JP3866045B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的に情報の記録、再生が行われる追記型光情報記録媒体に関するものであり、特に有機色素を記録材料に用いたものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光情報記録媒体に対して記録、再生を行うレーザー光としては、赤〜赤外領域のものが用いられ、これに対応した記録媒体が広く普及している。例えば、追記型の光情報記録媒体のようなユーザーによる書き込みが可能であるディスク状光情報記録媒体(CD−R、DVD−R)もその一例である。この追記型光情報記録媒体は、基板上に例えば有機色素等よりなる記録層が形成された構成であり、通常、ヒートモードで記録が行われる。すなわち、記録層にレーザ光を照射すると、有機色素の光吸収によって光のエネルギーが熱に変換され、この発生した熱によってピットが形成される。そして、このピットは、レーザ光を照射したときの、当該ピットが形成された部分と形成されていない部分との位相変化に基づく反射率の差によって検出される。
【0003】
従来のレ−ザ波長で記録再生し、記録密度を増加させるためには、いわゆる超解像の様な工夫が必要である。しかし近年青色光領域の半導体レ−ザの実用化が実現可能となりつつあり、超解像等の工夫なしで記録情報量を増加させることが可能となりつつある。青色光領域対応の半導体レ−ザの発振波長は400〜500nmとなる見込みであり、記録材料もこれに合わせて短波長化する必要がある。通常、最大吸収波長が350〜450nm程度にある有機材料は、一般に分子骨格が小さいため、分子吸光係数も低く、10万を越える材料はほとんどない。また、一般に溶解性も十分なものが少ない。
【0004】
しかし、この課題を解決し得る材料の1つとして、ポルフィリン誘導体がある。ポルフィリン誘導体は、中心金属に原子団が配位した構造の金属錯体であり、最低38個のπ電子を含む(このπ電子の数は置換基によって増加する)。このポルフィリン誘導体では、分子吸光スペクトルにおいて、その16員環(18個π電子系)に由来した,ソーレー帯(S帯)と称される吸収帯を短波長側に有している。このソーレー帯は、10万以上の非常に大きな分子吸光係数を有しており、この大きな吸収帯を利用することで青色光領域での高感度な光記録が可能である。
【0005】
ポルフィリン誘導体を用いた短波長記録媒体としては、特開平7−304256号公報に「ポルフィリン誘導体と配位能を持つ分子構造を側鎖に有する高分子よりなる光情報記録媒体」が、また特開平7−304257号公報には「ポルフィリン誘導体と配位能を持つ分子化合物及び高分子よりなる光情報記録媒体」が記載されており、いずれも短波長領域での波長整合性を目的としたものであるが、その記録波長は480〜490nmであり、今後実用化されると考えられる400〜500nm、とりわけ400〜450nmの記録再生波長には全く適合できない。
【0006】
これらの公開公報では、ポルフィリン誘導体の中心金属に配位能を有する分子化合物、または配位能を持つ分子構造を側鎖に有する高分子を配位させ、これによって分子吸光係数を増加させるとともに、ソーレー帯の吸収波長を長波長側にシフトさせることに主眼がおかれている。またこれらの公開公報においては、基本的にポルフィリン誘導体として、テトラフェニルテトラベンズポルフィリンが用いられている。テトラフェニルテトラベンズポルフィリンは吸収波長が470nm近傍にあるため、400〜450nmに発振波長を持つ半導体レ−ザで記録再生できない。そのため実施例に記載の記録はArレーザ(波長は488nm)により行われている。
【0007】
青色光領域の半導体レ−ザで記録再生可能な材料としてポルフィリン誘導体が有望であるが、多くのポルフィリン誘導体は450nm以下の短波長には対応できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、青色光領域において高感度な光記録が可能であり、記録再生波長400〜500nm、とりわけ400〜450nmに対応可能な追記型光情報記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の光情報記録媒体は、特定の置換基を有するケイ素を中心に持つテトラアザポルフィリン化合物からなる記録層を設けたことを特徴とする光情報記録媒体であり、具体的には透明基板上に光学的に情報の記録及び再生が可能な記録層が形成され、上記記録層は、一般式(2)〜(3)で示されるテトラアザポルフィリン異性体よりなることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
[1] 記録光が照射されることにより反射率変化を生じて情報を記録する記録層を有する光記録媒体であって、前記記録層が下記一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を含むことを特徴とする光記録媒体。
【0011】
【化5】
(式中、X1〜X8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリ−ル基、置換もしくは未置換のアミノ基、および置換もしくは未置換のアシル基のいずれかを表し、R 2 〜R 4 はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルアルコキシ基、および置換もしくは未置換のアリ−ル基のいずれかを表し、Yは置換もしくは未置換のアルキル基、又は置換もしくは未置換のアリール基を表す。)
【0014】
[2] 前記X1〜X8が水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、および置換もしくは未置換のアリール基のいずれかであることを特徴とする[1]記載の光記録媒体。
【0015】
[3] 前記テトラアザポルフィリン化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする[1]又は [ 2 ]に記載の光記録媒体。
【0016】
【化7】
(式中、R2〜R4及びYは前記定義と同一である。)
【0017】
一般式(3)は下記一般式(3a)〜(3d)に記すようなt−ブチル基の置換位置による4つの異性体を含む。またさらに一般式(3a)(3c)における−OSiR2R3R4と−Yの置換位置による光学異性体を含む。
【0018】
【化8】
【0019】
[4] 記録波長を400nm以上500nm以下としたことを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の光記録媒体。
【0020】
[5] 前記記録層の一方に透明基板が隣接して形成され、該記録層の他方に反射層が隣接して形成されたことを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の光記録媒体。
【0021】
[6] 前記反射層が、金属層であることを特徴とする[5]記載の光記録媒体。
【0022】
[7] 前記金属層が銀、アルミニウム、銀を主とした合金、およびアルミニウムを主とした合金のいずれかであることを特徴とする[6]記載の光記録媒体。
【0023】
[8] 前記反射層の外方側に隣接して更に保護層が形成されたことを特徴とする[5]から[7]のいずれかに記載の光記録媒体。
【0024】
[9] 前記記録層が、スピンコート層、真空蒸着層またはスパッタ層であることを特徴とする[1]から[8]のいずれかに記載の光記録媒体。
【0025】
本発明が適用される光情報記録媒体は、例えば図1に示した様な構造を有するものである。すなわち、基板1上に記録層2及び反射層3を順次成膜し、さらにその上に保護層4を形成してなるものである。この光情報記録媒体では、記録層2にレーザ光を照射することによって発生する熱によってピットを形成する、ヒートモード方式によって記録が行われる。
【0026】
本発明は、鋭意検討の結果、本発明のテトラアザポルフィリン化合物が400〜500nmとりわけ400〜450nmという短波長領域で記録再生可能であり、かつ有機溶剤への溶解性を十分有することを見出したものである。
【0027】
すなわち、本発明の一般式(2)〜(3)のテトラアザポルフィリン化合物は、充分な溶解性と安定性を有し、またより短波長にも対応できる材料であることを見出したものである。
【0028】
有機材料を用いた光情報記録媒体の場合、有機材料の溶液、あるいは薄膜スペクトルにおける最大吸収波長と記録再生波長は一致せず、記録再生波長は最大吸収波長に対して長波長側へずらす必要がある。
【0029】
この記録材料の最大吸収波長と記録再生波長のずれは、1つの吸収スペクトルが単独で存在する場合、屈折率が最大となる波長は、最大吸収波長から長波長側にずれることと、最大吸収波長では高反射率化が達成不可能であるためである(すなわち最大吸収波長近傍では複素屈折率の実部nが小さく、複素屈折率の虚部kが非常に大きい)。
【0030】
この最大屈折率波長近傍に記録再生波長を適合させる理由は、記録が基本的には記録材料の記録前後での屈折率変化によって行われているため、未記録時の色素の屈折率が一番高い波長領域を使うことが好ましいことと、また最大屈折率波長近傍は、吸収スペクトルのすそに位置することになり、追記型光情報記録媒体の場合、高反射率化、すなわちROMとの互換性という大きな特徴をだせることにある(吸収スペクトルの長波長側のすそを用いることで、複素屈折率の実部nが大きく、複素屈折率の虚部kが小さいという条件が達成できるため、高変調度と高反射率が両立できる)。
【0031】
この最大吸収波長と最大屈折率波長のずれ量は、吸収帯の幅や吸収係数の大小で変化するが、おおむね10〜40nm程度である。したがって、400〜500nmのレ−ザ波長に適合させるためには、記録材料の溶液、あるいは膜での吸収スペクトルの最大吸収波長が370〜470nm程度の範囲にあることが好ましい。
【0032】
また短波長域に吸収をもつ化合物は数多く存在するが、通常は共役系が非常に短いため、一般的に分子吸光係数が低い(すなわち複素屈折率の実部nが小さい)。これらの低分子吸光係数の有機材料を用いた場合、有機材料を用いた光情報記録媒体としての最大の特徴である高反射率が損なわれ、すなわちROMディスクとの互換性が保たれなくなり、その価値が半減することになってしまう。
【0033】
これまで知られている通常のテトラアザポルフィリン化合物(例:下記化学式(4))は、一般にソーレ帯(350〜450nm)の吸収がQ帯(550〜650nm)の吸収よりも小さく、ソーレ帯(350〜450nm)の吸光係数が60,000前後であり、400〜450nmのレーザ波長記録には十分なものではなかった。
【0034】
【化9】
【0035】
ところが本発明の中心に特定の置換基を有するケイ素を持つテトラアザポルフィリン化合物(例:下記化学式(5))は、この波長域(350〜450nm)の分子吸光係数が100,000を越え、400〜450nmのレ−ザ波長記録に適することが鋭意検討の結果見出された。
【0036】
【化10】
【0037】
図2にテトラアザポリフィリン化合物(4)のUVスペクトルを、図3にテトラアザポリフェリン化合物(5)のUVスペクトルを、表1にテトラアザポリフィリン化合物(4)および(5)の吸収波長と分子吸光係数を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
また、本発明のテトラアザポルフィリン化合物は光ディスクで通常用いることのできる有機溶剤への溶解性も十分有しており、またスピンコ−ト等で基板上に成膜した場合に結晶化を起こさないとう特徴をも有することがわかった。したがって高反射率の光情報記録媒体が容易に得ることが可能で、ROMディスクとの互換性がとれ、400〜500nmの短波長に対応した追記型高密度光情報記録媒体が得られるという大きなメリットがある。
【0040】
次に一般式(2)〜(3)の置換基について説明する。
未置換のアルキル基、および未置換のアルコキシ基中のアルキル基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基があげられ、置換アルキル基、および置換アルコキシ基中の置換アルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ置換アルキル基;カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基等のカルボキシ置換アルキル基;2−シアノエチル基、シアノメチル基などのシアノ置換アルキル基;2−アミノエチル基などのアミノ置換アルキル基;2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2−クロロプロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などのハロゲン原子置換アルキル基;ベンジル基、p−クロロベンジル基、2−フェニルエチル基などのフェニル置換アルキル基;2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−(n)プロポキシエチル基、2−(iso)プロポキシエチル基、2−(n)ブトキシエチル基、2−(iso)ブトキシエチル基、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基、2−メトキシプロピル基等のアルコキシ置換アルキル基;2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2−(n)プロポキシエトキシ)エチル基、2−(2−(iso)プロポキシエトキシ)エチル基、2−(2−(n)ブトキシエトキシ)エチル基、2−(2−(iso)ブトキシエトキシ)エチル基、2−{2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ}エチル基等のアルコキシアルコキシ置換アルキル基;アリルオキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−ベンジルオキシエチル基等の置換アルキル基;2−アセチルオキシエチル基、2−プロピオニルオキシエチル基、2−(n)ブチリルオキシエチル基、2−(iso)ブチリルオキシエチル基、2−トリフルオロアセチルオキシエチル基等のアシルオキシ置換アルキル基;メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、(n)プロポキシカルボニルメチル基、(iso)プロポキシカルボニルメチル基、(n)ブトキシカルボニルメチル基、(iso)ブトキシカルボニルメチル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、フルフリルオキシカルボニルメチル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルメチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、2−(n)プロポキシカルボニルエチル基、2−(iso)プロポキシカルボニルエチル基、2−(n)ブトキシカルボニルエチル基、2−(iso)ブトキシカルボニルエチル基、2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基、2−ベンジルオキシカルボニルエチル基、2−フルフリルオキシカルボニルエチル基等の置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル置換アルキル基;2−メトキシカルボニルオキシエチル基、2−エトキシカルボニルオキシエチル基、2−(n)プロポキシカルボニルオキシエチル基、2−(iso)プロポキシカルボニルオキシエチル基、2−(n)ブトキシカルボニルオキシエチル基、2−(iso)ブトキシカルボニルオキシエチル基、2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル基、2−ベンジルオキシカルボニルオキシエチル基、2−フルフリルオキシカルボニルオキシエチル基等の置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ置換アルキル基;フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基等のヘテロ環置換アルキル基等があげられる。また、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等があげられる。
【0041】
アルキル基およびアルコキシ基中のアルキル基の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。なお、これらのアルキル基は、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、n−オクチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の一級アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルぺンチル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−イソブチル−3−メチルブチル基等の二級アルキル基;tert−ブチル基、tert−ヘキシル基、tert−アミル基、tert−オクチル基等の三級アルキル基;シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンタン基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0042】
またアリール基としてはフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ(tert−ブチル)フェニル基、ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、ブトキシフェニル基などが挙げられ、またこれらのアリール基はハロゲン等の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
アシル基の具体例としては、アシル基のカルボニル炭素原子に直接置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アルキル基、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0044】
アミノ基の具体例としては、窒素原子に直接置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アルキル基、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0046】
本発明のテトラアザポルフィリン化合物の合成方法は例えばJ.Am.Chem.Soc.1997,119,6029−6039およびInorg.Chem.Soc.1995,34,4085−4091に記載の方法を応用することができる。
【0047】
【発明の実施の形態】
《記録層》
記録層は基本的にテトラアザポルフィリン化合物からなるが、必要に応じて、例えばポリメチン色素、スクアリリウム系、コロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、および金属錯体化合物などを適宜混合して用いても良い。
【0048】
また上記染料中に金属、金属化合物、例えばIn、Te、Bi、Al、Be、TeO2、SnO、As、Cdなどを分散混合、あるいは積層の形態で用いることもできる。さらに、上記染料中に高分子材料、例えばアイオノマ−樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコ−ン、液状ゴムなどの種々の材料、もしくはシランカップリング剤などを分散混合して用いてもよいし、あるいは特性改良の目的で、安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などと一緒に用いることができる。
【0049】
記録層は溶剤塗布法、真空蒸着法、スパッタ法で行うことが量産性の向上および膜厚均一性の点で有効であり、塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶媒に溶解させて、スプレー、ローラーコーティング、ディッピングおよび、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法によって行われるが、本発明の性格上スピンコーティングが最も好ましい。
【0050】
有機溶媒としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類、あるいは、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセルソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などを用いることができる。
【0051】
記録層の膜厚は、100Å〜10μm、好ましくは200Å〜2000Åが適当である。
【0052】
《基板》
基板の必要特性としては、基板側より記録・再生を行う場合のみ使用レ−ザ光に対して透明でなければならず、記録層側から記録・再生を行う場合は透明である必要はない。
【0053】
基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、あるいはガラス、セラミック、金属などを用いることができる。なお、基板を1層しか用いない場合、あるいは基板2枚をサンドイッチ状で用いる場合は請求項に記載の基板の表面にトラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号などのプレフォ−マットが形成されている必要がある。
【0054】
《中間層》
下引き層等を含め基板、記録層、反射層、保護層以外に設けられた層をここでは中間層と呼ぶことにする。この中間層は(a)接着性の向上、(b)水、またはガスなどのバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成などを目的として使用される。
【0055】
(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の高分子物質、およびシランカップリング剤などを用いることができ、(b)および(c)の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiNなど金属、または半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Alなどを用いることができる。また(d)の目的に対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)および(f)の目的に対しては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0056】
中間層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0057】
《保護層・基板表面ハードコート層》
保護層、または基板表面ハードコート層は(a)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記中間層に示した材料を用いることができる。
【0058】
また無機材料として、SiO、SiO2なども用いることができ、有機材料として、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
【0059】
上記材料のうち保護層、または基板表面ハードコート層に最も好ましい物質は、生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層、または基板表面ハードコート層の膜厚は、0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0060】
本発明において、前記中間層、保護層、および基板表面ハードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0061】
《金属反射層》
反射層は単体で高反射率の得られる、腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としてはAu、Ag、Cu、Cr、Ni、Alなどが挙げられ、好ましくは短波長においても高反射率化が達成できるAg、Alがよい。
【0062】
これらの金属、半金属は単独で使用してもよく、2種以上の合金としてもよい。また、誘電体の多層膜を利用しても良い。
【0063】
膜形成方法としては、蒸着、スパッタリングなどが挙げられ、膜厚としては50〜3000Å、好ましくは100〜1000Åである。
【0064】
《接着層》
接着層はDVD系メディアで見られるように、薄い基板を2枚張り合わせる際、必要となる。
本発明で特に好ましいのは、ホットメルト型(熱溶融型)接着剤、もしくは紫外線硬化型接着剤である。
【0065】
紫外線硬化型接着剤は、紫外線照射によってラジカル重合が開始して硬化する接着剤である。その組成は、一般的に(1)アクリル系オリゴマー、(2)アクリル系モノマー、(3)光重合開始剤、(4)重合禁止剤からなるもので、オリゴマーはポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系アクリル酸エステル等で、光重合開始剤はベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等が使用できる。
【0066】
ホットメルト接着剤は液状接着剤が溶剤揮散や反応によって硬化し接着力が発現するのに対し、常温固体の熱可塑性樹脂が熱溶融、冷却固化の物理変化で接着力が発現するものである。ホットメルト接着剤は、EVA、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等を用いることができる。
【0067】
実施例
本発明で用いることのできるテトラアザポルフィリン化合物の例として1〜15を記す。化合物1〜15についてそれぞれに異性体については記述していないが、実際にはX1とX2、X3とX4、X5とX6、X7とX8およびRとYの置換位置による異性体が存在する。
【0068】
【化11】
【0069】
【表2】
【0070】
上記化合物(1)を用い厚さ約1000Åの記録層を、ガラス基板上にスピンコート法により形成し、次いでその上にスパッタ法によりAg2000Åの反射層を設け、更にその上にアクリル系フォトポリマーにて5μmの保護層を設けた(図1)。記録による反射スペクトルの変化を調べた。
【0071】
記録マ−ク生成の確認、および記録マ−ク生成に伴う記録材料の反射スペクトルの測定には、図2で示すようにサンプル10に対して、SHGレ−ザ11、パルスジェネレータ13、音響光学変調器(AOM)12、光学顕微鏡14、顕微分光光度計15よりなる評価システムにより行った。なお、SHGレーザは日立金属社製の全固体SHGレーザICD420を用い、このレーザの波長は420nmであり、レーザの出力は約10mwである。このレ−ザ照射による記録に伴って、薄膜サンプルの反射率が初期反射率に対し、約60%となり、420nmの波長のレ−ザ光によって記録が可能であることが確認できた。
【0072】
これらの測定結果から、本発明で特定したテトラアザポルフィリン化合物は、十分な溶解性を有し、400〜500nm、とりわけ400〜450nmのレーザ波長で記録再生が可能であり、また従来のCD−R、DVD−R材料とほぼ同等の分子吸光係数を有することがわかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明のテトラアザポルフィリン化合物を記録層に含む光情報記録媒体により、溶解性が高く、膜が結晶化することなく、かつ400〜500nmの波長範囲で高反射率で高コントラストが図れた光情報記録媒体が提供できる。
【0074】
また、本発明のテトラアザポルフィリン化合物を記録層として用いた光情報記録媒体により、従来と同様に、400〜500nmという短波長領域においてもROMとの互換性を有する光情報記録媒体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の情報記録媒体の構成の一例を示す図である。
【図2】テトラアザポリフェリン化合物(4)のUVスペクトルである。
【図3】テトラアザポリフェリン化合物(5)のUVスペクトルである。
【図4】記録材料の反射スペクトルの測定の評価システムである。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
Claims (9)
- 記録光が照射されることにより反射率変化を生じて情報を記録する記録層を有する光記録媒体であって、前記記録層が下記一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を含むことを特徴とする光記録媒体。
- 前記X1〜X8が水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、および置換もしくは未置換のアリール基のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 記録波長を400nm以上500nm以下としたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記記録層の一方に透明基板が隣接して形成され、該記録層の他方に反射層が隣接して形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記反射層が、金属層であることを特徴とする請求項5記載の光記録媒体。
- 前記金属層が銀、アルミニウム、銀を主とした合金、およびアルミニウムを主とした合金のいずれかであることを特徴とする請求項6記載の光記録媒体。
- 前記反射層の外方側に隣接して更に保護層が形成されたことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記記録層が、スピンコート層、真空蒸着層またはスパッタ層であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の光記録媒体。
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