JP3867901B2 - 静電潜像現像用キャリア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真方式において用いられるキャリアに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式は、磁性キャリアとトナーからなる二成分現像剤を用いる二成分現像方式と、磁性もしくは非磁性トナーをトナー担持体上に薄層に保持して現像を行う一成分現像方式の2種に大別できるが、二成分現像方式は、一成分現像方式に比べ、表面積の大きな微粒のキャリアを使用することから高速でのトナーの供給やトナーの帯電性の均一化が容易であり、装置の高速化や高画質化に対して有利であることが知られている。
【0003】
近年では複写機やプリンタのネットワーク接続が拡大し、複数のユーザーからの画像出力要求を一台のプリンタで担うケースが増えている。これにより画像出力命令の発行から印刷物の出力までに要する時間の短縮が求められてきており、従来に比べて、装置が完全に停止した状態から印刷開始までの短時間に、現像剤中のトナーを所望の帯電量に帯電する必要がある。
【0004】
また、装置の小型化に加え、従来のモノクロプリンタ、複写機からフルカラー機への移行が急速に進行しており、フルカラー画像では、モノクロ画像に比べ、画像面積が格段に大きく、文字主体のモノクロ画像にくらべて、画像一枚あたりのトナー消費量、すなわち現像量も多くなってきている。特に、小型のフルカラー機においては、少量の現像剤で大量のトナーを現像させるため、より短時間での帯電発生の能力が要求される。また、おのずと現像剤の攪拌時間が短くなることで、攪拌の不均一さも生じやすくなり、帯電量の不均一化を招きやすくなっている。こうした不均一な帯電量の状態で現像を行うと、地肌汚れや、場合によっては現像剤中からトナーが分離、飛散し機内を汚染する等の不具合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来の問題点を解決する手段を提供することにある。すなわち、短時間の現像剤攪拌において所望の帯電量が得られ、かつ、地肌汚れやトナー飛散等装置内汚染のないキャリアを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、キャリアの表層に相分離構造を導入することによって、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の第1は、磁性を有する球状の粒子上に、それを被覆する形態に設けられた外殻層を有するキャリアであり、外殻層が少なくとも異なる二種の樹脂成分からなる相分離構造を有し、かつ、少なくとも一つの樹脂成分に抵抗制御成分が含有されており、
該相分離構造は連続相と不連続相とからなり、
該連続相はシリコーン以外の樹脂を含む相であると共に、該連続相のみに抵抗制御成分として低抵抗成分が含まれ、
該不連続相はシリコーン樹脂を含む相である
ことを特徴とする静電潜像現像用キャリアである。
【0008】
本発明の第2は上記相分離構造の分離単位が、用いるトナー径の1/5〜1/100の径であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0009】
本発明の第3は上記低抵抗成分が少なくとも導電性カーボンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0012】
以下、本発明のキャリアについて詳しく説明する。
キャリアは内核に相当する磁性粉の表面にトナーとの帯電性、及び現像性を適切にするべく、外殻にあたる層を設けた形態を有する。その外殻は実質的に球形の芯材表面に、微細かつ、均一な相分離構造を設けた形態を有するものである。この相分離構造は、連続層中に組成の異なる不連続な相を設けたものである。後述する実施例では、連続する低電気抵抗の樹脂相の中に、ほぼ球状の高電気抵抗の樹脂相が不連続に分散した形態のキャリアを得、このキャリアの表面には高電気抵抗の樹脂相が海島状に観察された。このようにキャリア表面の外殻層に微細な構造を設けることにより、相構成材料の特性、具体的には電気抵抗の制御や耐スペント性の向上や、帯電量付与能力と静電的なトナーの保持能力等単一組成の材料では得にくい複数の機能に対して最適な材料を組み合わせることで容易に得ることができる。
【0013】
この相分離構造の各不連続部分の大きさは、用いるトナー径に対して十分小さく、かつ、分離構造としての帯電発生能及びトナー保持能力に寄与するに十分な大きさであることが必要である。表面に現れる各不連続部分をそのキャリアの分離単位と捉えたとき、好ましくは、キャリア表面においてその分離単位が平均してトナー径の1/5〜1/100の大きさを持つことがよい。例えば、後述する実施例で示すように、不連続部分が表面に海島状に現れるキャリアでは、その海島状の部分の全長、又は、その部分を円形とみなせるときはその直径がその範囲の大きさであることが好ましい。1/5より大きな不連続部分を構成すると、トナーの帯電量のブロード化を招き、好ましくない。また、1/100より小さな構造になると、実質的に均一組成の外殻層の場合と同様になり、相分離による、先の効果が得られなくなる。この連続相及び不連続相の各相構成物質は互いに異なる組成の樹脂からなり、用いるトナーに対して異なる帯電発生能を有する。
【0014】
さらに、各相構成物質は互いに異なる電気特性を有することが好ましい。キャリア上に異なる抵抗を有する部位を微細に散りばめて形成することで、比較的低帯電量のトナーを用いても地肌汚れが少なく、かつ、現像剤中のトナーの帯電量が比較的小さくとも、キャリア上のトナーの補足能力が大きく得られるため、地肌汚れ等、トナーの低帯電量化にともなう問題を回避できる。
【0015】
こうした微細な電気抵抗の分布を形成し、かつ、キャリアの電気抵抗を適正な範囲に設けるために、被覆層には従来公知の種々の導電性物質を含有させることできるが、特に相分離構造を形成する一方の樹脂相にのみ導電性物質を導入することが好ましい。また、相分離構造の連続層が低抵抗成分を含有し、不連続層に比べて低電気抵抗であることが好ましい。
【0016】
導電性物質の例としては例えば、導電性ZnO、Al等の金属粉、各種の方法で作られたSnO2及び種々の元素をドープしたSnO2、ホウ化物、例えばTlB2、ZnB2、MoB2、炭化ケイ素及び導電性高分子(ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)、ポリピロール)等があるが、最も好ましくは導電性のカーボンブラックである。また、電気抵抗の制御範囲が広範であるため、導電性材料は相分離構造の連続層に含有されることが好ましい。
【0017】
相分離状態の被覆である外殻層の形成方法は、従来公知の皮膜形成方法で形成することができる。すなわちキャリア上に樹脂溶液を塗布、又は、樹脂を構成するモノマー、オリゴマー、ポリマーの溶液を塗布する。その後、乾燥固化もしくは相応の化学反応によって高分子量化するか、芯材表面へ化学的に皮膜を析出させる。このとき、積層する際に非相溶性の材料を用いたり、反応もしくは析出速度を制御することで相分離構造の形成が可能である。具体的には、スプレードライ法、浸漬法、あるいはパウダーコーティング法等公知の方法が使用できる。
【0018】
もっとも容易には芯材に対して異なるノズルから同時に異なる樹脂溶液を噴霧し、コートする方法が用いられる。こうした方法により塗布条件を適切に選定することで溶液状態では相溶性を示す樹脂を用いても、任意の相分離構造を形成することが可能である。
【0019】
本発明における各樹脂相の例としては、従来公知のあらゆる樹脂を使用できるが、なかでもその成分の一つ、特に不連続層にシリコーン樹脂を用いることが好ましい。シリコーン樹脂は高い電気抵抗と低い表面エネルギーを有し、かつ、キャリア表面を均一に被覆する成膜性を備えた材料であり好ましい。ここでいうシリコーンポリマーはSi−Oを基本繰り返し単位として持つポリマーであり、下記一般式で表わされる繰り返し単位を含むシリコーン樹脂が挙げられる。
【0020】
【化1】
上記式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基又はC1〜C4の低級アルキル基又はフェニル基を表わす。
【0021】
こうしたシリコーン樹脂の例として、例えばストレートシリコーンとしては、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152(信越化学工業社製)、SR2400、SR2406(東レダウコーニングシリコーン社製)等が挙げられる。また、その一部を有機化合物と置換又は有機化合物を付加することにより得られる変性シリコーン等があり、その例としては、エポキシ変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルキッド変性シリコーン等が挙げられる。具体例としては、エポキシ変性:ES−1001N、アクリル変性:KR−5208、ポリエステル変性:KR−5203、アルキッド変性:KR−206、ウレタン変性:KR−305(以上、信越化学工業社製)、エポキシ変性:SR2115、アルキッド変性:SR2110(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等が代表的である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態をさらに詳しく述べる。
【0023】
本発明のキャリアにおいて、表面に皮膜を設けるキャリア芯材としては、従来公知のものが使用できる。例えば、鉄、コバルト等の強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Baフェライト等が挙げられる。キャリア芯材としては上記の磁性粒子が一般的だが、より小粒径の磁性粉をフェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の公知の樹脂中に分散した形態を持つ、いわゆる樹脂分散キャリアも好適に用いられる。
【0024】
さらに、同様に微粒子として、金属粉や、種々の金属酸化物粒子等の無機微粒子も用いることができる。中でも、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物粒子は容易に均一な微細粒径の粒子が得られ、かつ、使用する粒子によって様々な電気特性や機械的な強度を得ることができる。また、シリコーン樹脂の縮合硬化の過程で、キャリアを高温に加熱しても、微粒子が熱的に安定であることも重要である。
【0025】
さらに、キャリア皮膜にはトナーとの帯電性を好適にするための種々の薬剤を含有させることもできる。なかでも特に、窒素を構造内に含有する有機シリコーン樹脂はその帯電性と成膜性から好ましく用いられる。窒素を構造内に含有する有機シリコーン樹脂の代表例としては例えば下記構造で表わされ、特にXにアミノ基を有する、いわゆるアミノシランカップリング剤は好ましく用いられる。下記式中、nは1〜3の整数、Xは有機又は無機物との反応性又は吸着性を有する各種の官能基、及び官能基を有する飽和又は不飽和の炭化水素鎖を、ORはアルコキシ基を意味する。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
本発明に使用されるトナーとしては、バインダー樹脂としての熱可塑性樹脂を主成分とし、着色剤、微粒子、そして帯電制御剤、離型剤等を含むものである。また、一般公知の粉砕法、重合法等の各種のトナー製法により作製されたトナーを用いることができる。
【0029】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−o−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が単独あるいは混合して使用できる。
【0030】
バインダー樹脂のうちポリエステル樹脂は、アルコールと酸の重縮合反応によって得られる。アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単量体、その他の2価のアルコール単量体、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上の高級アルコール単量体を挙げることができる。
【0031】
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸からの二量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボン酸−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体、これらの酸の無水物等、3価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0032】
さらに、バインダー樹脂のうちエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合物等があり、例えば、エポミックR362、R364、R365、R366、R367、R369(以上三井石油化学工業社製)、エポトートYD−011、YD−014、YD−904、YD−017(以上東都化成社製)、エポコート1002、1004、1007(以上シェル化学社製)等の市販のものがある。
【0033】
着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、ハンザイエローG、ローダミン6Gレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、染顔料等、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用し得る。
【0034】
また、トナーは、通常使用されるトナーと同様に摩擦帯電性を制御する目的で含有せしめる薬剤を含有していても何ら不都合はない。そうした、いわゆる極性制御剤としては、例えばモノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸及びその塩、サリチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のCo、Cr、Fe等の金属錯体等を単独又は混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、トナーの補給性や攪拌性、帯電特性の均一化等粉体特性としての流動性の向上のためにトナーに従来公知の流動性補助剤や種々の添加剤を用いることもできる。
【0036】
添加剤としては、例えばテフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛のごとき滑剤あるいは酸化セリウム、炭化ケイ素等の研磨剤が挙げられる。さらに、流動化剤としては代表的には酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等の酸化金属微粒子、及びその表面を疎水化した粒子であり、これらのいずれの微粉末もその表面を疎水化することによりさらに流動性の面で優れた効果をもたらす。表面を疎水化処理するためには、例えば、シランカップリング剤やシリコーンオイル、有機オイル、また、シリル化剤として一般に知られるケイ素化合物を粒子表面と接触、反応させることができる。
【0037】
疎水化剤として、例えばクロロシラン類としては、代表的には、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、プロピルジクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、等アルキルクロロシラン、フェニルクロロシラン等、さらに、そのフッ素置換体として、フルオロアルキルクロロシラン、パーフルオロアルキルクロロシランの類が挙げられる。シリルアミン類としては、代表的には、ヘキサメチルジシラザン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン等、シリルアミド類としては、代表的にN、O−ビストリメチルシリルアセトアミド、N−トリメチルシリルアセトアミド、ビストリメチルシリルトリフルオロアセトアミド等が挙げられる。また、アルコキシシラン類としては、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、エチルジアルコキシシラン、ジエチルアルコキシシラン、トリエチルアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、トリプロピルアルコキシシラン等のアルキルクロロシランや、フェニル基を有するフェニルアルコキシシラン等が挙げられる。また、そのフッ素置換体としてフルオロアルキルアルコキシシランの類、パーフルオロアルキルアルコキシシランの類が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、及び、その誘導体、フッ素置換体、ジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等、シロキサンの類等、一般公知の疎水化剤として用いられる化合物すべてが使用できる。
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本実施例は、本発明の一態様にすぎず、本発明はこれら実施例に拘束されない。なお、以下実施例に示す各成分量(部)はいずれも重量基準である。
【0039】
実施例1
(キャリアAの製造)
キャリア芯材としては、Cu−Znフェライト粒子(重量平均粒径50μm、印加磁界1000Oe(約79578A・m)における磁気モーメント 65emu/g)を用いた。芯材に対し次のように外殻層を形成して、キャリアAを得た。
【0040】
まず、樹脂分散液1としてシリコーン樹脂(SR2411:東レダウコーニングシリコーン社製)の固形分に対しての下記構造のアミノシランカップリング剤1部、導電性カーボン(ライオンアクゾ社製、ケッチェンブラックEC−DJ600)2部とを混合し、固形分濃度が10wt%となるよう希釈、ホモジナイザーで30分間分散し、分散液1を得た。
【0041】
【化4】
【0042】
一方、樹脂分散液2として、アクリル樹脂溶液(日立化成工業製ヒタロイド3083)を固形分濃度10wt%となるようトルエンに溶解し、同様に導電性カーボン(ライオンアクゾ社製、ケッチェンブラックEC−DJ600)2部とを混合し上記のアミノシランカップリング剤1部を混合し、分散液2を得た。
【0043】
上記それぞれの分散液を、芯材5kgに対して、流動床型コーティング装置を用いて、樹脂分散液1及び2を、固形分量として1:2になるように、異なるノズルから噴霧し塗布した。塗布時の槽内温度は100℃とした。塗布終了後、更に、150℃で2時間加熱して、平均膜厚0.43μmのキャリアAを得た。膜厚の調整はコート液量により行った。
【0044】
得られたキャリアの表面をEPMA及び無蒸着状態で走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、表面に微細な組成分布及び導電性の分布が観察された。キャリア上は低抵抗組成の表面に高抵抗部が海島状に分布した形態であり、高抵抗部は平均フェレ径にして約1.2μmの球状の部位であった。
【0045】
また、得られたキャリアの抵抗値、キャリア芯材の磁気モーメント及び重量平均粒径は次の(1)〜(3)のように測定した。
(1) キャリア抵抗は、2mmの間隔で平行に配置した電極を有する容器に芯材を充填し、両極間の500Vでの直流抵抗を横川ヒューレットパッカード社製4329A High Resistance Meterにて測定した。
(2)磁気モーメントは東英工業社製 多試料回転式磁化測定装置 REM−1−10を用い印加磁界1000Oe(約79578A・m)にて測定した。
(3)重量平均粒径はマイクロトラックで測定した重量基準で求めた径(Dv)とした。
【0046】
(トナーAの製造)
次に、上記キャリアAと共に現像剤に用いるトナーAの製造方法を説明する。トナーAの処方は次のとおりである。
ポリエステル樹脂 85部
カルナウバワックス1号品 5部
カーボンブラック(三菱化学社製 #44) 7部
含クロムアゾ化合物(保土ヶ谷化学社製 T−77) 3部
以上の物質をブレンダーにて十分に混合した後、2軸式押出し機にて溶融混練し、放冷後カッターミルで粗粉砕し、ついでジェット気流式微粉砕機で微粉砕し、さらに風力分級機で重量平均粒径6.8μmのトナー母粒子を得た。
【0047】
トナー母粒子100部に対し、疎水性シリカ微粒子(R972日本アエロジル社製)0.7部、疎水性酸化チタン(MT150A イソブチルトリメトキシシラン処理品疎水化処理 テイカ社製)0.1部を加え、ヘンシェルミキサーで混合し同様に風篩してトナーAを得た。このトナーの個数平均径は5.4μm、体積平均径は6.8μmであった。
【0048】
(評価方法)
リコー製複写機imagioColor 2800の黒現像ユニットに、先のキャリアAの91重量部、トナーA9重量部からなる現像剤を装填し、1万枚の画像を出力した。このときに、感光体帯電電位は−850Vとし、現像剤担持ローラの印加電圧は−600Vとした。現像剤中のトナー濃度は9wt%一定となるよう、Tセンサー出力値により制御した。
【0049】
作像試験では、画像面積率20%の写真チャートを出力しながら1万枚の連続複写を行った。その間、500枚ごとに、現像ユニットのトナー補給口からトナーを追加し現像剤中のトナーの重量比が11wt%になるようにした。
【0050】
画像の評価は500枚ごとのトナー追加の前後に白紙画像を出力し、画像上の汚れを確認した。また、トナー補給後の現像スリーブ上から現像剤を少量取出し、現像剤の帯電量を測定した。さらに、1万枚複写終了後の現像装置下側の汚れを目視評価し、スリーブからのトナーの飛散状態を評価した。評価結果は後掲の表1に実施例2〜5及び比較例1〜2の結果と併せて記載する。
【0051】
実施例2
(キャリアBの製造)
キャリアAの製造において、分散液1の固形分濃度を2wt%に希釈し、スプレー時の送液量、及びスプレーエア圧を適宜調整してキャリアBを得た。キャリアBについても同様に表面状態を分析した結果、約0.01μm径の海島状の相分離状態が形成されていた。
【0052】
(評価方法)
キャリアAをキャリアBに替えた以外は実施例1と同様にして、作像試験を実施し、得られた画像を評価した。評価結果は、後掲の表1に示した。
【0053】
実施例3
(キャリアCの製造)
キャリアAの製造において、分散液1の固形分濃度を7.5wt%に希釈し、スプレー時の送液量、及びスプレーエア圧を適宜調整してキャリアCを得た。キャリアCについても同様に表面状態を分析した結果、約0.06μm径の海島状の相分離状態が形成されていた。
【0054】
(評価方法)
キャリアAをキャリアCに替えた以外は実施例1と同様にして、作像試験を実施し、得られた画像を評価した。評価結果は、後掲の表1に示した。
【0055】
実施例4
(キャリアDの製造)
キャリアAの製造において、分散液1に導電性カーボンを使用せず、固形分濃度を7.5wt%に希釈したものを用い、分散液2において導電性カーボンの含有量を4wt%としたものを用い、スプレー時の送液量、及びスプレーエア圧を適宜調整してキャリアDを得た。キャリアDについても同様に表面状態を分析した結果、約0.07μm径の海島状の相分離状態が形成されていた。
【0056】
(評価方法)
キャリアAをキャリアDに替えた以外は実施例1と同様にして、作像試験を実施し、得られた画像を評価した。評価結果は、後掲の表1に示した。
【0057】
実施例5
(キャリアEの製造)
キャリアAの製造例において、分散液1に導電性カーボンを4部とし、固形分濃度を10wt%としたものを用い、分散液2において導電性カーボンを使用せず、分散液1、及びの固形分量が2:1になるようにして、スプレー時の送液量、及びスプレーエア圧を適宜調整してキャリアEを得た。キャリアEについても同様に表面状態を分析した結果、約0.06μm径の海島状の相分離状態が形成されていた。
【0058】
(評価方法)
キャリアAをキャリアEに替えた以外は実施例1と同様にして、作像試験を実施し、得られた画像を評価した。評価結果は、後掲の表1に示した。
【0059】
比較例1
キャリアAの製造例において、分散液1のみを用いてキャリアFを得た。このキャリアFを用いて実施例1と同様に作像試験を実施し、画像を評価した結果を後掲の表1に示す。このキャリアFを用いた現像剤では、トナー濃度を高めた際に地肌汚れが発生し、1万枚終了時の機内がトナーによって著しく汚れていた。
【0060】
比較例2
キャリアAの製造例において、分散液1の固形分濃度を20wt%とし、スプレー条件を変更してキャリアGを得た。このキャリアGは表面に相分離構造が形成されていたものの、その分離単位構造の大きさは約2.1μmと粗大なものであった。このキャリアGを用いて実施例と同様に評価した結果を表に示す。このキャリアを用いた現像剤では、トナー濃度を高めた際に地肌汚れが発生し、1万枚終了時の機内がトナーによって著しく汚れていた。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明のごとく、キャリアの表面に微細な相分離構造を設け、それぞれの相を異なる組成の樹脂で構成し、これにより、短時間の現像剤攪拌において所望の帯電量が得られ、かつ、地肌汚れやトナー飛散等装置内汚染のないキャリアを提供することが可能になった。
Claims (3)
- 磁性を有する球状の粒子上に、それを被覆する形態に設けられた外殻層を有するキャリアであり、外殻層が少なくとも異なる二種の樹脂成分からなる相分離構造を有し、かつ、少なくとも一つの樹脂成分に抵抗制御成分が含有されており、
該相分離構造は連続相と不連続相とからなり、
該連続相はシリコーン以外の樹脂を含む相であると共に、該連続相のみに抵抗制御成分として低抵抗成分が含まれ、
該不連続相はシリコーン樹脂を含む相である
ことを特徴とする静電潜像現像用キャリア。 - 上記相分離構造の分離単位が、用いるトナー径の1/5〜1/100の径であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用キャリア。
- 上記低抵抗成分が少なくとも導電性カーボンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電潜像現像用キャリア。
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