JP3865960B2 - 樹脂成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性を有する脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と可塑剤を含有する樹脂組成物の成形方法に関する。詳しくは、結晶性を有する脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と可塑剤を含有する樹脂組成物を、その脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の融点(脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の混合物の場合、その高い方の融点とする)以下、組成物の状態でのガラス転移温度以上の温度域において成形することを特徴とする、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と可塑剤を含有する樹脂組成物の成形方法に関する。本発明の成形方法により、優れた柔軟性と高い耐熱性を有する成形物が得られる。
【0002】
【従来の技術】
脂肪族ポリエステルは、水の存在下で、容易に加水分解する特性により、汎用樹脂として使用する場合には、廃棄後に環境を汚染することなく分解するために環境にやさしく、医療用材料として生体内に留置する場合には、目的達成後に生体に与える影響がないか少なく、生体内で分解・吸収されるために生体にやさしいという優れた生分解性ポリマーであることから、医療用材料や汎用樹脂の代替物として、本出願の以前に既に注目されてきた。
【0003】
脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸系樹脂は、発酵法によるL−乳酸が大量に作られ安価になってきたこと、また得られたポリマーの性能として剛性が強いという特徴があるので、現在、その利用が期待されている。
しかしながら、ポリ乳酸の場合には、このポリマーの脆く、硬く、可撓性に欠ける特性のために、フィルム、フィラメント又は成形物等に加工した場合には問題があった。また、ポリ乳酸は、結晶化速度がそれほど高くないために、通常、成形直後は非晶質であり、そのガラス転移温度が耐熱性の上限温度であり、熱湯又は電子レンジで使用することができず、用途が限定されていた。
【0004】
すなわち、ポリ乳酸はそのガラス転移温度が約60℃であるために非晶部分は室温でガラス状態となっており、非晶であるか結晶化しているかに関わらずヤング率が109Paを越えた硬い成形物となる。軟質の成形物を得るためには、可塑剤を数%から数十%程度添加する、あるいは乳酸以外の成分の分率を数十%程度多めに共重合しコポリマーとしてガラス転移温度を下げる、あるいは使用する温度域において柔らかい(ヤング率が109Pa以下)軟質樹脂をブレンドする、或いはこれらの手段を併用するといった方法を採る必要がある。例えば、米国特許第3,736,646号と第3,982,543号には、ラクタイドコポリマーに可撓性を付与するために、揮発性の溶剤を可塑剤として用いることが開示されている。しかし、該ポリマーをフィルムや成形品に加工後、製品を保存している間に、又は、食品用容器や医療用器具として使用している間に、溶剤が徐々に揮発していくために、可塑剤の効果が喪失されるので製品の品質保持上問題があると同時に、放出された溶剤が材料に接触している食品や生体に毒性を及ぼすので安全性確保の点からも問題がある。
【0005】
また、米国特許第4,057,537号には、L−ラクタイドとε−カプロラクトンのコポリマーが示されており、ε−カプロラクトンが15%以上含まれたコポリマーは、軟らかく透明であることが開示されている。しかし、これらのコポリマーは、結晶性が低いか又は非結晶性であるという点、得られるフィルムは耐熱性が低いという点等で問題がある。
このように、柔軟性を実現するために種々の方法によりガラス転移温度を室温付近から室温以下にまで下げると、室温よりも高い温度ではもちろんのこと、室温に放置しておくだけでも結晶化や相分離、緩和などが進み、形状や物性が変化してしまうという、耐熱性に関する難点がでてくる。
【0006】
形状の変化である流動を起こさないようにするには、結晶化させることにより結晶を架橋点として働かせる方法がある。しかし、ポリ乳酸は結晶化速度が低いため、賦形のために融点以上で溶融させた後、結晶化できる温度に長時間おく必要があり、成形に時間がかかるという難点がある。このため、汎用樹脂の成形サイクル程度の時間では結晶化が進んだ成形物を得ることができない。
すなわち、従来の技術では、乳酸系ポリマー樹脂から、柔らかさと耐熱性を併せ持ったフィルム、シート、フィラメント、容器等の成形加工品を得ることは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、従来の技術では、ポリ乳酸のような柔軟性と耐熱性を同時に発現せしめることが困難な脂肪族ポリエステルに、新規な技術により、安価に柔軟性と耐熱性を同時に発現せしめることは、極めて有意義な解決課題である考えた。
【0008】
このような観点から、本発明者らは、実際に、ポリ乳酸に可塑剤として、トリ−n−ブチルシトレート、ジイソデシルアジペート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール等を5%から30%添加したペレットを数種類用意してインフレーション成形や押出し成形により、フィルムあるいはシートの成形を行った。得られたフィルム、シートは25℃において弾性率(ヤング率)が107から109Pa程度となり、添加量の多い処方では柔らかさを得ることができたが、結晶化度は5%以下であり、60℃以下でも流動化及び結晶化を起こし物性が変化するという耐熱性の低い成形物しか得ることができなかった。得られたフィルム、シートは40℃〜140℃で熱処理することにより結晶化させることができる。しかし熱処理により結晶化させたものは結晶が融解する温度まで外形を保つようになる、つまり耐熱性は上がるが、熱処理の段階で可塑剤のブリードアウト、変形、融着等を起こすという問題点があった。
【0009】
このように、ポリ乳酸に関しては、一般的な、押出し成形、射出成形、ブロー成形等の成形技術において、公知公用の可塑化手法を用いても、柔軟性と耐熱性(結晶性)を同時に発現することは困難であった。
従って本発明は、結晶性で、結晶化速度の高くないポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸や脂肪族ポリエステルを成形して、柔軟性と耐熱性(結晶性)を同時に満足する成形物を得ることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、結晶性を有する脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤とを混合した樹脂組成物を、融点以下、且つガラス転移温度以上の温度範囲において加工することにより、結晶性を維持したまま柔軟な成形物が得られることを見い出だし、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の[1]及び[2]に記載のとおりである。
[1]結晶性を有するポリ乳酸と可塑剤を含有する樹脂組成物を、射出成形、押出ブロー成形、押出延伸ブロー成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、圧縮成形、インフレーション成形又はTダイ成形する方法であって、ポリ乳酸の融点以下、該樹脂組成物のガラス転移温度以上の温度域において軟化、成形し、25℃におけるヤング率が10 7 Pa以上、10 9 Pa以下であり、且つ、樹脂中における樹脂の結晶の重量分率が5%以上80%以下である成形物を得ることを特徴とする、ポリ乳酸と可塑剤を含有する樹脂組成物の成形方法。
[2]可塑剤がフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、クエン酸誘導体、脂肪酸誘導体、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体及びポリエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1記載の樹脂組成物の成形方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において脂肪族ポリエステル樹脂は、それが結晶化するポリマーでさえあれば、以下の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ポリエステル及びそれらの混合物を包含する。
【0015】
具体的には、(1)例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシカプロン酸等のホモポリマー及び乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー等の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、(2)乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位および脂肪族多価アルコール単位からなる脂肪族ポリエステル、(3)乳酸単位および多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステル、(4)ポリブチレンサクシネート等の脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステル、及び、(5)上記脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ポリエステルの混合物等が挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸及び脂肪族ポリエステルがコポリマーである場合、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を包含する。また、混合物の概念には、ポリマーブレンド、ポリマーアロイの概念を包含する。
【0016】
本発明においてポリ乳酸は、構成単位がL−乳酸のみからなるポリ(L−乳酸)、D−乳酸のみからなるポリ(D−乳酸)、およびL−乳酸単位とD−乳酸単位とが種々の割合で存在するポリ(DL−乳酸)のいずれもが使用できる。
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を構成する乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらの脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、単独でホモポリマーとして、またそれらを混合したり、乳酸と混合してコポリマーとして用いられる。
【0017】
本発明に用いるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはDL−乳酸を直接脱水重縮合する方法、例えば、特開平6−65360号公報に記載の方法により製造することができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法によっても製造することができる。開環重合は、高級アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基を有する化合物の存在下で行ってもよい。
乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーは、乳酸と上記ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合する方法、例えば、特開平6−65360号公報により製造することができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドと上記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状体を開環共重合する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。
【0018】
乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位及び脂肪族多価アルコール単位を含む脂肪族ポリエステルまたは脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステルの製造に用いる脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等及びこれらの無水物が挙げられる。これらは、酸無水物であっても、酸無水物との混合物であってもよい。
【0019】
また、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0020】
乳酸単位、脂肪族多価カルボン酸単位及び脂肪族多価アルコール単位からなる脂肪族ポリエステルは、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー等を反応する方法や上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、乳酸を反応する方法により製造できる。また、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと乳酸の環状2量体であるラクチドや上記ヒドロキシカルボン酸の環状エステル類等を反応する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。また、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの脂肪族ポリエステルは、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールを反応する方法により製造できる。
【0021】
乳酸単位及び多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステルの製造に用いる多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ニトロセルロース;セロハン、ビスコースレーヨン、キュプラ等の再生セルロース、ヘミセルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン等及びこれらの混合物及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの内で特に酢酸セルロース、エチルセルロースが好ましい。
【0022】
乳酸単位及び多官能多糖類を含む脂肪族ポリエステルは、上記多官能多糖類と乳酸またはポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー等を反応する方法により製造することができる。また、上記多官能多糖類と乳酸の環状2量体であるラクチドや上記ヒドロキシカルボン酸の環状エステル類等を反応する方法によっても製造することができる。何れの方法によって製造されたものでもよい。
【0023】
本発明の成形方法には、上記の種々の脂肪族ポリエステル樹脂が用いられるが、特にポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリヒドロキシカプロン酸等のホモポリマー、及び乳酸と乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー(透明性が要求される場合、乳酸成分が重量比で50%以上含むものが好ましい)、乳酸と脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族多価アルコールからなるポリエステル(透明性が要求される場合、乳酸成分が重量比で50%以上含むものが好ましい)等の乳酸成分を含むものが好適に用いられる。特に、ポリ乳酸のように結晶化速度の遅いポリエステルに好適である。
【0024】
本発明において用いる脂肪族ポリエステル樹脂の分子量は、容器、フィルム、シート、板等の成形物に成形した場合、実質的に十分な機械物性を示すものであれば、特に制限されない。分子量が低いと得られる成形物の強度が低下し、分解速度が速くなる。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難となる。かかる点を考慮すると、本発明に使用する脂肪族ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量として、1〜500万であり、3〜300万が好ましく、5〜200万がより好ましく、7〜100万がさらに好ましく、9〜50万が最も好ましい。
【0025】
本発明の明細書における「可塑剤」の語の概念は樹脂に添加することにより樹脂の弾性率を下げる効果のある化合物全てを指しており、その化合物に関して、形態が気体か液体か固体であるとの区別、あるいは有機化合物か無機化合物かといった区別に制限されない。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル樹脂組成物に用いられる可塑剤は、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、セバシン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、クエン酸誘導体、脂肪酸誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸誘導体、グリコール誘導体、グリセリン誘導体、パラフィン誘導体、ジフェニル誘導体、エポキシ誘導体及びポリエステル、ポリエーテルといったポリマーから選ばれる少なくとも一つである。
【0026】
フタル酸誘導体としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジアミルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ブチルイソデシルフタレート、ブチルラウリルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−オクチルフタレート、ブチルココナットアルキルフタレート、椰子油の高圧還元による高級アルコールのフタレート、高級アルコールのフタレート、混合アルコールフタレート、直鎖アルコールフタレート、ジラウリルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、オクチルデシルフタレート、n−オクチル,n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、エチルヘキシルデシルフタレート、ジノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジアリルフタレート、アルキルアリルフタレート、アルキルアリル変性フタレート、アルキル脂肪酸フタレート、n−アルキル脂肪酸フタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジブトキシエチルフタレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、変性フタレート等が、
【0027】
アジピン酸誘導体としては、ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジカプリルアジペート、ベンジル−n−ブチルアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ベンジルオクチルアジペート等が、アゼライン酸誘導体としては、ジ−2(−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−2−エチルヘキシル−4−チオアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジイソブチルアゼレート等が、セバシン酸誘導体としてはより具体的にはジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等が、
【0028】
マレイン酸誘導体としては、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレート、ジノニルマレート等が、フマル酸誘導体としては、ジブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等が、トリメリット酸誘導体としては、トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、n−オクチル,n−デシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ジイソオクチルモノイソデシルトリメリテート等が、クエン酸誘導体としては、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−オクチル,n−デシルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレート等、
【0029】
脂肪酸誘導体としては、メチルオレート、ブチルオレート、メトキシエチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート、グリセリルトリ−(アセチルリシノレート)、アルキルアセチルリシノレート、n−ブチルステアレート、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート、安定化ペンタクロロメチルステアレート、塩素化メチルステアレート、塩素化アルキルステアレート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、ブチルセロソルブペラルゴネート、クロルヒドリンメチルエーテル構造を含む直鎖脂肪酸エステル等が、
【0030】
スルホン酸誘導体としては、ベンゼンスルホンブチルアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンエチルスルホンアミド、p−トルエンエチルスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、フェノール及びクレゾールのアルキルスルホン酸エステル、スルホンアミド−ホルムアミド等が、
【0031】
リン酸誘導体としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシリルホスフェート、最大1%以下のオルソクレゾール異性体を含有するホスフェート、アルキルアリルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ジフェニルモノ−o−キセニルホスフェート、ジフェニルキシレニルホスフェート等が、
【0032】
オクチル脂肪酸エステル、植物油脂肪酸のエステル、高分子量のモノメリックエステル、ジペンタエリスリトールエステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が、
【0033】
グリコール誘導体としては、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ポリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビス−チオグリコレート、ポリエチレングリコール、ポリグリコールエーテル、グリセリン誘導体としては、グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート、グリセロールトリプロピオネート、グリセロールエーテルアセテートが、
【0034】
パラフィン誘導体、あるいはジフェニル誘導体としては、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化トリフェニル、塩素化ポリフェニル、部分水添したトリフェニル、エポキシ誘導体としては、ブチルエポキシステアレート、エポキシモノエステル、オクチルエポキシステアレート、エポキシ化ブチルオレエート、エポキシ脂肪酸エステル、ジ−(2−エチルヘキシル)4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−カーボキシレート、エポキシ化半乾性油、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化トリグリセライド、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、エポキシデシルステアレート、エポキシ化大豆油、メチルエポキシヒドロステアレート、グリセリルトリ−(エポキシアセトキシステアレート)、イソオクチルエポキシステアレート、エポキシ化脂肪酸、オクチルエポキシトーレート、ブチルエポキシトーレート、イソオクチルエポキシトーレート、イソオクチルエポキシステアレート、ブチルエポキシステアレート等が、
【0035】
ポリマー、ポリエステル、あるいはポリエーテル、その他のものとしては、セバシン酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル、アセチル化ポリエステル、アルキド樹脂、低分子量ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、不飽和脂肪酸ニトリル、ジブトキシエトキシエチルホルマール、イソブチレート、エーテルチオエーテル、ジベンジルエーテル、フェノール誘導体、ジメチルポリシロキサン等が、好適に用いられる。
【0036】
可塑剤の添加量は、脂肪族ポリエステル樹脂の種類、可塑剤の種類により種々変えることができる。可塑剤により可塑化された脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤からなる樹脂組成物が、該脂肪族ポリエステル樹脂の融点以下で軟化し、成形可能になる量であればよく、通常、樹脂組成物中、0.5〜60重量%である。脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤の混合方法は、公知公用の混練技術、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で各原料を固体状で混合する方法を採用することができる。
【0037】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに、耐熱性の向上、機械物性の向上、あるいはアンチブロッキング性等の物性を改善させるために、無機添加剤を添加することもできる。無機添加物の具体例としては、例えば、タルク、カオリナイト、TiO2、SiO2等が挙げられる。
【0038】
目的に応じて樹脂組成物の諸物性(例えば、弾性率、引張強度、曲げ強度、機械強度、耐熱性、耐候性等)を向上させる目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色顔料などや少量の他の樹脂を添加することもできる。本発明に係る組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において、各種エラストマー(SBR、NBR、SBS型熱可塑性エラストマー等)、添加剤(結晶核剤、顔料、安定剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、染料等)、フィラー類(炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック、耐衝撃性コア/シェル型粒子、インパクトモディファイアー等)、顔料(酸化チタン、メタリック顔料、パール顔料等)を目的や用途に応じて適宜使用することができる。
【0039】
添加剤の使用量は、通常、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル樹脂に対して、90重量%以下、好ましくは50重量%以下である。通常、50重量%より大きいと、機械物性その他に悪影響を及ぼす場合がある。
これらの添加物を樹脂組成物に混合する方法は、公知公用の混練技術、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で各原料を固体状で混合させたりする方法を採用することができる。成形に供する樹脂組成物の形状は、一般的には、ペレット、棒状、粉末等が好ましい。
【0040】
本発明の成形方法は、以下のとおりである。
一般に熱可塑性樹脂の成形方法では、その樹脂が結晶性ポリマーである場合、その融点以上の温度で、またその樹脂が非晶性のポリマーである場合、そのガラス転移温度以上の温度で溶融し、押出し、射出、ブロー等の方法により賦形する。
【0041】
これに対して、本発明の成形方法は、結晶性を有する脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤を含有する樹脂組成物を、該脂肪族ポリエステル樹脂の融点(脂肪族ポリエステル樹脂が混合物の場合はその融点の高い方とする)以下、該樹脂組成物のガラス転移温度以上の温度域において軟化、成形することを特徴とする。脂肪族ポリエステル樹脂の融点以下で成形するため、成形加工中に樹脂組成物中の脂肪族ポリエステル樹脂の結晶がすべて溶けてしまうというようなことは起こらず、成形物中に結晶が存在することが保証される。成形加工中に結晶が存在することにより、それが核になり、結晶化速度が促進されるという効果もあり、ポリ乳酸のように結晶化速度が高くない脂肪族ポリエステル樹脂の成形加工においても十分な結晶化度を得ることができる。その結果、得られた成形物に高い耐熱性が付与される。
【0042】
本発明の成形方法は、射出成形法、押出ブロー成形法、押出延伸ブロー成形法、射出ブロー成形法、射出延伸ブロー成形法、熱成形法、圧縮成形法等に応用することができる。また、フィルム状、シート状、板状の成形物の成形方法として、インフレーション成形法、Tダイ成形法等に応用できる。
【0043】
本発明の成形法により得られる成形物は、例えば、公知・公用の成形法で得られるフィルム、シート、カップ、ボトル、トレー等の成形体を包含しその形状、大きさ、厚み、意匠等に関しては何等制限はない。
成形時及び/又は成形の前後において、型温度、型温度の履歴(温度変化パターン、昇型温速度、冷却速度等)、型内熱処理の温度の履歴(温度変化パターン、昇型温速度、冷却速度等)、型外熱処理の温度の履歴(温度変化パターン、昇型温速度、冷却速度等)を適宜設定することにより、所望の柔軟性と耐熱性、あるいは、所望の非晶性と結晶性(結晶化度)に、制御することができる。
【0044】
本発明の成形方法により得られる成形物は、例えば、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚・精肉・青果・豆腐・惣菜等の食料品用の容器やトレイ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用のボトル、炭酸飲料・清涼飲料等のソフトドリンク用のボトル、ビール・ウィスキー等の酒類ドリンク用のボトルや缶、シャンプーや液体石けん用のボトル、歯磨き粉用チューブ、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、浄水器カートリッジの包装材、人工腎臓や人工肝臓等の包装材、注射筒の包装材、活性炭(あるいはそれを応用した脱臭材、浄水器交換カートリッジ等)の包装材等としても好適に使用することができる。
【0045】
また本発明の成形方法により得られる成形物は、食品・菓子包装用容器、食品用容器、医薬品(例えば塩酸ブロムヘキシン、酢酸トコフェロール等)用容器、生薬(例えば、胃腸薬等)用容器、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用容器、化粧品・香粧品用容器、農薬品用容器等として好適に使用することができる。また、本発明に係る成形体は、適当な成形加工法により、例えば、経口医薬品用カプセル又はその包装材、肛門・膣用座薬用包装材、皮膚・粘膜用貼付剤用包装材、農薬用カプセル又はその包装材、肥料用カプセル又はその包装材、種苗用カプセル又はその包装材等として使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例及び比較例等を示し、本発明を詳述する。
なお、本出願の明細書における実施例、比較例等の記載は、本発明の内容の理解を支援するための説明であって、その記載は本発明の技術的範囲を狭く解釈する根拠となる性格のものではない。
なお、文中に部とあるのはいずれも重量基準である。
また、ポリマーの平均分子量(重量平均分子量)はポリスチレンを標準とした換算分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより溶媒クロロホルム、濃度1%の条件で測定し、12万〜14万のものを使用した。融点およびガラス転移温度の決定はDSCを用い、温度勾配10℃/minで昇温する過程のデータから行った。
【0047】
物性の評価条件は、以下のとおりである。
(1)結晶化度
X線回折装置 (理学電機(株)製、Rint1500型) にて成形後の試験片を2θ:3〜50°の範囲で反射法により測定した。結晶部分からの回折ピーク強度と非晶部分によるハローとの面積比から結晶化度を算出した。可塑剤からの散乱は全てハローに含まれるとして差し引き、樹脂分の散乱のみを見積もった。
(2)弾性率(固体粘弾性)
固体粘弾性測定装置 (レオメトリックス製、RSA−2)にて成形後の試験片を、引張りモード、周波数1Hzで、−50〜150℃の範囲を昇温速度3℃/minで測定した。
【0048】
実施例および比較例に於いて使用した可塑剤は以下のとおりである。
A:アセチルトリ−n−ブチルシトレート(ATBC)
B:ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート
C:ジイソデシルアジペート
D:エポキシ化大豆油
E:ポリエチレングリコール(分子量4000)
【0049】
実施例1〜7
ポリ乳酸粉末、LACEA H−100PW(商品名、三井化学株式会社製、DSCで求めたガラス転移温度は58±3℃、融点は163±5℃である)に、所定の可塑剤を表1(表1)に示す割合で加え、ヘンシェルミキサーで混合後48時間放置した。その後150℃/2minで可塑化(軟化)させ、更に150℃/100kgf/cm2/3minで熱プレスし、厚さ80〜180μmのフィルムを得た。このフィルムを試験片とし、結晶化度及び固体粘弾性の測定をした。
結晶化度と25℃における弾性率(ヤング率)を表1(表1)に、実施例1及び実施例3で得られたフィルムの固体粘弾性チャートを図1、2に示す。
【0050】
比較例1〜7
熱プレスの温度を190℃とした他は、実施例と同様に熱プレスを行い、厚さ80〜180μmのフィルムを得た。このフィルムを試験片とし、結晶化度及び固体粘弾性の測定をした。
結晶化度と25℃における弾性率(ヤング率)を表1(表1)に、比較例1で得られたフィルムの固体粘弾性チャートを図3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から、本発明の融点以下で成形したフィルムは、高い結晶化度を示し、また25℃における弾性率も109以下であり、耐熱性と柔軟性を併せ持つことがわかる。
また、図1と図2から、実施例1、3で得られたフィルムはガラス転移温度で柔らかくなるが、融点近くまで107Pa以上の弾性率を保ち、広い温度範囲で適度な柔らかさを示すことが判る。
これに対し、従来の成形法に近い条件で得られた比較例1〜7のフィルムは、結晶化度が0であり、図3から明らかなように、ある比較例1で得られたフィルムは、ガラス転移温度より低い温度では2×109Paを超える高い弾性率を示すが、ガラス転移温度に達すると弾性率は急激に減少し、試料が伸びすぎるために測定不能になり、耐熱性が得られない。
【0053】
【発明の効果】
本発明の成形法により、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤を含有する樹脂組成物を成形加工することにより、高い柔軟性(25℃においてヤング率が107Pa以上で109Pa以下)と高い耐熱性(樹脂の融点以下であれば流動しない)が同時に付与された成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られたフィルムの固体粘弾性チャートである。
【図2】実施例3により得られたフィルムの固体粘弾性データである。
【図3】比較例1により得られたフィルムの固体粘弾性データである。
【符号の説明】
E’:弾性率(ヤング率)
Claims (2)
- 結晶性を有するポリ乳酸と可塑剤を含有する樹脂組成物を、射出成形、圧縮成形、インフレーション成形又はTダイ成形する方法であって、ポリ乳酸の融点以下、該樹脂組成物のガラス転移温度以上の温度域において軟化、成形し、25℃におけるヤング率が10 7 Pa以上、10 9 Pa以下であり、且つ、樹脂中における樹脂の結晶の重量分率が5%以上80%以下である成形物を得ることを特徴とする、ポリ乳酸と可塑剤を含有する樹脂組成物の成形方法。
- 可塑剤がフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、クエン酸誘導体、脂肪酸誘導体、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体及びポリエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1記載の樹脂組成物の成形方法。
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