JP3871386B2 - 架橋型水性エマルジョン組成物 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、感圧性粘着剤、紙加工剤及び編織布の仕上げ剤として有用な架橋型水性エマルジョン組成物に関する。特に特定のポリカルボニル化合物と特定のセミカルバジド系硬化剤を用いることにより得られる架橋型水性エマルジョン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コーティング分野において水性エマルジョンは有機溶剤系から水系への転換素材として注目されているが、有機溶剤系コーティング剤と比べ耐水性、耐汚染性、硬度等の点でいまだ十分な物性を示していない。
これらの物性を向上させる目的で、水性エマルジョン中に官能基を導入し架橋塗膜を形成させることが一般的に行われている。
【0003】
架橋塗膜を形成する水性エマルジョンとしては、施工性、作業性等から一液常温硬化とする要求が大きく、その要求に対し近年カルボニル基とヒドラジン基の脱水縮合反応を利用したヒドラゾン架橋系水性エマルジョンが注目されている。
例えば、特公昭46−20053号公報、特公昭58−20991号公報、特開昭57−3850号公報、特開昭57−3857号公報、特開昭58−96643号公報、WO96/01252号パンフレット等では、カルボニル基含有水性エマルジョンに硬化剤として多官能性のカルボン酸ヒドラジド化合物や特定構造を有するセミカルバジド誘導体を添加することにより、低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた被覆組成物が提案されているが、基材に対する密着性、耐水性等が充分なものではなかった。これらの技術に対し、例えば特開昭58−104902号公報、特開昭62−25163号公報、特開平59−8071号公報、特開平51−79102号公報、特開平62−87534号公報、特開平7−26197号公報等では、硬化剤としてカルボン酸ジヒドラジド化合物を用い、カルボニル基含有水性エマルジョンへ親水性カルボニル基含有重合体を導入した被覆組成物が提案されているが、基材に対する密着性、耐水性が充分なものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のヒドラジン誘導体を配合したカルボニル基含有水性エマルジョン組成物の上記欠点を改良すること。すなわち架橋塗膜を形成した場合に、基材に対する密着性が大幅に改善され、さらに優れた耐水性、耐久性および初期光沢性を発現できる架橋性水性エマルジョン組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意検討をかさね、従来では予想しえなかった塗膜の基材に対する密着性、耐水性及び耐溶剤性を発現する本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第一は、ポリカルボニル化合物と、多官能セミカルバジド系硬化剤及び/又はその末端封鎖体〔A〕を固形分重量比率99.1/0.1〜10/90で含む架橋型水性エマルジョン組成物であって、該ポリカルボニル化合物が、カルボニル基含有共重合体〔B〕とポリカルボニル重合組成物〔C〕を固形分重量比率0.001/1〜2.0/1で含む組成物であって、該カルボニル基含有共重合体〔B〕が、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5重量%以上とカルボン酸基含有不飽和単量体を含む単量体混合物を重合して得られる酸価が25mgKOH/g以上であるカルボニル基含有共重合体であり、該ポリカルボニル重合組成物〔C〕が、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5重量%以上とその他の不飽和単量体を含む単量体混合物を重合させた酸価が25mgKOH/g未満の水性エマルジョン組成物であることを特徴とする架橋型水性エマルジョン組成物である。
【0006】
発明の第二は、ポリカルボニル化合物が、ポリカルボニル重合組成物〔C〕と単量体混合物の存在下において、カルボニル基含有共重合体〔B〕を重合形成させた水性エマルジョン組成物〔D〕である発明の第一に記載の架橋型水性エマルジョン組成物である。
発明の第三は、ポリカルボニル化合物が、水性媒体中においてアルカリにより少なくとも一部を可溶化したカルボニル基含有共重合体〔B〕と単量体混合物の存在下、ポリカルボニル重合組成物〔C〕を重合形成させた水性エマルジョン組成物〔E〕である発明の第一に記載の架橋型水性エマルジョン組成物である。
【0007】
発明の第四は、多官能セミカルバジド系硬化剤がポリイソシアネート化合物から誘導されたものである発明の第一〜三のいずれか一つに記載の架橋型水性エマルジョン組成物である。
発明の第五は、多官能セミカルバジド系硬化剤が下式(1)で表される発明の第四に記載の架橋型水性エマルジョン組成物である。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R 1 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR 1 は、炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。R 2 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表す。各R 3 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは0又は1である。l及びmは、各々独立して0または正の整数であり、ただし3≦(l+m)≦20である。)
【0010】
本発明の水性エマルジョン組成物は、一液で保存できるうえ、塗布後は、表面からの水の蒸発に伴い常温で容易に架橋反応をおこすため取り扱いが容易で、かつ塗膜が親水性、疎水性バランスに優れるため、従来にない優れた性能が得られる。
本発明の水性エマルジョン組成物は、特定のポリカルボニル化合物を含むことを要する。具体的には、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5重量%以上とカルボン酸含有不飽和単量体、その他の単量体とを共重合せしめて得られるポリカルボニル化合物を含むことを要する。
【0011】
分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体とは、そのカルボニル基がアルド基またはケト基を含有するエチレン性不飽和単量体をいう。具体的には、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等が挙げられる。ただし、カルボン酸およびエステル類の持つカルボニル基を含有するエチレン性不飽和単量体は除外する。
【0012】
アルド基またはケト基は、重合反応後カルボニル基として架橋反応に関与する。
単量体混合物中のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体は0.5重量%以上であることを要する。好ましくは0.5重量%以上20重量%以下である。
【0013】
単量体混合物中のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体の量が0.5%未満では、架橋点が少なく塗膜性能が不十分となる。
本発明では、カルボン酸基を有する不飽和単量体を共重合して重合体へ酸価を付与し、水溶性を高めることが必要である。
カルボン酸基を持つ不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびイタコン酸、フマール酸、マレイン酸の半エステルなどがある。
【0014】
また、その他の単量体には、エチレン性の不飽和単量体を含むことが望ましい。具体的には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル〔以後単に(メタ) アクリル酸エステルのように表すことがある。〕、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、パーサチック酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、ブタジエン等がある。さらに種々の官能性単量体例えば(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン、(ポリ) オキシエチレンモノ(メタ) アクリレート、(ポリ) プロピレングリコール(メタ) アクリレート、(メタ) アクリル酸アリル、(ポリ) オキシエチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0015】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ) アクリル酸メチル、(メタ) アクリル酸エチル、(メタ) アクリル酸ブチル、(メタ) アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ) アクリル酸シクロヘキシル、(メタ) アクリル酸ドデシル等がある。
ポリカルボニル化合物〔B〕の酸価は25mgKOH/g以上であることを要する。酸価が25mgKOH/g未満では、得られる塗膜の水溶性が低くなるため、塗膜の各種基材に対する密着性、耐溶剤性が不十分となる。
【0016】
好ましくは25mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。
本発明において、カルボニル基含有共重合体〔B〕は、通常の溶液重合によっても得ることができるが、水性媒体中において乳化重合に付すことにより得られる水性エマルジョンであることが好ましい。
本発明の水性エマルジョン組成物では、多官能セミカルバジド系硬化剤及び/又はその末端封鎖体〔A〕を含むことを要する。
【0017】
硬化剤の有する官能基はセミカルバジド基であることを要する。セミカルバジド基を用いることにより、従来のヒドラジド基を用いた場合に比し、塗膜の親水性を減少させ、良好な耐水性を付与することができる。
また、多官能とは、硬化剤の1分子中に含まれるセミカルバジド基となるNCO官能基数が3以上20以下であることをいう。
【0018】
本発明の多官能セミカルバジド系硬化剤は、ポリカルボニル化合物との相溶性の観点から、ジイソシアネート化合物をオリゴマー化して得られる、1分子中にNCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物から誘導されるものを用いることが好ましい。
このようなセミカルバジド硬化剤を含む架橋型水性組成物より得られる塗膜は、高い架橋能力を有し、強靱な皮膜を与えることができる。ポリイソシアネート1分子中のNCO基数が20を超えるとセミカルバジド基の数が過多となるためセミカルバジド系硬化剤の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる。
【0019】
実際には、本発明の硬化剤は様々な官能基数の分子の集合体(組成物)として得られるため、集合体全体としての硬化剤の平均NCO官能基数としては、2.5以上20以下が好ましく、さらに好ましくは3以上20以下である。
官能基数が上記の下限以下では、塗膜の架橋が不十分なために良好な耐水性などが得られない。
【0020】
さらに本発明の多官能セミカルバジド系硬化剤は、下式(1)で表される特定構造のポリイソシアネート化合物から誘導されたものであることが望ましい。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R1 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR1 は、炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。R2 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表す。各R3 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは0又は1である。l及びmは、各々独立して0または正の整数であり、ただし3≦(l+m)≦20である。)
硬化剤のセミカルバジド基の末端は、貯蔵安定性の観点から封鎖されていても良いが、その場合は上記式(1)における末端基H2 NR3 N−の少なくとも1つが下記式(2)で表される封鎖体となる。
【0023】
R5 R4 C=NR3 N− (2)
(式中、R4 、R5 は各々独立して水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリル基をあらわし、R4 とR5 は共同して環状構造を形成していても良い。)。
【0024】
本発明において、前記式(1)で表されるセミカルバジド系硬化剤(1)は、1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物とヒドラジン誘導体とを反応させる事によって得られるものである。1分子中にNCO基を2個持つジイソシアネート化合物とヒドラジン誘導体とを反応させることによって得られる化合物を硬化剤として用いた場合には、得られる皮膜は架橋効率が低くなり、強靱でかつ耐水性に優れた皮膜を得ることができない。
【0025】
本発明において、式(1)で表されるセミカルバジド系硬化剤の製造に用いることのできるポリイソシアネート化合物は、1分子中にNCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物であり、例えば、ジイソシアネート類をビュレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合、アロファネート結合、ウレトジオン結合等によりオリゴマー化したポリイソシアネート化合物、更には1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン及びこれらの併用が挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネート化合物のうち、被覆組成物から生成する皮膜の硬度、耐薬品性、耐熱性等の点から好ましいものとしては、例えば、基本骨格としてイソシアヌレート構造またはビュレット構造を有するものが挙げられる。また、ポリカルボニル化合物等との被覆組成物から得られる皮膜の柔軟性に優れるものとしては、例えば、基本骨格としてウレタン構造を有するものが挙げられる。
【0027】
基本骨格としてイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭55−38380号公報等に記載されているがごときヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭57−78460号公報に記載されているがごときイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとの共重合イソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭57−47321号公報等に記載されているがごとき多官能アルコールで変性されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭64−33115号公報に記載されているがごとき低粘度イソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開平6−312969号公報に記載されているがごとき高分岐型イソシアヌレート型ポリイソシアネート等に代表される、ジイソシアネート化合物を触媒の存在下に環状3量化反応を行い、かつその転化率をおおむね5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%で停止した後、余剰のジイソシアネート化合物を除去精製して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0028】
基本骨格としてビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭53−106797号公報、特開昭55−11452号公報等に記載されているがごときヘキサメチレンジイソシアネート系ビュレット型ポリイソシアネート、特開昭59−95259号公報に記載されているがごときイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとの共重合ビュレット型ポリイソシアネート等に代表される、水、t−ブタノール、尿素等のいわゆるビュレット化剤とジイソシアネートとを、ビュレット化剤/ジイソシアネートが当量比1/2〜1/100、好ましくは1/3〜1/50で反応させた後、余剰のジイソシアネート化合物を除去精製して得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0029】
基本骨格としてウレタン構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭61−28518号公報や特開平4−50277号公報等に記載されているがごときポリカプロラクトンポリオールとジイソシアネートとを−NCO/−OH当量比5〜40で反応させた後、余剰のジイソシアネートを除去精製して得られるウレタン型ポリイソシアネート等が挙げられる。とくに分子量が2000未満である場合には柔軟性に加え、耐水性、耐熱性等に優れたものとなり、なおかつ高い硬度を発現することができる。
【0030】
上記の1分子中にNCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物は、下記のようなジイソシアネート化合物を用いることによって得られる。このようなジイソシアネート化合物としては、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネート化合物である。
【0031】
上記ジイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のアルキレンジイソシアネート;4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等のシクロアルキレンジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のアラルキレンジイソシアネート等、及びこれらの併用が挙げられる。
【0032】
これらジイソシアネート化合物のうち、生成するセミカルバジド系化合物を用いた皮膜の耐熱黄変性、耐候性等の点からアルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネートが望ましい。
上記のポリイソシアネート化合物をヒドラジン又はその誘導体と反応させて多官能セミカルバジド系硬化剤を得る。
【0033】
本発明に用いるヒドラジン誘導体としては、例えばヒドラジン及びその水和物;モノメチルヒドラジン、モノエチルヒドラジン、モノブチルヒドラジン等のモノアルキル置換ヒドラジン化合物;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等のジヒドラジン化合物;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類;トリメリト酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、一般式(3)で表される炭酸ジヒドラジド類、一般式(4)で表されるビスセミカルバジド類等、及びその併用が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、xは0又は1の整数を表す。)
【0036】
【化5】
【0037】
(式中、R8 は直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表す。)
本発明のセミカルバジド系硬化剤の製造において、1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物のNCO基とヒドラジン誘導体中の下式(5)で表される末端基及びこれに由来する封鎖末端基の合計との当量比は1:1.5〜1:100、好ましくは2:5〜1:50である。
【0038】
−NR11NH2 (5)
(式中、R11は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
また反応完了後は、余剰のヒドラジン誘導体は必要に応じ蒸留、抽出等で除去することができる。
本発明においては、セミカルバジド系硬化剤又はその原料であるポリイソシアネート化合物が、ヒドラジンまたはその誘導体の鎖延長により高分子化することを防ぐ目的から、ヒドラジンまたはその誘導体を下式(6)で表されるモノアルデヒドまたはモノケトン等と反応させ、ヒドラゾン基として封鎖して用いることもできる。
【0039】
R9 R10C=O (6)
(式中、R9 、R10は各々独立して水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシル基で置換されている炭素数6〜10のアリール基を表し、R9 、R10は場合によっては共同して環状構造を形成してもよい。)
この場合、生成するセミカルバジド系硬化剤はセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された物となる。セミカルバジド系硬化剤から封鎖剤として用いたモノアルデヒド又はモノケトンの脱離は、ポリカルボニル化合物と混合する前に加水分解して留去しても良いし、そのまま硬化剤として用いて架橋型水性組成物とし、基材表面に塗布した後、硬化過程において自然脱離させても良い。従って、上記封鎖剤としては30〜200℃の沸点を有するモノケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が好ましい。
【0040】
本発明のポリカルボニル化合物は、少なくとも前記のカルボニル基含有重合体〔B〕を含んでいればよいが、さらにポリカルボニル重合組成物〔C〕を含むことは好ましい。
ポリカルボニル重合組成物〔C〕は、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5〜20重量%と、その他の不飽和単量体を含む単量体混合物を重合することにより得られる。
【0041】
ポリカルボニル重合組成物〔C〕の酸価は、カルボニル基含有重合体〔B〕と異なり、25mgKOH/g未満であることが必要で、好ましくは1〜22mgKOH/gである。この範囲以外では、充分な塗膜の耐水性を得ることができない。
ポリカルボニル化合物〔B〕の酸価は25mgKOH/g以上であることを要する。酸価が25mgKOH/g未満では、得られる塗膜の水溶性が低くなるため、塗膜の各種基材に対する密着性、耐溶剤性が不充分となる。
【0042】
この時、カルボニル基含有共重合体〔B〕のポリカルボニル重合組成物〔C〕に対する固形分重量比率は、0.001〜2.0であることが好ましく、0.01〜0.5であることがさらに好ましい。
本発明において、カルボニル基含有共重合体〔B〕とポリカルボニル重合組成物〔C〕を共に含むポリカルボニル化合物を得る方法は特に限定されないが、好ましい方法としては以下に挙げる方法を例示することができる。
【0043】
▲1▼ ポリカルボニル重合組成物〔C〕とカルボニル基含有重合体〔B〕とを各々別々に重合した後、混合することによってポリカルボニル化合物を得る方法。この場合、ポリカルボニル化合物は〔B〕と〔C〕の単純な混合物となる。
▲2▼ ポリカルボニル重合組成物〔C〕と単量体混合物の存在下、カルボニル基含有共重合体〔B〕を重合形成させて水性エマルジョン組成物〔D〕を得る方法。 この場合、水性エマルジョン組成物〔D〕は、ポリカルボニル重合組成物〔C〕の各エマルジョンを中心核として、その周りにカルボニル基含有共重合体〔B〕が重合形成された多層構造エマルジョンの集合から主としてなると考えられる。 なお、カルボニル基含有共重合体〔B〕の形成は、乳化重合によることが望ましい。
【0044】
▲3▼ 水性媒体中において、アルカリによって少なくとも一部を可溶化したカルボニル基含有共重合体〔B〕と単量体混合物の存在下、乳化重合によってポリカルボニル重合組成物〔C〕を形成させて水性エマルジョン組成物〔E〕を得る方法。
この場合、具体的な製造方法としてその態様を示せば、カルボニル基含有共重合体〔B〕を溶液重合後水性媒体中へ水分散化または可溶化処理することによって、あるいは水性媒体中で乳化重合するかまたは乳化重合後可溶化処理することによって、カルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液または水溶液を得、水性媒体中において該カルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液または水溶液と適当な単量体混合物の存在下、乳化重合によってポリカルボニル重合組成物〔C〕を形成させて得られる。
【0045】
この場合、可溶化したカルボニル基含有共重合体〔B〕は一種の界面活性剤として働き、ポリカルボニル重合組成物〔C〕の重合物を乳化・分散する作用を有すると考えられる。
本発明におけるカルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕、水性エマルジョン組成物〔E〕は各々単量体混合物を水性媒体中において乳化重合に付して得られる場合には、その調整方法としては、通常の乳化剤を用いて乳化重合することができる。
【0046】
本発明では、乳化重合用の乳化剤として通常の界面活性剤、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、p−スチレンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤等が用いられるが、本発明の組成物から得られる皮膜の耐水性を向上させるため、界面活性剤の少なくとも一種が、アニオン型反応性界面活性剤すなわち、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボニル基含有共重合体の分散液、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕又は水性エマルジョン組成物〔E〕との固形分重量比として、0.05〜20重量%用いることが好ましい。具体的には、例えば、三洋化成(株)製エレミノール(商標)JS−2、JS−5があり、花王(株)製ラテムル(商標)S−120、S−180A、S−180、第一工業製薬(株)製アクアロン(商標)HS−10、旭電化工業(株)製アデカリアソープ(商標)SE−1025N、メタアクリル酸スルホアルキルエステルの塩、p−スチレンスルホン酸の塩などがあり、これらを単独あるいは二種以上を組み合わせて使用するか、又は通常の界面活性剤あるいはノニオン型反応性界面活性剤と組み合わせて用いる。
【0047】
本発明において、カルボニル基含有共重合体〔B〕、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕または水性エマルジョン組成物〔E〕は、所望により、水性媒体中においてアルカリ及び/または有機溶剤の添加によって一部が可溶化していてもよい。各々の可溶化処理に使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、有機アミン類、アンモニア等が挙げられ、その添加は重合の前でも、重合中でも、重合後であっても良い。また可溶化処理に使用される有機溶剤は、アルカリ添加だけでは水溶化が不充分であるときに補助的に使用しても良いし、有機溶剤だけで可溶化させても良い。使用される有機溶剤としては、とくに限定されるものではないが、具体的にはテキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、グルタル酸ジメチル、グルタル酸イソプロピル等が挙げられる。
【0048】
本発明において、カルボニル基含有共重合体〔B〕、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕、水性エマルジョン組成物〔E〕の可溶化処理し易くするため、分子量を調節する目的で連鎖移動剤を重合過程で添加することも可能である。具体的には、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0049】
本発明におけるラジカル重合触媒としては、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用できる。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)等があり、とくに乳化重合においては水溶性のものが好ましく用いられ、その量としては分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和カルボニル基含有単量体と他の単量体の総量に対して通常0.1〜1重量%配合される。なお、重合速度の促進、さらに低温での重合を望むときには、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いる。
【0050】
本発明のセミカルバジド系硬化剤を得るための反応は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれの条件でも行うことができる。溶媒としては、NCO基に不活性であるか、または反応成分よりも活性の低いものが使用できる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等やその併用が挙げられる。
【0051】
また、式(1)で表されるセミカルバジド系硬化剤及び/又はセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖されたセミカルバジド系硬化剤末端封鎖体の水性媒体中への分散安定性や溶解性を補助する目的で、下記式(7)で表される親水性基含有化合物及びそのセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つとを混合して使用することができる。
【0052】
【化6】
【0053】
(式中、R12は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR12は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表し;
R13は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキルレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表し;各R14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し;nは0又は1であり;p及びqは、各々0または正の整数であり、rは正の整数であり、0≦(p+q)かつ2≦(p+q+r)≦20である。)
上記式(7)で表されるセミカルバジド系硬化剤のセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物は、式(7)における末端基H2 NR14N−の少なくとも1つが、式R5 R4 C=NR14N−で表される封鎖末端基を有している(式中、R4 、R5 は各々独立して水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリル基をあらわし、R4 、R5 は場合によっては共同して環状構造を形成していてもよい。)。
【0054】
即ち、式(1)で表されるセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物をカルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕、又は水性エマルジョン組成物〔E〕用の硬化剤として有利に用いることができる。
【0055】
この本発明のセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体には、上記したようにカルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕、又は水性エマルジョン組成物〔E〕と混合しやすいように、水性媒体中への分散及び水性媒体中への溶解からなる群から選ばれる少なくとも一つの状態であることが好ましい。
【0056】
本発明のセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体には、場合によっては、上記した式(7)で表される親水性基含有化合物及びそのセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物以外の、他の界面活性剤を加えてもよい。このような界面活性剤の例としては、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸、アルキルコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、エチレンオキサイドとリン酸類との公知の反応生成物等のノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤等やそれらの併用が挙げられる。
【0057】
しかし、界面活性剤としては、式(7)で表される親水性基含有化合物及びそのセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物が、セミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体との親和性が高いので特に好ましい。そして特に、式(1)で表されるセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物であって、式(1)で表されるセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとの重量比が、=99/1〜10/90の範囲内の組成物を、カルボニル基含有共重合体〔B〕の水分散液、ポリカルボニル重合組成物〔C〕、水性エマルジョン組成物〔D〕、水性エマルジョン組成物〔E〕の各々組成物の硬化剤として用いると、特に安定で硬化性能に優れた架橋型水性組成物が得られる。
【0058】
本発明の式(1)で表されるセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物を得る具体的方法としては、以下に述べる2通りの方法を例示することができる。
〔i〕1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物と非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物とをNCO基過剰で反応させた後、ヒドラジン誘導体を反応させる方法。
〔ii〕セミカルバジド系硬化剤(1)及び式(7)で表される親水性基含有化合物とを別々に合成し混合する方法。
【0059】
上記の二つの方法を組み合わせて使用することも可能であるし、他の方法を用いても良い。
まず〔i〕の方法について具体的に述べると、1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、前述したセミカルバジド系硬化剤(1)の製造に用いる原料として例記したものが挙げられる。
【0060】
また、〔i〕の方法に用いる非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物のうち非イオン系親水性基としては、例えばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコール、ポリオキシエチレン−オキシテトラメチレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコール等のポリエーテルポリオール類が挙げられるが、好ましくは下記一般式(8)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類が挙げられる。
【0061】
【化7】
【0062】
(式中、R15は炭素数1〜25のアルキル基を表し、nは5〜80の整数を表す。) またイオン系親水性基としては、カルボン酸の3級アミン塩等のアニオン基、4級アンモニウム塩等のカチオン基が挙げられる。
アニオン基(または後にアニオン基に転化させ得る基)を有する活性水素化合物としては、例えばα,α’−ジメチロールプロピオン酸、α,α’−ジメチロール酢酸等のα,α’−ジメチロールアルカン酸類などが挙げられるが、好ましくは乳酸、グリコール酸、4−ヒドロキシ酪酸、P−フェノールカルボン酸等のモノヒドロキシカルボン酸類;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、β−アラニン等のアミノ酸類;P−フェノールスルホン酸等のモノヒドロキシスルホン酸類;タウリン等のアミノスルホン酸類等や、これらの併用が挙げられる。これらの活性水素化合物の酸基は親水性ポリイソシアネート反応物の合成時、あるいは水媒体中への乳化あるいは可溶化時に塩基で中和することによってアニオン基に転化できるが、好ましくは親水性ポリイソシアネート反応物の合成時使用する。具体的に塩基としては、例えばトリエチルアミン、アンモニア、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;KOH、NaOH、LiOH等のアルカリ金属の水酸化物等や、これらの併用が挙げられる。
【0063】
カチオン基(または後にカチオン基に転化させ得る基)を有する活性水素化合物としては、例えばN−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン類等や、それらの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)付加物等が挙げられるが、好ましくはN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等のN,N−ジアルキルモノアルカノールアミン類等、さらにはこれらの併用が挙げられる。これらの活性水素化合物の3級アミノ基は親水性ポリイソシアネート化合物の合成時、あるいは水媒体中への乳化あるいは可溶化時に酸で中和またはアルキル化剤で4級化することによってカチオン基に転化できる。中和に用いる酸としては、例えば酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、硫酸等やこれらの併用が挙げられる。アルキル化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、メチルアイオダイド、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0064】
1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物と非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物との反応は約20℃〜約130℃の温度で実質的に無水の条件下に於いてNCO基とNCO基と反応しうる活性水素基との当量比1.1/1〜500/1、好ましくは2/1〜100/1で行う。
【0065】
また、これらの反応は無溶媒または溶媒中において必要であれば触媒を使用して行うことができる。
上記溶媒としては、NCO基に不活性であるか、または反応成分よりも活性の低いものが使用できる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸エチル、セロソルブアセテト等のエステル系溶媒;t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等やその併用が挙げられる。
【0066】
また上記触媒の具体例としては、例えばジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、オクチル酸鉛等の金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の有機3級アミン類;ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。
〔i〕の方法では、この様にして得られた1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物と非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物との反応物に、セミカルバジド系硬化剤(1)製造における反応条件に準じて前述したヒドラジン誘導体を反応させることによって本発明の式(1)で表されるセミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物を得る。
【0067】
次に〔ii〕の方法について具体的に述べると、式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体は、1分子中にNCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物に前述した非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物、および必要に応じて前述のヒドラジン誘導体を反応させる事によって得られる。
【0068】
上記1分子中にNCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、セミカルバジド系硬化剤(1)の製造に用いる1分子中にNCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物およびその原料として例記したジイソシアネート化合物が挙げられる。
式(7)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体の合成において、1分子中にNCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物と非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化し得るものを含む)親水性基を有する活性水素化合物との反応は、NCO基とNCO基と反応しうる活性水素基との当量比1〜10:1で行なう。その他の反応条件は〔i〕の方法に準ずる。 本発明の架橋型水性組成物において、ポリカルボニル化合物の固形分と、多官能セミカルバジド硬化剤及びその末端封鎖体〔A〕との比率としては、99.1/0.1〜10/90であることが好ましい。
【0069】
本発明の架橋型水性組成物において、可溶化処理と同時あるいは別途水分散体の長期の分散安定を保つためPHを3〜10の範囲に調整することが好ましく、PHを6〜9の範囲に調整することがさらに好ましい。
本発明の組成物には通常水系塗料等に添加配合される成分、例えば増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤等を配合することは任意である。
【0070】
本発明の組成物より得られる塗膜は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、感圧性粘着剤、紙加工剤及び編織布の仕上げ剤として有用であり、とくに塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材として具体的には、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発砲性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、プラスチック用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用である。接着剤としては、例えば自動車内装用接着剤、建築部材用接着剤、各種フィルムのラミネート接着剤等として用いられる金属、プラスチック、木材、スレート、紙、布等に対するウェット接着剤及びコンタクト接着剤等が挙げられる。粘着剤としては、例えば片面テープ、両面テープ、ラベル、アルバム等に使用される永久粘接着剤、再剥離粘着剤等が挙げられる。
【0071】
【発明の実施の形態】
以下に、参考例、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。
なお例中の部および%は重量表示である。
実施例中に用いられる各種測定の測定方法は、下記の通りである。
▲1▼ 分子量分布:
ゲルパーミィテーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
【0072】
▲2▼ 赤外線吸収スペクトルは、JASCO FT/IR−5300(日本分光(株)製)で測定した。
▲3▼ 皮膜の耐溶剤性は、各実施例または比較例のエマルジョンと硬化剤との混合物について配合Aに従い成膜助剤を混合し、この配合物をアプリケータを用いて0.25mmの厚みになるようガラス板上に塗布し、室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な皮膜を得た。皮膜は200メッシュの金網製の袋に入れた後、トルエン中に室温にて24時間浸漬後、フィルム重量の保持率を、(トルエン浸漬後のフィルム重量)÷(トルエン浸漬前のフィルム重量)×100として求めた。
▲4▼ 皮膜の耐水性は、各実施例または比較例のエマルジョン硬化剤との混合物について配合Aに従い成膜助剤を混合し、この配合物をアプリケータを用いて0.10mmの厚みになるようガラス板上に塗布し、室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な皮膜を得た。ガラス板上に成膜したままの皮膜を50℃の水中にて8時間浸漬後、皮膜の状態を目視にて観察した。
【0073】
▲5▼ PP板密着性(PP密着)
各実施例または比較例のエマルジョンと硬化剤との混合物を、配合Aに従い成膜助剤を配合し、この配合物がワイヤコータを用いて乾燥膜厚が0.25mmの厚みになるようポリプロピレン板(PP板と略称)上に塗布する。室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な皮膜を得た。この試験体について粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標))を用いてはく離試験を行い、はく離状態を観察した。
【0074】
▲6▼ 初期光沢値、光沢保持率
各実施例または比較例のエマルジョンと硬化剤との混合物について、下記の配合Bによって得られた塗料をワイヤコータNo.50を用いて、硫酸アルマイト板に塗布し、室温30日間乾燥させる。そのときの60度60度鏡面反射率を初期光沢値として測定した(これをゼロ時間とする。)。引き続きサンシャイン型ウエザオメータ(スガ試験機(株)製、製品名:WELSUNDC)を使用して暴露試験(降雨サイクル;12分/時間、ブラックパネル温度60〜66℃)を行なった。暴露1500時間後の60度60度鏡面反射率を光沢値を測定し、初期光沢値で割ることで光沢保持率を算出した。
▲7▼ 塗料化された皮膜の耐水性
配合Bの上記塗料をワイヤコーターNo.50を用いて、硫酸アルマイト板に塗布し、室温で2時間乾燥した。さらに50℃で2日間乾燥させた後、40℃の水に30日間浸漬しその状態を目視にて判定した。
【0075】
【0076】
【参考例1】
カルボニル基含有共重合体の水分散液の調製に関し、エマルジョン(1)の合成を行った。かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸メチル44部、アクリル酸ブチル45部、水300部、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラテムルS−180A、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つもの、花王(株)製)の20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックス(酸価:52mgKOH/g)が調製され、水素イオン濃度を測定したところPH1.8であった。次に、メタクリル酸32部、ジアセトンアクリルアミド12部、メタクリル酸メチル176部、アクリル酸ブチル180部の混合液(酸価:52mgKOH/g)と、水330部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ1.8であった。水500部を添加後、25%アンモニア水溶液を添加してPH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.02%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は30.0%であった。
【0077】
【参考例2】
カルボニル基含有エマルジョン組成物の調製に関し、エマルジョン(2)の合成を行った。かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水230部、ラテムルS−180Aの20%水溶液5部を投入し、反応容器内を80℃とする。次に、メタクリル酸10部、ジアセトンアクリルアミド15部、メタクリル酸メチル250部、アクリル酸ブチル225部の混合液(酸価:13mgKOH/g)と、水400部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.5部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より4時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.1であった。25%アンモニア水溶液を添加してPH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.15%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は43.0%、平均粒子径1180Åであった。
【0078】
【参考例3】
水性エマルジョン組成物の調製に関し、エマルジョン(3)の合成を行った。かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水230部、ラテムルS−180Aの20%水溶液5部を投入し、反応容器内を80℃とする。次に、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド12部、メタクリル酸メチル200部、アクリル酸ブチル180部の混合液(酸価:13mgKOH/g)と、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液16部、過硫酸アンモニウム1.2部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入後は反応容器中の温度を80℃に保つ。続いて、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸メチル44部、アクリル酸ブチル45部の混合液(酸価:52mgKOH/g)と、水100部、ラテムルS−180Aの20%水溶液4部、過硫酸アンモニウム0.3部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より1時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ1.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してPH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.15%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は43.0%、平均粒子径1240Åであった。
【0079】
【参考例4】
水性組成物の調製に関し、エマルジョン(4)の合成を行った。かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸メチル44部、アクリル酸ブチル45部の混合液(酸価:52mgKOH/g)、及び水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。25%アンモニア水溶液を添加してPH7にする。次に、メタクリル酸3部、ジアセトンアクリルアミド12部、メタクリル酸メチル205部、アクリル酸ブチル180部の混合液(酸価:5mgKOH/g)と、水330部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ4.0であった。25%アンモニア水溶液を添加してPH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.02%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は43.0%、平均粒子径1080Åであった。
【0080】
【参考例5】
カルボニル基含有エマルジョン組成物の調製に関し、エマルジョン(5)の合成を行った。かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水230部、ラテムルS−180Aの20%水溶液5部を投入し、反応容器内を80℃とする。次に、アクリル酸5部、ジアセトンアクリルアミド50部、スチレン220部、アクリル酸2エチルヘキシル225部の混合液(酸価:8mgKOH/g)と、水400部、ラテムルS180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.5部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より4時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.1であった。25%アンモニア水溶液を添加してPH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.15%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は43.0%、平均粒子径1180Åであった。
【0081】
【参考例6】
ポリイソシアネート化合物の調製に関し、ポリイソシアネート化合物Aの合成を行った。
イソホロンジイソシアネート222部、ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水2.4部を、エチレングリーコルメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(重量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1.5時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のイソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、および溶媒を留去回収した。
【0082】
得られたポリイソシアネート化合物Aは、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートのコビュウレット型ポリイソシアネートであり、残存イソホロンジイソシアネートが0.7重量%、残存ヘキサメチレンジイソシアネート0.1重量%、NCO含有量は19.6重量%、粘度は20000(±3000)mPa.s/40°、数平均分子量は約800(±100)であり、平均NCO官能基数は約3.7であった。ポリイソシアネート化合物Aは酢酸エチルで79.6%の溶液とした。
【0083】
次にポリイソシアネート化合物Bの合成を行った。
ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(重量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネート、および溶媒を留去回収し、残留物を得た。
【0084】
得られた残留物は、99.9重量%のポリイソシアネートB(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネート)および0.1重量%の残存ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいた。得られた残留物の粘度は1900(±200)mPa.s/25°、数平均分子量は約600(±100)であり、平均NCO官能基数は約3.3、NCO基含有量は23.3重量%であった。
【0085】
【参考例7】
セミカルバジド系硬化剤又はその末端封鎖体の調製に関し、セミカルバジド系硬化剤及びその末端封鎖体A1の合成を行った。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にアセトン23部、参考例6で得たポリイソシアネート化合物A(79.6%酢酸エチル溶液、NCO基含量15.6重量%)23部、ポリオキシエチレンメチルエーテル(製品名:ユニオックスM1000、日本油脂(株)製、水酸基価56.9のもの)10部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.001部を入れ60℃にて4時間反応した。次に還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に入れたアセトン421部にヒドラジン1水和物74部を撹拌しながら30分かけて室温で添加した後更に1時間撹拌した。この反応液に先に得られた反応物を40℃にて撹拌しながら1時間かけて添加しその後更に40℃にて4時間撹拌した。その後1183部の水を30分かけて40℃で添加しさらに30分撹拌を続けた。得られた反応液中のアセトン、酢酸エチル、ヒドラジン、アセトンとヒドラジンの反応物、水等を加熱減圧下に留去することにより固形分25%のセミカルバジド系組成物の水分散体を得た。
【0086】
このものの赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
得られたセミカルバジド組成物の水分散体50部(固形分10部)にシクロヘキサノン100部を添加し150rpmにて5時間振とうした後、10000rpmにて10分間遠心分離を行った。下層の水相には親水基としてポリオキシエチレンメチルエーテル基が導入されたポリイソシアネートA骨格を有する親水性基含有化合物が6.7部存在し、上層のシクロヘキサノン相にはポリイソシアネートA骨格を有するセミカルバジド系硬化剤及びその末端封鎖体が3.3部存在した。
【0087】
次にセミカルバジド系硬化剤A2の合成を行った。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にテトラハイドロフラン22部、ポリイソシアネートA(79.6%酢酸エチル溶液、NCO基含量156重量%)23部、ポリオキシエチレンメチルエーテル(製品名:ユニオックスM1000、日本油脂(株)製、水酸基価56.9のもの)10部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.001部を入れ60℃にて4時間反応した。次に還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に入れたテトラハイドロフラン147部にヒドラジン1水和物7.3部を撹拌しながら30分かけて室温で添加した後更に1時間撹拌した。この反応液に先に得られた反応物を10℃にて撹拌しながら1時間かけて添加しその後更に40℃にて4時間撹拌した。その後182部の水を30分かけて40℃で添加しさらに30分撹拌を続けた。得られた反応液中のテトラハイドロフラン、酢酸エチル、ヒドラジン、水等を加熱減圧下に留去することにより固形分30%のセミカルバジド系硬化剤の水分散体を得た。
【0088】
このものの赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
さらにセミカルバジド系硬化剤Bの合成を行った。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にイソプロピルアルコール1000部にヒドラジン1水和物80部を撹拌しながら約30分かけて室温で添加した後、、ポリイソシアネートB(NCO基含量23.3重量%)144部をテトラヒドロフラン576部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続け、1000部の水を添加した。続いて得られた反応液中のイソプロピルアルコール、ヒドラジン、テトラヒドロフラン、水等を加熱減圧下に留去することにより168部のビウレット構造を有するセミカルバジド誘導体を得た。このものの赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0089】
【実施例1】
参考例1で合成したエマルジョン(1)25部と参考例2で合成したエマルジョン(2)75部とを混合した後、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤及びその末端封鎖体(A1)の固形分濃度30%の水分散体10.5部を添加し、室温で30分混合した後、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0090】
【実施例2】
参考例1で合成したエマルジョン(1)25部と参考例2で合成したエマルジョン(2)75部とを混合した後、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(A2)の固形分濃度25%の水分散体10.5部を添加し、室温で30分混合した後、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0091】
【実施例3】
参考例1で合成したエマルジョン(1)25部と参考例2で合成したエマルジョン(2)75部とを混合した後、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体5.3部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0092】
【比較例1】
参考例1で合成したエマルジョン(1)25部と参考例2で合成したエマルジョン(2)75部とを混合した後、アジピン酸ジヒドラジドの5%水溶液124部を添加し、室温で30分混合した後、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0093】
【比較例2】
参考例2で合成したエマルジョン(2)100部に参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体5.7部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0094】
【実施例4】
参考例3で合成したエマルジョン(3)100部を、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体5.7部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0095】
【実施例5】
参考例4で合成したエマルジョン(4)100部を、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体5.7部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表1に示す。
【0096】
【実施例6】
参考例5で合成したエマルジョン(5)90部と参考例1で合成したエマルジョン(1)10部とを混合した後、参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体18部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表2に示す。
【0097】
【比較例3】
参考例5で合成したエマルジョン(5)100部に参考例7で得たセミカルバジド系硬化剤(B)の固形分濃度25%の水分散体19部を添加し、室温で30分混合し、配合A又は配合Bに従って配合物とした後、各試験に供した。その結果を表2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【発明の効果】
本発明の架橋型水性エマルジョン組成物は一液で保存かつ使用でき、その皮膜は架橋密度が高く強靭で耐熱性、耐薬品性、耐水性、耐候性、密着性、初期光沢、光沢保持性等に優れており、かつ比較的低温で得ることができる。
従って、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、感圧性粘着剤、紙加工剤、又は編織布の仕上げ剤等の各種用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物の1例の赤外線吸収スペクトル図である。
【図2】本発明の化合物の他の例の赤外線吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の化合物の他の例の赤外線吸収スペクトル図である。
Claims (5)
- ポリカルボニル化合物と、多官能セミカルバジド系硬化剤及び/又はその末端封鎖体〔A〕を固形分重量比率99.1/0.1〜10/90で含む架橋型水性エマルジョン組成物であって、該ポリカルボニル化合物が、カルボニル基含有共重合体〔B〕とポリカルボニル重合組成物〔C〕を固形分重量比率0.001/1〜2.0/1で含む組成物であって、該カルボニル基含有共重合体〔B〕が、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5重量%以上とカルボン酸基含有不飽和単量体を含む単量体混合物を重合して得られる酸価が25mgKOH/g以上であるカルボニル基含有共重合体であり、該ポリカルボニル重合組成物〔C〕が、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和単量体0.5重量%以上とその他の不飽和単量体を含む単量体混合物を重合させた酸価が25mgKOH/g未満の水性エマルジョン組成物であることを特徴とする架橋型水性エマルジョン組成物。
- ポリカルボニル化合物が、ポリカルボニル重合組成物〔C〕と単量体混合物の存在下において、カルボニル基含有共重合体〔B〕を重合形成させた水性エマルジョン組成物〔D〕である請求項1に記載の架橋型水性エマルジョン組成物。
- ポリカルボニル化合物が、水性媒体中においてアルカリにより少なくとも一部を可溶化したカルボニル基含有共重合体〔B〕と単量体混合物の存在下、ポリカルボニル重合組成物〔C〕を重合形成させた水性エマルジョン組成物〔E〕である請求項1に記載の架橋型水性エマルジョン組成物。
- 多官能セミカルバジド系硬化剤がポリイソシアネート化合物から誘導されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋型水性エマルジョン組成物。
- 多官能セミカルバジド系硬化剤が下式(1)で表される請求項4に記載の架橋型水性エマルジョン組成物。
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