JP3870025B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦巻形のスクロールラップを有するスクロール圧縮機に係り、特に、空気圧縮機や、冷凍空調用圧縮機に用いられるスクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鏡板に直立した渦巻形のラップを有する固定スクロールと、この固定スクロールのラップに噛み合うラップを有する旋回スクロールとを備えたスクロール圧縮機が、冷凍空調用に用いられている。そして、近年、低騒音、低振動である利点ゆえに、空気圧縮機にも用いられてきている。
【0003】
ところで、空気圧縮機用のスクロール圧縮機は使い勝手の良さから塗装用等の小容量から、工場空気源等の大容量(概ね、駆動モータの出力が7.5kw以上)へその需要は広まってきている。そこで、この大容量の需要を満たすために、鏡板の両側にラップが形成された旋回スクロールを、両側から固定スクロールで挟み込むようにして固定スクロールを配置する、いわゆる両歯式スクロール圧縮機(もしくはダブルスクロール圧縮機)が脚光を浴びている。この両歯式スクロール圧縮機の例が特開平10−246189号公報に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記両歯式スクロール圧縮機は、スクロールラップの外周部に主クランク軸及び補助クランク軸の2本の軸が配置され、これら主クランク軸及び補助クランク軸をタイミングベルトによって同期回転させることにより旋回スクロールを駆動する外周駆動形になっている。
【0005】
上記従来の外周駆動形スクロール圧縮機の軸受部支持構造について図を用いて説明する。図4は、2本の軸のうち、補助クランク軸の軸受部の詳細断面図である。補助クランク軸6は、2個の軸受(玉軸受)11によって支持されている。軸受11は、スリーブ12内に挿入されスライダ14A,14Bを介して旋回スクロール2を回転自在に支持している。前記スリーブ12は、補助クランク軸6を中心に図示左側及び右側の外周面が主クランク軸5と補助クランク軸6とを結ぶ方向と平行な平面に形成されている。
【0006】
スライダ14A,14Bは油含浸金属によって製作され、スリーブ12の前記平面の外周面に締めしろをもって締め付けられ相対向して配置されている。旋回スクロール2とスリーブ12とを径方向に弾性的に固定するためにOリングなどのシール部材16A,16Bが介在している。また、スリーブ12の図示上面及び底面を弾性的に固定するために、金属製の波ばね19を介在させて押さえ板18によって軸受11を固定している。
【0007】
この場合、以下の2つの理由により、少なくとも一方の軸(上記従来例では補助クランク軸側)には旋回スクロールと固定スクロールとのクランク軸間距離の相対的な微小変動(微小変位)を吸収するためのスライド機構による摺動面が必要となる。
【0008】
1つ目は、運転中の圧縮熱による旋回スクロールと固定スクロールとの熱膨張量が異なるため、スライド機構がないと、例えば旋回スクロールの方が熱膨張量が多い場合、軸に熱応力がかかって破壊されてしまう。
【0009】
2つ目は、組立時のタイミングベルトの取り付け誤差や、機械加工精度の問題から、もともと生じている両クランク軸間の位相差により軸に応力がかかる。
【0010】
上記したように従来、スライダ14A,14Bには空孔に油含浸をした金属材料が用いられ、スリーブ12も金属に表面処理を施したものが用いられており、スライダ14A,14B及びスリーブ12の摺動面に、運転中にガタが発生しないように比較的強い締めしろで押さえられている。
【0011】
また、スリーブ12底面は旋回スクロール2(アルミ合金や鋳鉄)と直接接触しており、スリーブ12上面は金属製の波ばね15を介して比較的弱い面圧で固定されている。
【0012】
しかし、金属同士が接触するスライド機構では、空孔に油を含浸してもその油が切れてしまった場合は金属接触となり、強い面圧で焼きつきが発生したり、摩耗が急激に進行したりする。また油が切れなくても、底面や、上面は金属同士の接触となっているため、波ばねによる面圧は弱くてもスクロール圧縮機の運転時の微振動によって金属接触部がたたかれて腐食し、圧縮機製作時の寸法精度を維持できなくなり、スクロールラップ同士が接触したり、圧縮機の性能が低下したりする。
上記技術には、この点について考慮されていない。
【0013】
本発明の目的は、微振動のたたかれによる腐食を防止して、長期にわたって高い信頼性をもって運転することのできるスクロール圧縮機を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るスクロール圧縮機の発明の構成は、鏡板の両側にラップを有する旋回スクロールと、この旋回スクロールのラップと噛み合うラップを有する2つの固定スクロールと、前記旋回クロールを駆動するために前記固定スクロールのラップ外周部に位置し回転自在に支持された主クランク軸及び補助クランク軸からなるクランク軸と、前記主クランク軸と前記補助クランク軸とを同期させるタイミングベルトと、前記タイミングベルトが装架される主クランク軸側のタイミングプーリー及び補助クランク軸側のタイミングプーリーと、前記クランク軸の少なくとも一つの周辺に前記旋回スクロールと前記固定スクロールとのクランク軸間の相対的な位置変動を吸収するスライド機構を有するスクロール圧縮機において、前記スライド機構は、補助クランク軸を回転自在に支持する軸受が挿入され外周が前記主クランク軸と前記補助クランク軸とを結ぶ方向と平行な平面を有する金属製のスリーブと、このスリーブの外周にあってこのスリーブの前記平面に接触して摺動するように配置され微振動によるたたかれを吸収する樹脂製のスライダと、前記軸受の上面を弾性的に支持し微振動によるたたかれを吸収するOリングからなる樹脂シール部材と、この樹脂シール部材の上面を押さえる押さえ板と、前記スリーブの底面と前記旋回スクロールとの間に配置され微振動によるたたかれを吸収するエンジニアリングプラスチック製の薄膜シートとを備え、前記押さえ板の内周部下面に下方に突出させた突出部を形成し、この突出部を前記樹脂シール部材に当接すると共に、前記スリーブの上端を前記突出部の外周側に位置させて前記押さえ板の下面との間に隙間を設けたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の両歯式のスクロール圧縮機に係る実施例の縦断面図である。本実施例は、主として空気圧縮用に使用されるスクロール圧縮機を示すものである。
【0020】
両歯式のスクロール圧縮機1は、鏡板2Aの両側に渦巻状のスクロールラップ2B,2Cが形成された旋回スクロール2と、鏡板3A,4Aに、前記スクロールラップ2B,2Cと噛み合って圧縮作動室を構成する渦巻状のスクロールラップ3B,4Bが形成された固定スクロール3(図示左側)及び固定スクロール4(図示右側)を備えている。2Dは、旋回スクロール2の内側に形成された冷却フィン、3C,4Cは、それぞれ固定スクロール3,4の外側に形成された冷却フィンである。
【0021】
また、旋回スクロール2を駆動する主クランク軸5、この主クランク軸5と同期回転する補助クランク軸6、主クランク軸5と補助クランク軸6とを同期させるタイミングベルト7、このタイミングベルト7が装架される主クランク軸5側のタイミングプーリー8A、補助クランク軸6側のタイミングプーリー8B、主クランク軸5を駆動するモータ(図示せず)の動力を主クランク軸5に伝達するのに用いるVプーリー9を備えている。
【0022】
2つの固定スクロール3,4のほぼ中央部には圧縮された空気を吐出する吐出口10A,10Bが形成されている。また、旋回スクロール2の補助クランク軸6側の2個の軸受11は、金属製のスリーブ12に挿入され、主クランク軸5と補助クランク軸6間の熱膨張差等による相対的な微小な位置変動(位置的なずれ)を吸収するスライド機構を備えている。
【0023】
主クランク軸5及び補助クランク軸6は、旋回スクロール2が自転することなく公転できるように旋回スクロール2の貫通孔部において、偏心した構造になっている。これら主クランク軸5及び補助クランク軸6が偏心していることにより、
旋回スクロール2が偏心回転(旋回)運動が可能となるが、反面、両クランク軸には過大な遠心力が作用する。この過大な遠心力を相殺(もしくは軽減)するために、主クランク軸5及び補助クランク軸6には、バランスウエイト13A,13B,13C,13Dが取り付けられている。
【0024】
図2は、補助クランク軸の軸受部の平面図(押さえ板を除いて示す)、図3は、図2のA−A断面図で、図によって軸受部構造をさらに詳しく説明する。なお、図4と同様部分には同一符号を付けて説明する。
【0025】
補助クランク軸6は、2個の軸受(玉軸受)11によって支持されている。これら2個の軸受11は、スリーブ12内に挿入されスライダ14A,14Bを介して旋回スクロール2を回転自在に支持している。前記スリーブ12は、補助クランク軸6を中心に図示左側、及び右側の外周面が主クランク軸と補助クランク軸6とを結ぶ方向と平行な平面を有している。スリーブ12の底面と旋回スクロール2との間には樹脂製(例えば、エンジニアリングプラスチック,ポリイミド系素樹脂など)の薄膜シート15が挿入されている。同様に、スライダ14A,14Bは樹脂製(例えば、エンジニアリングプラスチック,ポリイミド系素樹脂など)であり、前記スリーブ12の外周にあってスリーブ12の前記平面に接触して補助クランク軸6の図示左側、及び右側に相対向して配置されている。
【0026】
旋回スクロール2とスリーブ12とを径方向に弾性的に支持し固定するためにOリングなどの樹脂シール部材16A,16Bが介在している。また、軸受11及びスリーブ12を弾性的に支持し固定するために、押さえ板18と軸受11との間にOリングなどの樹脂シール部材17が介在しており、また、スリーブ12の図示上端と押さえ板18との間には隙間が設けられて非接触の状態になっている。
【0027】
上記構成の両歯式スクロール圧縮機の動作は、以下の通りである。
モータで発生した動力を、Vプーリ9へVベルト(図示せず)で伝達する。これにより、主クランク軸5が回転し、同期用のタイミングベルト7及びタイミングプーリ8A,8Bを介して補助クランク軸6に動力が伝達され、補助クランク軸6が同期回転する。両クランク軸5,6が同期回転すると、旋回スクロール2が、固定スクロール3,4の双方に対して自転することなく偏心運動する。流体は吸込口(図示せず)から吸い込まれ、旋回スクロール2の偏心運動が進むにつれて圧縮され、吐出口10A,10Bから吐出される。
【0029】
本実施例によれば、スリーブ12には金属接触部がなくなり、微振動によるたたかれは、樹脂が吸収するため腐食を起こすことがない。なお、図示上下のシール部材16A,16B間のスリーブ12とスライダ14A,14Bとの間の摺動面に、グリース等の潤滑材を塗布もしくは充填し、油被膜を形成すればさらに効果がある。
【0030】
一般的に金属材料に置換わる樹脂は高価であるため、そこで例えばスライダ14A,14Bのみを樹脂材料としても良いし、またグリース等を充填するだけでも、腐食の発生を抑制することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、スリーブとスライダとの摺動面、スリーブの底面と旋回スクロールとの間、軸受の上面及びスリーブの上面と押さえ板との間において、微振動のたたかれによって発生する腐食を防止できるので、長期にわたって高い信頼性をもって運転することのできるスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクロール圧縮機に係る実施例の縦断面図である。
【図2】補助クランク軸の軸受部の平面図である(押さえ板を除いて示す)。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】従来のスクロール圧縮機の縦断面図である。
【符号の説明】
1…スクロール圧縮機
2…旋回スクロール、2A…鏡板、2A,2C…スクロールラップ、2D…冷却フィン
3…固定スクロール、3A…鏡板、3B…スクロールラップ、3C…冷却フィン
4…固定スクロール、4A…鏡板、4B…スクロールラップ、4C…冷却フィン
5…主クランク軸
6…補助クランク軸
7…タイミングベルト
8A,8B…タイミングプーリ
9…Vプーリ
10A,10B…吐出口
11…軸受
12…スリーブ
13A,13B,13C,13D…バランスウエイト
14A,14B…スライダ
15…薄膜シート
16A,16B…シール部材
17…シール部材
18…押さえ板
19…波ばね
Claims (1)
- 鏡板の両側にラップを有する旋回スクロールと、
この旋回スクロールのラップと噛み合うラップを有する2つの固定スクロールと、
前記旋回クロールを駆動するために前記固定スクロールのラップ外周部に位置し回転自在に支持された主クランク軸及び補助クランク軸からなるクランク軸と、
前記主クランク軸と前記補助クランク軸とを同期させるタイミングベルトと、
前記タイミングベルトが装架される主クランク軸側のタイミングプーリー及び補助クランク軸側のタイミングプーリーと、
前記クランク軸の少なくとも一つの周辺に前記旋回スクロールと前記固定スクロールとのクランク軸間の相対的な位置変動を吸収するスライド機構を有するスクロール圧縮機において、
前記スライド機構は、補助クランク軸を回転自在に支持する軸受が挿入され外周が前記主クランク軸と前記補助クランク軸とを結ぶ方向と平行な平面を有する金属製のスリーブと、このスリーブの外周にあってこのスリーブの前記平面に接触して摺動するように配置され微振動によるたたかれを吸収する樹脂製のスライダと、前記軸受の上面を弾性的に支持し微振動によるたたかれを吸収するOリングからなる樹脂シール部材と、この樹脂シール部材の上面を押さえる押さえ板と、前記スリーブの底面と前記旋回スクロールとの間に配置され微振動によるたたかれを吸収するエンジニアリングプラスチック製の薄膜シートとを備え、
前記押さえ板の内周部下面に下方に突出させた突出部を形成し、この突出部を前記樹脂シール部材に当接すると共に、前記スリーブの上端を前記突出部の外周側に位置させて前記押さえ板の下面との間に隙間を設けた
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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