JP3872761B2 - 作業車のボンネット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、トラクタ等の作業車のボンネットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の作業車のボンネットには、例えば、特許文献に示すように、走行車体上のラジエータを覆うボンネット本体内に外気を取り込むために、ボンネット本体の前面に前面グリル部を有し、左右各側面に側面グリル部を有したものがある。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−192961号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のボンネットでは、側面グリル部が、前面グリル部よりも、ラジエータ寄りに設けられており、しかも、左右方向に面するように前後方向に沿って設けられていることから、面グリル部のうち、特に側面グリル部後側部分(ラジエータ近傍部分)を通過する外気の流速が過度に大きく、側面グリル部の前側部分を通過する外気の流速との差が大きくなっていて不均一なものとなっていた。このため、側面グリル部の後部側の局部で、他の部分(例えば前部側)や前面グリル部よりも、虫、塵芥等の異物が早期に詰まることが考えられ、これによって、異物を捕捉できるグリル面積が減少し、捕捉率が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、側面グリル部を通過する外気の流速を可及的に均一化して局部の異物の目詰まりを防止し、異物の捕捉率を向上することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を解決するために以下の技術的手段を講じた。
第1に、走行車体上のラジエータを覆うボンネット本体に、前記ボンネット本体の前面に設けられた前面グリル部と、ラジエータの前方でボンネット本体の左右各側面に設けられた側面グリル部とを備えた作業車のボンネットにおいて、側面グリル部のラジエータ近傍側を通過する外気の流速を抑制する流速抑制手段をラジエータと側面グリル部の間に設けていることである。
【0007】
これによれば、流速抑制手段によって、側面グリル部のうち、ラジエータ近傍部分を通過する外気の流速を小さくし、側面グリル部の前側部分を通過する外気の流速との差を小さくして、側面グリル部を通過する外気の流速を可及的に均一にすることができ、側面グリル部の後側での局部的な異物の目詰まりを防止して、異物の捕捉率を向上できる。
第2に、前記流速抑制手段は、側面グリル部と対面するように面状部材で構成されていて側面グリル部の後端部から中途部まで側面グリル部を覆うようにボンネット本体内側面に設けていることである。
【0008】
これによれば、流速抑制手段を面状部材とすることで、側面グリル部のうち、外気の流速が大きくなるラジエータ近傍部分での外気の流速を小さくすることができる。
第3に、前記流速抑制手段は、側面グリル部から取り込まれた外気をラジエータ側に通過可能な多孔部材で形成していることである。
これによれば、側面グリル部を通過した外気をラジエータ側に導入できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図6は、本発明の第1実施形態を示し、図6は、本発明に係るボンネット14を備えた作業車の例としてトラクタを示したものである。なお、以下、作業車の進行方向を前後方向といい、この前後方向に対し直行する左右方向(図6において紙面貫通方向)を横方向という。
作業車1は、操舵及び補助走行駆動に用いられる左右の前輪2と主走行駆動に用いられる左右の後輪3とを有する2軸4輪型であり、エンジン5からの駆動で2輪駆動(後輪駆動)又は4輪駆動(前・後輪駆動)に切換可能になっている。
このエンジン5やミッションケース7等によって走行車体6が構成され、この走行車体6の後部は、リフトアーム8を具備する油圧装置9が設けられていると共に、この油圧装置9によって3点リンク10が昇降可能に設けられている。
【0010】
この3点リンク10は、各種の作業機11(図例は耕耘機)を接続したり切り離したりできるようになっている。この作業機11には、PTO軸12を介してエンジン5の駆動を伝達可能としている。
また、エンジン5の後方には、独立搭載型のキャビン15が設けられており、キャビン15の前したの壁がエンジン5後方の仕切壁となっていて、その仕切壁の背面側(キャビン15の前部内面)にハンドル16を有する操縦装置が設けられ、この操縦装置の後方には運転席17が配置されている。
【0011】
エンジン5は、走行車体6の前上部に設けられていて、その上方に消音マフラー28が接続されており、この消音マフラー28に設けられた排気用パイプ30を介して排気を行うようになっている。
図1乃至図5において、走行車体6の前部には、エンジン5から前方へ前車軸フレーム13が延出して設けられており、この前車軸フレーム13上にラジエータ19が搭載されている。また前車軸フレームおよび走行車体6上には、前記エンジン5、ラジエータ19、消音マフラー28等の各機器を含めて全体的に包囲したボンネット14が設けられていて、ボンネット14内にエンジンルームを形成している。
【0012】
ラジエータ19は、エンジン5の前方に配置されていて、前側から空気を吸入して後方のエンジン5へ冷却風を送る前吸入式を採用している。
ラジエータ19の後側には、ラジエータファン22が配置され、このファン22をエンジン5を介して駆動されるベルト伝動手段によって起動することで外気を取り込むようにしている。
ラジエータ19の前方には、エンジン補機等の各種機器を支持する支持枠20が設けられており、この支持枠20は、エンジンルームの床部に立設された左右対の長尺状の支柱20aと、支柱20a同士を連結する連結部材から構成される。この支柱20aの先端部(上部)には、前記連結部材を介してリザーブタンク23が固定されている。
【0013】
ラジエータ19とリザーブタンク23とは、第1オーバーフローパイプ31を介して接続されており、エンジン冷却時にラジエータ19から溢れ出た冷却水がこの第1オーバーフローパイプ31を通じてリザーブタンク23に貯留されるようになっている。また、リザーブタンク23には、このリザーブタンク23から溢れ出た冷却水をエンジンルーム外に排出するための第2オーバーフローパイプ32が設けられている。
図3乃至図5に示すように、前記支柱20aは、その基部にエンジンルーム床部に対する取付ブラケットが設けられていて、ボルト等の締結手段を介して前記床部に固定されている。この支柱20aの基部は前記床部を貫通するように開口状とされており、前記第2オーバーフローパイプ32は、前記支柱20aに挿通されていて、その排出口32aが支柱20a基部の開口からエンジンルーム床部を貫通してエンジンルーム外に露出されており、リザーブタンク23から溢れ出た冷却水が、第2オーバーフローパイプ32を伝って排出口32aから排出されるようになっている。
【0014】
従来、ラジエータ19を搭載するエンジンルームの床部に孔を穿設し、この孔に第2オーバーフローパイプ32を挿通してその排出口32aをエンジンルーム外に露出させて排水していたが、これでは、エンジンルーム内が負圧となったときに、外部から、塵芥等がこの孔を通じてエンジンルーム内に容易に入り込んでラジエータ19等の目詰まりのおそれがあった。しかし、上述のように第2オーバーフローパイプ32を前記支柱20aに挿通してリザーブタンク23から溢れ出た水を排出するようにしたことにより、支柱20aは、長尺状に形成されているので、前記塵芥等がエンジンルーム内に侵入するには、この支柱20aを重力に抗して上昇しなければならなくなるため、この塵芥等がエンジンルーム内に入り込みにくくなる。したがって、エンジンルーム内をより清潔に保つことができるようになり、メンテナンス上も有利なものとなっている。
【0015】
前記リザーブタンク23の下方には、オイルクーラ33が配置されており、このオイルクーラ33は、前記支柱20aに固定部材を介して固定されている。また、ラジエータ19とオイルクーラ33の間には、エンジン5への吸気冷却用のインタークーラ34が配置されている。
オイルクーラ33の前方には、操縦室の冷暖房エアコンの冷媒を凝縮するコンデンサ35が設けられている。このコンデンサ35は、前記左右対の支柱20aに固定されている。このコンデンサ35の前方右側には、コンデンサ35で凝縮された冷媒を貯留するレシーバ36が設けられている。このレシーバ36の上方には、エアークリーナ24が配置され、このエアクリーナ24の前方のエンジンルーム床部には、バッテリ27が搭載されている。
【0016】
前記キャビン15の仕切壁の前上部には枢支具21が設けられていてボンネット14の後上部を枢支しており、ボンネット14は、図6の実線位置から仮想線で示すように上下に開閉自在となっている。また、このボンネット14は、樹脂製のボンネット本体14aの前面に設けられた前面グリル部14bと、ラジエータ19の前方でボンネット本体14aの左右各側面に設けられた側面グリル部14cとを備えている。
ボンネット本体14aの内部には、骨組み40が配置されており、この骨組み40は、ボンネット本体14aの内面の前後方向中途部に間隔をおいて配置されかつブラケット41を介して装着された前後門型枠42、43と、ボンネット本体14aの上部内面にブラケット48を介して装着されかつ両門型枠42、43の上部を前記枢支具21に連結する左右一対の上材44とを有している。
【0017】
前記ラジエータ19は前取付枠45を介してエンジンルーム内に固定されており、この前取付枠45の上縁および左右側縁の前面側には前方へ突出したシール材46が設けられており、このシール材46に前記前門型枠が前側から当接している。前門型枠とボンネット本体14aの内面との間もシール材47でシールされていて、ラジエータファン22でエンジン5側へ送風した風が前方へ流れて再びラジエータ19に吸引する、ということがないように構成されている。
前記ボンネット14は前門型枠42より後上方に位置する枢支具21を中心に開閉されるので、閉鎖動作をするとき、前門型枠42はラジエータ19に対して前側から近づいてくることとなり、前方膨出状のシール材46を前側から当接する。そのため、前門型枠はシール材と摺接することはなく、シール材46の損傷を防止している。
【0018】
ボンネット本体14aの前面、および左右側面前部には開口部が形成されており、この開口部の周縁部に段部を形成することによって各グリル部14b、14c用の各メッシュ部材29b、29cを係合させる鍔部14dが形成されている。各鍔部14dには、各メッシュ部材29b、29cを固定するためのねじ孔が形成されており、メッシュ部材29b、29cは、パンチングメタル等により構成されていて、その内面側にはねじ孔を有する取付ブラケット29aが設けられている。
【0019】
各グリル部14b、14cは、各メッシュ部材29b、29cを、各開口部を覆うように各鍔部14dに係合させ、この状態で、前記取付ブラケット29aのねじ孔と鍔部14dに形成されたねじ孔とを一致させて、ボルト等の締結手段37によって固定することにより形成されている。
ラジエータ19と側面グリル部14cの間には、側面グリル部14cのラジエータ19近傍側を通過する外気の流速を抑制する流速抑制手段38が設けられている。この流速抑制手段38は、側面グリル部14cと対面するような面状部材で構成されており、側面グリル部14cの後端部から中途部まで側面グリル部14cを内側から覆うように設けられている。この面状部材は、板状体、網体等種々の形状のものを用いることができる。
【0020】
この面状部材は、略四角形状に形成されていて、その後部側の上下各部位にねじ孔が形成され、前記締結手段37を介して、ボンネット本体14a内側面に固定されている。したがって、この流速抑制手段38は、前記締結手段37によって、側面グリル部14c用のメッシュ部材と共にボンネット本体14aに固定されている。また、この流速抑制手段38は、側面グリル部14cから取り込まれた外気をラジエータ19側に通過可能な多孔部材で構成されている。すなわち、この面状部材で構成された流速抑制手段38は、その肉厚方向に貫通する通気孔39を多数有している。この通気孔39の大きさは、側面グリル部14c用のメッシュ部材29cの網目の大きさよりもやや小さく形成されていて、側面グリル部14cのメッシュを通過した微細な埃等をこの面状部材によっても捕捉できるようになっている。なお、この通気孔39の大きさは、前記メッシュ部材29cの網目の大きさと略同じか、または大きく形成するようにしてもよい。
【0021】
流速抑制手段38を上述のように設けたことにより、側面グリル部14cのうち、ラジエータ19近傍の後部側を通過する外気がラジエータ19側に行くときに流速抑制手段38が抵抗を与えてこの外気の流速を小さくし、前面グリル部14bや側面グリル部14cの前部側を通過する外気流速との差を極力小さくして、側面グリル部14cを通過する外気の流速を可及的に均一なものとすることができるようになる。したがって、側面グリル部14cのうちラジエータ19近傍側である後部側に、虫、ゴミ等の異物が局所的に詰まって側面グリル部14cにおける異物の有効捕捉面積が減少することなく、側面グリル部14c全体で異物を捕捉できるので、異物の捕捉率を向上することが可能となる。
【0022】
また、流速抑制手段38を面状部材とすることで、側面グリル部14cのうち、外気の流速が大きくなるラジエータ19近傍の後側部分を覆うことができ、これによって外気の流速が大きい部分の流速を均一に小さくすることができる。
さらに、流速抑制手段38を多孔部材とすることで、側面グリル部14cのラジエータ19近傍部分を通過した外気は、前記通気孔39を通過してラジエータ19に向かうことになり、この外気の流れを特に変えることもなく、ラジエータ19への外気の供給を適切にできる。
【0023】
図7の第2実施形態では、ボンネット本体14aの後部側の鍔部14dを側面グリル部14cの後端側(段部側)から中途部まで形成し、この鍔部14を流速抑制手段38としている。この鍔部14dは、その前端縁(端部)が側面グリル部14cの前後方向中央部よりやや後方に位置するように形成されている。また、この鍔部14dには、第1実施形態のような、メッシュ部材29を通過してきた外気を通過させるための通気孔39が形成されていない。これによれば、ボンネット本体14aと流速抑制手段38とは、例えば、樹脂成形によって、一体的に形成することができるようになり、これによって、流速抑制手段38をボンネット本体14aの内側面に固定する締結手段37等の固定手段が必要なくなるので、ボンネット14の製造部品数を軽減し、かつ組み立て作業も煩わしくなくなり、この点で有利である。
【0024】
図8の第3実施形態では、側面グリル部14c用のメッシュ部材29cの後部を平面視コの字状に折曲し、この折曲部部分の先端部(前端部)を側面グリル部14cの後端部側から中途部まで延長して形成して流速抑制手段38を構成している。前記先端部(前端部)は、側面グリル部14cの前後方向略中央に位置するように形成されている。なお、この先端部の位置は、側面グリル部14cの前後方向中央よりも前方に位置するように形成してもよいし、また前記中央よりも後方に位置するようにしてもよい。
【0025】
これによれば、流速抑制手段38を別部材として形成する必要がなくなり、メッシュ部材29cボンネット本体14aへの取付と同時に流速抑制手段38もボンネットに取り付けられるので、作業の手間を省略することができ、この点で有利なものとなっている。
上記第2、第3実施形態のその他の点は、第1実施形態と同様の構成であり、同様の作用効果を生じる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限らず、以下のように種々の変形・変更が可能である。流速抑制手段38を構成する多孔部材としては、網目状のもの、パンチングメタル等種々の形態のものを用いることができる。側面グリル部14cのメッシュ部材29cは、その前端部から後端部に向かう(後方に向かう)につれてその網目の大きさが徐々に大きくなるように形成し、側面グリル部14cの前部側を通過する外気の流速と、後部側(ラジエータ19近傍部)を通過する外気の流速との差を小さくして、これによって、側面グリル部14cを通過する外気の流速を均一化するようにしてもよい。第2実施形態において、流速抑制手段38を構成する鍔部14dに、前記通気孔39を複数形成するようにしてもよく、この場合には、前記流速抑制手段38である鍔部14dの前後幅をより大きく形成してもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、側面グリル部を通過する外気の流速を可及的に均一化して局部の異物の目詰まりを防止し、異物の捕捉率を向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示すボンネットの分解斜視図である。
【図2】同ボンネットを示す斜視図である。
【図3】同ボンネットの側面 図である。
【図4】同ボンネットの平面図である。
【図5】同ボンネットを平面断面図である。
【図6】作業車の側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示すボンネットの平面断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態を示すボンネットの平面断面図である。
【符号の説明】
1 作業車
6 走行車体
14 ボンネット
14a ボンネット本体
14b 前面グリル部
14c 側面グリル部
19 ラジエータ
38 流速抑制手段

Claims (3)

  1. 走行車体のエンジンの前方に冷却風を前側から後方へ送るラジエータを配置し、エンジン及びラジエータをボンネットで覆っており、前記ボンネットは、ボンネット本体と、このボンネット本体の前面に設けられた前面グリル部と、前記ラジエータの前方でボンネット本体の左右各側面に設けられた側面グリル部とを備えた作業車のボンネットにおいて、
    側面グリル部の後部側を通過してラジエータに至る外気に抵抗を与えて側面グリル部の前部側及び前面グリル部を通過する外気の流速との差を小さくするべく、前記側面グリル部の後端部から前後方向中途部まで側面グリル部を内側から覆う流速抑制手段を設けていることを特徴とする作業車のボンネット。
  2. 前記流速抑制手段は、側面グリル部と対面するように面状の多孔部材で構成してボンネット本体内側面に設けていることを特徴とする請求項1に記載の作業車のボンネット。
  3. 前記流速抑制手段を側面グリル部用のメッシュ部材と共にボンネット本体に固定していることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のボンネット。
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