JP3866378B2 - 圧縮着火エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の運転領域において点火プラグの放電による火花点火によらず自己着火を行う圧縮着火エンジンの制御装置に関し、詳しくは、点火プラグによる強制点火から自己着火へ適切に移行させることが可能な圧縮着火エンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、リーン空燃比での運転を実施し、ポンピングロスの低減や理論熱効率の向上により燃費を向上するリーンバーンエンジンが採用されている。しかし、大幅な燃費向上を目的として空燃比を更にリーン化して極希薄燃焼による運転を行うと、着火ミス(失火)や燃焼の遅延によって熱効率の悪化が生じる。
【0003】
これに対処するに、エンジンの高圧縮比化または吸気加熱等により燃焼室内での混合気の温度を上昇させ、所定の運転領域において、点火プラグの放電による火花点火すなわち強制点火によらず、圧縮行程終期ないし上死点付近で自己点火いわゆる自己着火を行わせる圧縮着火エンジンが提案されている(社団法人 自動車技術会/学術講演会前刷集951/第309〜312頁 「80 ガソリン予混合圧縮点火エンジンの研究」(9534702)/1995年5月発行、或いは、特開昭62−157220号公報等)。
【0004】
ここで、上記特開昭62−157220号公報には、エンジン始動時、エンジン暖機未完了時、エンジン高負荷時には、自己着火を行うことができないため、このときには、点火プラグの点火による強制点火を行い、これ以外の時に、自己着火を行わせることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行例においては、単に、エンジン始動、エンジン暖機状態、及びエンジン負荷を判断しているに過ぎず、エンジンの燃焼状態を判断していないため、自己着火が不能な状態、或いは自己着火において適正な着火時期を得ることができない状態下においても、点火プラグの点火による強制点火から自己着火へ切換わる不都合がある。
【0006】
その結果、エンジンの着火ミス(失火)を生じたり、自己着火において適正な着火時期を得ることができず、異常燃焼が発生し、エンジンに悪影響を及ぼしたり、燃費や排気エミッションが悪化する等の不都合が発生する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、自己着火が可能で且つ自己着火による着火時期を適正に得られる状態となったときに、点火プラグによる強制点火から自己着火へ移行させることが可能な圧縮着火エンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、所定運転領域の下で、点火プラグの放電による火花点火によらず圧縮行程終期ないし上死点付近で自己着火を行う圧縮着火エンジンの制御装置において、図1の基本構成図に示すように、点火プラグの点火により強制点火を行う点火時期をエンジン運転状態に基づいて設定する点火時期設定手段と、燃焼室内の混合気が着火し燃焼ガスのイオンの存在により該イオンを介して流れるイオン電流に基づいて着火時期を検出する着火時期検出手段と、上記点火時期と着火時期との差を所定値と比較し、差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断する圧縮着火制御移行条件判別手段と、圧縮着火制御への移行条件成立時、点火プラグの点火による強制点火を中止して自己着火に移行させる圧縮着火制御移行手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記圧縮着火制御移行手段は、圧縮着火制御への移行条件の成立時、点火プラグの点火による強制点火を中止して自己着火に移行させ、混合気の空燃比をリーン化することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1或いは請求項2記載の発明において、上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、更に、エンジン回転数及びエンジン負荷を判断し、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、更に、エンジン温度を判断し、エンジン温度が所定値以上のエンジン暖機完了状態であり、且つ、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4記載の発明において、上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、上記圧縮着火制御への移行条件成立の継続時間が所定期間に達したとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1記載の発明では、点火プラグの点火により強制点火を行う点火時期をエンジン運転状態に基づいて設定すると共に、燃焼室内の混合気に着火し燃焼ガスのイオンの存在により該イオンを介して流れるイオン電流に基づいて着火時期を検出する。そして、上記点火時期と着火時期との差を所定値と比較し、差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、点火プラグによる強制点火を中止して自己着火に移行させる。ここで、エンジン温度の上昇に伴い燃焼変動が減少して燃焼が安定化すると共に燃焼速度が早くなり、点火プラグによる点火後、着火が検出されるまでの時間が短縮する。従って、点火プラグによる強制点火から自己着火への移行条件として、点火時期と着火時期との差を求めて所定値と比較することで、エンジン燃焼状態を判断することが可能となり、自己着火への移行条件を適切に判断して、適正時期で自己着火が可能な状態下において、的確に自己着火に移行させることが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件の成立時、自己着火へ移行するに際して、混合気空燃比をリーン化することで、熱効率の向上と、CO、NOx等の有害排気ガス成分を低く抑えることが可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際して、更に、エンジン回転数及びエンジン負荷を判断する。そして、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件の成立と判断し、自己着火に移行させる。
【0016】
また、請求項4記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際し、更に、エンジン温度を判断する。そして、エンジン温度が所定値以上のエンジン暖機完了状態であり、且つ、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件の成立と判断し、自己着火に移行させる。
【0017】
更に、請求項5記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際して、上記圧縮着火制御への移行条件成立の継続時間が所定期間に達したとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、自己着火に移行させる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2〜図21は本発明の実施の第1形態を示す。
【0019】
先ず、図17に基づいて圧縮着火エンジンの概略構成について説明する。符号1は圧縮着火エンジンの一例としての自動車等の車輌用の圧縮着火エンジンであり、図においては水平対向型4サイクル4気筒ガソリンエンジンを示す。尚、本実施の形態においては、圧縮着火エンジン1は、リーンバーンエンジンをベースとするものであるが、理論空燃比(ストイキオ)での運転を基本とする通常のエンジンをベースとしてもよい。
【0020】
本実施の形態においては、この圧縮着火エンジン(以下、単に「エンジン」と略記する)1は、吸気加熱手段の一例として後述する排気ガス還流装置25を採用し、排気ガス還流による吸気加熱と高圧縮比(例えば、本実施の形態においては、圧縮比=11〜12)とにより燃焼室内での混合気の温度を上昇させ、所定の運転領域において、点火プラグの放電による火花点火すなわち強制点火によらず、圧縮行程終期ないし圧縮上死点付近で自己点火いわゆる自己着火を行う。
【0021】
このエンジン1のシリンダブロック1aの左右両バンクには、シリンダヘッド2がそれぞれ設けられ、各シリンダヘッド2に吸気ポート2aと排気ポート2bが形成されている。
【0022】
このエンジン1の吸気系は、各吸気ポート2aにインテークマニホルド3が連通され、このインテークマニホルド3に各気筒の吸気通路が集合するエアチャンバ4を介してスロットルチャンバ5が連通され、更に、このスロットルチャンバ5の上流側に吸気管6を介してエアクリーナ7が取り付けられ、このエアクリーナ7がエアインテークチャンバ8に連通されている。
【0023】
また、上記スロットルチャンバ5には、アクセルペダルに連動するスロットル弁5aが設けられている。上記吸気管6には、スロットル弁5aをバイパスするバイパス通路9が接続され、このバイパス通路9に、アイドル時にその弁開度によって該バイパス通路9を流れるバイパス空気量を調整することでアイドル回転数を制御するアイドル回転数制御弁(ISC弁)10が介装されている。
【0024】
さらに、上記インテークマニホルド3の各気筒の吸気ポート2aの直上流にインジェクタ11が配設されている。上記インジェクタ11は燃料供給路12を介して燃料タンク13に連通されており、この燃料タンク13にはインタンク式の燃料ポンプ14が設けられている。この燃料ポンプ14からの燃料は、上記燃料供給路12に介装された燃料フィルタ15を経て上記インジェクタ11及びプレッシャレギュレータ16に圧送され、このプレッシャレギュレータ16から上記燃料タンク13にリターンされて上記インジェクタ11への燃料圧力が所定の圧力に調圧される。
【0025】
一方、上記シリンダヘッド2の各気筒毎に、先端の放電電極18aを燃焼室17に露呈する点火プラグ18が取り付けられ、この点火プラグ18に、各気筒毎に配設された点火コイル19を介してイグナイタ20が接続されている。
【0026】
また、エンジン1の排気系としては、上記シリンダヘッド2の各排気ポート2bに連通するエキゾーストマニホルド21の集合部に排気管22が連通され、この排気管22に触媒コンバータ23が介装されてマフラ24に連通されている。
【0027】
一方、エンジン1には、排気ガス還流(以下、「EGR」と略称する)を行うためのEGR装置25が設けられている。このEGR装置25は、シリンダヘッド2の少なくとも1つの上記排気ポート2bからスロットル弁5a下流のエアチャンバ4に排気ガスを還流させるEGR通路26が接続され、このEGR通路26に、排気ガス還流量調整弁の一例として、内蔵したステッピングモータによって駆動されるステッピングモータ駆動式のEGR弁27が介装されている。このEGR弁27の制御量は、後述する電子制御装置50(図21参照)によって演算される。そして、この制御量に対応して該電子制御装置50から出力される駆動信号に応じてステッピングモータが作動し、ステッピングモータの作動によってEGR弁27の弁開度が調整される。
【0028】
尚、本実施の形態においては、上記制御量が00Hのとき、EGR弁27が全閉となり排気ガスの還流、すなわちEGRが停止され、制御量がFFHのとき、EGR弁27は全開となる。そして、制御量が00H〜FFHの間で設定され、この制御量に対応した駆動信号に応じてEGR弁27の弁開度が調整されて、EGR量すなわちEGR率が制御される。
【0029】
次に、エンジン運転状態を検出するためのセンサ類について説明する。
【0030】
符号30は、絶対圧センサであり、吸気管圧力/大気圧切換ソレノイド弁31の切換えに応じて上記エアチャンバ4と大気とに選択的に連通し、スロットル弁5a下流の実吸気管圧力としてエアチャンバ4内の吸気圧と、大気圧とを絶対圧で検出する。また、上記吸気管6の上記エアクリーナ7の直下流に、ホットワイヤ或いはホットフィルム等を用いた熱式の吸入空気量センサ32が介装され、更に、上記スロットルチャンバ5に設けられたスロットル弁5aに、スロットル開度センサ33aとスロットル弁5aの全閉でONするアイドルスイッチ33bとを内蔵したスロットルセンサ33が連設されている。
【0031】
また、エンジン1のシリンダブロック1aにノックセンサ34が取り付けられていると共に、シリンダブロック1aの左右バンクを連通する冷却水通路35に冷却水温センサ36が臨まされている。また、上記触媒コンバータ23の上流に空燃比センサの一例として、空燃比に応じてリニアな出力特性を有するリニアO2 センサ37が配設されている。
【0032】
更に、上記EGR通路26に該EGR通路26を流れる還流排気ガス(以下、「EGRガス」と称する)の温度を検出するEGRガス温度センサ38が介装されている。
【0033】
また、エンジン1のクランクシャフト39に軸着するクランクロータ40の外周に、クランク角センサ41が対設され、更に、クランクシャフト39に対して1/2回転するカムシャフト42に連設するカムロータ43に、気筒判別用のカム角センサ44が対設されている。
【0034】
上記クランクロータ40は、図18に示すように、その外周に突起40a,40b,40cが形成され、これらの各突起40a,40b,40cが、各気筒(#1,#2気筒と#3,#4気筒)の圧縮上死点前(BTDC)θ1,θ2,θ3の位置に形成されている。本実施の形態においては、θ1=97°CA,θ2=65°CA,θ3=10°CAである。
【0035】
また、図19に示すように、上記カムロータ43の外周には、気筒判別用の突起43a,43b,43cが形成され、突起43aが#3,#4気筒の圧縮上死点後(ATDC)θ4の位置に形成され、突起43bが3個の突起で構成されて最初の突起が#1気筒のATDCθ5の位置に形成されている。更に、突起43cが2個の突起で構成され、最初の突起が#2気筒のATDCθ6の位置に形成されている。本実施の形態においては、θ4=20°CA,θ5=5°CA,θ6=20°CAである。
【0036】
そして、図13のタイムチャートに示すように、エンジン運転に伴いクランクシャフト39及びカムシャフト42の回転により上記クランクロータ40及びカムロータ43が回転して、クランクロータ40の各突起が上記クランク角センサ41によって検出され、クランク角センサ41からθ1,θ2,θ3(BTDC97°,65°,10°)の各クランクパルスがエンジン1/2回転(180°CA)毎に出力される。一方、θ3クランクパルスとθ1クランクパルスとの間で上記カムロータ43の各突起が上記カム角センサ44によって検出され、カム角センサ44から所定数のカムパルスが出力される。
【0037】
そして、後述の電子制御装置50(図21参照)において、上記クランク角センサ41から出力されるクランクパルスの入力間隔時間Tθに基づいてエンジン回転数NEを算出し、また、各気筒の燃焼行程順(例えば、#1気筒→#3気筒→#2気筒→#4気筒)と、上記カム角センサ44からのカムパルスをカウンタによって計数した値とのパターンに基づいて、燃料噴射対象気筒や点火対象気筒等の気筒判別を行う。
【0038】
また、図17において符号45は、燃焼室17内の混合気に着火して、その火炎により点火プラグ18の放電電極18a間の放電間隙に燃焼ガスのイオンが存在するとき、このイオンを介して流れるイオン電流を検出するイオン電流検出回路である。本実施の形態においては、特定気筒(例えば、#1気筒)にのみ対応してイオン電流検出回路45が配設されるが、全気筒に対してそれぞれイオン電流検出回路を配設するようにしてもよい。
【0039】
このイオン電流検出回路45は、図20に示すように、高圧電源46により高電圧(例えば、500V)のイオン電流電源が与えられ、この高圧電源46と、点火コイル19の2次側及び点火プラグ18の放電電極18aの接続間との間に、イオン電流検出用抵抗R及び逆流防止用のダイオードDを直列接続し、更に上記イオン電流検出用抵抗Rに電圧センサ45aを並列接続して構成される。尚、図17において、符号60は電源リレーであり、イグニッションスイッチ(同図においてはIGで示す)のONによってONし、電子制御装置50及び点火コイル19等に電源が与えられる。
【0040】
ここで、高圧電源46によりイオン電流検出回路45を介して点火プラグ18に直流電圧を印加すると、正常着火してその火炎により点火プラグ18の放電電極18a間に燃焼ガスのイオンが存在するとき、このイオンを介してイオン電流が流れる。従って、イオン電流が流れると、上記イオン電流検出回路45のイオン電流検出用抵抗Rの両端子間に電位差が生じ、この電位差を電圧センサ45aで検出することで、イオン電流を検出することができる。
【0041】
尚、このイオン電流検出回路については、特開平6−241108号公報等により周知である。
【0042】
図14に、上記イオン電流検出回路45の電圧センサ45aの出力電圧、すなわちイオン電流検出回路45により検出されるイオン電流のタイムチャートを示す。電子制御装置50からイグナイタ20を介してパルス波形の点火信号が出力されると(図13参照)、点火コイル19の一次側に一次電流が流れる。そして、点火信号の立下がりにより一次電流が遮断し(ドエルカット)、点火コイルの2次側に高圧の二次電圧が誘起され、点火プラグ18の放電電極18a間が絶縁破壊されて火花放電(スパーク)が行われる。そして、この点火火花によるイオン電流が流れる。
【0043】
尚、点火プラグ18の放電による火花点火すなわち強制点火によらず、圧縮行程終期ないし上死点付近で自己点火いわゆる自己着火を行う圧縮着火制御時には、点火信号が出力されず(図13参照)、このときには、点火火花によるイオン電流は発生しない。
【0044】
そして、火花点火或いは自己点火によって、燃焼室17内の混合気に着火して、その火炎により点火プラグ18の放電電極18a間に燃焼ガスのイオンが存在するとき、このイオンを介してイオン電流が流れる。
【0045】
従って、このイオン電流をイオン電流検出回路45により検出し、イオン電流検出回路45の電圧センサ45aの出力電圧を電子制御装置50に入力し、この電圧値を電子制御装置50においてモニタすることで、着火時期を判断することが可能である。
【0046】
次に、電子制御系の回路構成について説明する。
【0047】
上記EGR弁27、インジェクタ11、点火プラグ18、ISC弁10等のアクチュエータ類に対する制御量の演算、この制御量に対応する駆動信号の出力、すなわち吸気温度制御を含むEGR制御、燃料噴射制御、点火制御、アイドル回転数制御等のエンジン制御は、図21に示す電子制御装置(ECU)50によって行われる。
【0048】
上記ECU50は、CPU51、ROM52、RAM53、バックアップRAM54、カウンタ・タイマ群55、及びI/Oインターフェイス56がバスラインを介して互いに接続されるマイクロコンピュータを中心として構成され、各部に安定化電源を供給する定電圧回路57、上記I/Oインターフェイス56に接続される駆動回路58及びA/D変換器59等の周辺回路が内蔵されている。
【0049】
尚、上記カウンタ・タイマ群55は、フリーランカウンタ、カム角センサ信号(カムパルス)の入力計数用カウンタ等の各種カウンタ、燃料噴射用タイマ、点火用タイマ、定期割り込みを発生させるための定期割り込み用タイマ、クランク角センサ信号(クランクパルス)の入力間隔計時用タイマ、エンジン始動後の経過時間を計時する始動後時間計時用タイマ、着火時期を計時するための着火時期計時用タイマ、及びシステム異常監視用のウオッチドッグタイマ等の各種タイマを便宜上総称するものであり、その他、各種のソフトウエアカウンタ・タイマが用いられる。
【0050】
上記定電圧回路57は、2回路のリレー接点を有する電源リレー60の第1のリレー接点を介してバッテリ61に接続され、バッテリ61に、上記電源リレー60のリレーコイルがイグニッションスイッチ62を介して接続されている。また、上記定電圧回路57は、直接、上記バッテリ61に接続されており、イグニッションスイッチ62がONされて電源リレー60の接点が閉となるとECU50内の各部へ電源を供給する一方、上記イグニッションスイッチ62のON,OFFに拘らず、常時、上記バックアップRAM54にバックアップ用の電源を供給する。更に、上記バッテリ61には、燃料ポンプリレー63のリレー接点を介して燃料ポンプ14が接続されている。尚、上記電源リレー60の第2のリレー接点には、上記バッテリ51から上記点火コイル19を含む各アクチュエータに電源を供給するための電源線が接続されている。
【0051】
上記I/Oインターフェイス56の入力ポートには、アイドルスイッチ33b、ノックセンサ34、クランク角センサ41、カム角センサ44、車速を検出するための車速センサ47、及び始動状態を検出するためにスタータスイッチ48が接続されており、更に、上記A/D変換器59を介して、絶対圧センサ30、吸入空気量センサ32、スロットル開度センサ33a、冷却水温センサ36、O2センサ37、EGRガス温度センサ38、及び電圧センサ45aが接続されると共に、バッテリ電圧VBが入力されてモニタされる。
【0052】
一方、上記I/Oインターフェイス56の出力ポートには、上記燃料ポンプリレー63のリレーコイル、ISC弁10、インジェクタ11、EGR弁27、及び吸気管圧力/大気圧切換ソレノイド弁31が上記駆動回路58を介して接続されると共に、イグナイタ20が接続されている。
【0053】
上記CPU51では、ROM52に記憶されている制御プログラムに従って、I/Oインターフェイス56を介して入力されるセンサ・スイッチ類からの検出信号、及びバッテリ電圧等を処理し、RAM53に格納される各種データ、及びバックアップRAM54に格納されている各種学習値データ,ROM52に記憶されている固定データ等に基づき、EGR弁27に対する制御量、燃料噴射量、点火時期、ISC弁10に対する駆動信号のデューティ比等を演算し、吸気温度制御を含むEGR制御、燃料噴射制御、点火制御、アイドル回転数制御等のエンジン制御を行う。
【0054】
このようなエンジン制御系において、ECU50では、点火プラグ18の点火により強制点火を行う点火時期TADVをエンジン運転状態に基づいて設定すると共に、燃焼室17内の混合気に着火し燃焼ガスのイオンの存在により該イオンを介して流れるイオン電流に基づいて着火時期τAを検出する。そして、上記点火時期TADVと着火時期τAとの差を所定値と比較し、差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、点火プラグ18の点火による強制点火を中止して自己着火に移行させる。ここで、エンジン温度の上昇に伴い燃焼変動が減少して燃焼が安定化すると共に燃焼速度が早くなり、点火プラグ18による点火後、着火が検出されるまでの時間が短縮する。従って、点火プラグ18の点火による強制点火から自己着火への移行条件として、点火時期TADVと着火時期τAとの差を求めて所定値と比較することで、エンジン燃焼状態を判断することが可能となり、自己着火への移行条件を適切に判断して、適正時期で自己着火が可能な状態下において、的確に自己着火に移行させることが可能となる。
【0055】
更に、本実施の形態では、圧縮着火制御への移行条件の成立時、自己着火へ移行するに際し、混合気空燃比をリーン化することで、熱効率の向上と、CO、NOx等の有害な排気ガス成分を低く抑えることが可能となる。
【0056】
また、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際し、更に、エンジン回転数NE及びエンジン負荷を判断すると共に、エンジン温度を判断する。そして、エンジン温度が所定値以上のエンジン暖機完了状態であり、且つ、エンジン回転数NE及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期TADVと着火時期τAとの差が所定値以下となったとき、この状態の継続時間を計時する。そして、この圧縮着火制御への移行条件成立の継続時間が所定期間に達したとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、自己着火に移行させる。
【0057】
すなわち、ECU50は、本発明に係る点火時期設定手段、着火時期検出手段、圧縮着火制御移行条件判別手段、圧縮着火制御移行手段としての機能を実現する。
【0058】
以下、上記ECU50によって実行される本発明に係る制御処理について、図2〜図12に示すフローチャートに従って説明する。
【0059】
先ず、イグニッションスイッチ62がONされ、ECU50に電源が投入されると、システムがイニシャライズされ、バックアップRAM54に格納されている各種学習値等のデータを除く、各フラグ、各カウンタ類、及び各タイマが初期化される。そして、スタータスイッチ48がONされてエンジンが起動すると、クランク角センサ41からのクランクパルス入力毎に、図2に示す気筒判別/エンジン回転数算出ルーチンが実行される。
【0060】
この気筒判別/エンジン回転数算出ルーチンでは、エンジン運転に伴いクランクロータ40が回転してクランク角センサ41からのクランクパルスが入力されると、先ず、ステップS1で、今回入力されたクランクパルスがθ1,θ2,θ3の何れのクランク角に対応する信号かをカム角センサ44からのカムパルスの入力パターンに基づいて識別し、ステップS2で、クランクパルスとカムパルスとの入力パターンから現在の圧縮行程気筒すなわち点火対象気筒、着火対象気筒や、燃料噴射対象気筒等の気筒判別を行う。
【0061】
すなわち、図13のタイムチャートに示すように、例えば、前回クランクパルスが入力してから今回クランクパルスが入力されるまでの間にカムパルス入力が有れば、今回のクランクパルスはθ1クランクパルスであると識別でき、更に次回入力されるクランクパルスはθ2クランクパルスと識別できる。
【0062】
また、前回と今回とのクランクパルス入力間にカムパルス入力が無く、前々回と前回のクランクパルス入力間にカムパルス入力が有ったときには、今回のクランクパルスはθ2クランクパルスと識別でき、次回入力されるクランクパルスはθ3クランクパルスと識別できる。また、前回と今回との間、及び前々回と前回とのクランクパルス入力間に、何れもカムパルス入力が無いときには、今回入力されたクランクパルスはθ3クランクパルスと識別でき、次回入力されるクランクパルスはθ1クランクパルスと識別できる。
【0063】
さらに、前回と今回とのクランクパルス入力間にカムパルスが3個入力(突起43bに対応するθ5カムパルス)したときには、次の圧縮上死点は#3気筒であり、現在の圧縮行程気筒(点火対象気筒、着火対象気筒)は#3気筒、次回の燃料噴射対象気筒は、その2つ後の#4気筒と判別することができる。また、前回と今回のクランクパルス入力間にカムパルスが2個入力(突起43cに対応するθ6カムパルス)したときには、次の圧縮上死点は#4気筒であり、現在の圧縮行程気筒,点火対象気筒,着火対象気筒は#4気筒、燃料噴射対象気筒は#3気筒と判別できる。
【0064】
また、前回と今回とのクランクパルス入力間にカムパルスが1個入力(突起43aに対応するθ4カムパルス)し、前の圧縮上死点判別が#4気筒であったときには、次の圧縮上死点は#1気筒であり、現在の圧縮行程気筒,点火対象気筒,着火対象気筒は#1気筒、燃料噴射対象気筒は#2気筒と判別できる。同様に、前回と今回とのクランクパルス入力間にカムパルスが1個入力し、前の圧縮上死点判別が#3気筒であったときには、次の圧縮上死点は#2気筒であり、現在の圧縮行程気筒,点火対象気筒,着火対象気筒は#2気筒、燃料噴射対象気筒は#1気筒と判別できる。
【0065】
本実施の形態の4サイクル4気筒エンジン1では、燃焼行程が#1→#3→#2→#4の気筒順であり、図13のタイムチャートに示すように、カムパルス出力時の今回(現在)の圧縮行程気筒#nを#1気筒とすると、点火対象気筒,着火対象気筒は同様に#n=#1気筒、このときの燃料噴射対象気筒はその2つ後の#n-2=#2気筒となる。
【0066】
そして、強制点火制御すなわち点火プラグ18による火花点火が選択されているときには、後述の図6の点火制御ルーチンにおいて上記点火対象気筒#nの判別結果に応じて該当気筒#nに対する点火時期が設定されて、気筒毎に点火時期制御が行われ、また、圧縮着火制御による自己着火の選択時には点火時期の設定を中止して点火プラグ18による火花点火を中止する。また、後述の図7のθ2クランクパルス割り込みルーチンにおいて、上記着火対象気筒#nの判別結果に応じて、イオン電流検出対象気筒すなわち着火時期検出対象気筒か否かが判断される。更に、燃料噴射対象気筒#n-2の判別結果が、所定周期毎に実行される図5の燃料噴射量設定ルーチンにおいて参照されて、気筒毎に燃料噴射量が設定される。
【0067】
その後、ステップS2からステップS3へ進み、前記クランクパルス入力間隔計時用タイマによって計時された前回のクランクパルス入力から今回のクランクパルス入力までの時間、すなわちクランクパルス入力間隔時間(θ1クランクパルスとθ2クランクパルスの入力間隔時間Tθ12、θ2クランクパルスとθ3クランクパルスの入力間隔時間Tθ23、或いはθ3クランクパルスとθ1クランクパルスの入力間隔時間Tθ31)を読み出し、クランクパルス入力間隔時間Tθを検出する。
【0068】
次いで、ステップS4へ進み、今回識別したクランクパルスに対応するクランクパルス間角度を読み出し、このクランクパルス間角度と上記クランクパルス入力間隔時間Tθとに基づいて現在のエンジン回転数NEを算出し、RAM53の所定アドレスにストアしてルーチンを抜ける。尚、上記クランクパルス間角度は既知であり、予めROM52に固定データとして記憶されているものであり、本実施の形態においては、θ1クランクパルスとθ2クランクパルス間の角度は32°CAであり、θ2クランクパルスとθ3クランクパルス間の角度は55°CA、θ3クランクパルスとθ1クランクパルス間の角度は93°CAである。また、エンジン始動時を考慮し、エンジン回転数NEは、例えば、150rpm以上で算出される。
【0069】
そして、所定時間(例えば、10msec)毎に実行される図3に示す圧縮着火制御条件判別ルーチンにおいて、上記エンジン回転数NE等の各データが読み出され、点火プラグ18の火花点火による強制点火から自己着火を行わせるための圧縮着火制御へ切換える際の条件を判断する。
【0070】
次に、図3の圧縮着火制御条件判別ルーチンについて説明する。
【0071】
この圧縮着火制御条件判別ルーチンにおいては、先ずステップS11で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、現在、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御が行われているか、或いは、既に自己着火を行わせるための圧縮着火制御が選択されているかを判断する。
【0072】
上記圧縮着火制御フラグFCOMPは、システムイニシャライズ時にクリアされ、FCOMP=0により強制点火制御が行われる。そして、本ルーチンにおいて強制点火制御から圧縮着火制御への切換条件が成立したときセットされて(FCOMP←1)、この圧縮着火制御フラグFCOMPのセットにより圧縮着火制御へ移行する。尚、FCOMP=1の圧縮着火制御への移行後は、後述する図11〜図12のEGR制御ルーチンにおいて、圧縮着火制御から強制点火制御への切換条件が判断され、この条件の成立時に圧縮着火制御フラグFCOMPがクリアされることで、強制点火制御に移行する。
【0073】
従って、FCOMP=1で、既に自己着火を行う圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS19へジャンプして、ステップS19,S20で、現在のエンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとしてRAM53の所定アドレスにストアして、そのままルーチンを抜ける。
【0074】
そして、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が選択され、点火プラグ18の放電による強制点火が行われているとき、ステップS12へ進み、ステップS12以降の処理によって圧縮着火制御への移行条件が成立しているか否かを判断する。
【0075】
ステップS12,S13では、エンジン回転数NEと吸入空気量Qの変化を判断し、エンジン定常運転状態か否かを判断する。すなわち、ステップS12で、現在のエンジン回転数NEを読み出して、このエンジン回転数NEから前回の本ルーチン実行時のエンジン回転数NEOLDを減算し、この減算値の絶対値|NE−NEOLD|を設定値NESと比較することで、エンジン回転数領域が前回と略同一領域に有るか否かを判断する。また、ステップS13では、吸入空気量センサ32による現在の吸入空気量Qを読み出して、この吸入空気量Qから前回ルーチン実行時の吸入空気量QOLDを減算して、この減算値の絶対値|Q−QOLD|を設定値QSと比較することで、吸入空気量Qによるエンジン負荷領域が前回と略同一領域に有るか否かを判断する。
【0076】
そして、|NE−NEOLD|>NES或いは|Q−QOLD|>QSで、エンジン回転数NEとエンジン負荷とによるエンジン運転領域が変化しているエンジン過渡運転状態時には、該当するステップからステップS18へジャンプして、圧縮着火制御への切換条件成立の継続時間を計時するための条件継続時間カウント値CNをクリアし(CN←0)、次回の判定に備え、続くステップS19,S20で、それぞれ上記エンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとしてRAM53の所定アドレスにストアして、ルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0077】
一方、上記ステップS12,S13において|NE−NEOLD|≦NES且つ|Q−QOLD|≦QSで、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態時には、ステップS14へ進み、エンジン温度の一例としての冷却水温センサ36によるエンジン冷却水温度TWを読み出し、この冷却水温度TWを設定値TWSと比較することで、エンジン暖機完了状態か否かを判断する。
【0078】
そして、TW<TWSでエンジン1の暖機未完了時には、上記ステップS18へジャンプして、ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、また、TW≧TWSのエンジン暖機完了状態時には、ステップS15へ進み、後述の図6の点火制御ルーチンにおいて設定される点火プラグ18による強制点火の点火時期TADV、及び後述の図10の着火時期検出ルーチンおいてイオン電流に基づき検出した着火時期τAを読み出して、着火時期τAから点火時期TADVを減算し、この減算値(τA−TADV)を設定値TSETと比較することで、適正時期で自己着火が可能か否かを判断する。
【0079】
尚、詳しくは後述するが、本実施の形態においては、上記着火時期τA及び点火時期TADVは、図14に示すように、θ2クランクパルス入力を基準とする時間値として設定される。
【0080】
ここで、エンジン温度の上昇に伴い燃焼変動が減少して燃焼状態が安定化すると共に燃焼速度が早くなり、点火プラグ18の点火による強制点火によらず且つ適正時期で自己着火が可能となる。
【0081】
従って、点火プラグ18の点火による強制点火から自己着火への移行条件として、点火時期TADVと着火時期τAとの差すなわち上記減算値(τA−TADV)を求め、上記設定値TSETによる所定値と比較することで、エンジン燃焼状態を判断することが可能となり、自己着火への移行条件を適切に判断することが可能となる。
【0082】
尚、上記設定値TSETは、エンジン温度が所定に上昇したエンジン暖機完了状態で、且つ適正時期で自己着火可能な状態下において、点火時期TADVすなわち点火プラグ18の放電により燃焼室17内の混合気に点火した後、混合気の燃焼火炎が点火プラグ18の放電電極18a間に達してイオン電流が流れるまでの期間、すなわち点火からイオン電流に基づいて着火が検出されるまでの時間を、予めシミュレーション或いは実験等により求め、この時間値を設定値TSETとし、固定データとしてROM52にメモリされているものである。
【0083】
従って、τA−TADV>TSETで、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が設定値TSETにより定まる所定時間を上回るときには、自己着火に移行させたとしても適正着火時期での自己着火が不能と判断して、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0084】
一方、上記ステップS15においてτA−TADV≦TSETで、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が上記設定値TSETによる所定値以内の時間に短縮されたとき、適正着火時期で自己着火が可能であると判断して、ステップS16へ進み、ステップS16,S17で、更に、EGRガス温度条件を判断し、EGRによる吸気温度制御が可能か否かを判断する。
【0085】
すなわち、ステップS16では、ECU50の自己データに基づいてEGR弁27に対する制御量EGRSが00H外で、現在、EGRが行われているか否かを判断し、EGRS=00HでEGR弁27が全閉のEGR停止時には、EGRガス温度を検出することができず、従って、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0086】
そして、EGRS≠00HでEGRが行われているとき、ステップS17へ進み、EGRガス温度センサ38によるEGRガス温度TEGRを読み出し、このEGRガス温度TEGRを設定値TEGRSと比較することで、EGRガスによる吸気温度制御が可能か否かを判断する。
【0087】
上記設定値TEGRSは、EGRガスの温度が所定に上昇しEGR弁27によるEGR率を制御することで、吸気温度を適切に制御することが可能なEGRガス温度を、予めシミュレーション或いは実験等により求め、この温度値を設定値TEGRSとして設定し、固定データとしてROM52にメモリされているものである。
【0088】
従って、TEGR<TEGRSで、EGRガスにより吸気温度制御を適正に行い得ないと判断されるときには、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0089】
一方、上記ステップS17で、TEGR≧TEGRSのときには、EGRガス温度TEGRが上記設定値による所定温度以上に上昇し、EGR弁27によるEGR率を制御することで吸気温度を適正に制御することが可能と判断してステップS21へ進む。
【0090】
尚、本実施の形態では、EGRガス温度TEGRを設定値TEGRSと比較することで、EGRによる吸気温度制御が可能か否かを判断しているが、簡易的には、EGRガス温度センサ38に代え、排気系に排気温度センサを配設して、上記ステップS17において、この排気温度センサにより検出される排気ガスの温度を設定値と比較することで、EGRによる吸気温度制御が可能か否かを判断するようにしてもよい。この場合は、EGR判断を行う上記ステップS16を省略することが可能となる。
【0091】
ステップS21では、上記ステップS12〜S17の全ての条件による圧縮着火制御への切換条件成立の継続時間を計時する条件継続時間カウント値CNをカウントアップし(CN←CN+1)、ステップS22で、上記条件継続時間カウント値CNを設定値CSET(例えば、数sec相当値)と比較する。
【0092】
そして、CN<CSETのときには、未だ圧縮着火制御への切換条件が非成立であると判断して、上記ステップS19へ進み、ステップS19,S20を経て、それぞれ上記エンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとしてRAM53の所定アドレスにストアして、ルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0093】
また、上記ステップS22においてCN≧CSETで、上記ステップS12〜S17による全ての条件成立の継続時間が、本ルーチンの実行周期と上記設定値CSETとにより定まる所定期間に達したとき、ステップS23へ進み、上記圧縮着火制御フラグFCOMPをセットすることで(FCOMP←1)、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を中止して、自己着火を行わせる圧縮着火制御を選択する。
【0094】
そして、ステップS24で、上記条件継続時間カウント値CNをクリアして(CN←0)、続くステップS25で、現在のEGR弁27に対する制御量EGRSに設定値UPSETを加算して新たな制御量を設定し(EGRS←EGRS+UPSET)、ルーチンを抜ける。
【0095】
すなわち、エンジン回転数とエンジン負荷とによるエンジン運転領域が変化するエンジン過渡運転状態時には、これに対応して、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が変化するため、この時間間隔に基づいて圧縮着火制御への切換条件を適正に判断することができず、誤判定を生じる。
【0096】
また、エンジン暖機未完了時には燃焼変動が生じるため、圧縮着火制御に移行しても自己着火が行われるとは限らず、また、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が所定時間を上回るときには、燃焼速度が遅く、自己着火制御に移行しても所望の時期に自己着火及び燃焼を行わせることができず、エンジン1の着火ミス(失火)を生じたり、自己着火において適正な着火時期τAを得ることができず、異常燃焼が発生し、エンジンに悪影響を及ぼしたり、燃費や排気エミッション等が悪化する。
【0097】
本実施の形態では、更に、自己着火制御時においてEGRにより吸気温度制御を行い、自己着火による着火時期τAをエンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTに収束するよう制御しているため、EGRガス温度TEGRが所定温度未満のEGRガスの低温時には、EGRガスにより吸気温度を十分に上昇させることができず、圧縮着火制御に移行して自己着火を行わせても、EGRによる吸気温度制御を行うことができないため、所望とする目標着火時期τTAGTに着火時期τAを制御することができない。
【0098】
従って、本実施の形態においては、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す吸入空気量Qとによるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、エンジン暖機完了状態で、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が上記設定値TSETによる所定値以内の時間に短縮し、適正時期で自己着火が可能であると判断され、且つ、EGRの実行下においてEGRガス温度TEGRが所定温度以上で、EGRによる吸気温度制御を適切に行うことができ、且つ、以上の全ての条件成立の継続時間が上記設定値TSETによる所定期間に達し、自己着火制御への移行条件が完全に成立したと判断されるとき、すなわち、自己着火が可能で且つ自己着火による着火時期τAを適正時期に得られる状態となったときに、圧縮着火制御フラグFCOMPをセットして、燃焼室17に供給される混合気空燃比をリーン化すると共に、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を中止し、自己着火を行わせる圧縮着火制御に移行する。
【0099】
これにより、圧縮着火制御への移行条件の誤判定を防止することが可能となり、且つ、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御から圧縮着火制御への移行を適正なタイミングで行うことができる。その結果、圧縮着火制御への移行後、直ちに、適正時期で自己着火を行うことが可能となり、エンジン1の着火ミス(失火)を生じることなく、また、自己着火における着火時期τAの不適合による異常燃焼を防止することができる。従って、異常燃焼に起因するエンジン1に対する悪影響等の弊害を防止して、エンジン1の耐久信頼性を向上することが可能となる。また、自己着火への移行時における失火や着火時期不適合による異常燃焼が防止されるので、排気エミッションの改善を図ることが可能となる。更に、圧縮着火制御への移行に際して、空燃比をリーン化するので、燃費の大幅な向上を図ることが可能となる。
【0100】
そして、上記圧縮着火制御フラグFCOMPが、図4の目標当量比算出ルーチン、図6の点火制御ルーチン、図7のθ2クランクパルス割り込みルーチン、及び図11〜図12のEGR制御ルーチンにおいて参照され、FCOMP=0の強制点火制御時には、エンジン運転状態に応じて点火時期TADVを設定し、点火プラグ18の火花点火による強制点火を行うと共にエンジン運転状態に応じて所定空燃比による燃料噴射制御を行い、また、エンジン運転状態に応じてEGR弁27に対する制御量EGRSを設定し、通常のEGR制御を行う。
【0101】
一方、FCOMP=1の圧縮着火制御時には、空燃比が強制点火制御時に対してリーン化されると共に、点火時期TADVの設定が中止されて点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止される。また、圧縮着火制御への移行時に(図16のタイムチャートにおけるt1の時点)、上述のステップS25においてEGR弁27に対する制御量EGRSが設定値UPSETによる所定量増加され、これに対応してEGR弁27の弁開度が所定量増加し、EGR量すなわちEGR率の増加によって吸気加熱量を増加させることで、吸気温度が上昇する。そして、この吸気温度の上昇により、燃焼室17内の混合気の温度が直ちに上昇され、点火プラグ18の放電による火花点火から自己着火に移行される。
【0102】
そして、圧縮着火制御への移行後は、イオン電流に基づいて検出される着火時期τAと、エンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて、EGR弁27を制御することで、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう吸気温度を制御する。
【0103】
次に、燃料噴射量を空燃比補正するための目標当量比KTAGTを算出する図4の目標当量比算出ルーチンについて説明する。
【0104】
尚、ここで当量比は、空気過剰率λの逆数1/λであり、空気過剰率λは、λ=実空燃比/理論空燃比である。従って、上記目標当量比KTAGTは、理論空燃比/目標空燃比として表される。
【0105】
そして、この目標当量比算出ルーチンにおいて、上記圧縮着火制御フラグFCOMPに応じ、圧縮着火制御への移行時に、強制点火制御時に対して燃料噴射量をより減量補正して、燃焼室17に供給される混合気の空燃比をリーン化するためのリーン減量係数KLEANが設定される。そして、このリーン減量係数KLEANが目標当量比KTAGTの演算式においてマイナス項で与えられ(図4のステップS37)、この目標当量比KTAGTが燃料噴射量設定ルーチンにおいて燃料噴射量を定める燃料噴射パルス幅Tiの演算式に組み込まれることで(図5のステップS46)、燃料噴射量が減量補正され、空燃比がリーンに制御される。
【0106】
この目標当量比算出ルーチンは、システムイニシャライズ後、所定周期毎に実行され、ステップS31で、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tp(後述の燃料噴射量設定ルーチンにおいて算出される。Tp←K×Q/NE;Kはインジェクタ特性補正定数)とに基づいてROM52に格納されているフル増量係数テーブルを参照してフル増量係数KFULLを設定する。
【0107】
上記フル増量係数KFULLは、エンジン運転状態が高回転及び高負荷との少なくとも一方の状態のときに、燃料増量補正により触媒温度の過上昇を防止して触媒を保護すると共に、エンジン出力を確保するためのものである。
【0108】
続くステップS32では、始動後増量係数KASを設定する。この始動後増量係数KASは、エンジン始動直後のエンジン回転の安定性を確保するためエンジン始動直後から所定期間燃料増量補正を行うためのもので、冷却水温度TWに基づいて初期値を設定し、ステップS32中に示すように、エンジン始動後、KAS=0になるまで漸次的に減少される。
【0109】
次いでステップS33で、冷却水温度TWに基づいてテーブル参照により水温増量係数KTWを設定する。この水温増量係数KTWは、エンジン冷態時の運転性を確保するための燃料増量率を定めるものであり、ステップS33中に示すように、冷却水温度TWが低いほど、燃料増量率を増加するために、大きい値の水温増量係数KTWがテーブルにストアされている。
【0110】
その後、ステップS34へ進み、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、現在、点火プラグ18の火花点火を行う強制点火制御が指示されているか、或いは点火プラグ18の強制点火によらず自己着火を行わせる圧縮着火制御が指示されているかを判断する。
【0111】
そして、FCOMP=0で強制点火制御が指示されているときには、ステップS35へ進み、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとエンジン回転数NEとに基づいて第1のリーン減量係数テーブルを検索し、強制点火に適合して且つエンジン運転領域に応じ適正リーン空燃比を得るための燃料減量率を定めるリーン減量係数KLEANを設定して、ステップS37へ進む。
【0112】
上記第1のリーン減量係数テーブルは、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとエンジン回転数NEとによるエンジン運転領域毎に、強制点火時において適正空燃比を得るに的確な燃料減量補正率を予めシミュレーション或いは実験等により求め、この燃料減量率に対応し当量比に対する減算値をリーン減量係数KLEANとして、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0113】
上記第1のリーン減量係数テーブルの一例をステップS35中に示す。この第1のリーン減量係数テーブルには、ステップS35中に示すように、極低負荷低回転及び高負荷領域において、リーン減量係数KLEAN=0の値がストアされており、極低負荷低回転及び高回転域を除く低負荷領域及び中負荷領域において、KLEAN>0の値(本形態においては、空燃比=22〜24に相当する値)がメモリされている。すなわち、エンジン回転の安定化を要求される極低負荷低回転域及びエンジン出力が要求される高負荷領域においては、リーン減量係数KLEANがKLEAN=0に設定され、リーン減量係数KLEANによる燃料減量補正無しの状態に設定される。また、低負荷及び中負荷領域がリーン空燃比によりリーンバーンを行うリーンバーン領域であり、この領域においてリーン減量係数KLEANがKLEAN>0に設定され、燃料減量補正が行われる。
【0114】
尚、上述のように、本実施の形態においては、上記圧縮着火エンジン1は、リーンバーンエンジンをベースとしたものであり、強制点火時においてもリーンバーンを行う。これに対し、理論空燃比(ストイキオ)での運転を基本とする通常のエンジンをベースとした圧縮着火エンジン1を採用する場合は、FCOMP=0の強制点火が指示されているときには、一律にリーン減量係数KLEANを、KLEAN=0とし、リーン減量係数KLEANによる燃料減量補正無しの状態とする。
【0115】
一方、上記ステップS34においてFCOMP=1で、自己着火を行うための圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS36へ進み、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとエンジン回転数NEとに基づいて第2のリーン減量係数テーブルを検索し、自己着火に適合し且つエンジン運転領域に応じ適正リーン空燃比を得るための燃料減量率を定めるリーン減量係数KLEANを設定して、ステップS37へ進む。
【0116】
上記第2のリーン減量係数テーブルは、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとエンジン回転数NEとによるエンジン運転領域毎に、自己着火を行う上で適正空燃比を得るに的確な燃料減量補正率を予めシミュレーション或いは実験等により求め、この燃料減量率に対応し当量比に対する減算値をリーン減量係数KLEANとして、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0117】
上記第2のリーン減量係数テーブルの一例をステップS36中に示す。この第2のリーン減量係数テーブルは、ステップS35中に示す強制点火時に適合する上記第1のリーン減量係数テーブルに対し、相対的に大きい値のリーン減量係数KLEANがストアされている。尚、本形態においては、極低負荷低回転及び高負荷域で空燃比=20〜21に相当する値のリーン減量係数KLEANがストアされ、低負荷領域及び中負荷領域において空燃比=23〜37に相当する値のリーン減量係数KLEANがストアされている。
【0118】
すなわち、点火プラグ18による強制点火を中止して自己着火を行うときには、リーン減量係数KLEANによる燃料減量率を強制点火時に対し相対的に増加させ、燃焼室17内に供給される混合気の空燃比をリーン化することで、熱効率の向上と、CO、NOx等の有害な排気ガス成分を低く抑えることが可能となる。
【0119】
そして、リーン減量係数KLEANの設定後、ステップS37へ進み、エンジン運転状態に応じて設定された各種補正項に対し上記リーン減量係数KLEANをマイナス項として与え、目標当量比KTAGTを算出する。すなわち、上記フル増量係数KFULL、始動後増量係数KAS、水温増量係数KTW、及びリーン減量係数KLEANによって、目標空燃比を得るための補正係数として空気過剰率の逆数で表される目標当量比KTAGTを、次式により算出し、ルーチンを抜ける。
【0120】
KTAGT←1+KFULL+KAS+KTW−KLEAN
そして、上記目標当量比KTAGTに応じて、図5に示す燃料噴射量設定ルーチンにおいて、エンジン1に気筒毎に供給する最終的な燃料噴射量を定める燃料噴射パルス幅Tiが設定される。
【0121】
次に、図5に示す燃料噴射量設定ルーチンについて説明する。
【0122】
この燃料噴射量設定ルーチンは、所定周期毎(例えば、所定クランクパルス入力による180°CA毎)に実行され、ステップS41で、エンジン回転数NEと吸入空気量Qとから、基本燃料噴射量を定める基本燃料噴射パルス幅Tpを算出し(Tp←K×Q/NE;Kはインジェクタ特性補正定数)、ステップS42,S43で、それぞれ上記目標当量比KTAGT,空燃比フィードバック補正係数LAMBDAを読み出す。
【0123】
尚、上記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、図示しない空燃比フィードバック補正係数設定ルーチンによって設定される。そして、前記始動後時間計時用タイマによって計時されるエンジン始動後の時間が設定時間(例えば、4sec)以上経過し、且つ、リニアO2センサ37の出力電圧VO2が設定値以上或いは所定範囲の状態が設定時間以上継続したリニアO2センサ37が活性状態であり、且つ、クランプ条件非成立のエンジン定常運転状態のとき、空燃比フィードバック条件成立と判断し、このとき、上記目標当量比KTAGTとリニアO2センサ出力電圧VO2に基づいて検出される排気当量比EXR(=理論空燃比/実空燃比;図15参照)との比較結果に応じて、周知の比例積分制御(PI制御)によって空燃比フィードバック補正係数LAMBDAが設定され、排気当量比EXRが目標当量比KTAGTに収束するよう、すなわち、空燃比が目標当量比KTAGTによる目標空燃比に収束するよう制御される。また、上記空燃比フィードバック条件の非成立時には、空燃比フィードバック補正係数LAMBDAが、LAMBDA=1.0に固定され、空燃比オープンループ制御となる。
【0124】
続くステップS44では、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいてバックアップRAM54の一連のアドレスからなる空燃比学習値テーブルを参照して空燃比学習値KLRを検索し、補間計算により空燃比学習補正係数KBLRCを設定して、ステップS45へ進む。この空燃比学習補正係数KBLRCの基となる空燃比学習値KLRは、周知のように、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとによるエンジン運転領域毎に、上記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAの所定周期における平均値の基準値に対するずれに応じて学習され、吸入空気量センサ32等の吸入空気量計測系、及びインジェクタ11等の燃料供給系の生産時のばらつきや経時劣化等を補正するためのものである。
【0125】
次いでステップS45で、バッテリ電圧VBに基づきテーブル参照によりインジェクタ11の無効噴射時間を補償する電圧補正パルス幅TSを設定する。そして、ステップS46で、上記基本燃料噴射パルス幅Tpに、上記目標当量比KTAGT及び空燃比フィードバック補正係数LAMBDAを乗算して空燃比補正すると共に、空燃比学習補正係数KBLRCを乗算して学習補正し、更に、上記電圧補正パルス幅TSを加算して電圧補正し、エンジン1に供給する最終的な燃料噴射量を定める燃料噴射パルス幅Tiを設定する(Ti←Tp×KTAGT×LAMBDA×KBLRC+TS)。
【0126】
そして、ステップS47で、上記燃料噴射パルス幅Tiを燃料噴射対象気筒の噴射タイマにセットして、ルーチンを抜ける。
【0127】
その結果、所定タイミングで上記噴射タイマがスタートされ、上記燃料噴射パルス幅Tiの駆動パルス信号が燃料噴射対象気筒のインジェクタ11に出力され、該インジェクタ11から所定に計量された燃料が噴射される。
【0128】
従って、上述のように、FCOMP=0の強制点火制御が指示されているときには、上記減量補正係数KLEANが強制点火に適合し且つエンジン運転状態に適応する空燃比を得る値に設定され、このリーン減量係数KLEANが上記目標当量比KTAGTの演算式においてマイナス項で与えられ(図4のステップS37)、更に、この目標当量比KTAGTが燃料噴射量設定ルーチンの上記ステップS46において燃料噴射量を定める燃料噴射パルス幅Tiの演算式に組み込まれることで、エンジン運転状態がリーンバーン領域にあるときには、燃料噴射量が減量補正され、リーンバーンが行われる。
【0129】
一方、FCOMP=1の圧縮着火制御が指示されているときには、強制点火制御時に対し、上記リーン減量係数KLEANが相対的に大きい値に設定されることで、燃料噴射量に対する燃料減量補正率が増加され、燃焼室17に供給される混合気の空燃比が相対的にリーン化される。
【0130】
従って、点火プラグ18の点火による強制点火から点火プラグ18の点火を中止して自己着火に移行するに際し、この燃焼室17に供給される混合気の空燃比のリーン化によって、熱効率の向上と、CO、NOx等の有害な排気ガス成分を低く抑えることが可能となる。
【0131】
また、以上の燃料噴射制御に対応して点火制御が行われ、上記圧縮着火制御フラグFCOMPに応じ、FCOMP=0の強制点火制御時には、エンジン運転状態に応じて点火時期TADVを設定して、点火プラグ18の火花点火による強制点火を行い、また、FCOMP=1の圧縮着火制御時には、点火時期TADVの設定が中止されて点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止される。
【0132】
次に、図6に示す点火制御ルーチンについて説明する。
【0133】
この点火制御ルーチンは、システムイニシャライズ後、所定周期毎に実行され、先ず、ステップS51で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、現在、点火プラグ18の火花点火を行う強制点火制御が指示されているか、或いは点火プラグ18の強制点火によらず自己着火を行わせる圧縮着火制御が指示されているかを判断する。
【0134】
そして、FCOMP=0で強制点火制御が指示されているときには、ステップS52へ進み、点火プラグ18の火花点火により強制点火を行わせるため、ステップS52以降の処理により点火時期TADVを設定する。
【0135】
尚、本実施の形態においては、時間制御方式により点火時期を制御し、図13のタイムチャートに示すように、点火コイル19に対する通電開始タイミング(ドエルセット)TDWL、及び通電遮断タイミング(ドエルカット)すなわち点火時期TADVを、θ2クランクパルス入力を基準とした時間により設定する。
【0136】
ステップS52では、エンジン運転状態としてエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとエンジン回転数NEとに基づいてROM52に格納されている基本進角値テーブルを補間計算付きで参照して基本進角値ADVBASEを設定する。
【0137】
上記基本進角値テーブルは、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpによるエンジン運転領域毎に最適点火時期を予めシミュレーション或いは実験等により求め、この最適点火時期をBTDC何°CAにおいて点火するのかを定める基本進角値ADVBASEとして、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpをパラメータとするテーブルとして設定し、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0138】
次いでステップS53で、ノックセンサ34により検出されるノックの有無に応じて運転領域毎に遅角或いは進角量が学習される点火時期学習補正値ADVKRを、エンジン回転数NEと基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいてバックアップRAM54にストアされている点火時期学習補正値テーブルを補間計算付きで参照して設定する。
【0139】
そして、ステップS54へ進み、上記基本進角値ADVBASEに上記点火時期学習補正値ADVKRを加算して学習補正し、点火時期を定める制御進角ADVを設定して(ADV←ADVBASE+ADVKR)、ステップS55へ進む。
【0140】
ステップS55では、上記制御進角ADVに基づいてθ2クランクパルス入力を基準とした点火コイル19に対する通電遮断タイミングすなわち点火時期TADVを設定する。上述のように、本実施の形態では時間制御方式を採用しており、この点火時期TADVを時間により設定する。
【0141】
すなわち、上記制御進角ADVは角度データ(BTDC°CA)のため、θ2クランクパルスが入力してから点火するまでの時間に換算する必要があり、図13のタイムチャートに示すように、最新のクランクパルス入力間隔時間をTθ、該クランクパルス間角度をθとすると、本実施の形態では、θ2クランクパルス入力を基準として点火時期TADVを、次式により設定する。
【0142】
TADV←(Tθ/θ)×(θ2−ADV)
次に、ステップS56へ進み、バッテリ電圧VBに基づきテーブルを補間計算付きで参照して点火コイル19に対する通電時間(ドエル時間)DWLを設定する。この通電時間は、バッテリ電圧VBに依存するコイル一次電流の最適通電時間を定めるもので、ステップS56中に、このテーブルの一例を示す。すなわち、バッテリ電圧VBの低下時には、通電時間DWLを長くして点火エネルギを確保し、バッテリ電圧VBの上昇時には、通電時間DWLを短くしてエネルギロスや点火コイル19の発熱を防止する。
【0143】
続くステップS57では、上記点火時期TADVから通電時間DWLを減算してθ2クランクパルスを基準とする通電開始タイミングTDWLを設定し(TDWL←TADV−DWL)、ステップS58で該当気筒の点火時期タイマに上記点火時期TADVをセットすると共に、ステップS59で該当気筒の通電開始タイミングタイマに通電開始タイミングTDWLをセットして、ルーチンを抜ける。
【0144】
以上の結果、FCOMP=0で点火プラグ18の火花点火による強制点火制御が選択されているときには、θ2クランクパルス入力に同期して起動する図7のθ2クランクパルス割り込みルーチンにより各タイマがスタートされ、点火プラグ18による強制点火が行われる。
【0145】
一方、上記ステップS51においてFCOMP=1で、自己着火のための圧縮着火制御が選択されているときには、上記通電開始タイミングTDWL,点火時期TADVの設定及びタイマセットを行うことなくルーチンを抜け、これにより、圧縮着火制御時には点火プラグ18による火花点火が中止される。
【0146】
次に、図7に示すθ2クランクパルス割り込みルーチンについて説明すると、θ2クランクパルス入力に同期してルーチンが起動し、ステップS61で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照する。
【0147】
そして、FCOMP=0で点火プラグ18により強制点火する強制点火制御が指示されているときには、ステップS62で、該当点火対象気筒の通電開始タイミングタイマをスタートすると共に、ステップS63で、該当点火対象気筒の点火時期タイマをスタートして、ステップS64へ進み、ステップS64以降で、イオン電流検出処理を行う。
【0148】
そして、各タイマがスタートし、上記通電開始タイミングタイマの計時により通電開始タイミングTDWLに達すると、図8に示すルーチンが割り込み起動し、ステップS71で点火対象気筒のドエルセットによりECU50からイグナイタ20へ該当気筒に対する通電信号が出力され(図13の強制点火制御時点火信号参照)、該当気筒の点火コイル19の通電(ドエル)が開始される。
【0149】
その後、上記点火時期タイマの計時により点火時期TADVに達すると、図9に示す割り込みルーチンが起動し、ステップS81で点火対象気筒の点火コイル19に対するドエルがカットされて、この点火コイル19に高圧の二次電圧が誘起され、点火対象気筒の点火プラグ18の放電電極18aが放電して、該放電電極18a間に火花が生じ、燃焼室17内の混合気が火花点火されて着火燃焼される。
【0150】
従って、自己着火が不能、或いは、自己着火に移行しても適正時期で自己着火を行うことができず着火ミスや異常燃焼を来す虞のあるとき、若しくは、EGRによる吸気温度制御の不能時、すなわちFCOMP=0の強制点火制御時には、エンジン運転状態に応じて点火時期TADVが設定され、点火プラグ18の火花点火による強制点火が行われる。
【0151】
一方、図7のθ2クランクパルス割り込みルーチンのステップS61において、FCOMP=1で圧縮着火制御が指示されているときには、上記通電開始タイミングタイマ及び点火時期タイマのスタートを行うことなく、ステップS61からステップS64へジャンプし、ステップS44以降でイオン電流検出開始処理を行う。
【0152】
すなわち、FCOMP=1の圧縮着火制御の選択時には、上述の点火制御ルーチンにより点火時期TADVの設定が中止されおり、且つ上記各タイマを非作動とすることで、点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止される。
【0153】
ステップS64では、上述の気筒判別/エンジン回転数算出ルーチンによる現在の圧縮行程気筒(点火対象気筒、着火対象気筒)データを読み出し、現在の圧縮行程気筒がイオン電流検出回路45を備えたイオン電流検出対象気筒(本実施の形態においては、#1気筒)か否かを判断する。
【0154】
そして、現在の圧縮行程気筒がイオン電流検出対象気筒外のときには、そのままルーチンを抜け、イオン電流検出対象気筒のとき、ステップS65へ進み、ステップS65以下で、着火時期検出開始処理を行う。
【0155】
ステップS65では、前記カウンタ・タイマ群55における着火時期計時用タイマの計時値TMτを読み出し、該計時値TMτがクリアされているか否かを判断する。
【0156】
ここで、上記着火時期計時用タイマは、後述のステップS68でθ2クランクパルス入力に同期してその計時が開始され、後述するA/D変換毎に実行される図10の着火時期検出ルーチンにおいてイオン電流を検出し、このイオン電流により該当気筒の着火が検出されたとき、そのカウント値TMτがクリアされる。
【0157】
従って、TMτ≠0のときには、該当気筒の前回のθ2クランクパルス入力から着火時期計時用タイマの計時が続行されており、エンジン2回転の間において着火が検出されていない状態、すなわち失火状態であり、このときにはステップS66へ進み、着火時期計時用タイマの計時値TMτすなわちエンジンが2回転に要した時間を着火時期τAとしてRAM53の所定アドレスにストアする(τA←TMτ)。
【0158】
これにより、着火時期τAの検出上限が規制されると共に、このとき圧縮着火制御により自己着火が行われているときには、この着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較により後述の図11〜図12のEGR制御ルーチンにおいて圧縮着火制御フラグFCOMPがクリアされて強制点火制御となり、点火プラグ18の火花点火による強制点火に移行して、自己着火不能による失火が解消される。
【0159】
そして、続くステップS67で、着火時期計時用タイマの計時値TMτをクリアして(TMτ←0)、ステップS68へ進む。
【0160】
一方、上記ステップS65において、TMτ=0で、着火時期τAが正規に検出されているときには、ステップS65からステップS68へジャンプする。
【0161】
そして、ステップS68で、着火時期計時用タイマをスタートして、該当気筒のθ2クランクパルス入力を基準として着火時期の計時を開始させ、続くステップS69で、着火時期検出禁止フラグFτをクリアし(Fτ←0)、着火時期の検出を許可してルーチンを抜ける。
【0162】
以上により、θ2クランクパルス入力を基準として着火時期τAの計時が開始され、イオン電流検出回路45の電圧センサ45aからの出力電圧VIONのA/D変換入力毎に実行される図10の着火時期検出ルーチンによって着火時期τAが検出される。
【0163】
次に、この着火時期検出ルーチンについて説明すると、先ずステップS91で、着火時期検出禁止フラグFτを参照し、Fτ=1で該当気筒1サイクル(エンジン2回転;720°CA回転)において既に着火時期τAの検出が行われ、着火時期τAの検出が禁止されているときには、そのままルーチンを抜ける。また、Fτ=0で該当気筒1サイクルにおいて着火時期τAの検出が終了しておらず着火時期τAの検出が許可されているときには、ステップS92へ進む。
【0164】
ステップS92では、更に圧縮着火制御フラグFCOMPを参照する。そして、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が選択されているときには、ステップS93へ進み、着火時期計時用タイマの計時値TMτ及び上記点火制御ルーチンによる点火時期TADVを読み出し、上記計時値TMτを、点火時期TADVに設定値TSEを加算した加算値(TADV+TSE)と比較する。
【0165】
ここで、図14に示すように、点火プラグ18による火花点火を行う強制点火制御時においては、混合気着火によるイオン電流のみならず、点火プラグ18の火花点火によるイオン電流が検出されてしまう。すなわち、ECU50からイグナイタ20を介してパルス波形の点火信号が出力されると(図13の強制点火制御時点火信号を参照)、点火コイル19の一次側に一次電流が流れ、この点火信号の立下がりにより一次電流が遮断し(ドエルカット)、点火コイル19の2次側に高圧の2次電圧が誘起され、点火プラグ18の放電電極18a間が絶縁破壊されて火花放電(スパーク)が行われ、イオン電流検出回路45において、この点火火花によるイオン電流が検出され、イオン電流検出回路45の電圧センサ45aからECU50に、火花点火によるイオン電流に対応した出力電圧VIONが入力される。
【0166】
そして、火花点火によって燃焼室17内の混合気に着火して、その火炎により点火プラグ18の放電電極18a間に燃焼ガスのイオンが存在するとき、このイオンを介して流れるイオン電流がイオン電流検出回路45により検出されて、このイオン電流に伴いイオン電流検出回路45中の電圧センサ45aからECU50に火炎によるイオン電流に対応して出力電圧VIONが入力される。
【0167】
従って、着火時期τAを検出するには、この火花点火によるイオン電流検出期間を除外する必要がある。このため、着火時期計時用タイマの計時値TMτを、点火時期TADVに設定値TSEを加算した加算値(TADV+TSE)と比較することで、火花点火によるイオン電流検出期間を除外し、着火時期τAの誤検出を防止する。
【0168】
そして、TMτ<TADV+TSEのときには、火花点火によるイオン電流検出の誤検出を防止するため、そのままルーチンを抜け、TMτ≧TADV+TSEで、火花点火によるイオン電流期間の経過後、ステップS94へ進む。
【0169】
一方、上記ステップS92においてFCOMP=1で、圧縮着火制御が選択されているときには、点火信号が出力されず(図13の圧縮着火制御時点火信号を参照)、このときには、点火火花によるイオン電流は発生しない。
【0170】
従って、このときには、火花点火によるイオン電流を判断する必要が無く、上記ステップS92からステップS94へジャンプする。
【0171】
そして、ステップS94で、上記イオン電流検出回路45中の電圧センサ45aによる出力電圧VIONを、イオン電流の発生を判断するための判定値IONと比較し、VION<IONのときには、火炎によるイオン電流が生じていないと判断して、そのままルーチンを抜ける。
【0172】
一方、VION≧IONのとき、火炎によるイオン電流が生じ着火したと判断して、ステップS95へ進み、着火時期計時用タイマの計時値TMτを着火時期τAとし、RAM53の所定アドレスにストアして、続くステップS96で、着火時期計時用タイマの計時値TMτをクリア(TMτ←0)して該着火時期計時用タイマの作動を停止し、このサイクルにおける着火時期τAの計時の終了により、ステップS97で、着火時期検出禁止フラグFτをセットして(Fτ←1)、ルーチンを抜ける。
【0173】
そして、以上の処理によりθ2クランクパルス入力を基準とした着火時期τAが検出され、FCOMP=0の点火プラグ18の火花点火による強制点火制御時には、上述の圧縮着火制御条件判別ルーチンにおいて、この着火時期τAと点火時期TADVとの時間間隔によって圧縮着火制御への移行条件が判断され(図3のステップS15参照)、また、FCOMP=1の自己点火を行う圧縮着火制御への移行後は、図11〜図12に示すEGR制御ルーチンにおいて、この着火時期τAとエンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じてEGR弁27に対する制御量EGRSを設定し、EGR弁27によるEGR量すなわちEGR率を制御することで、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう吸気温度を制御する。
【0174】
次に、図11〜図12のEGR制御ルーチンについて説明する。
【0175】
このEGR制御ルーチンは、システムイニシャライズ後、所定時間(例えば、16ms)毎に実行され、ステップS101で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照する。
【0176】
そして、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が指示されているときには、ステップS102へ進み、ステップS102〜S111の処理により、エンジン運転状態に応じてEGR弁27に対する制御量EGRSを設定して通常のEGR制御を行い、FCOMP=1の圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS112へ進み、ステップS112以降の処理で、EGR制御によって、自己着火において着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するように吸気温度制御を行う。
【0177】
先ず、FCOMP=0の強制点火制御時における通常のEGR制御について説明すると、ステップS102で、前記カウンタ・タイマ群55における始動後時間計時用タイマによって計時されたエンジン始動後時間TMASTを読み出して、設定値ASTEGRと比較する。
【0178】
すなわち、TMAST<ASTEGRで、エンジン始動後時間TMASTが上記設定値ASTEGRにより定まる所定時間に達しておらず、スタータスイッチ48がONのエンジン始動中、或いはエンジン始動直後の時には、エンジンが不安定状態であり、このとき、EGRを行うとエンスト生じる虞がある。従って、TMAST<ASTEGRの時は、EGR条件不成立と判断し、ステップS109へジャンプしてEGRを停止し、TMAST≧ASTEGRのとき、ステップS103へ進み、ステップS103〜S108で、更に、EGR条件を判断する。
【0179】
すなわち、ステップS103で、冷却水温度TWと水温判定値TWEGR(例えば、50°C)とを比較し、TW≧TWEGRのエンジン暖機完了状態であり、且つ、ステップS104,S105で、基本燃料噴射パルス幅Tpを、それぞれ下限値LEGRL,上限値LEGRHと比較して、エンジン負荷によるEGR実行の下限側及び上限側を判断し、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpが下限値LEGRLと上限値LEGRHとの間、いわゆるエンジン中負荷状態であり、且つ、ステップS106で、エンジン回転数NEを高回転判定値NEGR(例えば、4000rpm)と比較し、NE≦NEGRでエンジン回転数NEが高回転数域外であり、且つ、ステップS107で、車速センサ47による車速VSPを高車速判定値VEGR(例えば、120km/h)と比較し、VSP≦VEGRで車速VSPが高速走行領域外のときのみ、ステップS108へ進み、アイドルスイッチ33bの作動状態を判断する。そして、アイドルスイッチ33bがOFFの非アイドル時のみ、EGR条件成立と判断して、ステップS111へ進み、EGRを実行する。
【0180】
ここで、TW<TWEGRのエンジン冷態時には、エンジンの燃焼状態が不安定であり、このときEGRを行うと燃焼性が悪化してエンジン運転性が著しく悪化する。また、Tp<LEGRLのエンジン低負荷運転時には新気の吸入量が少なく、EGRを行うとエンジンの燃焼性が悪化する。また、Tp>LEGRHのエンジン高負荷運転時は、エンジン出力要求時であり、このときEGRを行うと、出力要求時であるにも拘らず、エンジン出力が低下してしまう。更に、NE>NEGRのエンジン高回転時、或いは、VSP>VEGRの高速走行時も出力要求時であり、このときEGRを行うと、出力要求に相反してエンジン出力が低下してしまう。
【0181】
従って、上記ステップS102〜S108において何れかの条件が満足しないときには、EGR実行条件の不成立と判断して、該当するステップからステップS109へ進み、EGR弁27に対する制御量EGRSを、全閉を指示する“00H”に設定し、この制御量EGRSを、ステップS110でセットして、ルーチンを抜ける。
【0182】
その結果、この制御量EGRSに対応する駆動信号がECU50からEGR弁27に出力され、EGR弁27内蔵のステッピングモータの駆動によりEGR弁27が全閉となり、EGRが停止される。
【0183】
一方、上記ステップS102〜S108の条件が全て満足されたEGR実行条件の成立時には、ステップS111へ進み、EGRを実行する。ステップS111では、このときのエンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて制御量テーブルを補間計算付きで参照し、EGR弁27に対する制御量EGRSを設定する。
【0184】
上記制御量テーブルは、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとによるエンジン運転領域毎に、適正EGR量を得るEGR弁27に対する制御量EGRSを、予めシミュレーション或いは実験等により求め、エンジン回転数NEと基本燃料噴射パルス幅Tpとをパラメータとするテーブルとして設定し、ROM52の一連のアドレスに固定データとしてメモリされているものである。この制御量テーブルの一例をステップS111中に示す。
【0185】
本実施の形態では、ステップS111中に示すように、エンジン回転数NEと基本燃料噴射パルス幅Tpとが、それぞれ2000〜4000rpm、3.0〜4.0msの所定領域において最も大きな値の制御量EGRSがメモリされている。これはこの領域におけるNOxの発生量が高く、EGR率を高めることによってNOxの発生を抑制するためである。そして、エンジン回転数NE或いは基本燃料噴射パルス幅Tpが上記範囲からずれるに従って、NOxの発生量が低下するため、これに対応してEGR率を低下させるべく小さい値の制御量EGRSがメモリされている。
【0186】
そして、制御量EGRSの設定後、ステップS110へ進み、上記ステップS111で設定した制御量EGRSをセットして、ルーチンを抜ける。
【0187】
その結果、この制御量EGRSに対応する駆動信号がECU50からEGR弁27に出力され、EGR弁27内蔵のステッピングモータの駆動により、EGR弁27の弁開度がエンジン運転状態に適合するEGR率を得る所定開度に調整される。
【0188】
一方、上記ステップS101においてFCOMP=1で、点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止され自己着火を行うための圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS112へ進み、ステップS112以降の処理によって、上記着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じたフィードバック制御によりEGR弁27に対する制御量EGRSを設定してEGRによる吸気温度制御を行うことで、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう制御する。
【0189】
ステップS112では、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて基本目標着火角度テーブルを補間計算付きで参照して、圧縮上死点を基準とする基本目標着火角度ADVτBASEを設定する。
【0190】
上記基本目標着火角度テーブルは、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpによるエンジン運転領域毎に、自己着火における最適着火時期(角度)を予めシミュレーション或いは実験等により求め、この最適着火時期をBTDC何°CAにおいて得るのかを定める基本目標着火角度ADVτBASEとして設定し、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0191】
上記基本目標着火角度テーブルの一例をステップS112中に示す。この基本目標着火角度テーブルには、基本燃料噴射パルス幅Tpが大きい高負荷領域、及びエンジン回転数NEの低い低回転領域において、小さい値すなわち遅角側の基本目標着火角度ADVτBASEがメモリされている。逆に基本燃料噴射パルス幅Tpが小さく且つエンジン回転数NEが高いほど、すなわちエンジン低負荷高回転領域に移行するほど、大きい値すなわち進角側の基本目標着火角度ADVτBASEがメモリされている。
【0192】
ここで、着火後における燃焼行程(膨張行程)での燃焼期間は、エンジン運転状態によって相違する。すなわち、低回転領域においては、1行程に要する時間が長く相対的に1行程中での燃焼期間が短くなり、高負荷領域においては充填効率の上昇により同様に相対的に燃焼期間が短くなる。また、高回転領域においては、1行程に要する時間が短く相対的に1行程中での燃焼期間が長くなり、低負荷領域においては、充填効率の低下によって相対的に燃焼期間が長くなる。
【0193】
このため、着火時期を一定とした場合、低回転領域及び高負荷領域では燃焼が早く終了し、また、高回転領域及び低負荷領域では、燃焼が遅く、何れにしても熱効率が低下してしまう。
【0194】
従って、高負荷低回転であるほど、基本目標着火角度ADVτBASEを遅角化することで、この基本目標着火角度ADVτBASEに基づいて設定される目標着火時期τTAGTを遅角化し、この目標着火時期τTAGTに対応して後述するフィードバック制御により着火時期τAを遅角化させる。その結果、燃焼の終了時期が相対的に遅角化して高負荷低回転時の熱効率を向上することが可能となる。
【0195】
また、低負荷高回転であるほど、基本目標着火角度ADVτBASEを進角化することで、目標着火時期τTAGTを進角化し、この目標着火時期τTAGTに対応して後述するフィードバック制御により着火時期τAを進角化させる。その結果、低負荷高回転領域においては、燃焼期間が相対的に進角化して燃焼の遅れが抑制され、熱効率を向上することが可能となる。
【0196】
これにより、エンジン運転領域毎に相違する燃焼期間に対応して、適切な目標着火時期を設定することが可能となり、各領域において熱効率を向上することが可能となる。
【0197】
また、本実施の形態では、圧縮上死点を基準とする角度データとして基本目標着火角度ADVτBASEを設定しているが、制御精度が若干低下するものの、これに代え、エンジン回転数NEとエンジン負荷との少なくとも一方によるテーブル参照によりθ2クランクパルス入力を基準とした時間データとして基本目標着火時期を設定するようにしてもよい。この場合は、角度データを時間換算する後述のステップS115が不要となる。
【0198】
そして、上記ステップS112での基本目標着火角度ADVτBASEの設定後、ステップS113へ進み、エンジン温度の一例としての冷却水温度TWを読み出して、この冷却水温度TWに基づいて水温補正係数テーブルを補間計算付きで参照し、エンジン温度に応じて上記基本目標着火角度ADVτBASEを補正するための水温補正係数Kτを設定する。
【0199】
上記水温補正係数テーブルは、冷却水温度TWによるエンジン温度領域毎に、上記基本目標着火角度ADVτBASEを補正して最適な目標着火時期(角度)を得るための水温補正係数Kτを予めシミュレーション或いは実験等により求め、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0200】
上記水温補正係数テーブルの一例をステップS113中に示す。この水温補正係数テーブルには、通常運転状態時のエンジン常温域に対し、冷却水温度TWが低いエンジン低温域、及び冷却水温度TWの高いエンジン高温域において、小さい値すなわち上記基本目標着火角度ADVτBASEを遅角補正する水温補正係数Kτがメモリされている。
【0201】
すなわち、冷却水温度TWの低いエンジン低温域では、上記基本目標着火角度ADVτBASEを水温補正係数Kτによって遅角補正して目標着火時期τTAGTを設定することで、目標着火時期τTAGTを遅角化し、この目標着火時期τTAGTに対応して後述するフィードバック制御により着火時期τAを遅角化させる。これにより、燃焼温度が上昇してエンジン1の暖機が促進されると共に、燃焼温度の上昇に伴いエンジン排気温度が上昇して排気系に介装された触媒コンバータ23の触媒温度を早期に昇温することが可能となり、触媒コンバータ23の活性を促進して触媒作用を有効に発揮させ、排気エミッションの改善を図ることが可能となる。
【0202】
また、冷却水温度TWの高いエンジン高温域においても、水温補正係数Kτにより遅角補正して目標着火時期τTAGTを設定することで、着火時期τAを遅角化する。その結果、この着火時期τAの遅角化により燃焼圧力すなわち筒内圧力を相対的に低下させることが可能となり、エンジン1に対する悪影響を未然に回避することが可能となる。
【0203】
次いでステップS114へ進み、上記基本目標着火角度ADVτBASEを上記水温補正係数Kτにより補正して目標着火角度ADVτTGTを設定する(ADVτTGT←ADVτBASE×Kτ)。
【0204】
続くステップS115では、圧縮上死点を基準とした上記目標着火角度ADVτTGTを時間換算してθ2クランクパルス入力を基準とした目標着火時期τTAGTを設定する。本実施の形態では、上述のように時間制御方式を採用しており、この目標着火時期τTAGTを時間により設定する。
【0205】
すなわち、上記目標着火角度ADVτTGTは角度データ(BTDC°CA)のため、θ2クランクパルスが入力してから自己着火により着火するまでの時間に換算する必要があり、図14のタイムチャートに示すように、最新のクランクパルス入力間隔時間をTθ、該クランクパルス間角度をθとすると、本実施の形態では、θ2クランクパルス入力を基準として目標着火時期τTAGTを、次式により設定する。
【0206】
τTAGT←(Tθ/θ)×(θ2−ADVτTGT)
そして、ステップS116へ進み、ステップS116以降の処理によって、上述の着火時期検出ルーチンにおいて検出された実際の着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じてEGR弁27に対する制御量EGRSを設定し、EGRによる吸気温度制御により着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するようフィードバック制御する。
【0207】
ステップS116では、上記着火時期検出ルーチンによる最新の着火時期τAを読み出して、この着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTに不感帯幅を定める設定値αを加算した目標着火時期上限(τTAGT+α)とを比較する。
【0208】
そして、τA<τTAGT+αで、着火時期τAが目標着火時期上限(τTAGT+α)を下回っているときには、ステップS117へ進み、更に着火時期τAを、上記目標着火時期τTAGTから設定値を減算した目標着火時期下限(τTAGT−α)と比較する。
【0209】
その結果、τA≧τTAGT−αであり、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内にあるときには(τTAGT+α>τA≧τTAGT−α)、そのままルーチンを抜け、現在のEGR弁27に対する制御量(以下、「EGR弁制御量」と称する)EGRSを維持する。
【0210】
また、上記ステップS117においてτA<τTAGT−αであり、不感帯の範囲外で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のときには、ステップS118へ進み、EGR弁27のステッピングモータにより該EGR弁27の弁開度を所定量減少してEGR量を減少させるために、現在のEGR弁制御量EGRSから設定値DEGRを減算して新たな制御量EGRSを設定し(EGRS←EGRS−DEGR)、前記ステップS110を経て、上記ステップS118による新たなEGR弁制御量EGRSをセットして、ルーチンを抜ける。
【0211】
その結果、この制御量EGRSに対応する駆動信号がECU50からEGR弁27に出力され、EGR弁27のステッピングモータの駆動によりEGR弁27の弁開度が上記設定値DEGRにより定まる所定量だけ減少し、EGR量(EGR率)の減少により吸気温度が低下される。
【0212】
従って、点火プラグ18の火花点火を中止して自己着火を行う圧縮着火制御時において、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のときには、EGR量の減少によって吸気温度が低下され、この吸気温度の低下に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が低下し、圧縮行程時の筒内温度の低下によって自己着火による着火時期τAが遅角化される。
【0213】
一方、上記ステップS116においてτA≧τTAGT+αであり、不感帯の範囲外で、図14に示すように、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、ステップS119へ進み、EGR弁27のステッピングモータにより該EGR弁27の弁開度を所定量増加してEGR量を増加させるために、EGR弁制御量EGRSに設定値UEGRを加算して新たな制御量EGRSを設定し(EGRS←EGRS+UEGR)、ステップS120へ進む。
【0214】
ステップS120では、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて上限値テーブルを補間計算付きで参照して、EGR弁制御量EGRSを上限規制する上限値EGRSMAXを設定する。
【0215】
上記上限値テーブルは、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpによるエンジン運転領域毎に、EGR弁制御量EGRSの適正上限値EGRSMAXを予めシミュレーション或いは実験等により求め、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0216】
上記上限値テーブルの一例をステップS120中に示す。この上限値テーブルには、基本燃料噴射パルス幅Tpが大きい高負荷領域、及びエンジン回転数NEの低い低回転領域において、小さい値の上限値EGRSMAXがメモリされている。逆に基本燃料噴射パルス幅Tpが小さく且つエンジン回転数NEが高いほど、すなわちエンジン低負荷高回転領域に移行するほど、大きい値の上限値EGRSMAXがメモリされている。
【0217】
すなわち、上述のように、高負荷低回転であるほど、上記基本目標着火角度ADVτBASEを遅角設定して目標着火時期τTAGTを遅角化することで、高負荷低回転時の燃焼期間を適切に保ち熱効率の向上を図っている。このため、この目標着火時期τTAGTと着火時期τAとの比較に応じて設定されるEGR弁制御量EGRSの上限値EGRSMAXを、これに対応して低下することで、上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0218】
また、低負荷高回転であるほど、基本目標着火角度ADVτBASEを進角設定して目標着火時期τTAGTを進角化することで、燃焼期間を相対的に進角化させ、低負荷高回転時の燃焼の遅れを抑制して熱効率の向上を図っているため、これに対応してEGR弁制御量EGRSの上限値EGRSMAXを上昇させる。
【0219】
これにより、エンジン運転領域毎に相違する目標着火時期τTAGTに対応して、EGR弁制御量EGRSに対し適切な上限値EGRSMAXを設定することが可能となり、各領域において上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0220】
そして、ステップS121へ進み、上記ステップS119で増加修正したEGR弁制御量EGRSと上記ステップS120で設定した上限値EGRSMAXとを比較し、EGRS≦EGRSMAXでEGR制御量EGRSが上限値EGRSMAX以下のときには、前記ステップS110へジャンプし、上記ステップS119において増加修正したEGR弁制御量EGRSをセットして、ルーチンを抜ける。
【0221】
その結果、この制御量EGRSに対応する駆動信号がECU50からEGR弁27に出力され、EGR弁27のステッピングモータの駆動によりEGR弁27の弁開度が上記設定値UEGRにより定まる所定量だけ増加し、EGR量(EGR率)の増加により吸気温度が上昇される。
【0222】
従って、点火プラグ18の火花点火を中止して自己着火を行う圧縮着火制御時において、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、EGR量が増加されて吸気温度が上昇され、この吸気温度の上昇に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が上昇し、圧縮行程時の筒内温度の上昇によって自己着火による着火時期τAが進角化される。
【0223】
これにより自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0224】
一方、上記ステップS121においてEGRS>EGRSMAXとなり、すなわち、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のために、EGR弁制御量EGRSを逐次増加修正した結果、EGR制御量EGRSが上限値EGRSMAXを上回りEGR弁27の弁開度がエンジン運転状態に応じた限界値に達したとき、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因してEGRによる吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能になった、或いは、自己着火自体が不能になったと判断して、ステップS122へ進む。
【0225】
そして、ステップS122で、圧縮着火制御フラグFCOMPをクリアし(FCOMP←0)、続くステップS123で、現在のEGR制御量EGRSから設定値DWNSETを減算して新たなEGR弁制御量EGRSを設定することで(EGRS←EGRS−DWNSET)、該EGR弁制御量EGRSを初期状態に戻し、前記ステップS110を経て、上記ステップS123によるEGR弁制御量EGRSをセットして、ルーチンを抜ける。
【0226】
その結果、上記圧縮着火制御フラグFCOMPのクリアにより圧縮着火制御から強制点火制御に移行し、上述の点火制御ルーチンにおいて、点火時期TADV、通電開始時期タイミングTDWLの設定、及び各点火タイマのセットが行われ、点火プラグ18の火花点火による強制点火が再開されると共に、上述の目標当量比算出ルーチンにおいて、強制点火に適合するリーン減量係数KLEANが設定されることで、混合気空燃比の相対的なリーン化が解除される。
【0227】
以上の制御状態を図16のタイムチャートに基づいて説明する。
【0228】
図16のタイムチャートにおいてt1の時点で、上記圧縮着火制御条件判別ルーチンにより圧縮着火制御への移行条件が成立したとき、圧縮着火制御フラグFCOMPがセット(FCOMP←1)されることで、強制点火制御から圧縮着火制御に移行する。
【0229】
そして、上記圧縮着火制御フラグFCOMPに応じ、強制点火制御から圧縮着火制御への移行時に、燃料減量率を定めるリーン減量係数KLEANが、強制点火制御時に比べ相対的に大きい値に設定される(図4のステップS35,S36参照)。そして、このリーン減量係数KLEANが目標当量比KTAGTの演算式においてマイナス項で与えられ(図4のステップS37)、更に、この目標当量比KTAGTが燃料噴射量を定める燃料噴射パルス幅Tiの演算式に組み込まれて(図5のステップS46)、強制点火制御時に対して、燃料噴射量に対する燃料減量補正率が増加され、燃焼室17に供給される混合気の空燃比が相対的にリーン化される。そして、この空燃比のリーン化は、圧縮着火制御に移行後も継続される。
【0230】
その結果、点火プラグ18による強制点火から該点火プラグ18の点火を中止して自己着火に移行する際、燃焼室17に供給される混合気空燃比のリーン化によって、燃費を大幅に向上することが可能となる。
【0231】
また、圧縮着火制御への移行時に、EGR弁制御量EGRSが設定値UPSETによる所定量増加され(図3のステップS25)、これに対応してEGR弁27の弁開度が所定量増加し、EGR量(EGR率)の増加によって吸気温度が上昇される。これにより、燃焼室17内に供給される混合気の温度が上昇し、燃焼室17内の混合気の温度が直ちに上昇され、適正着火時期を得ることが可能で且つ着火時期制御可能状態の下で、自己着火への移行が可能となる。
【0232】
そして、圧縮着火制御フラグFCOMPのセットによって、点火制御ルーチンによる点火時期TADVの設定及び各点火タイマのセットが中止されることで、点火プラグ18による点火火花が中止され、点火プラグ18による強制点火から自己着火に移行される。
【0233】
そして、この圧縮着火制御への移行後は、EGR制御ルーチンにおいて、イオン電流に基づき検出された実際の着火時期τAを、エンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTに不感帯幅を定める設定値αを加算した目標着火時期上限(τTAGT+α)、及び、目標着火時期τTAGTから設定値αを減算した目標着火時期下限(τTAGT−α)とそれぞれ比較する。
【0234】
そして、t1〜t2の時点において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内にあるときには(τTAGT+α>τA≧τTAGT−α)、EGR弁制御量EGRSをそのまま維持する。
【0235】
t2の時点以降、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側で不感帯を逸脱すると(τA≧τTAGT+α)、EGR制御ルーチン実行毎すなわち演算周期毎にEGR弁制御量EGRSを設定値UEGRづつ漸次的に増加させ、EGR弁27の弁開度が上記設定値UEGRにより定まる所定量づつ増加される。そして、このEGR弁27の弁開度の増加によってEGR量(EGR率)が増加し、これにより吸気温度が上昇され、この吸気温度の上昇に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が上昇し、圧縮行程時の筒内温度の上昇によって自己着火による着火時期τAが進角化される。その結果、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0236】
そして、t3の時点で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、EGR弁制御量EGRSの増加修正が中止され、EGR弁制御量EGRSすなわちEGR弁27の弁開度がそのまま維持される。
【0237】
一方、t4の時点以降、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側で不感帯を逸脱すると(τA<τTAGT−α)、EGR制御ルーチン実行毎にEGR弁制御量EGRSを設定値DEGRづつ減少させ、EGR弁27の弁開度を上記設定値DEGRにより定まる所定量づつ減少し、EGR量(EGR率)を減少させる。その結果、このEGR量の減少によって吸気温度が低下され、この吸気温度の低下に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が低下し、圧縮行程時の筒内温度の低下によって自己着火による着火時期τAが遅角化され、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0238】
これにより、エンジン運転条件や大気条件等が変化しても、エンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束するよう着火時期τAが制御され、自己着火時において常に最適な着火時期τAを得ることが可能となり、熱効率の向上により燃費向上、信頼性の向上を図ることができ、また、エンジン運転状態の相違に関わらず最適着火時期を得ることが可能となるため、ノッキング等の異常燃焼を未然に回避することができ、エンジンに対する悪影響を未然に回避することができるばかりか、エンジン騒音の低減を図ることが可能となる。
【0239】
そして、t5の時点において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、EGR弁制御量EGRSの減少修正が中止され、EGR弁制御量EGRSすなわちEGR弁27の弁開度がそのまま維持される。
【0240】
また、t6の時点以降、再び着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側で不感帯を逸脱すると(τA≧τTAGT+α)、EGR制御ルーチン実行毎にEGR弁制御量EGRSを設定値UEGRづつ漸次的に増加させ、EGR弁27の弁開度が上記設定値UEGRにより定まる所定量づつ増加される。
【0241】
そして、このEGR弁制御量EGRSの増加修正によっても着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束せず、t7の時点において、EGR弁制御量EGRSが、エンジン運転状態に基づいて設定した上限値EGRSMAXを上回ったとき(EGRS>EGRSMAX)、すなわち、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のために、EGR弁制御量EGRSを逐次増加修正した結果、EGR制御量EGRSが上限値EGRSMAXを上回りEGR弁27の弁開度がエンジン運転状態に応じた限界値に達したとき、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因してEGRによる吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能になった、或いは、自己着火自体が不能になったと判断して、圧縮着火制御フラグFCOMPがクリアされる(FCOMP←0;図12のステップS122)。
【0242】
そして、この圧縮着火制御フラグFCOMPのクリアにより圧縮着火制御から強制点火制御に移行し、上述の点火制御ルーチンにおいて、点火時期TADV、通電開始時期タイミングTDWLの設定、及び各点火タイマセットが行われ、点火プラグ18の火花点火による強制点火が再開されると共に、上述の目標当量比算出ルーチンにおいて、強制点火に適合するリーン減量係数KLEANが設定されることで、混合気空燃比の相対的なリーン化が解除される。
【0243】
これにより、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因してEGRによる吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能となった時、或いは、自己着火自体が不能になった時には、自己着火から点火プラグ18の点火による強制点火に確実に移行することが可能となる。その結果、自己着火による着火時期τAの制御不能状態での自己着火の継続が防止され、ドライバビリティの悪化を防止することが可能となる。また、自己着火の継続による異常燃焼や失火が防止されることで、排気エミッションの悪化を防止することが可能となり、且つ、エンジン1の耐久信頼性を向上することが可能となる。
【0244】
また、このとき、EGR制御量EGRSが設定値DWNSETによる所定量減少され初期状態に復帰される。これに対応してEGR弁27の弁開度が所定量減少し、通常のEGR制御に復帰する。
【0245】
尚、本実施の形態においては、圧縮着火制御時におけるEGR制御量EGRSを、着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて積分制御により設定しているが、比例積分制御(PI制御)或いは比例積分微分制御(PID制御)により設定するようにしてもよい。
【0246】
また、本実施の形態においては、エンジン負荷として吸入空気量Q或いは基本燃料噴射パルス幅Tpを用いているが、エンジン負荷を表すものであればよく、本発明は、これに限定されない。
【0247】
更に、EGR弁は本実施の形態のステッピングモータ式のEGR弁に限定されず、例えば、ダイヤフラムアクチュエータ式のEGR弁を採用し、このダイアフラムアクチュエータ式EGR弁を作動させるための制御圧を調圧するデューティソレノイド弁に対する制御量を制御することで吸気加熱制御を行うようにしてもよい。また、デューティソレノイド弁による直動式のEGR弁を採用し、このデューティソレノイド弁に対する制御量を制御することで吸気加熱制御を行うようにしてもよい。
【0248】
また、本実施の形態においては、点火プラグ18の点火による強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じてEGR制御を行うようにしているが、強制点火制御時においてEGRを中止し、自己着火による圧縮着火制御時のみEGRを行い、EGRを吸気加熱制御のみに使用するようにしてもよい。この場合は、図3の圧縮着火制御条件判別ルーチンにおいて、上述のように排気ガスの温度を設定値と比較することで、EGRによる吸気温度制御が可能か否かを判断し、また、図11のEGR制御ルーチンにおいて、ステップS102〜S108,S111を省略して、FCOMP=0で強制点火制御が指示されているとき、ステップS101からステップS109へ進み、EGRを停止するようにする。
【0249】
次に、図22〜図25に基づいて、本発明の実施の第2形態を説明する。
【0250】
上記実施の第1形態においては、吸気加熱手段としてEGR装置25を採用するのに対し、本実施の形態は、吸気加熱手段として、図24に示すように、排気ガスと熱交換を行う熱交換器70と、吸気系として吸気通路6を流れる吸気の一部を上記熱交換器70に導入すると共に該熱交換器70による熱交換後の加熱吸気を吸気系のスロットル弁5a下流のエアチャンバ4に戻す加熱吸気用通路71と、該加熱空気用通路71に介装され加熱吸気用通路71を流れる加熱吸気の流量を調整する加熱吸気量調整弁72とからなる吸気加熱装置を採用する。
【0251】
そして、圧縮着火制御時において、上記着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のとき、加熱吸気量調整弁72による加熱吸気量を減少制御して、吸気温度を低下させることで、エンジン燃焼室17内の混合気温度を低下し、自己着火による着火時期を遅角化させる。また、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、加熱吸気量調整弁72による加熱吸気流量を増加制御して、吸気温度を上昇させることで、燃焼室17内の混合気温度を上昇し、自己着火による着火時期を進角化する。
【0252】
尚、上記実施の第1形態と同一の構成品、同一のステップについては、同一の符号を付して、その詳細説明は省略する。
【0253】
先ず、図24に基づいて、本形態の吸気加熱装置について説明する。
【0254】
排気系のエキゾーストマニホルド21に、排気ガスと熱交換を行う熱交換器70が配設されている。そして、この熱交換器70に吸気の一部を導入するため吸気管6と熱交換器70とを連通する吸気導入通路71aと、熱交換器70により排気ガスと熱交換された加熱吸気を吸気系に戻すため熱交換器70とスロットル弁5a下流のエアチャンバ4とを連通する加熱空気供給通路71bとにより、加熱空気用通路71が構成される。
【0255】
また、上記加熱空気供給通路71bに、該加熱空気供給通路71bを流れる加熱吸気の流量すなわち吸入空気における加熱空気の供給率(以下、「加熱空気供給率」と称する)を調整することで吸気温度を制御するためのデューティソレノイド弁式の加熱吸気量調整弁72が介装されている。尚、上記加熱吸気量調整弁72は、吸気導入通路71aに介装してもよい。
【0256】
そして、スロットル弁5a下流に発生する吸気負圧によって、吸気管6を流れる吸気の一部が上記吸気導入通路71aを介して熱交換器70に導入され、熱交換器70で熱交換された加熱吸気が加熱空気供給通路71bを介して、スロットル弁5a下流のエアチャンバ4に供給される。
【0257】
更に、図25に示すように、ECU50のI/Oインターフェイス56の出力ポートに、駆動回路58を介して、上記加熱吸気量調整弁72が接続されている。
【0258】
そして、加熱吸気量調整弁72に対する制御量すなわち駆動信号のデューティ比DUTYがECU50によって演算され、このデューティ比DUTYに対応してECU50から出力される駆動信号に応じて加熱吸気量調整弁72の弁開度が調整される。
【0259】
尚、本実施の形態においては、上記デューティ比DUTYが15%以下で、加熱吸気量調整弁72が全閉となり加熱吸気の供給が停止され、デューティ比DUTYが90%以上のとき、加熱吸気量調整弁72が全開となる。そして、デューティ比DUTYが0%〜100%の間で設定され、このデューティ比DUTYによる駆動信号に応じて加熱吸気量調整弁72の弁開度が調整されて、加熱空気流量すなわち加熱空気供給率が制御される。
【0260】
そして、本実施の形態では、上記実施の第1形態の図3の圧縮着火制御条件判別ルーチンに代えて、図22に示す圧縮着火制御条件判別ルーチンを採用し、また、図11〜図12のEGR制御ルーチンに代えて、図23に示す吸気加熱制御ルーチンを採用する。尚、その他のルーチンについては、上記実施の第1形態のルーチンをそのまま採用し、その説明は省略する。
【0261】
以下、本形態の圧縮着火制御条件判別ルーチン及び吸気加熱制御ルーチンについて説明する尚、上記実施の第1形態と同ステップについては、同一の符号を付して、その詳細説明は省略する。
【0262】
図22に示す圧縮着火制御条件判別ルーチンは、上記実施の第1形態と同様に、システムイニシャライズ後、所定時間(例えば、10msec)毎に実行され、ステップS11で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、FCOMP=1で、既に自己着火を行う圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS19へジャンプして、ステップS19,S20で、現在のエンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとしてRAM53の所定アドレスにストアして、そのままルーチンを抜ける。
【0263】
一方、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が選択され、点火プラグ18の放電による強制点火が行われているとき、ステップS12へ進み、ステップS12〜S15,S22で、圧縮着火制御への移行条件が成立しているか否かを判断する。
【0264】
ステップS12,S13では、エンジン回転数NEと吸入空気量Qの変化を判断し、エンジン定常運転状態か否かを判断する。そして、|NE−NEOLD|>NES或いは|Q−QOLD|>QSのエンジン過渡運転状態時には、該当するステップからステップS18へジャンプして、条件継続時間カウント値CNをクリアし、次回の判定に備え、続くステップS19,S20で、それぞれ上記エンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとして、ルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0265】
また、上記ステップS12,S13において|NE−NEOLD|≦NES且つ|Q−QOLD|≦QSのエンジン定常運転状態時には、ステップS14へ進み、エンジン温度の一例としての冷却水温センサ36によるエンジン冷却水温度TWを読み出し、この冷却水温度TWを設定値TWSと比較することで、加熱空気の流量制御による吸気温度制御が可能か否かを判断する。
【0266】
本実施の形態においては、上記設定値TWSは、エンジン1の暖機が完了し且つ排気温度が所定に上昇して排気ガスとの熱交換により高温の加熱吸気が得られ加熱吸気量調整弁72による加熱吸気流量すなわち加熱空気供給率を制御することで、吸気温度を適切に制御することが可能な冷却水温度を、予めシミュレーション或いは実験等により求め、この温度値を設定値TWSとして設定し、固定データとしてROM52にメモリされているものである。
【0267】
従って、TW<TWSで、エンジン冷態状態で自己着火不能、或いは、加熱空気により吸気温度制御を適正に行い得ないと判断されるときには、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0268】
そして、上記ステップS14で、TW≧TWSのエンジン温度が所定温度に達したときには、エンジン1の暖機が完了し且つ排気温度が充分に上昇して、熱交換器70による排気ガスとの熱交換後の加熱吸気により吸気温度を充分上昇させることが可能であり、加熱吸気量調整弁72による加熱空気供給率を制御することで吸気温度を適正に制御することが可能と判断し、ステップS15へ進む。
【0269】
ステップS15では、前述の図6の点火制御ルーチンにおいて設定される点火プラグ18による強制点火の点火時期TADV、及び図10の着火時期検出ルーチンおいてイオン電流に基づき検出した着火時期τAを読み出して、着火時期τAから点火時期TADVを減算し、この減算値(τA−TADV)を設定値TSETと比較することで、適正時期で自己着火が可能か否かを判断する。
【0270】
そして、τA−TADV>TSETで、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が設定値TSETにより定まる所定時間を上回るときには、自己着火不能ないし自己着火に移行させたとしても適正着火時期での自己着火が不能と判断して、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0271】
一方、上記ステップS15においてτA−TADV≦TSETで、点火時期TADVとイオン電流に基づき検出される着火時期τAとの時間間隔が上記設定値TSETによる所定値以内の時間に短縮されたとき、適正着火時期で自己着火が可能であると判断して、ステップS21へ進み、上記ステップS12〜S15の全ての条件による圧縮着火制御への切換条件成立の継続時間を計時する条件継続時間カウント値CNをカウントアップし、ステップS22で、上記条件継続時間カウント値CNを設定値CSET(例えば、数sec相当値)と比較する。
【0272】
そして、CN<CSETのときには、未だ圧縮着火制御への切換条件が非成立であると判断して、上記ステップS19へ進み、ステップS19,S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0273】
また、上記ステップS22においてCN≧CSETで、上記ステップS12〜S15による全ての条件成立の継続時間が、本ルーチンの実行周期と上記設定値CSETとにより定まる所定期間に達したとき、ステップS23へ進み、上記圧縮着火制御フラグFCOMPをセットすることで(FCOMP←1)、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を中止して自己着火を行わせる圧縮着火制御を選択する。
【0274】
そして、ステップS24で上記条件継続時間カウント値CNをクリアして、続くステップS201で、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比を初期値DINIにより初期設定し(DUTY←DINI)、ルーチンを抜ける。
【0275】
そして、上記圧縮着火制御フラグFCOMPが、前述の図4の目標当量比算出ルーチン、図6の点火制御ルーチン、図7のθ2クランクパルス割り込みルーチン、及び、後述する図23の吸気加熱制御ルーチンにおいて参照され、FCOMP=0の強制点火制御時には、エンジン運転状態に応じて点火時期TADVを設定し、点火プラグ18の火花点火による強制点火を行い、エンジン運転状態に応じて所定空燃比による燃料噴射制御を行うと共に、このときには、吸気加熱を中止する。
【0276】
尚、ここで、強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じて加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定し、吸気加熱を行うようにしてもよい。
【0277】
また、FCOMP=1の圧縮着火制御時には、空燃比が強制点火制御時に対して相対的にリーン化されると共に、点火時期TADVの設定が中止されて点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止される。また、圧縮着火制御への移行時に、上述のステップS201において加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYが初期値DINIによる所定量増加され、これに対応して加熱吸気量調整弁72の弁開度が所定量増加し、加熱吸気流量すなわち加熱空気供給率の増加によって吸気加熱が開始、或いは吸気加熱量が増加させることで、吸気温度が上昇する。そして、この吸気温度の上昇により、燃焼室17内の混合気の温度が直ちに上昇され、点火プラグ18の火花点火による強制点火から自己着火に移行される。
【0278】
そして、圧縮着火制御への移行後は、イオン電流に基づいて検出される着火時期τAと、エンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて、加熱吸気量調整弁72を制御することで、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう吸気温度を制御する。
【0279】
次に、図23に示す吸気加熱制御ルーチンについて説明する。
【0280】
この吸気加熱制御ルーチンは、システムイニシャライズ後、所定時間(例えば、16ms)毎に実行され、ステップS101で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照する。
【0281】
そして、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が指示されているときには、そのままルーチンを抜け、吸気加熱を中止する。尚、このとき、上述のように、エンジン運転状態に応じて加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定し、吸気加熱を行うようにしてもよい。
【0282】
一方、上記ステップS101においてFCOMP=1で、点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止され自己着火を行うための圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS112へ進み、ステップS112以降の処理によって、上記着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じたフィードバック制御により加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定して加熱吸気量調整弁72による吸気温度制御を行い、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう制御する。
【0283】
ステップS112では、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて基本目標着火角度テーブルを補間計算付きで参照して、圧縮上死点を基準とする基本目標着火角度ADVτBASEを設定する。
【0284】
そして、ステップS113で、エンジン温度の一例としての冷却水温度TWに基づいて水温補正係数テーブルを補間計算付きで参照し、エンジン温度に応じて上記基本目標着火角度ADVτBASEを補正するための水温補正係数Kτを設定する。
【0285】
次いでステップS114へ進み、上記基本目標着火角度ADVτBASEを上記水温補正係数Kτにより補正して目標着火角度ADVτTGTを設定する(ADVτTGT←ADVτBASE×Kτ)。
【0286】
続くステップS115では、圧縮上死点を基準とした上記目標着火角度ADVτTGTを時間換算してθ2クランクパルス入力を基準とした目標着火時期τTAGTを設定する(τTAGT←(Tθ/θ)×(θ2−ADVτTGT))。
【0287】
そして、ステップS116へ進み、ステップS116以降の処理によって、上述の着火時期検出ルーチンにおいて検出された実際の着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定して、加熱吸気流量(加熱空気供給率)を制御することで、吸気温度制御を行い、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するようフィードバック制御する。
【0288】
ステップS116では、着火時期検出ルーチンによる最新の着火時期τAを読み出して、この着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTに不感帯幅を定める設定値αを加算した目標着火時期上限(τTAGT+α)とを比較する。
【0289】
そして、τA<τTAGT+αで、着火時期τAが目標着火時期上限(τTAGT+α)を下回っているときには、ステップS117へ進み、更に着火時期τAを、上記目標着火時期τTAGTから設定値を減算した目標着火時期下限(τTAGT−α)と比較する。
【0290】
その結果、τA≧τTAGT−αであり、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内にあるときには(τTAGT+α>τA≧τTAGT−α)、そのままルーチンを抜け、現在の加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYをそのまま維持する。
【0291】
また、上記ステップS117においてτA<τTAGT−αであり、不感帯の範囲外で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のときには、ステップS211へ進み、現在のデューティ比DUTYから設定値DDINTを減算して新たなデューティ比DUTYを設定する(DUTY←DUTY−DDINT)。
【0292】
そして、ステップS217へ進み、上記ステップS211による新たなデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0293】
その結果、このデューティ比DUTYによる駆動信号がECU50から加熱吸気量調整弁72に出力され、加熱吸気量調整弁72の弁開度が上記設定値DDINTにより定まる所定量だけ減少し、加熱吸気流量(加熱空気供給率)の減少により吸気温度が低下される。
【0294】
すなわち、自己着火を行う圧縮着火制御時において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側で不感帯を逸脱すると(τA<τTAGT−α)、本ルーチン実行毎に加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定値DDINTづつ減少させ、加熱吸気量調整弁72の弁開度を上記設定値DDINTにより定まる所定量づつ減少し、加熱吸気流量(加熱空気供給率)を減少させる。その結果、この加熱吸気流量の減少によって吸気温度が低下され、この吸気温度の低下に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が低下し、圧縮行程時の筒内温度の低下によって自己着火による着火時期τAが遅角化され、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0295】
そして、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、デューティ比DUTYの減少修正が中止され、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTY、すなわち加熱吸気量調整弁72の弁開度がそのまま維持される。
【0296】
一方、上記ステップS116においてτA≧τTAGT+αであり、不感帯の範囲外で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、ステップS212へ進み、現在のデューティ比DUTYに設定値UDINTを加算して新たなデューティ比DUTYを設定する(DUTY←DUTY+UDINT)。
【0297】
そして、ステップS213へ進み、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて上限値テーブルを補間計算付きで参照して、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを上限規制する上限値DUTYMAXを設定する。
【0298】
上記上限値テーブルは、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpによるエンジン運転領域毎に、デューティ比DUTYの適正上限値DUTYMAXを予めシミュレーション或いは実験等により求め、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0299】
上記上限値テーブルの一例をステップS213中に示す。この上限値テーブルには、基本燃料噴射パルス幅Tpが大きい高負荷領域、及びエンジン回転数NEの低い低回転領域において、小さい値の上限値DUTYMAXがメモリされている。逆に基本燃料噴射パルス幅Tpが小さく且つエンジン回転数NEが高いほど、すなわちエンジン低負荷高回転領域に移行するほど、大きい値の上限値DUTYMAXがメモリされている。
【0300】
すなわち、前述のように、高負荷低回転であるほど、上記基本目標着火角度ADVτBASEを遅角設定して目標着火時期τTAGTを遅角化することで、高負荷低回転時の燃焼期間を適切に保ち熱効率の向上を図っているため、この目標着火時期τTAGTと着火時期τAとの比較に応じて設定されるデューティ比DUTYの上限値DUTYMAXを、これに対応して低下することで、上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0301】
また、低負荷高回転であるほど、基本目標着火角度ADVτBASEを進角設定して目標着火時期τTAGTを進角化することで、燃焼期間を相対的に進角化させ、低負荷高回転時の燃焼の遅れを抑制して熱効率の向上を図っているため、これに対応してデューティ比DUTYの上限値DUTYMAXを上昇させる。
【0302】
これにより、エンジン運転領域毎に相違する目標着火時期τTAGTに対応して、デューティ比DUTYに対し適切な上限値DUTYMAXを設定することが可能となり、各領域において上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0303】
そして、ステップS214へ進み、上記ステップS212で増加修正したデューティ比DUTYと上記ステップS213で設定した上限値DUTYMAXとを比較し、DUTY≦DUTYMAXで、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYが上限値DUTYMAX以下のときには、上記ステップS217へジャンプし、上記ステップS212において増加修正したデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0304】
その結果、このデューティ比DUTYによる駆動信号がECU50から加熱吸気量調整弁72に出力され、加熱吸気量調整弁72の弁開度が上記設定値UDINTにより定まる所定量だけ増加し、加熱吸気流量(加熱空気供給率)の増加により吸気温度が上昇される。
【0305】
すなわち、自己着火を行う圧縮着火制御時において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側で不感帯を逸脱すると(τA≧τTAGT+α)、本ルーチン実行毎に加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定値UDINTづつ漸次的に増加させ、加熱吸気量調整弁72の弁開度が上記設定値UDINTにより定まる所定量づつ増加される。そして、この加熱吸気量調整弁72の弁開度の増加によって加熱吸気流量(加熱空気供給率)が増加し、これにより吸気温度が上昇され、この吸気温度の上昇に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が上昇し、圧縮行程時の筒内温度の上昇によって自己着火による着火時期τAが進角化される。その結果、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0306】
そして、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、デューティ比DUTYの増加修正が中止され、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYすなわち加熱吸気量調整弁72の弁開度がそのまま維持される。
【0307】
以上の吸気温度制御により、エンジン運転条件や大気条件等が変化しても、エンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束するよう着火時期τAが制御され、自己着火時において常に最適な着火時期τAを得ることが可能となり、熱効率の向上により燃費向上、信頼性の向上を図ることができる。
【0308】
また、エンジン運転状態の相違に関わらず最適着火時期を得ることが可能となるため、ノッキング等の異常燃焼を未然に回避することができ、その結果、エンジンに対する悪影響を未然に回避することが可能となり、且つ、エンジン騒音の低減を図ることが可能となる。
【0309】
一方、上記ステップS214において、DUTY>DUTYMAXとなり、デューティ比DUTYの増加修正によっても着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束せず、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティDUTYが、エンジン運転状態に基づいて設定した上限値DUTYMAXを上回ったとき、すなわち、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のために、デューティ比DUTYを逐次増加修正した結果、デューティ比DUTYが上限値DUTYMAXを上回り加熱吸気量調整弁72の弁開度がエンジン運転状態に応じた限界値に達したとき、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因して加熱吸気流量(加熱空気供給率)調整による吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能になった、或いは、自己着火自体が不能になったと判断して、ステップS215へ進む。
【0310】
そして、ステップS215で、圧縮着火制御フラグFCOMPをクリアし(FCOMP←0)、続くステップS216で、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを0%とし(DUTY←0)、ステップS217で、上記ステップS216によるデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0311】
その結果、この圧縮着火制御フラグFCOMPのクリアにより圧縮着火制御から強制点火制御に移行し、上述の点火制御ルーチンにおいて、点火時期TADV、通電開始時期タイミングTDWLの設定、及び各点火タイマセットが行われ、点火プラグ18の火花点火による強制点火が再開されると共に、前述の目標当量比算出ルーチンにおいて、強制点火に適合するリーン減量係数KLEANが設定されることで、混合気空燃比の相対的なリーン化が解除される。
【0312】
これにより、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因して加熱吸気量調整による吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能となった時、或いは、自己着火自体が不能となった時には、自己着火から点火プラグ18の点火による強制点火に確実に移行することが可能となる。その結果、本実施の形態においても、着火時期τAの制御不能状態での自己着火の継続が防止されて、ドライバビリティの悪化を防止することが可能となる。また、自己着火の継続による異常燃焼や失火が防止されることで、排気エミッションの悪化を防止することが可能となり、且つ、エンジン1の耐久信頼性を向上することが可能となる。
【0313】
また、このとき、デューティ比DUTYが0%に設定され、初期状態に復帰される。これに対応して加熱吸気量調整弁72の弁開度が減少して全閉となり、吸気加熱が中止される。
【0314】
尚、本実施の形態では、圧縮着火制御から強制点火制御への移行に伴い、加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを0%とし、加熱吸気制御弁72を全閉として、吸気加熱を中止しているが、強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じて加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを設定して吸気加熱を行う場合は、上記ステップS216において、現在のデューティ比DUTYから設定値を減算して新たなデューティ比DUTYを設定することで、吸気加熱制御量を初期状態に戻す。
【0315】
また、本実施の形態では、圧縮着火制御時における加熱吸気量調整弁72に対する駆動信号のデューティ比DUTYを、着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて積分制御により設定しているが、比例積分制御(PI制御)或いは比例積分微分制御(PID制御)により設定するようにしてもよい。
【0316】
また、加熱吸気量調整弁72は、本実施の形態のデューティソレノイド弁式の加熱吸気量調整弁に限定されず、適宜の形式のものを採用してもよいことは勿論である。
【0317】
更に、本実施の形態においては、熱交換器70をエンジンの排気系に配設して、吸気系を流れる吸気の一部を排気ガスと熱交換し、吸気加熱を行うようにしているが、例えば、熱交換器をエンジン1自体に配設して、吸気の一部をエンジン発生熱と熱交換を行わせて吸気加熱を行わせるようにしてもよい。
【0318】
次に、図26及び図27に基づいて、本発明の実施の第3形態を説明する。
【0319】
本実施の形態は、吸気加熱手段として、図26に示すように、吸気系に周知のPTCヒータ等の電気式のヒータ80を介装する。
【0320】
そして、圧縮着火制御時において、上記着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のとき、ヒータ80の発熱量を減少制御して、吸気温度を低下させることで、エンジン燃焼室17内の混合気温度を低下し、自己着火による着火時期を遅角化させる。また、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、ヒータ80の発熱量を増加制御して、吸気温度を上昇させることで、燃焼室17内の混合気温度を上昇し、自己着火による着火時期を進角化する。
【0321】
尚、上記実施の各形態と同一の構成品については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0322】
先ず、本形態のヒータ80について説明する。
【0323】
上記ヒータ80は、図26に示すように、吸気系としてインテークマニホルド3内の吸気通路に各気筒毎に対応して配設されている。
【0324】
更に、図27に示すように、ECU50のI/Oインターフェイス56の出力ポートに、駆動回路58を介して、ヒータ80に対する電源電圧を可変としヒータ供給電力調整によりヒータ80の発熱量を調整する周知のヒータコントロールモジュール(以下、「HTCM」と略称する)81が接続されており、このHTCM81に上記ヒータ80が接続されている。そして、イグニッションスイッチ62を介してHTCM81にバッテリ61が接続され、電源が与えられる。
【0325】
上記HTCM81は、ECU50から出力されるデューティ信号のデューティ比DUTYに応じてバッテリ61からのバッテリ電圧VBを変圧し、この変圧後の電圧を電源電圧としてヒータ80に与えるものであり、このHTCM81によりヒータ供給電力を調整することで、ヒータ80の発熱量が調整される。
【0326】
尚、本実施の形態においては、上記デューティ比DUTYが0%で、HTCM81からヒータ80に印可される電圧が0Vすなわちヒータ供給電力が0となり、ヒータ発熱が停止される。また、デューティ比DUTYが100%のとき、HTCM81からヒータ80に最大電圧が印可され、ヒータ発熱量が最大となる。
【0327】
そして、ECU50において、デューティ比DUTYが0%〜100%の間で設定され、このデューティ比DUTYによるデューティ信号に応じてHTCM81によりヒータ80への電源電圧すなわちヒータ供給電力が調整されて、ヒータ80の発熱量が調整される。
【0328】
そして、本実施の形態では、上記実施の第2形態の図22の圧縮着火制御条件判別ルーチン、及び図23の吸気加熱制御ルーチンを採用する。但し、一部のステップにおいて、その設定値内容等が異なる。これ以外のステップについては同一であり、その詳細説明は省略する。
【0329】
尚、その他のルーチン(気筒判別/エンジン回転数算出ルーチン、目標当量比算出ルーチン、燃料噴射量設定ルーチン、点火制御ルーチン、θ2クランクパルス割り込みルーチン、TDWL割り込みルーチン、TADV割り込みルーチン、着火時期検出ルーチン)については、上記実施の第1形態のルーチンをそのまま採用し、その説明は省略する。
【0330】
以下、本形態の圧縮着火制御条件判別ルーチン及び吸気加熱制御ルーチンについて、上述の図22及び図23を用い説明する。
【0331】
先ず、図22を用い圧縮着火制御条件判別ルーチンについて説明すると、ステップS11で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、FCOMP=1で、既に自己着火を行う圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS19へジャンプして、ステップS19,S20で、現在のエンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとしてRAM53の所定アドレスにストアして、そのままルーチンを抜ける。
【0332】
一方、FCOMP=0で、現在、強制点火制御が選択され、点火プラグ18の放電による強制点火が行われているとき、ステップS12へ進み、ステップS12〜S15,S22で、圧縮着火制御への移行条件が成立しているか否かを判断する。
【0333】
そして、ステップS12,S13で、|NE−NEOLD|>NES或いは|Q−QOLD|>QSのエンジン過渡運転状態時には、該当するステップからステップS18へジャンプして、条件継続時間カウント値CNをクリアし、続くステップS19,S20で、それぞれエンジン回転数NE,吸入空気量Qを前回の値NEOLD,QOLDとして、ルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0334】
また、上記ステップS12,S13において|NE−NEOLD|≦NES且つ|Q−QOLD|≦QSのエンジン定常運転状態時には、ステップS14へ進み、エンジン温度の一例としての冷却水温センサ36によるエンジン冷却水温度TWを読み出し、この冷却水温度TWを設定値TWSと比較することで、エンジン暖機完了状態か否かを判断する。
【0335】
そして、TW<TWSでエンジン1の暖機未完了時には、上記ステップS18へジャンプして、ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、また、TW≧TWSの暖機完了時には、ステップS15へ進む。
【0336】
ステップS15では、前述の図6の点火制御ルーチン、図10の着火時期検出ルーチンによる点火時期TADV、着火時期τAをそれぞれ読み出して、着火時期τAから点火時期TADVを減算し、この減算値を設定値TSETと比較することで、適正時期で自己着火が可能か否かを判断する。そして、τA−TADV>TSETで、点火時期TADVと着火時期τAとの時間間隔が設定値TSETにより定まる所定時間を上回るときには、自己着火不能ないし自己着火に移行させたとしても適正着火時期での自己着火が不能と判断して、上記ステップS18〜S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0337】
一方、上記ステップS15においてτA−TADV≦TSETで、点火時期TADVと着火時期τAとの時間間隔が上記設定値TSETによる所定値以内の時間に短縮されたとき、適正着火時期で自己着火が可能であると判断して、ステップS21へ進み、上記ステップS12〜S15の全ての条件による圧縮着火制御への切換条件成立の継続時間を計時する条件継続時間カウント値CNをカウントアップし、ステップS22で、上記条件継続時間カウント値CNを設定値CSETと比較する。
【0338】
そして、CN<CSETのときには、未だ圧縮着火制御への切換条件が非成立であると判断して、上記ステップS19へ進み、ステップS19,S20を経てルーチンを抜け、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を継続する。
【0339】
また、上記ステップS22においてCN≧CSETで、上記ステップS12〜S15による全ての条件成立の継続時間が、本ルーチンの実行周期と上記設定値CSETとにより定まる所定期間に達したとき、ステップS23へ進み、上記圧縮着火制御フラグFCOMPをセットすることで(FCOMP←1)、点火プラグ18の火花点火による強制点火制御を中止して自己着火を行わせる圧縮着火制御を選択する。
【0340】
そして、ステップS24で、上記条件継続時間カウント値CNをクリアして、続くステップS201で、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを初期値DINIにより初期設定し(DUTY←DINI)、ルーチンを抜ける。
【0341】
そして、上記圧縮着火制御フラグFCOMPが、前述の図4の目標当量比算出ルーチン、図6の点火制御ルーチン、図7のθ2クランクパルス割り込みルーチン、及び、後述する図23の吸気加熱制御ルーチンにおいて参照され、FCOMP=0の強制点火制御時には、エンジン運転状態に応じて点火時期TADVを設定し、点火プラグ18の火花点火による強制点火を行い、エンジン運転状態に応じて所定空燃比による燃料噴射制御を行うと共に、このときには、吸気加熱を中止する。尚、ここで、強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定し、ヒータ発熱量を制御して吸気加熱を行うようにしてもよい。
【0342】
また、FCOMP=1の圧縮着火制御時には、空燃比が強制点火制御時に対して相対的にリーン化されると共に、点火時期TADVの設定が中止されて点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止される。また、圧縮着火制御への移行時に、上記ステップS201で、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYが初期値DINIによる所定量増加され、これに対応してHTCM81からヒータ80への電源電圧すなわちヒータ供給電力が所定量増加し、ヒータ80の発熱が開始、或いはヒータ発熱量が増加されることで、ヒータ80による吸気加熱が開始、或いはヒータ80による吸気加熱量が増加して、吸気温度が上昇する。そして、この吸気温度の上昇により、燃焼室17内の混合気の温度が直ちに上昇され、点火プラグ18の火花点火による強制点火から自己着火に移行される。
【0343】
そして、圧縮着火制御への移行後は、イオン電流に基づいて検出される着火時期τAと、エンジン運転状態に基づいて設定した目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定して、HTCM81によりヒータ80への電源電圧を調整し、ヒータ80の発熱量を制御することで、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう吸気温度を制御する。
【0344】
次に、図23に基づき吸気加熱制御ルーチンについて説明すると、ステップS101で、圧縮着火制御フラグFCOMPを参照し、FCOMP=0で強制点火制御が指示されているときには、そのままルーチンを抜け、吸気加熱を中止する。尚、上述のように本実施の形態においては、強制点火制御時には、ヒータ80による吸気加熱を中止しているが、強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定し、ヒータ発熱量を制御して吸気加熱を行うようにしてもよい。
【0345】
一方、上記ステップS101においてFCOMP=1で、点火プラグ18の火花点火による強制点火が中止され自己着火を行うための圧縮着火制御が指示されているときには、ステップS112へ進み、ステップS112以降の処理によって、上記着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じたフィードバック制御によりHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定してヒータ80による吸気温度制御を行い、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するよう制御する。
【0346】
ステップS112では、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいてテーブル参照により、圧縮上死点を基準とする基本目標着火角度ADVτBASEを設定し、続くステップS113で、冷却水温度TWに基づいてテーブル参照により水温補正係数Kτを設定する。
【0347】
次いでステップS114へ進み、上記基本目標着火角度ADVτBASEを上記水温補正係数Kτにより補正して目標着火角度ADVτTGTを設定し(ADVτTGT←ADVτBASE×Kτ)、ステップS115で、圧縮上死点を基準とした上記目標着火角度ADVτTGTを時間換算してθ2クランクパルス入力を基準とした目標着火時期τTAGTを設定する(τTAGT←(Tθ/θ)×(θ2−ADVτTGT))。
【0348】
そして、ステップS116へ進み、ステップS116以降の処理によって、上述の着火時期検出ルーチンにおいて検出された実際の着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じてHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定し、ヒータ80の発熱量を制御することによって吸気温度制御を行い、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束するようフィードバック制御する。
【0349】
ステップS116では、着火時期検出ルーチンによる最新の着火時期τAを読み出して、この着火時期τAと上記目標着火時期τTAGTに不感帯幅を定める設定値αを加算した目標着火時期上限(τTAGT+α)とを比較する。
【0350】
そして、τA<τTAGT+αのときには、ステップS117へ進み、更に着火時期τAを、上記目標着火時期τTAGTから設定値を減算した目標着火時期下限(τTAGT−α)と比較する。
【0351】
その結果、τA≧τTAGT−αであり、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内にあるときには(τTAGT+α>τA≧τTAGT−α)、そのままルーチンを抜け、現在のHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYすなわちヒータ80による吸気加熱量をそのまま維持する。
【0352】
また、上記ステップS117においてτA<τTAGT−αであり、不感帯の範囲外で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側のときには、ステップS211へ進み、現在のデューティ比DUTYから設定値DDINTを減算して新たなデューティ比DUTYを設定する(DUTY←DUTY−DDINT)。
【0353】
そして、ステップS217へ進み、上記ステップS211による新たなデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0354】
その結果、このデューティ比DUTYによるデューティ信号がECU50からHTCM81に出力され、HTCM81によるヒータ80への電源電圧すなわちヒータ供給電力が上記設定値DDINTにより定まる所定量だけ減少し、ヒータ80の発熱量の減少によってヒータ80による吸気加熱量が減少して、吸気温度が低下される。
【0355】
すなわち、自己着火を行う圧縮着火制御時において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも進角側で不感帯を逸脱すると(τA<τTAGT−α)、本ルーチン実行毎にHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定値DDINTづつ減少させ、ヒータ供給電力すなわちヒータ80の発熱量を漸次的に減少させる。そして、このヒータ発熱量の減少によってヒータ80による吸気加熱量が減少して吸気温度が低下され、この吸気温度の低下に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が低下し、圧縮行程時の筒内温度の低下によって自己着火による着火時期τAが遅角化され、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0356】
そして、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、デューティ比DUTYの減少修正が中止され、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTY、すなわちヒータ80による吸気加熱量がそのまま維持される。
【0357】
一方、上記ステップS116においてτA≧τTAGT+αであり、不感帯の範囲外で、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のときには、ステップS212へ進み、現在のデューティ比DUTYに設定値UDINTを加算して新たなデューティ比DUTYを設定する(DUTY←DUTY+UDINT)。
【0358】
そして、ステップS213へ進み、エンジン回転数NEとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとに基づいて上限値テーブルを補間計算付きで参照して、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを上限規制する上限値DUTYMAXを設定する。
【0359】
上記上限値テーブルは、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射パルス幅Tpによるエンジン運転領域毎に、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYの適正上限値DUTYMAXを予めシミュレーション或いは実験等により求め、ROM52の一連のアドレスにメモリされているものである。
【0360】
上記ステップS213中に示すように、上記実施の第2形態と同様、この上限値テーブルには、基本燃料噴射パルス幅Tpが大きい高負荷領域、及びエンジン回転数NEの低い低回転領域において、小さい値の上限値DUTYMAXがメモリされている。逆に基本燃料噴射パルス幅Tpが小さく且つエンジン回転数NEが高いほど、すなわちエンジン低負荷高回転領域に移行するほど、大きい値の上限値DUTYMAXがメモリされている。
【0361】
すなわち、前述のように、高負荷低回転であるほど、上記基本目標着火角度ADVτBASEを遅角設定して目標着火時期τTAGTを遅角化することで、高負荷低回転時の燃焼期間を適切に保ち熱効率の向上を図っているため、この目標着火時期τTAGTと着火時期τAとの比較に応じて設定されるHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYの上限値DUTYMAXを、これに対応して低下することで、上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0362】
また、低負荷高回転であるほど、基本目標着火角度ADVτBASEを進角設定して目標着火時期τTAGTを進角化することで、燃焼期間を相対的に進角化させ、低負荷高回転時の燃焼の遅れを抑制して熱効率の向上を図っているため、これに対応してデューティ比DUTYの上限値DUTYMAXを上昇させる。
【0363】
これにより、エンジン運転領域毎に相違する目標着火時期τTAGTに対応して、デューティ比DUTYに対し適切な上限値DUTYMAXを設定することが可能となり、各領域において上限許容限界を適切に設定することが可能となる。
【0364】
そして、ステップS214へ進み、上記ステップS212で増加修正したデューティ比DUTYと上記ステップS213で設定した上限値DUTYMAXとを比較し、DUTY≦DUTYMAXで、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYが上限値DUTYMAX以下のときには、上記ステップS217へジャンプし、上記ステップS212において増加修正したデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0365】
その結果、このデューティ比DUTYによるデューティ信号がECU50からHTCM81に出力され、HTCM81によるヒータ80への電源電圧すなわちヒータ供給電力が上記設定値UDINTにより定まる所定量だけ増加し、ヒータ80の発熱量の増加によってヒータ80による吸気加熱量が増加して、吸気温度が上昇される。
【0366】
すなわち、自己着火を行う圧縮着火制御時において、着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側で不感帯を逸脱すると(τA≧τTAGT+α)、本ルーチン実行毎にHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定値UDINTづつ増加させ、ヒータ供給電力すなわちヒータ80の発熱量を漸次的に増加させる。そして、このヒータ発熱量の増加によってヒータ80による吸気加熱量が増加して吸気温度が上昇され、この吸気温度の上昇に伴い燃焼室17内に供給される混合気の温度が上昇し、圧縮行程時の筒内温度の上昇によって自己着火による着火時期τAが進角化され、自己着火による着火時期τAがエンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束される。
【0367】
そして、着火時期τAが目標着火時期τTAGTに対する不感帯の範囲内に収束したとき、デューティ比DUTYの増加修正が中止され、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTY、すなわちヒータ80による吸気加熱量がそのまま維持される。
【0368】
従って、以上の吸気温度制御により、エンジン運転条件や大気条件等が変化しても、エンジン運転状態に適合する目標着火時期τTAGTに収束するよう着火時期τAが制御され、自己着火時において常に最適な着火時期τAを得ることが可能となり、熱効率の向上により燃費向上、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0369】
また、本実施の形態においても、エンジン運転状態の相違に関わらず最適着火時期を得ることが可能となるため、ノッキング等の異常燃焼を未然に回避することができ、その結果、エンジンに対する悪影響を未然に回避することが可能となり、且つ、エンジン騒音の低減を図ることが可能となる。
【0370】
一方、上記ステップS214において、DUTY>DUTYMAXとなり、デューティ比DUTYの増加修正によっても着火時期τAが目標着火時期τTAGTに収束せず、HTCM81に対するデューティ信号のデューティDUTYが、エンジン運転状態に基づいて設定した上限値DUTYMAXを上回ったとき、すなわち、自己着火による着火時期τAが目標着火時期τTAGTよりも遅角側のために、デューティ比DUTYを逐次増加修正した結果、デューティ比DUTYが上限値DUTYMAXを上回りヒータ80の発熱量がエンジン運転状態に応じた限界値に達したとき、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因してヒータ供給電力(ヒータ発熱量)調整による吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能になった、或いは、自己着火自体が不能になったと判断して、ステップS215へ進む。
【0371】
そして、ステップS215で、圧縮着火制御フラグFCOMPをクリアし(FCOMP←0)、続くステップS216で、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを0%とし(DUTY←0)、ステップS217で、上記ステップS216によるデューティ比DUTYをセットして、ルーチンを抜ける。
【0372】
その結果、圧縮着火制御フラグFCOMPのクリアにより圧縮着火制御から強制点火制御に移行し、前述の点火制御ルーチンにおいて、点火時期TADV、通電開始時期タイミングTDWLの設定、及び各点火タイマのセットが行われ、点火プラグ18の火花点火による強制点火が再開されると共に、前述の目標当量比算出ルーチンにおいて、強制点火に適合するリーン減量係数KLEANが設定されることで、混合気空燃比の相対的なリーン化が解除される。
【0373】
これにより、エンジン過渡運転への移行、或いはシステム異常等に起因してヒータ発熱量調整による吸気温度制御が不能となり自己着火による着火時期τAを制御することが不能となった時、或いは、自己着火自体が不能になった時には、自己着火から点火プラグ18の点火による強制点火に確実に移行することが可能となる。その結果、本実施の形態においても、自己着火による着火時期τAの制御不能状態での自己着火の継続が防止され、ドライバビリティの悪化を防止することが可能となる。また、自己着火の継続による異常燃焼や失火が防止されることで、排気エミッションの悪化を防止することが可能となり、且つ、エンジン1の耐久信頼性を向上することが可能となる。
【0374】
また、このとき、デューティ比DUTYが0%に設定され、初期状態に復帰される。これに対応してヒータ80の発熱量が減少して、吸気加熱が中止される。
【0375】
尚、本実施の形態では、圧縮着火制御から強制点火制御への移行に伴い、HTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを0%とし、ヒータ80による吸気加熱を中止しているが、強制点火制御時においても、エンジン運転状態に応じてHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを設定して吸気加熱を行う場合は、上記ステップS216において、現在のデューティ比DUTYから設定値を減算して新たなデューティ比DUTYを設定することで、ヒータ80による吸気加熱制御量を初期状態に戻す。
【0376】
また、本実施の形態では、圧縮着火制御時におけるHTCM81に対するデューティ信号のデューティ比DUTYを、着火時期τAと目標着火時期τTAGTとの比較結果に応じて積分制御により設定しているが、比例積分制御(PI制御)或いは比例積分微分制御(PID制御)により設定するようにしてもよい。
【0377】
更に、上記ヒータ80は、本形態のHTCM81によりヒータ発熱量を制御するものに限定されず、ヒータ発熱量が可変制御されるものであればよく、適宜のものを採用してもよいことは勿論である。
【0378】
尚、上記実施の各形態においては、強制点火制御時の点火時期制御、並びに着火時期検出を、いわゆる時間制御方式により行っているが、本発明はこれに限定されず、角度制御方式を採用してもよいことは勿論である。
【0379】
また、実施の各形態においては、特定気筒にのみイオン電流検出回路45を配設し、この特定気筒の着火時期を検出しているが、コストアップを生じるものの全気筒に対してそれぞれイオン電流検出回路を配設し、各気筒について着火時期を検出して、この着火時期により吸気温度を制御するようにしてもよい。
【0380】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、点火プラグの点火により強制点火を行う点火時期をエンジン運転状態に基づいて設定すると共に、燃焼室内の混合気が着火し燃焼ガスのイオンの存在により該イオンを介して流れるイオン電流に基づいて着火時期を検出する。そして、上記点火時期と着火時期との差を所定値と比較し、差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、点火プラグによる強制点火を中止して自己着火に移行させるので、点火プラグによる強制点火から自己着火への移行条件として、このときのエンジン燃焼状態を判断することが可能となり、自己着火への移行条件を適切に判断することができる。
【0381】
従って、適正時期で自己着火が可能な状態下において、的確に自己着火に移行させることができる。
【0382】
請求項2記載の発明によれば、圧縮着火制御への移行条件の成立時、自己着火へ移行するに際して、混合気空燃比をリーン化するので、上記請求項1記載の発明の効果に加え、空燃比のリーン化によって、燃費の大幅な向上と、CO、NOx等の有害な排気ガス成分の低減を図ることができる効果を有する。
【0383】
請求項3記載の発明によれば、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際して、更に、エンジン回転数及びエンジン負荷を判断する。そして、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件の成立と判断し、自己着火に移行させるので、上記請求項1或いは請求項2記載の発明の効果に加え、エンジン過渡運転状態時において点火時期とイオン電流に基づき検出される着火時期との差が変化することによる圧縮着火制御への移行条件の誤判定を未然に防止することができ、自己着火への移行条件を更に的確に判断することができる効果を有する。
【0384】
請求項4記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際し、更に、エンジン温度を判断する。そして、エンジン温度が所定値以上のエンジン暖機完了状態であり、且つ、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件の成立と判断し、自己着火に移行させるので、上記請求項3記載の発明の効果に加え、圧縮着火制御への移行条件の誤判定を防止して、且つ、自己着火への移行後、直ちに、適正時期で自己着火を行うことができ、エンジンの着火ミス(失火)を生じることなく、また、自己着火における着火時期の不適合による異常燃焼を防止することができる。従って、異常燃焼に起因するエンジンに対する悪影響等の弊害を防止して、エンジンの耐久信頼性を向上することができる。また、自己着火への移行時における失火や着火時期不適合による異常燃焼が防止されるので、排気エミッションの改善を図ることができる。
【0385】
請求項5記載の発明では、圧縮着火制御への移行条件を判別するに際して、上記圧縮着火制御への移行条件成立の継続時間が所定期間に達したとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断し、自己着火に移行させるので、上記請求項1ないし請求項4記載の発明の効果に加え、確実に圧縮着火制御への移行条件が成立したときに、自己着火に移行させることができ、制御信頼性を向上することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成図
【図2】本発明の実施の第1形態に係り、気筒判別/エンジン回転数算出ルーチンのフローチャート
【図3】同上、圧縮着火制御条件判別ルーチンのフローチャート
【図4】同上、目標当量比算出ルーチンのフローチャート
【図5】同上、燃料噴射量設定ルーチンのフローチャート
【図6】同上、点火制御ルーチンのフローチャート
【図7】同上、θ2クランクパルス割り込みルーチンのフローチャート
【図8】同上、TDWL割り込みルーチンのフローチャート
【図9】同上、TADV割り込みルーチンのフローチャート
【図10】同上、着火時期検出ルーチンのフローチャート
【図11】同上、EGR制御ルーチンのフローチャート
【図12】同上、EGR制御ルーチンのフローチャート(続き)
【図13】同上、クランクパルス、カムパルス、点火タイミング、及び燃料噴射タイミングの関係を示すタイムチャート
【図14】同上、クランクパルスとイオン電流との関係を示すタイムチャート
【図15】同上、リニアO2センサ出力電圧と排気当量比との関係を示す説明図
【図16】同上、着火時期と目標着火時期、及びEGR弁に対する制御量の関係を示すタイムチャート
【図17】同上、エンジンの全体概略図
【図18】同上、クランクロータとクランク角センサの正面図
【図19】同上、カムロータとカム角センサの正面図
【図20】同上、イオン電流検出回路の説明図
【図21】同上、電子制御系の回路構成図
【図22】本発明の実施の第2形態に係り、圧縮着火制御条件判別ルーチンのフローチャート
【図23】同上、吸気加熱制御ルーチンのフローチャート
【図24】同上、エンジンの全体概略図
【図25】同上、電子制御系の回路構成図
【図26】本発明の実施の第3形態に係り、エンジンの全体概略図
【図27】同上、電子制御系の回路構成図
【符号の説明】
1 圧縮着火エンジン
17 燃焼室
18 点火プラグ
32 吸入空気量センサ
36 冷却水温センサ
41 クランク角センサ
45 イオン電流検出回路
45a 電圧センサ
50 電子制御装置(点火時期設定手段、着火時期検出手段、圧縮着火制御移行条件判別手段、圧縮着火制御移行手段)
NE エンジン回転数(エンジン運転状態)
Q 吸入空気量(エンジン負荷;エンジン運転状態)
Tp 基本燃料噴射パルス幅(エンジン負荷;エンジン運転状態)
TADV 点火時期
τA 着火時期
TSET 設定値(所定値)
TW 冷却水温度(エンジン温度)
TWS 設定値(所定値)
Claims (5)
- 所定運転領域の下で、点火プラグの放電による火花点火によらず圧縮行程終期ないし上死点付近で自己着火を行う圧縮着火エンジンの制御装置において、
点火プラグの点火により強制点火を行う点火時期をエンジン運転状態に基づいて設定する点火時期設定手段と、
燃焼室内の混合気が着火し燃焼ガスのイオンの存在により該イオンを介して流れるイオン電流に基づいて着火時期を検出する着火時期検出手段と、
上記点火時期と着火時期との差を所定値と比較し、差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断する圧縮着火制御移行条件判別手段と、
圧縮着火制御への移行条件成立時、点火プラグの点火による強制点火を中止して自己着火に移行させる圧縮着火制御移行手段とを備えたことを特徴とする圧縮着火エンジンの制御装置。 - 上記圧縮着火制御移行手段は、圧縮着火制御への移行条件の成立時、点火プラグの点火による強制点火を中止して自己着火に移行させ、混合気の空燃比をリーン化することを特徴とする請求項1記載の圧縮着火エンジンの制御装置。
- 上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、更に、エンジン回転数及びエンジン負荷を判断し、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする請求項1或いは請求項2記載の圧縮着火エンジンの制御装置。
- 上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、更に、エンジン温度を判断し、エンジン温度が所定値以上のエンジン暖機完了状態であり、且つ、エンジン回転数及びエンジン負荷によるエンジン運転領域が略同一領域にあるエンジン定常運転状態で、且つ、上記点火時期と着火時期との差が所定値以下となったとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする請求項3記載の圧縮着火エンジンの制御装置。
- 上記圧縮着火制御移行条件判別手段は、上記圧縮着火制御への移行条件成立の継続時間が所定期間に達したとき、自己着火を行わせる圧縮着火制御への移行条件が成立したと判断することを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の圧縮着火エンジンの制御装置。
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