JP3863989B2 - 砕氷方法および砕氷船 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は氷原を通じて水路を開通するための砕氷方法に関しかつこの方法を実施するための砕氷船に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
砕氷船は冬季の海上交通において船舶の航行を補助するために設計されている。このような補助は、氷原を通じての水路を開通しかつまたは維持することを含む。それゆえに、砕氷船は、通常、特定の冬季の海上交通に好適であるように設計されている。例えば、フィンランド湾については、典型的には、補助されるべき船が多数でありかつ補助が必要な距離が比較的に短い。補助されるべき船のサイズは、大きく変動し、従って、砕氷船により開通される水路の幅に対して特殊の要求条件が設定されている。フィンランド湾において航行が補助されるべき船の幅は、典型的には、10mから40mまでの範囲内である。
【0003】
従来の砕氷船は、該砕氷船の幅を越える幅を有する船の航行を効果的に補助することはできない。他方、非常に広い幅を有する船が補助を必要とすることは滅多になく、従って、このような幅の広い砕氷船が必要になる極めて小数の場合のみのために例えば40mの砕氷船を建造することは経済的ではない。従来、広い水路を開通するために一隻の砕氷船を使用して前後に往復航行することにより、または広い水路を開通するために2隻の砕氷船を同時に一緒に使用することにより、広い幅を有する船の運行を補助することが慣行であった。最初に述べた方法は、特にもしも氷原が移動していれば、作業速度が遅くかつどちらかといえば効率が悪い。第2の方法は、2隻の砕氷船を必要とし、従って、他の場所で船の運行の補助を行うためには、砕氷船隊の能力が低下することになる。
【0004】
米国特許第5218917号明細書によれば、大きい氷塊が存在する状態(heavy ice condition)における砕氷船の走行方向は、外洋(open sea)において氷の量が小量である場合の砕氷船の走行方向とは異なるかもしれない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、一隻の砕氷船のみを使用して氷原において非常に広い幅を有する船の航行を効果的にかつ経済的に補助する問題を解決することにある。本発明による方法を実施するための砕氷船は、氷原を通じて完全にまたは部分的に斜めに航行することができる。砕氷船のキール線を砕氷船の走行方向に対してある好適な角度に向けることにより、砕氷船の水線の幅よりも実質的に大きくすることができる幅の水路を開通し、かつ極端な場合には、砕氷船の水線の長さと同じ幅を有する水路すらをも開通するためにこの砕氷船を使用することができる。
【0006】
この明細書に使用されている「キール線の方向」なる用語は、砕氷船が航行に対する抵抗が最小になるように外洋または氷の中を走行するときに選択される砕氷船の走行方向を意味する。
【0007】
本発明による砕氷船の船体の各々の端部は、少なくとも一つの操舵可能な推進機構を備えている。「操舵可能な推進機構」なる用語は、推進方向を自由に選択することができる推進機構を意味する。最も一般的なかつこの特性を有する砕氷船のために最も効果的な推進機構は、いわゆる舵を備えた推進装置、すなわち、推進装置を回転することにより推進方向を変更することができるように実質的に垂直の軸線のまわりに回転可能である推進装置である。このような装置は、例えば、米国特許第5403216号明細書に記載されている。
【0008】
十分な効率は、船体の各々の端部に設けられた単一の操舵可能な推進機構により必ずしも得られない。それゆえに、砕氷船が少なくとも3つの操舵可能な推進機構を備え、そのうちの2つの推進機構は、砕氷船の端部、すなわち、大きい氷塊が存在する状態で進行方向に前側に配置されている。本発明による砕氷船の所望通りの操舵を確実に行うために、異なる推進機構の間の出力の分布をその時点の状態により好ましくはステップレス制御で(steplessly)変更可能であることが特に重要である。それにより、砕氷船の駆動機械の出力は、必要に応じて別々の推進装置の間で常に好適に分布することができ、それにより出力分布を制御することにより、走行方向およびキール線の方向と走行方向との間の角変位に変更することができる。全推進出力をpとしかつ推進機構の数がnである砕氷船においては、推進機構の使用が最適化されることが好ましく、それにより各々の推進機構は、もしも必要であれば、p/nよりも実質的に大きい推進出力レべル、好ましくは、約1.5p/nを受け入れかつ該推進出力レベルにおいて作動することができ、一方その他の推進機構がp/nよりも低い出力レベルを受け入れかつ該出力レベルにおいて作動することができる寸法を有する。
【0009】
もしも操舵可能な推進機構がその推進要素としてのスクリュープロペラを有していれば、この推進機構は、プロペラが前進(pulling)プロペラとして機能し、すなわち、プロペラが砕氷船の進行方向において推進機構の前端部に配置されるように設計されることが好ましい。この場合には、プロペラは氷壁およびその他の氷の障害物をプロペラの喫水において破砕することができる。
【0010】
本発明の好ましい一実施例によれば、砕氷船の船体は、対称でありかつ水線に近いレベルと砕氷船の喫水の約半分のレベルとの間の砕氷領域において、各々の舷側が外向き/上向きの勾配を有し、それにより砕氷船の両方の舷側が斜めの方向に砕氷するために好適である。
【0011】
砕氷船の斜めの走行により砕氷作用のための各々の舷側において有利な砕氷角度を有する対称の船体においては、砕氷船は十分な浮力を提供するための船体の水中部分のためにかなり大きく構成しなければならないかもしれない。
【0012】
本発明の別の好ましい一実施例によれば、砕氷船の船体は非対称でありかつ船体の一方の舷側がその反対側の舷側よりも砕氷作用のために有利であるように設計されている。この設計により、船体の一方の舷側が砕氷船の斜めの走行により砕氷作用のための有利な砕氷角度を有することができ、一方船体の他方の舷側が砕氷側の減少した浮力を補償するために十分な浮力を提供するように構成することができる。
【0013】
また、操舵可能な推進機構が少なくとも船体の最も低い点よりも下方に実質的に延在しないような高さにおいて船体の両端部に推進機構を配置することができるように砕氷船の船体を設計すると、有利である。それにより、例えば、砕氷船のドック入りが実質上容易になりかつ坐礁した場合に砕氷船の非常に重大な損傷が発生するおそれが減少する。
【0014】
本発明は、また、氷原を通じて幅の広い船のための水路を開通するために好適である砕氷船に関し、それにより砕氷船の船体の水線の幅は幅の広い船の水線の幅よりも実質的に小さくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を添付した略図を参照して以下に説明する。
図1は固形の氷原30を示し、該氷原を通じて砕氷船10が矢印Aの方向に走行することにより該砕氷船に後続する幅の広い船(図示せず)のための通路または水路40を開通しつつある。砕氷船10の水線の幅は、補助されるべき船の水線の幅よりも実質的に小さい。砕氷船10の船体の一端部は、2つの操舵可能な推進機構21、22を備え、かつ船体の反対側の端部は、1つの操舵可能な推進機構23を備えている。推進機構23を備えている端部は、外洋を航海する目的のための船首と考えられ、かつキール線50は走行方向と整列するが、砕氷のために、それぞれの推進機構の推進方向が選択され、それにより砕氷船が氷原30を通じて矢印Aの方向に斜めに走行し、すなわち、矢印Aにより示した走行方向はキール線50の方向に対してある実質的な角度vをなしている。
【0016】
図1による実施例においては、砕氷船10の船体は、該砕氷船の走行方向Aに向けられたその一方の舷側がその他方の舷側12よりも氷を斜めに破砕するために有利であるように非対称である。船体の下側部分の設計は、図1に示した水平部分の設計曲線から明らかである。走行方向において非対称の砕氷船の前側端部は、その反対側の端部よりも広く形成されている。
【0017】
図2には、図1において矢印Bの方向に見た非対称の砕氷船を示している。図2に示した図は、本発明による非対称形の砕氷船の典型的な例でありかつ図1に示した砕氷船に限定されるものではない。図2から理解できるように、構造上の水線のレベルから下方において砕氷するために使用される砕氷船の舷側は、砕氷するために好ましい実質的な程度の外向き/上向きの勾配を有する。反対側の舷側は、殆ど垂直である。この船体の設計は、また、垂直断面(verticalsection planes)0、1、2、3、4および5の設計曲線から明らかである。
【0018】
図1によれば、外洋を航海する目的のために船尾であると考えられるが、氷原での砕氷船の走行方向においては前側であるより広い端部は、2つの推進機構21および22を備え、かつ反対側の端部は、単一の推進機構23を備えている。このような構成は、例えば、大きい氷塊が存在する状態において十分な砕氷効果を達成するために有利である。そのうえ、船体の垂直の舷側12から離れたキール線50から横方向に隔置された推進機構22のプロペラからの水の流れは、船体と氷との間の摩擦を少なくする砕氷舷側11を洗うために有利に使用することができる。同時に、このプロペラからの水の流れは、破砕された氷を船体に沿って後方に押す。これは推進機構22を図1に示すように向けることにより最も効率的な態様で起きる。船体の下側部分は、推進機構22のプロペラからの水の流れが破砕されていない氷の下方に乱流をひき起こしかつ破砕されていない氷の下方からの水を引き寄せることにより砕氷を促進するように図1および図2に示すように設計されることが好ましい。
【0019】
各々の推進機構21、22、23は、所望の方向に回転可能でありかつ推進要素として機能するスクリュープロペラ24を備えている。各々のプロペラ24の構造および配置は、該プロペラが通常前進プロペラとして機能するようになっており、すなわち、プロペラ24が砕氷船の走行方向において推進機構の前端部に配置されている。こにようにして、プロペラ24は、例えば、氷壁を破砕するために有利に使用することができる。図1においては、推進機構21および22がそれらの組み合わされた推進力が多少とも矢印Aの方向に作用するように回転せしめられる。
【0020】
前述したように、砕氷船は、キール線の方向に対して実質的なある角度をなす方向に走行するときに砕氷するために設計されかつ構成されている。また、砕氷船は、状況により、推進機構21および22を進行方向に推進し、または推進機構23を進行方向に推進することにより、キール線の方向に走行するときに、砕氷するために使用することができる。
【0021】
砕氷船が氷原を通じて走行するときに、もしも推進機構の回転可能な軸17が大きい氷塊と衝突すれば、氷原を通じての走行に対する抵抗が増大するかもしれない。これらの氷塊が回転可能な軸17と衝突する前に、これらの氷塊を破砕するために、砕氷船の船体には、少なくとも該船体の構造上の水線CWLのレベルから推進機構21、22、23の直ぐ近くまで延在する隆起部13、14、15が形成されている。
【0022】
図2、図3および図4から理解できるように、推進機構21、22、23およびそれらのプロペラ24は、砕氷船の船体の最も低い点16よりも上方に配置されている。
【0023】
図3においては、砕氷船の船体が対称的でありかつ二つの舷側18はこの砕氷船の構造上の水線CWLのレベルにおいて外向き/上向きの勾配を有しかつ水線CWLから下方に延在し、それにより両方の舷側は、砕氷船が氷原を通じて斜めに走行するときに、砕氷するために好適である。砕氷船はそれ自体知られている効果的な横傾斜装置(heeling system)を備えていることが好ましく、この横傾斜装置は舷側および船体の設計と共に、圧縮されたまたは固く圧縮された氷または氷塊を弛め、砕氷船が前方への走行を維持することができ、かつ航行が困難な氷の状態においてすらも立ち往生しないことを保証する。図3による対称的な形状の実施例においては、砕氷船は、少なくとも一端部において、2つの操舵可能な推進機構27を有する。これらの推進機構の構造、配列および機能は、図1を参照して前述した事項に実質的に一致している。
【0024】
図4は本発明によるやや小型の砕氷船の側面図を示す。この砕氷船の船体の各々の端部は、2つの操舵可能な推進機構27を備えている。この砕氷船の主要寸法は、最大長:約32m、水線長:約29mおよび最大幅:約12.5mである。実際問題として、バルチック海において航行が困難な氷の状態で使用される砕氷船の主要寸法は、図4に示した砕氷船の寸法の約2倍であることが好ましい。このような砕氷船は、そのキール線に対して鋭角をなす方向に走行することにより、一回の通過により40m幅の水路を開くことができる。
【0025】
本発明が前述した特定の実施例に限定されるものではなくかつ本発明の変型を添付した請求の範囲およびその同等の事項に限定されている本発明の範囲から逸脱することなく実施し得ることは理解されよう。例えば、本発明による砕氷船を主として氷原において水路を開くことについて説明したが、この砕氷船は既存の水路を維持しまたは不十分な幅の水路を拡大するためにも当然使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による方法を実施するために使用される砕氷船の魚瞰図。
【図2】本発明による非対称砕氷船の端面図。
【図3】本発明による対称砕氷船の端面図。
【図4】本発明による対称砕氷船の側面図。
【符号の説明】
10 砕氷船
11 一方の舷側
12 他方の舷側
13、14、15 隆起部
16 最も低い点
17 回転可能な軸
18 舷側
21、22、23、27 推進機構
24 プロペラ
30 氷原
40 水路
50 キール線
A 走行方向

Claims (19)

  1. 比較的に幅が広い船が氷原を通じて航行することを補助する方法において、前記方法が
    キール線と、向かい合った第1端部および第2端部とを有する比較的に狭い船体を有する砕氷船を準備し、該砕氷船は船体の第1端部および第2端部のそれぞれにおいて少なくとも第1の操舵可能な推進機構および第2の操舵可能な推進機構を含み、
    砕氷船をキール線に対して実質的な角度をなす方向に氷原を通じて推進するために推進機構を使用し、それにより砕氷船を一回航行することにより砕氷船の水線幅よりも実質的に大きい幅を有する水路を開通することを含む方法。
  2. 砕氷船が船体の第1端部において2つの操舵可能な機構を含む請求項1に記載の方法。
  3. 砕氷船が船体の各々の端部において2つの操舵可能な推進機構を含む請求項1に記載の方法。
  4. 各々の操舵可能な推進機構が砕氷船の走行方向において前進プロペラとして作用するスクリュープロペラを含む請求項1に記載の方法。
  5. 砕氷船の船体がキール線の両側のそれぞれにおいて第1舷側および第2舷側を有し、かつ船体の各々の舷側が上向きにかつ外向きに傾斜している請求項1に記載の方法。
  6. 砕氷船の船体がキール船の両側のそれぞれにおいて第1舷側および第2舷側を有し、かつ船体が第1舷側が第2舷側よりも砕氷のために有利であるように非対称であり、かつ該方法が船体の第1舷側が第2舷側よりも前側にある状態で砕氷船を氷原を通じて推進するために推進機構を使用することを含む請求項1に記載の方法。
  7. 操舵可能な推進機構が砕氷船の船体の最も低い点よりも少なくとも実質的に完全に上方に配置されている請求項1に記載の方法。
  8. 比較的に幅が広い船が氷原を通じて航行することを補助するための砕氷船において、該砕氷船はキール線と、向かい合った第1端部および第2端部とを有する比較的に狭い船体を有しかつ船体の第1端部および第2端部のそれぞれにおいて第1の操舵可能な推進機構および第2の操舵可能な推進機構を含み、かつ推進機構の推進方向は推進機構が砕氷船をキール線に対してある実質的な角度をなす方向に氷原を通じて推進することができるように制御可能であり、それにより砕氷船の1回の航行により砕氷船の水線幅よりも実質的に大きい幅を有する水路を開通するために砕氷船を使用することができる砕氷船。
  9. 最大推進出力pを発生する駆動機械を含みかつ操舵可能な推進機構の数がnでありかつ各々の推進機構がp/nよりも実質的に大きい最大推進出力を受け入れかつ該最大推進出力において作動するための寸法を有する請求項8に記載の砕氷船。
  10. 各々の推進機構が約1.5p/nの最大推進出力を受け入れかつ該最大推進出力において作動するための寸法を有する請求項9に記載の砕氷船。
  11. 船体の第1端部において第3の操舵可能な推進機構を含む請求項8に記載の砕氷船。
  12. 第3の操舵可能な推進機構が船体のキール線から隔置されかつ船体が該船体の水線から第3の操舵可能な推進機構に向かって延在する隆起部を含む請求項11に記載の砕氷船。
  13. 船体の第1端部および第2端部のそれぞれにおいて第3の操舵可能な推進機構および第4の操舵可能な推進機構を含む請求項8に記載の砕氷船。
  14. 各々の操舵可能な推進機構が前進プロペラとして機能するように構成されたスクリュープロペラを含む請求項8に記載の砕氷船。
  15. 操舵可能な推進機構が砕氷船の船体の最も低い点よりも少なくとも実質的に完全に上方に配置されている請求項8に記載の砕氷船。
  16. 砕氷船の船体がキール線の両側のそれぞれにおいて第1舷側および第2舷側を有し、かつ船体の各々の舷側が上向きにかつ外向きに傾斜している請求項8に記載の砕氷船。
  17. 砕氷船の船体がキール線の両側のそれぞれにおいて第1舷側および第2舷側を有し、かつ船体が砕氷船をキール線に対してある実質的な角度をなす方向に推進させるときに第1舷側が第2舷側よりも砕氷のために有利であるように非対称である請求項8に記載の砕氷船。
  18. 船体が該船体の水線から第1の操舵可能な推進機構に向かって延在する隆起部を含む請求項8に記載の砕氷船。
  19. 船体が該船体の水線から第1の操舵可能な推進機構および第2の操舵可能な推進機構のそれぞれに向かって延在する第1隆起部および第2隆起部を含む請求項8に記載の砕氷船。
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