JP3864377B2 - 既設トンネル拡幅工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設トンネル拡幅工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、交通量の増加や交通車両の大型化に伴い、既設トンネルの断面拡大(トンネル拡幅)のニーズが増えている。さらに、このようなトンネル拡幅工事では、工事中も車両の通行を可能とした活線下での施工が強く求められるようになっている。
【0003】
従来、このような活線下でのトンネル拡幅工事では、既設トンネル内にプロテクターと呼ばれる防護工を施し、プロテクター内に安全走行が可能な車線を確保し、その外部に作業スペースを設けて、周りの既設トンネルを壊しながら拡幅していた。そのため、例えば、2車線の既設トンネルであれば、プロテクターによって確保できるのは1車線分のみとなっていた。そこで、拡幅工事に要する長期間にわたって、車線規制を行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トンネル拡幅が必要となる既設トンネルは、もともと交通量が多いので、このような車線規制を行うと、交通渋滞を引き起こすなど、第3者に対する影響が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、既設トンネルの通行車線をそのまま確保しながら、工期の大部分にわたって活線状態でトンネル拡幅工事を行うことができる既設トンネルの拡幅工法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、既設トンネルの既設覆工を取り囲む地山を掘削して、拡幅トンネルの拡幅断面を形成し、該拡幅断面を既設トンネル延在方向に延ばして、拡幅トンネルの拡幅スペースおよび拡幅トンネル内面を形成し、該既設覆工の除去と前記拡幅トンネル内面に新設トンネルの新設覆工の構築を行う既設トンネル拡幅工法であって、前記既設トンネルの内側から、前記既設覆工を補強するとともに、前記拡幅トンネルの事前支保として補強部材を前記地山に打設して前記地山を補強する第1の工程と、前記既設覆工を残し、前記地山を掘削して、前記拡幅スペースを形成する第2の工程と、前記拡幅トンネル内面に支保工を設ける第3の工程と、前記既設覆工除去するとともに、前記支保工が設けられた前記拡幅トンネル内面に新設覆工を設ける第4の工程と、からなり、前記第1〜3の工程によって、既設トンネル延在方向にわたって前記拡幅スペースを設けてから、前記第4の工程を繰り返して拡幅を行うことを特徴とする既設トンネル拡幅工法。を用いる。
そのため、第1の工程で既設覆工を補強するとともに、拡幅トンネルの事前支保として補強部材を地山に打設してその外周の地山の補強が行えるので、既設覆工をプロテクターとして用いることができる。
また、第3の工程で拡幅トンネル内面を支保してから、第4の工程を行うので、既設覆工を除去や新設覆工設置の際、頑丈なプロテクターに頼らず作業が行える。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の既設トンネル拡幅工法において、前記第2および第3の工程を、前記既設覆工をまたいで、前記既設トンネル延在方向に移動可能とされた移動架台を備え、該移動架台上に、前記地山を掘削するための掘削手段と、前記拡幅トンネル内面に支保工を設けるための支保工設置手段と、を備える装置を用いて行うことを特徴とする既設トンネル拡幅工法を用いる。
そのため、既設覆工に負荷がかからないので、第1の工程における支保工を小規模にとどめることができるとともに、第2の工程と第3の工程を行う手段を兼ね備えた装置を用いるので、装置の入れ替えなどの手間が不要で、掘削後直ちに支保工の設置が行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なおすべての図面を通して、同一または相当する部材は、同一の符号を付している。
まず本発明に係る既設トンネル拡幅工法に用いる既設トンネル拡幅装置を説明する。
図1は、該装置を用いて既設トンネルの拡幅工事を行っている様子を示すトンネル断面方向の部分断面図である。図2は、同じくトンネル延在方向の側面視部分断面図である。図3は、同じくトンネルの上面視部分断面図である。
【0012】
既設トンネルAは、車道、鉄道いずれであってもよいが、以下では、例えば2車線からなる既設トンネル車線路面2aを備える車道トンネルを例にとって説明する。既設トンネルAは、例えば鉄筋コンクリートなどでアーチ状に設けられた既設覆工3を備えている。以下では、既設トンネル車線路面2a側の露出面を既設覆工内周面3a、その裏側にあって拡幅前には地山1の土圧を受けている面を既設覆工外周面3bと称する。
【0013】
図1〜3に示したのは、本発明に係る既設トンネル拡幅工法に用いる既設トンネル拡幅装置によって、坑口側から既設覆工3の外周の地山1が掘削、除去されて、所望幅が拡幅されている工事中の様子である、既設覆工外周面3bが露出し、それに対向する、例えばアーチ状の拡幅トンネル内面4aが形成されており、その間にトンネル延在方向に向かって拡幅スペース4bが延ばされ、トンネル拡幅が進められている。符号4cは、拡幅スペース4bの切羽を示す。
【0014】
なお、本装置の掘削に先立って、既設覆工内周面3aは、例えば鋼製支保工などからなる既設トンネル支保工18が建て込まれている。また、拡幅トンネルの事前支保を形成する目的で、既設覆工内周面3aから地山1の中に、例えばロックボルトやケーブルボルトなどの補強部材8が打設されている。
【0015】
本装置の構成は、大きくは、既設覆工3をまたいで既設トンネル延在方向に移動可能な移動架台6と、移動架台6に既設覆工外周面3bの断面形状に沿って移動可能に配設された掘削手段12およびコンクリート吹き付け手段13と、からなる。コンクリート吹き付け手段13は、支保工設置手段の一部をなしている。
【0016】
移動架台6は、拡幅スペース4b内に収まり、拡幅トンネル内面4aにほぼ沿うような断面形状を備える支持フレーム6aを支持梁6bで接合した鉄骨フレーム構造物である。
【0017】
移動架台6の下部には、拡幅トンネル床面2bに高さを位置出しして設けられた移動架台支持面2c上に着地して、移動架台6の自重を受けるための脚部6eが備えられ、その脇には拡幅トンネル床面2b上に敷設されたレール7上を移動可能な車輪などからなる移動手段6dが設けられている。移動手段6dは、例えば油圧ジャッキ(不図示)によって上げ下げが可能とされている。そのため、レール7に反力を取って移動手段6dを下げて、移動架台6全体を押し上げ、脚部6eを移動架台支持面2cから浮かすことができる。それによって、レール7上を移動することができる。また脚部6eの後方には油圧シリンダ6fが備えられており、油圧シリンダ6fの先端に取り付けたレール把持装置(不図示)によって、移動架台6を水平方向に押し出して移動させることが可能とされている。
【0018】
支持フレーム6aには、既設覆工外周面3bに対向する側に、例えばピンラック6cが設けられ、それにかみ合うピニオン14を備えた、鉄骨フレームからなる移動フレーム15(外周移動手段)がピンラック6cに案内されて移動可能に係合されている。
【0019】
移動フレーム15の切羽側には、掘削手段12が吊り下げられて設けられている。掘削手段12は、地山1を掘削するための回転ヘッド12aと、その姿勢を上下方向、左右方向にそれぞれ変更するための油圧シリンダ12b、12cからなる自由断面掘削機を採用することができる。
【0020】
移動フレーム15の坑口側からは、支保工建て込み後にコンクリートを吹き付けるためのコンクリート吹き付け手段13が2台設けられている。その吹き付け口は、油圧シリンダ13a、13bなどによって姿勢制御が可能で、伸縮ロッド13cによってトンネル延在方向への移動が可能とされている。
【0021】
また移動架台6の坑口側には、図2、3に示したように鉄骨フレームからなる支持フレーム16a、支持梁16bなどが既設覆工3をまたいで設けられた作業台車16が配置されている。作業台車16はその下部に、レール7上を移動する車輪などからなる移動手段16cを備えて、移動架台6と同様に拡幅スペース4bを移動できる構成とされた移動架台ともなっている。
【0022】
作業台車16の支持フレーム16aの切羽側側面の上部側には、切羽側に水平方向に伸縮する伸縮アーム23が複数設けられている。それぞれの先端には、拡幅トンネル内面4に向かって作業が可能な作業台17と、拡幅トンネル内面4aの形状に合わせた、例えば鋼アーチ支保工などからなる支保工5を持ち上げて、拡幅トンネル内面4aに設置するエレクタ11とが設けられている。
エレクタ11は支保工設置手段の一部をなしている。
【0023】
また移動架台6の脚部6eと既設覆工3の間は、掘削ずりなどの回収手段として、例えば小型のショベルカー9などが配置される空間が確保されている。ショベルカー9の後方には、坑口側に向かって、掘削ずりなどを搬送するコンベア10a、10bが配置されている。これらは、ずり排出手段を構成する。
【0024】
なお、コンベア10a、10bは、移動架台6と別体であってよいが、移動架台6にそれらを収納したり係合したりする手段を設け、必要なときに移動架台6とともにトンネル延在方向に移動できるようにしておいてもよい。
【0025】
なお、上記では、移動架台6および作業台車16は、レール7上を移動するとした例で説明したが、ゴムタイヤなどを備えた無軌道車両装置によって、拡幅トンネル床面2b上を移動するものであってもよい。そのように構成すれば、レール7を敷設しなくてよいので、施工段取りを簡略化することができる。
【0026】
また、移動架台6のトンネル延在方向の移動は、上記の説明の他にも、例えば動力を備えた移動作業車などによって行くこともできる。また、移動手段6dに動力を備えて自走させるように構成してもよい。
【0027】
なお、上記の説明で掘削手段12は、移動フレーム15から吊り下げられて取り付けられている例を説明したが、これは、支持フレーム6aをできるだけ拡幅トンネル内面4aに近づけ、既設覆工外周面3bと移動架台6の間にできるだけ広くスペースを設けられる構成として例示したものである。配置が可能なら、掘削手段12を移動フレーム15の上側に設けてもよいことは言うまでもない。
【0028】
次に、上記の既設トンネル拡幅装置を用いる本発明に係る既設トンネル拡幅工法を説明する。
本工法の第1の工程は、既設トンネルAの拡幅に先立って、既設覆工3およびその外周の地山1を補強する工程である。そのために、まず既設トンネルAの内側から、既設覆工内周面3aを、既設トンネル支保工18で補強するとともに、既設覆工内周面3aから地山1の中に、例えばロックボルトやケーブルボルトなどからなる補強部材8を打設して、地山1を補強する。
【0029】
なお補強部材8は、掘削手段12によって破砕可能な通常のロックボルトやケーブルボルトを利用できることはもちろんであるが、掘削中に容易に切断できるような材質を採用すると掘削が効率的に行える利点がある。例えば、そのような材質として、引張強度に優れるがせん断強度が低いグラスファイバー材料や炭素繊維強化材料、あるいはそれらと金属との複合材料などを採用することができる。
【0030】
この作業は、既設トンネル車線路面2aに作業車を導入して行うので、完全な活線下で作業を進めることは難しいが、作業時間は掘削などに比べればごく短時間で済むから、例えば交通量の少ない深夜時間帯などに限定して通行止めするか、車線規制して作業を進めても、不都合が起こるほどでなない。
【0031】
次に、本工法の第2の工程は、上記の既設トンネル拡幅装置を用いて、既設覆工3を残したまま、その外周の地山1を掘削する工程である。
そのために、図4(a)、(b)にそれぞれトンネル延在方向、トンネル断面方向の断面図を示したように、まず準備段階として、本装置を既設覆工3上に導入するために、既設覆工3外周の地山1を本装置が収まる程度の長さ、例えば数メートル程度の長さLだけ、人力もしくは小型の作業機械などでトンネル延在方向に掘削して、初期拡幅スペース22を設け、拡幅トンネル床面2bを整地し、本装置を受けるための移動架台支持面2cを設ける。そして拡幅トンネル床面2bに移動用のレール7を敷設し、脚部6eを持ち上げた移動架台6をレール7に乗せて、前進させる。このとき、適切な位置にレール7の敷設を行うことによって、移動架台6が、既設覆工3に接することなく、またいで移動し、拡幅トンネル内面4aとも作業上必要な対向距離を確保して前進されることは言うまでもない。
【0032】
そして、所定の位置まで移動したところで移動手段6dを上げて脚部6eを移動架台支持面2cに着地させる。装置の自重だけで、掘削中の安定できない恐れがある場合、移動架台支持面2cに固定機構を設けてもよいし、拡幅トンネル内面4aに設置されている補強部材8から反力をとってもよい。
【0033】
また、移動架台6と既設覆工3の間の拡幅トンネル床面2bには、ショベルカー9、コンベア10a、10bを搬入しておく。
【0034】
以上で、準備段階が終わるので、回転ヘッド12aを稼動させて、切羽4cからトンネル延在方向に掘削を行う。回転ヘッド12aは、油圧シリンダ12b、12cの作用によって上下左右に移動可能であり、切羽4cを適切な断面形状で掘削できる。また、掘削手段12は、支持フレーム6aに設けられたピンラック6cと係合するピニオン14の作用によって、ピンラック6c上を移動可能とされた移動フレーム15に設けられているので、ピンラック6cに沿って移動できる。したがって、回転ヘッド12aは、切羽4cの全面に移動しながら拡幅トンネル断面を、トンネル延在方向に掘削することができる。また掘削手段12はトンネル延在方向に伸縮機構(不図示)により移動可能となっている。
【0035】
また、掘削によって生じる掘削ずり、掘削土砂などは、既設覆工外周面3b上に落下して、最終的に拡幅トンネル床面2b上に集積する。本工法では、ショベルカー9を移動架台6と既設覆工外周面3bの間に配置するので、効率よく掘削ずり、掘削土砂を回収でき、コンベア10a、10bによって坑口側に迅速にずり搬出が行える。
【0036】
さて、こうして所定長さの掘削が終わると、拡幅トンネル内面4aを支保する第3の工程に移る。
まず、拡幅トンネル内面4aの上側に作業スペースを設けるため、移動架台6上の掘削手段12を外周方向に移動させて側方に退避させる。
次に作業台車16から伸縮アーム23を移動架台6の間を通して伸長させ、作業台17とエレクタ11を切羽4c付近まで前進させる。そしてエレクタ11により、支保工5を拡幅トンネル内面4aに設置する。
【0037】
次にコンクリート吹き付け手段13によって、拡幅トンネル内面4aおよび支保工5にコンクリートを吹き付ける。コンクリート吹き付け手段13は、掘削手段12と同じく、移動フレーム15に設けられているので、コンクリート吹き付け手段13自体は大きな移動範囲を備えていなくとも、既設トンネル車線路面2aにくまなくコンクリートを吹き付けることができる。
以上により、補強部材8で事前支保されていただけの拡幅トンネル内面4aに支保が設置される。
【0038】
本工法では、上記の第2および第3の工程を交互に繰り返し、あるいは可能なら並行して行い、切羽4cを前進させていくことにより、拡幅スペース4bを反対側の坑口まで貫通させる。
【0039】
次に、第4の工程について説明する。
第4の工程は、既設覆工3を徐々に壊して撤去した後、新設覆工21を打設していく工程である。図5に示したのは、その概略を説明するトンネル延在方向の概略断面図である。太い矢印は工程の作業が進んでいく方向を示す。
【0040】
まず、既設覆工3の壊し方を説明する。上記のように、本工法では、既設覆工3は坑口側から所定長さずつ徐々に壊していく。まず、既設覆工3の内側に設けられた支保工5を所定長さ分だけ解体する。そしてニブラなどのコンクリート圧砕機を装置した自走式機械などを坑口内に導入して所定長さを壊していく。
【0041】
この作業は、活線下では困難なので、全面交通止めにして行う。ただし、所定長さのコンクリートを圧砕するだけなので、短時間で終えられるから、交通渋滞などの影響が少ない深夜時間帯などを利用して行うことも可能である。
【0042】
また、このとき、あらかじめ既設覆工外周面3bから所定長さ範囲にカッターなどで既設覆工3に切り込みを設けておくと、さらに破砕に要する時間を短縮することができる。このためのカッターは、移動架台6の移動フレーム15に配設しておけば、既設覆工3の上側から行うことができ、活線状態でも作業可能となるので好都合である。もちろん、このカッターは、例えば作業台車16などに装置しておいてもよいことは言うまでもない。
【0043】
もちろん、既設覆工3を壊す方法は他にも種々考えられるので、どのような方法によってもよい。例えば、破砕を行う狭い幅のみを覆う強固な移動プロテクターを用い、拡幅トンネル床面2bに置いた破砕機で破砕すれば、活線状態でも作業が可能である。また、上記のようなごく短時間であっても交通止めにしたくない場合は、例えば1車線分のプロテクターを壊す区間だけ設置して作業を行い、壊す間のみ車線規制してもよい。
【0044】
次に、1次支保工にコンクリートを打設して新設覆工21を設けるための移動型枠である、セントル20を図示右側から搬入する。図示では略しているが、移動架台6などと同様に移動するための車輪を設けてレール7上を移動させると効率的である。
【0045】
なお、セントル20は、覆工コンクリートが硬化して所定強度が発現するまでは、プロテクターとしての機能をも有する。セントル20は、第3の工程で1次支保を行った上で搬入するので、新設覆工コンクリートの打設に耐えられるだけの強度があればよい。
【0046】
そして、既設覆工3を壊した延長距離に相当する長さだけ、セントル20を前進させ、コンクリートを打設する。新設覆工21の強度が所定値に発現するまで養生したら、既設覆工3を壊し、セントル20を外し、再び前進させて新設覆工21の設けられた新設覆工設置区間を前進させる。これを繰り返して、既設覆工3を取り壊しながら新設覆工21を打設していく。
【0047】
以上に説明したように、本工法によれば、第2、第3の工程において、既設覆工3が残され、作業は拡幅スペース4b内のみで行われ、掘削ずりが既設トンネル車線路面2aに落下したり、作業機械が既設トンネル内側に侵入したりすることがない。また、既設覆工3は第1の工程で外周の地山1が掘削される以前にトンネル内側から補強されているので、掘削が進んでも強度が落ちることはなく、既設トンネル内側に対して、プロテクターの機能を発揮することができるものである。
【0048】
しかも、本工法では、自重や掘削反力を脚部6eや移動手段6dを通じて拡幅トンネル床面2bに伝達する掘削装置を用いるので、既設覆工3には、掘削装置の自重が負荷としてかかることはない。そのため、その補強に用いる既設トンネル支保工18は、地山1の土圧が取り除かれた後の既設覆工3の強度を保ち、掘削ずりの落下などに対して十分な強度および掘削の衝撃などで既設トンネルA内にコンクリート片が剥落することがない程度の強度を備える支保工で十分であり、既設トンネルA内の車線範囲を狭める必要がなく、その配設も迅速に済ますことができるものである。
【0049】
したがって、第1の工程によって、交通止め、車線規制が行われるとしてもわずかであり、トンネル拡幅工事において、工期の大部分を占める拡幅スペース4bを設ける工程(第2、第3の工程)の間、既設トンネルA内に車線幅を狭めてしまうプロテクターを導入することなしに、既設トンネルAの車線数そのままの状態で活線状態を保持することができる。
【0050】
また、第4の工程においては、施工が進行する間、強度が発現した新設覆工設置区間と、セントル20によって拡幅トンネル内面を覆われた新設覆工設置区間と、既設覆工3によって覆われた既設覆工未壊し区間に分かれるが、いずれも、プロテクターが置かれたのと同じ安全性を備えるので、既設トンネルAの車線数を確保して活線状態とすることができる。既設覆工3を壊す短時間の間、通行制限を行う必要があるとしても、そのコスト、手間、第3者への影響のいずれにおいても、大きな問題ではない。
【0051】
ところで、本実施形態における第4の工程では、新設覆工に先立って既設覆工3を壊すようにしている。これは通常のセントルの内部空間がそう広くないため、セントルの設置の支障になることも考えられるからである。しかし、拡幅スペースの面積が広い場合、あるいはセントルの形状が拡幅スペースに収まる場合などでは、既設覆工3がセントル設置の支障とはならない。その場合には、既設覆工3を壊す前に、新設覆工を先行させて築造(形成)し、その後に既設覆工3の壊しを行うようにしてもよいことはもちろんである。
【0052】
また、既設覆工3を残して、外周の地山1を掘削する手段はいろいろ考えられるが、本発明にかかる既設トンネル拡幅装置によれば、既設覆工3をまたいで、自立しているので、既設覆工3に余計な負荷をかけることなく施工ができる。また、移動フレーム15に掘削手段12、コンクリート吹き付け手段13などトンネル拡幅に必要な機能だけをコンパクトにまとめ、拡幅トンネル断面に合わせて形状をレイアウトした専用機としているので、作業機械の都合でトンネル拡幅幅を広げる必要がないから、合理的な手間、コストによってトンネル拡幅が行える。
【0053】
また、第3の工程で建て込む支保工5は、通常分割して搬入するが、例えば、拡幅トンネル内面4aに打設されている補強部材8に吊り下げ装置を取り付けて搬入手段とすると便利である。また、作業足場は、その都度設けてもよいが、レール7上を移動できる作業台車16を必要に応じて、作業位置まで移動させて、作業足場に用いると効率的である。
【0054】
なお、上記では、移動フレーム15は、ラックピニオン方式で断面外周方向に移動する例で説明したが、移動方式はこれだけに限られないことは言うまでもない。例えば、チェーン伝動方式や歯車伝動方式なども採用することができる。
【0055】
なお、移動フレーム15を断面外周方向に移動させるのは、掘削手段12やコンクリート吹き付け手段13などの可動範囲を減らしてその構成を簡単でコンパクトにするためであって、例えば、それぞれを複数設けて、支持フレーム6a上に固定して設けてもよい。そのように構成すれば、同時に施工できるので、作業効率が高められるという利点がある。
【0056】
なお、上記では、移動架台6の導入は、別手段で初期拡幅スペース22を掘削してから行う例を説明したが、例えば、図4(c)、(d)にそれぞれトンネル延在方向、トンネル断面方向の断面図を示したように、既設トンネルAの坑口近傍に、既設覆工内周面3a内部に貫入するプロテクター19を設け、その上に移動架台6をまたぐように設置し、最初から移動架台6を用いて掘削を進めてもよい。プロテクター19は、移動架台6が完全に既設覆工3上に移動してからは不要となるが、反対の坑口側に拡幅スペース4bが貫通する際に、再度用いれば、活線状態が確保できて好都合である。
【0057】
なお、上記の説明では、支保工設置手段を、コンクリート吹き付け手段13は移動架台6に、エレクタ11は作業台車16に、それぞれ分けて搭載する例で説明したが、それぞれを一体の移動架台に搭載してもよいことは言うまでもない。
【0058】
なお、上記の説明では、作業台17とエレクタ11がトンネルの周方向には移動しない例で説明したが、例えば、移動架台6と同様に、ピンラック6cにピニオン14がかみ合って移動する移動フレーム15のような外周移動手段を設けることにより、作業台17とエレクタ11もトンネルの周方向に移動できるようにしてもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上に述べたように、請求項1に記載の発明では、第1の工程で既設覆工を補強するとともに、拡幅トンネルの事前支保として補強部材を地山に打設してその外周の地山の補強が行えるので、既設覆工をプロテクターとして用いることができて、工期の大部分を占める第2、第3の工程において、既設トンネルの車線数を確保した活線状態での施工が行えるという効果を奏する。
また、事前支保されているから、地山の掘削を効率的かつ安全に進めることができるという効果を奏する。
また、既設覆工を除去する前に、第3の工程で拡幅トンネル内面を支保するので、新設覆工を設ける際に作業が安全に行えるという効果を奏する。
【0060】
請求項2に記載の発明では、掘削手段と支保工設置手段が移動架台に備えられているから、既設覆工に負荷がかからず、第1の工程における支保工を小規模にとどめることができる。その結果、既設トンネル内のスペースをより多く確保することができ、第1の工程にあまり手間をかけなくて済むという効果を奏する。また、掘削手段と支保工設置手段を備えているから、第2の工程と第3の工程を相次いで行うことができる。その結果、工事の安全性を高めることができ、しかも作業機械の入れ替えなどをする必要がないので工事の作業効率を上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る既設トンネル拡幅工法において、既設トンネル拡幅装置を用いて既設トンネルの拡幅工事を行っている様子を示すトンネル断面方向の部分断面図である。
【図2】 同じくトンネル延在方向の側面視部分断面図である。
【図3】 同じくトンネルの上面視部分断面図である。
【図4】 本発明に係る既設トンネル掘削工法の初期拡幅スペースを設ける2つの方法を説明するトンネル延在方向および断面方向の断面図である。
【図5】 第4の工程の概略を説明するトンネル延在方向の概略断面図である。
【符号の説明】
1 地山
3 既設覆工
3b 既設覆工外周面
4a 拡幅トンネル内面
4b 拡幅スペース
5 支保工
6 移動架台
8 補強部材
9 ショベルカー(ずり排出手段)
10a、10b コンベア(ずり排出手段)
11 エレクタ(支保工設置手段)
12 掘削手段
13 コンクリート吹き付け手段(支保工設置手段)
15 移動フレーム(外周移動手段)
16 作業台車(移動架台)
18 既設トンネル支保工
20 セントル
21 新設覆工
Claims (2)
- 既設トンネルの既設覆工を取り囲む地山を掘削して、拡幅トンネルの拡幅断面を形成し、該拡幅断面を既設トンネル延在方向に延ばして、拡幅トンネルの拡幅スペースおよび拡幅トンネル内面を形成し、該既設覆工の除去と前記拡幅トンネル内面に新設トンネルの新設覆工の構築を行う既設トンネル拡幅工法であって、
前記既設トンネルの内側から、前記既設覆工を補強するとともに、前記拡幅トンネルの事前支保として補強部材を前記地山に打設して前記地山を補強する第1の工程と、
前記既設覆工を残し、前記地山を掘削して、前記拡幅スペースを形成する第2の工程と、
前記拡幅トンネル内面に支保工を設ける第3の工程と、
前記既設覆工除去するとともに、前記支保工が設けられた前記拡幅トンネル内面に新設覆工を設ける第4の工程と、
からなり、
前記第1〜3の工程によって、既設トンネル延在方向にわたって前記拡幅スペースを設けてから、前記第4の工程を繰り返して拡幅を行うことを特徴とする既設トンネル拡幅工法。 - 請求項1に記載の既設トンネル拡幅工法において、
前記第2および第3の工程を、
前記既設覆工をまたいで、前記既設トンネル延在方向に移動可能とされた移動架台を備え、該移動架台上に、前記地山を掘削するための掘削手段と、前記拡幅トンネル内面に支保工を設けるための支保工設置手段と、を備える装置を用いて行うことを特徴とする既設トンネル拡幅工法。
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