JP3865932B2 - 機械的な弁タペットを製造する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドの案内孔内に配置されている機械的な弁タペットの群であって、群の各弁タペットはコップ形のケーシングから成り、このケーシングは筒形の囲壁を有しており、この囲壁は一方の端部を底によって閉じられており,この底に外方から制御カムが作用するようになっており、底の内面には隆起部が設けられており、この隆起部はガス交換弁の弁棒の端部と作用接続している形式の弁タペットを製作する方法並びにこの方法を実施する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような構成の機械的な弁タペットは既に以前から公知である。例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第22 47 069号明細書に記載されているコップ形の弁タペットは,制御カムとは逆の側の底の面に,弁棒の方向に向いた隆起部を有しており,この隆起部はそれをつかむ調整ディスクを介して弁棒の端面に接触している。この場合,弁遊びの調整は,所定の試験作動を行った後に,調整ディスクを交換することによって行われる。
【0003】
このような調整方式の欠点は,種々の寸法の調整ディスクを付加的な部品として製作し,倉庫に保管しておかなければならず,また弁遊びの調整作業が困難なことである。すなわち,弁タペットを取り外してから,付加的な部品としての調整ディスクを弁タペットから取り外して,所望の寸法の調整ディスクを弁タペットに取り付け,この弁タペットを所定の位置に取り付けなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、弁遊びの調整を簡単に行い得るように弁タペットを製作する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題は請求項1に記載した方法によって解決された。
【0007】
製作される弁タペットの隆起部は一定の寸法ずつ、それも100μずつ異ならせた軸方向寸法を有することができ、また隆起部の軸方向寸法が底の最初の素材厚さの3倍以下であるようにすることができる。
【0008】
本発明による弁タペットを製作する方法においては,帯材から冷間又は熱間打ち抜きした素材を冷間成形法,例えば深絞り,によってコップ形のケーシングを形成し,次いで,底の内面に力F1で大きな圧縮力を作用させて,底の材料へこみを生ずることなしに,底の逆方向すべり変形によって隆起部を形成する。
【0009】
この場合,塑性変形すべりを行わせるために,底の内面の輪郭は任意の形状を有することができる。例えば安定性及び強度を大きくし,弁タペットの重量を可及的にわずかにするためには,底がその中心において最も厚く,縁に向かって厚さが減少するように,底の内面の輪郭の形状を定めるのがよい。換言すれば,底の内面の輪郭を負荷状態に適合させ,制御カムの作用箇所を最も頑丈に構成するのである。
【0010】
材料のすべり変形を,力F1とは逆方向に,隆起部の方向及び筒形の囲壁の方向に行わせると有利である。
【0011】
このように隆起部の方向及び筒形の囲壁の方向に逆方向すべり変形をさせると,隆起部が形成されるだけでなしに,弁タペットが筒形の囲壁の範囲を特に安定した構造にされる。
【0012】
更に,隆起部に力F1よりも小さい対抗力F2を作用させることができる。この対抗力F2は,底の,制御カムが作用する外面に材料へこみが形成されることを阻止するのに役立つ。
【0013】
最後に,弁タペットを製作する方法を実施する装置においては,圧縮工具の端面の輪郭が底の内面の輪郭と同形であるようにする。このように圧縮工具の端面の輪郭を定めることによって,底の内面の輪郭が完全に規定される。
【0014】
【実施例】
以下においては,図面に示した実施例に基づいて本発明の構成を具体的に説明する。
【0015】
図1に示した機械的な弁タペットはコップ形のケーシング1を有しており,その筒形の囲壁2は一方の端部を底3によって閉じられている。コップ形のケーシング1の開いている端部に向かって,底3は隆起部4を備えており,この隆起部4はガス交換弁の弁棒5の端面と作用接続している。底3の外面(上面)には制御カム6が作用する。
【0016】
ガス交換弁の弁遊びを調整する場合,本発明によれば従来のように調整ディスクを交換することはなく,コップ形のケーシング1全体を,隆起部4が所望の軸方向寸法を有している別のコップ形ケーシング1と交換する。
【0017】
図2に示したコップ形ケーシング1の素材は帯材から冷間又は熱間打ち抜きして,冷間成形法,例えば深絞り,によって製作したものである。冷間成形法は比較的に大きな精度できれいな表面を形成することを可能にする。この筒形の囲壁2と底3とから成る素材はダイ7内に挿入される。ダイ7は素材の外周面を均一に取り囲む。コップ形のケーシング1の底3はこの場合支持ロッド8上に支えられ,コップ形のケーシング1の開いている端部から間隔をおいて押さえ筒10が配置されている。
【0018】
ところで,図3及び図4に示すように,底3の内面に圧縮工具9によって上方から力F1を作用させると,底3の材料の一部が力F1に対して逆方向に中空室12内に塑性すべり変形し始める。中空室12は圧縮工具9と押さえ工具11とによって形成されている。底3の材料の別の部分は,ダイ7と支持ロッド8とコップ形のケーシング1自体とによって形成されている別の中空室13内にすべり変形する。換言すれば,底3は隆起部4を形成するために塑性変形せしめられ,隆起部4の範囲に材料が部分的に集中せしめられ,隆起部4とは逆の側に材料のへこみが生ずることはない。底3を塑性変形させるためには,2,000〜3,000N/mm2 の圧縮力を作用させなければならない。
【0019】
圧縮工具9の内部で軸方向にしゅう動可能に案内されている押さえ工具11は形成される隆起部4に対抗力F2を作用させる。この対抗力F2は力F1よりも著しく小さく,底3の制御カム6の側の面に材料のへこみが生じないようにする作用を有している。
【0020】
更に図2及び図3から分かるように,圧縮工具9の端面の輪郭は底3の内面の輪郭と同形であり,塑性成形過程が終了すると,コップ形ケーシング1の素材は中空室12及び13を満たし,コップ形のケーシング1がその最終形状にされている。図3に示すように,隆起部4の軸方向の高さhは押さえ筒10と押さえ工具11との相対位置を変えることによって種々に変化させることができる。次いで場合によって,この最終形状にされているコップ形のケーシングに切削加工及び熱処理を施すことができる。
【0021】
図4は底3の材料のすべり状態を多数の小さな矢印によって示したものである。これらの矢印はすべり方向並びにおおまかなすべり速度を示す。すなわち矢印の長さはすべり速度と関連せしめられている。すべり変形の分かれ目は底3の半径のほぼ中心のところに位置している。換言すればこの分かれ目から底3の材料は半径方向で内方及び外方に向かってすべり,次いで軸方向で上方に向かって隆起部4の方向若しくは筒形の囲壁2の方向に更に塑性すべり変形する。
【0022】
もちろん本発明は隆起部4の形の副成形部を有する機械的な弁タペットに限定されるものではない。本発明による方法は,一般的に,副成形部が材料の塑性変形によって形成される任意の金属薄板成形品に適用することができる。この場合副成形部の横断面の形状及び高さは自由に選択可能であり,最初の素材厚さの何倍にも達することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のような構成によって,本発明においては弁遊びの調整を行う場合に,その都度の弁遊びを調整するのに必要な軸方向寸法を有する機械的な弁タペットが使用される。機械的な弁タペット全体を新しい弁タペットと交換することによって,調整作業が著しく簡単になる。なぜなら調整作業の際に弁タペットだけを着脱すればよいからである。つまり従来必要であった調整ディスクは省略することができる。したがって種々の寸法の調整ディスクを弁タペットとは別個の交換部材として製作し,倉庫に保管しておく必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械的な弁タペットの軸方向断面図である。
【図2】機械的な弁タペットのコップ形ケーシングの,底を圧縮塑性変形させる前の状態を示した軸方向断面図である。
【図3】機械的な弁タペットのコップ形ケーシングの,底を圧縮塑性変形させた後の状態を示した軸方向断面図である。
【図4】圧縮塑性変形加工中の底のすべり変形状態を図式的に示した図である。
【符号の説明】
1 (コップ形の)ケーシング, 2 (筒形の)囲壁, 3 底, 4 隆起部, 5 (ガス交換弁の)弁棒, 6 制御カム, 7 ダイ, 8 支持ロッド, 9 圧縮工具, 10 押さえ筒, 11 押さえ工具, 12及び13 中空室, F1 力, F2 対向力, h (隆起部の軸方向の)高さ

Claims (1)

  1. 内燃機関のシリンダヘッドの案内孔内に配置され、コップ形のケーシング(1)から成り、このケーシング(1)が筒形の囲壁(2)を有しており、囲壁(2)が一方の端部で底(3)によって閉じられており、この底(3)に外方から制御カム(6)が作用するようになっており、該底(3)の内面には隆起部(4)が設けられており、この隆起部(4)がガス交換弁の弁棒(5)の端部と作用的に接続している形式の機械的な弁タペットを製造する方法において、帯材を打ち抜いた素材から冷間成形法によってコップ形のケーシング(1)を形成し、次いでこのコップ形のケーシング(1)の底(3)の内面に力(F1)を作用させてケーシング(1)の底(3)に材料のへこみを生じることなしに、前記隆起部(4)と前記円筒形の囲壁(2)に向けられた前記力(F1)とは逆方向の塑性変形によって前記底(3)に隆起部(4)を形成し、その際、前記隆起部(4)に前記力(F1)よりも小さい対抗力(F2)を作用させ、前記隆起部(4)の軸方向の寸法は互いに異っているが弁タペットの他の寸法は互いに同じである複数の弁タペットから成る弁タペット群を製造することを特徴とする、機械的な弁タペットを製造する方法。
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