JP3867761B2 - 大型プリンタのロール紙カバーおよび該ロール紙カバーを備えた大型プリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,A1判またはB1判程度の大きさの印刷用紙まで印刷を行うことができる大型プリンタのロール紙カバーおよび該ロール紙カバーを備えた大型プリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
A1判またはB1判程度の大きさの印刷用紙まで印刷を行うことができる大型プリンタでは,印刷用紙として,単票紙のほかに,主として,ロール紙が用いられる。このため,大型プリンタには,ロール紙をセットできる給紙部が設けられ,この給紙部には,ロール紙軸を支持する軸受部と,ロール紙を保護するためのロール紙カバーが設けられている。
【0003】
ロール紙は,大型プリンタの給紙部にセットされた後,操作者により,印刷部に設けられた紙案内部の斜面に沿って印字ヘッド側に繰り出される。その後,ロール紙先端を印刷開始位置に合わせる操作(いわゆる頭出し操作)が行われ,頭出し操作後,ロール紙は,印刷部に設けられた紙送りローラによって搬送されながら印字ヘッドによって印刷され,排紙される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような大型プリンタにおいて,ロール紙カバーは,紙送りローラによるロール紙の搬送を妨害しないように,搬送中のロール紙から距離を置き,接触しない位置に配置される必要がある。
【0005】
一方,この距離をあまり大きくすると,頭出し操作時に,ロール紙カバー内で,ロール紙に撓みが生じる場合がある。この撓みは,頭出し操作が,繰り出されたロール紙を紙送りローラにより給紙部側に戻すことによって行われる一方,給紙部のロール紙軸を支持する軸受部が,ロール紙軸を逆転させてロール紙を巻き戻すための駆動機構を備えていないことから,戻された用紙が給紙部において行き場をなくすことによって生じるものである。
【0006】
このようなロール紙の撓みは,ロール紙に好ましくない曲がり癖,折れ曲がり,皺等を生じさせる場合があり,これらは,印字品質の劣化の原因ともなる。
【0007】
本発明は,このような状況に鑑みなされたものであり,その課題は,頭出し操作時には,給紙部において生じ得るロール紙の撓みの発生を防止できるとともに,給送時には,ロール紙の搬送妨害とならないロール紙カバーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために,本願請求項1に記載の発明に係る大型プリンタのロール紙カバーは,大型プリンタの給紙部にセットされ,その上部から前部を経て下方に繰り出されて該給紙部の前面側下部に設けられた紙案内部の上面に沿って給送されるロール紙を覆うために,該給紙部に取り付けられたロール紙カバーであって,該ロール紙カバーの内面が,前記ロール紙が前記紙案内部の上面に沿って給送される時は,給送されるロール紙に接触しない距離に配置され,該ロール紙カバーの前端部の内面が,前記紙案内部の上面とほぼ平行な平面に形成され,該ロール紙カバーの前記前端部から後端部に向けて続く部分の内面が,ロール紙の円筒形状に沿った曲面を備え,該ロール紙カバーの後端部が,該後端部でたるんでいるロール紙を外部に逃がす開口部を備えており,前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,戻されたロール紙は,該ロール紙カバーの前端部に接触案内されて,前端部に続く後方側に案内され,該ロール紙カバーの前端部から後端部に向けて続く部分の内面の曲面に沿って後端部側に移動し,重力により下方に垂れ下がったたるみを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項1に記載の発明によると,ロール紙カバーの内面が,ロール紙が紙案内部の上面に沿って給送される時は,給送されるロール紙に接触しない距離に配置されている。したがって,ロール紙カバーによるロール紙の搬送妨害は生じない。これにより,給紙部からの給送がスムーズに行われ,搬送妨害により生じる印字品質の劣化を防止できる。
【0010】
一方,ロール紙カバーの前端部の内面が,紙案内部の上面とほぼ平行な平面に形成され,かつ,該内面と紙案内部の上面との間の垂直距離が,前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,該内面が戻されたロール紙に接触して,該戻されたロール紙を該ロール紙カバーの後方側に案内する距離とされている。したがって,戻されたロール紙は,ロール紙カバーの前端部に接触案内されて,前端部に続く後方側に案内される。そして,ロール紙カバーの前端部から後端部に向けて続く部分の内面が,ロール紙の円筒形状に沿った曲面を備えているので,前端部から接触案内されたロール紙は,この曲面に沿って,ロール紙カバーの後端部側に移動し,後端部側で重力により下方に垂れ下がった「たるみ」として形成される。
【0011】
これにより,前端部で生じ得る「撓み」の発生を防止することができ,撓みの発生による印字品質の劣化を防止することができる。
【0013】
また,ロール紙カバーの後端部が,該後端部でたるんでいるロール紙を外部に逃がす開口部を備えているので,「たるみ」の形成が助勢され,ロール紙カバー前端部で生じ得る「撓み」の発生をより一層効果的に防止できる。また,ロール紙カバーをコンパクトにした場合でも,「たるみ」を後端部で十分に形成することができ,ロール紙カバー前端部で生じ得る「撓み」の発生を防止できる。さらに,「たるみ」がロール紙カバーに接触しないので,ロール紙給送時において,ロール紙カバーによる搬送妨害を防止できる。
【0014】
本願請求項2に記載の発明に係る大型プリンタのロール紙カバーは,請求項1において,前記ロール紙カバーの前端部が,前記紙案内部の上端部との間に,ロール紙の給送方向に沿った間隙を形成するように構成され,該間隙の給送方向に沿った距離が,前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,前記前端部の内面により,戻されたロール紙が該ロール紙カバーの後方側に案内され,かつ,操作者が前記前端部と前記紙案内部の上端部との間に手を挟まれない距離である,ことを特徴とする。
【0015】
本願請求項2に記載の発明によると,ロール紙カバーの前端部が,紙案内部の上端部との間に,ロール紙の給送方向に沿った間隙を形成するように構成され,この間隙の給送方向に沿った距離が操作者が手を挟まれない距離である。したがって,本願請求項3に記載の発明に係るロール紙カバーが開閉可能なものであっても,操作者は,開閉時に,ロール紙の前端部と紙案内部との間で手を挟むことがなく,操作者の怪我を防止できる。
【0016】
一方,該間隙を設けたことにより,ロール紙を戻した時に,ロール紙が該間隙からはみ出し,撓みを形成したり,ロール紙カバーの前端部から後方側への案内が行われず,撓みが生じる場合がある。しかし,間隙の給送方向に沿った距離を,ロール紙が給紙部側に戻される時に,戻されたロール紙が前端部の内面により該ロール紙カバーの後方側に案内される距離としたので,このような撓みの形成も防止することができる。
【0017】
本願請求項3に記載の発明に係る大型プリンタのロール紙カバーは,請求項1または2において,前記ロール紙カバーの前端部が,単票紙を下方から支持して前記紙案内部に案内する案内板として兼用されるものである,ことを特徴とする。
【0018】
本願請求項3に記載の発明によると,ロール紙カバーの前端部が,単票紙を下方から支持して紙案内部に案内する案内板として兼用されるので,単票紙の案内板を新たに設けることなく,単票紙の印刷を行うことができ,製造コストの増加を抑えることができる。
【0019】
また,ロール紙カバーの前端部は,紙案内部の上面から本願請求項1に記載の垂直距離をおいて設けられているので,単票紙は,前端部から紙案内部にかけて凹状に反った状態で配置されることとなる。これにより,単票紙下端部が紙案内部の上面に接触しやすくなり,単票紙の給送を確実に行うことができる。
【0020】
本願請求項4に記載の発明に係る大型プリンタは,請求項1から3のいずれか1項に記載の大型プリンタのロール紙カバーを備えていることを特徴とする。
本願請求項4に記載の発明によると,大型プリンタにおいて,本願請求項1から3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は,本発明に係るロール紙カバーを適用した大型プリンタの全体構成を示す斜視図である。この大型プリンタ1は,A1判またはB1判程度の大きさの印刷用紙まで印刷を行うことができ,給紙部2,印刷部3および排紙部4を備えている。排紙部4の下部には,操作者が立った状態でこの大型プリンタ1を操作しやすい高さに支持するための脚部(図示略)を取り付けることもできる。
【0022】
給紙部2は,大型プリンタ1の後方上部に突き出るように形成されている。給紙部2には,本発明に係るロール紙カバー21が開閉自在に取り付けられている。ロール紙カバー21の内部には,ロール紙ホルダ(図示略)が取り付けられ,該ロール紙ホルダにロール紙(図示略)がセットされるようになっている。また,ロール紙カバー21の前端部21aの上面には,単票紙(図示略)がセットされるようになっている。前端部21aの先端と印刷部3の上部との間には,操作者がロール紙カバー21を開閉する際に手を差し入れるための間隙(開口部)25が形成されている。ロール紙または単票紙(以下,両者をあわせて「印刷用紙」という。)は,印刷部3に給送されるようになっている。この印刷部2の詳細な構成および作用効果については,後に詳述する。
【0023】
印刷部3は,その内部に,図示しないプラテン,キャリッジ等を備えるとともに,その前面に,突出して形成されたインク・カートリッジ・ケース32を備えている。インク・カートリッジ・ケース32の内部には,インクを蓄えたインク・カートリッジ(図示略)が収納され,キャリッジに取り付けられた印字ヘッド(図示略)にインク・チューブ(図示略)を介してインクを供給している。給紙部2から印刷部3に給送された印刷用紙は,副走査方向に搬送されながら印字ヘッドによって印刷される。
【0024】
印刷部3の前面には,フロント・カバー31が,手動により開閉可能に取り付けられている。このフロント・カバー31の内部には,開口部(図示略)が形成され,この開口部を介して,メンテナンス(紙詰まりを起こした印刷用紙の除去,プラテンの清掃等)を行うことができるようになっている。
【0025】
排紙部4には,印刷部3で印刷された印刷用紙が搬送され,搬送されてきた印刷用紙は,排紙斜面41に沿って斜め下方に排紙されるようになっている。
【0026】
次に,給紙部2の詳細な構成および作用効果について詳述する。
図2は,ロール紙カバー21が開いた状態の給紙部2の正面図であり,図3は,同状態の大型プリンタ1の平面図である。
【0027】
給紙部2の本体の両側壁20,20には,ロール紙カバー21の両カバー側壁21c,21cおよびロール紙ホルダ22,22が取り付けられている。カバー側壁21c,21cは,左右対称構造である点を除いて同じ構造を備えている。ロール紙ホルダ22,22についても同様である。したがって,以下では,右側のカバー側壁21cおよび右側のロール紙ホルダ22について説明し,左側のカバー側壁21cおよび左側のロール紙ホルダ22についての説明は省略する。
【0028】
図4,図5および図6は,右側のカバー側壁21cおよび右側のロール紙ホルダ22の左側面図(一部断面図)であり,図4はロール紙カバー21が閉じた状態を,図5はロール紙カバー21が開閉途中にある状態を,図6はロール紙カバー21が開いた状態を,それぞれ示している。図7は,ロール紙ホルダ22の平面図である。図8は,ロール紙ホルダ22にセットされるロール紙軸(スピンドル)6およびこのロール紙軸6に装着されるロール紙5を示す斜視図である。図9は,ロール紙ホルダ22にセットされたロール紙軸6の操作説明図である。図10は,給紙部2と印刷部3の一部とを示す左側断面図である。
【0029】
なお,図4から図6および図10は,いずれも左側面図であるので,これらの図における右側が給紙部2(大型プリンタ1)の前方側となる。
【0030】
まず,図6および図7を参照して,ロール紙ホルダ22について詳述する。 ロール紙ホルダ22は,軸受部22aおよび仮置き部22bを備えている。軸受部22aは,ロール紙が最終的にセットされる部分で,ロール紙が印刷部3に給送される時に,後に詳述する図8のロール紙軸6の軸端部61を支持する。仮置き部22bは,ロール紙軸6の軸端部61を軸受部22aにセットする前または軸受部22aから取り出す際に一時的に軸端部61が置かれる部分であり,ロール紙をセットする操作者の負担を軽減するために設けられている。軸受部22aおよび仮置き部22bの奥行き(図7における横方向の幅)は,軸端部61を安定して支持できる長さに設定されている。
【0031】
軸受部22aは,ロール紙が給紙時に安定して回動するように,給紙部2の側壁20(図2および図3参照)の中央部付近に配置され,セットされたロール紙軸6の中心は,符号Aに示す位置に配置される。
【0032】
軸受部22aは,上方から軸端部61を嵌め込むことができるように上方に向かって開口した構造を有し,軸端部61が嵌まり込んで回動できる大きさの円弧状の凹曲面を有する凹部220と,上方に向かって直線的に立ち上がり,軸端部61を後方から支持する直線部221とから構成されている。凹部220には,ロール紙軸6の回動を円滑にするために,2つのローラ220a,220bと軸端部61を上方に向けて付勢する付勢部材(バネ等)220cとが取り付けられている。
【0033】
仮置き部22bは,軸受部22aの前方側斜め上方に隣接して配置され,円弧状の凹曲面を有する凹部222から構成されている。凹部222は,その前端(図6における右端)がその後端(図6における左端)の斜め上方に位置するように配置されており,これにより,凹部222は,後方側斜め上方に向かって開口した構造を有する。また,凹部222の最も低い地点は,凹部220の同地点よりも高い位置となるように配置されるとともに,凹部222の後端は,軸受部22aの凹部220の前端よりも高い位置に配置され,両端間は後方に向かって下降した直線部223で連接されている。
【0034】
凹部222の深度(本実施の形態では凹部222の前端から最も低い地点までの鉛直下方の深度)は,軸端部61を凹部222に素早く当接させることができるように,軸受部22aの深度(本実施の形態では凹部220の前端から最も低い地点までの鉛直下方の深度)よりも小さく形成されている。また,凹部222は,軸端部61の凹部222への位置決めを容易にするために,軸受部22aの凹部220よりも大きな曲率半径を有するように形成されている。さらに,凹部222の後端近傍部分は,仮置き部22bから軸受部22aへのロール紙軸6の移動を容易にするために,ほぼ水平になるように形成されている。
【0035】
次に,図8を参照して,ロール紙ホルダ22にセットされるロール紙軸6について詳述する。
円柱状のロール紙軸6は,左右のロール紙ホルダ22,22(図2および図3参照)にセットされる軸端部61,61を備えている。図8における右側の軸端部61は,右側のロール紙ホルダ22にセットされ,図8における左側の軸端部61は,左側のロール紙ホルダ22にセットされる。
【0036】
右側の軸端部61の近傍には,ロール紙軸6を手動により回動させるための円盤形状のハンドル部62が固設されている。このハンドル部62の直径は,回動操作を容易にし,かつ,後述するストッパとしての機能を果たすために,装着されるロール紙5の直径よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。ハンドル部62には,ロール紙軸6の中央部に向かって突設された円筒状のロール紙芯受部62aが一体的に形成されている。
【0037】
左側の軸端部61の近傍には,ロール紙5が装着された後,ロール紙5の左側端を衝止するストッパ(可動用紙ストッパ)63が嵌め込まれ,固定される。
【0038】
ロール紙5は,操作者によって,ハンドル部62側から見て左巻きになるようにロール紙軸6に挿通された後,芯5aがロール紙芯受部62aに嵌め込まれて,ロール紙5の右側端がハンドル部62に当接するまで押し込まれる。その後,ストッパ63が,ロール紙5の左側端に当接するまでロール紙軸6に嵌め込まれ,固定される。これにより,ロール紙5は,両側端をハンドル部62およびストッパ63によりそれぞれ衝止されることとなり,安定した給紙が可能となる。したがって,ハンドル部62は,ロール紙軸6の手動による回動に用いられるだけでなく,ロール紙5の右側端を衝止するためのストッパ(固定用紙ストッパ)としても兼用される。
【0039】
次に,図6および図7を再び参照して,ロール紙5が装着されたロール紙軸6(以下,単に「ロール紙軸6」という。)をロール紙ホルダ22にセットする操作について説明する。
【0040】
ロール紙カバー21が図6に示すように開けられた状態において,ロール紙軸6(軸端部61)は,操作者によって,まず仮置き部22b(左右の仮置き部22b,22b)にセットされる。仮置き部22bは,前述したように,軸受部22aの前方で,かつ上方に位置し,その深度が小さく形成されているので,仮置き部22bへのセット操作は,ロール紙軸6を軸受部22aに直接セットする場合よりも容易に行うことができる。
【0041】
続いて,ロール紙軸6は,操作者によって,仮置き部22bから軸受部22aへ転がり落とすようにして,軸受部22aにセットされる。仮置き部22bが軸受部22aの斜め上方に配置されているとともに,直線部223が軸受部22aに向かって下降して形成されているので,操作者は,重力を利用して,小さな力で転がり落とすことができる。
【0042】
このように,ロール紙ホルダ22に仮置き部22bを設けたことにより,ロール紙軸6のセット操作が容易となり,操作者の負担が軽減される。特に,本実施の形態のような大型プリンタ1では,ロール紙5が重くなるので,ロール紙軸6のセット操作を容易にし,操作者の負担を軽減するということは,大型プリンタ1そのものを使いやすいものとする観点から重要となってくる。
【0043】
なお,ロール紙軸6をロール紙ホルダ22から取り出す時も,ロール紙軸6を軸受部22aから仮置き部22bに一旦置いた後,取り出すことができるので,取り出す際の操作も容易となり,操作者の負担を軽減することができる。
【0044】
ロール紙軸6をロール紙ホルダ22にセットした後,ロール紙軸6に装着されたロール紙5は,その上部から前部を経て斜め下方に繰り出され,印刷部3に給送される。印刷終了後やロール紙の交換時等には,繰り出されたロール紙5が巻き取られ,ロール紙軸6は,ロール紙ホルダ22から取り出される。このロール紙5の繰り出し操作および巻き取り操作は,ロール紙軸6を回動させることにより行われるが,この際,ロール紙軸6にはハンドル部62が設けられているので,図9に示すように,操作者はハンドル部62を持って回動操作を行うことができる。このように,操作者の手7がロール紙5に直接触れることがないので,ロール紙5に手の汗,皮脂,汚れ等が付着することを防止でき,その結果,印字品質の劣化を防止できる。また,ハンドル部62が円盤形状をしているので,回動操作を行いやすいという利点もある。
【0045】
なお,ハンドル部62は,右利きの操作者が操作しやすいようにロール紙軸6の右側に取り付けられているが,左側に取り付けることもできる。
【0046】
次に,図4から図6および図10を参照して,ロール紙カバー21について詳述する。
ロール紙カバー21は,内部にセットされたロール紙5が外部から見えるように,透明な合成樹脂材(たとえばプラスチック等)により一体形成されている。このロール紙カバー21は,カバー側壁21c,21cと,これらの両カバー側壁21c,21c間に亘って一体的に形成され,ロール紙5をカバーする前端部21aおよび曲面部21bとから構成され,これらは,その内面が,ロール紙カバー21の内部にセットされるロール紙5に接触しない大きさに形成されている。
【0047】
カバー側壁21cは,給紙部2の本体の側壁20(図2および図3参照)に,手動により回動自在に取り付けられている。回動中心Bは,軸受部22aにセットされるロール紙軸6(図8参照)の中心(軸心)Aとほぼ同じ位置(より詳細には,中心Aよりも僅かに後方側の斜め下方の位置)に設けられている。
【0048】
前端部21aは,ロール紙カバー21が閉じた状態において,印刷部3の内部に設けられた紙案内部33とほぼ平行な平面として形成されている。したがって,前端部21aの内面も,紙案内部33とほぼ平行に形成されている。
【0049】
曲面部21bは,前端部21aからロール紙カバー21の後方側に向けての部分に形成され,ロール紙5の円筒形状に沿った形状(図4に示す閉じた状態において,ロール紙軸6の軸心Aを中心とした円筒形状)を有する。
【0050】
ロール紙カバー21の後端部には,切欠部21dが形成されている。この切欠部21dには,ロール紙5を覆う部材が設けられておらず,開放された開口部が形成されている。
【0051】
ロール紙カバー21は,ロール紙をロール紙ホルダ22にセットする時,または,セットされたロール紙を取り出す時に開けられ,印刷時または大型プリンタ1を使用していない時は,閉じた状態にされる。
【0052】
操作者が閉じた状態のロール紙カバー21の一部を持って,手動により後方側に向けて回動させると,ロール紙カバー21は,図4に示す状態から図5に示す状態を経て図6に示す状態に遷移し,開いた状態となる。また,開いた状態のロール紙カバー21を手動により前方側に向けて回動させると,ロール紙カバー21は,図6に示す状態から図5に示す状態を経て図4に示す状態に遷移し,閉じた状態となる。
【0053】
図4に示す閉じた状態の位置(以下「閉状態終端位置」という。)と,図6に示す開いた状態の位置(以下「開状態終端位置」という。)とは,ともに,ロール紙カバー21の回動を規制する図示しないストッパ等によって規定されている。
【0054】
この開閉操作(すなわち回動操作)において,ロール紙カバー21がロール紙5の円筒形状に沿った曲面部21bを有し,かつ,回動中心Bがロール紙軸6の中心Aとほぼ同じ位置にあるので,ロール紙カバー21は,ロール紙5の円筒面にほぼ沿うようにして開閉する。これにより,ロール紙カバー21の開閉に伴う該カバー21の占有スペースを小さくすることができる。
【0055】
さらに,回動中心Bは,中心Aよりも後方側(斜め下方)に僅かに偏倚して位置するので,ロール紙カバー21は,閉じた状態から開いた状態に向かうにしたがい,前端部21aおよび曲面部21bは,後方に変位して行く。これにより,開いた状態において,給紙部2の前面に形成されるロール紙セット/取り出し用開口部(前端部21aと給紙部2の本体下部(または印刷部3の本体上部)との間に形成される開口部)を,図2および図3に示すように大きく形成することができ,ロール紙5のセットおよび取り出しを行いやすくすることができる。
【0056】
一方,ロール紙カバー21の後端部には,切欠部(開口部)21dが設けられているので,ロール紙カバー21が開いた状態では,図3に示すように,ロール紙カバー21の後端部と給紙部2の本体後部(または印刷部3の本体後部)との間には,間隙27が形成される。これにより,ロール紙カバー21を開いた時に,操作者がロール紙カバー21によって手を挟む危険を防止することができる。したがって,切欠部21dは,ロール紙カバー21が開いた状態において,操作者が手を挟まれない程度または手が通る程度の長さ(すなわち図4の円周方向の長さ)に亘って形成されていることが好ましい。
【0057】
カバー側壁21cには,円弧状押圧部210がカバー側壁21cと一体的に形成されている。この円弧状押圧部210は,回動中心Bを中心とする円弧の形状を有するレール部210dと,レール部210dの中央部にカバー側壁21cと一体的に形成された接続部210cとによって構成されている。レール部210dは,接続部210cによってカバー側壁21cの本体に接続支持される一方,接続部210c以外の周囲の部分は,カバー側壁21cを貫通して形成された円弧状のスリット211によって囲まれている。レール部210dの外周部両端には,凹陥部210aおよび210bが形成されている。給紙部2の本体の側壁20(図2および図3参照)には,ピン(棒状部材)20aが固設され,レール部210dの外周部側に位置するスリット211に挿通している。
【0058】
レール部210dの位置および円周方向の長さは,ロール紙カバー21が閉状態終端位置に位置する時に,ピン20aが凹陥部210aに嵌まり込み,かつ,ロール紙カバー21が開状態終端位置に位置する時に,ピン20aが凹陥部210bに嵌まり込むにように設定されている。
【0059】
レール部210dは,その外周部によってピン20aを半径方向外側に向けて押圧するように構成されている。この押圧力は,本実施の形態では,レール部210dがピン20aによって半径方向内側に向けて押されることにより撓み,撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力を利用している。このため,ピン20aを押圧していない状態におけるレール部210dの外周部は,ピン20aを押圧している状態よりも半径方向外側に向けて膨らんで形成されている。すなわち,中心Bからレール部210dの外周部までの距離は,中心Bからピン20aの表面(押圧点)までの距離よりも大きくされている。ただし,レール部210dの両端部はよく撓むのに対し,中央部は接続部210cが存在することから両端部ほど撓まないので,中央部の膨らみ量は,両端部の膨らみ量よりも小さく設定されている。
【0060】
したがって,ロール紙カバー21が回動すると,レール部210dの外周部は,ピン20aに圧接した状態で摺動する。これにより,レール部210dとピン20aとの間には,回動を抑制する摩擦抵抗(摺動抵抗)が発生し,この摩擦抵抗は,ロール紙カバー21の回動速度を低下させ,あるいは,回動を停止させるように作用する。
【0061】
その結果,ロール紙カバー21が重力により自然回動して,操作者に衝突し,あるいは,給紙部2の本体(または印刷部3)との間で手を挟むことによる操作者の怪我を防止できる。また,ロール紙カバー21が給紙部2の本体(または印刷部3)に衝突して破損する事態も防止できる。特に,大型プリンタでは,ロール紙カバー21も大きくなり,それに伴い重くなるので,このような怪我および破損を防止することはより重要となってくる。
【0062】
また,レール部210dがピン20aを押圧するように構成されていることから,ピン20aは,閉状態終端位置および開状態終端位置において,凹陥部210aおよび210bにそれぞれ嵌まり込むようになっている。これにより,ロール紙カバー21は,閉状態終端位置および開状態終端位置において,ピン20aにより係止され,重力によって自然に回動しないようになる。その結果,前記と同様に,自然回動による操作者の怪我およびロール紙カバー21の破損を防止することができる。また,ロール紙カバー21は閉じた状態および開いた状態を維持するので,閉じた状態におけるロール紙の給紙(特に,前端部21aを利用した単票紙の給紙)を安定して行うことができるとともに,開いた状態におけるロール紙のセットまたは取り出しを落ち着いて確実に行うことができる。
【0063】
さらに,円弧状押圧部210をレール部210dにより構成したので,温度変化により円弧状押圧部210が変形した場合でも,この変形を,レール部210dの撓みにより吸収することができる。また,温度変化により摺動摩擦力は多少変化するものの,この摺動摩擦力を温度変化にかかわらず安定して発生させることができる。
【0064】
なお,凹陥部210aおよび210bによるピン20aの係止は,前述したように,ロール紙カバー21を閉じた状態および開いた状態に維持するとともに,操作者があまり大きな力を加えなくても解除できるように構成されていることが好ましい。
【0065】
前端部21aの内面と給紙部3の紙案内部33の上面とは,離間して配置されている。両者間の距離L1(前端部21aの内面と紙案内部33の上面との間の垂直距離)は,ロール紙5が紙送りローラ36によって給紙部3(紙案内部33およびキャリッジ34に搭載された印字ヘッド35)に向けて給送される時に,ロール紙5が前端部21aに接触せず,かつ,一旦給送されたロール紙5が紙送りローラ36によって給紙部2に戻される時(たとえば頭出し操作時)は,戻されたロール紙5が前端部21aに接触して,その後方に形成された曲面部21bに案内される距離に設定されている。
【0066】
これにより,ロール紙5の給送時には,ロール紙5がロール紙カバー21に接触することにより生じる搬送抵抗の増加を防止でき,ひいては搬送抵抗の増加に伴う印字品質の劣化を防止できる。
【0067】
一方,ロール紙5を給紙部2に戻す時は,戻されたロール紙5が前端部21aからその後方にある曲面部21bに案内され,さらに曲面部21bの曲面形状によって後方側に案内され,後方側で下方に垂れ下がった「たるみ」5bとして形成される。これにより,戻されたロール紙5が前端部21a付近で滞留することを防止でき,滞留による「撓み」の発生を防止できる。その結果,ロール紙に好ましくない曲がり癖,折れ曲がり,皺等が生じることを防止できる。
【0068】
さらに,ロール紙カバー21の後方側には,前述したように。切欠部(開口部)21dが形成されており,この切欠部21dは,「たるみ」5bを外部に逃がすように作用する。これにより,「たるみ」5bの形成が助勢され,前端部21aから曲面部21bを介して後方側へのロール紙5の案内をより一層スムーズに行うことができ,「撓み」の発生をより一層効果的に防止できる。
【0069】
なお,このような距離L1として,たとえば2[mm]から7[mm]の間の距離が好ましい。
【0070】
前端部21aの先端と紙案内部33の上端との間には,前述した間隙25が形成され,操作者がロール紙カバー21を開閉する際に手を指し入れることができるようになっている。
【0071】
この間隙25の縦方向(給送方向)の長さL2は,操作者が,ロール紙カバー21を開閉する時に手を指し入れることができるとともに,閉じる時に誤って手を挟まないようにする一方で,ロール紙5を給紙部2に戻す時に,ロール紙5が,前述したように,前端部21aから曲面部21bに撓むことなく案内される長さに設定されている。このような長さL2としては,15[mm]から40[mm]の間の長さ,より望ましくは20[mm]から25[mm]の間の長さが好ましい。
【0072】
前端部21aは,単票紙をその上面に置き,印刷部3に案内するガイド面としても利用される。このため,前端部21aの延長線上にある印刷部3の上面には,単票紙を紙案内部33に給送するための間隙(開口部)37が形成され,前端部21aの上面に置かれた単票紙は,この間隙37から紙案内部33および紙送りローラ36に向けて給送される。
【0073】
この給送の時,前端部21aの内面(裏面)は紙案内部33から距離L1だけ離間して配置されているので,前端部21aの上面(表面)と紙案内部33との間では,単票紙が凹状に反った状態で置かれることとなる。これにより,単票紙の先端部(下端部)が紙案内部33に接触しやすくなり,単票紙の給送を確実に行うことができる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によると,ロール紙カバーの内面が,ロール紙が紙案内部の上面に沿って給送される時は,給送されるロール紙に接触しない距離に配置されている。したがって,ロール紙カバーによるロール紙の搬送妨害は生じない。これにより,給紙部からの給送がスムーズに行われ,搬送妨害により生じる印字品質の劣化を防止できる。
【0075】
一方,ロール紙カバーの前端部の内面が,紙案内部の上面とほぼ平行な平面に形成され,かつ,該内面と紙案内部の上面との間の垂直距離が,前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,該内面が戻されたロール紙に接触して,該戻されたロール紙を該ロール紙カバーの後方側に案内する距離とされる。したがって,戻されたロール紙は,ロール紙カバーの前端部に接触案内されて,前端部に続く後方側に案内される。そして,ロール紙カバーの前端部から後端部に向けて続く部分の内面が,ロール紙の円筒形状に沿った曲面を備えているので,前端部から接触案内されたロール紙は,この曲面に沿って,ロール紙カバーの後端部側に移動し,後端部側で重力により下方に垂れ下がった「たるみ」として形成される。
【0076】
これにより,前端部で生じ得る「撓み」の発生を防止することができ,撓みの発生による印字品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大型プリンタの全体構成を示す斜視図である。
【図2】ロール紙カバーが開いた状態の給紙部の正面図である。
【図3】ロール紙カバーが開いた状態の大型プリンタの平面図である。
【図4】ロール紙カバーが閉じた状態における右側のカバー側壁および右側のロール紙ホルダの左側面図(一部断面図)である。
【図5】ロール紙カバーが開閉途中にある状態における右側のカバー側壁および右側のロール紙ホルダの左側面図(一部断面図)である。
【図6】ロール紙カバーが開いた状態における右側のカバー側壁および右側のロール紙ホルダの左側面図(一部断面図)である。
【図7】ロール紙ホルダの平面図である。
【図8】ロール紙軸およびこのロール紙軸に装着されるロール紙を示す斜視図である。
【図9】ロール紙ホルダにセットされたロール紙軸の操作説明図である。
【図10】給紙部と印刷部の一部とを示す左側断面図である。
【符号の説明】
1 大型プリンタ
2 給紙部
3 印刷部
21 ロール紙カバー
21a 前端部
21b 曲面部
21d 切欠部(開口部)
33 紙案内部
25 間隙
Claims (4)
- 大型プリンタの給紙部にセットされ,その上部から前部を経て下方に繰り出されて該給紙部の前面側下部に設けられた紙案内部の上面に沿って給送されるロール紙を覆うために,該給紙部に取り付けられたロール紙カバーであって,
該ロール紙カバーの内面が,前記ロール紙が前記紙案内部の上面に沿って給送される時は,給送されるロール紙に接触しない距離に配置され,
該ロール紙カバーの前端部の内面が,前記紙案内部の上面とほぼ平行な平面に形成され,
該ロール紙カバーの前記前端部から後端部に向けて続く部分の内面が,ロール紙の円筒形状に沿った曲面を備え,
該ロール紙カバーの後端部が,該後端部でたるんでいるロール紙を外部に逃がす開口部を備えており,
前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,戻されたロール紙は,該ロール紙カバーの前端部に接触案内されて,前端部に続く後方側に案内され,該ロール紙カバーの前端部から後端部に向けて続く部分の内面の曲面に沿って後端部側に移動し,重力により下方に垂れ下がったたるみを形成するように構成されていることを特徴とする大型プリンタのロール紙カバー。 - 請求項1において,前記ロール紙カバーの前端部が,前記紙案内部の上端部との間に,ロール紙の給送方向に沿った間隙を形成するように構成され,
該間隙の給送方向に沿った距離が,前記ロール紙が給紙部側に戻される時に,前記前端部の内面により,戻されたロール紙が該ロール紙カバーの後方側に案内され,かつ,操作者が前記前端部と前記紙案内部の上端部との間に手を挟まれない距離である,ことを特徴とする大型プリンタのロール紙カバー。 - 請求項1または2において,前記ロール紙カバーの前端部が,単票紙を下方から支持して前記紙案内部に案内する案内板として兼用されるものである,ことを特徴とする大型プリンタのロール紙カバー。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の大型プリンタのロール紙カバーを備えていることを特徴とする大型プリンタ。
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