JP3868317B2 - 可変分散等化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超高速光通信システムにおける分散補償技術に関し、特にチャープグレーティングを用いた可変分散等化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバケーブルを伝送路に用いた光通信システムでは、光ファイバの波長分散(単に分散ともいい、以下、「分散」と称す)により光パルスが歪むため、信号の劣化を生じる。これは波長の異なる光パルスの波束の群速度が異なるためで、光パルスの波束がある一定距離を伝搬するのに要する時間、すなわち群遅延時間(単位:ps)が異なるためである。この群遅延時間の波長に対する割合が分散(単位:ps/nm)である。通常の光ファイバに用いられるシングルモードファイバ(SMF)では、波長1550nm近辺で伝送路1kmあたりで生じる分散は、約16ps/(nm・km)の値を有する。これは波長が1nm異なる光パルスが1kmのシングルモードファイバを伝搬するのに要する群遅延時間の差が16psという意味で、例えば波長が1nm異なる光パルスが100kmの光ファイバを伝搬した場合の群遅延時間は100倍の1600psとなる。
【0003】
一方、変調された光パルスは、変調方式やビットレートにより決まる幾つかの線スペクトルの広がりを持ち、その包絡線はガウス分布型となる。例えばRZ(return−to−zero)変調方式では、それぞれの線スペクトルの間隔は、ビットレート(伝送速度)が10Gbit/sの場合には0.08nmであるが、ビットレート40Gbit/sの場合には0.32nmとなる。すなわち線スペクトルの広がりはビットレートに比例して増大する。またNRZ(nonreturn−to−zero)変調方式では、RZ変調方式の半分の線スペクトル広がりとなる。このようにビットレートが高くなるに従い、光パルスの成分である線スペクトルの間隔が広がるため、光ファイバ伝送路を伝搬したときの群遅延時間の差が大きくなり光パルスの歪みが増大する。光パルスが受ける光ファイバ伝送路の分散の影響はビットレートの二乗に比例して大きくなる。このために光ファイバ伝送路の分散を打ち消す分散を有するデバイスを伝送路に挿入し、全体として分散を零に近づける技術が分散補償技術であり、特に40Gbit/s以上のビットレートでは伝送路の分散を精密に零に近づける必要がある。
【0004】
このような分散を補償するデバイスとして、チャープグレーティングを用いた可変分散等化器がある。図16は、例えば、特開2000−137197号公報あるいは特開2000−244394号公報に示された従来の可変分散等化器の構成を示す断面図である。この可変分散等化器60は、図16に示すように、光ファイバ50に所定の長さのグレーティング51が形成されている。また、光ファイバ50のグレーティング51を形成した周囲にグレーティング51の長手方向に所定の割合で膜厚を変化させた抵抗膜からなるヒータ53が形成されている。さらに、ヒータ53の両端には一対の電極54,55が設けられている。このグレーティング51は、紫外レーザー光を位相マスクを通して光ファイバに照射して、位相マスクによる紫外レーザー光の干渉縞により屈折率変調が形成されている。このグレーティング51としては、グレーティングピッチが長手方向に一定なユニフォームグレーティング、またはグレーティングピッチが長手方向に一次関数的に変化するチャープグレーティングが用いられる。グレーティング51の周囲に形成されたヒータ53は、その両端に設けられた電極54,55に電力を印加すると、グレーティング51の長手方向に一次関数的な発熱を生じるように抵抗膜の厚さが調整されて形成されている。そこで、ヒータ53の両端に設けた電極54,55に電力を印加することにより、グレーティング51に温度が一次関数的に変化する温度勾配を印加することができる。その結果、グレーティング51の等価屈折率が印加温度に比例して変化する。等価屈折率は実効屈折率とも呼ばれ、光ファイバを伝搬する光が受ける等価的な屈折率で、コアとクラッドの屈折率と光の伝搬経路との相互作用からなる屈折率である。なお、厳密に言えば温度変化によってグレーティング51のグレーティングピッチも変化するが、等価屈折率の変化に比べ影響が小さい。グレーティング51で反射する光の波長(ブラッグ波長)は、グレーティングピッチΛと等価屈折率Neffの積の2倍となるため、ヒータ53による温度勾配に比例してブラッグ波長の変化率、すなわちチャープ率を変化させることができ、ヒータ53に印加する電力によってグレーティング51の波長分散を可変することができる。
【0005】
このような可変分散等化器について、以下のような先行技術文献がある。従来の可変分散等化器について、B.J.Eggleton等によって、Journal of Lightwave Technology,Vol.18,No.10,1418頁〜1432頁(2000年10月発行)、あるいはIEEEPhotonics Technology Letters,Vol.11,No.7,854頁〜856頁(1999年7月発行)にさらに詳細に示されている。グレーティング11に、グレーティング長75mmでグレーティングピッチが一定のユニフォームグレーティングを標準的なアポダイゼーションで形成し、ヒータ13に印加する電圧を7〜13Vまで変化させることで、グレーティング11の分散を−2200〜−500ps/nmまで変化させている。しかし、40Gbit/sのシステムでは少なくとも0.8nm以上の帯域が必要であるため、ユニフォームグレーティングよりもむしろチャープグレーティングを用いた方が適していると述べられている。彼等はグレーティングピッチが1cmあたり0.175nmの割合で変化するチャープグレーティングを用いて、分散可変幅が220ps/nmの可変分散等化器を実現しており、分散可変幅200ps/nm以上を得るために、室温で25℃〜175℃の温度勾配を印加したと述べられている。
【0006】
一方、本発明者等によって別の従来の可変分散等化器(第2の従来例)が、IEEE Photonics Technology Letters,Vol.13,No.8,827頁〜829頁(2001年8月発行)に示されている。これはチャープグレーティングを32個の薄膜ヒータ上に設置し、32個の薄膜ヒータの温度をそれぞれ独立に制御することにより、チャープグレーティングに直線的な温度勾配を印加して、チャープグレーティングの分散を可変するものである。ここでは、グレーティング長40mmで、6次のスーパーガウス型のアポダイゼーションで形成したチャープグレーティングを使用している。ここで本発明者等は、一次関数的に変化する0〜60℃の温度勾配を設け、分散可変幅が100ps/nm以上の可変分散等化器を実現し、40Gbit/sの光信号伝送を行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにチャープグレーティングに一次関数的に変化する温度勾配を印加し、その温度勾配を制御することにより分散を可変する可変分散等化器は、簡単に分散を可変制御できるデバイスとして有用である。しかし、上記第1の従来の可変分散等化器では、200ps/nm以上の分散可変幅を得るためには、室温に加えて175℃(室温25℃のとき、200℃)もの温度を印加する必要がある。このような高温を印加することは、グレーティングを構成する光ファイバの信頼性を悪化させ、さらにグレーティング周辺部を高温に耐えるような構成にしなければらないという問題点があった。一方、上記第2の従来の可変分散等化器では60℃という低い温度で100ps/nmの分散可変幅を実現しているが、分散可変幅をさらに大きくするためにはさらに温度勾配を大きくする必要がある。しかも、分散可変幅は温度勾配に比例して大きくなるものではないため、40Gbit/sのビットレートで必要とされる200ps/nm以上の分散可変幅を得るにはかなり高い温度が必要になるといった問題点があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、グレーティングに付与する温度勾配を低く抑えながら、大きな分散可変幅が得られる可変分散等化装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る可変分散等化装置は、グレーティングの長手方向に沿ってブラッグ波長を変化させたチャープグレーティングを有する光導波路と、
前記チャープグレーティングの前記ブラッグ波長を変化させて波長分散を制御する波長分散制御装置と
を備え、
前記チャープグレーティングの長さは、60mm以上、80mm以下の範囲内であると共に、
前記チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比は5%以下であり、
前記チャープグレーティングは、グレーティングの両端でのグレーティングピッチの差が0.4nm〜0.7nmの範囲内であって、
前記チャープグレーティングは、屈折率変調の包絡線N(X)が、次式
N(X)=sinc (X
[ただし、X=(x−(L/2))/(L/2)、(ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである)、sinc(X)=sin(X)/X、 a≧17.3、 nは4〜30の範囲内の実数である]
を満足することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る可変分散等化装置は、グレーティングの長手方向に沿ってブラッグ波長を変化させたチャープグレーティングを有する光導波路と、
前記チャープグレーティングの前記ブラッグ波長を変化させて波長分散を制御する波長分散制御装置と
を備え、
前記チャープグレーティングの長さは、60mm以上、80mm以下の範囲内であると共に、
前記チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比は5%以下であり、
前記チャープグレーティングは、グレーティングの両端でのグレーティングピッチの差が0.4nm〜0.7nmの範囲内であって、
前記チャープグレーティングは、屈折率変調の包絡線N(X)が、次式
N(X)=exp(−(X/b)2n
[ただし、X=(x−(L/2))/(L/2)(ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである)、b≦(1.73) −1/n 、nは4〜30の範囲内の実数である
を満足することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る可変分散等化装置は、前記可変分散等化装置であって、前記波長分散制御装置は、チャープグレーティングの長手方向に対する温度分布を制御する温度分布制御装置であることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る可変分散等化装置は、前記可変分散等化装置であって、前記温度分布制御装置は、チャープグレーティングの長手方向に沿って正又は負の温度勾配を付与可能なことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る可変分散等化装置について、添付図面を用いて説明する。なお、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0017】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置について、図1を用いて説明する。なお、図1の(a)は、この可変分散等化装置の構成を示すブロック図であり、(b)は、(a)のA−A’線に沿った断面図である。この可変分散等化装置は、チャープグレーティング2を有するチャープファイバグレーティング2aと、該チャープグレーティング2に配置された波長分散制御装置とを備える。この波長分散制御装置は、チャープグレーティング2の近傍に設けられたヒータ3、電極5、ヒータ制御装置6及びインタフェース7からなる。このチャープグレーティング2は、屈折率変調によりグレーティングの長手方向に沿ってブラッグ波長を変化させている。具体的には、グレーティングピッチを長手方向に一次関数的に変化させてブラッグ波長を一次関数的に変化させている。なお、ブラッグ波長を変化させる方法はこれに限られない。また、波長分散制御装置によってブラッグ波長を変化させて波長分散を制御する。さらに、チャープグレーティングの長さを60mm以上、80mm以下の範囲内とすると共に、チャープグレーティング2の両端部での中央部に対する屈折率変調の比を5%以下としている。これによって群遅延特性でのリップルの発生を抑制し、伝送品質を維持することができる。
【0018】
なお、この可変分散等化装置は、ハードウエア構成として2つの部分からなると考えることができる。この場合には、この可変分散等化装置は、図1の(a)に示すように、チャープファイバグレーティング2aとヒータ3と電極5とを備える可変分散等化器1と、ヒータ制御装置6及びインタフェース7からなる制御部とからなる。
【0019】
さらに、この可変分散等化装置のチャープグレーティングにおける屈折率変調の包絡線、即ち、アポダイズの形状について種々検討を行なったところ、sinc関数型とスーパーガウス関数型の2つが好ましいことを見出した。このアポダイズに関する条件としては次の2つである。
(1)まず、チャープグレーティングの群遅延特性はアポダイズの影響を受けるため、アポダイズの中央付近では屈折率変調の大きさが均一な方がよい。
(2)また、チャープグレーティングの両端では屈折率変調の大きさが滑らかにゼロになる必要がある。例えば、チャープグレーティングの両端で屈折率変調の大きさが急激にゼロになったり、ゼロまで小さくならなかった場合には、群遅延特性にリップル(群遅延リップル)を生じ伝送品質を劣化させてしまう。
そこで、Cos関数型,Tanh関数型など種々のアポダイズを検討した結果、以下の式(3)で表されるSinc関数型と、式(4)で表わされるスーパーガウス関数型が、群遅延リップルの発生を抑え、グレーティング中央付近で屈折率変調の大きさを均一にすることが出来ることを見出した。
【0020】
(a)Sinc関数型[N(X):屈折率変調の包絡線]
N(X)=sinc(X) (3)
ただし、
X=(x−(L/2))/(L/2)、
sinc(X)=sin(X)/X、
a≧17.3、
nは任意定数である。
ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである。
【0021】
(b)スーパーガウス関数型[N(X):屈折率変調の分布]
N(X)=exp(−(X/b) 2n ) (4)
ただし、
X=(x−(L/2))/(L/2)、
nは任意定数である。
ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである。
【0022】
また、上記式(3)、(4)で定数aおよび定数bの値は、グレーティングの両端(x=0、L)で中央部(x=L/2)に対する屈折率変調の大きさの比が5%以下になる値である。この定数aの値の範囲について、図4から図7を用いて説明する。図4は、式(3)のsinc関数型の屈折率変調の包絡線N(X)=sinc(X)について、定数aの値を種々変えた場合の屈折率変調の包絡線を示すグラフである。また、図5は、図4のチャープグレーティング2の端部(x=0)での拡大図である。図6は、定数aを変化させた場合の波長とアイ開口ペナルティ(Eye Opening Penalty)との関係を示すグラフである。図7は、定数aと帯域内アイ開口ペナルティの平均値との関係を示すグラフである。このアイ開口ペナルティとは伝送後の光信号の品質を評価する方法の一つで、いわゆるアイパターンにおいてアイ(Eye)の開き度合をdB単位で示したものであり、この値が小さいほど伝送後の光信号に品質劣化が生じていないことを示す。このアイ開口ペナルティは、例えば、光信号をフォトダイオードで光電変換した電気信号をオシロスコープに入力して測定することができる。
【0023】
図4及び図5に示すように、定数aの値が大きくなるにつれて上記条件の(2)に示すように、屈折率変調の大きさは端部で滑らかに0となることがわかる。この場合、おおよそ端部で中央部に対する屈折率変調の大きさの比が5%となる包絡線の形状が好ましい。また、図6及び図7に示すように、定数aが大きくなるにつれて帯域内アイ開口ペナルティの平均値をほぼゼロとなる。この場合、おおよそ0.05dB以下が好ましい。そこで、上記2つの条件から、定数aの値は、約15以上が好ましい。具体的には、以下に示すように、前者の条件から定数aの範囲を算出することができる。
【0024】
以下に、チャープグレーティングの端部で中央部に対する屈折率変調の大きさの比が5%以下となる定数aの範囲を求める。ここで、グレーティングの長さLを80mm、次数nを10とした。まず、チャープグレーティングの端部(x=0)に対応するXの値を求める。対応するXの値は、
X=(0−(L/2))/(L/2)=−1
である。そこで端部での屈折率変調の大きさN(−1)は、下記式で得られる。
N(−1)=sinc{(−1)
ここで、
sinc{(−1)}=sin{(−1)}/{(−1)
であるので、このnが偶数又は奇数のいずれであっても
sinc{(−1)}=0.84147
である。そこで、端部での屈折率変調の大きさN(−1)は、
N(−1)=sinc{(−1)}=(0.84147)
が得られる。
【0025】
一方、屈折率変調の最大値は、チャープグレーティングの中央部(x=L/2)であり、このときのXは、下記式で得られる。
X=((L/2)−(L/2))/(L/2)=0
そこで、チャープグレーティングの中央部での屈折率変調の大きさN(0)は、N(0)=sinc(0)={sin(0)/(0)}=1=1
となる。
【0026】
そこで、チャープグレーティングの端部(x=0)での中央部に対する屈折率変調の大きさの比が5%以下となるaの値の条件は、下記式の範囲である。
N(−1)≦0.05×N(0)
(0.84147)≦0.05
さらに、両辺の対数をとり、整理すると、
a・log(0.84147)≦log(0.05)
a≧log(0.05)/log(0.84147)
a≧17.356 (5)
の関係式が得られる。よって、定数aは17.3以上であることが条件となる。
【0027】
なお、チャープグレーティングの屈折率変調の包絡線が式(4)に示すようなスーパーガウス型関数の場合には、チャープグレーティングの端部での中央部に対する屈折率変調の大きさの比が5%以下となる場合について、上記と同様にして計算すればよい。この場合には、定数bの範囲は、
b≦(1.73) −1/n (6)
の関係式を満たす範囲である。
【0028】
なお、上記式(3)及び(4)を満足するチャープグレーティングのアポダイズを形成する方法としては、例えば、紫外光の照射量を制御することによって行うことができる。具体的には、紫外光レーザを位相マスクを介して光ファイバに照射してチャープグレーティングを作製するにあたって、紫外光の強度と照射時間との積算値が上記式(3)、(4)を満足するように複数回走査させることによって所望の屈折率変調の包絡線を形成することができる。なお、屈折率変調の制御方法は上述の場合に限定されない。
【0029】
次に、チャープグレーティングの屈折率変調の大きさの測定方法を図8を用いて説明する。即ち、チャープグレーティングの屈折率変調は、以下の手順で測定することができる。
(a)光ファイバの外部側面からチャープグレーティングの所定箇所に対してレーザ光を照射する。レーザ光源としては、例えば、He−Neレーザ光源21を用いることができる。なお、レーザ光を照射する範囲は1mm以下の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.1mm以下の範囲である。
(b)グレーティング2で反射されるレーザ光の強度をディテクタ22で測定する。
(c)グレーティング2で反射されるレーザ光は、入射角度θが下記式を満足する場合に反射光の強度が大きくなる。
レーザ光の波長λ=2・Neff・Λ・sinθ
ここでΛはグレーティングピッチであり、Neffはグレーティングを形成した光ファイバの等価屈折率である。そこで、入射角度θを変化させて、反射されるレーザ光の強度が最大になる角度θで、反射されたレーザ光の光強度を測定する。この光強度はグレーティングのレーザ光を入射した部分の屈折率変調の大きさに比例する。また、等価屈折率Neffは通常グレーティングに沿って一定であるため、反射されるレーザ光の強度が最大になる角度θを測定することでその場所のグレーティングピッチΛを測定することが出来る。また、等価屈折率Neffがグレーティングに沿って一定でない場合であっても、他の方法で等価屈折率Neffの分布を測定し、反射されるレーザ光の強度が最大になる角度θを測定することでグレーティングピッチΛを測定することができる。なお、屈折率変調の大きさは、反射される光の強度に比例するので、等価屈折率NeffやグレーティングピッチΛには依存しない。
(d)チャープグレーティング2に沿ってレーザ光を照射する箇所を移動させて、上記(a)から(c)の手順を繰り返して、チャープグレーティング2に沿って屈折率変調の大きさ、グレーティングピッチΛの変化を測定することができる。
なお、屈折率変調の測定は上記方法に限られない。
【0030】
さらに、この可変分散等化装置におけるチャープグレーティング2の屈折率変調の包絡線は、具体的には、下記式(7)に示すSinc関数型となるように形成した。この屈折率変調の包絡線は一般にアポダイズまたはアポダイゼーションと呼ばれる。
N(X)=sinc60(X) (7)
ただし、
X=(x−30)/30、
sinc(X)=sin(X)/X、
ここで、xはグレーティングの一端を0mmとしたときの位置(mm)である。
【0031】
このチャープグレーティング2は、上記式(3)において、定数aを60、次数nを6とし、グレーティング長Lを60mmとした場合に該当する。また、このチャープグレーティング2は、光ファイバにグレーティングピッチが線形に0.08nm/cmの割合で変化するように形成されている。
【0032】
さらに、この可変分散等化装置の波長分散制御装置の構成について説明する。この波長分散制御装置は、光導波路のチャープグレーティング近傍に設けられた複数の温度可変手段を制御し、ブラッグ波長を変化させてチャープグレーティングの分散を制御する。具体的には、この波長分散制御装置は、光導波路に温度分布を付与する温度分布付与手段、即ち、ヒータ及びその制御回路等で構成される。即ち、この波長分散制御装置は、図1のブロック図に示すように、光導波路のグレーティング近傍に設けたヒータ3に電極部5を介して制御信号を印加する制御部であるヒータ制御回路6、インターフェース回路7からなる。この波長分散制御装置では、設定しようとする分散をインターフェース回路7に入力すると、このインターフェース回路7からの制御信号に基づいてヒータ制御回路6を介して各薄膜ヒータ3,3,…,3にそれぞれ独立に電力を印加して、グレーティングに所定の温度分布を与える。
【0033】
さらに、この可変分散等化装置によって波長分散制御する光導波路の構成について説明する。この光導波路2aは、図1の(b)の断面図に示すように、グレーティングピッチが線形に変化するチャープグレーティング2が形成されたコア11と該コア11の周囲を覆うクラッド12とからなる光ファイバ2aである。この光ファイバは、熱伝導率の低い基板4上に配置されている。この熱伝導率の低い基板4としては、例えば、石英,ガラスなどのセラミックスやポリイミドなどの樹脂からなる基板を用いることができる。また、薄膜ヒータ3,3、…、3は、この光ファイバ2aと基板4との間に配置されている。なお、電極部51a,52a,…,5Na,51b,52b,…,5Nbは、薄膜ヒータ3,3,…,3と同時に薄膜プロセスにより形成される。この電極部51a,52a,…,5Na,51b,52b,…,5Nbは、薄膜ヒータと同じ材質であるが線幅を十分広くして抵抗値を小さくしている。そのため、各電極部5では、薄膜ヒータ3に比較し温度上昇は無視できるほど小さい。さらに上部に銅や銀など電気伝導率の高い金属薄膜を形成すればさらに高効率化できる。この電極部51a,52a,…,5Naはリード線によってヒータ制御回路6に接続され、一方、電極部51b,52b,…,5Nbはリード線によってグランド(GND)に接続される。また、チャープグレーティング2の一端には光信号入出力部となる光ファイバ8が設けられている。なお、チャープグレーティング2の上にはチャープグレーティング2を保護し、薄膜ヒータ3への密着を補助する保護部材(不図示)を設けてもよい。また、ヒータ制御回路6、インターフェース回路7などの構成や動作はこれに限られるものではない。例えば、ヒータ制御回路6では、制御信号をD−A変換器によってアナログ電圧や電流に変換することなく、パルス電圧または電流を時間分割でデジタル的に印加してもよい。また、光導波路として、光ファイバではなく平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:以下PLCと称す)を用いた場合においても同様の構成とすることができる。
【0034】
次に、この可変分散等化装置の動作について説明する。図2はチャープグレーティングを有する可変分散等化装置の動作について説明する図であり、図3は可変分散等化装置を構成する波長分散制御装置のヒータの温度分布と群遅延時間の関係を示す図である。光ファイバ8より入力された波長λの光は、チャープグレーティング2のグレーティングピッチΛと等価屈折率Neffが次式(8)を満足する場合に反射される。
λ=2・Neff・Λ (8)
【0035】
そこで、図2に示すように、入出力側でグレーティングピッチが広く、入出力側から右に行くほどグレーティングピッチが密になっているチャープグレーティング2に入力される光がどのように反射されるかを考えてみる。この場合には、波長の長い光λlongは、入出力側に近いalongの位置で反射され、一方、波長の短い光λshortは、入出力側から遠いashortの位置で反射される。このため、波長の短い光λshortは波長の長い光λlongよに比べてより長い距離を伝搬するため群遅延時間は長くなる。このようにチャープグレーティングでは波長の違いによって群遅延時間が異なり、所定の分散を得ることができる。そこで、光ファイバ伝送路とは逆の符号の分散を伝送路に付与することで分散等化を行うことができる。
【0036】
しかし、光ファイバ伝送路の分散は距離や温度などの周囲環境によって変化し、一定ではないので、光ファイバ伝送路の分散に応じて分散等化デバイスの分散を変化させる必要がある。このためにグレーティングに温度分布を与えて、等価屈折率Neffを変化させて各波長の光を反射する位置を変化させて分散を可変にしている。この可変分散等化装置の分散を変化させる例を、図3の(a)のグレーティング位置による温度分布と、(b)の波長と群遅延時間との関係に示した。このように、グレーティング近傍に設けたヒータでグレーティングに与える温度分布によって分散は変化する。
【0037】
具体的には、図3の(a)のグレーティング位置による温度分布のグラフにおいて、直線aは薄膜ヒータ3,3,…,3の各温度が一定で、チャープグレーティングの等価屈折率Neffがグレーティングの長手方向に対して一定である場合である。この場合、上記のように温度制御しない場合と同様であり、チャープグレーティングで反射される光の波長は、グレーティングピッチΛに比例する。従って波長の短い光λshortは波長の長い光λlongより長い距離を伝搬するため群遅延時間が長くなる。このときの波長に対する群遅延時間の関係を示すと図4の(b)に示す直線aのようになる。また、このヒータ3の温度分布を図4の(a)の直線bに示すように入出力側に近い側で高温にし、入出力側から遠い側で低温にすると、入出力側に近い側の等価屈折率が大きくなり、入出力側から遠い側の等価屈折率が小さくなる。従って波長の長い光λlongは、図3に示すように、blongの場所で反射され、一方、波長の短い光λshortはbshortの場所で反射されて、波長に対する群遅延時間の関係は図4の(b)の直線bのようになる。同様にヒータ3の温度分布を図4の(a)の直線cのようにすると、波長に対する群遅延時間の関係は図4の(b)の直線cのように傾きが大きくなる。分散は群遅延時間の傾き、即ち群遅延時間の波長微分であるので、以上のようにヒータの温度分布を変化することで分散可変を実現することができる。
【0038】
図9は、この可変分散等化装置のチャープグレーティングに−50℃,±0℃,+50℃の3通りの温度勾配を印加したときの群遅延特性および損失特性(振幅特性)を示すグラフである。この図7の群遅延特性に示すように、それぞれの温度勾配における分散値は、−50℃:−670ps/nm、±0℃:−425ps/nm、+50℃:−310ps/nmである。このようにチャープグレーティングに±50℃、すなわち絶対値で50℃の温度勾配を印加するだけで、分散値を−670ps/nmから−310ps/nmまで可変し、360ps/nmの分散可変幅を得ることができた。このようにグレーティングの長手方向に対して異なる正負の符号の温度勾配を付与することによって、従来の可変分散等化器のように同一方向の符号の温度勾配を付与するより、小さな温度勾配の絶対値で大きな可変分散幅を得ることができる。また、低消費電力および最高温度を抑制できる。
【0039】
ここで、温度勾配の符号+または−は、チャープグレーティングのチャープ率を大きくする場合を符号+とし、チャープ率を小さくする場合を符号−としている。即ち、この図9に示したチャープグレーティングは入出力側のグレーティングピッチΛが大きく、入出力側から遠ざかるに従って小さくなるため、入出力側から見ればグレーティングピッチのチャープ率が減少するチャープグレーティングである。そこで、チャープグレーティングの入出力側で温度が高く、入出力側から遠ざかるに従い温度が低くなる温度勾配は、入出力側から見れば温度勾配は負であるが、チャープグレーティングのチャープ率と同じ変化率を示すので、この場合の温度勾配の符号を+とした。一方、チャープグレーティングの入出力側は温度が低く、入出力側から遠ざかるに従い温度が高くなる温度勾配はチャープグレーティングのチャープ率と異なる変化率を示すため、この場合の温度勾配の符号を−とした。すなわちこのチャープグレーティングのチャープ率を大きくする方向の温度勾配が+符号で、チャープ率を小さくする方向の温度勾配が−符号である。なお、±0℃とはチャープグレーティングに温度勾配を設けていないことを示す。
【0040】
図10は、この可変分散等化装置を用いて43Gbit/sのNRZ変調された光信号を伝送したときのアイ開口ペナルティ(Eye Opening Penalty)を示したものである。このアイ開口ペナルティとは伝送後の光信号の品質を評価する方法の一つで、いわゆるアイパターンにおいてアイの開き度合をdB単位で示したものであり、この値が小さいほど伝送後の光信号に品質劣化が生じていないことを示す。このアイ開口ペナルティは、例えば、光信号をフォトダイオードで光電変換した電気信号をオシロスコープに入力して測定することができる。図10より、光信号の波長1550.9nm付近で、温度勾配が−50℃,±0℃,+50℃の全てにおいて、アイ開口ペナルティがほぼ0dBとなっていることが分かる。これは伝送品質が全く劣化していないことを示しており、この可変分散等化装置が±50℃の温度勾配変化で360ps/nmの分散可変幅を得ると共に、43Gbit/sのNRZ変調された光信号伝送に使用可能であることを示している。図10から分かるように、アイ開口ペナルティが小さい波長帯域は分散値の絶対値が最も大きい場合に狭くなる。
【0041】
図11は、温度勾配が−50℃(分散値:−670ps/nm)のときの、アイ開口ペナルティと損失特性および分散特性を同一グラフ上に示したものである。分散特性は群遅延特性を波長で微分して求められる。なお、ここでは測定ノイズの影響を抑えるため、さらに群遅延時間を波長で微分して求めた分散特性を0.1nmの波長範囲で移動平均して示した。図11から分かるように、アイ開口ペナルティが最小となる波長は、損失特性の1dB帯域の中心の波長より少し短波長で、○で囲んだAの部分でアイ開口ペナルティが大きくなって伝送品質が劣化している。これは分散特性の○で囲んだBの部分で分散が大きく変化しているためである。このことから、この種のチャープグレーティングを用いた可変分散等化装置では、従来必要な帯域幅として損失特性の1dB帯域を元に設計されていたが、損失特性の1dB帯域ではなく、分散特性の分散が平坦な帯域を元に設計する必要があることが分かる。
【0042】
図12は、チャープグレーティング2に+40℃、±0℃、−40℃の3通りの温度勾配を印加した場合における、グレーティング長と分散平坦帯域幅及び分散可変幅との関係を示すグラフである。なお、グレーティング長は、40mmから100mmまでの間で検討した。また、グレーティングのアポダイズは式(7)で示したものを用いた。ここで分散平坦帯域幅は、−40℃の温度勾配を印加したときの分散特性で、分散の変動値が±10ps/nmに収まる帯域幅を示したものである。また、分散可変幅は−40℃の温度勾配を印加したときの分散値と、+40℃の温度勾配を印加したときの分散値の差である。これらをグレーティングピッチのチャープ率を幾つか変えて求めグラフ化したものである。図12より分散平坦帯域幅に対する分散可変幅はグレーティング長が長くなるに従って大きくなるのではなく、70〜80mmで最大値となり、それ以上グレーティング長が長くなっても大きな分散可変幅が得られないことが分かる。
【0043】
図13は、図12の分散平坦帯域幅0.4nmの分散可変幅をグレーティング長に対して示したグラフである。図13より分散可変幅はグレーティング長50mm以上で急激に増大し、70mmで最大値を示し、それ以上長くなると徐々に小さくなることが分かる。グレーティング長が長くなるに従って分散可変幅が徐々に減少するのは、グレーティング長が長くなるほど損失特性がシャープな形状になり、その影響が分散特性の平坦な部分を減少させるためである。図13よりグレーティング長60mmとグレーティング長100mmでは、分散平坦帯域幅0.4nmに対してほぼ同じ分散可変幅が得られるが、グレーティングの両端で絶対値40℃の温度勾配を印加する場合、グレーティング長100mmは、グレーティング長60mmの10/6倍の消費電力を必要とするため、グレーティング長60mmの方が好ましい。従って、消費電力を大きくせず、大きい分散可変幅を得るにはグレーティング長を60〜80mmの範囲内の長さとすればよい。以上は温度勾配を±40℃印加した場合について述べたが、温度勾配はこれに限らず他の温度勾配でも同様にグレーティング長60〜80mmが最適なグレーティング長であった。
【0044】
以上のように、この可変分散等化装置によれば、屈折率変調の包絡線を式(3)で表されるSinc関数型、または式(4)表されるスーパーガウス関数型とし、グレーティング長を60〜80mmとすることで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅が得られる。
【0045】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る可変分散等化装置について説明する。この可変分散等化装置は、実施の形態1に係る可変分散等化装置と比較すると、チャープグレーティングは、式(3)に示すsinc関数型の屈折率変調の包絡線において、次数nを4〜30の範囲を満足している点で相違する。このように式(3)で次数nを4〜30の範囲とすることによってアイ開口ペナルティ0.5dB以下の波長範囲を広くとることができる。
【0046】
次に、この可変分散等化装置におけるチャープグレーティングの屈折率変調の包絡線に関する上記式(3)および式(4)における次数nについての検討結果を説明する。図14は、チャープグレーティングに、−50℃の温度勾配を印加した場合の次数nと、43Gbit/sのNRZ変調光信号を伝送したときのアイ開口ペナルティが0.5dB以下の波長範囲の関係を示したものである。なお、屈折率変調の包絡線は、式(3)のSinc関数で表されるアポダイズで、グレーティング長を60mm、定数aを60とした。この図14から次数nが4〜30でアイ開口ペナルティ0.5dB以下の波長範囲は最も広くなることが分かる。次数nが小さい場合はグレーティング中央部での屈折率変調の大きさが均一な部分が短くなり群遅延特性が直線ではなくなり分散が平坦な領域が減少する。一方、次数nが30より大きくなると屈折率変調がグレーティングの両端で急激にゼロになるため、群遅延特性に群遅延リップルが生じ、やはり分散が平坦な領域が減少し、アイ開口ペナルティ0.5dB以下の波長範囲が狭くなる。
【0047】
このように次数nを4〜30の範囲とすることによってアイ開口ペナルティが0.5dB以下となる波長範囲を最も広くすることができる。なお、上記のパラメータに限るものではなく、定数aが他の値でも同様の結果が得られた。またグレーティング長が60mm以外の場合にも同様の結果が得られた。さらに式(4)に示したスーパーガウス関数型のアポダイズを用いたチャープグレーティングでも、定数bやグレーティング長に関わらず同様の結果を得ることができる。
【0048】
以上に述べたように、この可変分散等化装置によれば、チャープグレーティングの屈折率変調の包絡線を式(3)で表されるSinc関数型、または式(4)表されるスーパーガウス関数型とし、次数nを4〜30とし、グレーティング長を60〜80mmとしている。これによって、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅が得られる。
【0049】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る可変分散等化装置について説明する。この可変分散等化装置は、実施の形態1及び2に係る可変分散等化装置と比較すると、チャープグレーティングの両端部のグレーティングピッチの差を0.4nm〜0.7nmの範囲内としている点で相違する。これによって分散平坦帯域幅を必要な幅以上獲得し、分散可変幅を十分大きくすることができる。
【0050】
次に、この可変分散等化装置において、チャープグレーティング2のグレーティングピッチのチャープ率と分散可変幅および分散平坦帯域幅の関係について説明する。図15は、チャープグレーティングにおいて、チャープグレーティング両端のグレーティングピッチの差に対する、±40℃の温度勾配を印加したときの分散可変幅および分散平坦帯域幅の関係を示すグラフである。なお、このチャープグレーティングは、グレーティングピッチが長手方向に一次関数的に変化する。また、チャープグレーティングの屈折率変調の包絡線は式(3)で示すSinc関数型とし、定数aは60,次数nは6とした。ここで分散平坦帯域幅は分散の変動が±10ps/nmの範囲に収まる波長帯域である。図15よりチャープグレーティング両端のグレーティングピッチの差が大きくなるほど、分散平坦帯域幅は広くなるが、分散可変幅は大きく出来ないことが分かる。一方、チャープグレーティング両端のグレーティングピッチの差が小さくなるほど、分散可変幅は大きくなるが、分散平坦帯域幅は狭くなることが分かる。この傾向は印加する温度勾配の大きさによらず、同様の傾向を示す。温度勾配の大きさとしては、消費電力や高温に対する信頼性を考慮すると、±30℃〜±60℃以下に抑えることが好ましい。従って、分散平坦帯域幅を必要な幅以上獲得し、分散可変幅を十分大きくするには、チャープグレーティングの両端のグレーティングピッチの差を0.4nm〜0.7nmとすればよい。
【0051】
以上のように屈折率変調の包絡線を式(3)で表されるSinc関数型、または式(4)表されるスーパーガウス関数型とし、グレーティング長を60〜80mmとし、チャープグレーティング両端のグレーティングピッチの差を0.4nm〜0.7nmとすることで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅が得られる。
【0052】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係る可変分散等化装置について説明する。この可変分散等化装置は、実施の形態1から3に係る可変分散等化装置と比較すると、波長分散制御装置がチャープグレーティングのチャープ率を増加させるか又は減少させるかのいずれか一方のみ、即ち、同一符号の温度勾配のみを付与する点で相違する。これによって装置の構成を簡易化することができる。
【0053】
この可変分散等化装置によれば、屈折率変調の包絡線を式(3)で表されるSinc関数型、または式(4)表されるスーパーガウス関数型とし、グレーティング長を60〜80mmとすることで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅が得られる。なお、この場合には温度勾配を正負両方向に印加する場合に比べ、同一分散可変幅を得るには2倍の温度勾配を要する。
【0054】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係る可変分散等化装置について説明する。この可変分散等化装置は、実施の形態1から4に係る可変分散等化装置と比較すると、波長分散制御装置は、機械的応力を印加してチャープグレーティングを伸ばし、チャープ率を変化させて分散を制御する点で相違する。このように、機械的応力によっても波長分散を制御することができる。なお、波長分散制御装置は、上記温度分布制御装置や、上記機械的応力印加手段の他、電界を印加して分散を制御してもよい。これらの場合においても、可変分散等化装置における屈折率変調の包絡線を所定のSinc関数型、または所定のスーパーガウス関数型とし、グレーティング長を60〜80mmとすることで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな応力印加や電界印加で大きな分散可変幅が得られる。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る可変分散等化装置によれば、チャープグレーティングを有する光導波路と、ブラッグ波長を変化させて分散を制御する波長分散制御装置とを備える。この波長分散制御装置によってブラッグ波長を変化させて波長分散を制御することができる。またこの可変分散等化装置では、チャープグレーティングの長さを60mm以上、80mm以下の範囲内とすると共に、チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比を5%以下としている。これによって群遅延特性でのリップルの発生を抑制し、伝送品質を維持することができる。また、本発明に係る可変分散等化装置によれば、チャープグレーティングは、屈折率変調の包絡線N(X)が所定のSinc関数型である。そこで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。さらに、屈折率変調の包絡線N(X)の次数nが4〜30の実数である。そこで、アイ開口ペナルティが0.5dB以下の波長範囲を広くできると共に、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。またさらに、上記チャープグレーティングの両端でグレーティングピッチが0.4nm〜0.7nmの差を有するので、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。
【0057】
本発明に係る可変分散等化装置によれば、チャープグレーティングを有する光導波路と、ブラッグ波長を変化させて分散を制御する波長分散制御装置とを備える。この波長分散制御装置によってブラッグ波長を変化させて波長分散を制御することができる。またこの可変分散等化装置では、チャープグレーティングの長さを60mm以上、80mm以下の範囲内とすると共に、チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比を5%以下としている。これによって群遅延特性でのリップルの発生を抑制し、伝送品質を維持することができる。また、チャープグレーティングは、屈折率変調の分布N(X)が所定のスーパーガウス関数型である。そこで、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。さらに、屈折率変調の包絡線N(X)の次数nが4〜30の実数である。そこで、アイ開口ペナルティが0.5dB以下の波長範囲を広くできると共に、伝送後の光信号を劣化させることなく、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。またさらに、上記チャープグレーティングの両端でグレーティングピッチが0.4nm〜0.7nmの差を有するので、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。
【0059】
また、本発明に係る可変分散等化装置によれば、上記波長分散制御装置は、温度分布制御装置であるので、分散可変を容易に行うことができ、小さな温度勾配で大きな分散可変幅を得ることができる。
【0060】
さらに、本発明に係る可変分散等化装置によれば、上記波長分散制御装置は、グレーティングの長手方向に正又は負の温度勾配を付与できる。そこで、最高温度を抑制しながら大きな分散可変幅を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置の構成図であり、(b)は、(a)の可変分散等化装置のA−A’線に沿った断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置の動作について説明する概略図である。
【図3】 本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置のヒータの温度分布(a)と群遅延時間の関係(b)を示すグラフである。
【図4】 チャープグレーティングのアポダイゼーションがsinc関数型である場合の定数aによるアポダイゼーションの変化を示すグラフである。
【図5】 図4のグレーティングの端部についての拡大図である。
【図6】 sinc関数型の包絡線で定数aを変化させた場合の波長とアイ開口ペナルティとの関係を示すグラフである。
【図7】 図6で定数aと帯域内アイ開口ペナルティの平均値との関係を示すグラフである。
【図8】 グレーティングでの屈折率変調を測定する原理を示す概略図である。
【図9】 本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置のチャープグレーティングに−50℃,±0℃,+50℃の3通りの温度勾配を印加したときの群遅延特性および損失特性を示すグラフである。
【図10】 本発明の実施の形態1に係る可変分散等化装置を用いて43Gbit/sのNRZ変調された光信号を伝送したときのアイ開口ペナルティを示すグラフである。
【図11】 温度勾配が−50℃(分散値:−670ps/nm)のときの、アイ開口ペナルティと損失特性および分散特性をそれぞれ示すグラフである。
【図12】 ±40℃の温度勾配を印加したときに実現される分散平坦帯域幅と分散可変幅の関係を示したもので、グレーティング長をパラメータとして40mmから100mmまで検討したグラフである。
【図13】 図12の分散平坦帯域幅0.4nmが得られる分散可変幅と、グレーティング長との関係を示すグラフである。
【図14】 本発明の実施の形態2に係る可変分散等化装置において、−50℃の温度勾配を印加した場合における、sinc関数の次数nと43Gbit/sのNRZ変調光信号を伝送したときのアイ開口ペナルティが0.5dB以下の波長範囲の関係を示したグラフである。
【図15】 本発明の実施の形態3に係る可変分散等化装置に、チャープグレーティング両端のグレーティングピッチの差に対する、±40℃の温度勾配を印加したときの分散可変幅及び分散平坦帯域幅との関係を示したグラフである。
【図16】 従来の可変分散等化器を示す概略図である。
【符号の説明】
1 可変分散等化器、2 チャープグレーティング、2a チャープファイバグレーティング、3 ヒータ、4 基板、5 リード線、6 ヒータ制御回路、7インターフェース回路、8 光ファイバ、10 チャープファイバグレーティング、11 コア、12 クラッド、21 He−Neレーザ光源、22 ディテクタ、50 ファイバ、51 グレーティング、52 屈折率摂動、53 ヒータ、54、55 電極、56 電源、60 可変分散補償グレーティング

Claims (4)

  1. グレーティングの長手方向に沿ってブラッグ波長を変化させたチャープグレーティングを有する光導波路と、
    前記チャープグレーティングの前記ブラッグ波長を変化させて波長分散を制御する波長分散制御装置と
    を備え、
    前記チャープグレーティングの長さは、60mm以上、80mm以下の範囲内であると共に、
    前記チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比は5%以下であり、
    前記チャープグレーティングは、グレーティングの両端でのグレーティングピッチの差が0.4nm〜0.7nmの範囲内であって、
    前記チャープグレーティングは、屈折率変調の包絡線N(X)が、次式
    N(X)=sinc (X
    [ただし、X=(x−(L/2))/(L/2)、(ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである)、sinc(X)=sin(X)/X、 a≧17.3、 nは4〜30の範囲内の実数である]
    を満足することを特徴とする可変分散等化装置。
  2. グレーティングの長手方向に沿ってブラッグ波長を変化させたチャープグレーティングを有する光導波路と、
    前記チャープグレーティングの前記ブラッグ波長を変化させて波長分散を制御する波長分散制御装置と
    を備え、
    前記チャープグレーティングの長さは、60mm以上、80mm以下の範囲内であると共に、
    前記チャープグレーティングの両端部での中央部に対する屈折率変調の比は5%以下であり、
    前記チャープグレーティングは、グレーティングの両端でのグレーティングピッチの差が0.4nm〜0.7nmの範囲内であって、
    前記チャープグレーティングは、屈折率変調の包絡線N(X)が、次式
    N(X)=exp(−(X/b)2n
    [ただし、X=(x−(L/2))/(L/2)(ここで、Lは前記チャープグレーティングの長さ、xは前記チャープグレーティングの一方の端部を原点O(x=0)としたときの前記チャープグレーティングに沿って原点Oからの距離xである)、b≦(1.73) −1/n 、nは4〜30の範囲内の実数である
    を満足することを特徴とする可変分散等化装置。
  3. 前記波長分散制御装置は、チャープグレーティングの長手方向に対する温度分布を制御する温度分布制御装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の可変分散等化装置。
  4. 前記温度分布制御装置は、チャープグレーティングの長手方向に沿って正又は負の温度勾配を付与可能なことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変分散等化装置。
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