い短時間の熱処理で済ますと、PZTとPtとの間の反応を低減し界面の平滑曲を保ちやすいなどの利点がある。
【0015】
PZT膜の強誘電体としてのポテンシャルを決めている重要な要素のーつとして化学量論組成(ストイキオメトリ)があるが、取り分け、その構成元素であるPbは、低融点で蒸気圧が高い物質であるため、温度制御が極めて困難である。したがって、容易にPZT結晶膜を得る方法としては、温度安定性や再現性の高い後者結晶化法が有利と言える。
【0016】
上記理由のため、結晶化の熱処理でPbは容易に外方拡散あるいは下地電極へも内方拡散していく。そのため、ストイキオメトリよりも過剰のアモルファスPZT膜を形成することが一般的となっている。
【0017】
例えば、FRAMの金属−強誘電体−金属(Metal-Ferroelectric-Metal)構造のキャパシタにおいて、下部および上部キャパシタ電極にPt膜、キャパシタ絶縁膜にPZT膜を用いた場合には、下部キャパシタ電極との界面でPbが過剰となるアモルファスPZT膜を形成する。
【0018】
これは、結晶化アニールの際に下部キャパシタ電極中にPbが拡散し、ストイキオメトリより少ないPb量で結晶化が進むことによって、ペロブスカイト構造が得られなくなるのを防ぐためである。
【0019】
しかし、この形成方法では、Pb過剰量およびアニール温度の制御性の困難さから、キャパシタ絶縁膜(結晶性PZT膜)上にもしくはキャパシタ絶縁膜中の粒界部分にPbを過剰に含む酸化物層が形成されやすい。これは、上部界面に低誘電率層を形成したり、リーク電流のパスを形成するために、強誘電性が劣化するという問題がある。
【0020】
また、下部および上部キャパシタ電極との界面では、酸化物層の有無やPZT膜の結晶化状態などの違いがあることから、膜厚方向でPZT膜の非対称性が現れる。このような非対称性は、分極疲労、インプリント、リテンションなどの信頼性の劣化を誘発する要因となる。
【0021】
さらに、分極疲労が観測されない分極反転回数であっても、ヒステリシス曲線に非対称性が現れることがあり、このような現象はデバイスのスペックによっては分極電荷をセンスする際に誤動作を招き、メモリ動作としての信頼性の低下の原因となる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、キャパシタ絶縁膜としてPZT膜を用いたキャパシタを従来方法で作成すると、PZT膜上もしくはPZT膜中の粒界にPbを過剰に含む酸化物層が形成されて強誘電性が劣化する、またはPZT膜の膜質の非対称性からメモリ動作としての信頼性が低下するという問題があった。
【0023】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、強誘電体または高誘電体からなる結晶性絶縁膜を用いたキャパシタの特性劣化を防止できる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
[構成]
上記目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る半導体装置の製造方法は、第1電極、ABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体からなる結晶性絶縁膜、第2電極が順次積層されてなるキャパシタを作成する工程を含む半導体装置の製造方法において、前記第1電極上に前記結晶性絶縁膜となるアモルファス絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の工程の後、かつ、前記第2電極を形成する前に、前記アモルファス絶縁膜上にZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質からなる第1界面膜を形成する第2工程と、前記第2の工程の後に、熱処理によって前記アモルファス絶縁膜を結晶化する第3工程とを有することを特徴とする。
【0025】
この半導体装置の製造方法のより具体的な構成は以下の通りである。
【0026】
(1)第1工程と第2工程とからなる一連の工程を複数回繰り返す。
【0027】
(2)結晶性絶縁膜の構成材料であるABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体は、AがPb、BaおよびSrから選ばれる1種類以上の元素を含む物質、BがZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質である。
【0028】
(3)第1電極上にZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質からなる第2界面膜を形成した後、アモルファス絶縁膜を形成する。
【0029】
(4)熱処理は、第2電極の形成前および形成後のいずれの段階で行っても良い。
【0030】
[作用]
本発明者らの研究によれば、第2電極を形成する前に、ABO3 ペロブスカイト系材料からなる結晶性絶縁膜となるアモルファス絶縁膜上に、Zr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質からなる第1界面膜を形成した後、熱処理によってアモルファス絶縁膜を結晶化した場合には、結晶化中のアモルファス絶縁膜の表面からその構成元素が脱離することを効果的に抑制できることが分かった。
【0031】
したがって、このような研究結果を利用した本発明によれば、強誘電特性の劣化や誘電率の低下の原因となる層がキャパシタ絶縁膜(結晶化されたアモルファス絶縁膜)上に形成されることを防止できるので、キャパシタの特性劣化を防止できるようになる。
【0032】
また、本発明(請求項4)によれば、第1界面膜に加えて、Zr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類上の元素を含む物質からなる第2界面膜を用いてキャパシタ絶縁膜を形成することによって、PZT結晶膜の膜質が膜厚方向に対称性を持つようになる。したがって、このような方法によって、DRAM等のメモリに使用されるキャパシタのキャパシタ絶縁膜を形成すれば、メモリ動作における信頼性を向上できるようになる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態(以下、実施形態という)を説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
先ず、比較例1のキャパシタの作成方法について説明する。
【0035】
まず、図1(a)に示すように、酸化膜1上にTiからなる接着層2、Ptからなる下部キャパシタ電極3(第1電極)を順次形成する。
【0036】
次に図1(b)に示すように、RFスパッタリング法を用いて、下部キャパシタ電極3上にキャパシタ絶縁膜となる厚さ240nmのアモルファスPZT膜4aを形成する。
【0037】
ここで、ターゲットとしては(Pb1.15,La0.03)(Zr0.3 ,Ti0.7 )O3 組成で焼結したものを使用する。また、成膜室はArガス雰囲気下で2.5Paに減圧し、スパッタ時の投入電力は1.0kWとする。また、スパッタ室内の試料を載置するウェハステージには冷却機構が設けられ、この冷却機構によって成膜中の基板温度は室温に保たれている。
【0038】
次に図1(c)に示すように、酸素雰囲気下で850℃、5secの結晶化アニールによってアモルファスPZT膜4aを結晶化し、キャパシタ絶縁膜としての結晶性PZT膜4cを形成する。この結晶性PZT膜4cの膜厚は220nmでアモルファスPZT膜4よりも薄い。これは結晶化アニールによって膜収縮が起こるからである。
【0039】
また、結晶化アニールの工程中で、結晶性PZT膜4cの表面においてはPZT膜4a,4c中のPbの脱離、結晶性PZT膜4cと下部キャパシタ電極3との界面(以下、下部電極界面という)付近においてはPZT膜4a,4c中のPbの下部キャパシタ電極3への拡散が起こる。
【0040】
次に図1(d)に示すように、DCスパッタリング法を用いて、上部キャパシタ電極5(第2電極)となるPt膜を形成した後、このPt膜をパターニングすることによって、直径160μmの上部キャパシタ電極5を形成する。
【0041】
この段階において、as depo状態で電気的な評価を行ったところ、図2に示すように、リーク電流成分のため強誘電性は全く観察されなかった。これは、結晶化アニールの工程でPZT膜4a,4cの粒界または表面に過剰なPbが析出して、粒界に鉛化合物が形成され、リーク電流を増加させるパスが形成されたこと、PZT4cと上部キャパシタ電極5との界面近傍に低誘電率の鉛酸化物が形成されたこと、Pt膜の成膜時に生じたスパッタリングダメージなどが要因であると考えられる。
【0042】
次に酸素雰囲気下で650℃、1hrの熱処理を施し、上記スパッタリングダメージを回復させる。この段階で電気的な評価を行ったところ、図3に示すように、±5V駆動の印加電圧で残留分極20μC/cm2 、抗電圧0.93Vのヒステリシス特性が得られた。
【0043】
このような比較例1に対して、本発明者らは以下のような改善策を施した。すなわち、図1(b)の工程後、図4に示すように、DCスパッタリング法を用いて、アモルファスPZT膜4a上に厚さ2.5nmのTi膜6(第1界面膜)を形成する。
【0044】
ここで、ターゲットとしてはTiターゲットを使用する。また、スパッタ室はArガス雰囲気下で2.5Paに減圧し、スパッタ時の投入DC電力は3.0kWとする。この後の工程は、比較例1の図1(c)の工程以降の工程と同じである。
【0045】
なお、Ti膜6は、アモルファスPZT膜4aを結晶化するための熱処理によってPZT結晶膜として取り込まれる。また、接着層2としてのTi膜2は下地酸化膜や下部キャパシタ電極を通過した酸素と反応し、その一部がTi酸化物となって残る。
【0046】
このようなプロセスにおいて、上部キャパシタ電極を形成した後のas depo状態で電気的な評価を行ったところ、図5に示すように、非対称ながらヒステリシス曲線が得られた。
【0047】
これはアモルファスPZT膜4aの表面をTi膜6で覆った効果であると考えられる。すなわち、アモルファスPZT膜4aの表面をTi膜6で覆った状態で結晶化アニールを行うことによって、強誘電性の劣化の原因となる絶縁性酸化物層が結晶性絶縁膜4c上に形成されることを抑制できたからだと考えられる。
【0048】
また、上部キャパシタ電極を形成し、酸素雰囲気下で650℃、1時間の熱処理を行った段階において電気的な評価を行ったところ、図6に示すように、±5V駆動の印加電圧で残留分極27μC/cm2 、抗電圧0.95Vのヒステリシス特性という良好な結果が得られた。
【0049】
また、キャパシタの作成方法として上述した改善策を施した方法を用いてFRAMを製造し、その評価を行ったところ、リテンション、インプリント特性が改善されていることを確認した。
【0050】
(第2の実施形態)
図7は、比較例2のキャパシタの製造方法を示す工程断面図である。なお、図1と対応する部分には図1と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0051】
まず、図1(a)の工程までを行い、続いて図7(a)に示すように、DCスパッタリング法を用いて下部キャパシタ電極3上に厚さ2.5nmのTi膜7(第2界面膜)を形成した後、厚さ240nmのアモルファスPZT膜4aを形成する。
【0052】
次に図7(b)に示すように、酸素雰囲気下で850℃、5秒の結晶化アニールによってアモルファスPZT膜4aを結晶化し、結晶性PZT膜4cを形成した後、Ptからなる上部キャパシタ電極5を形成する。この後、酸素雰囲気下で650℃、1時間の熱処理を行う。Ti膜7は、アモルファスPZT膜4aの結晶化を促進するとともに、結晶の配向性を高めるシード層の働きを担う。
【0053】
このようにして作成した比較例2のキャパシタについて、図8に示すような波高±5V、パルス幅100μsec、パルス間隔200μsecの三角波のダブルパルスで分極疲労試験を行った。
【0054】
その結果、図9に示すように、分極反転回数が9×105 回で疲労が始まった。すなわち、比較例2のキャパシタは、Ti膜7を形成しない比較例1のキャパシタの疲労の始まる7×104 回と比べると、1桁以上も向上している。
【0055】
しかしながら、疲労試験中のヒステリシス曲線の原点からのずれ(Asymmentry)を調べると、比較例2のキャパシタは、図10に示すように、数μC/cm2 の分極量のずれがあり、非対称性が戻らないままとなる。
【0056】
ここで、ヒステリシス曲線の原点からのずれは、図11に示すように、{(N−U)−(P−D)}/2と定義している。
【0057】
このような比較例2に対して、本発明者らは以下のような改善策を施した。すなわち、第1の実施形態と同様に、図12に示すように、DCスパッタリング法を用いて、アモルファスPZT膜4a上に厚さ2.5nmのTi膜6を形成する。この後の工程は、比較例2の図7(a)の工程の後の工程と同じである。
【0058】
このようにして作成した本発明に係るキャパシタについて、前述した比較例2と同様の分極疲労試験を行ったところ、3×106 回まで疲労が観測されず、比較例2のキャパシタに比べて、分極疲労が起こり難いことが分かった。また、ヒステリシス曲線の原点からのずれについては、比較例2のキャパシタと同様に反転回数が増加しても良好な対称性を示した。
【0059】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係るキャパシタの作成方法を示す工程断面図である。なお、図7と対応する部分には図7と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0060】
第1、第2の実施形態では、アモルファスPZT膜4を形成し、その上にTi膜6を形成する方法について説明したが、これらの一連の工程を複数回行っても良い。ここでは、第2の実施形態において2回行う場合について説明する。
【0061】
まず、図7(a)の工程までを行う。ただし、アモルファスPZT膜4aの膜厚は120nmとする。すなわち、比較例2におけるアモルファスPZT膜4aの膜厚の半分にする。Ti膜7の膜厚は同じである(2.5nm)。
【0062】
次に図13(a)に示すように、アモルファスPZT膜4a上にTi膜6を形成した後、このTi膜6上に厚さ120nmのアモルファスPZT膜8a、厚さ2.5nmのTi膜9(第1界面膜)を順次形成する。
【0063】
次に図13(b)に示すように、酸素雰囲気下で650℃、1時間の結晶化アニールによってアモルファスPZT膜4a,8aを結晶化し、結晶性PZT膜4c,9cを形成する。結晶化アニールによって膜収縮が起こり、結晶性PZT膜4c,8cの合計膜厚は220nmとなる。
【0064】
この後、同図(b)に示すように、Ptからなる厚さ175nmの上部キャパシタ電極5を形成した後、酸素雰囲気下で650℃、1時間の熱処理を行ってキャパシタが完成する。
【0065】
このようにして作成したキャパシタの分極疲労特性を調べたところ、図14に示すように、反転回数が107 付近まで疲労せず非対称性も観測されなかった。
【0066】
なお、本実施形態では、アモルファスPZT膜4を形成する工程と、その上にTi膜6を形成する工程とからなる一連の工程を2回繰り返す場合について説明したが、3回以上繰り返しても良いことは言うまでもない。
【0067】
(参考例)
第1〜第3の実施形態では、Ti膜6またはTi膜6,9を形成した後、アモルファスPZT膜4aまたはアモルファスPZT膜4a,8aを結晶化するための結晶化アニールを行ったが、この結晶化アニールはTi膜6またはTi膜6,9を形成する前に行って良い。ここでは、第2の実施形態においてTi膜6を形成する前に結晶化アニールを行う場合について説明する。
【0068】
すなわち、図15(a)に示すように、第2の実施形態と同様にアモルファスPZT膜4aまでを形成し、続いて図15(b)に示すように、酸素雰囲気下で850℃、5秒の結晶化アニールによって結晶性PZT膜4cを形成した後、結晶性PZT膜4c上にTi膜6を形成する。各膜の膜厚は第2の実施形態と同じで良い。
【0069】
この後の工程は第2の実施形態と同様で、Ti膜6上に厚さ175nmの上部キャパシタ電極5を形成した後、酸素雰囲気下で650℃、1時間の熱処理を行ってキャパシタが完成する。
【0070】
このようにして作成したキャパシタも反転回数が107 回付近まで疲労せず非対称性も観測されなかった。ただし、第3の実施形態(図14)よりも若干劣っていた。
【0071】
また、本作成方法の変形例としては、例えばPZT膜4a上に厚さ2.5nmのTi膜を形成した後に結晶化アニールを行い、次いで上部キャパシタ電極5を形成して熱処理を行っても良い。さらに第2の実施形態のように、下部キャパシタ電極3との界面に厚さ2.5nmのTi膜7を形成した後に、アモルファスPZT膜4cを形成しても良い。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではTi膜2,7の膜厚を同じにしたが、これらの膜厚は互いに異なっていても良い。
【0073】
また、上記実施形態では界面膜の材料としてTiを使用したが、要はZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質であれば良い。
【0074】
また、上記実施形態ではキャパシタ絶縁膜の材料としてPZTを使用したが、キャパシタ絶縁膜の材料はこれに限定されるものではなく、要はABO3 ペロブスカイト系材料であり、AはPb、BaおよびSrから選ばれる1種類上の元素を含む物質、BはZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質であれば良い。
【0075】
また、上記実施形態では下部キャパシタ電極の上面がキャパシタ絶縁膜で覆われた構造のキャパシタの場合について説明したが、下部キャパシタ電極の上面および側面がキャパシタ絶縁膜で覆われたキャパシタに対しても本発明は有効である。さらにコンケイブ型のキャパシタにも適用可能である。すなわち、本発明はキャパシタ構造に関係なく適用可能である。
【0076】
また、本発明はFRAM以外のデバイスのキャパシタにも適用できる。
【0077】
また、上記実施形態では強誘電体のキャパシタ絶縁膜を用いたキャパシタの場合について説明したが、本発明は、ABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体で形成されていれば、高誘電体のキャパシタ絶縁膜を用いたキャパシタにも有効である。この場合にはリーク電流を小さくすることができ、キャパシタ絶縁膜としての性能を向上することができるようになる。
【0078】
また、下部電極の材料もPtに限定されるものではない。ただし、キャパシタ絶縁膜の材料によっては酸化されても導電性を示す材料を用いたほうが良い場合がある。
【0079】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施できる。
【0080】
【発明の効果】
以上詳説したように本発明によれば、第2電極を形成する前に、ABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体からなる結晶性絶縁膜となるアモルファス絶縁膜以上に、Zr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類上の元素を含む物質からなる第1界面膜を形成した後、熱処理によってアモルファス絶縁膜を結晶化してキャパシタ絶縁膜を形成することによって、誘電率の低下の原因となる層がキャパシタ絶縁膜上に形成されること、リーク電流の要因となる電流パスが生成されることを抑制できるので、キャパシタの特性劣化を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1のキャパシタの作成方法を示す工程断面図
【図2】上部キャパシタ電極の形成後にダメージ回復のための熱処理を行わなかった場合の比較例1のキャパシタの評価結果を示す特性図
【図3】上部キャパシタ電極の形成後にダメージ回復のための熱処理を行った場合の比較例1のキャパシタの評価結果を示す特性図
【図4】比較例1のキャパシタの特性の改善方法を説明するための断面図
【図5】同改善方法を比較例1のキャパシタに適用した場合の図2に相当する特性図
【図6】同改善方法を比較例1のキャパシタに適用した場合の図3に相当する特性図
【図7】比較例2のキャパシタの製造方法を示す工程断面図
【図8】分極疲労試験に用いたダブルパルス波を示す図
【図9】比較例2のキャパシタに改善方法を施した場合および施さなかった場合のそれぞれの分極疲労試験の結果を示す図
【図10】疲労試験中のヒステリシス曲線の原点からのずれを調べた結果を示す図
【図11】ヒステリシス曲線の原点からのずれの定義を示す図
【図12】比較例1のキャパシタの特性の改善方法を説明するための工程断面図
【図13】本発明の第3の実施形態に係るキャパシタの作成方法を示す工程断面図
【図14】同作成方法を用いて作成したキャパシタの分極疲労特性を示す特性図
【図15】本発明の第4の実施形態に係るキャパシタの作成方法を示す工程断面図
【符号の説明】
1…酸化膜
2…接着層
3…下部キャパシタ電極(第1電極)
4a…アモルファスPZT膜
4c…結晶性PZT膜(キャパシタ絶縁膜)
5…上部キャパシタ電極(第2電極)
6…Ti膜(第1界面膜)
7…Ti膜(第2界面膜)
8a…アモルファスPZT膜
8c…結晶性アモルファスPZT膜
9…Ti膜(第1界面膜)
Claims (6)
- 第1電極、ABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体からなる結晶性絶縁膜、第2電極が順次積層されてなるキャパシタを作成する工程を含む半導体装置の製造方法において、
前記第1電極上に前記結晶性絶縁膜となるアモルファス絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の工程の後、かつ、前記第2電極を形成する前に、前記アモルファス絶縁膜上にZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質からなる第1界面膜を形成する第2工程と、
前記第2の工程の後に、熱処理によって前記アモルファス絶縁膜を結晶化する第3工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 前記第1工程と前記第2工程とからなる一連の工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記ABO3 ペロブスカイト型酸化物誘電体は、AがPb、BaおよびSrから選ばれる1種類以上の元素を含む物質、BがZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記第1電極上にZr、Ti、Ta、Nb、Mg、W、FeおよびCoから選ばれる1種類以上の元素を含む物質からなる第2界面膜を形成した後、前記アモルファス絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記第2電極を形成する前に前記熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記第2電極を形成した後に前記熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
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