JP3865035B2 - キャリッジおよび該キャリッジを備えた記録装置 - Google Patents

キャリッジおよび該キャリッジを備えた記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,プリンタ,ファクシミリ,複写機等の記録装置に用いられるキャリッジに関し、特に,被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動するとともに,前記被記録材の記録面に記録を行う記録ヘッドを備えたキャリッジおよび、該キャリッジを備えた記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録装置の1つとしてプリンタがあり、プリンタには、被記録材の搬送方向と直行して配置されるガイド軸に案内されて往復動作するキャリッジを備え、該キャリッジに載置されるインク・カートリッジから供給されるインクを、同じくキャリッジに設けられる記録ヘッドから被記録材へ吐き出し、これによって印刷をおこなうインク・ジェット・プリンタがある。
【0003】
このようなインク・ジェット・プリンタにおいては、ガイド軸に案内されて往復動するキャリッジは、ガイド軸と摺動する軸受部を有し、該軸受部がガイド軸上を摺動運動することによって往復動作する構成が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このインク・ジェット・プリンタの耐用期間から、キャリッジがガイド軸上を往復動作する往復動作回数には、数百万回以上の耐久性が必要とされている。従って、軸受部とガイド軸との摺動摩擦抵抗を低減するために、往復動作に際して軸受部とガイド軸との摺動部(以下、「摺動部」という)に潤滑油等の潤滑材を供給する手段が用いられ、摺動摩耗によるガイド軸または軸受部から発生する摩耗粉によってキャリッジの往復動作が妨げられる不具合を防止している。
【0005】
しかし、潤滑材が供給されることによって摺動部の摺動摩擦抵抗は低減されるが、この摺動部においては、軸受部がガイド軸上を摺動する際にガイド軸表面に付着している潤滑材を“そぎ落とす”ことにより、または、潤滑材の供給が過剰となることによって、潤滑材が摺動部、すなわち軸受部から漏出する現象が発生する。また、前述した潤滑材供給手段からも、軸受部を介さずに直接的に潤滑材が漏出する場合もある。
【0006】
このような潤滑材の漏出現象が発生すると、キャリッジ表面を伝って漏出した潤滑材が記録ヘッド部に達し、記録ヘッド部を構成する樹脂材料の割れ,変色等を招来したり、インク吐出口に付着することによって印字品質の低下を招来する虞がある。従って、潤滑材を充分に供給することにより、ガイド軸と軸受部との摺動摩擦抵抗を充分に低減させ、もってより円滑なキャリッジの往復動作をおこなうための障壁となっていた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、その課題は、ガイド軸と軸受部との摺動部における摺動摩擦抵抗を軽減し、キャリッジの耐久性を向上させるために摺動部へ充分な潤滑材の供給をおこないつつ、潤滑材の供給によって漏出した潤滑材を一定の位置に滞留保持することにより、漏出した潤滑材がキャリッジを構成する他の構成要素へ流出して悪影響を及ぼさないようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明に係るキャリッジは、被記録材の記録面と平行に、かつ、被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動し、前記ガイド軸と、前記ガイド軸と摺動する軸受部との摺動摩擦抵抗を潤滑材によって低減させるための潤滑材供給手段を有するキャリッジであって、少なくとも2以上の前記軸受部を有するとともに、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方が開放状態であり、前記潤滑材供給手段による前記ガイド軸への前記潤滑材の供給によって、または前記軸受部への前記潤滑材の供給によって、または前記ガイド軸と前記軸受部の双方への前記潤滑材の供給によって、前記ガイド軸と摺動する前記軸受部から漏出する前記潤滑材の漏出経路上に、前記潤滑材を滞留させる潤滑材滞留部を有し、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方の開放部が、前記潤滑材滞留部を有する閉塞カバーで閉塞されていることを特徴とする。
また、本願請求項2記載の発明に係るキャリッジは、被記録材の記録面と平行に、かつ、被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動し、前記ガイド軸と、前記ガイド軸と摺動する軸受部との摺動摩擦抵抗を潤滑材によって低減させるための潤滑材供給手段を有するキャリッジであって、少なくとも2以上の前記軸受部を有するとともに、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方が開放状態であり、前記潤滑材供給手段から直接漏出する前記潤滑材の漏出経路上に、前記潤滑材を滞留させる潤滑材滞留部を有し、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方の開放部が、前記潤滑材滞留部を有する閉塞カバーで閉塞されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、潤滑材の「漏出経路」は、キャリッジの構造の違いによってそれぞれ異なる経路となるため、予め実験等をすることによって決定する。
【0010】
本願請求項1記載の発明においては軸受部から漏出した潤滑材の漏出経路上に、本願請求項2記載の発明においては潤滑材供給手段から漏出した潤滑材の漏出経路上に、潤滑材を滞留させる潤滑材滞留部を設けたので、漏出した潤滑材はキャリッジ表面を伝ってキャリッジを構成する他の構成要素へと流出することなく、前記潤滑材滞留部に滞留保持される。これにより、軸受部における摺動摩擦抵抗をより軽減するためにガイド軸または、および軸受部への充分な潤滑材の供給をおこないつつ、漏出した潤滑材が他の構成要素へ悪影響を及ぼす不具合を防止することが可能となる。
また、キャリッジの組み立て上、またはキャリッジの金型成形上の理由から、キャリッジにおける軸受部の下方が開放状態となるような構造を採らざるを得ない場合がある。このような場合、軸受部若しくは潤滑材供給手段から漏出した潤滑材は、該開放部から外部へと直接的且つ容易に漏出する。
本願請求項1または2に記載の発明によれば、前記開放部を、前記潤滑材滞留部を有する閉塞カバーで閉塞したので、軸受部若しくは潤滑材供給手段から漏出した潤滑材は、閉塞カバーによって直接的且つ容易に外部へ流出することなく、且つ、前記閉塞カバーに設けられた潤滑材滞留部に滞留するので、もって上記作用効果を得ることが可能となる。
【0011】
本願請求項2に記載の発明に係るキャリッジは、請求項1における前記潤滑材滞留部が、漏出した前記潤滑材が前記被記録材の記録面に記録を行う記録ヘッド部へと伝わる漏出経路上に設けられることを特徴とする。
【0012】
本願請求項2に記載の発明によれば、軸受部若しくは潤滑材供給手段から漏出した潤滑材が記録ヘッド部へと向かう漏出経路上に潤滑材滞留部が設けられるので、漏出した潤滑材が記録ヘッド部に到達することがなく、これによって記録ヘッド部を構成する樹脂材料の割れ,変色や、潤滑材がインク吐出口に付着することによる印字品質の低下を招来する虞がない。
【0016】
本願請求項4に記載の発明に係るキャリッジは、請求項1から3のいずれかに1項における、前記潤滑材滞留部に、前記潤滑材を導き且つ滞留させる複数の案内溝を設けたことを特徴とする。
【0017】
本願請求項4に記載の発明によれば、潤滑材滞留部に潤滑材を導き且つ滞留させる複数の案内溝を設けたので、該案内溝によって潤滑材を確実に潤滑材滞留部内に導き、且つ滞留保持させることができる。
【0018】
本願請求項5の発明に係るキャリッジは、請求項4における前記複数の案内溝が、前記ガイド軸の軸方向に平行であって、且つ互いに並列するように設けられることを特徴とする。
【0019】
本願請求項5に記載の発明によれば、潤滑材を導き且つ滞留保持する案内溝がガイド軸の軸方向に平行であって、且つ互いに並列するように設けられるので、ガイド軸の軸方向を有効に潤滑材滞留部として利用することができるとともに、案内溝の設置を密にすることができ、もって潤滑材の滞留保持部内での滞留保持容量をより高めることが可能となる。
【0020】
本願請求項6に記載の発明に係るキャリッジは、請求項5において、前記ガイド軸の軸方向に垂直であって、且つ互いに並列する請求項4記載の複数の案内溝が更に設けられることを特徴とする。
【0021】
本願請求項6記載の発明によれば、ガイド軸に平行に且つ並列して設けられる複数の案内溝に加えて、ガイド軸に垂直に且つ並列である複数の案内溝が更に設けられるので、ガイド軸に平行に設けられた複数の案内溝によって潤滑材滞留部内に導かれた潤滑材は、ガイド軸と垂直に設けられた案内溝に更に入り込み、もって潤滑材滞留部内における潤滑材の滞留保持容量を更に高めることが可能となる。
【0022】
本願請求項7に記載の発明に係るキャリッジは、請求項1から6のいずれか1項における、前記潤滑材供給手段による潤滑材の供給が、潤滑材を含浸した少なくとも1以上の潤滑材含浸体と前記ガイド軸との摺動による、前記潤滑材含浸体からの潤滑材の滲出によるものであることを特徴とする。
【0023】
本願請求項7に記載の発明によれば、潤滑材供給手段として、ガイド軸と接触・摺動することによって潤滑材が内部から滲出する、潤滑材を含浸した少なくとも1以上の潤滑材含浸体を用いたので、安価に且つ簡易に、潤滑材供給手段を設けることが可能となる。
【0024】
本願請求項8に記載の発明に係るキャリッジは、請求項1から7のいずれか1項における前記潤滑材滞留部が、前記軸受部と隣接する位置に設けられることを特徴とする。
【0025】
本願請求項8に記載の発明によれば、潤滑材滞留部が軸受部と隣接する位置に設けられるので、潤滑材の漏出源である軸受部から漏出する潤滑材を、漏出源により近い位置で潤滑材滞留保持部内へと導くことができ、もって確実に潤滑材の流出を防止することができる。
【0026】
本願請求項9に記載の発明に係るキャリッジは、請求項8における前記潤滑材含浸体が、前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部を避けて配置されることを特徴とする。
【0027】
本願請求項9に記載の発明によれば、潤滑材滞留部の鉛直方向上部には潤滑材含浸体が存在しないので、潤滑材滞留部による潤滑材の滞留を阻害することがない。
【0028】
本願請求項10に記載の発明に係るキャリッジは、請求項8における前記潤滑材含浸体が、前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部を含んで配置され、且つ前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部に位置する前記潤滑材含浸体は、前記潤滑材滞留部から離間して配置されることを特徴とする。
【0029】
本願請求項10に記載の発明によれば、潤滑材含浸体が前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部を含んで配置されるので、潤滑材の供給量をより大なるものとすることができるとともに、潤滑材滞留部の鉛直方向上部に位置する潤滑材含浸体は、前記潤滑材滞留部から離間して配置されるので、潤滑材滞留部による潤滑材の滞留を阻害することがない。
【0030】
また、被記録材の記録面と平行に、かつ、被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動し、前記ガイド軸と、前記ガイド軸と摺動する軸受部との摺動摩擦抵抗を潤滑材によって低減させるための潤滑材供給手段を有するキャリッジであって、前記潤滑材供給手段による前記ガイド軸または、および前記軸受部への前記潤滑材の供給によって、前記ガイド軸と摺動する前記軸受部から漏出した前記潤滑材を吸収する潤滑材吸収体を有し、前記潤滑材吸収体は、前記軸受部と隣り合って位置し、且つ前記ガイド軸と非接触となるよう配置されるものによれば、該潤滑材吸収体によって漏出した潤滑材が吸収され、漏出した潤滑材がキャリッジ表面を伝ってキャリッジを構成する他の構成要素へと流れることがない。これにより、前記軸受部における摺動摩擦抵抗をより軽減するために前記ガイド軸または、および前記軸受部への充分な潤滑材の供給をおこないつつ、漏出した潤滑材が他の構成要素へ悪影響を及ぼす不具合を防止することが可能となる。
【0032】
また、潤滑材吸収体は、ガイド軸とは非接触状態に置かれるため、潤滑材供給手段から供給される潤滑材を直接的に且つ直ちに吸収することがなく、真に漏出した不要な潤滑材のみを吸収することが可能となる。
【0033】
本願請求項11に記載の発明に係る記録装置は、請求項1から10のいずれか1項に記載のキャリッジを備えていることを特徴とする。
【0034】
本願請求項11に記載の発明によると、記録装置において、前述した本願請求項1から10のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下では、図1を参照しながら、本発明に係る「記録装置」としてのインク・ジェット・プリンタの概要について説明する。図1は、インク・ジェット・プリンタ100の概略斜視図である。
【0036】
インク・ジェット・プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)100は、「被記録材」としての印刷用紙(単票紙、以下、単に「用紙」という。)Pを複数枚積層する着脱可能な給紙トレイ1をプリンタ100本体の正面底部に備える。用紙Pは給紙トレイ1から図示を省略する給紙ローラによって、本体背面を通り、本体上部に位置する搬送ローラ8へU字反転した状態で給送される。搬送ローラ8へ給送された用紙Pは、搬送ローラ8の回動に従って従動回動する搬送従動ローラ7との間で挟圧されながら、搬送ローラ8の回動によって記録ヘッド部29へ一定のピッチで副走査方向へ搬送される。
【0037】
プリンタ100本体の基体となる底フレーム2には主フレーム3が立設され、主フレーム3にはキャリッジ20を案内するガイド軸4が設置される。また、主フレーム3の右側部(図1における右側)にはキャリッジ20を往復動させるキャリッジ・モータ6が設置され、該キャリッジ・モータ6の回転軸には駆動プーリ9が取り付けられる。更に、主フレーム3の左側部には従動プーリ10が取り付けられ、駆動プーリ9と従動プーリ10との間には駆動ベルト5が掛架される。
【0038】
キャリッジ20は駆動ベルト5の一部と固定され、キャリッジ・モータ6の回転によって駆動ベルト5が駆動されることにより、ガイド軸4に案内されながら主走査方向(図1における矢印の方向)に往復動する。キャリッジ20には、インク・カートリッジ21が着脱可能に取り付けられ、このインク・カートリッジ21内のインクは、キャリッジ20の用紙Pに対向する面に設けられた記録ヘッド部29に送られる。記録ヘッド部29は、用紙Pに対向する面に形成されたノズル列(図示せず)からインクを、搬送された用紙Pに吐き出し、これにより、印刷が行われる。
【0039】
次に、本発明に係るキャリッジ20の詳細な構成について、図2乃至図8を参照しつつ説明する。
【0040】
<実施の形態1>
まず、実施の形態1について図2乃至図7を参照しつつ説明する。図2は、キャリッジ20およびガイド軸4を、図1におけるプリンタ100の後方左下から視た斜視図であり、図3(A),(B)は図2における軸受部22を拡大した側面図および正面図である。
図2および図3において、キャリッジ20はガイド軸4を挿通する、軸受部22,22を備える。軸受部22,22は銅鉄合金を焼結させ、焼結によって生じた開放気孔に潤滑油を含浸させたいわゆる焼結含油軸受であって、ガイド軸4との摺動時には前記開放気孔から潤滑油が滲出して潤滑効果を果たし、静止時には毛細管現象によって再び開放気孔に潤滑油が戻る。従って、外部からの潤滑油の供給が無い場合においても、潤滑油分が消耗しない限りは、一定の摺動回数内において一定の潤滑効果を自ら発生させることができる。樹脂成形されるキャリッジ20本体(例えば、ABS樹脂による射出成形)の両サイドには軸受部22,22を挿入する取付孔が設けられ、軸受部22,22はキャリッジ20の両側から前記取付孔へ圧入されることによって、キャリッジ20本体に固定される。
【0041】
軸受部22,22の軸受内周部には、図3(A),(B)に示すように軸方向に延びる切欠溝23が円周方向に一定間隔で設けられ、これによってガイド軸4の外周面との接触面積が低減され、軸受部22,22による潤滑油のそぎ落とし量を低減させている。
【0042】
軸受部22,22の間には、挿通されたガイド軸4を上部から覆うガイド軸カバー部24が形成され、且つガイド軸4を挟んだ径方向(軸受部22,22の下方)は開放部となっていて、該開放部には後述する「潤滑材滞留部」としての側面視略半円形状を有する閉塞カバー30が、図2に示す矢印の方向に取り付けられる。キャリッジ20本体への閉塞カバー30の取付は、閉塞カバー30に設けられたアーム部31,31の先端に形成されたツメ部32,32が、キャリッジ20に設けられた取付穴28,28(図4(A)参照)に嵌合することによっておこなわれる。
【0043】
次に、図4を参照しつつ、ガイド軸カバー部24について説明する。図4(A)および(B)は図2におけるキャリッジ20のX矢視図(平面図)であり、(A)はガイド軸4が未挿通の状態、(B)はガイド軸4が挿通された状態を示す。
ガイド軸4が挿通された状態を示す図4(B)において、軸受部22,22の間におけるガイド軸4には、「潤滑材供給部」および「潤滑材含浸体」としての含油フェルト26aが中間位置から左右にそれぞれ4ヶ(計8ヶ)挿通される。含油フェルト26aはフェルト生地へ「潤滑材」としての潤滑油を含浸させたものであって、ドーナツ形状を有し、その内周面がガイド軸4の外周面と接触するように形成されている。従って、キャリッジ20の往復動に伴ってガイド軸4と摺動して、潤滑油を内部から滲出させることにより、ガイド軸4の外周面に潤滑油を供給する。尚、本実施形態においては含油フェルト26aは計8ヶ用いられているが、必要に応じて適宜配置数を変更することにより、潤滑油の供給量を調整することができる。
【0044】
ガイド軸4が未挿通の状態を示す図4(A)において、ガイド軸カバー部24の内側には仕切板27aが、ガイド軸カバー部24の中間から両側にそれぞれ5ヶ所形成され、該仕切板27aによって空間部25aがガイド軸カバー部24の中間から両側にそれぞれ4ヶ所形成される。また、仕切板27aにはキャリッジ20にガイド軸4を挿通させるための半円形逃げ部(図6参照)が設けられる。
【0045】
次に、図5および図6を参照しつつ、閉塞カバー30について詳述する。図5(A),(B)および図6はそれぞれ、図2におけるA,B,C矢視図である。
図5(A)および図6において、閉塞カバー30の内側には、ガイド軸カバー部24に形成される仕切板27aと対向する仕切板27bが仕切板27aと同数形成される。これにより、該仕切板27bによって、ガイド軸カバー部24に形成される空間部25aと対向する空間部25bが、空間部25aと同数形成される。また、仕切板27bには、仕切板27aと同様にキャリッジ20にガイド軸4を挿通させる半円形逃げ部が形成される。従ってドーナツ形状を有する含油フェルト26aの外周部は、その両側に位置する仕切板27a,27bによって包持され、ガイド軸4の軸方向への移動が拘束されるので、キャリッジ20の往復動がおこなわれてもガイド軸4の軸方向に移動することなく配置される。
【0046】
閉塞カバー30の両端に位置する仕切板27bの両外側には、潤滑材滞留部33aが設けられる。潤滑材滞留部33aには閉塞カバー30の長手方向に伸びる複数の突起41aがガイド軸4の軸方向に平行に且つ互いに並列して設けられ、これによって潤滑油を導き且つ滞留させる複数の案内溝42aが形成される。潤滑材滞留部33aは、キャリッジ20本体に取り付けられた際に軸受部22と隣接する位置に配置される。
【0047】
側面視略半円形状を有する閉塞カバー30の外周面には潤滑材滞留部33aと同様に閉塞カバー30の長手方向に伸びる複数の突起41cがガイド軸4の軸方向に平行に且つ互いに並列して設けられ、これによって潤滑材を導き且つ滞留させる複数の案内溝42cが形成される。従って、該案内溝42cによって、閉塞カバー30の外周面に潤滑材滞留部33cが形成される。
【0048】
更に、キャリッジ20の壁面50(図2参照)と接触する接触面35には、長手方向に伸びる複数の突起41bがガイド軸4の軸方向に平行に且つ互いに並列して設けられ、これによって潤滑油を導き且つ滞留させる複数の案内溝42bが形成される。従って、該案内溝42cによって、接触面35には潤滑材滞留部33bが形成される。
【0049】
尚、本実施の形態においては、ガイド軸4と平行な複数の並列する案内溝42a,42b,42cを設けたが、これに加えて更にガイド軸4と垂直な複数の並列する案内溝を設けることにより、潤滑油の滞留可能容積を増大させることが可能となる。
【0050】
次に、本発明の作用効果について図7を参照しつつ説明する。図7は軸受部22付近を拡大した側面図であって、(A)は潤滑油の漏出経路を、(B)は潤滑材滞留部の位置関係を示す概略模式図である。含油フェルト26aから供給される潤滑油は、ガイド軸4と軸受部22との摺動によってそぎ落とされ、軸受部22の円周下部へ集まる。軸受部22の円周下部に集まった潤滑油は、図7(A)における矢印で示すように、記録ヘッド部29へ向かう漏出経路を辿る。尚、破線aは、図7(A)における軸受部22の裏側隅を伝って漏出する潤滑油若しくは含油フェルト26aから直接漏出する潤滑油の漏出経路を示している。
【0051】
一方、軸受部22の下方には、図7(B)に示すように、潤滑材滞留部33aおよび33cが存在する。従って軸受部22から漏出した潤滑油は、潤滑材滞留部33aおよび33cによって捕捉され、滞留保持される。また、キャリッジ本体20の壁面50には潤滑材滞留部33bが存在するので、図7(A)における破線bで示すように、壁面50を伝って外部へ漏出しようとする潤滑油を捕捉し、滞留保持することができる。
【0052】
以上により、本実施形態においては、軸受部22から漏出する潤滑油若しくは含油フェルト26aから直接漏出する潤滑油が、記録ヘッド部29へと向かう漏出経路上に潤滑材滞留部33a,33b,33cが設けられているので、漏出した潤滑油が記録ヘッド部29に到達することがなく、記録ヘッド部29を構成する樹脂材料の割れ,変色等を来たしたり、インク吐出口(図示せず)に付着することによって印字品質の低下を招来する虞がない。これによって、ガイド軸4への充分な潤滑油の供給をおこなうことができ、キャリッジ20の耐久性能の向上を図ることが可能となる。
【0053】
<実施の形態2>
次に、図8(A)を参照しつつ実施の形態2について説明する。図8(A)は、本発明に係るキャリッジ20の実施の形態2を示した平面図であり、閉塞カバー30を取り外した状態を示すものである。尚、その他の構成は、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0054】
図8(A)において、含油フェルト26aは軸受部22,22の間において中間位置から左右にそれぞれ5ヶ(計10ヶ)挿通される。これによって、実施の形態1と比較して、より確実に且つ充分に潤滑油の供給をおこなうことが可能となる。ここで、閉塞カバー30を取り付けた際、軸受部22に隣接する含油フェルト26の外周面が、閉塞カバー30に設けられた潤滑材滞留部33aと離間するようにその外径が調整される。これによって、潤滑材滞留部33aにおける潤滑油の滞留を阻害することなく、ガイド軸4への潤滑油の供給をおこなうことができるので、実施の形態1と同様な作用効果を得ることが可能となる。
【0055】
<実施の形態3>
次に、図8(B)を参照しつつ実施の形態3について説明する。図8(B)は、本発明に係るキャリッジ20の実施の形態3を示した平面図であり、閉塞カバー30を取り外した状態を示すものである。尚、その他の構成は、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0056】
図8(B)において、含油フェルト26aは実施の形態1と同様に、軸受部22,22の間において中間位置から左右にそれぞれ4ヶ(計8ヶ)挿通される。軸受部22,22に隣接する位置には、「潤滑材吸収体」としての吸収フェルト26bがそれぞれ設けられる(計2ヶ)。吸収フェルト26bは、潤滑油を含浸しないフェルト生地からなり、含油フェルト26aと同様にドーナツ形状を有し、その外周面が閉塞カバー30に接触するように形成されている。従って、軸受部22から漏出する潤滑油は吸収フェルト26bに吸収されるので、軸受部22から漏出した潤滑油が記録ヘッド部29へと流れることがなく、これにより、軸受部22における摺動摩擦抵抗をより軽減するためにガイド軸4への充分な潤滑油の供給をおこないつつ、漏出した潤滑油が記録ヘッド部29に到達することによる各種弊害を防止することが可能となる。
【0057】
また、吸収フェルト26bの内径はガイド軸4の外径よりも大なるものとなっている。従って、吸収フェルト26bはガイド軸4の外周面と非接触状態を保つため、含油フェルト26aによってガイド軸4の外周面に供給された潤滑油を直接的に且つ直ちに吸収することがなく、漏出した潤滑油を吸収する吸収能力をいたずらに低下させることがない。
【0058】
尚、本実施形態においては、閉塞カバー30において潤滑材滞留部33a,33bを設けることなく上述した作用効果を得ることができる。また、吸収フェルト26bを軸受部22の両側面に設けることによって、潤滑材滞留部33c、ひいては閉塞カバー30を設けることなく上述した作用効果を得ることもできる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、軸受部から漏出する潤滑材の漏出経路上に潤滑材滞留部または潤滑材吸収体を設けたので、前記軸受部から漏出した潤滑材は前記潤滑材滞留部または潤滑材吸収体に捕捉され、滞留保持される。従って、漏出した潤滑材がキャリッジ表面を伝って、キャリッジを構成する他の構成要素へと流れることがなく、これにより、軸受部における摺動摩擦抵抗をより軽減するためにガイド軸または軸受部への充分な潤滑材の供給をおこないつつ、漏出した潤滑材が他の構成要素へ到達することによる各種弊害を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインク・ジェット・プリンタの概略斜視図である。
【図2】本発明に係るキャリッジの斜視図である。
【図3】(A)は本発明に係るキャリッジの軸受部を拡大した側面図、(B)は正面図である。
【図4】(A)は本発明に係るキャリッジの、ガイド軸が未挿通の状態を示す平面図、(B)はガイド軸を挿通した状態を示す平面図である。
【図5】カバーの詳細構造を示す平面図であり、(A)は図2におけるA矢視図、(B)は同B矢視図である。
【図6】カバーの詳細構造を示す平面図であり、図2におけるC矢視図である。
【図7】本発明に係るキャリッジの軸受部付近を拡大した側面図であって、(A)は潤滑材の漏出経路を、(B)は潤滑材滞留部の位置関係を示す概略模式図である。
【図8】(A),(B)共に本発明に係るキャリッジの他の実施の形態を示す平面図である。
【符号の説明】
4 ガイド軸
20 キャリッジ
22 軸受部
23 切欠溝
24 ガイド軸カバー部
25a,25b 空間部
26a 含油フェルト
26b 吸収フェルト
27a,27b 仕切板
29 記録ヘッド部
30 閉塞カバー
33a,33b,33c 潤滑材滞留部
41a,41b,41c 突起部
42a,42b,42c 案内溝

Claims (11)

  1. 被記録材の記録面と平行に、かつ、被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動し、前記ガイド軸と、前記ガイド軸と摺動する軸受部との摺動摩擦抵抗を潤滑材によって低減させるための潤滑材供給手段を有するキャリッジであって、
    少なくとも2以上の前記軸受部を有するとともに、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方が開放状態であり、
    前記潤滑材供給手段による前記ガイド軸への前記潤滑材の供給によって、または前記軸受部への前記潤滑材の供給によって、または前記ガイド軸と前記軸受部の双方への前記潤滑材の供給によって、前記ガイド軸と摺動する前記軸受部から漏出する前記潤滑材の漏出経路上に、前記潤滑材を滞留させる潤滑材滞留部を有し、
    任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方の開放部が、前記潤滑材滞留部を有する閉塞カバーで閉塞されている、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  2. 被記録材の記録面と平行に、かつ、被記録材の搬送方向と直交して配置されるべきガイド軸に案内されて往復動し、前記ガイド軸と、前記ガイド軸と摺動する軸受部との摺動摩擦抵抗を潤滑材によって低減させるための潤滑材供給手段を有するキャリッジであって、
    少なくとも2以上の前記軸受部を有するとともに、任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方が開放状態であり、
    前記潤滑材供給手段から直接漏出する前記潤滑材の漏出経路上に、前記潤滑材を滞留させる潤滑材滞留部を有し、
    任意の前記軸受部間における前記ガイド軸下方の開放部が、前記潤滑材滞留部を有する閉塞カバーで閉塞されている、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  3. 請求項1または2において、前記潤滑材滞留部は、漏出した前記潤滑材が前記被記録材の記録面に記録を行う記録ヘッド部へと向かう漏出経路上に設けられる、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  4. 請求項1から3のいずれか1項において、前記潤滑材滞留部に、前記潤滑材を導き且つ滞留させる複数の案内溝を設けた、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  5. 請求項4において、前記複数の案内溝は、前記ガイド軸の軸方向に平行であって、且つ互いに並列するように設けられる、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  6. 請求項5において、前記ガイド軸の軸方向に垂直であって、且つ互いに並列する請求項4記載の複数の案内溝が更に設けられる、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  7. 請求項1から6のいずれか1項において、前記潤滑材供給手段による潤滑材の供給は、潤滑材を含浸した少なくとも1以上の潤滑材含浸体と前記ガイド軸との摺動による、前記潤滑材含浸体からの潤滑材の滲出によるものである、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  8. 請求項1から7のいずれか1項において、前記潤滑材滞留部は、前記軸受部と隣接する位置に設けられる、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  9. 請求項8において、前記潤滑材含浸体は、前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部を避けて配置される、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  10. 請求項8において、前記潤滑材含浸体は、前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部を含んで配置され、
    且つ前記潤滑材滞留部の鉛直方向上部に位置する前記潤滑材含浸体は、前記潤滑材滞留部から離間して配置される、
    ことを特徴とするキャリッジ。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載のキャリッジを備えていることを特徴とする記録装置。
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