JP3868797B2 - ロックボルト用異形管の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

ロックボルト用異形管の製造方法およびその製造装置 Download PDF

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武文 仲子
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内部に流体を圧入し、流体圧で管体を半径方向に膨張させることによって岩盤に設けた孔内に管体を充満させる管状膨張型ロックボルト用の異形管を製造する方法および装置に関するに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、崩落し易い岩盤や地盤を固結させるために、従来の棒状ロックボルトに代わって管状のロックボルトが使用されるようになった。
図1に示すような、一端3が密封され、他端に流体流入口4が形成され、外周面に膨張用凹部2が形成された鋼管1を、岩盤や地盤に穿った孔に挿入し(図2のa)、この鋼管を、圧力流体を利用して膨張させ(図2のb)、孔と鋼管を密着させる(図2のc)ことによって岩盤や地盤を鋼管で固結させるものである。
膨張用凹部2は、図1に示すように半径方向の深いくぼみで形成されている。このくぼみは、引抜き法やロール成形法により形成されている。
【0003】
引抜き法では、円形断面から目的とする凹部を有する断面形状にまで次第に変化する断面形状に合わせて上下、左右あるいは上下左右一対の回転自由なロールからなる成形スタンド複数段を一列に並べた成形装置に、素材鋼管の先端に取付けたタブを入側からロール間に挿入して出側まで通しておいて、このタブを引抜き装置に掴ませて素材鋼管を一連の成形ロールの間を引抜いて成形している。一方、ロール成形法では、一連の成形スタンドの内、一部あるいは全てのロールを駆動ロールとし、入側から素材鋼管を挿入してロールの駆動力により順次ロール間に材料を送り込むことによって断面を成形している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
引抜き法では、鋼管の先端につかみ部(タブ)を設け、成形後に切除する必要があり、作業効率および素材歩留まりの面で問題がある。ロール成形法は入側より素材鋼管を供給するだけで成形できるので効率的であり、ごく一部の多品種少量生産品を除いては引抜き法よりも一般的である。しかしながら、ロール一段当りの成形量が多いとロールへの噛み込み性が悪くなり、ロールと材料がスリップして動かなくなる危険性があるため、出側から材料に推進力を与える引抜き法よりも、一段当りの成形量を小さくとる必要があり、その結果多くの成形ロールスタンドを必要とし、作業効率的にはよくない。
【0005】
また、非対称な断面形状をロール成形する場合、反り(曲り)が発生し易いという問題がある。
所定長さの鋼管を素材とするオフライン成形の場合、反り(曲り)が発生すると、次のロールに入らなくなるという問題もある。このため、反り(曲り)を抑制するために1スタンド当りの成形量を少なくすると、さらなる成形段数の増加を招き、さらには成形段数を増加させた場合でも、製品の先後端に曲りの非定常部分が残るため切除する必要があり、歩留まりを悪化させる原因ともなる。
インライン成形においても、反り(曲り)の発生は初期の通管時にトラブルを起こす原因となるばかりでなく、ライン出側での曲り取りのための調整が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、1段あたりの成形量を大きくとって少ない段数で成形し、かつ成形時の反りの発生を防いで効率良くロックボルト用の異形管を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のロックボルト用異形管の製造方法は、その目的を達成するため、素材鋼管を大小2種類の凸曲面よりなる断面にロール成形する第一工程と、前記2種類の凸曲面の内の曲率半径の大きい面の中央表面から円盤状凸ロールを当て前記曲率半径の大きい面を管の内側に窪ませるようにロール成形する第二工程と、中央が窪み樋状に湾曲した断面の両側にロールを当て樋状開口部を狭めて管外径を小さくロール成形する第三工程からなることを特徴とする。
第一工程および第二工程のロール成形の内、1段以上の成形ロールについて、管の凹み側の成形ロール中心を凸側の成形ロール中心よりも成形方向の出側にずらして配置してロール成形することが好ましい。
また、このような異形ロール成形を造管機の出側で、造管に引き続いて連続的に行うことが好ましい。
【0008】
また、本発明のロックボルト用異形管の製造装置は、素管の円周方向に配置された、曲率半径の大きい凹部をもつロールと曲率半径の小さい凹部をもつロールからなる第一成形スタンド群と、同じく素管の円周方向に配置された、前記曲率半径の小さい凹部をもつロールと同じかそれよりも小さい曲率半径の凹部をもつロールと端部の曲率半径が小さい円盤状の凸ロールからなる第二成形スタンド群と、製品の外形曲率半径と同等以上の曲率半径の凹部をもつ一対のロールが、前記第一、第二成形スタンド群のロールと直行する方向に配置された第三成形スタンド群を備えたことを特徴とする。
第一〜第三の成形スタンド群が、それぞれ1〜2組の成形ロールからなるものとすることができる。また、第一〜第二の成形スタンド群にあっては、1段以上のロールにおいて管の凹み側の成形ロール中心を凸側の成形ロール中心よりも成形方向の出側にずらして配置することが好ましい。また、第三成形スタンド群の一部あるいは全てのスタンドに管の凸側の材料が対向する一対のロールのギャップからはみ出すのを防止するロールを設けた3方ロールを適用してもよい。
さらに、第一〜第三の成形スタンド群を造管機の最終スタンドの後段に連続して配置することが好ましい。
【0009】
【実施の形態】
本発明に従ったロックボルト用異形管の製造は、複数の成形工程を連続的に行うことによりなされる。
図3にしたがって、その過程を概略的に説明すると、まず、高周波溶接法等で溶接された鋼管を準備し(a)、凹異形管の凹部の周方向長さと、凹部以外の周方向長さにほぼ適合するように円弧の半径ならびに角度を設定した大小2種類の凸曲面よりなる断面にロール成形する(b)。その後、前記2種類の凸曲面の内の曲率半径の大きい面の中央表面から円盤状ロールを当て前記曲率半径の大きい面を管の内側に窪ませるようにロール成形する(c)。その後さらに、中央が窪み樋状に湾曲した断面の両側にロールを当て樋状開口部を狭めて管外径を小さくロール成形して(d),(e)、半径方向に窪ませたくぼみを軸方向にわたって長く形成したロックボルト用異形管を製造する。本発明のロックボルト用異形管の素管としては、耐食性を向上させためっき鋼管を使用してもよい。
【0010】
上記各過程を、使用するロール形状を説明しながら詳細に説明する。
第一の成形工程にあっては、素管Mを、図4に示すような曲率半径の大きい凹みをもつロール11とそれよりも曲率半径の小さいロール12とからなる成形スタンドを通す。この段階の成形は、曲率半径を順次大きくした2段階のスタンドとすることもできる。
次に第二の成形工程にあっては、素管Mは、図5に示すようにその断面が大小2種類の凸曲面よりなるロールによって成形されているので、前記第一の成形工程で使用した曲率半径の小さい凹部をもつロールと同じかそれよりも小さい曲率半径の凹部をもつロール22と端部の曲率半径が小さい円盤状の凸ロール21とからなる成形スタンド間を、前記曲率半径が大きい方の凸曲面中央に前記円盤状のロール21を押付けるように通す。この段階での成形は、曲率半径を順次小さくした2段階のスタンドとすることもできる。この段階での素管の断面は、中央が窪み樋状に湾曲した形状となっていて、管の外形は、素管の最初の径に近い半円形状であり、岩盤に挿入するためには岩盤に素管径よりも若干大きな孔を穿つ必要があり、またその後くぼみ部を膨らませても岩盤を有効に固着するための力は作用しない。
【0011】
そこで、第三の成形工程において、外径を小さくすることが必要になる。図6に示す、素管Mの最初の径よりも曲率半径の小さい曲率半径の凹部を有する一対のロール31,32からなる成形スタンド間を通し、樋状開口部を狭めて管外径を小さくする。この段階にあっても、曲率半径を順次小さくした2段階のロール間を通す成形としても良い。この際、ロールの曲率半径を小さくすると、管の凸部がロールギャップからはみ出して、全体の形状がいびつな形になることがあるので、図6の(b)に示すように、反対側に押えロール33を配置することが好ましい。
【0012】
ところで、上記のように、管状体に半径方向のくぼみを形成しようとすると、加工後、管状体はくぼみを形成した方向に反りが発生する(図7のa参照)。管を外から包み込むような形状のロール(凹型のロール)ではロールと材料の接触領域は成形方向前後に長くなり、一方平坦に近い面を外から押したりあるいは材料を内側から成形するようなロール(凸型ロール)ではロールと材料の接触領域はロール直下の狭い範囲に限られる傾向がある。したがって上下で断面形状が異なる非対称形状の異形管を成形する場合、接触領域に働く力のバランスにより、凸型のロールの方向に曲るような曲げモーメントが発生し、ロールを通過した管は図7aに示すように凸型ロール側に曲る。
【0013】
この反りが、前記したようにインライン成形時にあっては通管トラブルの原因になったり、定尺のパイプを素材とするオフライン成形時にあっては歩留まりの低下の要因になっている。
そこで、このような弊害をなくすために、第一工程あるいは第二工程の成形スタンドの少なくとも1段以上のロールにおいて、管の凹み側の成形ロール中心を凸側の成形ロール中心よりも成形方法の出側にずらして配置する(図7のb参照)。向かい合ったロールに作用する面圧の合力の作用点をずらしたことにより互いの曲げモーメントは相殺される形態となり、反りの発生を防止することができる。
【0014】
本発明技術は、インライン成形にもオフライン成形にも適用することが可能である。造管ラインの出側で連続的に異形管成形を行うインライン成形の場合、ロール疵等を生じないように各工程での断面形状を適切に設定して総スタンドを4〜5段に収めることにより、通常の鋼管(丸管あるいは角鋼管)の製造ラインのサイジングスタンドに異形管成形ロールをそのまま組み込むことが可能で、成形スタンドを増設する必要がない。この場合、初期通管でのトラブル回避あるいは曲がり修正の観点から、第1工程および該2工程の一部のスタンドにおいて異形管の凹部側のロールを成形方向出側にずらして配置することが好ましい。
【0015】
所定長さの鋼管を素材とするオフライン成形に際しては、成形ロールを出た鋼管が次の成形ロールに入る程度に曲りを抑制する必要がある。そのためには、1段当りの成形量を抑制し、各ロールスタンドをできるだけ近づけて配置する必要がある。1段当りの成形量の設定(すなわち総成形段数の設定)には、各ロールにおける噛み込み性を考慮し、スリップが発生しない程度に抑える必要がある。
このような方法によっても、鋼管の先後端にはそれぞれスタンド間隔に相当する長さの曲り修正されない非定常部が発生するため、各スタンドにおいて曲りを発生させないように、異形管の凹部側のロールを成形方向出側にずらして配置することにより歩留まりの低下を防止することができる。
【0016】
【実施例】
造管ラインにおいて板厚2mm、外形54mmの400N級の強度をもつ鋼管を高周波溶接により製造し、引き続いて該造管ラインのサイジング工程において、第一工程として素材鋼管と同等な周長の151mmRと41mmRの曲率よりなる一対のロールにより、大小2つの曲率よりなる断面形状に成形した。引き続いて第二工程として一対の41mmR側に配置した30mmRの曲率をもつロールと151mmR側に配置した外周面に15mmRの凸曲面をもつ円盤状のロールで断面形状が樋状になるように成形し、引き続いて第三工程として25mmRの曲率をもつロール一対と、17mmRの曲率をもつ3つのロールよりなる成形ロールからなる計2スタンドにて外径約φ34mmの断面に成形した。
第一工程および第二工程の2つの成形スタンドにおいて異形管の凹部側のロールを対向するロールよりも10mmライン方向出側にずらして配置した。
以上のように、合計4段のロールにより異形管成形を完了し、引き続いて配置された矯正スタンドにおいて曲りおよび外径寸法を微調整して外径φ34mmの外周面に1ヶ所の凹部をもつ異形管を成形した。
【0017】
高周波溶接により製造した板厚2mm、外形54mm、製品長さ6mに成形後の切除長さを加えた長さの400N級の強度をもつ鋼管を、第一工程として素材鋼管と同等な周長の151mmRと41mmRの曲率よりなる一対のロールにより、大小2つの曲率よりなる断面形状に成形した。引き続いて第二工程として三対の41mmR側に配置した30mmRの曲率をもつロールと151mmR側に配置した外周面に15mmRの凸曲面をもつ円盤状のロールで断面形状が樋状になるように順次成形し、引き続いて第三工程として25mmRの曲率をもつロール二対と、17mmRの曲率をもつ3つのロールよりなる成形ロールからなる計3スタンドにて1ヶ所の凹部をもつ断面に成形した。
第一工程の成形スタンドにおいて異形管の凹部側のロールを対向するロールよりも10mmライン方向出側に、また第に工程の成形スタンドにおいて異形管の凹部側のロールを対向するロールよりも5mmライン方向出側にずらして配置した。
以上のように、合計7段のロールにより異形管成形を完了し、引き続いて配置された矯正スタンドにおいて曲りおよび外径寸法を微調整して外径φ34mmの外周面に1ヶ所の凹部をもつ異形管を成形した。
【0018】
造管ラインの出側に異形管成形ラインを配したインライン成形では、第一工程および第二工程の2つの成形スタンドにおいて異形管の凹部側のロールを対向するロールよりもライン方向出側にずらして配置することにより、初期の通管作業ならびに矯正工程における曲がりの修正作業が容易となった。
オフライン成形においては、第一工程および第二工程の2つの成形スタンドにおいて異形管の凹部側のロールを対向するロールよりもライン方向出側にずらして配置することにより、鋼管先端のロールへの侵入が容易となり、損傷を回避することが可能となった。また、従来法では、鋼管先後端のスタンド間隔に相当する長さ約500mmずつ切除する必要があったものを断面形状が不安定な100mmずつ切除するのみで全長にわたって断面形状が良好で且つ曲りのない凹型異形管を製造できた。本発明方法の採用により、従来法では86%程度であった歩留まりを97%まで高めることができた。
【0019】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明により、外周面に膨張用凹部を有するロックボルト用の異形管を、1段当りの成形量を大きくとって少ない段数で成形し、かつ成形時の反りの発生を防いで製造効率と歩留まり良くロール成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鋼管製ロックボルトの斜視図
【図2】 拡管前と、拡管後圧力のかかり方を説明する図
【図3】 鋼管を変形していく過程の断面形状を説明する図
【図4】 第一工程で使用するロール形状を説明する図
【図5】 第二工程で使用するロール形状を説明する図
【図6】 第三工程で使用するロール形状を説明する図
【図7】 ロールのずらし配置を説明する図
【符号の説明】
1:鋼管製ロックボルト 2:膨張用凹部 3:封止端
4:流体流入口

Claims (7)

  1. 素材鋼管を大小2種類の凸曲面よりなる断面にロール成形する第一工程と、前記2種類の凸曲面の内の曲率半径の大きい面の中央表面から円盤状ロールを当て前記曲率半径の大きい面を管の内側に窪ませるようにロール成形する第二工程と、中央が窪み樋状に湾曲した断面の両側にロールを当て樋状開口部を狭めて管外径を小さくロール成形する第三工程からなることを特徴とするロックボルト用異形管の製造方法。
  2. 第一工程および第二工程のロール成形の内、1段以上の成形ロールについて、管の凹み側の成形ロール中心を凸側の成形ロール中心よりも成形方法の出側にずらして配置してロール成形する請求項1に記載のロックボルト用異形管の製造方法。
  3. 異形成形を、造管機の出側で、造管に引き続いて連続的に行う請求項1または2に記載のロックボルト用異形管の製造方法。
  4. 素管の円周方向に配置された、曲率半径の大きい凹部をもつロールと曲率半径の小さい凹部をもつロールからなる第一成形スタンド群と、同じく素管の円周方向に配置された、前記曲率半径の小さい凹部をもつロールと同じかそれよりも小さい曲率半径の凹部をもつロールと端部の曲率半径が小さい円盤状の凸ロールからなる第二成形スタンド群と、製品の外形曲率半径と同等以上の曲率半径の凹部をもつ一対のロールが、前記第一、第二成形スタンド群のロールと直行する方向に配置された第三成形スタンド群を備えたことを特徴とするロックボルト用異形管の製造装置。
  5. 第一〜第三の成形スタンド群が、それぞれ1〜2段の成形ロールからなるものである請求項4に記載のロックボルト用異形管の製造装置。
  6. 第一〜第二の成形スタンド群にあっては、1段以上のロールにおいて管の凹み側の成形ロール中心が凸側の成形ロール中心よりも成形方向の出側にずらして配置されている請求項4または5に記載のロックボルト用異形管の製造装置。
  7. 第一〜第三の成形スタンド群が、造管機の最終スタンドの後段に連続して配置されている請求項4〜6のいずれか1に記載のロックボルト用異形管の製造装置。
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