JP3870115B2 - 浮造り調床材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材の持つ素材感を最大限に活かした浮造り加工を施した浮造り調床材に関し、特に、繊維強化された樹脂強化層を持つ基材を使用することにより、優れた耐傷性、耐クラック性能を持つ高性能の浮造り調床材に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来の浮造り加工は、松、杉、栂等の針葉樹材の表面をバーナー等であぶり、焦げた部分をワイヤーブラシ等でこすることで、焦げ易い春材部が多く掻き取られて凹部となる一方、焦げ難い秋材部が掻き取られずに凸部として残るようにして凹凸模様を出す木材の加工方法である。この浮造りを簡易に行う方法として、ワイヤーブラシ等でブラッシングを行うことで木目模様を浮き上がらせるものは公知である。
【0003】
例えば、特開昭58−217304号や特開昭59−59404号の各公報に示されているように、浮造り加工した単板を合板やファイバーボードに貼り付けた化粧板が知られている。
【0004】
しかし、この浮造り化粧板は、床材に使用するには様々な問題点がある。すなわち、床材に求められる性能は非常に高いので、上記各公報の従来例にあるように、単純に浮造り加工した単板を合板やファイバーボードに貼り付けただけでは、耐傷性、耐クラック性能、耐汚染性能の面から、床材として所望の性能を満たす製品は造ることができない。
【0005】
そこで、例えば特開昭58−71104号や特開平2−198801号の各公報に示されているように、木質単板に樹脂を含浸させた後、クッション材を介して熱圧プレスを施し、単板中の硬度の低いところを凹部として合成樹脂を注入・硬化させる化粧板の製造方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この提案例で製造された化粧板の場合、仕上がりはプラスチック加工されたフロアであり、木材に浮造り加工を施したいわゆる「素材感」は全く失われてしまうのは避けられない。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、木材の本来の素材感を強調する浮造り加工を施した木質薄単板を使用して高意匠を実現し、かつ床材に求められる耐傷性、耐クラック性能に優れた高性能の浮造り調床材が得られるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の点を有する。
【0009】
1.基材の表面には、繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化層を設ける。
【0010】
2.この樹脂強化層の表面には浮造り加工後の残存厚みの最大が1mm以下の木質薄単板層を設ける。
【0011】
3.木質薄単板層の表面にクリアコーティング層を設ける。
【0012】
4.このクリアコーティング層の厚みは、素材感を失わないために50μm以下が好ましい。このとき、床材として所望の性能を実現するためには、塗膜は、塗膜性能の優れた紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなることが望ましい。
【0013】
具体的には、請求項1の発明の浮造り調床材では、繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化層が表面に設けられた基材と、この基材における上記樹脂強化層の表面に接着され、かつ表面に浮造り加工が施され、この浮造り加工後の残存厚みの最大が1mm以下でかつ最小が0mmであり、上記任意に着色された樹脂強化層が部分的に表面に現れている木質薄単板層と、この木質薄単板層の表面に設けられたクリアコーティング層とを備えてなることを特徴とする。
【0014】
この構成により、浮造り加工という木材本来の素材感を強調した優れた意匠と、床材に求められる優れた耐クラック性能とを併せ持つ高性能の浮造り調床材が得られる。
また、木質薄単板層は、浮造り加工後の残存厚みの最小が0mmであり、任意に着色された樹脂強化層が部分的に表面に現れているので、単板に着色した色と同系色の着色を樹脂強化層に施し、浮造り加工により深みを持たせるだけではなく、これらの色を様々に組み合わせることにより、バラエティに富んだ意匠の床材を製造することが可能である。
【0015】
請求項2の発明では、上記クリアコーティング層は、紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなり、かつ最大厚みが50μm以下の極薄の塗膜層よりなるものとする。
【0016】
こうすると、浮造り調床材の耐クラック性能だけではなく、耐傷性をも優れたものとすることができる。また、塗膜の最大厚みが50μm以下の極薄の塗膜層であっても、紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなる塗膜層は、優れた耐傷性能をも実現することが可能である。
【0017】
請求項3の発明では、上記木質薄単板層がロータリー単板からなることを特徴とする。このことで、樹種選択の範囲が広がり、広巾の1枚物の床板を安価に製造することができる。
【0020】
請求項4の発明では、木質薄単板層の表面が体質顔料を30重量部以上配合した染料系又は顔料系の着色料により目止め着色されていることを特徴とする。
【0021】
このことで、より深み感のある浮造り加工が可能となり、表面に設けられたクリアコーティング層により、長期の使用にも深み感を保ったまま使用することができる。また、薄単板を使用し、浮造り加工後にバリア層が露出するような場合においても、薄単板に施された着色とバリア層の着色とを組み合わせることにより、高意匠を実現することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態に係る浮造り調床材Aを示し、この浮造り調床材Aは、繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化層2が表面に設けられた基材1と、この基材1の樹脂強化層2の表面に接着され、表面に浮造り加工が施された木質薄単板層3と、この木質薄単板層3の表面に設けられたクリアコーティング層4とを備えてなる。以下、これらの構成要素について詳細に説明する。
【0023】
(基材)
上記基材1は、例えば合板、LVL、MDF、パーティクルボード、OSB、集成材等の木質系及び石膏ボード、珪酸カルシウム板、火山性ガラス質複層板等の無機系材料又はこれらの薄板を複層に積層させたものが使用される。床材として所望の性能を満たすためには、耐水性及び強度が共に高い合板が一般的に用いられる。また、特に高い耐傷性が求められる場合には、合板の表面にMDFを貼り付けたものが基材1として使用される場合があるが、この場合は、耐水性が問題となることがあるので、耐水処理を施したMDFを使用することが望ましい。
【0024】
(樹脂強化層)
上記基材1の表面には、繊維強化された樹脂硬化物からなる樹脂強化層2が設けられている。この樹脂強化層2は本発明の特徴として必須要素であり、樹脂強化層2の表面に貼り付けられて浮造り加工の施された木質薄単板層3の表面に施される塗膜の耐クラック性能を向上させる。
【0025】
樹脂硬化物の繊維強化は、繊維状物からなるシート状物に樹脂を含浸させて行い、例えば紙や不織布、ガラス繊維シート等が用いられる。また、この繊維状物は、樹脂強化層2を一定の厚み以上確保する働きがあり、好ましくは、0.1mm以上の厚みのものが使用される。
【0026】
樹脂硬化物としては、熱硬化型樹脂、変性熱硬化型樹脂又はこれらの混合物等が好適に使用される。具体的には、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素・メラミン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、或いはこれらの樹脂の変性物や混合物が挙げられる。この場合、硬化させた後に適度に靭性のある樹脂が好ましく、特にメラミン系樹脂と酢酸ビニル樹脂、エチレン変性酢酸ビニル樹脂、アクリルエマルジョン樹脂の混合物やメチロールメラミンのメチロール基をアクリル変性又はアリル変性したものが好適に用いられる。
【0027】
また、上記シート状物は、例えば紙や不織布、ガラス繊維シート等の繊維状のシート状物が好適に用いられる。
【0028】
また、樹脂強化層2は、隠蔽性の高い顔料等により任意に着色されることで、本発明にある浮造り加工後の残存厚みが1mm以下の木質薄単板層3を使用した場合でも、好適な意匠を実現することが可能である。このとき、樹脂強化層2に着色される色は、好ましくは表面仕上げと同じ色、又は同系色の濃系色に着色される。また、このときに使用される顔料は、隠蔽性の高い体質顔料、無機顔料及び有機顔料等の着色顔料、メタリック顔料等の特殊顔料が任意に選択できる。
【0029】
体質顔料としては、例えばアルミナ、タルク、バライト粉、炭酸カルシウム、無水珪酸、白雲母等が用いられる。無機系の無彩色顔料としては、例えば酸化チタン、亜鉛華、リトポン等が用いられる。無機系の彩色系顔料としては、例えば黄色酸化鉄チタンイエロー、ベンガラ、群青等が用いられる。有機顔料としては、例えばアゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系等のアゾ顔料、金属錯体、スレン系、キノン系等の多環式顔料、酸性顔料又は塩基性顔料等が用いられる。
【0030】
(木質薄単板層)
木質薄単板層3は単板表面に浮造り加工が施されたもので、その浮造り加工後の残存厚みは1mm以下である。浮造り加工後の残存単板厚みが1mmを超える場合、単板自体の延び縮みにより、耐クラック性能が悪くなるため、好ましくない。
【0031】
木質薄単板層3は、浮造り加工後の残存厚みの最小が0mmで、任意に着色された樹脂強化層2が部分的に表面に現れているようにしてもよい。こうすれば、単板に着色した色と同系色の着色を樹脂強化層に施し、浮造り加工により深みを持たせるだけではなく、これらの色を様々に組み合わせることにより、バラエティに富んだ意匠の床材を製造できる。
【0032】
浮造り加工は、単板の繊維方向に回転する浮造ブラシにより行われる。具体的には、粗目ないし細目の浮造用のブラシを2〜3本搭載した回転式浮造りブラシ等が使用される。
【0033】
また、木質薄単板は素地調整が行われる。具体的には、研磨用ロールブラシが好適に使用される。研磨ブラシは、布に240〜320番程度の研磨剤を染み込ませたのものである。
【0034】
さらに、木質薄単板に素地着色を行う。この素地着色には、染料系の着色ステイン、油性ステイン、アルコールステインや顔料系の着色ステイン、油性ステイン、アルコールステイン等が任意に選択され使用される。この場合、好ましくは、体質顔料を30重量部以上配合し、目止め着色を行うことにより、浮造り加工を施した凹部に着色された体質顔料が多く残存し、浮造り加工により深み感を持たせることができる。また、表面に設けられるクリアコーティング層4により、浮造り凹部に入り込んだ着色された体質顔料が効果的に固定され、長期の仕様にも深み感を失わない、優れた意匠を実現することができる。
【0035】
体質顔料としては、上記のものが使用される。例えばタルクを50重量部混ぜた水性ステインを、スポンジロールとデュロメーターで30°のゴムロールを搭載したN−Rロールコーターで目止め着色を行う。掻取りについては、好ましくはゴムロール、ウエス等により行われる。
【0036】
また、素地着色の替わりに単板染色が行われる場合もある。単板染色は、減圧法、加圧法、常温浸漬法等の方法で染料が単板中に注入されることにより行われる。単板染色には、染料系の着色ステイン、油性ステイン、アルコールステイン等が好適に用いられる。単板染色の効果としては、単板の中まで着色されているため、万一、床材表面に傷が入った場合に、傷が目立ち難いという効果がある。
【0037】
また、木質薄単板として、表面にクリアコーティング層4が設けられるために、一般的には床材として使用されないロータリー単板を使用することができる。これは、一般に、ロータリー単板を使用した場合にクラック性能が悪くなるが、これらのロータリー単板を使用した場合にも、直下の繊維強化された樹脂硬化物からなる樹脂強化層2があるために、優れた耐クラック性能を維持することが可能である。また、ロータリー単板を使用できることにより、浮造り加工で一般的に使用される針葉樹材以外にも、樹種選択の範囲が広くなる。
【0038】
(クリアコーティング層)
上記木質薄単板層3の表面には、耐傷性、耐汚染性、引っかかり防止のために紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなるクリアコーティング層4が設けられる。
【0039】
但し、浮造り加工を施した木質薄単板の表面に100μm以上の厚塗り塗装を行う場合には、浮造り加工を施した凹部に樹脂溜まりができ、樹脂は未硬化なまま残ってしまうので、注意が必要である。この場合、フローコーターで塗布すると、樹脂溜まりの管理が難しくなるため、柔らかめのゴム又はスポンジロールを搭載したロールコーターにより所望の厚みが得られるよう複数回塗布することが望ましい。しかし、このような厚塗りをすると、浮造り加工特有の素材感は損なわれることになるので、注意を要する。従って、クリアコーティング層4の塗膜厚みは、好ましくは50μm以下がよい。この場合、浮造り加工の素材感を損なわない高意匠を実現することができる。
【0040】
また、耐摩耗性を向上させるために、クリアコーティング層4に減磨剤を加えてもよい。例えば2層で塗装が行われる場合には、例えば下塗りに10重量部以上、好ましくは30重量部以上の減磨剤を入れた塗料を塗装し、硬化・サンディング後、これに上塗り塗料を塗装する。3層で塗装が行われる場合には、例えば下塗りに塗膜と木質薄単板の密着を高めるための下塗り塗料を塗装し、中塗りに10重量部以上、好ましくは30重量部以上の減磨剤を入れた塗料を塗装し、硬化・サンディング後、これに上塗り塗料を塗装し、クリアコーティング層4を形成する。この場合サンディングについては、研磨剤を含浸させたブラシ研磨を行うことで、好適な結果が得られる。
【0041】
したがって、この実施形態では、浮造り調床材Aは、繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化2層が表面に設けられた基材1と、この基材1の樹脂強化層の表面に接着され、表面に浮造り加工が施されて、その浮造り加工後の残存厚みの最大が1mm以下の木質薄単板層3と、この木質薄単板層3の表面に設けられたクリアコーティング層4とからなるので、浮造り加工という木材本来の素材感を強調した優れた意匠と、床材に求められる優れた耐クラック性能とを併せ持つ高性能の浮造り調床材Aが得られる。
【0042】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例1)
厚さ11.7mmの合板基材の表面に対し、黄土色顔料を1重量部添加したフェノール樹脂を含浸させた厚さ0.2mmの紙を貼り付けて熱圧プレスを行い、樹脂強化層とした。この表面に熱硬化性接着剤を塗布し、厚さ1.0mmのナラ材ロータリー薄単板を熱圧プレスで貼り付けた。
【0043】
この樹脂強化層の表面に貼り付けた木質薄単板の表面に浮造り加工を施した。この浮造り加工には、粗目、中目、細目の回転式の3連ブラシを搭載した回転式浮造りブラシを使用した。この場合、単板の残存厚みは0.95mm〜0.50mm程度であった。
【0044】
この床材の表面にシンナー100に対して30重量部の着色剤と50重量部の体質顔料とを添加した着色剤を使用し、デュロメーターで30°の硬さのナチュラルロール及びゴムリバースロールを取り付けたナチュラルーリバースコーターで目止め着色した。これをジェットドライヤーで60℃・5分間、乾燥した。さらに、この表面にホワイトアルミナ(減磨剤)を15重量部添加したエポキシアタリレート系の紫外線硬化型塗料を1g/尺角、ロールコーターを用いて塗布し、直ちに紫外線乾燥を行った。さらに、320番手の研磨剤を含浸させた研磨ブラシで表面を均一に足つけ研磨を行った。さらに、この表面にウレタンアタリレート系の紫外線硬化型塗料を1g/m2、フローコーターを用いて塗布し、直ちに紫外線乾燥を行い、高性能浮造り調床材を得た。
【0045】
(実施例2)
厚さ11.7mmの合板基材の表面に対し、焦げ茶色顔料を1重量部添加したフェノール樹脂を含浸させた紙を貼り付け熱圧プレスを行い、樹脂強化層とした。この表面に熱硬化性接着剤を塗布し、厚さ0.35mmの単板染色を施したナラ材スライス薄単板を熱圧プレスで貼り付けた。単板染色は、ナラ材スライス薄単板にウレタンシンナーに対して0.5重量部の着色剤を添加した染色液を使用し、減圧法で含浸後、24時間浸漬をした。これを取り出し、40℃で30分乾燥させ、単板染色を施したナラ材スライス薄単板を得た。
【0046】
この樹脂強化層の表面に貼り付けた木質薄単板の表面に、浮造り加工を施した。浮造り加工には、粗目、中目、細目の回転式の3連ブラシを搭載した回転式浮造りブラシを使用した。この場合、浮造り加工後の単板残存厚みは0.30mm〜0mmであり、一番深い凹部において、樹脂強化層の焦げ茶色が見える程度まで浮造り加工を施した。この床材表面に240番手の研磨剤を含浸させた研磨ブラシで表面に軽く素地研磨を行った。この表面にホワイトアルミナ(減磨剤)を15重量部添加したエポキシアタリレート系の紫外線硬化型塗料をlg/尺角、ロールコーターを用いて塗布し、直ちに紫外線乾燥を行った。さらに、320番手の研磨剤を含浸させた研磨ブラシで表面を均一に足つけ研磨を行った。さらに、この表面にウレタンアタリレート系の紫外線硬化型塗料を1g/m2、デュロメーターで40°のゴムロールを搭載したロールコーターを用いて塗布し、直ちに紫外線乾燥を行い、高性能浮造り調床材を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1において、基材と木質薄単板層との間の樹脂強化層を設けなかったものである。また、基材の表面に熱硬化性の接着剤を使用して、厚さ1mmのナラ材ロータリー薄単板を熱圧プレスで貼り付けている。これ以外は実施例1と同じである。
【0048】
(比較例2)
実施例2において、基材と木質薄単板層しの間の樹脂強化層を設けなかったものである。また、基材の表面に熱硬化性の接着剤を使用して、単板染色を施した厚さ0.35mmのナラ材スライス薄単板を熱圧プレスで貼り付けている。これ以外は実施例2と同じである。
【0049】
(比較例3)
実施例1において、木質薄単板に厚さ2.0mmのナラ材ロータリー薄単板を使用したものである。浮造り加工後の残存厚みは1.65mm〜1.95mmであった。これ以外は実施例1と同じである。
【0050】
(評価試験)
以上の実施例1、2及び比較例1、2について、床暖房用床材に対応した寒熱繰り返し試験(JAS特殊合板に準拠)を行った。床暖房用床材に対応した寒熱繰り返し試験では、80℃・2時間と−20℃・2時間とを5サイクル繰り返し行い、塗膜表面の割れの程度(クラック長)を観察する。クラックとは、寒熱繰り返しによる小さな塗膜の割れである。尚、全ての試験は、15cm×15cmの試験体を使用した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果を考察すると、実施例は、いずれも耐クラック性能が良好であった。スライス単板を使用した比較例2に比べて、ロータリー単板を使用した比較例1の方がクラックが多く出た。
【0053】
また、比較例3については、特に多くのクラックが発生し、測定不可能であった。これは、浮造り加工後の残存単板厚みが1.65mm〜1.95mmと厚いので、単板自体が寒熱試験により伸縮し、表面の塗膜にクラックが発生したものと考えられる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明の浮造り調床材によると、繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化層が表面に設けられた基材と、この基材の樹脂強化層の表面に接着され、表面に浮造り加工が施されて、その浮造り加工後の残存厚みの最大が1mm以下でかつ最小が0mmであり、上記任意に着色された樹脂強化層が部分的に表面に現れている木質薄単板層と、この木質薄単板層の表面に設けられたクリアコーティング層とを備えてなるので、浮造り加工という木材本来の素材感を強調した優れた意匠と、床材に求められる優れた耐クラック性能とを併せ持つ高性能の浮造り調床材が得られる。また、木質薄単板層は、浮造り加工後の残存厚みの最小が0mmで、任意に着色された樹脂強化層が部分的に表面に現れているため、単板に着色した色と同系色の着色を樹脂強化層に施し、浮造り加工により深みを持たせるだけではなく、これらの色を様々に組み合わせて、バラエティに富んだ意匠の床材を製造することが可能である。
【0055】
請求項2の発明によると、クリアコーティング層は、紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなり、かつ最大厚みが50μm以下の極薄の塗膜層よりなるので、浮造り調床材を耐クラック性能及び耐傷性の双方に優れたものとすることができる。また、塗膜の最大厚みが50μm以下の極薄の塗膜層であっても、紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなる塗膜層が優れた耐傷性能をも実現し、高性能の浮造り調床材の製造が可能である。
【0056】
請求項3の発明によると、木質薄単板層がロータリー単板からなるので、樹種選択の範囲が広がり、広巾の1枚物の床板を安価に製造することができる。
【0058】
請求項4の発明によると、木質薄単板の表面が体質顔料を30重量部以上配合した染料系又は顔料系の着色料により目止め着色されているので、より深み感のある浮造り加工が可能となり、表面に設けられたクリアコーティング層により、長期の使用にも深み感を保ったまま使用することができる。また、薄単板を使用し、浮造り加工後にバリア層が露出するような場合においても、薄単板に施された着色とバリア層の着色を組み合わせることにより、高意匠を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る高性能浮造り調床材の断面図である。
【符号の説明】
A 浮造り調床材
1 基材
2 樹脂強化層
3 木質薄単板層
4 クリアコーティング層
Claims (4)
- 繊維強化されかつ任意に着色された樹脂強化層が表面に設けられた基材と、
上記樹脂強化層の表面に接着され、かつ表面に浮造り加工が施され、該浮造り加工後の残存厚みの最大が1mm以下でかつ最小が0mmであり、上記任意に着色された樹脂強化層が部分的に表面に現れている木質薄単板層と、
上記木質薄単板層の表面に設けられたクリアコーティング層とを備えてなることを特徴とする浮造り調床材。 - 請求項1の浮造り調床材において、
クリアコーティング層は、紫外線硬化型塗料又は電子線硬化型塗料からなり、かつ最大厚みが50μm以下の極薄の塗膜層よりなることを特徴とする浮造り調床材。 - 請求項1又は2の浮造り調床材において、
木質薄単板層がロータリー単板からなることを特徴とする浮造り調床材。 - 請求項1〜3のいずれか1つの浮造り調床材において、
木質薄単板層の表面が体質顔料を30重量部以上配合した染料系又は顔料系の着色料により目止め着色されていることを特徴とする浮造り調床材。
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