JP3872195B2 - 防虫剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温揮散性ピレスロイドを含浸した薬剤含浸体を、ケースに収納した防虫剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、防虫剤特有の臭いがなく、防虫効果の高い常温揮散性ピレスロイドを含浸したものを収納するケースの防虫剤が種々提案されている。このような防虫剤には、例えば、洋服ダンス等に吊支されるものや、あるいはタンス・衣装箱等に納めて用いる防虫薬剤の揮散具等があり、洋服ダンス用としては、実公昭63−8223号公報に記載されている考案がある。
【0003】
この考案による防虫剤は、ヒンジを介して二つ折りでき、内部に防虫剤含浸紙収納用の空間を有しメッシュ状に多数の揮散孔を有する一対の、プラスチック成型された半収納体よりなり、該半収納体の開閉端部中央に一対ずつの互に嵌合係止する嵌合片と嵌合孔を或る間隔をおいて設け、上記半収納体の1個の表面にはヒンジを介して引き上げ得る、外周に低い段差部を有する吊支具をほぼ「面一」に埋没できる陥没溝中に収め得るように設け、該陥没溝のある半収納体のヒンジ近くに、上記吊支具収納時にその低い段差部を係止する係止爪を設け、かつ吊支具の引上げ時、これを固定するために吊支具のヒンジより外側で半収納体上縁部相当位置に外方に向かう放射状の切込みを伴った嵌入孔を設けるとともに、他の一方の半収納体のこれと対称位置に上記嵌入孔に嵌入する吊支具固定用突起を設け、また両半収納体の内側には防虫剤含浸紙を挟持するための多数の突起を互いに対向させて設けるとともに、上記含浸紙の位置規制用のL一字形の枠片を一方の半収納体コーナー部に設けて構成したことを特徴としている。
【0004】
また、タンス・衣装箱等に納めて用いる揮散具(以下、引き出し用防虫剤として説明する)としては、実公平5−30622号公報に記載されている考案がある。この考案による防虫剤は、台板上に蓋板を重なるようにして開蓋可能とした台板の少なくとも対向し、かつ殺虫マットの端面と対向する二側縁に、通気可能にして多数の突条を各側縁に沿って配列配置し、かつ両側縁の対向する突条間に、常温にて自然に殺虫成分が揮散する液体状殺虫薬剤を含浸させた殺虫マットを納め、台板及び蓋板の内側に殺虫マットを台板・蓋板に密接する事なく支持する突起を設けるとともに、前記突状の長手方向の長さを殺虫剤による衣類の変色を防止できる程度の3〜15mmの範囲内に定めて構成したことを特徴としている。
【0005】
ところで、このように構成された従来の防虫剤のケースには、常温揮散性ピレスロイドを例えば不織布等に含浸することにより形成された殺虫機能を有する殺虫マットまたは殺虫シートが収容される。ところが、主にポリプロピレン、ポリエチレンからなるケースタイプにおいては、上記殺虫マットや殺虫シートとの直接の接触をなるべく避けるために、その接触面積を極力低減可能なピン立て等の手段を設けて構成されてはいるが、ケース材料として主にポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられていることから、密封で長期保存した場合や使用中においては、有効成分がプラスチックに吸収されてしまい、しかも吸収された有効成分はほとんど揮散しないため、実質的な有効成分が減少してしまい、結果として防虫効力の低下を招くといった問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、従来の防虫剤では、常温揮散性ピレスロイドを含浸した殺虫シートにおける有効成分の吸着率を低減するために、ケースは該殺虫シートとの直接の接触をなるべく避けるためのピン立て等の手段を設けて構成されてはいるが、ケース材料としてポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられていることから、長期保存、流通、使用時には有効成分がプラスチックに吸収されてしまい、しかも吸収された有効成分はほとんど揮散しないため、実質的な有効成分が減少してしまい、結果として防虫効力の低下を招くといった問題点があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、長期保存、流通、使用時であっても防虫剤の有効成分がケースに吸収されず、有効成分の減少を防止することにより、成分の有効利用と高い防虫効果を維持することができ、また他のプラスチックからなる基材の少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすれば、一般に使用される低コストなプラスチックと脂肪族ポリケトンとを併用して製造することができるため、防虫剤の低コスト化にも寄与することができる防虫剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明の防虫剤は、常温揮散性ピレスロイドを含浸した薬剤含浸体を、脂肪族ポリケトンを用いたケースに収納したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の防虫剤は、請求項1に記載の防虫剤において、前記ケースは、それ自体が少なくとも前記脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の防虫剤は、請求項1に記載の防虫剤において、前記ケースは、前記薬剤含浸体を収納して保持する枠体と、この枠体を収納する収納体とで構成され、該枠体が少なくとも脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明の防虫剤は、請求項3に記載の防虫剤において、前記収納体は、少なくともそれ自体が前記脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の内外周面を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項1及び2記載の発明によれば、少なくとも前記脂肪族ポリケトンを有する材料でケースを構成することによって、ケースへの薬剤含浸体の有効成分の吸着を防止することが可能となり、防虫効果を維持させることが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前記ケースが薬剤含浸体を収納して保持する枠体と、この枠体を収納する収納体とで構成されているため、シート材との収納体との直接の接触面積をなくすことが可能となり、有効成分の吸着防止に寄与する。また、枠体が少なくとも脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材に脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を構成されていることから、上記発明と同様に動作して同様の効果が得られ、また、コーティング処理を採用した場合には、同様の効果が得られる他に、低コスト化を図ることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項3の発明による防虫剤と同様に動作するとともに、この収納体は少なくともそれ自体が脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の内外周面を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されていることから、確実に有効成分の吸着を防止することができる。
【0015】
尚、請求項1乃至請求項4記載の本発明においては、使用する薬剤含浸体としては、合成樹脂、パルプなどに含浸させたものが挙げられる。好ましくは、合成樹脂、パルプから製造される不織布、フィルム、マット等に含浸して用いられる。
【0016】
本発明の使用する脂肪族ポリケトン樹脂は、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物のコポリマーを主体とする樹脂であり、特に一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物との比率が1:1に近いコポリマーが好ましい。もっとも好ましいものは、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物が交互に共重合したコポリマーである。
【0017】
エチレン性不飽和化合物としては、種々のものが考えられるが、特に好ましいのは、α−オレフィン、アリール置換基を含むアリール脂肪族炭化水素である。
【0018】
用いられるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブデン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン等が挙げられるが、特に好ましいものは、エチレン、プロピレンである。この場合、一酸化炭素と一種だけでなく二種以上のα−オレフィンを含むコポリマーであっても良い。
【0019】
前記アリール置換基を含むアリール脂肪族炭化水素としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン及びm−イソプロピルスチレンが挙げられる。
【0020】
また、本発明に用いられる脂肪族ポリケトンは、燃焼時に有害ガスを発生せず、使用後の廃棄の際に環境問題を生じない。尚、本発明の脂肪族ポリケトン樹脂には必要に応じ、ガラス繊維やタルク等の無機材料、エラストマーや各種熱可塑性樹脂、その他酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、染顔料、帯電防止剤等を添加することができる。シュルケミカルズ社から販売されている脂肪族ポリケトン(商品名カリロン)は、本発明の脂肪族ポリケトンの代表的なものである。
【0021】
また、本発明で使用される常温揮散性ピレスロイドとしては、4−メチル−4−ヘプテン−1−イン−3−イル d−シス,トランス−クリサンテマート(以下エムペントリン)、dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス,トランス−クリサンテマート(以下アレスリン)、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス,トランス−クリサンテマート(以下レスメトリン)、2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート(以下テラレトリン)等が挙げられ、中でも、エムペントリンは、常温揮散ピレスロイド防虫剤としてその高い防虫効果、低毒性を具備していることから広く用いられている。また、エムペントリン、アレスリン、レスメトリン、テラレトリン等を混合して用いても良い。
【0022】
また、これらに酸化防止剤、防カビ剤、殺菌剤、香料、忌避剤などの他の成分を配合することもでき、合成樹脂、パルプなどに含浸させたものが得られる。好ましくは、合成樹脂、パルプから製造される不織布、フィルム、マット等を用いて有効成分を含浸した薬剤含浸体を得ることができる。
【0023】
有効成分の含浸量は、防虫剤の使用用途、使用場所、使用期間によって特に限定されないが、例えば、5cm×12cmの大きさで、厚さが1mm程度のパルプシートにエムペントリン0.03〜1.0g含浸することにより、通常の洋服ダンス内で使用して6ヶ月防虫効果を持続させることができる。
【0024】
本発明のケースの形状、大きさとしては、特に限定されないが、例えば洋服ダンス用として実公昭63−8223号公報に記載の防虫剤入れによれば、内部に防虫剤含浸紙収納用の空間を有しメッシュ状に多数揮散孔を有する一対のプラスチック成形体からなり、吊支具も設けたものや、引き出し用として実公平5−30622号公報に記載の殺虫薬剤の揮散具によれば、台板上に蓋板を重なるようにして閉蓋可能とした台板に通気可能にして多数の突条を配列配置し、内部に殺虫マットを収納したものが挙げられる。
【0025】
また、本発明のケースは、請求項3記載の発明のように薬剤含浸体を保持する脂肪族ポリケトンからなる枠体と、当該枠体を収納する収納体であっても良い。この場合、収納体は、脂肪族ポリケトンであっても良く、その他の材質であっても良く、その他の材質として安価なポリエチレンやポリプロピレンを用いるのが好ましい。
【0026】
本発明の脂肪族ポリケトンを用いた容器としては、上記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンで形成しても良く、好ましくは、容器全体を脂肪族ポリケトンで形成した方が良い。この理由として、長期保存、流通、使用時の際に、脂肪族ポリケトンと上記薬剤含浸体が接触している部分の吸収は防げても、その他の部分は、揮散した成分と接触するため、容器全体を脂肪族ポリケトンで形成した方が好ましい。
【0027】
また、請求項2に記載の発明のように前記ケースを構成する他のプラスチックからなる基材に脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を構成しても良い。
【0028】
また、ケースの製造方法としては、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形等によって脂肪族ポリケトンを用いて成形され、薬剤含浸体を収納することにより本発明の防虫剤を得ることができる。
【0029】
本発明の防虫剤は、バリヤ性のあるプラスチックフィルムに収納し、密閉保存されるが、長期保存、流通、使用時での保存においても有効成分が吸収されず、使用開始後、洋服ダンス、引き出し等で、有効成分を効率的に揮散し、衣類害虫、生活害虫に対し効果を発揮することが可能となる。また、請求項3に記載の発明によって、有効期間をすぎた場合に収納している枠体を他の枠体に詰め替えることが可能であるため、ケース自体を繰り返して使用することも可能となり、低コスト化にも寄与する。さらに、請求項2乃至4に記載の発明によって、例えば低コストなポリプロピレンやポリエチレン等で構成されるケースの面上に対し、上述の脂肪族ポリケトンによってコーティングするという方法を採用した場合でも、上記発明と同様の効果が得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1乃至図3は本発明に係る防虫剤の第1実施形態例を示し、図1は洋服ダンス用防虫剤として構成した場合の全体構成を示す構成斜視図、図2は該防虫剤の断面図、図3は容器本体のA−A線断面図である。
【0032】
図1に示すように、防虫剤1は、揮散性薬剤である例えばエムペントリンが不織布等に均一に含浸して形成されたシート材10と、このシート材10を収納する薬剤容器20とで構成されている。
【0033】
シート材10は、不織布等に含浸されるエムペントリン等の有効成分が揮散することにより防虫能力の効果が得られるもので、薬剤容器20内の収納可能な大きさでシート状に形成されている。薬剤容器20は、薬剤収納体である容器本体21の上側に湾曲状のフック部30と略山型のストッパー部31とを形成した構造となっている。
【0034】
容器本体21は、シート材10の有効成分を吸着しない脂肪族ポリケトン(シェルケミカルズ社製:商品名カリロン)の材質で楕円状に形成された表側筐体22と裏側筐体23とで表裏分割した構造になっており、上記エムペントリンが含浸したシート材10を内部に収納できるようになっている。つまり、表側筐体22及び裏側筐体23は、それ自体が前記脂肪族ポリケトンで形成されるようになっている。
【0035】
表側筐体22には、容器本体21の内部と外部との間を連通させる連通部としての連通孔24が形成され、またその面上の中央近傍にも、複数の開口部25が形成されるようになっている。また、裏側筐体23についても同様に容器本体21の内部の外部との間を連通させる連通部としての連通孔24が形成され、またその面上の中央近傍にも、複数の開口部25が形成されるようになっている。これらの連通孔24及び開口部25は、容器本体21の内部と外部との間でシート材10の有効成分の通過を可能にしている。また、連通孔24はシート材10の所定位置に設けられた有効成分の有効期間がすぎたことを示す表示(インジケータ部ともいう)を覗けるようになっている。
【0036】
フック部30は、前記容器本体21から上方へ延設して先端部をこの容器本体21側へ向け、この容器本体21との先端部との間に脱着口32を形成している。ストッパー部31は、略山型に形成されており、前記フック部30の先端部に対向させて前記脱着口32を狭めるように容器本体21から突出して設けられている。この場合、フック部30は、弾性を有する部材により適宜肉厚を調整させており、適切な力で弾性変形可能になっている。これと同様にストッパー部31も弾性を有する部材により形成されており、適切な力で弾性変形可能になっている。これにより、脱着口32の径は可変となる。
【0037】
また、裏側筐体23の内側には、図2の断面図に示すように、シート材10を表側筐体22の定位置に固定するためのリブ37が複数形成されるようになっている。
【0038】
本発明の防虫剤では、上述したように容器本体21がシート材10の有効成分を吸着しない脂肪族ポリケトン(シェルケミカルズ社製:商品名カリロン)の材質を用いて形成されており、その実施様態が図2の断面図に示されている。さらに分かりやすく説明すると、図2中のA−A線断面図である図3に示すように、容器本体21の裏側筐体23は、それ自体が前記脂肪族ポリケトンで形成されたものであり、また表側筐体22についても同様に脂肪族ポリケトンで形成されるようになっている。
【0039】
このようにして用いられる脂肪族ポリケトンは課題解決するためには極めて有効なものである。このような脂肪族ポリケトンの特性を知りうるために行った試験例を下記に示す。
【0040】
この試験例では、本発明の各実施形態例と同様にしてシェルケミカルズ社製の脂肪族ポリケトン(商品名カリロン)を用いて、プラスチックサンプルを作成し試験例1とした。また、特性を比較するために試験例2〜7として表1に記載の汎用的な樹脂(低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,ポリプロピレン,AS樹脂及びポリメタクリル酸メチル:以下、PMMAと称す)を用いてプラスチックサンプルを作成した。
【0041】
試験方法としては、予め初期重量を測定した上記のプラスチックサンプルを40℃恒温にしたエムペントリンに漬け込み、一ヶ月後取り出して重量を測定した。プラスチックサンプル自体の吸湿、放湿等による影響を補正するため、エムペントリンに漬け込まないコントロールサンプルも用意した。このコントロールサンプルの重量変化を測定し、プラスチックサンプルへの吸着量に補正を加えて吸着率を算出した。尚、吸着率の算出式は、
吸着率(%)=(浸漬後重量−初期重量−コントロール重量変化)/初期重量であり、またPMMAの減量は、エムペントリン中に溶出したことによるものとする。このような試験方法で試験した結果を下記の表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
したがって、上記表1に示す試験結果からも解るように、試験例2〜7に示されているような汎用的なプラスチックは、エムペントリンの吸着がかなり認められたが、これに対し、本発明に用いられる脂肪族ポリケトンの場合は、エムペントリンの吸着が全く認められなかった。すなわち、この脂肪族ポリケトンを用いてシート材10を収納する薬剤容器20を構成すれば、シート材10に含浸したエムペントリンは該薬剤容器20に吸着されることはなく、長期保存中には有効成分が吸着されないので、防虫効果の低下を防止することができ、また使用時には、高い防虫効果を得ることが十分に期待できる。
【0044】
このような特性の有する脂肪族ポリケトンを用いて例えば図1に示すように薬剤容器20を実際に形成し、図1に示す本実施形態例の洋服ダンス用防虫剤として構成した場合の実験例を下記に示す。尚、この場合の防虫剤の構成は、図1に示す防虫剤1と同様のものを用いている。
【0045】
例えば、5×11cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン500mgを均一に含浸させ、この薬剤含浸体(シート材10)を洋服ダンスに用いられる防虫剤として、シェルケミカルズ社製脂肪族ポリケトン(商品名カリロン、グレードDP P1000)を用いて成形した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量25.135g、開口面積30cm2 のケース(薬剤容器20)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定した(実験例1)。
【0046】
また、上記の防虫剤との効果を比較するための比較例1として、上記実験例1と同様に、薬剤含浸体(シート材10)をポリプロピレンを用いて成形した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量14.943g、開口面積302 のケースに収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定した。
【0047】
また、比較例2として、実験例1と同様に、薬剤含浸体をポリエチレンを用いて成形した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量15.242g、開口面積30cm2 のケースに収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定し、次の表2に示す結果を得ることができた。
【0048】
【表2】
【0049】
上記表2に示す試験結果からも解るように、一般的に用いられるポリプロピレンやポリエチレンの場合、エムペントリンの吸着が認められたが、これに対し、本実施形態例に用いられた脂肪族ポリケトンはエムペントリンの吸着が全く認められなかった。
【0050】
したがって、本実施形態例によれば、このようなシート材10の有効成分、つまりエムペントリンを全く吸着しない脂肪族ポリケトンを用いて薬剤容器20(容器本体21)自体を構成しているので、袋体に収容した状態で長期保存した場合や使用時においても、有効成分の吸着による減少を防止することが可能となり、高い防虫効果を得ることが可能となる。
【0051】
また、本発明では、コスト面を考慮し、薬剤容器20・容器本体21自体を脂肪族ポリケトンのみで形成するのではなく、この薬剤容器20を通常のポリプロピレンやポリエチレンで形成し、さらにこの容器本体21を構成する表側筐体22及び裏側筐体23の内外周面の面上、あるいは少なくともシート材10に対向配置される内側の面上に対して、上記脂肪族ポリケトンのコーティング処理を施して薬剤容器20を形成することにより、防虫効果を得られる他に低コスト化を図ることも可能である。このような実施形態例を図4に示す。
【0052】
図4は本発明に係る防虫剤の第2実施形態例を示し、図2に示す容器本体の内外周面に脂肪族ポリケトンでコーティングした場合の容器のA−A線断面図である。
【0053】
本実施形態例では、前記実施形態例のように薬剤容器20自体を脂肪族ポリケトンで形成するのではなく、容器本体を構成する表側筐体22及び裏側筐体23の内外周の面上に対し前記脂肪族ポリケトンをコーティングすることにより、容器本体を構成したことが前記実施形態例と異なる点である。
【0054】
具体的には、図4に示すように、容器本体21の例えば裏側筐体23は、一般に使用されるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材26を備え、この基材26の内外周面の両面に対し脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより形成したコーティング層33を有している。また、表側筐体22についても、同様にポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材26の内外周面の両面に脂肪族ポリケトンでコーティングすることによりコーティング層33を形成するようにしても良い。このコーティング層33については、前記表側筐体22及び裏側筐体23の各基材26の少なくともシート材10に対向配置する内側面上の少なくともシート材10との接触部分に設けるように構成すれば良い。
【0055】
以上、説明したように本実施形態例によれば、形成したコーティング層33によって、図4に示すように低価格のポリプロピレンやポリエチレンからなる基材26を気密に被覆することができるため、前記実施形態例と同様の効果が得られる。
【0056】
次に、本発明の防虫剤の第3実施形態例を以下に説明する。
【0057】
図5乃至図7は本発明に係る防虫剤の第3実施形態例を示し、図5はシート材を収納した枠体を薬剤容器に収納するように構成した洋服ダンス用防虫剤の全体構成を示す構成斜視図、図6は図5に示す枠体の断面図、図7はこの枠体のB−B線断面図である。
【0058】
本実施形態例では、薬剤収納体である薬剤容器を改良したもので、さらに該薬剤容器とシート材10bとの接触面積をなくすための枠体43を設け、この枠体43内に前記シート材10bを収納し、この枠体43を前記薬剤容器40内に収容するように構成するとともに、この枠体43自体を前記実施形態例と同様の脂肪族ポリケトンを用いて構成し、さらに枠体43の収納体としての薬剤容器40を構成する表側筐体41及び裏側筐体42がポリプロピレンやポリエチレンからなるように構成したことが、前記実施形態例とは異なる点である。
【0059】
具体的には、図5に示すように、洋服ダンス用防虫剤3は、シート材10bと、このシート材10bを所定位置に保持しながら収納可能な枠体43と、この枠体43を収納する薬剤容器40とで構成されている。
【0060】
シート材10bは、不織布等に含浸されるエムペントリン等の有効成分が揮散することにより防虫能力の効果が得られるもので、枠体43内の収納可能な大きさでシート状に形成されている。またシート材10bの所定位置には、図示はしないが有効成分の有効期間がすぎたことを表示可能なお取り替えサイン表示手段が設けられている。
【0061】
枠体43は、例えばシート材10bの有効成分を吸着しない脂肪族ポリケトン(シェルケミカルズ社製:商品名カリロン)の材質で形成された表側枠体部43aと裏側枠体部43bとで表裏分割した構造になっており、上記シート材10bを内部に収納できるようになっている。この場合、シート材10bは、上記枠体部内部のそれぞれの内周面に設けられた複数のリブ43cによって挟持されることにより、枠体43内部の所定位置に該シート材10bを保持し且つ固定することができるようになっている。
【0062】
さらに詳細に説明すると、図6に示す断面図のように、前記表側枠体部43aと裏側枠体部43bとは、それ自体が前記脂肪族ポリケトンを用いて形成されており、すなわち枠体43自体、この脂肪族ポリケトンで形成されたものとなる。したがって、前記裏側枠体部43bの拡大断面を示すと、図7に示すB−B線断面図のように脂肪族ポリケトンのみで構成されたものとなる。また、前記表側枠体部43aについても同様にそれ自体が脂肪族ポリケトンのみで構成されるようになっている。
【0063】
また、表側枠体部43a及び裏側枠体部43bのそれぞれの面上には、枠体43の内部と外部との間を連通させる連通部としての連通孔43dが形成されるようになっている。これらの連通孔43dは、枠体43の内部からのシート材10bの有効成分が薬剤容器40の揮散孔41b,42a及び覗き窓41aを介して外部へと通過させることを可能にしている。
【0064】
一方、上記構成の枠体43を収納する薬剤容器40は、例えば従来用いられていた低コストなポリプロピレンやポリエチレン等の材質で形成された表側筐体41と裏側筐体42とで表裏分割した構造になっており、前記枠体43を内部に収納できるようになっている。表側筐体41と裏側筐体42とは、2つのヒンジ44を介して二つ折りにでき、またそれぞれの内面には、枠体43内のシート材10bからの有効成分を外部へと揮散するための揮散孔41b,42aが形成されている。
【0065】
表側筐体41には、収容したシート材10bの前記お取り替えサイン表示手段によるお取り替えサインの表示を覗くための覗き窓41aが形成されている。この覗き窓41aは、シート材10bの有効期間をすぎたことを示す表示を見るためのものではあるが、薬剤容器40の内部と外部との間でシート材10bの有効成分を通過させる役割もある。
【0066】
また、表側筐体41,裏側筐体42の開閉端部中央には、一対ずつの互いに係止する係止爪部45aと係止片45bが所定間隔で形成されており、さらに開閉基端部の両側には、一対ずつの互いに嵌合係止する嵌合片46aと嵌合孔46bとが形成されている。したがって、枠体43の収納後にヒンジ44を介して表側筐体41,裏側筐体42のどちらか一方を閉じた場合には、嵌合片46a,嵌合孔46bによって嵌合係止するとともに、係止爪部45a,係止片45bによって係止することにより、表側筐体41と裏側筐体42との閉じた状態を確実に保持し且つ固定することが可能となり、収納した枠体43が外部に出てしまうこともない。
【0067】
フック部30aは、前記表側筐体41から上方へ延設して先端部をこの薬剤容器40側へ向け、この薬剤容器40との先端部との間に脱着口32aを形成している。尚、フック部30aは、弾性を有する部材により適宜肉厚を調整させており、適切な力で弾性変形可能になっている。これにより、脱着口32aの径は可変となる。 上記構成によれば、薬剤容器40の他にシート材10bを収納する枠体43設けたことにより、シート材10bと薬剤容器40との接触面積をなくすことが可能となる。また、この枠体43自体が脂肪族ポリケトンを用いて形成されているため、シート材の有効成分であるエムペントリンの吸着を完全に防止することが可能となり、高い防虫効果が得られる。さらに、薬剤容器40については、繰り返して使用することが可能である他、シート材10bを収納した枠体43のみを詰め替え用として実施すれば、使用上についても大変便利であり、また低コスト化にも寄与する。
【0068】
そこで、このような構成の洋服ダンス用防虫剤3を実際に形成した場合の実験例を下記に示し、他の比較例と比較しながら本実施形態例における効果を説明する。
【0069】
例えば、シェルケミカルズ社製脂肪族ポリケトン(商品名カリロン、グレードDP P1000)を用いて成形した5.6×12cm、厚み1.0cm、重量8.492g、開口面積28cm2 の表裏分割した構造の枠体43の内部に5×11cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン500mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材10b)を収納し、これを洋服ダンスに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量14.943g、開口面積30cm2 の収納体(薬剤容器40)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定した(実験例2)。
【0070】
また、上記の防虫剤との効果を比較するための比較例3として、実験例2と同様に、薬剤含浸体をポリプロピレンを用いた成形した5.6×12cm、厚み1.0cm、重量5.382g、開口面積28cm2 の表裏分割した構造の枠体の内部に5×11cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン500mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材10b)を収納し、これを洋服ダンスに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量14.943g、開口面積30cm2 の収納体(薬剤容器40)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定した。
【0071】
また、比較例4として、実験例2と同様に、薬剤含浸体をポリエチレンを用いて成形した5.6×12cm、厚み1.0cm、重量5.489g、開口面積28cm2 の表裏分割した構造の枠体の内部に5×11cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン500mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材10b)を収納し、これを洋服ダンスに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した6.5×12.5cm、厚み1.2cm、重量14.943g、開口面積30cm2 の収納体(薬剤容器40)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定し、次の表3に示す結果を得ることができた。
【0072】
【表3】
【0073】
上記表3に示す試験結果からも解るように、一般的に用いられるポリプロピレンやポリエチレンの場合、エムペントリンの吸着が認められたが、これに対し、本実施形態例に用いられた脂肪族ポリケトンはエムペントリンの吸着が全く認められなかった。
【0074】
したがって、本実施形態例によれば、エムペントリンを全く吸着しない脂肪族ポリケトンを用いて枠体43を構成するとともに、シート材10bと薬剤容器40との接触を完全遮断しているので、袋体に収容した状態で長期保存した場合や使用時において、前記第1実施形態例と同様に有効成分の吸着による減少を防止することが可能となり、高い防虫効果を得ることが可能となる。
【0075】
また、本発明では、前記第2実施形態例と同様にコスト面を考慮し、枠体43自体を脂肪族ポリケトンのみで形成するのではなく、この薬剤容器40を通常のポリプロピレンやポリエチレンで形成し、さらにこの枠体43を構成する表側枠体部43a及び裏側枠体部43bの内外周面の面上、あるいは少なくともシート材10bに対向配置される内側面上の少なくともシート材10bとの接触部分に上記脂肪族ポリケトンのコーティング処理を施して枠体43を形成することで、防虫効果を得られる他に低コスト化を図ることも可能である。このような実施形態例を図8に示す。
【0076】
図8は本発明に係る防虫剤の第4実施形態例を示し、図6に示す枠体の内外周面に脂肪族ポリケトンでコーティングした場合の枠体のB−B線断面図である。
【0077】
本実施形態例では、前記第3実施形態例のように枠体43自体を脂肪族ポリケトンで形成するのではなく、枠体43を構成する表側枠体部43a及び裏側枠体部43bの内外周面の両面に対し前記脂肪族ポリケトンをコーティングすることにより、枠体を構成したことが前記第3実施形態例とは異なる点である。
【0078】
具体的には、図8に示すように、枠体43の例えば裏側枠体部43bは、一般に使用されるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材47を備え、この基材47の内外周面の両面に対し脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより形成したコーティング層50を有している。また、表側枠体部43aについても、同様にポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材47の内外周面の両面に脂肪族ポリケトンでコーティングすることによりコーティング層50が形成されるようになっている。このコーティング層50については、前記表側枠体部43a及び裏側枠体部43bの各基材47のシート材10bに対向配置する内側面上の少なくともシート材10bとの接触部分に設けるように構成しても良い。
【0079】
以上、説明したように本実施形態例によれば、形成したコーティング層50によって、図8に示すように低価格のポリプロピレンやポリエチレンからなる基材47を気密に被覆することができるため、前記実施形態例と同様の効果が得られる。
【0080】
尚、本実施形態例においては、一般のポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材47の内外周の面上に脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより、枠体43として形成した場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば低価格であるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成される基材と脂肪族ポリケトンとを積層するようにして枠体を形成しても良い。この場合、脂肪族ポリケトン層がシート材に対向するように配置させ、また、最適な防虫効果が得られるように上記脂肪族ポリケトンの肉厚を変化させて形成するようにしても良い。
【0081】
ところで、上記第3及び第4実施形態例では、洋服ダンス用防虫剤3として構成する枠体43と薬剤容器40のうち、枠体43のみが脂肪族ポリケトンを用いて形成されたことについて説明したが、この場合薬剤容器40についても同様に脂肪族ポリケトンを用いて形成することも可能である。このような実施形態例を図9乃至図11に示す。
【0082】
図9及び図10は本発明に係る防虫剤の第5実施形態例を示し、図9は図5に示す薬剤容器自体を脂肪族ポリケトンを用いて構成した場合の容器の断面図、図10はこの容器のC−C線断面図である。
【0083】
本実施形態例では、前記第3及び第4実施形態例において薬剤容器40が一般に使用されるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成されていたのに対し、この薬剤容器40自体を脂肪族ポリケトンを用いて構成したことが異なる点である。
【0084】
具体的には、図9に示す断面図のように、薬剤容器40を構成する表側筐体41と裏側筐体42とは、それ自体が前記脂肪族ポリケトンを用いて形成されており、すなわち薬剤容器40自体、この脂肪族ポリケトンで形成されたものとなる。したがって、前記裏側筐体42の拡大断面を示すと、図10に示すC−C線断面図にように脂肪族ポリケトンのみで構成されたものとなる。また、前記表側筐体41についても同様にそれ自体が脂肪族ポリケトンのみで構成されるようになっている。
【0085】
したがって、本実施形態例によれば、前記第3実施形態例、あるいは前記第4実施形態例にて使用した枠体43を、脂肪族ポリケトンで形成された薬剤容器40に収納することにより、さらに、シート材10bの有効成分であるエムペントリンの非吸着作用を確実なものにでき、結果としてより高い防虫効果を得ることは勿論である。
【0086】
また、本発明では、前記第4実施形態例と同様にコスト面、製造面を考慮し、薬剤容器40自体を脂肪族ポリケトンのみで形成するのではなく、この薬剤容器40を通常のポリプロピレンやポリエチレンで形成し、さらにこの容器40を構成する表側筐体41及び裏側筐体42の内外周面の少なくとも内面上に対して、上記脂肪族ポリケトンのコーティング処理を施して薬剤容器40を形成することで、防虫効果を得られる他に低コスト化を図ることも可能である。このような実施形態例を図11に示す。
【0087】
図11は本発明に係る防虫剤の第6実施形態例を示し、図9に示す薬剤容器の内外周面に脂肪族ポリケトンでコーティングした場合の薬剤容器のC−C線断面図である。
【0088】
本実施形態例では、前記第5実施形態例のように薬剤容器40自体を脂肪族ポリケトンのみで形成するのではなく、薬剤容器40を構成する表側筐体41及び裏側筐体42の内外周面の両面に対し前記脂肪族ポリケトンをコーティングすることにより、薬剤容器40を構成したことが前記第5実施形態例とは異なる点である。
【0089】
具体的には、図11に示すように、薬剤容器40の例えば裏側筐体42は、一般に使用されるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材48を備え、この基材48の内外周面の両面に対し脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより形成したコーティング層60を有している。また、表側筐体41についても、同様にポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材48の内外周面の両面上に脂肪族ポリケトンでコーティングすることによりコーティング層60が形成されるようになっている。このコーティング層60については、前記表側筐体41及び裏側筐体42の各基材48のシート材10bに対向配置する内側面上の少なくともシート材10bとの接触部分に設けるように構成しても良い。
【0090】
以上、説明したように本実施形態例によれば、形成したコーティング層60によって、図11に示すように低価格のポリプロピレンやポリエチレンからなる基材48を気密に被覆することができるため、前記実施形態例と同様に高い防虫効果が得られる。
【0091】
尚、本発明に係る第3乃至第6実施形態例においては、それ自体が脂肪族ポリケトンで形成されまたは基材の内外周面の少なくともシート材との接触部分が脂肪族ポリケトンでコーティングされた枠体と、枠体以外の容器をポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成され、またはそれ自体が脂肪族ポリケトンで形成されまたは基材の内外周面が脂肪族ポリケトンでコーティングされた薬剤容器との組み合わせは、自由に構成することが可能であり、防虫効果やコスト面に応じて最適な防虫効果が得られるよう組み合わせれば良い。
【0092】
また、本発明に係る前記第2,4,6実施形態例においては、一般のポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成された基材の内外周面の少なくともシート材との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより、薬剤容器や枠体として形成した場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば低価格であるポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックで形成される基材と脂肪族ポリケトンとを積層するようにして形成しても良い。この場合、脂肪族ポリケトン層がシート材に対向するように配置させ、また、最適な防虫効果が得られるように上記脂肪族ポリケトンの肉厚を変化させて形成するようにすれば効果的である。
【0093】
ところで、上述した本発明に係る防虫剤の第1乃至第6実施形態例では、洋服ダンス用防虫剤として構成した場合について説明したが、本発明では、上記同様の実施形態を、タンスや衣装箱等に納める引き出し用防虫剤についても適用することも可能であり、この場合も前記洋服ダンス用防虫剤と同様な防虫効果を得ることができる。
【0094】
そこで、実際に前記第1実施形態例と同様に容器自体が脂肪族ポリケトンのみで構成した場合の引き出し用防虫剤と、前記第3実施形態例と同様に薬剤容器が非晶性環状オレフィンポリマーで構成した枠体とこの枠体を収納する収納体とからなるように構成した場合の引き出し用防虫剤とを用いて、それぞれ実験した場合の実験結果を下記に示す。
【0095】
先ず、容器自体が脂肪族ポリケトンのみで構成した場合の引き出し用防虫剤の実験では、
例えば、2×5cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン100mgを均一に含浸させ、この薬剤含浸体(シート材)を引き出しに用いられる防虫剤として、シェルケミカルズ社製脂肪族ポリケトン(商品名カリロン、グレードDP P1000)を用いて成形した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量4.784g、開口面積8cm2 のケース(薬剤容器)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定した(実験例3)。
【0096】
また、上記の防虫剤との効果を比較するための比較例5として、実験例3と同様に、薬剤含浸体をポリプロピレンを用いて成形した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量3.165g、開口面積8cm2 のケースに収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温度槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定した。
【0097】
また、比較例6として、実験例3と同様に、薬剤含浸体をポリエチレンを用いて成形した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量3.228g、開口面積8cm2 のケースに収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア性袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月間放置後のエムペントリンのプラスチックへの吸着量を測定し、次の表4に示す結果を得ることができた。
【0098】
【表4】
【0099】
上記表4に示す試験結果からも解るように、一般的に用いられるポリプロピレンやポリエチレンの場合、エムペントリンの吸着が認められたが、これに対し、本実施形態例に用いられた脂肪族ポリケトンはエムペントリンの吸着が全く認められなかった。
【0100】
したがって、上記構成の引き出し用防虫剤についても、前記第1実施形態例と同様にシート材の有効成分、つまりエムペントリンを全く吸着しない脂肪族ポリケトンを用いて引き出し用防虫剤の薬剤容器を構成しているので、袋体に収容した状態で長期保存した場合や使用時においても、有効成分の吸着による減少を防止することが可能となり、高い防虫効果を得ることが可能となる。これにより、引き出し用防虫剤を構成した場合でも前記第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0101】
また、前記第3実施形態例と同様に枠体を脂肪族ポリケトンで構成した場合の引き出し用防虫剤の実験では、
例えば、シェルケミカルズ社製脂肪族ポリケトン(商品名カリロン、グレードDP P1000)を用いて成形した2.3×5.5cm、厚み1.0mm、重量2.942g、開口面積7.5cm2 の表裏分割した構造の枠体の内部に2×5cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン100mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材)を収納し、これを引き出しに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量3.165g、開口面積8cm2 の収納体(薬剤容器)に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定した(実験例4)。
【0102】
また、上記防虫剤との効果を比較するための比較例7として、実験例4と同様に、薬剤含浸体(シート材)をポリプロピレンを用いて成形した2.3×5.5cm、厚み1.0mm、重量1.863g、開口面積7.5cm2 の表裏分割した構造の枠体の内部に2×5cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン100mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材)を収納し、これを引き出しに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量3.165g、開口面積8cm2 の収納体に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定した。
【0103】
また、比較例8として、実験例4と同様に、薬剤含浸体(シート材)をポリエチレンを用いて成形した2.3×5.5cm、厚み1.0mm、重量1.900g、開口面積7.5cm2 の表裏分割した構造の枠体の内部に2×5cm、厚さ0.5mmのパルプ紙にエムペントリン100mgを均一に含浸させた薬剤含浸体(シート材)を収納し、これを引き出しに用いられる防虫剤としてポリプロピレンで形成した3.0×6.5cm、厚み0.7cm、重量3.165g、開口面積8cm2 の収納体に収納し、塩化ビニリデンコートしたバリア袋に入れ、40℃恒温槽内に1か月放置後の前記枠体のエムペントリン吸着量を測定し、次の表5に示す結果を得ることができた。次の結果を得た。
【0104】
【表5】
【0105】
上記表5に示す試験結果からも解るように、一般的に用いられるポリプロピレンやポリエチレンの場合、エムペントリンの吸着が認められたが、これに対し、本実施形態例に用いられた脂肪族ポリケトンはエムペントリンの吸着が全く認められなかった。
【0106】
したがって、上記構成の引き出し用防虫剤についても、前記第3実施形態例と同様にエムペントリンを全く吸着しない脂肪族ポリケトンを用いて枠体を構成するとともに、シート材と薬剤容器との接触を完全遮断しているので、袋体に収容した状態で長期保存した場合や使用時において、前記第3実施形態例と同様に有効成分の吸着による減少を防止することが可能となり、高い防虫効果を得ることが可能となる。
【0107】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、長期保存、流通、使用時であっても防虫剤の有効成分がケースに吸収されず、成分の有効利用と高い防虫効果を維持することができる。また、一般に使用される低コストなプラスチックと脂肪族ポリケトンとを併用して製造することができるため、防虫剤の低コスト化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防虫剤の第1実施形態例を示し、洋服ダンス用防虫剤の全体構成を示す構成斜視図。
【図2】図1に示す薬剤容器の断面図。
【図3】図2の薬剤容器のA−A線断面図。
【図4】本発明に係る防虫剤の第2実施形態例を示し、脂肪族ポリケトンでコーティングされた場合の図2の薬剤容器のA−A線断面図。
【図5】本発明に係る防虫剤の第3実施形態例を示し、枠体を用いて構成される洋服ダンス用防虫剤の全体構成を示す構成斜視図。
【図6】図5に示す枠体の断面図。
【図7】図6に示す枠体のB−B線断面図。
【図8】本発明に係る防虫剤の第4実施形態例を示し、脂肪族ポリケトンでコーティングされた場合の図6の枠体のA−A線断面図。
【図9】本発明に係る防虫剤の第5実施形態例を示し、一般のプラスチックで形成した場合の図5の薬剤筐体の断面図。
【図10】図9の薬剤筐体のC−C線断面図。
【図11】本発明に係る防虫剤の第6実施形態例を示し、脂肪族ポリケトンでコーティングされた場合の図9の枠体のC−C線断面図。
【符号の説明】
1,3…洋服ダンス用防虫剤、
10,10b…シート材、
20,40…薬剤容器、
21…容器本体、
22…表側筐体、
23…裏側筐体、
24…連通孔、
25…開口部、
30…フック部、
32…脱着口、
33,50,60…コーティング層(脂肪族ポリケトン層)、
26,47,48…基材。
Claims (4)
- 常温揮散性ピレスロイドを含浸した薬剤含浸体を、脂肪族ポリケトンを用いたケースに収納したことを特徴とする防虫剤。
- 前記ケースは、それ自体が少なくとも前記脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の防虫剤。
- 前記ケースは、前記薬剤含浸体を収納して保持する枠体と、この枠体を収納する収納体とで構成され、該枠体が少なくとも脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の少なくとも前記薬剤含浸体との接触部分を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とする請求項1の防虫剤。
- 前記収納体は、少なくともそれ自体が前記脂肪族ポリケトンを有する材料で構成され、または他のプラスチックからなる基材の内外周面を脂肪族ポリケトンでコーティングすることにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の防虫剤。
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