JP3863987B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム、シート、その他の成形品に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は溶融成形性に優れており、特に溶融押出成形により、品質のよいフィルムやシートなどの成形品を、高生産性で製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンは、力学的性能、耐摩耗性、弾性回復性、耐油性、屈曲性等の諸特性に優れているので、ゴムやプラスチックの代替材料として注目されている。例えば、熱可塑性ポリウレタンを押出成形したフィルムやシートが、紙おむつ用の伸縮性素材として注目されている。この紙おむつ用の伸縮性フィルムは、紙おむつを装着した際に、紙おむつを適度な力で体に密着し、体から脱落するのを防止するためのものであり、厚みが薄く、小さな力で伸長できるだけでなく、伸長後に元の形に戻ろうとする応力(回復応力)が高く、寸法安定性にも優れている(残留歪みが小さい)という特性を有していることが要求される。
【0003】
そこで、このような要求を満たすために、熱可塑性ポリウレタンの硬度を下げる方法が試みられているが、このような方法では、T−ダイ型押出機等を用いてフィルムやシートなどの成形品を溶融押出成形する際に、T−ダイより押し出された成形品の幅が、T−ダイの有効幅より著しく狭くなる現象(以下、「ネックイン現象」と称する)が生じ、さらに両端部に厚み斑を有するような成形品しか得られない。したがって、厚み斑のない均一な成形品を得るためには、成形品の両端部の厚み斑を有する部分をトリミングする必要があり、成形品の生産性が非常に悪い。さらに、得られた成形品の耐ブロッキング性も悪いので、フィルムやシートなどの成形品を製造する際には、例えば、高価な離型紙などを用いて製造する必要があり、非常に手間とコストがかかるという問題点がある。
【0004】
近年、熱可塑性ポリウレタンの特性を保持しつつ、熱可塑性ポリウレタンの膠着性や性能改良等を目的として、オレフィン系やスチレン系のエラストマーを配合することが提案されている。例えば、特開平8−143766号公報には、ポリエステルジオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる一般的な熱可塑性ポリウレタンに、オレフィン系エラストマーおよび芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体を配合した熱可塑性重合体組成物が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、単に一般的な熱可塑性ポリウレタンにオレフィン系やスチレン系のエラストマーを配合しただけでは、T−ダイ型押出機などを用いてフィルムやシートなどの成形品を溶融押出成形する際に生じるネックイン現象が十分に改善されないことが判明した。
【0006】
本発明の目的は、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際に生じるネックイン現象を改善し、品質のよいフィルムやシートなどの成形品を、高生産性で製造することができる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートなどの成形品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10の高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる特定の熱可塑性ポリウレタンに、エチレン−α−オレフィン共重合体、並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種を配合することにより、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際のネックイン現象が十分に改善され、ネッキングや割れなどの不良現象の無い成形品を生産性よく製造することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(i)熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種(c)(以下、「ブロック共重合体(c)」と称することがある)からなる熱可塑性樹脂組成物であって;
(ii)熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%、並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種(c)を1〜30重量%の割合で含有し;そして、
(iii)前記熱可塑性ポリウレタン(a)が、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10であり、かつ数平均分子量が500〜8,000の高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる熱可塑性ポリウレタンであり;
iv )前記エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML 1+4 (100℃)であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。そして本発明は、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリウレタン(a)は、高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位から構成される。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオール単位としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらの高分子ポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを使用するのが好ましく、ポリエステルポリオールを使用するのがより好ましい。
【0011】
上記のポリエステルポリオールは、例えば、常法に従い、ポリオールとポリカルボン酸またはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体とを直接エステル化反応もしくはエステル交換反応に付すか、またはポリオールなどを開始剤としてラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0012】
ポリエステルポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β―ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族二価アルコールなどの1分子当たり水酸基を2個有するジオール;およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、メチルグリコキシドなどの1分子当たり水酸基を3個以上有するポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール等のメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、さらにこれらの脂肪族ジオールを、ポリオールの全量に対して30モル%以上の割合で用いるのがより好ましく、50モル%以上の割合で用いるのがさらに好ましい。また、柔軟性などの性能に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる点から、トリメチロールプロパンを少量用いることが好ましい。
【0013】
ポリエステルポリオールを構成するポリカルボン酸としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のポリカルボン酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数が6〜12の脂肪酸ジカルボン酸を使用するのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸を使用するのがより好ましい。
【0014】
前記のラクトンとしては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0015】
ポリエーテルポリオールの例としては、好ましくは少量の3官能以上のポリオールの存在下に、環状エーテルを開環重合して得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールを用いるのが好ましい。
【0016】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用できる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。更に、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどが挙げられ、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られる。あるいは、予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはポリオールおよびポリカルボン酸と反応させることによって得られる。
【0018】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオールは、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10であることが必要であり、2.01〜2.07であることが好ましく、2.01〜2.05であることがより好ましい。高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01未満の場合、得られる熱可塑性樹脂組成物からフィルムやシートなどの成形品をT−ダイ型押出機などで溶融押出成形すると、ネックイン現象により、T−ダイの有効幅に比べて、押し出されたフィルムやシートなどの成形品の幅がかなり小さくなる。さらに、フィルムやシートなどの成形品の両端部に厚み斑が生じるため、この厚み斑の部分をトリミングして得られる製品の生産性は低い。また、T−ダイより押し出されたフィルムやシートなどの成形品を、速い速度で引き取ると、ネッキングや割れなどの不良現象が生じやすい。一方、1分子当たりの水酸基数が2.10より大きい高分子ポリオールを用いた場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物から、厚みが薄く、表面状態が良好で、且つ伸縮性に優れたフィルムを得ることは困難となる。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオールとしては、例えば、前記した高分子ポリオールの原料成分のうち、1分子中に官能基を2個有する成分と、1分子中に官能基を3個以上有する成分とを、高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10となるような割合で使用することにより製造した高分子ポリオールを単独で用いてもよいし、あるいは1分子当たりの水酸基数が2の高分子ジオールと、1分子当たりの水酸基数が2より大きい高分子ポリオールとを、高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10となるような割合で混合した混合物を用いてもよい。
【0020】
高分子ポリオールの数平均分子量は500〜8,000であり、600〜5,000であるのが好ましく、800〜5,000であるのがさらに好ましい。この範囲内の数平均分子量を有する高分子ポリオールを用いることにより、力学的性能や溶融成形性がより優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、本明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS K−1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造に用いられる有機ジイソシアネートとしては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソシアネートのいずれを使用してもよく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0022】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造に用いられる鎖伸長剤としては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれを使用してもよく、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられる。これらの低分子化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0023】
前記の高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させて熱可塑性ポリウレタン(a)を製造するに当たり、各成分の混合比率は、目的とする熱可塑性ポリウレタンに付与すべき硬度などを考慮して適宜決定されるが、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.9〜1.2モルとなるような割合で各成分を使用することが好ましい。
【0024】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造方法は特に制限されず、前記の高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を使用して、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法およびワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合が好ましい。
【0025】
熱可塑性ポリウレタン(a)のJIS A硬度は、55〜85であることが好ましく、60〜80であることがより好ましい。JIS A硬度がこの範囲の熱可塑性ポリウレタン(a)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)やブロック共重合体(c)との相溶性がより優れており、このような熱可塑性ポリウレタンを用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に十分な柔軟性と良好な力学的特性が付与される。なお、本明細書でいう熱可塑性ポリウレタン(a)のJIS A硬度は、JIS K−7311に準拠して測定した値である。
【0026】
熱可塑性ポリウレタン(a)の対数粘度は、N,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタン(a)を濃度0.5g/dlになるように溶解し、30℃で測定した時に、0.8dl/g以上であることが好ましく、0.9dl/g以上であることがより好ましく、1.0dl/g以上であることがさらに好ましい。上記の対数粘度を有する熱可塑性ポリウレタンを用いると、より残留歪みの少ない成形品を与える熱可塑性樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、エチレン単位およびα−オレフィン単位から構成される。エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を構成するα−オレフィン単位としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどから誘導される単位が挙げられる。これらのα−オレフィン単位は単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。これらの中でも、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れている点から、炭素数が4以上のα−オレフィンから誘導される単位が好ましく、炭素数が7〜12のα−オレフィンから誘導される単位がより好ましく、炭素数が7〜10のα−オレフィンから誘導される単位がさらに好ましく、1−オクテンから誘導される単位が特に好ましい。さらに、上記のα−オレフィン単位と共に、必要に応じて少量の非共役ジエン単位を併用することもできる。非共役ジエン単位としては、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、メチレンノルボルネンなどから誘導される単位が挙げられる。
【0028】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を構成するエチレン単位とα−オレフィン単位のモル比は、エチレン単位/α−オレフィン単位=55/45〜99/1であることが好ましく、75/25〜95/5であることがより好ましい。エチレン単位の含有量が55モル%未満の場合には、エチレン−α−オレフィン共重合体の軟化温度が低くなり、熱可塑性ポリウレタン(a)やブロック共重合体(c)と均一に混合し難くなるため、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムは膠着し易くなる傾向がある。一方、エチレン単位の含有量が99モル%を越えるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合には、厚みが薄く、伸縮性に優れたフィルムを得ることが困難となる傾向がある。
【0029】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトインデックスが、0.1〜12g/10分の範囲内にあることが好ましく、0.2〜7g/10分の範囲内にあることがより好ましく、0.4〜5g/10分の範囲内にあることがさらに好ましい。上記のメルトインデックスを有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、フィルムやシートを製造する際の溶融成形性に優れ、薄膜化が達成でき、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうエチレン−α−オレフィン共重合体(b)のメルトインデックスは、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)のショアーA硬度は、30〜90の範囲内にあるのが好ましく、40〜85の範囲内にあることがより好ましい。上記のショアーA硬度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形品などの弾性回復性および力学的性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうエチレン−α−オレフィン共重合体(b)のショアーA硬度は、ASTM D−2240に準拠して測定した値である。
【0031】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML1+4(100℃)の範囲内にある。上記のムーニー粘度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうエチレン−α−オレフィン共重合体(b)のムーニー粘度は、ASTM D−1646に準拠して測定した値である。
【0032】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)の製造方法は特に限定されず、上記の単量体を、例えば、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法などの公知の方法で、通常0〜250℃の温度下、常圧〜1000気圧(100Mpa)で重合することにより得られる。重合に際しては、重合活性点が均一なシングルサイト触媒を用いると、分子量分布が狭く、共重合組成分布が狭い重合体が容易に得られるために好ましい。シングルサイト触媒の中でも、特に4価の遷移金属を含有するメタロセン化合物が好ましく、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)などが挙げられる。メタロセン化合物を重合触媒として用いる場合には、単独では重合活性を発現しないので、メチルアルミノキサン、非配位性のホウ素系化合物などの助触媒を、メタロセン化合物1モルに対して2〜1,000,000モル、好ましくは50〜5,000モルの割合で併用する。
【0033】
ブロック共重合体(c)における芳香族ビニル化合物重合体ブロックを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらの中でもスチレン、α−メチルスチレンを用いるのが好ましい。
【0034】
ブロック共重合体(c)における共役ジエン重合体ブロックを構成する共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンを用いるのが好ましい。
【0035】
ブロック共重合体(c)における芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよく、直鎖状の結合形態であることが好ましい。ブロック共重合体(c)の例としては、芳香族ビニル化合物重合体ブロックをXで、共役ジエン重合体ブロックをYで表したときに、(X−Y)n−X、(X−Y)m、Y−(X−Y)p〔n、mおよびpはそれぞれ1以上の整数を表す。〕などで表されるブロック共重合体を挙げることができる。これらの中でも、X−Yで表されるジブロック共重合体、X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体を使用するのが好ましい。
【0036】
ブロック共重合体(c)としては、共役ジエン重合体ブロックにおける不飽和二重結合の一部または全部が水素添加されているものも使用することができる。このような水素添加されたブロック共重合体(c)を用いると、耐熱性、耐光性などがより良好な熱可塑性重合体組成物が得られる。
【0037】
ブロック共重合体(c)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量が、全構造単位に対して5〜75重量%であることが好ましく、10〜65重量%であることがより好ましい。芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を上記の範囲内で含有するブロック共重合体(c)を用いると、フィルムやシートを製造する際の溶融成形性に優れ、薄膜化が達成でき、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。
【0038】
ブロック共重合体(c)の230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトインデックスは、100g/10分以下であるのが好ましく、80g/10分以下であるのがより好ましい。上記のメルトインデックスを有するブロック共重合体(c)を用いると、フィルムやシートを製造する際の溶融成形性に優れ、薄膜化が達成でき、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうブロック共重合体(c)のメルトインデックスは、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0039】
ブロック共重合体(c)のJIS A硬度は、30〜98であることが好ましい。JIS A硬度がこの範囲内のブロック共重合体(c)は、熱可塑性ポリウレタン(a)やエチレン−α−オレフィン共重合体(b)との相溶性がより優れており、このようなブロック共重合体を用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に十分な柔軟性と良好な力学的性能が付与される。なお、本明細書でいうブロック共重合体(c)のJIS A硬度は、JIS K−6301に準拠して測定した値である。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%の割合で含有していることが必要であり、熱可塑性ポリウレタン(a)を45〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を55〜10重量%の割合で含有しているのが好ましい。前記の熱可塑性ポリウレタン(a)の含有割合が30重量%未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムの力学的性能や回復応力、残留歪みなどの回復性能が損なわれ、一方、含有割合が90重量%を越える場合には、耐ブロッキング性が劣る。
【0041】
ブロック共重合体(c)の含有量は、熱可塑性ポリウレタン(a)とエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、1〜30重量%の範囲内であり、好ましくは2〜20重量%の範囲内である。ブロック共重合体(c)の含有量が1重量%未満の場合には、耐ブロッキング性が劣る。ブロック共重合体(c)の含有量が30重量%を越える場合にも、耐ブロッキング性が劣り、熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムの力学的性能や回復応力、残留歪みなどの回復性能も損なわれる。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、耐ブロッキング性の更なる向上を目的として、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのポリオレフィン系樹脂や、パラフィン系オイルを配合することができる。
【0043】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、補強剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防かび剤、抗菌剤、安定剤などの各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;タルク、シリカなどの無機物;各種カップリング剤などの任意の成分も、必要に応じて配合することができる。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ブロック共重合体(c)および必要に応じて他の成分を、所望の方法で混合することにより製造することができる。例えば、樹脂材料の混合に通常用いられるような縦型または水平型の混合機を用いて、熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ブロック共重合体(c)および必要に応じて他の成分を所定の割合で予備混合した後、単軸または二軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いて、回分式または連続式で加熱下に溶融混練することにより製造することができる。その他の方法としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(a)を製造する際の重合後期に、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ブロック共重合体(c)や必要に応じて他の成分を配合してもよい。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、溶融成形が可能であり、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、注型などの任意の成形方法によって種々の成形品を円滑に製造することができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は溶融押出成形性に優れているので、例えば、T−ダイ型押出機によるフィルムやシートなどの成形では、T−ダイの有効幅よりも押し出されたフィルムやシートなどの成形品の幅がかなり小さくなるネックイン現象が著しく改善されており、ネックイン現象のために生じるフィルムやシートなどの成形品の両端部の厚み斑の範囲が狭くなるので、この厚み斑の部分をトリミングして得られる製品の生産性が向上する。また、T−ダイより押し出されたフィルムやシートなどの成形品を早い速度で引き取る際にも、フィルムやシートなどの成形品の全体が均一に伸びずにくびれを生じるネッキングや割れなどの不良現象も無いために、品質のよい製品が生産性よく得られる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られるフィルムやシートなどの成形品は、低応力での伸縮性能に優れており、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的性能に優れていて、しかも平滑な表面を有していて表面状態も良好である。特に、低応力での伸縮性能や伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能に優れているので、これらの特性を生かして、紙おむつ用、生理ナプキン用、目止め用、防塵用などに用いられる伸縮性フィルム用途に用いるのが特に好ましい。また、一般用コンベアベルト、各種キーボードシート、ラミネート品、各種容器などのシート用途等の種々の用途にも使用することができる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートは、不織布やその他の繊維布からなる繊維質基材、他の重合体フィルムやシートなどからなる基材との接着性にも優れているので、積層体の製造にも適している。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、繊維質基材やその他の基材上に、フィルム状またはシート状に溶融押出して積層体を製造することができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、溶融成形性、フィルムの製造状態、表面状態、耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)および残留歪みは、以下の方法により測定または評価した。
【0047】
〔溶融成形性〕
T−ダイ型押出成形機から押し出したフィルムを放流させながら、T−ダイ出口より10cm下方のフィルム幅を測定し、下記の式(1)に従ってネックイン率(%)を求め、溶融成形性の指標とした。この値が小さいほどネックイン現象が改善され、溶融成形性に優れていることを示す。
ネックイン率(%)=(W2−W1)/W2×100 (1)
(式中、W1はT−ダイ出口から10cm下方のフィルム幅を、W2はT−ダイの有効幅を示す。)
【0048】
〔フィルムの製造状態、表面状態〕
T−ダイ型押出成形機から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取りの最中に、フィルムの製造状態を観察し、以下の基準により評価した。
○:フィルムに割れなどの不良現象を生ずることなく、正常に巻き取り可能。
△:フィルムに割れなどの不良現象が多少生じたが、巻き取り可能。
×:フィルムに割れなどの不良現象が生じ、巻き取り不可能。
さらに、その巻き取ったフィルムの表面状態を観察し、平滑なものを○、分散不良等により表面に凹凸があるものを×とした。
【0049】
〔耐ブロッキング性〕
T−ダイ型押出成形機から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取ったフィルムを室温で24時間放置した後、手で巻き返し、その時の抵抗を以下の基準により評価した。
◎:引張力を何ら要せずに、極めて簡単に巻き返し可能。
○:円滑に巻き返し可能。
△:かなりの引張力を要したが、巻き返し可能。
×:膠着性が大きく、巻き返し不可能。
【0050】
〔100%モジュラス(M100)および残留歪み〕
T−ダイ型押出成形機を用いて製膜した厚さ50μmのフィルムから試験片(20cm×5cm)を作成した。この試験片を、オートグラフ測定装置IS−500D(島津製作所製)を使用して、室温下、引張速度300mm/分で100%伸長して100%モジュラス(M100)を測定した。次に300mm/分の速度で伸長前の位置まで戻し(1サイクル目)、続けて同じ速度で100%伸長した後、伸長前の位置まで戻した時点(2サイクル目)での残留歪みを求めた。100%モジュラス(M100)の値が小さいほど、低応力での伸長性に優れていることを示す。また、残留歪みの値が小さいほど、伸長後に元の状態に戻る回復性能に優れていることを示す。
【0051】
以下の実施例および比較例で使用した樹脂および化合物に関する略号を、下記に示す。
【0052】
TPU−A
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00であり、数平均分子量が3500であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(1)」と称する)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンとアジピン酸とを反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が3.00であり、数平均分子量が2000であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(2)」と称する)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が98/2、1分子当たりの水酸基数が2.02〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、対数粘度が1.02dl/g〕
【0053】
TPU−B
ポリエステルポリオール(1)およびポリエステルポリオール(2)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が95/5、1分子当たりの水酸基数が2.05〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が65、対数粘度が1.25dl/g〕
【0054】
TPU−C
2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオールと2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールの混合物(モル比が35:65)およびアジピン酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00であり、数平均分子量が2000であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(3)」と称する)とポリエステルポリオール(2)との混合物〔ポリエステルポリオール(3)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が97/3、1分子当たりの水酸基数が2.03〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JISA硬度が70、対数粘度が1.15dl/g〕
【0055】
TPU−D
1分子当たりの水酸基数が2.00であるポリエステルポリオール(1)を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、対数粘度が1.00dl/g〕
【0056】
TPU−E:
ポリエステルポリオール(1)とポリエステルポリオール(2)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が88/12、1分子当たりの水酸基数が2.12〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、DMF溶媒不溶〕
【0057】
POE−A
エチレン−1−オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)製「ENGAGE EG8100」;エチレン単位/1−オクテン単位のモル比が92.7/7.3、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が1.0g/10分、ショアーA硬度が75、ムーニー粘度が35.6ML1+4(100℃)〕
【0058】
POE−B
エチレン−1−オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)製「ENGAGE EG8200」;エチレン単位/1−オクテン単位のモル比が92.2/7.8、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が4.2g/10分、ショアーA硬度が75、ムーニー粘度が12.1ML1+4(100℃)〕
【0059】
TPS−A
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン含量が30重量%、ポリイソプレンブロック中の1,2−結合および3,4−結合の含有量が7%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率が95%、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)が70g/10分、JIS A硬度が80〕
【0060】
TPS−B
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン含量が20重量%、ポリイソプレンブロック中の1,2−結合および3,4−結合の含有量が55%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率が92%、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)が6g/10分、JIS A硬度が52〕
【0061】
TPS−C
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロックからなるジブロック共重合体の水素添加物とポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物の混合物(重量比が20:80)〔スチレン含有量が13重量%、ポリイソプレンブロック中の1,2−結合および3,4−結合の含有量が5%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率が98%、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分、JIS A硬度が52〕
【0062】
TPS−D
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物〔スチレン含量が30重量%、ポリイソプレンブロック中の1,2−結合および3,4−結合の含有量が5%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率が98%、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)は流動せず測定不能〕
【0063】
TPS−E
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体〔スチレン含量が15重量%、ポリイソプレンブロック中の1,2−結合および3,4−結合の含有量が5%、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が2g/10分、JIS A硬度が37〕
【0064】
PE
ポリエチレン〔メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.04g/10分、密度が0.956g/cm3
【0065】
PP
ポリプロピレン〔メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)が240g/10分〕
【0066】
オイル
パラフィン系オイル〔パラフィン70重量%およびナフテン30重量%含有、動粘性率が4×10-4-2/秒(40℃)〕
【0067】
実施例1〜6
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン−α−オレフィン共重合体(POE)、ブロック共重合体(TPS)およびその他の成分(PE、PP、オイル)を、下記の表1に示す割合で配合した混合物を、単軸押出成形機(25mmφ、シリンダー温度:180〜200℃、ダイス温度:200℃)で溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表1に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0003863987
【0069】
比較例1および2
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン−α−オレフィン共重合体(POE)およびブロック共重合体(TPS)を、下記の表2に示す割合で使用したこと以外は、実施例1〜6と同様の方法により、熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表2に示す。
【0070】
比較例3および4
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン−α−オレフィン共重合体(POE)およびブロック共重合体(TPS)を、下記の表2に示す割合で使用したこと以外は、実施例1〜6と同様の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物から厚さ50μmのフィルムを製造しようとしたが、製造中にフィルム割れが生じてしまい、耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)および残留歪みが評価できるようなフィルムは得られなかった。得られた評価結果を下記の表2に示す。
【0071】
【表2】
Figure 0003863987
【0072】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際に生じるネックイン現象が著しく改善され、耐ブロッキング性にも優れている。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いれば、品質の良いフィルムやシートなどの成形品を、高生産性で製造することができる。

Claims (2)

  1. (i)熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種(c)からなる熱可塑性樹脂組成物であって;
    (ii)熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%、並びに芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックから構成されるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物の少なくとも1種(c)を1〜30重量%の割合で含有し;そして、
    (iii)前記熱可塑性ポリウレタン(a)が、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10であり、かつ数平均分子量が500〜8,000の高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる熱可塑性ポリウレタンであり;
    iv )前記エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML 1+4 (100℃)であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムまたはシート
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