JP3868738B2 - 光学的情報記録用媒体およびその製造方法ならびにスパッタリング用ターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的情報記録用媒体およびその製造方法に関し、詳しくは、レーザービーム等の照射により、高速かつ高密度に情報を記録、消去、再生することが可能な光学的情報記録用媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶状態と非晶質状態との間などの様に原子配列が変化する相変化によって情報の記録や再生が行なわれる相変化型の光学的情報記録用媒体は公知である。一般的な相変化型の光学的情報記録用媒体においては、相変化によって記録再生が行なわれる記録層の上又は下側に誘電体から成る保護層が設けられている。
【0003】
一般に、書換え型の相変化記録媒体では、相異なる結晶状態を実現するため、2つの異なるレーザービームパワーを使用する。この方式を例にとって説明すると、結晶化は、結晶化温度より十分高く、概ね融点近傍の温度まで記録層を加熱することによって行われ、非晶質化は、記録層を融点より高い温度まで加熱し、急冷することによって行われる。この場合、上記の保護層は、十分な冷却速度(過冷却速度)を得るための放熱層としての機能を有する。また、非晶質マーク形成過程における記録層の溶融・相変化に伴う体積変化および保護層自身の熱膨張による変形を抑制したり、プラスチック基板への熱的ダメージを防いだり、湿気による記録層の劣化を防止するためにも、保護層は重要である。
【0004】
上記の様な保護層の材質は、照射されるレーザービームに対して光学的に透明であること、融点・軟化点・分解温度が高いこと、形成が容易であること、適度な熱伝導性を有する等の観点から選定される。また、オーバーライト時の加熱・急冷却過程においては、保護層内部には、記録層の溶融領域に接する面を最も高温とし、基板または反射層に接する面を低温として、内部に数百℃に及ぶ温度変化が100nsec未満の瞬時に形成されるため、記録層を押しのけ様とする方向に急激な熱膨張変形が生じる。この様な保護層自身の急激な熱膨張変形に耐える必要もある。
【0005】
上記の様に、化学的に安定であり、高温域でも十分な耐熱性および機械的強度を有する保護層の材料として、金属の酸化物や窒化物などの誘電体が知られている。
【0006】
しかしながら、一般に、誘電体薄膜とプラスチック基板とは熱膨張率や弾性的性質が大きく異なるため、記録・消去を繰り返すうちに、誘電体薄が膜基板から剥がれてピンホールやクラックを生じる原因となる。代表的な非晶質誘電体である、ケイ素、タンタル、希土類元素などの酸化物、窒化物、炭化物、弗化物などは、静的な高温状態での耐熱性には優れるものの、硬度が高く脆性を示すため上述の様な急激かつ局所的な温度変化に対しては、微視的な欠陥がクラックとして成長しバースト欠陥となり易いと言う欠点もある。また、プラスチック基板は湿度によって反りを生じ易いため、誘電体保護層は基板や記録層との界面に応力を生じ易く剥がれ易い。更に、誘電体保護層は相変化記録層として通常使用されるカルコゲン系元素との密着性も良くないため、より剥がれ易い。
【0007】
一方、単独の誘電体だけでは達成できないユニークな物性を発現させるため、複数の誘電体の混合物から成る複合誘電体を保護層として使用することも知られている。この様な複合誘電体としては、カルコゲナイド系元素を含む化合物である、ZnS、ZnSe、PbS、CdS等と酸化物、窒化物、弗化物、炭化物などの混合物が数多く提案されている。特に、主成分としてのZnSにSiO2やY2O3等を混合した複合誘電体が、マーク位置記録で100万回に及ぶ繰返しオーバーライトを実現できる保護層として提案されている。
【0008】
例えば、特開平5−174423号公報にはZnSとY2O3の複合誘電体が記載されている。この公知文献の実施例には、Y2O3単体の保護層およびY2O3をZnSで最大80mol%置換した保護層により繰り返し特性が向上するとの記載がある。また、ZnSとSiO2の複合誘電体は相変化媒体の保護層として実用化されている。特にZnSとSiO2のモル比率が80対20のターゲットが広く使用されている。
【0009】
上記の複合誘電体保護層は、GeTeSb、AgInSbTe等のカルコゲナイド系合金薄膜に対する密着性が純粋な酸化物または窒化物の誘電体保護層に比べて優れている。また、単体のZnS自体の特徴であるクラックの伝播によるバースト欠陥の成長も殆どないため、媒体の繰返しオーバーライト特性が向上し、加速試験における膜剥離も少なく、高い信頼性が得られる。
【0010】
しかしながら、近年、媒体の繰り返しオーバーライト特性や耐久性は、ますます優れたものが求められている。例えば、高密度化のため、マーク長記録が採用され且つマーク長が0.5μm程度より短くなると、繰り返し耐久性は著しく悪化する。その理由は、マーク位置記録では見逃された、僅かなノイズ増加や反射率変化が許容されなくなるからである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反射率の低下やノイズの増加を抑え、物質移動を抑制し、繰返しオーバーライト特性に優れた光学的情報記録用媒体およびその製法ならびに新規なスパッタリング用ターゲットを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、代表的なZnS(80):SiO2(20)から成る複合膜や上記のZnSとY2O3の複合膜は、微視的な塑性変形が蓄積してノイズが増加したり、反射率が低下したりする。
【0013】
本発明者は、上記の知見を基にして、更に検討を重ねた結果、Y2O2Sに例示される酸硫化物を含む様な、特定組成の保護層を使用すれば反射率の低下やノイズの増加を抑え、物質移動を抑制することが出来るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の要旨は、基板上に保護層と相変化型記録層とを有する光学的情報記録用媒体において、上記の保護層が金属酸硫化物を含有することを特徴とする光学的情報記録用媒体、に存する。
【0015】
本発明の第2の要旨は、基板上に保護層と相変化型記録層とを有する光学的情報記録用媒体において、当該保護層が、イットリウムと酸素と硫黄またはセレンと、必要に応じてその他の成分を含み、但し亜鉛を含有する場合には、硫黄およびセレンの合計量よりも少ない原子数の亜鉛を含むことを特徴とする光学的情報記録用媒体、に存する。
【0016】
本発明の第3の要旨は、保護層用ターゲットをスパッタして基板上に保護層を形成する工程を含む光学的情報記録用媒体の製造方法において、当該保護層用ターゲットとして、金属酸硫化物を使用することを特徴とする光学的情報記録用媒体の製造方法、に存する。
【0017】
更に、本発明の第4の要旨は、金属酸硫化物を含有するスパッタリング用ターゲットに存する。
【0018】
従来の保護層組成においては、Y2O3やY2S3等が公知である。また、Y2O3とZnSとの混合組成も公知である。しかしながら、これらの組成の保護層では、上記の特性、特に繰り返しオーバーライト耐久性は不十分であり、Y2O2S等の金属酸硫化物をスパッタリングターゲットとして使用すると十分な特性が得られる。金属酸硫化物をスパッタして得られた保護層は、一見すると公知の保護層組成と類似する様にも見えるが、スパッタリングターゲットが金属酸硫化物であることによって、その詳細な構造は大きく異なる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明の光学的情報記録用媒体の一般的な構造について説明する。図1は本発明の媒体の層構成の一例を示す模式的断面図、図2は本発明の媒体の層構成の他の一例を示す模式的断面図である。図1は、基板上に、第1保護層、相変化型記録層、第2保護層および反射層がこの順に設けられて成る光学的情報記録用媒体であり、図2は、基板上に、反射層、第2保護層、相変化型記録層および第1保護層がこの順に設けられて成る光学的情報記録用媒体である。なお、本発明において、記録層から視て非反射層側にある保護層を第1保護層、記録層から視て反射層側にある保護層を第2保護層という。
【0020】
基板(1)の材質としては、通常、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、光硬化性樹脂などの透明樹脂やガラスが使用される。生産性の面からは透明樹脂が好ましく、特にポリカーボネート樹脂は、吸水性、光学特性、保護層との密着性などに優れており好ましい。
【0021】
相変化記録層(3)、保護層(2)及び(4)、反射層(5)は、通常、スパッタリング法、蒸着法などによって形成される。記録層用のターゲット、保護層用のターゲット、反射層用のターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で層形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で有利である。この場合、それぞれの層に使用するターゲットは、複数のターゲットを使用してコスパッタを行なっても、複合材料ターゲットを使用してもどちらでも構わない。保護コート層(6)の材質としては、通常、硬度の高い紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂が使用される。
【0022】
記録層の厚さは、通常1〜100nm、好ましくは5〜50nmとされる。記録層の厚さが薄すぎる場合は、十分なコントラストが得られ難く、また、結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での記録消去が困難となり易い。一方、記録層の厚さが厚すぎる場合は、やはり光学的なコントラストが得られ難く、また、クラックが生じ易くなる。特に、近年開発された書換え型コンパクトディスク(CD−RW)の様にCDと互換性がとれるコントラスト(例えば変調度50%以上)を得るため、更には、今後現れる書き換え型DVDと互換性がとれるコントラストを得るため、5〜30nmが好ましい。記録層の厚さが薄すぎる場合は上記に加えて反射率が低くなりすぎ、厚すぎる場合は熱容量が大きくなり記録感度が悪くなる傾向にある。
【0023】
記録層の材料としては、反射率などの各種の光学特性の変化を伴う相変化(例えば結晶−非晶質変化)が可能な各種の材料が使用できる。通常は合金が使用されるが、好ましくは、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、AgInSbTe等のカルコゲン元素を含む合金が使用される。これらはオーバーライト可能な材料である。具体的には、{(Sb2Te3)1-X(GeTe)X}1-YSby合金(ただし、0.2≦X≦0.9、0≦Y≦0.1)の他、この3元合金に10mol%程度までの添加元素(In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Bi、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Wおよび希土類金属元素のうち少なくとも1種)を含む合金が挙げられる。なお、Sb2Te3とGeTeとを結んだ線上の組成においてGe2Sb2Te5金属間化合物組成近傍とすれば、線速10m/s以上でもオーバーライト可能となる。
【0024】
また、Sb(70)Te(30)の共晶点近傍のSbTe合金を主成分とするMSbTe合金(ただし、MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Bi、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Wおよび希土類金属元素のうち少なくとも1種)も高速でのオーバーライトが可能な材料として好ましい。
【0025】
より好ましくは、上記合金においてMw(SbZTe1-Z)1-W(ただし、0≦W≦0.20、0.6≦Z≦0.9)の範囲である。斯かる組成の合金は、線速1.2〜30m/s(CD線速の1倍速から24倍速)で最大線速と最小線速の比が2以上の広範囲の線速において良好なオーバーライトが可能である。
【0026】
なお、Sb(70)Te(30)の共晶点近傍の合金薄膜では、Sb/Te比が大きいほど結晶化速度が速くなる傾向があるためSb/Te比により線速依存性が決まる。
【0027】
成膜時の記録層は通常非晶質であり、記録層全面を結晶化して初期化された状態(未記録状態)とした後に使用する。初期化はフラッシュランプアニール又は100μm程度に集光したレーザービームで、瞬間的に記録層を結晶化温度以上に加熱することで達成される。初期化に要する時間を短縮し、確実に1回の光ビームの照射で初期化するための一つの方法として溶融初期化が有効である。
【0028】
例えば、直径10〜数百μm程度に集束した光ビーム(ガスレーザー若しくは半導体レーザービーム)又は長軸50〜100μm、短軸1〜10μm程度の楕円状に集光した光ビームで局所的に加熱することにより、ビーム中心部に限定して溶融させる。このとき、ビーム周辺部も同時に加熱されるため、溶融部が余熱され冷却速度が遅くなり、良好な再結晶化が行われる。これにより、従来の固相結晶化に対して10分の1に初期化時間を短縮でき、生産性が大幅に短縮できると共に、オーバーライト後の消去時における結晶性の変化を防止できる。
【0029】
第1保護層および第2保護層は、記録時の高温による基板や記録層の変形を防止するために設ける。その少なくとも一方は、後述する特定の膜を使用するが、一方のみに使用した場合、他方の保護層の材料としては、下記の観点から選ぶことが出来る。
【0030】
一般に、誘電体保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性などに留意して決定されるが、通常、透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物の他、Ca、Mg、Li等のフッ化物が使用される。また、オーバーライト時には記録層が数百℃から1000℃程度まで繰返し加熱されることから、融点または分解点は1000℃以上であることが必要がある。更に、記録再生に使用するレーザービーム波長に対して実質的に透明でなければならない。使用波長は、通常600〜800nmであるが、将来的には400nm程度まで短波長化されると考えられる。
【0031】
なお、当然ながら、400〜800nmの範囲の全ての波長に対して透明である必要はなく、使用するレーザービームに対して透明であればよい。実質的に透明であるとは、その波長に対する複素屈折率の虚数部分である吸収係数が約0.2未満であることを意味する。誘電体保護層の具体的な材料としては、金属や半導体の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物などの各種の誘電体、これらの混合物、複合物などが挙げられる。具体的な化合物としては、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、希土類酸化物、希土類硫化物、希土類フッ化物、フッ化マグネシウム等が挙げられる。特に好ましい材料は、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物である。
【0032】
反射層には、Au、Ag、Al、それらの合金などが使用されるが、放熱効果が高く熱伝導率が高い物質が好ましい。反射層の厚さは、生産コストの面から通常1000nm以下とされるが、好ましく0.01〜100nmである。
【0033】
次に、本発明の光学的情報記録用媒体の特徴について説明する。本発明の第1の態様においては、上記保護層が金属酸硫化物を含有する。金属酸硫化物を含有するとは、この構成元素が、金属酸硫化物の形態を維持して存在することを意味する。金属酸硫化物に使用する金属元素としては、LaやCeといったランタノイド元素やイットリウム等の希土類金属元素、Sc、Ti等の遷移金属元素などが挙げられる。これらの中では、希土類金属元素が好ましく、イットリウム及びLa、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyから成る群から選択される希土類金属元素が特に好ましい。イットリウムの酸硫化物は、1000℃程度までY2O3やY2S3より熱化学的に安定なので、最も好ましい元素はイットリウムである。
【0034】
金属酸硫化物の保護層中の含有量は、好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、最も好ましくは15mol%以上とする。また、金属酸化物を構成する金属元素の保護層中の含有量は、通常10原子%以上、好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上とする。金属酸硫化物の含有量が少なすぎると、オーバーライト特性が低下することがある。金属酸硫化物を含有する保護層は、金属酸硫化物を含有するターゲットを使用してスパッタリング法によって成膜することによって形成することが出来る。スパッタリングの方法については後述する。
【0035】
また、保護層は、金属酸硫化物と他の誘電体との混合物を含有することも出来る。混合する誘電体としては、前記一般的に保護層に使用することが出来る各種のものを挙げることが出来る。具体的には、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、希土類酸化物、希土類硫化物、希土類フッ化物、フッ化マグネシウム等に代表される、金属又は半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物またはフッ化物を例示することが出来る。この中でも、特に好ましいのは、記録層との密着性に優れる、硫化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物である。その結果、より安定で高い耐久性を得ることが出来る。亜鉛化合物の保護層中の含有量は、通常99mol%以下、好ましくは90mol%以下とする。ただし、混合する亜鉛化合物の種類によって、適切な含有量は変化する。例えば、硫化亜鉛の場合は、その含有量は多量でも問題はなく、通常、20mol%以上、好ましくは30mol%以上、更に好ましくは50mol%以上、最も好ましくは60mol%以上とする。一方、酸化亜鉛の場合、あまりに多い含有量は好ましくない傾向にあり、通常30mol%以下、好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下とする。また、酸化亜鉛のモル含有量は、金属酸硫化物のモル含有量の半分以下であるのがより好ましい。
【0036】
第1の態様においては、特に好ましい保護層組成であるY2O2SとZnSとを含む混合組成の場合、特に優れたオーバーライト特性を得ることが出来る。この場合の、Y2O2Sに対するZnSとのモル比は、通常1%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、また通常1000%以下、好ましくは700%以下、更に好ましくは500%以下である。
【0037】
なお、保護層中に金属状の亜鉛を存在させることも可能ではあるが、それよりも、上述の酸化亜鉛や硫化亜鉛の様な亜鉛化合物の形態で含有するのがより好ましい。また、この亜鉛含有比率と膜特性および耐久性の関係を説明し得るメカニズムについては未だ明確ではない。
【0038】
次に、本発明の第2の態様について説明する。本発明の第2の態様においては、前記の様に構成される光学的情報記録用媒体において、特定の保護層、イットリウムと酸素と硫黄またはセレンと、必要に応じてその他の成分を含み、但し亜鉛を含有する場合には、硫黄およびセレンの合計量よりも少ない原子数の亜鉛を含む。すなわち、第2の態様においては、(1)イットリウムと酸素と硫黄またはセレンとを含み、しかも、(2)硫黄およびセレンの合計量よりも少ない原子数の亜鉛を含む(亜鉛量が0の場合を含む)保護層を備える。
【0039】
保護層中のイットリウム(Y)と酸素(O)と硫黄(S)又はセレン(Se)と亜鉛(Zn)との合計量に対するイットリウム原子数比の範囲は、通常25〜50%、好ましくは30〜50%、更に好ましくは35〜45%である。イットリウムの原子数比が小さすぎる場合は、相対的オーバーライト特性が低下する傾向があり、大きすぎる場合は、酸素および硫黄またはセレンの含有比率が低下し、誘電体と金属の混合物となり、光学的に不透明な膜となり易い。
【0040】
保護層中のイットリウム(Y)と酸素(O)と硫黄(S)又はセレン(Se)と亜鉛(Zn)との合計量に対する酸素原子数比の範囲は、通常30〜50%、好ましくは35〜45%である。酸素原子数比が小さすぎる場合は、膜の光学吸収係数が大きくなりレーザーパワーの感度が低下する傾向があり、大きすぎる場合は、相対的に硫黄またはセレンの含有比率が低下し、記録層との密着性が低下し易い。
【0041】
保護層中の硫黄またはセレンは、記録層、特にその中のカルコゲナイド元素との結合が強く、それにより記録層と誘電体保護層との密着性がより強固に保持される。ただし、特に硫黄またはセレンは、遊離した状態では、誘電体保護層から記録層への拡散を起こし、そのための偏析劣化を促す原因となり易いため、保護層中のイットリウム(Y)と酸素(O)と硫黄(S)又はセレン(Se)と亜鉛(Zn)との合計量に対する硫黄またはセレンの原子数比の範囲は、通常5〜40%、好ましくは10〜30%、更に好ましくは15〜25%である。硫黄またはセレンの原子数比が小さすぎる場合は、記録層との密着性の低下を引き起こし、初期化もしくは繰り返しオーバーライトの際に、剥離を生じる傾向があり、大きすぎる場合は、一部の硫黄またはセレン原子が遊離し易い。保護層は、硫黄を含有するのが好ましい。硫黄に加え、屈折率、硬度などの物性値の調節のため、セレンを含有させることも出来る。この場合、硫黄とセレンの合計量に対するセレンの量は原子数比で50%以下とするのが好ましい。
【0042】
なお、硫黄やセレンは、酸硫化物や硫化亜鉛の様な化合物の状態で存在するのが好ましい。硫黄やセレンが遊離した状態で存在する場合は、これらが繰り返しオーバーライトによって記録層に拡散し、相変化の速度や光学定数が変化することがある。
【0043】
保護層は亜鉛を含有していてもよい。ただし、保護層中の硫黄原子の量以上の亜鉛原子は、サイクル特性等の特性を悪化させることがある。保護層中の亜鉛原子数比の範囲は、通常0〜20%、好ましくは0〜10%である。亜鉛原子数比が大きすぎる場合は過剰となり耐久性を損ない易い。この亜鉛原子数が硫黄またはセレン原子数よりも少ないことが高い耐久性を有す膜を得るための要因の一つである。すなわち、硫黄とセレンとの原子数の合計(S+Se)に対する亜鉛(Zn)の原子数の比:Zn/(S+Se)は、好ましくは0.97以下であるが、0.95以下、0.90以下、0.80以下、0.50以下が順次に一層好ましい。この様な条件下では、亜鉛やセレンは、通常、硫化亜鉛や硫化セレンの状態で存在し、金属の状態で存在する可能性は極めて小さいと予想される。逆に、亜鉛やセレンが遊離しても、これを硫化亜鉛や硫化セレンとしてトラップ出来ると考えられる。
【0044】
本発明の第2の態様においては、保護層は、好ましくはY2O2Sを含有する。Y2O2Sを含有するとは、イットリウムと硫黄と酸素とが、Y2O2Sの化合物の形態を維持して存在することを意味する。Y2O2Sを含む態様の具体的構成については、第1の態様の場合と同様である。例えば、第2の態様において、保護層は、Y2O2Sと、硫化亜鉛、酸化亜鉛等の他の誘電体との混合物を含有することも出来る。特に、酸化亜鉛を1〜30mol%混合した場合、Y2O2Sから微量の硫黄が遊離しても、Y2O2S+ZnO→Y2O3+ZnSなる反応により、これをトラップして安定化できると考えられる。
【0045】
本発明における保護層によるオーバーライト時の劣化防止のメカニズムは、未だ明確ではないが、熱伝導性および硬度が高いこと、構成元素の分布の均一性が高いことに関係していると考えられる。すなわち、本発明における保護層は、従来から一般的に使用されているZnS−SiO2膜に代表される様にZnSを主成分とする(ZnS含有量60mol%以上)複合誘電体膜と比較し、熱伝導率および硬度が高い。一方、屈折率は略同等であり、組成比にもよるが通常1.7〜2.2程度である。
【0046】
熱伝導率が高ければ熱膨張による変形は小さくなると考える。すなわち、レーザーにより記録マークが形成される際に昇温された記録層の熱を少しでも早く逃がすことにより、保護層の記録層に接している界面領域と記録層から離れた領域との温度差、または、マーク形成領域とその周囲の温度差をいち早く解消できる。その結果、温度差起因の膜剥離やクラックの発生時期を遅らせることが出来る。すなわち、オーバーライト劣化を遅らせることが出来ると考えられる。熱伝導率は作成したディスクにおいて非晶質マークを形成する時のレーザーパワーの値から間接的に知ることが出来る。すなわち、熱伝導率が大きいほど記録層の昇温に必要なレーザーパワーは大きい傾向がある。少なくともZnS系保護層との相対的比較は可能であり、マーク形成に必要なパワーは、通常使用されるZnS(80)SiO2(20)(mol%)よりも高い。
【0047】
そして、ZnS(80)SiO2(20)(mol%)のJISヌープ硬度が280であるのに対し、本発明における保護層、例えばY2O2Sのそれは520である。斯かる高い硬度を有する本発明における保護層は、記録層の変形を防止する上で重要である。硬度が低い場合は、記録・消去に伴う記録層の体積変化、すなわち、非晶質−結晶間での体積差に起因する変形を適切に抑えることが難しく、オーバーライト回数に伴い蓄積され、やがては信号強度の低下をもたらす。
【0048】
本発明における保護層の純度は90mol%以上が好ましい。純度は高いほど好ましいが、10モル%を下回る量の不純物の保護層特性に及ぼす影響は、無視できるほど小さい。特に、不純物が安定な化合物である場合には悪影響は小さいが、不純物が10モル%を超えると膜の硬度や応力といった物性値が変わる可能性が高く保護層の特性が劣化する恐れがある。
【0049】
また、本発明における熱伝導性の高い保護層は、記録層が多層化された媒体(現在まだ実用化されていない)にも有効である。すなわち、記録層が2層ある媒体の場合、光入射側の記録層に非晶質マークを形成するためには、光を透過しない金属層は記録時の熱吸収層として利用できない。これに対し、本発明における保護層の場合、金属と同程度ではないにしても、熱伝導性が非常に高いため、非晶質マーク形成時に十分な冷却速度を得ることが可能である。
【0050】
本発明の媒体の保護層は、通常、相変化記録層に接して設けられるが、記録層の基板側とその反対側の何れの側に設けてもよい。また、通常の相変化型光記録用媒体の場合、保護層は記録層の両側に設けられる。この場合、上記の保護層はその一方または両方に設けてもよい。保護層第1(又は第2)保護層として前記の保護層を使用した場合、更に別の組成の第1(又は第2)誘電体保護層を設けることも出来る。すなわち、本発明においては、上記の特定組成の保護層に接して別の組成の保護層積層することが出来る。この場合、第1(又は第2)誘電体保護層は多層構造となる。
【0051】
誘電体保護層を多層化する場合、多層化された保護層における本発明での保護層とは異なる保護層の材料としては、金属や半導体の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物などの各種の誘電体、これらの混合物、複合物などが挙げられる。具体的な化合物としては、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、希土類酸化物、希土類硫化物、希土類フッ化物、フッ化マグネシウム等が挙げられる。好ましい材料は、金属または半導体の酸化物と硫化亜鉛との混合物である。斯かる混合物は、通常、熱伝導率が相対的に低いため、前記の特性の保護層と組み合わせた場合に熱設計の自由度が増す利点がある。この場合、硫化亜鉛の含有量は50mol%以上が好ましい。特に好ましい材料は、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物である。
【0052】
前記の様に、本発明における保護層と他の保護層とによって多層化する場合、他の保護層に本発明における保護層よりも熱伝導率の低い材料(例えば硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物)を使用するならば、感度が向上し、しかも、本発明における保護層と他の保護層との密着性が高くなり経時安定性が向上する。すなわち、本発明に係る特定組成の保護層は、熱伝導率が高いので、これよりも低い熱伝導率の他の保護層と積層することによって、熱伝導率を適当に制御することが可能となる。その結果、例えば、適切な感度と放熱特性とサイクル特性とを両立させることが出来る。
【0053】
なお、上記の多層化の場合、本発明における保護層は、記録層に接していても接していなくてもよいが、本発明の効果が高められる点において、記録層に接して設けるのが好ましい。この場合、本発明における保護層の膜厚は通常0.1〜250nm、好ましくは5〜25nm、更に好ましくは1〜10nmである。
【0054】
図1又は図2における第1又は第2誘電体保護層の膜厚としては次の通りである。すなわち、第1保護層としてのの厚さは、通常10〜250nmである。第1保護層の厚さが薄すぎる場合は、記録時の熱による基板や保護コート層の変形を防止できず、厚すぎる場合は、膜にクラックが入り易くなり、しかも、成膜時間が長すぎて現実的でない。第2保護層としての厚さは、通常0.1〜50nm、好ましくは1〜100nm、更に好ましくは5〜50nm、特に好ましくは10〜50nmである。
【0055】
特に、第1保護層として、カルコゲン化物とSiO2含む膜を使用し、第2保護層として、第1保護層より薄い、本発明で規定する保護層を使用することは極めて有効である。何故ならば、カルコゲン化物とSiO2とから成る膜に比し、前記の膜は成膜レートが低い傾向にあるため、上記の様な層構成は生産性に優れるからである。本発明における上記の保護層は、通常、スパッタリングによって形成される。
【0056】
保護層の組成は、スパッタリングに使用するターゲットの組成に大きく依存する。従って、本発明においては、スパッタリングによって保護層を形成する場合、ターゲットの選択が重要である。具体的には、保護層での組成と略同一の組成のターゲットを使用することが重要である。
【0057】
本発明の第1の態様においては、スパッタリング用のターゲットとして、金属酸硫化物を含有するものを使用する。金属酸硫化物を含むターゲットは、金属原子が硫黄とも酸素とも結合しているので、硫黄と酸素との混合性はZnS−SiO2の様な硫化物と酸化物の混合物とは比較にならない程に高い。そのため、この様なターゲットを使用して形成された保護膜は、硫黄やセレン原子の分散性が従来のZnS−SiO2よりも高いために、安定した高い特性を発揮していると考える。ターゲットに使用する金属酸硫化物の金属元素の種類は、保護層の組成に合わせて適宜選択される。
【0058】
すなわち、LaやCeといったランタノイド元素やイットリウム等の希土類金属元素、Sc、Ti等の遷移金属元素などが挙げられ、特に希土類金属元素が好ましい。更には、イットリウム及びLa、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyから成る群から選択される希土類金属元素が特に好ましい。最も好ましい元素はイットリウムである。
【0059】
また、保護層が金属酸硫化物と他の誘電体とを含有する場合、使用する他の誘電体の組成に対応させて、金属酸硫化物と上記他の誘電体との混合物のターゲットを使用することが出来る。また、金属酸硫化物のターゲットと前記他の誘電体のターゲットを別々に用意し、これらを同時にスパッタすることも出来る。
【0060】
なお、ZnS−SiO2の様な複合誘電体膜の形成に使用される従来のターゲットは、通常、粒径が数ミクロンの夫々の化合物粉体の混合物であり、そのスパッタ膜はターゲットよりも混合均一性が高いとは言え、原子や分子のレベルで見れば局所的に不均一箇所が存在すると考えられる。そういった不均一部では硬度などの物性値が本来の値から微妙にずれ、膜の耐久性に差が生じる要因となり得ると考えられる。また、X線回折などでは結晶性が確認できないほど微細に分散されていても、粒界は存在し、斯かる粒界からクラックが発生し得る。
本発明の第2の態様においては、保護層用ターゲットとして、(1)イットリウムと酸素と硫黄またはセレンとを含み、しかも、(2)必要に応じ、硫黄およびセレンの合計量よりも少ない原子数の亜鉛を含むターゲットを使用する。
【0061】
上記の保護層用ターゲットの材料としては、前記の組成を実現できるものであれば各種のものを使用できる。例えば、Y2O2S、YSX、YSeX、YOX、ZnO、ZnSやこれらの混合物を適宜組み合わせて作成したターゲットを使用することが出来る。ターゲットは、複数使用してもよいし、単体化合物のターゲット又は1つの複合誘電体ターゲットを使用してもよい。単体化合物のターゲット又は1つの複合誘電体ターゲットを使用した場合は、より安定した組成コントロールが可能となる。
【0062】
この場合、スパッタリングに使用される保護層用ターゲットとしては、Y2O2S又はY2O2Se、特にY2O2Sを主体とする物質で構成するのが好ましい。Y2O2Sの硫黄の一部をセレンに置き換えることも出来るが、その場合の置換量は50mol%以下とするのが好ましい。この様なターゲットは、硫黄またはセレン原子と結合しているイットリウムは酸素原子とも結合している。そのため、硫黄またはセレンと酸素原子との混合性は、ZnS−SiO2の様な硫化物と酸化物の混合物とは比較にならない程に高い。そのため、この様なターゲットを使用して形成された保護膜は、硫黄やセレン原子の分散性が従来のZnS−SiO2よりも高いために、安定した高い特性を発揮していると考える。
【0063】
ターゲットの製造条件はスパッタによって形成された膜の状態を決める上で重要である。複合誘電体ターゲットの製造方法としては、カーボン製のポンチと、表面にターゲットが付着しない様にBN(窒化ホウ素)を塗布したダイスとから成るプレス装置を使用した次の様な方法が挙げられる。すなわち、ダイス中に所定量秤量した粉体を入れてホットプレス法により焼結させる。その際、600℃から800℃程度に達するまでは、カーボン中に付着していた不純物を除去するために真空中で、それ以降の温度においては、槽内の温度を均一化させ焼結効率を上げるためにアルゴン雰囲気に置換して焼結させる。焼結温度は、粉体の融点以下に設定されるが、可能な限り密度の高いターゲットが製造される様に選択する。ターゲット密度はスパッタのレートに影響し、密度の高いターゲットはスパッタレートが高くて好ましい。
【0064】
第1及び第2の態様において、前記のターゲットの原料粉体として、例えば、金属硫化物と金属酸化物との混合物も使用できる。この場合、金属硫化物と金属酸化物とが焼結時の熱によって固相反応を起こして金属酸硫化物が生成する。つまり、出発原料が単体化合物(希土酸硫化物)であっても上記の様な混合物であってもホットプレス法における焼結過程によって同一のターゲットを得ることが出来る。従って、混合物を使用する方法は、金属酸硫化物のための別途の合成を必要とせずに経済的に有利であり、また、焼結密度の高いターゲットが得られる。特に、金属としてイッリウムを使用する場合、理論密度に対して90%以上の高密度のターゲットが得られ易いため、Y2O3とY2S3とを2:1のモル比で混合して焼成するのが好ましい。保護層が亜鉛を含有する場合、亜鉛は酸化亜鉛または硫化亜鉛の形態で上記ターゲットの原料粉体とするのが好ましい。ターゲット中のY2O2Sの生成はX線回折によって確認することが出来る。
【0065】
また、Y2O2S等の金属酸硫化物と酸化亜鉛との混合物をターゲットの原料粉体として使用した場合、焼結時の熱によって、硫化亜鉛や金属硫化物が生成することもある。例えば、Y2O2Sと酸化亜鉛との混合物を焼結させて、Y2O2Sと硫化亜鉛と酸化イットリウムとの混合物のターゲットを製造することが出来る。この製法は、高温での焼結時に微量の分子状または原子状の酸素と反応して気体のSOXとして脱離し易い硫黄を、固相中においてZnSの状態で安定的にトラップ出来るので好ましい。ただし、この様なトラップのための反応が進みすぎるのは好ましくないのでターゲット中の酸化亜鉛含有量は通常30mol%以下とするのがよい。
【0066】
上記の様にして製造されたターゲットは、通常、研磨、プリスパッタ等してから、スパッタリングに供される。膜組成は、同一ターゲットであってもスパッタリング条件によって大きく異なるため、スパッタリング条件は適宜選択する必要があるが、通常、次の様条件が採用される。すなわち、ガスとしては、通常Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが使用される。これらの中では、コスト等の関係からArを使用するのが好ましい。圧力は通常1Pa以下である。放電が安定に行える限り、低圧でスパッタする程に膜密度が高くなり好ましい。RFスパッタの周波数は通常10MHz以上あればよい。ターゲットと基板との距離は、成膜のロスを減らしてスパッタ効率を上げるため、更には成膜分布の不均一さを無くすために、短い方が良く、通常30cm以下、好ましくは20cm以下である。また、現実的には0.1cm以上である。
【0067】
スパッタリング中、基板またはターゲットは、自転(重心を中心に回転)及び/又は公転(重心が所定の円周上を回転)させることが出来る。これらの回転速度は通常1〜500rpm程度である。基板またはターゲットを公転させた場合、基板とターゲットとの距離が変化しながらスパッタリングは進行するが、この場合でも、その最大距離は30cm以下、特に20cm以下、最小距離は0.1cm以上とするのが好ましい。
【0068】
焼結時にZnS等に転換されなかったZnOを含むターゲットをスパッタ成膜した場合、膜中でのZn原子の殆どが安定なZnOの形態であると考えられる。一部の亜鉛原子が成膜中に硫黄またはセレンと結合しZnSやZnSeを形成する可能性もあるが、全亜鉛原子の僅か数%に満たないと考えられる。この程度であれば特性に影響の無い不純物とみなすことが出来る。
【0069】
相変化型の光学的情報記録用媒体の場合、一般に非晶質部分を記録状態(マーク)とし、結晶部分を消去・未記録状態に対応させる。記録光の線速度(記録光ビームに対する記録層の相対的な走査速度)が速くなると、必然的に記録時の光照射によって局所的に昇温された部分が短時間で冷却され易くなるので、この場合、結晶化が起こり難く、すなわち、消去が行い難いこととなる。そこで、高線速度記録に対応させるため、一般には記録層の構成として結晶化の進行し易い材料や厚さを選択するのが一般的である。その様な高線速記録用媒体を低線速でも記録しようとすると、再結晶化が著しく、非晶質マークの形成が阻害される。その様な用法は、 CAV(constant angular velocity:等回転角速度)モードの記録を行う。CAVモードでは最大と最小の記録線速度の比が2倍以上になり得る。
【0070】
一方、本発明の媒体は、その保護層として熱伝導率の高い材料を使用しているため、記録層に光を照射して加熱しても、冷却速度が速い。従って、高線速度記録、特にCAV記録に対応し、結晶化し易い記録層材料を使用して設計された媒体に対して上記保護層を使用すると、結晶化し易いが故に形成し難くなった非晶質マークの形成を、高い放熱速度によって容易ならしめることが出来る。すなわち、本発明の媒体は、CAV記録される媒体や高線速度で記録される媒体であるほど、その効果が大きい。具体的には、本発明の媒体は、通常3m/s以上、好ましくは5m/s以上、更に好ましくは10m/s以上の線速度で記録される場合に特に有効である。ただし、あまりに高い線速度での記録は媒体設計が困難になることがあるので、記録線速度は通常50m/s以下である。
【0071】
また、本発明の媒体は、マーク長記録、特に最短マーク長1.0μm以下、更には0.5μm以下のマーク長記録に対して特に効果が大きいので、この様な記録に使用するのが好ましい。
【0072】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において各原子組成比はXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)を使用して求めた。
【0073】
XPSによる測定条件は次の通りである。すなわち、XPS測定装置としてはファイ社製「ESCA−550MC」を使用した。X線源はAlのKα線、14KV、150Wであり、モノクロメータを使用した。試料の測定面積は0.8mmφである。試料を60°傾けて光電子を取り出した。また。試料表面に帯電防止のために電子線を照射した。更に、試料表面の汚染(主として、炭素、及び空気中で酸化して余分に付着した酸素)を除去するため、3KeV、25mAでArビームを1分間照射してエッチングを行なった。このエッチングにより、硫黄(S)は若干減少(10%程度)する様であるが、本発明の実施の態様2においては、それを考慮してもなお硫黄が亜鉛より多く含まれることを前提とした。
【0074】
イットリウム、硫黄、亜鉛、酸素、硅素の定量には、それぞれ、Y3p、S2s、Zn2p、O1s、Si2pの各ピークを使用した。組成比は、ピーク面積を補正係数で除した値を使用して求めた。すなわち、元素の組成(mol%)=[(その元素のピーク面積)/(補正係数)]/Σ[ピーク面積)/(補正係数)]とした。ピーク面積の和は、Y、S、Zn及びOについての和であり、Siを含む場合にはSiも合計した。Y3p、S2s、Zn2p、O1s、Si2pの各ピークに対する補正係数は、それぞれ順に、1.621、0.399、3.354、0.711、0.283とした。全般的に、スパッタにより、YとOは略同じ組成比で膜中に取り込まれるが、Sはターゲット組成に比し、10〜20%程度、Znは数分の一に減る傾向がある。
【0075】
なお、以下の各実施例で使用した「記録パワー」には、実際に使用した記録パワーPwと、反射率で換算した実効的な記録パワーPweとがある。実効的な記録パワーPweは、各例の媒体の反射率をR1(%)としたときに、Pwe=Pw×(100−R1)/100なる計算で得られるパワーである。これは、各例の保護層の屈折率の微妙な差(1.9〜2.1)により、同じ構成でも反射率が異なってくるために、実質的に記録層に吸収される光エネルギー(入射記録パワーから反射率を差し引いた分で近似できる)に差がでることを補正するためである。
【0076】
実効的な記録パワーPweを比較することにより、概略、保護層の熱伝導率の差によって熱が記録層から失われる効果を見積もることが出来る。つまり、実効的な記録パワーPweが高ければ保護層の伝熱性(熱伝導率)が高いと推定できる。
【0077】
実施例1
平均粒径が約8μmのY2O2Sを主体とする粉体(Y2O2S:94.3wt%Eu2O2S:5.6wt% Sm2O2S:0.1wt%)をホットプレス法により、1325℃、20トンで加圧した状態で2時間保持して焼結させた。十分に研磨後、CuプレートにInハンダで接着し第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。ターゲットの密度は理論密度の約75%であった。
【0078】
1.2mm厚のポリカーボネート基板上に第1保護層/記録層/第2保護層/反射層を順次下記の様にスパッタリングによって積層して相変化型光ディスクを作成した。各層の厚さは、第1保護層160nm、記録層30nm、第2保護層30nm、反射層100nmとした。記録層はGe22.2Sb22.2Te55.6とし、反射層にはAl合金を使用した。また、それぞれの層のスパッタリングの際は基板を所定の円周上を公転させ、ターゲットを円周近傍に固定した。基板とターゲットとの距離は最大で23cmであった。なお、反射層の上には、塗布により厚さ3〜5μmの紫外線硬化樹脂層を設けた。
【0079】
第1及び2保護層は、それぞれArガスを50sccmで流し、圧力0.4Paの条件下、上記複合ターゲットの高周波スパッタリング(13.56MHz)により成膜した。膜組成は、イットリウム、酸素および硫黄を含み、その原子数比は48/39/13%であった。膜密度は4.2g/cm3であり、理論密度の84%であった。JISヌープ硬度は520であり、膜応力は引張応力で5E+8dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。記録層および反射層はArガス圧力0.4Paで直流スパッタリングにより成膜した。更に、反射層の上に厚さ約5μmの紫外線硬化樹脂を設けた。
【0080】
上記ディスクを波長810nmのLDバルクイレーザで初期化(記録層の結晶化処理)を行った後、以下の条件でディスクの動特性を評価した。すなわち、ディスクを10m/sの線速度で回転させながら、レーザー記録パワーPwとベース(消去)パワーPeとの間で4MHz、duty50%で変調し、波長780nm、NA0.55のLDを記録再生光として使用し、記録パワーPw16mW、ベース(消去)パワーPe12mW、再生パワー0.8mWで繰返しオーバーライトを行い、C/Nの測定を行った。この際のマーク長は2.5μmであった。記録パワーは、2次高調波歪みが略最小となるパワーとした。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが5.0%低下し、ノイズ上昇は4.2%であった。また反射率を利用して換算した実効的な記録パワーPweは12mWであった。このディスクを80℃85%RH(相対湿度)高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。これらの結果を表1に示す。
【0081】
実施例2
実施例1において、ホットプレス法の原料に平均粒径がそれぞれ順に約8μm及び約1μmのY2O2S:ZnO=90:10(mol%)混合粉体を使用した以外は、実施例1と同様にして第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。このターゲットの結晶構造をX線回折により調べた結果、Y2O2Sの回折ピークが観察され、ZnSとZnOの回折ピークは観察されなかった。すなわち、ZnOは結晶を形成せずに固溶していると判断される。その後、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作成した。第1及び2保護層の膜組成は、イットリウム、酸素、硫黄および亜鉛を含み、その原子数比は37/41/21/1%であった。膜密度は4.5g/cm3であり、理論密度の91%であった。JISヌープ硬度は530であり、膜応力は引張応力で0.8E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。
【0082】
そして、ベースパワーを12.5mWとした以外は、実施例1と同一条件でディスクの動特性を評価した。実効的な記録パワーPweは11.9mWであった。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが1.0%低下し、ノイズ上昇は2.2%であった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。これらの結果を表1に示す。
【0083】
実施例3
実施例1において、ホットプレス法の原料に平均粒径がそれぞれ順に約8μm及び約1μmのY2O2S:ZnO=50:50(mol%)混合粉体を使用した以外は、実施例1と同様にして第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。その後、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作成した。第1及び2保護層の膜組成は、イットリウム、酸素、硫黄および亜鉛を含み、その原子数比は29/44/17/10%であった。膜密度は4.5g/cm3であり、理論密度の89%であった。JISヌープ硬度は490であり、膜応力は引張応力で0.2E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。
【0084】
そして、ベースパワーを10mWとした以外は、実施例1と同一条件でディスクの動特性を評価した。実効的な記録パワーPweは12.3mWであった。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが16%低下し、ノイズ上昇は10%であった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。これらの結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
実施例1において、ホットプレス法の原料に平均粒径がそれぞれ順に約8μm及び約1μmのY2O2S:ZnO=20:80(mol%)混合粉体を使用した以外は、実施例1と同様にして第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。その後、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作成した。第1及び2保護層の膜組成は、イットリウム、酸素、硫黄および亜鉛を含み、その原子数比は15/47/10/28%であった。膜密度は4.7g/cm3であり、理論密度の88%であった。JISヌープ硬度は480であり、膜応力は圧縮応力で1.1E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.0であった。
【0086】
そして、実施例1と同一条件でディスクの動特性を評価した。実効的な記録パワーPweは12mWであった。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが29%低下し、ノイズ上昇は20%であった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。これらの結果を表1に示す。この例で使用したターゲットは、その出発原料においてZnOがY2O2Sよりも過剰に含まれる。その結果、焼結時に起こるY2O2S+ZnO→Y2O3+ZnSなる反応により、ターゲット中にはY2O2Sは実質的に含まれていないこととなる。従って、保護層中にはY2O2Sが実質的に含まれていない。
【0087】
比較例1
実施例1において、ホットプレス法の原料に平均粒径がそれぞれ約4μmのZnS:SiO2=80:20(mol%)混合粉体を使用した以外は、実施例1と同様にして第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。その後、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作成した。第1及び2保護層の膜組成は、亜鉛、硫黄、硅素および酸素を含み、その原子数比は36/37/9/18%であった。膜密度は3.5g/cm3であり、理論密度の91%であった。JISヌープ硬度は280であり、膜応力は圧縮応力で1.1E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。
【0088】
そして、実施例1と同一条件でディスクの動特性を評価した。実効的な記録パワーPweは9.1mWであった。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが22%低下し、ノイズ上昇は11%であった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。これらの結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例4及び5並びに比較例3
案内溝(溝深さ:約38nm、溝幅:約550nm、溝ピッチ:約1.6μm)を有する1.2mm厚さのポリカーボネート基板上に、ZnS(80):SiO2(20)保護層、Y2O2S保護層、Ge5Sb68Te27記録層、Y2O2S保護層、ZnS(80):SiO2(20)保護層、Al合金反射層を順次下記の様にスパッタリングによって積層した後、反射層の上に厚さ約5μmの紫外線硬化樹脂を設けて相変化型光ディスクを作成した。この際、表2に示す様に各層の厚さを変更し、実施例4及び4並びに比較例3の3種類のディスクを作成した。
【0091】
各層のスパッタリングの際は基板を所定の円周上を公転させ、ターゲットを円周近傍に固定した。基板とターゲットとの距離は最大で23cmであった。各保護層は、それぞれArガスを50sccmで流し、圧力0.4Paの条件下、ターゲットの高周波スパッタリング(13.56MHz)により成膜した。記録層および反射層はArガス圧力0.4Paで直流スパッタリングにより成膜した。
【0092】
【表2】
【0093】
上記の3種類の各ディスクを初期化した後、オレンジブックパート3(CD−RW規格)に定められたパルス分割法により、オーバーライト回数(DOW cycle)と、3Tスペースジッタ、反射率、信号変調度(modulation)との関係を測定し、その結果を図3〜5に示した。図中、−△−は実施例4、−□−は実施例5、−○−は比較例3を表す。なお、信号は全て案内溝内に記録した。
【0094】
上記の測定装置には、レーザー波長:780nm、NA:0.55の光学系を有する光ディスク評価装置(パルステック社製「DDU1000」)を使用し、測定条件は、線速度:2.4m/s、消去パワーPeと記録パワーPwの比(Pe/Pw):0.5とした。最短マークである3Tマークのマーク長は約0.8μmであり、EFM変調方式を使用した。
【0095】
信号変調度は[(結晶部反射率)−(11Tマークのボトム部反射率)]/(結晶部反射率)で定義した。また、記録パワーPwは、実施例4及び4:16mW、比較例3:14mWとした。これらの記録パワーの使用により、各ディスクの信号変調度は略同程度となる。
【0096】
図3〜5によって明らかな様に、比較例3のディスクは、10000回以内の記録回数(ダイレクトオーバーライト回数)において、3Tスペースジッタが悪化し、反射率と信号変調度が低下した。一方、実施例4及び5のディスクは、10000回の記録において、Tスペースジッタ、反射率、信号変調度の変化は殆ど見られない。また、実施例4のディスクは、実施例5のディスクに比し、反射率が高いにも拘らず同じ記録パワーで同程度の信号変調度が得られている。このことから、Y2O2SとZnS−SiO2を積層することにより、記録感度が改善されることが分かる。
【0097】
因に、基板上に、ZnS(80):SiO2(20)保護層(110nm)、Ge5Sb68Te27記録層(17nm)、Y2O2S保護層(10nm)、ZnS(80):SiO2(20)保護層(30nm)、Al合金反射層(200nm)、を順次にスパッタリングによって積層した後、反射層の上に厚さ約5μmの紫外線硬化樹脂を設けて相変化型光ディスクを作成し、初期化し、80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置した後、1000回までのオーバライト記録を行なった結果、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。このことから、Y2O2SとZnS−SiO2は、界面の密着性なども含めて十分に安定であり、耐候性に優れていることが分かる。すなわち、Y2O2SとZnS−SiO2との積層により、ダイレクトオーバーライト回数、記録感度、耐候性の全てに関して優れたディスクを得ることが出来る。
【0098】
実施例6
実施例1において、Ce2S3(平均粒径:約5μm)とCeO2(約1μm)とZnO(約1μm)とを18:72:10(mol%)の割合で含む混合粉体を使用した、および、評価の際のベースパワーを10.3mWとしたこと以外は、実施例1と同様にしてディスクを製造して評価した。
【0099】
保護層の膜密度は5.8g/cm3であり、理論密度の92%であった。JISヌープ硬度は620であり、膜応力は圧縮応力で0.6E+8dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.3であった。膜組成は、セリウム、酸素、硫黄および亜鉛を含み、その原子数比は33/47/17/3%程度となる。実効的な記録パワーPweは12mWであった。105 回繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが3.7%低下し、ノイズ上昇は1.3%であった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。
【0100】
実施例7
実施例1において、ホットプレス法の原料に平均粒径がそれぞれ約3ミクロンのY2O3:Y2S3=66.7:33.3(mol%)混合粉体を使用した以外は、実施例1と同様にして第1及び第2保護層の作成のためのターゲットを作成した。Y2O3やY2S3に由来するピークは検出されず、Y2O2Sのピークが検出され、略純粋なY2O2Sが生成していることがX線回折より推定された。その後、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作成した。第1及び2保護層の膜密度は4.4g/cm3であり、理論密度の98%であった。その組成は実施例1におけるのと略同じである。JISヌープ硬度は550であり、膜応力は引っ張り応力で5E+8dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。
【0101】
そして、記録パワーを14mWとした以外は、実施例1と同一条件でディスクの動特性を評価した。105 回以上繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが0.5%低下し、ノイズ上昇は2.3%であった。また反射率を利用して換算した実効的な記録パワーPweは12mWであった。このディスクを80℃85%RH高温高湿度条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。
【0102】
比較例4
第1及び2保護層用のターゲット材料として、Y2O3の粉体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして相変化型媒体を作成した。なお、この媒体の第1及び2保護層の膜密度は4.0g/cm3であり、理論密度の83%であった。また、JISヌープ硬度は730であり、膜応力は圧縮応力で1.3E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて1.9であった。バルクイレーザーを使用して初期化を行ったところ、初期化エリア全体で膜の剥離が観測された。記録再生繰り返し試験は実施できなかった。
【0103】
比較例5
第1及び2保護層用のターゲット材料として、ZnSとY2O3のモル比率が80対20の混合粉体を使用したこと、記録パワーを11mWとしたこと以外は、実施例1と同様にして相変化型媒体を作成して評価した。なお、この媒体の第1及び2保護層の膜密度は4.1g/cm3であり、理論密度の91%であった。また、JISヌープ硬度は350であり、膜応力は圧縮応力で1.5E+9dyn/cm2であった。この膜の屈折率はエリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.2であった。105 回以上繰返しオーバーライトを行ったところ、初回に比べてC/Nが21%低下し、ノイズ上昇は15%であった。
【0104】
実施例8
実施例1において、ZnS(平均粒径:約4μm)とY2O2S(平均粒径:約8μm)とを50:50(mol%)の割合で含む混合粉体を使用し、評価の際に記録パワーを17.3mW、ベースパワーを10.5mWとした以外は、実施例1と同様にしてデイスクを製造して評価した。反射率で換算した実効的な記録パワーPweは13mWである。
【0105】
保護層の膜密度は4.2g/cm3であり、理論密度の90%であった。JISヌープ硬度は540であり、膜応力は引張応力で3.5E+8dyn/cm2であった。この膜の屈折率は、エリプソメータの測定により波長780nmにおいて2.1であった。膜組成は、イットリウム、酸素、硫黄および亜鉛を含み、その原子比は42/41/12/5程度となる。繰り返しオーバーライトを105回行なったところ、初回に比べてC/N比が3.1%低下し、ノイズ上昇は1.5%であった。このディスクを80℃で85%RH高温高湿度条件下に条件下に500時間放置したが、剥離なども生じず、ディスク特性も変化しなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明における保護層は熱伝導性が高く、この保護層を設けた本発明の光学的情報記録用媒体は極めて優れた繰返しオーバーライト特性を示し、データ保存安定性に優れ信頼性を有する。また、本発明の光学的情報記録用媒体は、層間の密着性や経時安定性に優れる。更に、本発明によれば、この様な媒体を安定的に生産性よく製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の媒体の層構成の一例を示す模式的断面図
【図2】本発明の媒体の層構成の他の一例を示す模式的断面図
【図3】実施例4及び5並びに比較例3の評価結果(3Tスペースジッター)を示すグラフ
【図4】実施例4及び5並びに比較例3の評価結果(反射率)を示すグラフ
【図5】実施例4及び5並びに比較例3の評価結果(信号変調度)を示すグラフ
【符号の説明】
1:基板
2:第1保護層
3:相変化記録層
4:第2保護層
5:反射層
6:保護コート層
Claims (24)
- 基板上に保護層と相変化型記録層とを有する光学的情報記録用媒体において、上記の保護層が金属酸硫化物を含有することを特徴とする光学的情報記録用媒体。
- 金属酸硫化物中の金属元素が希土類金属を含有する請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
- 希土類金属がイットリウムである請求項2に記載の光学的情報記録用媒体。
- 基板上に保護層と相変化型記録層とを有する光学的情報記録用媒体において、上記の保護層が金属酸硫化物から成るターゲットを使用してスパッタリング法で成膜された保護層であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
- 保護層が、更に亜鉛化合物を含有する請求項1乃至4の何れか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
- 亜鉛化合物が硫化亜鉛である請求項5に記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層中の酸化亜鉛含有量が30mol%以下である請求項5又は6に記載の光学的情報記録用媒体。
- 基板上に保護層と相変化型記録層とを有する光学的情報記録用媒体において、当該保護層が、イットリウムと酸素と硫黄またはセレンと、必要に応じてその他の成分を含み、但し亜鉛を含有する場合には、硫黄およびセレンの合計量よりも少ない原子数の亜鉛を含むことを特徴とする光学的情報記録用媒体。
- 保護層におけるイットリウム(Y)と酸素(O)と硫黄(S)又はセレン(Se)と亜鉛(Zn)との原子数比(Y:O:S又はSe:Zn)が25〜50:30〜50:5〜40:0〜20(但し、原子数比の合計は100とする)である請求項8に記載の光学的情報記録用媒体。
- 硫黄とセレンとの原子数の合計(S+Se)に対する亜鉛(Zn)の原子数の比が0.5以下である請求項8又は9に記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層がY2O2Sを含有する請求項8乃至10の何れか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層が亜鉛化合物を含有する請求項8乃至11の何れか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
- 亜鉛化合物が硫化亜鉛である請求項12に記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層中の酸化亜鉛含有量が30mol%以下である請求項12又は13に記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層が相変化型記録層の両面に設けられて成り、当該保護層の少なくとも一方が請求項1〜14の何れかに記載の保護層である光学的情報記録用媒体。
- 基板上に、第1保護層、相変化型記録層、第2保護層および反射層がこの順に設けられて成るか、または、基板上に、反射層、第2保護層、相変化型記録層および第1保護層がこの順に設けられて成る請求項15に記載の光学的情報記録用媒体。
- 第1保護層の厚さが10〜250nmである請求項16に記載の光学的情報記録用媒体。
- 第2保護層の厚さが0.1〜100nmである請求項16又は17に記載の光学的情報記録用媒体。
- 請求項1乃至17の記載の保護層に接して、更にそれよりも熱伝導率の低い他の保護層を設けて多層保護層とした請求項1乃至17の何れか1つに記載の光学的情報記録用媒体。
- 他の保護層が、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物を含む請求項19に記載の光学的情報記録用媒体。
- 保護層用ターゲットをスパッタして基板上に保護層を形成する工程を含む光学的情報記録用媒体の製造方法において、当該保護層用ターゲットとして、金属酸硫化物を使用することを特徴とする光学的情報記録用媒体の製造方法。
- 金属酸硫化物中の金属元素が希土類金属を含有する請求項21に記載の光学的情報記録用媒体の製造方法。
- 金属酸硫化物から成るターゲットが、金属の酸化物と当該金属の硫化物との混合物を焼結することによって得られたものである請求項21又は22に記載の製造方法。
- 金属酸硫化物を含有するスパッタリング用ターゲット。
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