JP3863983B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体およびビスアミド化合物からなる熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム、シートなどの成形品に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は溶融成形性、耐ブロッキング性などに優れている。さらに、該熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムやシートなどの成形品は、適度な強度を有し、伸長後の回復応力が高く、伸長後の残留歪みが小さいのみならず、基材との接着性にも優れているので、各種の伸縮性素材として有用である。
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンは、力学的性能、耐摩耗性、弾性回復性、耐油性、屈曲性等の諸特性に優れているので、ゴムやプラスチックの代替材料として注目されている。例えば、熱可塑性ポリウレタンを押出成形したフィルムやシートが、紙おむつ用の伸縮性素材として注目されている。この紙おむつ用の伸縮性フィルムは、紙おむつを装着した際に、紙おむつを適度な力で体に密着し、体から脱落するのを防止するためのものである。
【0001】
近年、乳幼児用の他に大人の介護用紙おむつが市販されている。乳幼児に比べて運動量の多い大人用の紙おむつに用いられる伸縮性フィルムは、乳幼児用の紙おむつに用いられる伸縮性フィルムに比べて、小さな力では伸長しない程度の適度な強度を有すると共に、伸長後に元の形に戻ろうとする応力(回復応力)が高く、寸法安定性にも優れている(残留歪みが小さい)という特性を有していることが要求されている。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような要求を満たすためには、柔軟性や伸縮性などに優れた熱可塑性ポリウレタンを用いる必要があるが、このような熱可塑性ポリウレタンを用いて、T−ダイ型押出機等でフィルムやシートなどの成形品を溶融押出成形すると、T−ダイより押し出された成形品の幅が、T−ダイの有効幅より著しく狭くなる現象(以下、「ネックイン現象」と称する)が生じ、さらに両端部に厚み斑を有するような成形品しか得られない。したがって、厚み斑のない均一な成形品を得るためには、成形品の両端部の厚み斑を有する部分をトリミングする必要があり、成形品の収率が非常に悪いという問題点がある。
【0003】
さらに、柔軟性や伸縮性などに優れた熱可塑性ポリウレタンの場合、耐ブロッキング性が劣っており、膠着を起こし易いため、T−ダイ型押出機等でフィルムやシートなどの成形品を溶融押出成形する際には、例えば、高価な離型紙などを用いて製造する必要があり、非常に手間とコストがかかる。その他、離型紙などを用いる代わりに、アミド化合物などを熱可塑性ポリウレタンに添加する方法が試みられているが、単にアミド化合物を添加しただけの組成物から得られたフィルムやシートは、成形品の表面にアミド化合物がブリードアウトするため、表面に多数の凹凸が生じ、表面の平滑性に劣ったものしか得られない。したがって、このようなフィルムやシートを用いて、不織布やその他の繊維布帛からなる基材、あるいは他の重合体フィルムやシートなどからなる基材との積層体を製造すると、フィルムやシートと基材との接着力が弱いものしか得られないという問題点がある。
【0004】
本発明の目的は、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際に生じるネックイン現象が著しく改善され、耐ブロッキング性にも優れた熱可塑性樹脂組成物であって、適度な強度を有し、伸長後の回復応力が高く、伸長後の残留歪みが小さいのみならず、基材との接着性にも優れているフィルムやシートなどの成形品を、高収率かつ高生産性で製造することが出来る熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。さらに、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートなどの成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねた結果、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10の高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる特定の熱可塑性ポリウレタンに、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体およびビスアミド化合物を所定量配合することにより初めて、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際に生じるネックイン現象が著しく改善されるとともに、耐ブロッキング性にも優れ、伸縮性素材として非常に好適な力学的性能を有するフィルムやシートが得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、(i)熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)およびビスアミド化合物(c)からなる熱可塑性樹脂組成物であって;
(ii)熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%およびビスアミド化合物(c)を0.05〜5重量%の割合で含有し;そして、
(iii)前記熱可塑性ポリウレタン(a)が、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10であり、かつ数平均分子量が500〜8,000である高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる熱可塑性ポリウレタンであり;
(iv)前記エチレン−α−オレフィン共重合体(b)が、エチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が75/25〜95/5であり、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML 1+4 (100℃)であるエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。そして本発明は、該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリウレタン(a)は、高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位から構成される。
【0008】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオール単位としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらの高分子ポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを使用するのが好ましく、ポリエステルポリオールを使用するのがより好ましい。
【0009】
上記のポリエステルポリオールは、例えば、常法に従い、ポリオールとポリカルボン酸またはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体とを直接エステル化反応もしくはエステル交換反応に付すか、またはポリオールなどを開始剤としてラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0010】
ポリエステルポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどの炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β―ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族二価アルコールなどの1分子当たり水酸基を2個有するジオール、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、メチルグリコキシドなどの1分子当たり水酸基を3個以上有するポリオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール等のメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、さらにこれらの脂肪族ジオールを、ポリオールの全量に対して30モル%以上の割合で用いるのがより好ましく、50モル%以上の割合で用いるのがより一層好ましい。また、柔軟性などの性能に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる点から、トリメチロールプロパンを少量用いることが好ましい。
【0011】
ポリエステルポリオールを構成するポリカルボン酸としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のポリカルボン酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数が6〜12の脂肪酸ジカルボン酸を使用するのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸を使用するのがより好ましい。
【0012】
前記のラクトンの例としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0013】
ポリエーテルポリオールの例としては、好ましくは少量の3官能以上のポリオールの存在下に、環状エーテルを開環重合して得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールを用いるのが好ましい。
【0014】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用できる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。更に、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどが挙げられ、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られる。あるいは、予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはポリオールおよびポリカルボン酸と反応させることによって得られる。
【0016】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオールは、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10の範囲内にあることが必要であり、2.01〜2.07の範囲内であることがより好ましく、2.01〜2.05の範囲内であることが更に好ましい。高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01未満の場合、得られる熱可塑性樹脂組成物からフィルムやシートなどの成形品をT−ダイ型押出機などで溶融押出成形すると、ネックイン現象により、T−ダイの有効幅に比べて、押し出されたフィルムやシートなどの成形品の幅がかなり小さくなる。さらに、フィルムやシートなどの成形品の両端部に厚み斑が生じるため、この厚み斑の部分をトリミングして得られる製品の収率は低い。また、T−ダイより溶融押し出されたフィルムやシートなどの成形品を、速い速度で引き取ると、ネッキングや割れなどの不良現象が生じやすい。一方、1分子当たりの水酸基数が2.10より大きい高分子ポリオールを用いた場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物から、厚みが薄く、表面状態が良好で、且つ伸縮性に優れたフィルムを得ることは困難となる。
【0017】
熱可塑性ポリウレタン(a)を構成する高分子ポリオールとしては、例えば、前記した高分子ポリオールの原料成分のうち、1分子中に官能基を2個有する成分と、1分子中に官能基を3個以上有する成分とを、高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10となるような割合で使用することにより製造した高分子ポリオールを単独で用いてもよいし、あるいは1分子当たりの水酸基数が2の高分子ジオールと、1分子当たりの水酸基数が2より大きい高分子ポリオールとを、高分子ポリオールの1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10となるような割合で混合した混合物を用いてもよい。
【0018】
高分子ポリオールの数平均分子量は500〜8,000であり、600〜5,000であるのが好ましく、800〜5,000であるのがさらに好ましい。この範囲内の数平均分子量を有する高分子ポリオールを用いることにより、力学的性能や溶融成形性がより優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、本明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS K−1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造に用いられる有機ジイソシアネートとしては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソシアネートのいずれを使用してもよく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0020】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造に用いられる鎖伸長剤としては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれを使用してもよく、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられる。これらの低分子化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0021】
前記の高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させて熱可塑性ポリウレタン(a)を製造するに当たり、各成分の混合比率は、目的とする熱可塑性ポリウレタンに付与すべき硬度などを考慮して適宜決定されるが、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.9〜1.2モルとなるような割合で各成分を使用することが好ましい。
【0022】
熱可塑性ポリウレタン(a)の製造方法は特に制限されず、前記の高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を使用して、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法およびワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合が好ましい。
【0023】
熱可塑性ポリウレタン(a)のJIS A硬度は、55〜85であることが好ましく、60〜80であることがより好ましく、60〜75であることがさらに好ましい。JIS A硬度がこの範囲の熱可塑性ポリウレタン(a)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)との相溶性がより優れており、このような熱可塑性ポリウレタンを用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に十分な柔軟性と良好な力学的特性が付与される。なお、本明細書でいう熱可塑性ポリウレタン(a)のJIS A硬度は、JIS K−7311に準拠して測定した値である。
【0024】
熱可塑性ポリウレタン(a)の対数粘度は、N,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタン(a)を濃度0.5g/dlになるように溶解し、30℃で測定した時に、0.8dl/g以上であることが好ましく、0.9dl/g以上であることがより好ましく、1.0dl/g以上であることがさらに好ましい。上記の対数粘度を有する熱可塑性ポリウレタンを用いると、より残留歪みの少ない成形品を与える熱可塑性樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0025】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、エチレン単位およびα−オレフィン単位からなり、かつエチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が75/25〜95/5の範囲内であり、85/15〜95/5の範囲内であることが好ましい。エチレン単位の含有量が75モル%未満の場合には、エチレン−α−オレフィン共重合体の軟化温度が低くなり、熱可塑性ポリウレタン(a)に均一に混合することが困難となるため、これを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムは、強度などの力学的性能が低下する。一方、エチレン単位の含有量が95モル%を越えるエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合には、フィルムが硬くなるため、弾性回復性に優れたフィルムを得ることが困難となる。
【0026】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を構成するα−オレフィン単位としては、例えば、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどから誘導される単位が挙げられる。これらのα−オレフィン単位は単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。これらの中でも、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能の観点から、炭素数が4以上のα−オレフィンから誘導される単位が好ましく、炭素数が7〜12のα−オレフィンから誘導される単位がより好ましく、炭素数が7〜10のα−オレフィンから誘導される単位がさらに好ましく、1−オクテンから誘導される単位が特に好ましい。さらに、上記のα−オレフィン単位と共に、必要に応じて少量の非共役ジエン単位を併用することもできる。非共役ジエン単位としては、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、メチレンノルボルネンなどから誘導される単位が挙げられる。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトインデックスが0.1〜12g/10分の範囲内にあることが好ましく、0.2〜7g/10分の範囲内にあることがより好ましく、0.3〜5.5g/10分の範囲内にあることがさらに好ましい。上記のメルトインデックスを有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、フィルムやシートを製造する際の溶融成形性に優れ、薄膜化が達成でき、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトインデックスは、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0028】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)のショアーA硬度は、30〜90の範囲内にあるのが好ましく、40〜85の範囲内にあることがより好ましい。上記のショアーA硬度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形品などの弾性回復性および力学的性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうエチレン−α−オレフィン共重合体のショアーA硬度は、ASTM D−2240に準拠して測定した値である。
【0029】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)は、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML1+4(100℃)の範囲内にある。上記のムーニー粘度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(b)を用いると、耐ブロッキング性、柔軟性、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能がより優れたものが得られる。なお、本明細書でいうムーニー粘度は、ASTM D−1646に準拠して測定した値である。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b)の製造方法は特に限定されず、上記の単量体を、例えば、溶液重合法、塊状重合法、気相重合体などの公知の方法で、通常0〜250℃の温度下、常圧〜1000気圧(100Mpa)で重合することにより得られる。重合に際しては、重合活性点が均一なシングルサイト触媒を用いると、分子量分布が狭く、共重合組成分布が狭い重合体が容易に得られるために好ましい。シングルサイト触媒の中でも、特に4価の遷移金属を含有するメタロセン化合物が好ましく、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)などが挙げられる。メタロセン化合物を重合触媒として用いる場合には、単独では重合活性を発現しないので、メチルアルミノキサン、非配位性のホウ素系化合物などの助触媒を、メタロセン化合物1モルに対して2〜1,000,000モル、好ましくは50〜5,000モルの割合で併用する。
【0031】
ビスアミド化合物(c)は、例えば、下記の一般式(1)または(2):
1−CONH−R2−NHCO−R3 (1)
(式中、R1およびR3はそれぞれアルキル基またはアルケニル基を表し、R2はアルキレン基またはアリレン基を表す。)
4−NHCO−R5−CONH−R6 (2)
(式中、R4およびR6はそれぞれアルキル基またはアルケニル基を表し、R5はアルキレン基またはアリレン基を表す。)
で示されるビスアミド化合物が好ましい。上記の一般式(1)では、R1およびR3が炭素数6〜35のアルキル基またはアルケニル基で、かつR2が炭素数2〜12のアルキレン基またはアリレン基であるのがより好ましい。上記の一般式(2)では、R4およびR6が炭素数6〜35のアルキル基またはアルケニル基で、かつR5が炭素数2〜12のアルキレン基またはアリレン基であるのがより好ましい。
【0032】
上記の一般式(1)で示されるビスアミド化合物は、脂肪族モノカルボン酸とジアミンとから得られる化合物であり、その中でも炭素数6〜35の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜12のジアミンとから誘導される化合物がより好ましく、その具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスモンタン酸アミド、テトラメチレンビスステアリン酸アミド、テトラメチレンビスイソステアリン酸アミド、テトラメチレンビスモンタン酸アミド、ヘキサメチレンビスカプリル酸アミド、ヘキサメチレンビスカプリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリル酸アミド、ヘキサメチレンビスミリスチン酸アミド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスイソステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスモンタン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、テトラメチレンビスオレイン酸アミド、テトラメチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシレンビスモンタン酸アミドなどを挙げることができる。
【0033】
上記の一般式(2)で示されるビスアミド化合物は、脂肪族モノアミンとジカルボン酸とから得られる化合物であり、その中でも炭素数6〜35の脂肪族モノアミンと炭素数2〜12のジカルボン酸とから誘導される化合物がより好ましく、その具体例としては、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルアゼライン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアゼライン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジオレイルイソフタル酸アミドなどを挙げることができる。
【0034】
上記の一般式(1)または(2)で示されるビスアミド化合物はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%の割合で含有していることが必要であり、熱可塑性ポリウレタン(a)を45〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を55〜10重量%の割合で含有しているのが好ましい。前記の熱可塑性ポリウレタン(a)の含有割合が30重量%未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムの力学的性能や回復応力、残留歪みなどの回復性能が損なわれ、一方、含有割合が90重量%を越える場合には、耐ブロッキング性が劣る。
【0036】
ビスアミド化合物(c)の含有量は、熱可塑性ポリウレタン(a)とエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、0.05〜5重量%の範囲内であり、好ましくは0.1〜4重量%の範囲内である。ビスアミド化合物(c)の含有量が0.05重量%未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムの強度などの力学的性能が劣っている。一方、含有割合が5重量%を越える場合には、熱可塑性樹脂組成物からフィルムやシートなどの成形品を製造する際の溶融成形性が低下すると共に、成形品の表面にビスアミド化合物がブリードアウトして表面状態が悪化し、基材との接着性が低下する。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、さらにポリオレフィン系樹脂(d)を5〜17重量%の割合で含有していてもよい。ポリオレフィン系樹脂(d)をさらに配合することにより、耐ブロッキング性が一層向上すると共に、得られるフィルムの強度などの力学的性能も一層向上し、高温時の応力緩和性能も改善される。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂(d)は、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトインデックスが0.01〜0.3g/10分であることが好ましく、0.02〜0.2g/10分であることがさらに好ましい。この範囲内のメルトインデックスを有するポリオレフィン系樹脂を用いることにより、溶融成形性や耐ブロッキング性がより優れた熱可塑性樹脂組成物が得られ、さらに、該熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、強度などの力学的性能がより向上している。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂(d)としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂の密度が0.93〜0.97g/cm3の範囲内にある高密度ポリエチレンが特に好ましい。なお、本明細書でいうポリオレフィン系樹脂の密度は、ASTM D−1505に準拠して測定した値である。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に内部離型剤、補強剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防かび剤、安定剤などの各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;タルク、シリカなどの無機物;各種カップリング剤などの任意の成分を必要に応じて配合することができる。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ビスアミド化合物(c)および必要に応じてポリオレフィン系樹脂(d)や他の添加剤を、所望の方法で混合することにより製造することができる。例えば、樹脂材料の混合に通常用いられるような縦型または水平型の混合機を用いて、熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ビスアミド化合物(c)および必要に応じてポリオレフィン系樹脂(d)や他の添加剤とを所定の割合で予備混合したのち、単軸または二軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いて、回分式または連続式で加熱下に溶融混練することにより製造することができる。その他の方法としては、熱可塑性ポリウレタン(a)を製造する際の重合後期に、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)、ビスアミド化合物(c)および必要に応じてポリオレフィン系樹脂(d)や他の添加剤を配合してもよい。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、溶融成形、加熱加工が可能であり、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、注型などの任意の成形方法によって種々の成形品を円滑に製造することができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は溶融押出成形性に優れているので、例えば、T−ダイ型押出機によるフィルムやシートなどの成形では、T−ダイの有効幅よりも押し出されたフィルムやシートなどの成形品の幅がかなり小さくなるネックイン現象が著しく改善されており、ネックイン現象のために生じるフィルムやシートなどの成形品の両端部の厚み斑の範囲が狭くなるので、この厚み斑の部分をトリミングして得られる製品の収率が向上する。また、T−ダイより押し出されたフィルムやシートなどの成形品を早い速度で引き取る際にも、フィルムやシートなどの成形品の全体が均一に伸びずにくびれを生じるネッキングや割れなどの不良現象も無いために、品質のよい製品が生産性よく得られる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られるフィルムやシートなどの成形品は、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能、引張破断強度や引張破断伸度などの力学的性能に優れており、しかも平滑な表面を有していて表面状態も良好である。特に、伸長後の回復応力や残留歪みなどの回復性能に優れているので、これらの特性を生かして、紙おむつ用、生理ナプキン用、目止め用、防塵用などに用いられる伸縮性フィルム用途に用いるのが特に好ましい。また、一般用コンベアベルト、各種キーボードシート、ラミネート品、各種容器などのシート用途等の種々の用途にも使用することができる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートは、不織布やその他の繊維布からなる繊維質基材、他の重合体フィルムやシートなどからなる基材との接着性に優れているので、積層体の製造にも適している。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を繊維質基材やその他の基材上に、フィルム状またはシート状に溶融押出して積層体を製造することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、溶融成形性、フィルムの製造状態、表面状態、耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、50%回復応力、残留歪みおよび接着性は、以下の方法により測定または評価した。
【0044】
〔溶融成形性〕
T−ダイ型押出成形機から押し出したフィルムを放流させながら、T−ダイ出口より10cm下方のフィルム幅を測定し、下記の式(1)に従ってネックイン率(%)を求め、溶融成形性の指標とした。この値が小さいほどネックイン現象が改善され、溶融成形性に優れていることを示す。
ネックイン率(%)=(W2−W1)/W2×100 (1)
(式中、W1はT−ダイ出口から10cm下方のフィルム幅を、W2はT−ダイの有効幅を示す。)
【0045】
〔フィルムの製造状態、表面状態〕
T−ダイ型押出成形機から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取りの最中に、フィルム状態を観察し、以下の基準により評価した。
○:フィルムに割れなどの不良現象を生ずることなく、正常に巻き取り可能。
△:フィルムに割れなどの不良現象が多少生じたが、巻き取りは可能。
×:フィルムに割れなどの不良現象が生じ、巻き取りが不可能。
さらに、その巻き取ったフィルムの表面状態を観察し、平滑なものを○、分散不良等により表面に凹凸があるものを×とした。
【0046】
〔耐ブロッキング性〕
T−ダイ型押出成形機から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取ったフィルムを室温で24時間放置した後、手で巻き返し、その時の抵抗を以下の基準により評価した。
○:円滑に巻き返しが可能。
△:かなりの引張力を要したが、巻き返しが可能。
×:フィルム間の膠着性が著しく、巻き返しが不可能。
【0047】
〔100%モジュラス(M100)、50%回復応力、残留歪み〕
T−ダイ型押出成形機を用いて製膜した厚さ50μmのフィルムから試験片(20cm×5cm)を作成した。この試験片を、オートグラフ測定装置IS−500D(島津製作所製)を使用して、室温下、引張速度300mm/分で100%伸長して100%モジュラス(M100)を測定した。次に300mm/分の速度で伸長前の位置まで戻し(1サイクル目)、続けて同じ速度で100%伸長した後、伸長前の位置まで戻して2サイクルのヒステリシス曲線を測定した。2サイクル目で50%伸長まで戻した時点の応力(50%回復応力)および伸長前の位置まで戻した時点での残留歪みを求めた。
100%モジュラス(M100)の値が小さいほど、低応力でも伸長してしまうことを示す。50%回復応力の値が大きいほど、伸長された状態から縮む力が大きいことを示す。また、残留歪みの値が小さいほど、伸長後に元の状態に戻る回復性能に優れていることを示す。
【0048】
〔接着性〕
T−ダイ型押出成形機を用いて製膜した厚さ50μmのフィルムから幅25mmの試験片を作成した。この試験片に粘着テープ(ニチバン(株)製、布粘着テープLS No.101)を張り付け、この粘着テープを引き剥がす時の抵抗値を、オートグラフ測定装置IS−500D(島津製作所製)を使用して、室温下、引張速度300mm/分の条件で測定し、基材との接着性の指標とした。
【0049】
以下の実施例および比較例で使用した樹脂および化合物に関する略号を、下記に示す。
【0050】
TPU−A
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00であり、数平均分子量が3500であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(1)」と称する)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオールとトリメリロールプロパンとアジピン酸とを反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が3.00であり、数平均分子量が2000であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(2)」と称する)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が98/2、1分子当たりの水酸基数が2.02〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、対数粘度が1.10dl/g〕。
【0051】
TPU−B
ポリエステルポリオール(1)およびポリエステルポリオール(2)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が95/5、1分子当たりの水酸基数が2.05〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が65、対数粘度が1.13dl/g〕。
【0052】
TPU−C
2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオールと2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールの混合物(モル比が35:65)およびアジピン酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00であり、数平均分子量が2000であるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(3)」と称する)とポリエステルポリオール(2)との混合物〔ポリエステルポリオール(3)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が97/3、1分子当たりの水酸基数が2.03〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS
A硬度が70、対数粘度が1.10dl/g〕。
【0053】
TPU−D
1分子当たりの水酸基数が2.00であるポリエステルポリオール(1)を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、対数粘度が1.02dl/g〕。
【0054】
TPU−E
ポリエステルポリオール(1)とポリエステルポリオール(2)の混合物〔ポリエステルポリオール(1)/ポリエステルポリオール(2)のモル比が88/12、1分子当たりの水酸基数が2.12〕を、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジオールと反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン〔JIS A硬度が75、DMF溶媒不溶〕。
【0055】
POE−A
エチレン−1−オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)製「ENGAGE EG8100」;エチレン単位/1−オクテン単位のモル比が92.7/7.3、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が1.0g/10分、ショアーA硬度が75、ムーニー粘度が35.6ML1+4(100℃)〕
【0056】
POE−B
エチレン−1−オクテン共重合体〔デュポンダウエラストマー(株)製「ENGAGE EG8200」;エチレン単位/1−オクテン単位のモル比が92.2/7.8、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が4.2g/10分、ショアーA硬度が75、ムーニー粘度が12.1ML1+4(100℃)〕
【0057】
AM−A
エチレンビスステアリン酸アミド
【0058】
AM−B
ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド
【0059】
PO
ポリエチレン〔三井石油化学工業(株)製「HI−ZEX 5000H」;メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.11g/10分、密度が0.960g/cm3
【0060】
実施例1
TPU−A 70重量部、POE−A 30重量部およびAM−A 3重量部からなる混合物を単軸押出成形機(25mmφ、シリンダー温度:180〜200℃、ダイス温度:200℃)で溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表1に示す。
【0061】
実施例2〜4
熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体およびビスアミド化合物の使用量を、下記の表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表1に示す。
【0062】
実施例5
熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ビスアミド化合物およびポリオレフィン系樹脂の使用量を、下記の表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 0003863983
【0064】
比較例1および3〜4
熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体およびビスアミド化合物の使用量を、下記の表2に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物について、上記の評価方法により評価した結果を下記の表2に示す。
【0065】
比較例2
熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体およびビスアミド化合物の使用量を、下記の表2に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により熱可塑性樹脂組成物を製造した。この熱可塑性樹脂組成物から厚さ50μmのフィルムを製造しようとしたが、フィルム割れが生じてしまい、耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、50%回復応力、残留歪みおよび接着性が評価できるフィルムは得られなかった。
【0066】
【表2】
Figure 0003863983
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、T−ダイ型押出機などで溶融押出成形する際に生じるネックイン現象が著しく改善され、耐ブロッキング性にも優れている。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いれば、適度な強度を有し、伸長後の回復応力が高く、伸長後の残留歪みが小さいのみならず、基材との接着性にも優れているフィルムやシートなどの成形品を、高収率かつ高生産性で製造することが出来る。

Claims (3)

  1. (i)熱可塑性ポリウレタン(a)、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)およびビスアミド化合物(c)からなる熱可塑性樹脂組成物であって;
    (ii)熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)を30〜90重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(b)を70〜10重量%およびビスアミド化合物(c)を0.05〜5重量%の割合で含有し;そして、
    (iii)前記熱可塑性ポリウレタン(a)が、1分子当たりの水酸基数が2.01〜2.10であり、かつ数平均分子量が500〜8,000である高分子ポリオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる熱可塑性ポリウレタンであり;
    (iv)前記エチレン−α−オレフィン共重合体(b)が、エチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が75/25〜95/5であり、L形ローターを使用して100℃で測定したムーニー粘度が10〜38ML 1+4 (100℃)であるエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 熱可塑性ポリウレタン(a)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の合計重量に基づいて、さらにメルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.01〜0.3g/10分であるポリオレフィン系樹脂(d)を5〜17重量%の割合で含有する請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムまたはシート
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