JP4012603B2 - ヒドラジン誘導体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ剤等として有用な組成物に関し、具体的には、ヒドラジン誘導体組成物及びそれを用いたクリアーコート剤、トップコート剤、塗料、アンダーコート剤、布や紙の含浸剤、接着剤等として各種用途に利用することができる優れた被覆組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コーティング分野において水性エマルジョンは有機溶剤系から水系への転換素材として注目されているが、有機溶剤系コーティング剤と比べ耐水性、耐汚染性、硬度等の点でいまだ十分な物性を示していない。これらの物性を向上させる目的で、水性エマルジョン中に官能基を導入し架橋塗膜を形成させることが一般的に行われている。
【0003】
架橋塗膜を形成する水性エマルジョンとしては、施工性、作業性等から一液常温硬化型に対する要求が大きく、その要求に対し近年カルボニル基とヒドラジン基の脱水縮合反応を利用したヒドラゾン架橋系水性エマルジョンが注目されている。例えば、特公昭46−20053号公報、特開昭57−3850号公報、特開昭57−3857号公報、特開昭58−96643号公報、特開平4−249587号公報、WO96/01252号パンフレット等ではカルボニル基含有水性エマルジョンに硬化剤として多官能性のカルボン酸ヒドラジド化合物や特定構造を有するセミカルバジド誘導体を添加することにより、低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた被覆組成物が提案されている。
【0004】
しかし、硬化剤である多官能性のカルボン酸ヒドラジド化合物は親水性のコントロールが困難であるという欠点を有している。すなわち、アジピン酸ジヒドラジドのごとき親水性の高い化合物を硬化剤として用いた場合、生成する塗膜の耐水性が非常に悪い。逆にセバシン酸ジヒドラジドのごとき親水性の低い化合物は、水性エマルジョンの硬化剤としての使用が困難である。
【0005】
また、セミカルバジド誘導体をカルボニル基含有水性エマルジョンの硬化剤として用いる場合においても、セミカルバジド誘導体の親水性をコントロールすることが、低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を形成する為に必要な技術のポイントであるが、いまだ十分な性能が得られる技術は開発されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を形成することができる、ヒドラジン誘導体組成物及びそれらを用いた被覆組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明の第1は、ヒドラジン残基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジン化合物と、式(2)又は式(4)で表されるケトン酸及び/又はその塩との混合物であり、ポリヒドラジン化合物中のヒドラジン残基に対するケトン酸中のケト基の比が、(ケト基)/(ヒドラジン残基)モル比で0.001〜10であるヒドラジン誘導体組成物。
【化4】
{R 4 は、水素原子、フェニル基、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。R 5 は、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。pは、0又は1を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は式(3)で表される置換アンモニウムを表す。
HNR 6 R 7 R 8 (3)
(R 6 、R 7 、R 8 は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R 6 とR 7 、R 7 とR 8 、R 6 とR 7 とR 8 は、それぞれ共同して環状構造を形成しても良い。)}
【化5】
{R 9 、R 10 は、各々独立して、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。q、rは、各々0又は1を表す。Y、Zは、各々独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は式(3)で表される置換アンモニウムを表す。
HNR 6 R 7 R 8 (3)
(R 6 、R 7 、R 8 は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R 6 とR 7 、R 7 とR 8 、R 6 とR 7 とR 8 は、それぞれ共同して環状構造を形成しても良い。)}
である。
【0008】
発明の第2は、ポリヒドラジン化合物が、式(1)で表されるセミカルバジド誘導体組成物である発明の第1に記載のヒドラジン誘導体組成物である。
【0009】
【化6】
【0010】
(式中、R1 は、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数5〜25のシクロアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR1 は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。
【0011】
R2 は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。R3 は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜10のアリーレン基を表す。nは、0又は1を表す。l及びmは、各々0又は正の整数を表す。ただし、20≧(l+m)≧3である。)
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
発明の第3は、発明の第1〜2のいずれかに記載のヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を含有し、ヒドラジン誘導体組成物(A)とポリカルボニル化合物(B)及び/又はポリエポキシ化合物(C)の固形分重量比が(A)/((B)+(C))=0.1/99.9〜90/10である被覆組成物である。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明において、ヒドラジン残基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジン化合物とは、1分子中に式(6)で表されるヒドラジン残基を2個以上有する化合物を表す。
−NR2 NH2 (6)
(式中、R2 は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
ヒドラジン残基を1分子中に1個しか有しないモノヒドラジン化合物は、後で述べるポリカルボニル化合物等に対する架橋能力が無いか、あるいは非常に小さいため好ましくない。
【0021】
なお、本発明では、ヒドラジンはモノヒドラジン化合物の範疇と見なす。上記ポリヒドラジン化合物としては、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、または式(7)で表される炭酸ポリヒドラジド類等が挙げられる。
【0022】
【化7】
【0023】
(式中xは0〜20の整数を意味する。)
ポリヒドラジド化合物の具体例としては、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリト酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類及び式(8)で表されるがごとき数平均分子量が500〜500000の酸ヒドラジド系ポリマー等やそれらの併用が挙げられる。
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、Xは水素原子またはカルボキシル基であり、Yは水素原子またはメチル基であり、Aはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸から選ばれる単量体の重合した単位であり、Bはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸と共重合可能な単量体の重合した単位である。また、l、m及びnは下記の各式を満足する各構成成分のモル分率を示す。
【0026】
2モル%≦l≦100モル%
0モル%≦m+n≦98モル%
l+m+n=100モル%
また、上記酸ヒドラジド系ポリマーは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。)
上記ポリヒドラジド化合物の中で、難水溶性のポリヒドラジド化合物が、被覆用組成物の硬化剤として用いた場合、耐水性に優れた皮膜を得ることができるので好ましい。ここで難水溶性とは、25℃における水100gに対する溶解度が1g以下であることとする。
【0027】
本発明に係わるポリヒドラジン化合物の中で、ヒドラジン残基の耐加水分解性が良好であることから、ポリセミカルバジド化合物が最も好ましい。該ポリセミカルバジド化合物の具体例としては、式(1)で表されるセミカルバジド誘導体、式(9)で表されるビスセミカルバジド類等が挙げられる。
【0028】
【化9】
【0029】
(式中、R1 は、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数5〜25のシクロアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR1 は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。
【0030】
R2 は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。R3 は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜10のアリーレン基を表す。nは、0又は1を表す。
【0031】
l及びmは、各々0又は正の整数を表す。ただし、20≧(l+m)≧3である。)
【0032】
【化10】
【0033】
(式中、R13は、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20の2価の脂肪族残基、炭素数6〜25の2価の脂環族残基、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香族残基、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香脂環族残基を表す。R2 は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
上記ポリセミカルバジド化合物の中で、式(1)で表されるセミカルバジド誘導体は、被覆用組成物の硬化剤として用いた場合、多官能の上、後で述べるポリカルボニル化合物等に対する相溶性が良好なため、架橋能力が高く、強靭でかつ耐水性に優れた皮膜を得ることができるので非常に好ましい。
【0034】
式(1)で表されるセミカルバジド誘導体は、1分子中に−NCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物とヒドラジン誘導体とを反応させる事によって得られる。該1分子中に−NCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物をビュレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合、アロファネート結合、ウレトジオン結合等を形成することによりオリゴマー化したポリイソシアネート化合物、及びこれらの併用が挙げられる。
【0035】
上記ジイソシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のアルキレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等のシクロアルキレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のアラルキレンジイソシアネート等、及びこれらの併用が挙げられる。
【0036】
これらジイソシアネート化合物のうち、生成するセミカルバジド誘導体を含有する組成物を用いた皮膜の耐熱黄変性、耐候性等の向上の点からアルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネートが望ましい。更に、上記したポリイソシアネート化合物以外にも、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン等の、炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート等を挙げることができるが、後述するポリカルボニル化合物等との相溶性の観点から、前述した、ジイソシアネート化合物をオリゴマー化して得られるポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0037】
本発明において上記1分子中に−NCO基を3個以上有するポリイソシアネート化合物を用いて合成したセミカルバジド誘導体は、多官能となるため架橋密度が高く強靭な皮膜を与えることができるが、1分子中のセミカルバジド基の数が多くなりすぎると生成するセミカルバジド誘導体の粘度が高くなり取り扱いが困難となる。従って、セミカルバジド誘導体の合成に用いるポリイソシアネート化合物の1分子中の−NCO基の数は3〜20個が好ましい。
【0038】
これらのポリイソシアネート化合物のうち、それから誘導されるセミカルバジド誘導体が、後述するポリカルボニル化合物等との相溶性に優れ、該セミカルバジド誘導体を含有してなる被覆組成物から生成する皮膜の硬度、耐薬品性、耐熱性等の点から好ましいものとしては、例えば、基本骨格としてイソシアヌレート構造またはビュレット構造を有するものが挙げられる。また、ポリカルボニル化合物等との被覆組成物から得られる皮膜の柔軟性に優れるものとしては、例えば、基本骨格としてウレタン構造を有するものが挙げられる。
【0039】
基本骨格としてイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭55−38380号公報等に記載されているがごときヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭57−78460号公報に記載されているがごときイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとの共重合イソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭57−47321号公報等に記載されているがごとき多官能アルコールで変性されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開昭64−33115号公報に記載されているがごとき低粘度イソシアヌレート型ポリイソシアネート、特開平6−312969号公報に記載されているがごとき高分岐型イソシアヌレート型ポリイソシアネート等に代表される、ジイソシアネート化合物を触媒の存在下に環状3量化反応を行い、かつその転化率をおおむね5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%で停止した後、余剰のジイソシアネート化合物を除去精製して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0040】
基本骨格としてビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭53−106797号公報、特開昭55−11452号公報等に記載されているがごときヘキサメチレンジイソシアネート系ビュレット型ポリイソシアネート、特開昭59−95259号公報に記載されているがごときイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとの共重合ビュレット型ポリイソシアネート等に代表される、水、t−ブタノール、尿素等のいわゆるビュレット化剤とジイソシアネートとを、ビュレット化剤/ジイソシアネートが当量比1/2〜1/100、好ましくは1/3〜1/50で反応させた後、余剰のジイソシアネート化合物を除去精製して得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0041】
基本骨格としてウレタン構造を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば特開昭61−28518号公報や特開平4−50277号公報等に記載されているがごときポリカプロラクトンポリオールとジイソシアネートとを−NCO/−OH当量比5〜40で反応させた後、余剰のジイソシアネートを除去精製して得られるウレタン型ポリイソシアネート等が挙げられる。とくに分子量が2000未満である場合には柔軟性に加え、耐水性、耐熱性等に優れたものとなり、なおかつ高い硬度を発現することができる。
【0042】
ポリイソシアネート化合物と反応させるヒドラジン誘導体としては、例えばヒドラジン及びその水和物、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン等のモノアルキルヒドラジン、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等のジヒドラジン化合物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類、トリメリト酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、下記一般式(7)で表される炭酸ポリヒドラジド類、または下記一般式(9)で表されるビスセミカルバジド類等、及びそれらの併用が挙げられる。
【0043】
【化11】
【0044】
(式中xは0〜20の整数を意味する)
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、R13は、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20の2価の脂肪族残基、炭素数6〜25の2価の脂環族残基、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香族残基、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香脂環族残基を表す。R2 は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
上記セミカルバジド誘導体の製造において、前述したポリイソシアネート化合物のNCO基と、ヒドラジン誘導体中の−NHNH2 基または−NHNH2基に転化し得る基との当量比は、1:1.2〜100、好ましくは1:2〜80、さらに好ましくは1:4〜50である。当量比が1:1.2未満である場合は、生成物が高分子量化し、粘度の上昇が著しく好ましくない。また1:100より大きくなると未反応のヒドラジン誘導体が多く存在し好ましくない。
【0047】
セミカルバジド誘導体を製造後、余剰のヒドラジン誘導体は必要に応じ蒸留、抽出等で除去することができる。またセミカルバジド組成物は、無溶媒または溶媒中で製造できる。溶媒としては、NCO基に不活性であるか、または反応成分よりも活性の低いものが使用できる。溶媒はセミカルバジド組成物中に残存しても良いが、常圧あるいは減圧下で加熱し蒸留除去することもできる。
【0048】
本発明におけるケトン酸としては、式(10)で表されるモノケトンモノカルボン酸類、式(11)で表されるモノケトンジカルボン酸類、及びそれらの併用等が挙げられる。
【0049】
【化13】
【0050】
(R4 は、水素原子、フェニル基、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。R5 は、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。pは0又は1を表す。)
【0051】
【化14】
【0052】
(R9 、R10は、各々独立して、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。q、rは、各々0又は1を表す。)
モノケトンカルボン酸類の具体例としては、例えばピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、トリメチルピルビン酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ケトカプリン酸、ケトウンデカン酸、ケトステアリン酸、ケトヘンエイコセン酸、ベンゾイル酢酸、ベンゾイルプロピオン酸、ケトグリコン酸等が挙げられる。
【0053】
モノケトンジカルボン酸の具体例としては、例えばケトマロン酸、アセトンジカルボン酸、2−ケトグルタル酸、アセトンジ酢酸、アセトンジプロピオン酸等が挙げられる。ケトン酸の塩は、上記ケトン酸を塩基で中和することにより得ることができる。中和に用いる塩基としては、例えばKOH、NaOH、LiOH等のアルカリ金属の水酸化物、式(3)で表されるアミン類等や、これらの併用が挙げられる。
【0054】
NR6 R7 R8 (3)
(R6 、R7 、R8 は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R6とR7 あるいは、R6 とR7 とR8 は、共同して環状構造を形成しても良い。)
上記アミン類の具体例としては、例えばアンモニア、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0055】
本発明では、上述したポリヒドラジン化合物とケトン酸及び/又はその塩とを混合物とする事により、親水性を大きくコントロールできるヒドラジン誘導体組成物を得る。ただし、本発明に用いるケトン酸を、例えばレブリン酸ビニルの如きエステル誘導体や、トリメチルピルビン酸アミドの如きアミド誘導体とするとポリヒドラジン化合物に対する親水性のコントロール効果が消失するため好ましくない。同様に、ケトン酸の替わりにケトンのカルボニル基を有さない酢酸、酪酸等のカルボン酸を用いてもポリヒドラジン化合物の親水性をコントロールする事はできない。
【0056】
ポリヒドラジン化合物とケトン酸を混合することにより、例えばケトン酸としてモノケトンモノカルボン酸類を用いた場合、下記の平衡反応が生じ、ポリヒドラジン化合物にカルボキシル基あるいはその塩が導入され、得られるヒドラジン誘導体組成物の親水性がコントロールできるものと推定される。
【0057】
【化15】
【0058】
上記平衡式から判るように、本発明のヒドラジン誘導体組成物の親水性のコントロールには、ポリヒドラジン化合物とケトン酸の混合比と共に、ヒドラジン誘導体組成物中のH2O濃度も大きく影響する。すなわち、H2O濃度が小さいと上記平衡式は生成系にずれ、ポリヒドラジン化合物へのカルボキシル基あるいはその塩の導入量が増加し、結果としてヒドラジン誘導体組成物の親水性は増大する。逆に、H2O濃度が大きいとヒドラジン誘導体組成物の親水性は減少する事になる。本発明において、ヒドラジン誘導体組成物中のH2O濃度は、親水性のコントロールを目的に任意に設定することができる。
【0059】
例えば、水溶液中においてヒドラジン誘導体組成物の親水性を増加させたい場合、その固形分を0.1%以上の水溶液とするのが好ましい。本発明のヒドラジン誘導体組成物において、ポリヒドラジン化合物とケトン酸及び/又はその塩の混合は任意の割合で行うことができるが、ポリヒドラジン化合物中のヒドラジン残基に対するケトン酸中のケト基の比が、(ケト基)/(ヒドラジン残基)モル比で0.001〜10の範囲である。
【0060】
またポリヒドラジン化合物とケトン酸との混合は、任意の温度範囲において、無溶媒または溶媒中で行うことができる。上記溶媒の具体例としては、水、t−ブタノール、イソプロパノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等やその併用が挙げられる。
【0061】
本発明のヒドラジン誘導体組成物は、必要に応じ界面活性剤を添加しても良い。添加できる界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、高級アルキルスルフォン酸、スルフォン酸アルキルアリル、スルフォン化ひまし油、スルフォこはく酸エステル、アルケニルコハク酸等の塩に代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤等やそれらの併用が挙げられる。
【0062】
上記界面活性剤のうち、アルケニルコハク酸及び/又はその塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)の添加はヒドラジン誘導体組成物の水溶性、或いは水分散性を大幅に向上させることができるため好ましい。これらの具体例としては、例えば、ラテムルASK、ラテムルDSK(商品名)(花王(株)製)等がある。
【0063】
本発明で得られるヒドラジン誘導体組成物は、水への分散性あるいは溶解性等のコントロール性が良好であり、ポリカルボニル化合物やポリエポキシ化合物に対する反応性を有しているため、従来では達し得なかった耐水性や各種硬化性能を発現できる。したがって本発明のヒドラジン誘導体組成物は、ポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物用硬化剤として有用なものである。
【0064】
ここで、ポリカルボニル化合物とは、1分子中にケト基若しくはアルド基を2個以上有する化合物を指す。本発明の被覆組成物は、上記ヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を含んでなる。該被覆組成物のうち、ヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物との組み合わせは、貯蔵安定性が非常に優れる上、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を比較的低温で与えることができるため特に好ましい。
【0065】
該ポリカルボニル化合物としては、例えばカルボニル基を含有する共重合体、特開平2−238015号公報に記載されているがごときヒドロキシアセトン等のカルボニル基のあるモノまたはポリアルコールを原料とするカルボニル基含有ポリウレタン類、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース等、及びこれらの併用が挙げられる。
【0066】
これらの中で好ましいポリカルボニル化合物は、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)と、該単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)とを共重合することによって得られるカルボニル基を含有する共重合体であり、さらに好ましくはポリカルボニル化合物が、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)0.1〜30重量%と、該単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)70〜99.9重量%とを共重合することによって得られるカルボニル基を含有する共重合体である。
【0067】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)としては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、ホルミルスチロール等や、その併用が挙げられる。単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体類、エポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体類、アクリルアミド系単量体、メタクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ) アクリル酸メチル、(メタ) アクリル酸エチル、(メタ) アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸エチレングリコール、(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ) アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ) アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0068】
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体類として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、マレイン酸の半エステル、クロトン酸などがあり、(メタ)アクリルアミド系単量体類としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。
【0069】
エポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体類として具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0070】
ポリカルボニル化合物は、懸濁重合、乳化重合又は溶液重合により得られることが好ましく、乳化重合によって得られるラテックスであることはさらに好ましい。ポリカルボニル化合物は、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれるアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)の存在下、共重合することによって得られることが好ましい。
【0071】
スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。
【0072】
硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物である。
【0073】
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、たとえば、式(12)、(13)、(14)、(15)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化16】
【0075】
【化17】
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
{式12〜15中、R1'は水素またはメチル基であり、R2'は炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数6〜19のアラルキル基等の炭化水素基、又はその1部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、アルキレン部分の炭素数が2〜4)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、アルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド化合物を含む有機基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換されたアルキレン基である。nは0〜200の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム、またはカリウムである。}
上記式(12)及び(13)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)があり、上記式(14)及び(15)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180AまたはS−180(商品名)(花王(株)製)等がある。
【0079】
またスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例として、式(16)または(17)で表される化合物が挙げられる。
【0080】
【化20】
【0081】
(式中R3'、R4'の各々は、それぞれ独立に、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基であり、R5'は水素またはプロペニル基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基である。nは1〜200の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム又はカリウムである。)
【0082】
【化21】
【0083】
(式中、R6'は水素またはメチル基であり、R7'は炭素数8〜24のアルキル基またはアシル基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基である。mは0〜20の整数であり、nは0〜50の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム又はカリウムである。)
上記式(16)で表されるアルキルフェノールエーテル系化合物として、例えばアクアロンHS−10(商品名)(第一工業製薬(株)製)があり、上記式(17)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025N(商品名)(旭電化工業(株)製)がある。
【0084】
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、が挙げられる。スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。
【0085】
硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えば上記の式(16)と(17)で表される、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物がある。
【0086】
これらのアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)は、エマルジョン中にエマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在しているか、未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在しているか、又は水溶性単量体との共重合物あるいは単量体同士の共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在している。
【0087】
とくにの状態の比率を高めることによって、エマルジョンより得られるフィルムの耐水性を良好なものとすることができる。またアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)、又は熱分解質量分析(Py−MS)により同定することができる。他の方法として、エマルジョンの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
【0088】
本発明では、アニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)以外に通常の界面活性剤を併用することができる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等の非反応性ノニオン型界面活性剤、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等の反応性ノニオン型界面剤といわれるエチレン性不飽和単量体と共重合なノニオン型界面活性剤等が用いられる。
【0089】
本発明において、ポリカルボニル化合物を得るに当たって、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としてはエチレン性不飽和単量体に対して通常0.1〜1重量%配合される。通常は常圧下、65〜90℃の重合温度で実施されるのが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧等の特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。さらに分子量を調節するために、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を任意に添加することも可能である。
【0090】
本発明において、ポリカルボニル化合物を長期に安定に保つため、pH5〜10の範囲に調整することが好ましく、必要に応じてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸等の酸類を添加することも可能である。また、本発明の被覆組成物に用いることができるポリエポキシ化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として他の不飽和単量体と塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などによって共重合させることにより得られるエポキシ基を含有する共重合体や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、環式脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物を水に分散させたもの、及びこれらの併用が挙げられる。
【0091】
本発明のヒドラジン誘導体組成物(A)とポリカルボニル化合物(B)及び/又はポリエポキシ化合物(C)を含んでなる被覆組成物は、その固形分重量比が(A)/((B)+(C))=0.1/99.9〜90/10の範囲内である。これにより低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を与えることができる。この比率が0.1/99.9未満である場合は、架橋密度が低くなり架橋の効果が出現しないので好ましくない。90/10を超えると、得られる皮膜が非常に脆いものとなり好ましくない。
【0092】
本発明のヒドラジン誘導体組成物は、ポリカルボニル化合物やポリエポキシ化合物との反応性を制御する目的で、式(5)で表されるモノケトン類を混合する事ができる。
R11R12C=O (5)
(式中R11、R12は各々、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の2〜20個の炭素原子を有する脂肪族残基、5〜20個の炭素原子を有する脂環族残基、置換基を有しても有さなくても良い芳香族残基、から選ばれた少なくともいずれか一を表す。またR11、R12は環状構造を形成しても良い。)
前記式(5)で表されるモノケトン類としては、30〜200℃の比較的低沸点のもの (例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が上記反応性の制御がし易く好ましい。
【0093】
本発明の被覆組成物には、必要により通常塗料等に添加配合される成分、例えば顔料、充填剤、分散剤、光安定剤、湿潤剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、可塑剤、成膜助剤、防錆剤、染料、防腐剤等がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。また、本発明の被覆組成物は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、粘着剤、紙加工剤または織布、不織布の仕上げ材、水性インキ用バインダー等として有用となる。塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材としては、例えばコンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート等の無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材等の各種下地に対する塗料又は建築仕上げ材、さらには複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイント等の合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料等が挙げられる。
【0094】
接着剤としては、例えば自動車内装用接着剤、建築部材用接着剤、各種フィルムのラミネート接着剤等として用いられる、金属、プラスチック、木材、スレート、紙、布等に対するウエット接着剤及びコンタクト接着剤等が挙げられる。粘着剤としては、例えば片面テープ、両面テープ、ラベル、アルバム等に使用される、永久粘着剤、再剥離型粘着剤等が挙げられる。
【0095】
【発明の実施の形態】
実施例中の部は重量部を意味する。実施例中に用いられる各種物性の測定方法は、下記の通りである。
分子量分布:ゲルパーミィテーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
【0096】
(使用機器)・装置:東ソー(株)製 HLC−8020
・カラム:東ソー(株)製
TSKgel G−5000 HXL
TSKgel G−4000 HXL
TSKgel G−2000 HXL
・データ処理:東ソー(株)製 SC8010
・キャリヤー:テトラヒドロフラン
赤外線吸収スペクトルは、FT/IR−5300(日本分光(株)製)で測定した。
フィルムの外観
各実施例または比較例で得られた皮膜の外観を以下のように判定した。
【0097】
○:透明で平滑な皮膜
△:透明であるが皮膜表面に荒れが見られる
×:不透明で皮膜表面に荒れが見られる
フィルム強度
テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTA−100)で測定長:300mm、引張速度:50mm/分の条件で測定した。
フィルムの耐溶剤性
フィルムを200メッシュの金網製の袋に入れた後、テトラハイドロフラン中に室温にて24時間浸漬後、フィルム重量の保持率を、(テトラハイドロフラン浸漬後のフィルム重量)÷(テトラハイドロフラン浸漬前のフィルム重量)×100として求めた。
フィルムの耐水性
フィルムを水中に室温にて6日間浸漬後、フィルム吸水率(%)を、((水浸漬後のフィルム重量)−(水浸漬前のフィルム重量))÷(水浸漬前のフィルム重量)×100として求めた。
【0098】
また、フィルムを水中に室温にて24時間浸漬した後、破断強度および伸び率100%時の強度を測定し、浸漬前の破断強度および伸び率100%時の強度に対するそれぞれの保持率を、(水浸漬後の強度)÷(水浸漬前の強度)×100として求めた。
【0099】
【参考例1】
ポリヒドラジン化合物(1)の合成例。イソホロンジイソシアネート222部、ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水2.4部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(重量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1.5時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のイソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、および溶媒を留去回収した。
【0100】
得られたポリイソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートのコビュレット型ポリイソシアネートであり、残存イソホロンジイソシアネートが0.7重量%、残存ヘキサメチレンジイソシアネート0.1重量%、−NCO含有量は19.6重量%、粘度は20000(±3000)mPa・s/40℃、数平均分子量は約800(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.7であった。
【0101】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたイソプロピルアルコール230部にヒドラジン1水和物20部を室温で添加した。これに上記コビュレット型ポリイソシアネート42部をテトラハイドロフラン168部に溶解した溶液を40℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続けた。得られた反応液中のテトラハイドロフラン、ヒドラジン、水等を加熱減圧下に留去することによりポリヒドラジン化合物(1)を白色固体として得た。
【0102】
このものの赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0103】
【参考例2】
ポリヒドラジン化合物(2)の合成例。還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたイソプロピルアルコール103部にヒドラジン1水和物8.9部を室温で添加した。これにイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(商品名:VESTANATT−1890。数平均分子量は約800、平均NCO基数は約3.2、NCO基含有量16.4wt%のもの(100%ペレット品)。ヒュルス・ジャパン(株)製。)23部をテトラハイドロフラン92部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続けた。その後、反応系を40℃にて撹拌しながらブチルセロソルブ50部を添加た。得られた反応液中のテトラハイドロフラン、ヒドラジン、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ等を加熱減圧下に留去することにより固形分50%のポリヒドラジン化合物(2)のブチルセロソルブ溶液を得た。
【0104】
【参考例3】
ポリヒドラジン化合物(3)の合成例。ヘキサメチレンジイソシアネート1000部にイソシアヌレート化触媒としてのテトラメチルアンモニウムアセテート0.01部を加え、60℃にて4時間反応を行った。リン酸0.2部を添加し、反応を停止した後、さらに90℃にて1時間加熱し、常温に冷却すると触媒失活物が固体として析出した。この析出物を濾過により除去した後、得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/160℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネートおよび溶媒を留去回収した。
【0105】
得られたポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートであり、残存ヘキサメチレンジイソシアネート0.1重量%、−NCO含有量は23.4重量%、粘度は1400(±200)mPa.s/25°、数平均分子量は約580(±80)であり、平均−NCO官能基数は約3.2であった。
【0106】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたテトラハイドロフラン103部にメチルヒドラジン16.4部を室温で添加した。これに上記ポリイソシアネート化合物16部をテトラハイドロフラン92部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続けた。その後、反応系を40℃にて撹拌しながらブチルセロソルブ50部を添加た。得られた反応液中のテトラハイドロフラン、ヒドラジン、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ等を加熱減圧下に留去することにより固形分50%のポリヒドラジン化合物(3)のブチルセロソルブ溶液を得た。
【0107】
【参考例4】
ポリカルボニル化合物の調整例。還流冷却器、滴下槽、温度計および撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水218部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液3.7部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、次にメタクリル酸9部、スチレン4.5部、アクリル酸ブチル234部、ダイアセトンアクリルアミド13.5部、メタクリル酸メチル189部、イオン交換水225部、アデカリアソープSE−1025Nを14.4部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10部、過硫酸アンモニウム1部の混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして2時間保った。その後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分46.8%、平均粒径1060Åのカルボニル基含有共重合体水性エマルジョンを得た。
【0108】
【実施例1】
レブリン酸7.2部に10%アンモニア水溶液9.6部を添加し、30℃にて30分攪拌した後、参考例1で得られたポリヒドラジン化合物(1)74部と水156部を添加し、さらに30℃にて1時間攪拌を行うことにより均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0109】
このものの赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
【0110】
【実施例2】
参考例1で得られたポリヒドラジン化合物(1)27部にピルビン酸2部及び水58部を添加し30℃にて30分攪拌した後、10%アンモニア水溶液3.6部を添加し、さらに30℃にて1時間攪拌を行うことにより均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0111】
【実施例3】
参考例1で得られたポリヒドラジン化合物(1)33部にα−ケトグルタル酸3部及び水70部を添加し30℃にて30分攪拌した後、10%アンモニア水溶液6.4部を添加し、さらに30℃にて1時間攪拌を行うことにより均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0112】
このものの赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0113】
【実施例4】
参考例2で得られたポリヒドラジン化合物(2)の50%ブチルセロソルブ溶液95部にレブリン酸9部及び10%アンモニア水溶液12部、さらに水36部を添加し、30℃にて1時間攪拌を行い均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0114】
【実施例5】
参考例2で得られたポリヒドラジン化合物(2)の50%ブチルセロソルブ溶液95部にレブリン酸1.8部及び10%アンモニア水溶液2.4部、さらにラテムルASK(固形分28%)(商品名)(花王(株)製)6.7部と水52部を添加し、30℃にて1時間攪拌を行い均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0115】
【実施例6】
ピルビン酸5部に2N水酸化ナトリウム水溶液25.5部を添加し、30℃にて30分攪拌した後、参考例3で得られたポリヒドラジン化合物(3)の50%ブチルセロソルブ溶液40部を添加し、さらに30℃にて1時間攪拌を行い均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0116】
【実施例7】
1,3,5−シクロヘキサントリヒドラジド14部にレブリン酸10部及び水108部を添加し、30℃にて1時間攪拌を行うことにより均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0117】
【実施例8】
セバチン酸ジヒドラジド18部にα−ケトグルタル酸23部及び水94部を添加し30℃にて30分攪拌した後、10%アンモニア水溶液49部を添加し、さらに30℃にて1時間攪拌を行うことにより均一透明なヒドラジン誘導体組成物の水溶液を得た。
【0118】
【実施例9】
参考例4で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例2で得たヒドラジン誘導体組成物の水溶液6.2部を添加し、混合した被覆組成物をガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。
【0119】
この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0120】
【実施例10】
参考例4で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例4で得たヒドラジン誘導体組成物の水溶液7.5部を添加し、混合した被覆組成物をガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。
【0121】
この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
【実施例11】
参考例4で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例5で得たヒドラジン誘導体組成物の水溶液7.5部を添加し、混合した被覆組成物をガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。
【0123】
この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0124】
【実施例12】
参考例4で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例7で得たヒドラジン組成物の水溶液6.7部を添加し、混合した被覆組成物をガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。
【0125】
この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0126】
【比較例1】
ピルビン酸を用いなかった以外は実施例2と同様の操作を行ったが、ポリヒドラジン化合物(1)は固体のままであり、ほとんど水には溶解しなかった。
【0127】
【比較例2】
レブリン酸を用いなかった以外は実施例4と同様の操作を行った結果、ポリヒドラジン化合物(2)が析出した。
【0128】
【比較例3】
ピルビン酸を用いなかった以外は実施例6と同様の操作を行った結果、ポリヒドラジン化合物(2)が析出した。
【0129】
【比較例4】
レブリン酸を用いなかった以外は実施例7と同様の操作を行ったが、1,3,5−シクロヘキサントリヒドラジドは固体のままであり、ほとんど水には溶解しなかった。
【0130】
【比較例5】
α−ケトグルタル酸を用いなかった以外は実施例8と同様の操作を行ったが、セバチン酸ジヒドラジドは固体のままであり、ほとんど水には溶解しなかった。
【0131】
【比較例6】
ピルビン酸7.2部を酢酸4.9部に代える他は実施例2と同様の操作を行ったが、ポリヒドラジン化合物(1)は固体のままであり、ほとんど水には溶解しなかった。
【0132】
【比較例7】
ピルビン酸7.2部を酢酸4.9部に代え、アンモニア水溶液を用いなかった以外は実施例2と同様の操作を行ったが、ポリヒドラジン化合物(1)は固体のままであり、ほとんど水には溶解しなかった。
【0133】
【比較例8】
参考例2で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン単独で、実施例4と同様の方法で成膜乾燥して塗膜を得た。この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
【比較例9】
実施例2で得たヒドラジン誘導体組成物の水溶液を、アジピン酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業(株)製)の5%水溶液14.5部に代える他は実施例9と同様の方法で配合し、成膜乾燥して塗膜を得た。この塗膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【発明の効果】
本発明のヒドラジン誘導体組成物を硬化剤として用いた被覆組成物は、架橋密度が高く、強靭で耐水性、耐薬品性、耐熱性等に優れた皮膜を比較的低温で得ることができる。従って、本発明により、クリアーコート剤、トップコート剤、塗料、アンダーコート剤、布や紙の含浸剤、各種接着剤等として各種用途に利用することができる優れた被覆組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組成物の1例の赤外線吸収スペクトル図である。
【図2】本発明の組成物の1例の赤外線吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の組成物の1例の赤外線吸収スペクトル図である。
Claims (3)
- ヒドラジン残基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジン化合物と、式(2)又は式(4)で表されるケトン酸及び/又はその塩との混合物であり、ポリヒドラジン化合物中のヒドラジン残基に対するケトン酸中のケト基の比が、(ケト基)/(ヒドラジン残基)モル比で0.001〜10であるヒドラジン誘導体組成物。
HNR 6 R 7 R 8 (3)
(R 6 、R 7 、R 8 は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R 6 とR 7 、R 7 とR 8 、R 6 とR 7 とR 8 は、それぞれ共同して環状構造を形成しても良い。)}
HNR 6 R 7 R 8 (3)
(R 6 、R 7 、R 8 は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R 6 とR 7 、R 7 とR 8 、R 6 とR 7 とR 8 は、それぞれ共同して環状構造を形成しても良い。)} - ポリヒドラジン化合物が、式(1)で表されるセミカルバジド誘導体組成物である請求項1記載のヒドラジン誘導体組成物。
- 請求項1〜2のいずれかに記載のヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を含有し、ヒドラジン誘導体組成物(A)とポリカルボニル化合物(B)及び/又はポリエポキシ化合物(C)の固形分重量比が(A)/((B)+(C))=0.1/99.9〜90/10である被覆組成物。
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