JP3862182B2 - 1−ヘキセンの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1−ヘキセンの製造方法に関するものであり、詳しくは、エチレンの三量化反応による工業的有利な1−ヘキセンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、1−ヘキセンを包含するα−オレフイン低重合体の工業的有利な製造方法として、数多くの提案がなされている。例えば、特開平7−118174号、同7−118175号、同7−118326号、同7−118327号、同7−149671号、同7−149672号、同7−149673号、同7−149674号、同7−149675号、同7−149676号、同7−149677号、同7−165815号の各公報には、少なくとも、クロム化合物(a)、アミン又は金属アミド(窒素含有化合物)(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用した各種の改良発明が提案されている。
【0003】
また、特開平8−3216号公報、特開8−134131号公報などには、少なくとも、クロム化合物(a)、アミン又は金属アミド(窒素含有化合物)(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)、ハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用した発明が提案されている。特に、特開平7−149672号および同7−149677号に記載の各発明は、1−ヘキセンの製造方法に関するものである。
【0004】
そして、上記の各提案においては、クロム化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様でα−オレフインとクロム系触媒とを接触させてα−オレフインの低重合を行うことにより、一層高い選択率で目的とするα−オレフイン低重合体(例えば1−ヘキセン)が得られることが開示されている。
【0005】
ところで、1−ヘキセンの工業的製造においては、一般的に言えば、回分方式よりも半回分方式または連続方式の方が有利である。ところで、例えば、連続方式の場合、通常、1−ヘキセンは、反応器から液相として抜き出される。すなわち、1−ヘキセンは、反応溶媒およびクロム系触媒などと共に反応器から抜き出される。そして、通常、反応溶媒は、反応液から蒸留分離されて反応器に循環され、そして、反応器には、抜き出し量見合いのクロム触媒が供給される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、1−ヘキセンと共に常時に抜き出される反応液の蒸留処理には相当のユーテイリテイーを必要とし、また、上記の様に活性低下前のクロム触媒を多量に抜き出し且つ当該抜き出し量見合いのクロム触媒を反応器に供給することは、クロム触媒の有効利用の観点から得策とは言えない。それにも拘らず、これ迄、上記の観点からの改良は提案されていない。
【0007】
実際、特開平7−149672号公報に記載の1−ヘキセンの製造方法は、反応器から反応液を液相抜き出しし、反応液から1−ヘキセンと反応溶媒とを蒸留分離し、回収された反応溶媒を反応器に循環することを特徴としている。また、特開平7−149677号公報に記載の1−ヘキセンの製造方法は、クロム系触媒の使用による1−ヘキセンの高い選択率を利用した製造方法であるが、液相抜き出しされた反応液から脱ガス後に副生ポリマーの分離を行うことを特徴としている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、反応液の蒸留処理コストを低減し且つクロム触媒を有効利用し得る様に改良された工業的有利な1−ヘキセンの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、特開平7−149677号公報に記載された1−ヘキセンの高選択率の教示に基づき更に検討を重ねた結果、生成物である1−ヘキセンの反応器からの抜き出しを反応器の気相から行うことにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法であって、槽型反応器中にエチレンガスを連続的に供給し、クロム系触媒の存在および加熱加圧条件下、1−ヘキセンより高沸点の反応溶媒中でエチレンの三量化反応を行い、エチレンガスと共に反応器気相中の1−ヘキセンを連続的に反応器外に導出させ、次いで、当該導出ガスからエチレンガスを分離して1−ヘキセンを回収することを特徴とする1−ヘキセンの製造方法に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法である。本発明においては、クロム系触媒として、少なくとも、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)及びアルキルアルミニウム化合物(c)の組み合わせから成る触媒系を使用する。そして、好ましい態様として、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成る触媒系を使用する。上記の3成分系または4成分系のクロム系触媒は、前述の通り公知である。本発明においては、これらの公知のクロム系触媒を制限なくそのまま使用することが出来る。
【0012】
具体的に指摘すれば、上記の3成分系クロム系触媒としては、例えば特開平7−118174号公報の[0013]〜[0025]に詳記された各成分から成るクロム系触媒を使用することが出来、上記の4成分系クロム系触媒としては、特開平8−3216号公報の[0014]〜[0028]、または、特開平8−134131号公報の[0015]〜[0041]に詳記された各成分から成るクロム系触媒を使用することが出来る。
【0013】
上記のクロム化合物(a)としては、代表的には、クロムのカルボキシル塩が挙げられ、その具体例としては、クロム(II)アセテート、クロム(III) アセテート、クロム(III) −2−エチルヘキサノエート、クロム(III) ベンゾエート、クロム(III) ナフテネート等が挙げられる。これらの中では、クロム(III) −2−エチルヘキサノエートが最も好ましい。
【0014】
上記の窒素含有化合物(b)としては、代表的には、2級アミンが挙げられ、その具体例としては、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロールが挙げられる。これらの中では、2,5−ジメチルピロールが最も好ましい。
【0015】
上記のアルキルアルミニウム化合物(c)としては、代表的には、トリアルキルアルミニウム化合物が挙げられ、その具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリエチルアルミニウムが最も好ましい。
【0016】
上記のハロゲン含有化合物(d)としては、特に、特開8−134131号公報に記載された、3個以上のハロゲン原子で置換された炭素数2以上の直鎖状炭化水素類が好適である。そして、その具体例としては、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、槽型反応器中にエチレンガスを連続的に供給し、クロム系触媒の存在および加熱加圧条件下、1−ヘキセンより高沸点の反応溶媒中でエチレンの三量化反応を行う。なお、1−ヘキセンの常圧下の沸点は63℃である。
【0018】
上記の反応溶媒としては、1−ヘキセンより30℃以上高い沸点の反応溶媒が好適に使用され、その具体例としては、ヘプタン、デカン、ドデカン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の炭素数6〜20の鎖状または脂環式の飽和炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素などが使用される。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することも出来る。
【0019】
反応温度の下限は、通常30℃、好ましくは70℃、更に好ましくは100℃であり、その上限は、通常200℃である。反応温度が高い程、後述する本発明における1−ヘキセンの回収効率が高められる。100℃以上、好ましくは120℃以上の反応温度の採用は、反応液中において副生ポリマーを溶解状態として維持することが出来るため、反応器内の副生ポリマーの付着を防止出来、更に、後述する副生ポリマーの分離の観点から好ましい結果が得られる。
【0020】
反応圧力は、通常35〜250kg/cm2 、好ましくは35〜100kg/cm2 の範囲とされる。そして、100℃以上の反応温度を採用する場合、反応圧力は、次の(1)式を満足する範囲から選択するのが好ましい。斯かる条件を満足することにより、高温反応におけるクロム系触媒の性能低下を防止することが出来る。なお、式中、Tは反応温度(℃)、Pは反応圧力(kg/cm2 G)を表す。
【0021】
【数1】
P>0.5T−15 ・・・(1)
【0022】
本発明において、クロム化合物の使用量は、溶媒1リットル当たり、通常1.0×10-7〜0.5mol、好ましくは1.0×10-6〜0.2mol、更に好ましくは1.0×10-5〜0.05molの範囲とされる。一方、アルキルアルミニウム化合物の使用量は、クロム化合物1mol当たり、通常50mmol以上であるが、触媒活性および1−ヘキセンの選択率の観点から、0.1mol以上とするのがよい。そして、上限は、通常1.0×104 molである。また、窒素含有化合物の使用量は、クロム化合物1mol当たり、通常0.001mol以上であり、好ましくは0.005〜1000mol、更に好ましくは0.01〜100molの範囲とされる。また、ハロゲン含有化合物の使用量は、窒素含有化合物の使用量と同一の範囲とされる。
【0023】
本発明においては、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)のモル比(a):(b):(c):(d)は1:1〜50:1〜200:1〜50が好ましく、1:1〜30:10〜150:1〜30が特に好ましい。斯かる特定条件の結合により、ヘキセンを90%以上(全生成量に対する割合)の収率で製造することが出来、しかも、ヘキセン中の1−ヘキセンの純度を99%以上に高めることが出来る。
【0024】
また、本発明において、反応溶媒中の1−ヘキセン/エチレンのモル比は、好ましくは0.05〜1.50、更に好ましくは0.10〜0.80の範囲に維持するのがよい。斯かる条件を満足させることにより、1−ヘキセンよりも沸点の高い成分の副生が抑制されて1−ヘキセンの選択率が一層高められる。
【0025】
すなわち、クロム系触媒によるエチレンの三量化反応は、逐次的に進行し、従って、1−ヘキセン生成後においては、1−ヘキセン1モルとエチレン2モルとが反応し炭素数10のα−オレフイン低重合体が生成し、更に、炭素数14のα−オレフイン低重合体が生成する。ところで、本発明においては、後述する通り、反応溶媒中の1−ヘキセンは、生成後直ちに気相を通して反応器外に導出させられるため、反応溶媒中の1−ヘキセンの滞留時間は短く、従って、上記の様な逐次的三量化反応は十分に抑制されている。しかしながら、反応溶媒中の1−ヘキセン/エチレンのモル比を上記範囲に規定することにより、1−ヘキセンの選択率が一層高められる。その結果、反応器内の高沸成分の蓄積を抑制し、後述の反応液の抜き出し量を一層少なくすることが出来る。
【0026】
なお、上記のモル比は、触媒濃度や反応時間を調節することにより制御することが出来る。例えば、触媒濃度を小さくしたり、反応時間を短くした場合は、反応率が低下して1−ヘキセンの生成量が減少し、その結果、1−ヘキセン/エチレンのモル比は小さくなる。また、反応圧力を高めた場合にも上記のモル比は小さくなる。
【0027】
本発明の最大の特徴は、反応器からの1−ヘキセンの抜き出しを当該反応器の気相から行う点にある。すなわち、本発明において、反応溶媒およびクロム触媒は、基本的に反応器内に滞留させ、反応器に連続的に供給されるエチレンガス見合いの反応器気相ガスを抜き出す。気相ガスの抜き出しは、例えば、反応器の気相に導通して付設された圧力コントロールバルブによって行うことが出来る。
【0028】
反応器内のエチレンガスの滞留時間(反応時間)は、通常1分から20時間、好ましくは0.5〜6時間の範囲から選択される。斯かる滞留時間は、圧力コントロールバルブの開度調節によって制御することが出来る。
【0029】
上記の様な気相からのガス抜き出し操作は、一種の反応蒸留とも考えられ、抜き出されるガスの組成は、厳密でないが、液相(反応溶媒中)と気液平衡の関係にある。なお、エチレンガスの反応器への供給態様は、特に制限されず、必要ならば、反応溶媒中に吹き込む供給態様を採用してもよく、斯かる供給態様によれば、エチレンガスの所謂ショトーパスを防止することが出来る。
【0030】
本発明において、上記の導出ガスからエチレンガスを分離して1−ヘキセンを回収するが、斯かる操作は、気液分離器において、1−ヘキセンの沸点以下で且つエチレンの沸点以上の温度に導出ガスを冷却して1−ヘキセンを凝縮させて回収する方法、脱ガス塔において、導出ガスの圧力を解除して1−ヘキセンを凝縮させて回収する方法、上記の冷却操作と圧力解除(放圧)操作とを組み合わせた方法などによって行うことが出来る。
【0031】
本発明において、反応器の気相から1−ヘキセンが抜き出されるため、1−ヘキセンの回収のための液相(反応液)の抜き出しは、基本的には不要である。しかしながら、通常は、副生ポリマー等の反応器内の蓄積防止のため、少量の反応液を連続的に又は非連続的に反応器から抜き出し、そして、当該抜き出し量に見合った反応溶媒およびクロム触媒成分を連続的に又は非連続的に反応器に供給するのが好ましい。抜き出された反応液は、反応溶媒の反応器への循環使用のため、連続的に又は回分的に生成物蒸留塔で処理される。
【0032】
しかしながら、上記の蒸留処理は、少量抜き出しされた反応液に行われるため、一定の滞留時間経過後に全量抜き出しされる反応液を蒸留処理する場合に比し、遙に少ないユテイリテイーで行うことが出来る。また、上記の反応液の少量抜き出しに伴い活性低下前の少量のクロム触媒が抜き出される。しかしながら、少量のクロム触媒の抜き出しは、一定の滞留時間経過後に反応液と共にクロム触媒の全量が抜き出される場合に比し、クロム触媒の有効利用の観点から遙に優れている。
【0033】
本発明において、クロム触媒成分の反応器への供給は、クロム化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様でエチレンとクロム系触媒とを接触させる態様で行うのが好ましい。斯かる特定の接触態様により、選択的に三量化反応を行わせ、原料エチレンから1−ヘキセンを高収率で得ることが出来る。上記の特定の接触態様は、例えば、特開平7−118174号公報の[0037]〜[0031]、特開平8−3216号公報の[0029]〜[0032]、特開平8−134131号公報の[0038]〜[0050]に詳記されているが、その幾つかの例を挙げれば次の通りである。
【0034】
(1)窒素含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物を含む反応溶媒中にα−オレフイン及びクロム含有化合物を導入する方法。
(2)窒素含有化合物、アルキルアルミニウム化合物、ハロゲン含有化合物を含む反応溶媒中にα−オレフインを導入する方法。
(3)窒素含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物を含む反応溶媒中にα−オレフイン、クロム含有化合物およびハロゲン含有化合物を導入する方法。
【0035】
しかしながら、本発明においては、上記の様な接触態様に従って反応器中で触媒調製を行う他、別途に調製したクロム系触媒を反応器に供給して低重合反応を行ってもよい。例えば、先ず、α−オレフインの不存在下、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、窒素含有化合物(b)(特にはピロール含有化合物)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)を接触させ、次いで、得られた触媒調製用反応液とクロム化合物(a)とを反応させることにより、優れた性能のクロム触媒を調製することが出来る。
【0036】
本発明において、反応液の処理方法は特に制限されず、例えば、最初に固液分離装置によって副生ポリマーの分離除去を行うことも不可能ではない。しかしながら、上記の場合は、金属成分の分離とは別個に副生ポリマー用の固液分離装置が必要となるのみならず、反応液中の各成分の蒸留分離の際に受ける熱履歴によってメタル化した金属成分の分離が極めて困難となる。すなわち、例えば、加熱蒸発器を利用して高沸点成分と金属成分とを分離しようとした場合、金属成分は、加熱蒸発器の伝熱面に付着して実質的に分離不可能となる。そして、伝熱面に付着した金属成分は、加熱蒸発器の運転に支障を来す。
【0037】
従って、本発明において、副生ポリマーは、後述する様に、触媒成分と共に濃縮して分離するのが好ましい。斯かる分離態様によれば、触媒成分は、副生ポリマーの可塑性によって極めて容易に分離される。しかも、副生ポリマー用の固液分離装置を省略でき、プロセスをコンパクト化することが出来る。
【0038】
そして、副生ポリマーの可塑性を利用した、副生ポリマーと触媒成分との上記の同時回収プロセスを効果的に実施するため、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおいて、反応液の温度を副生ポリマーが反応液中に溶解状態として存在し得る温度に維持するのが好ましい。これにより、副生ポリマーのプロセスライン内(例えば配管などの付帯設備)における付着や析出に伴う種々のトラブルを回避することも出来る。副生ポリマーが反応液中に溶解状態として存在し得る温度は、100℃以上の温度で十分であるが、必要ならば昇温してもよい。
【0039】
また、本発明においては、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおいて、反応液中に触媒成分を分散状態で維持するのが好ましい。一般的に言えば、触媒成分は、副生ポリマー程にプロセスライン内で付着や析出することが少ないと考えられる。
【0040】
しかしながら、本発明においては、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおける反応液中に反応溶媒に可溶で且つクロムに対して配位子形成能を有する化合物を添加することにより、反応液中における触媒成分の分散状態を積極的に維持するのが好ましい。しかも、上記の化合物は、反応液の安定化剤としても作用する。すなわち、クロム触媒は、エチレンの不存在下において1−ヘキセンを異性化する活性を有するが、上記の化合物の添加により、異性化反応の活性を失活させることが出来る。従って、反応液を回分的に蒸留処理する際などにおいては、上記の化合物の添加により、高温度で反応液を長時間安定に保存することが出来る。
【0041】
反応溶媒に可溶で且つクロムに対して配位子形成能を有する化合物(以下、金属可溶化剤と呼ぶ)としては、通常、−X−H官能基を有する低分子化合物(但し、Xはヘテロ原子、Hは水素原子を表す)又は活性メチレン基を有する低分子化合物が使用される。前者の例としては、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類、1級または2級アミン類、アンモニアが挙げられ、後者の例としては、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0042】
上記のアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロパンジオール等が挙げられ、フェノール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン等が挙げられ、カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、フェニル酢酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、サリチル酸などが挙げられ、1級または2級アミン類の具体例としては、触媒の一成分として前述した各アミン類が挙げられる。
【0043】
金属可溶化剤の使用割合は、極微量から溶媒量の範囲に亘る広い範囲から選択することが出来るが、溶媒中の濃度として、通常0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。また、金属可溶化剤の添加時期は、反応液の蒸留分離前の任意の段階を選択することが出来る。そして、蒸留分離工程が複数存在する場合は、金属成分のメタル化が最も惹起され易い最終の蒸留工程の直前に添加してもよいが、反応器から抜き出された直後の反応液に添加するのが好ましい。なお、金属可溶化剤に代えてα−オレフインの重合分野において既に提案されている帯電防止剤を反応液中に添加する方法も好適に使用し得る。
【0044】
本発明の上記の好ましい態様によれれば、副生ポリマー及び触媒成分の同時回収プロセスに至るまでの間の両者の損失を最大限に防止することが出来る。
【0045】
本発明においては、先ず、抜き出された反応液の処理として脱ガスを行うのが好ましい。脱ガス処理は、通常、15kg/cm2 G以下まで降圧して行われるが、高圧容器の取扱上の法規の点からは、第2種高圧容器とされる1.9kg/cm2 G以下まで降圧するのが好ましく、更には、0.2kg/cm2 G以下まで降圧するならば、殆ど常圧と同等の操作を行い得るため、一層好ましい。
【0046】
本発明において、反応液からの副生ポリマー及び触媒成分の濃縮分離は、脱ガスした反応液から低沸点の全成分(主として1−ヘキセン)を単蒸留的に除去すると同時に行うことも出来、また、脱ガスした反応液から逐次に各成分を蒸留分離する際の最後の蒸留分離と同時に行うことも出来る。
【0047】
本発明の場合、反応生成物は主として1−ヘキセンであるため、脱ガス後の反応液から1−ヘキセン及び溶媒を蒸留分離すると共に触媒成分を副生ポリエチレンと共に濃縮して分離する。そして、得られた副生ポリマーと触媒成分を含有する濃縮液をそのまま廃棄することが出来る。
【0048】
上記の通り、本発明方法で採用する触媒系においては、1−ブテンの副生が少なく、1−ヘキセンが高収率で得られるため、脱ガス塔からの反応液を単一の生成物蒸留塔で処理することにより、1−ヘキセンと反応溶媒と副生ポリマー及び触媒成分を含む高沸点成分とに分離することが出来、その結果、抜き出された反応液の後処理工程についても最もコンパクト化された経済性の高いプロセスを実現することが出来る。
【0049】
また、本発明の前述した好ましい態様においては、副生ポリマーと触媒成分の各々の少なくとも一部について同時分離を行うが、好ましくは触媒成分の全部について、より好ましくは副生ポリマーと触媒成分の全部について同時分離を行う。そして、何れの場合も、生成物蒸留塔から回収された副生ポリマー及び触媒成分を含む缶出液を加熱蒸発器に供給し、高沸点成分を回収すると共に、副生ポリマー及び触媒成分を更に濃縮して回収するのが好ましい。
【0050】
上記の加熱蒸発器としては、従来公知の各種のものが使用し得る。例えば、円筒内型の伝熱面に対して回転する掻き取り羽根などを備えた薄膜式蒸発器、プレートフィン型加熱器を内蔵した蒸発器などを使用し得る。プレート・フィン型加熱器を内蔵した蒸発器は、高密度に配置されたフィンによって高粘度流体を瞬時に加熱し、その中に含まれている揮発性物質を効率的に除去することが出来る。
【0051】
上記の様な構造の加熱蒸発器としては、例えば、三井造船(株)製の「ハイビスカスエバポレータ」(商品名)等が挙げられる。この様な加熱蒸発器を使用した場合、内蔵されたプレート・フィン型加熱器で濃縮された副生ポリマー及び触媒成分は、加熱蒸発器の下部から副生ポリマーの可塑性によって流れ落ちて来る。従って、適当に冷却した状態で切断して容易に回収することが出来る。
【0052】
本発明において、特に推奨される加熱蒸発器は、加熱蒸発器が十分な長さを持った加熱管と減圧保持可能な捕集缶とを備えたモノチューブ型蒸発器である。斯かる構造の加熱蒸発器としては、例えば、ホソカワミカロン(株)製の「CRUX SYSTEM」(商品名)等が挙げられる。この様なモノチューブ型蒸発器は、加熱管で加熱・蒸発させた濃縮液を音速程度の高速で捕集缶に噴出してその中に含まれる揮発性物質を効率的に除去する。捕集缶内で濃縮された副生ポリマーと触媒成分は、捕集室の下部から副生ポリマーの可塑性により流れ落ちて来る。従って、適当に冷却した状態で切断して容易に回収することが出来る。
【0053】
本発明の製造方法で得られた1−ヘキセンからは、公知の重合触媒を使用した重合反応により、有用な樹脂であるL−LDPEを製造することが出来る。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
完全混合槽型反応器、気液分離器、単蒸留塔から成り、反応器と気液分離器との間には、気液分離されたエチレンを反応器に循環する圧縮機を備えたプロセスに従って、エチレンの連続低重合反応を行った。完全混合槽型反応器としては、2本の供給管を備えた20Lのオートクレーブを使用した。
【0056】
完全混合槽型反応器の一方の供給管からエチレンと共にクロム(III) −2−エチルヘキサノエート(a)のn−ヘプタン溶液とヘキサクロロエタン(d)のn−ヘプタン溶液とを供給し、他方の供給管から2,5−ジメチルピロール(b)のn−ヘプタン溶液とトリエチルアルミニウム(c)のn−ヘプタン溶液とを供給して反応を開始した。反応条件は、120℃×50kg/cm2 Gとした。
【0057】
そして、反応器の気相から圧力コントロールバルブを介してエチレンガスと共に1−ヘキセンを連続的に反応器外に導出させて気液分離器に供給し、そして、連続的に少量の反応液を抜き出すと共に当該抜き出し量に見合った量の上記の各触媒成分を供給した。
【0058】
反応液の抜き出し量は0.3kg/Hrであり、触媒成分の供給量は、クロム(III) −2−エチルヘキサノエート(a):0.0019mmol/Hr、ヘキサクロロエタン(d):0.0074mmol/Hr、2,5−ジメチルピロール(b):0.0011mmol/Hr、トリエチルアルミニウム(c):0.074mmol/Hr、ヘプタン全量:8リットル/Hrであり、(a):(b):(c):(d)のモル比は1:6:40:4である。また、反応液中の1−ヘキセン/エチレンモル比は0.27である。
【0059】
反応器から抜き出されたガスは、気液分離器において未反応エチレンと凝縮液とに分離された。未反応エチレンは圧縮機にて昇圧されて反応器に循環され、上記の凝縮液は単蒸留塔に供給された。単蒸留塔の塔頂から1−ヘキセン、塔底からn−ヘプタンが抜き出された。n−ヘプタンは循環パイプを経て反応器に循環された。
【0060】
一方、上記の実施例で少量抜き出しを行った反応液は、脱ガス塔において常圧まで降圧され、120℃の温度に保持された貯蔵タンクに供給された。この貯槽タンクには、金属可溶化剤としてオクタン酸(2−エチルヘキサン酸)を濃度が0.022重量%となる様に添加した。気液分離器での1ヘキセンの留出量および少量抜き出しを行った反応液の組成分析の結果を表1に示す。
【0061】
実施例2〜4
実施例1のプロセスに従って、反応液中の1−ヘキセン/エチレンモル比および反応圧力を表1になる様に変更し、実施例1と同様にエチレンの連続低重合反応を行った。気液分離器での1ヘキセンの留出量および少量抜き出しを行った反応液の組成分析の結果を表1に示す。
【0062】
そして、実施例1〜4において少量抜き出しされ且つ貯蔵タンクに供給された反応液は、生成物蒸留塔と蒸発器から成る別途の回収プロセスで定期的に処理した。生成物蒸留塔としては、2ヶ所の側流(サイドストリーム)抜き出し部を備え且つ全段数30段の生成物蒸留塔を使用し、蒸発器としては、8mの長さの加熱管と減圧保持可能な捕集缶とを備えたモノチューブ型蒸発器「CRUX SYSTEM」(ホソカワミカロン(株)製の商品名)を使用した。
【0063】
生成物蒸留塔は、塔頂圧力:3kg/cm2 G、還流比(R/D):18、塔底温度:162℃の条件で運転を行い、生成物蒸留塔の塔底から第8段目の側流抜き出し部から溶媒n−ヘプタンを、第26段目の側流抜き出し部から製品ヘキセンをそれぞれサイドカットとして抜き出して回収し、塔頂からヘキセンよりも低沸点の成分を留出させて回収した。生成物蒸留塔から回収されたn−ヘプタンは循環パイプを経て反応器に循環され、塔底液は蒸発器に供給して濃縮された。
【0064】
蒸発器において、蒸発された高沸点成分は凝縮して回収され、副生ポリエチレンと共に濃縮された触媒成分は、捕集室の下部から回収された。加熱管の温度は200℃、捕集缶の温度は150℃、捕集缶の圧力は200torrであった。上記のプロセスにおける蒸発器の運転は、金属を含む触媒成分が副生ポリエチレンと共に濃縮された混合物として回収されるため、ポリエチレンの可塑性により、捕集室の下部から自重により落下分離し、良好に行われた。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、反応液の蒸留処理コストを低減し且つクロム触媒を有効利用し得る様に改良された工業的有利な1−ヘキセンの製造方法が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、1−ヘキセンの製造方法に関するものであり、詳しくは、エチレンの三量化反応による工業的有利な1−ヘキセンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、1−ヘキセンを包含するα−オレフイン低重合体の工業的有利な製造方法として、数多くの提案がなされている。例えば、特開平7−118174号、同7−118175号、同7−118326号、同7−118327号、同7−149671号、同7−149672号、同7−149673号、同7−149674号、同7−149675号、同7−149676号、同7−149677号、同7−165815号の各公報には、少なくとも、クロム化合物(a)、アミン又は金属アミド(窒素含有化合物)(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用した各種の改良発明が提案されている。
【0003】
また、特開平8−3216号公報、特開8−134131号公報などには、少なくとも、クロム化合物(a)、アミン又は金属アミド(窒素含有化合物)(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)、ハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用した発明が提案されている。特に、特開平7−149672号および同7−149677号に記載の各発明は、1−ヘキセンの製造方法に関するものである。
【0004】
そして、上記の各提案においては、クロム化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様でα−オレフインとクロム系触媒とを接触させてα−オレフインの低重合を行うことにより、一層高い選択率で目的とするα−オレフイン低重合体(例えば1−ヘキセン)が得られることが開示されている。
【0005】
ところで、1−ヘキセンの工業的製造においては、一般的に言えば、回分方式よりも半回分方式または連続方式の方が有利である。ところで、例えば、連続方式の場合、通常、1−ヘキセンは、反応器から液相として抜き出される。すなわち、1−ヘキセンは、反応溶媒およびクロム系触媒などと共に反応器から抜き出される。そして、通常、反応溶媒は、反応液から蒸留分離されて反応器に循環され、そして、反応器には、抜き出し量見合いのクロム触媒が供給される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、1−ヘキセンと共に常時に抜き出される反応液の蒸留処理には相当のユーテイリテイーを必要とし、また、上記の様に活性低下前のクロム触媒を多量に抜き出し且つ当該抜き出し量見合いのクロム触媒を反応器に供給することは、クロム触媒の有効利用の観点から得策とは言えない。それにも拘らず、これ迄、上記の観点からの改良は提案されていない。
【0007】
実際、特開平7−149672号公報に記載の1−ヘキセンの製造方法は、反応器から反応液を液相抜き出しし、反応液から1−ヘキセンと反応溶媒とを蒸留分離し、回収された反応溶媒を反応器に循環することを特徴としている。また、特開平7−149677号公報に記載の1−ヘキセンの製造方法は、クロム系触媒の使用による1−ヘキセンの高い選択率を利用した製造方法であるが、液相抜き出しされた反応液から脱ガス後に副生ポリマーの分離を行うことを特徴としている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、反応液の蒸留処理コストを低減し且つクロム触媒を有効利用し得る様に改良された工業的有利な1−ヘキセンの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、特開平7−149677号公報に記載された1−ヘキセンの高選択率の教示に基づき更に検討を重ねた結果、生成物である1−ヘキセンの反応器からの抜き出しを反応器の気相から行うことにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法であって、槽型反応器中にエチレンガスを連続的に供給し、クロム系触媒の存在および加熱加圧条件下、1−ヘキセンより高沸点の反応溶媒中でエチレンの三量化反応を行い、エチレンガスと共に反応器気相中の1−ヘキセンを連続的に反応器外に導出させ、次いで、当該導出ガスからエチレンガスを分離して1−ヘキセンを回収することを特徴とする1−ヘキセンの製造方法に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法である。本発明においては、クロム系触媒として、少なくとも、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)及びアルキルアルミニウム化合物(c)の組み合わせから成る触媒系を使用する。そして、好ましい態様として、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成る触媒系を使用する。上記の3成分系または4成分系のクロム系触媒は、前述の通り公知である。本発明においては、これらの公知のクロム系触媒を制限なくそのまま使用することが出来る。
【0012】
具体的に指摘すれば、上記の3成分系クロム系触媒としては、例えば特開平7−118174号公報の[0013]〜[0025]に詳記された各成分から成るクロム系触媒を使用することが出来、上記の4成分系クロム系触媒としては、特開平8−3216号公報の[0014]〜[0028]、または、特開平8−134131号公報の[0015]〜[0041]に詳記された各成分から成るクロム系触媒を使用することが出来る。
【0013】
上記のクロム化合物(a)としては、代表的には、クロムのカルボキシル塩が挙げられ、その具体例としては、クロム(II)アセテート、クロム(III) アセテート、クロム(III) −2−エチルヘキサノエート、クロム(III) ベンゾエート、クロム(III) ナフテネート等が挙げられる。これらの中では、クロム(III) −2−エチルヘキサノエートが最も好ましい。
【0014】
上記の窒素含有化合物(b)としては、代表的には、2級アミンが挙げられ、その具体例としては、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロールが挙げられる。これらの中では、2,5−ジメチルピロールが最も好ましい。
【0015】
上記のアルキルアルミニウム化合物(c)としては、代表的には、トリアルキルアルミニウム化合物が挙げられ、その具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリエチルアルミニウムが最も好ましい。
【0016】
上記のハロゲン含有化合物(d)としては、特に、特開8−134131号公報に記載された、3個以上のハロゲン原子で置換された炭素数2以上の直鎖状炭化水素類が好適である。そして、その具体例としては、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、槽型反応器中にエチレンガスを連続的に供給し、クロム系触媒の存在および加熱加圧条件下、1−ヘキセンより高沸点の反応溶媒中でエチレンの三量化反応を行う。なお、1−ヘキセンの常圧下の沸点は63℃である。
【0018】
上記の反応溶媒としては、1−ヘキセンより30℃以上高い沸点の反応溶媒が好適に使用され、その具体例としては、ヘプタン、デカン、ドデカン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の炭素数6〜20の鎖状または脂環式の飽和炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素などが使用される。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することも出来る。
【0019】
反応温度の下限は、通常30℃、好ましくは70℃、更に好ましくは100℃であり、その上限は、通常200℃である。反応温度が高い程、後述する本発明における1−ヘキセンの回収効率が高められる。100℃以上、好ましくは120℃以上の反応温度の採用は、反応液中において副生ポリマーを溶解状態として維持することが出来るため、反応器内の副生ポリマーの付着を防止出来、更に、後述する副生ポリマーの分離の観点から好ましい結果が得られる。
【0020】
反応圧力は、通常35〜250kg/cm2 、好ましくは35〜100kg/cm2 の範囲とされる。そして、100℃以上の反応温度を採用する場合、反応圧力は、次の(1)式を満足する範囲から選択するのが好ましい。斯かる条件を満足することにより、高温反応におけるクロム系触媒の性能低下を防止することが出来る。なお、式中、Tは反応温度(℃)、Pは反応圧力(kg/cm2 G)を表す。
【0021】
【数1】
P>0.5T−15 ・・・(1)
【0022】
本発明において、クロム化合物の使用量は、溶媒1リットル当たり、通常1.0×10-7〜0.5mol、好ましくは1.0×10-6〜0.2mol、更に好ましくは1.0×10-5〜0.05molの範囲とされる。一方、アルキルアルミニウム化合物の使用量は、クロム化合物1mol当たり、通常50mmol以上であるが、触媒活性および1−ヘキセンの選択率の観点から、0.1mol以上とするのがよい。そして、上限は、通常1.0×104 molである。また、窒素含有化合物の使用量は、クロム化合物1mol当たり、通常0.001mol以上であり、好ましくは0.005〜1000mol、更に好ましくは0.01〜100molの範囲とされる。また、ハロゲン含有化合物の使用量は、窒素含有化合物の使用量と同一の範囲とされる。
【0023】
本発明においては、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)のモル比(a):(b):(c):(d)は1:1〜50:1〜200:1〜50が好ましく、1:1〜30:10〜150:1〜30が特に好ましい。斯かる特定条件の結合により、ヘキセンを90%以上(全生成量に対する割合)の収率で製造することが出来、しかも、ヘキセン中の1−ヘキセンの純度を99%以上に高めることが出来る。
【0024】
また、本発明において、反応溶媒中の1−ヘキセン/エチレンのモル比は、好ましくは0.05〜1.50、更に好ましくは0.10〜0.80の範囲に維持するのがよい。斯かる条件を満足させることにより、1−ヘキセンよりも沸点の高い成分の副生が抑制されて1−ヘキセンの選択率が一層高められる。
【0025】
すなわち、クロム系触媒によるエチレンの三量化反応は、逐次的に進行し、従って、1−ヘキセン生成後においては、1−ヘキセン1モルとエチレン2モルとが反応し炭素数10のα−オレフイン低重合体が生成し、更に、炭素数14のα−オレフイン低重合体が生成する。ところで、本発明においては、後述する通り、反応溶媒中の1−ヘキセンは、生成後直ちに気相を通して反応器外に導出させられるため、反応溶媒中の1−ヘキセンの滞留時間は短く、従って、上記の様な逐次的三量化反応は十分に抑制されている。しかしながら、反応溶媒中の1−ヘキセン/エチレンのモル比を上記範囲に規定することにより、1−ヘキセンの選択率が一層高められる。その結果、反応器内の高沸成分の蓄積を抑制し、後述の反応液の抜き出し量を一層少なくすることが出来る。
【0026】
なお、上記のモル比は、触媒濃度や反応時間を調節することにより制御することが出来る。例えば、触媒濃度を小さくしたり、反応時間を短くした場合は、反応率が低下して1−ヘキセンの生成量が減少し、その結果、1−ヘキセン/エチレンのモル比は小さくなる。また、反応圧力を高めた場合にも上記のモル比は小さくなる。
【0027】
本発明の最大の特徴は、反応器からの1−ヘキセンの抜き出しを当該反応器の気相から行う点にある。すなわち、本発明において、反応溶媒およびクロム触媒は、基本的に反応器内に滞留させ、反応器に連続的に供給されるエチレンガス見合いの反応器気相ガスを抜き出す。気相ガスの抜き出しは、例えば、反応器の気相に導通して付設された圧力コントロールバルブによって行うことが出来る。
【0028】
反応器内のエチレンガスの滞留時間(反応時間)は、通常1分から20時間、好ましくは0.5〜6時間の範囲から選択される。斯かる滞留時間は、圧力コントロールバルブの開度調節によって制御することが出来る。
【0029】
上記の様な気相からのガス抜き出し操作は、一種の反応蒸留とも考えられ、抜き出されるガスの組成は、厳密でないが、液相(反応溶媒中)と気液平衡の関係にある。なお、エチレンガスの反応器への供給態様は、特に制限されず、必要ならば、反応溶媒中に吹き込む供給態様を採用してもよく、斯かる供給態様によれば、エチレンガスの所謂ショトーパスを防止することが出来る。
【0030】
本発明において、上記の導出ガスからエチレンガスを分離して1−ヘキセンを回収するが、斯かる操作は、気液分離器において、1−ヘキセンの沸点以下で且つエチレンの沸点以上の温度に導出ガスを冷却して1−ヘキセンを凝縮させて回収する方法、脱ガス塔において、導出ガスの圧力を解除して1−ヘキセンを凝縮させて回収する方法、上記の冷却操作と圧力解除(放圧)操作とを組み合わせた方法などによって行うことが出来る。
【0031】
本発明において、反応器の気相から1−ヘキセンが抜き出されるため、1−ヘキセンの回収のための液相(反応液)の抜き出しは、基本的には不要である。しかしながら、通常は、副生ポリマー等の反応器内の蓄積防止のため、少量の反応液を連続的に又は非連続的に反応器から抜き出し、そして、当該抜き出し量に見合った反応溶媒およびクロム触媒成分を連続的に又は非連続的に反応器に供給するのが好ましい。抜き出された反応液は、反応溶媒の反応器への循環使用のため、連続的に又は回分的に生成物蒸留塔で処理される。
【0032】
しかしながら、上記の蒸留処理は、少量抜き出しされた反応液に行われるため、一定の滞留時間経過後に全量抜き出しされる反応液を蒸留処理する場合に比し、遙に少ないユテイリテイーで行うことが出来る。また、上記の反応液の少量抜き出しに伴い活性低下前の少量のクロム触媒が抜き出される。しかしながら、少量のクロム触媒の抜き出しは、一定の滞留時間経過後に反応液と共にクロム触媒の全量が抜き出される場合に比し、クロム触媒の有効利用の観点から遙に優れている。
【0033】
本発明において、クロム触媒成分の反応器への供給は、クロム化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様でエチレンとクロム系触媒とを接触させる態様で行うのが好ましい。斯かる特定の接触態様により、選択的に三量化反応を行わせ、原料エチレンから1−ヘキセンを高収率で得ることが出来る。上記の特定の接触態様は、例えば、特開平7−118174号公報の[0037]〜[0031]、特開平8−3216号公報の[0029]〜[0032]、特開平8−134131号公報の[0038]〜[0050]に詳記されているが、その幾つかの例を挙げれば次の通りである。
【0034】
(1)窒素含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物を含む反応溶媒中にα−オレフイン及びクロム含有化合物を導入する方法。
(2)窒素含有化合物、アルキルアルミニウム化合物、ハロゲン含有化合物を含む反応溶媒中にα−オレフインを導入する方法。
(3)窒素含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物を含む反応溶媒中にα−オレフイン、クロム含有化合物およびハロゲン含有化合物を導入する方法。
【0035】
しかしながら、本発明においては、上記の様な接触態様に従って反応器中で触媒調製を行う他、別途に調製したクロム系触媒を反応器に供給して低重合反応を行ってもよい。例えば、先ず、α−オレフインの不存在下、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、窒素含有化合物(b)(特にはピロール含有化合物)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)を接触させ、次いで、得られた触媒調製用反応液とクロム化合物(a)とを反応させることにより、優れた性能のクロム触媒を調製することが出来る。
【0036】
本発明において、反応液の処理方法は特に制限されず、例えば、最初に固液分離装置によって副生ポリマーの分離除去を行うことも不可能ではない。しかしながら、上記の場合は、金属成分の分離とは別個に副生ポリマー用の固液分離装置が必要となるのみならず、反応液中の各成分の蒸留分離の際に受ける熱履歴によってメタル化した金属成分の分離が極めて困難となる。すなわち、例えば、加熱蒸発器を利用して高沸点成分と金属成分とを分離しようとした場合、金属成分は、加熱蒸発器の伝熱面に付着して実質的に分離不可能となる。そして、伝熱面に付着した金属成分は、加熱蒸発器の運転に支障を来す。
【0037】
従って、本発明において、副生ポリマーは、後述する様に、触媒成分と共に濃縮して分離するのが好ましい。斯かる分離態様によれば、触媒成分は、副生ポリマーの可塑性によって極めて容易に分離される。しかも、副生ポリマー用の固液分離装置を省略でき、プロセスをコンパクト化することが出来る。
【0038】
そして、副生ポリマーの可塑性を利用した、副生ポリマーと触媒成分との上記の同時回収プロセスを効果的に実施するため、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおいて、反応液の温度を副生ポリマーが反応液中に溶解状態として存在し得る温度に維持するのが好ましい。これにより、副生ポリマーのプロセスライン内(例えば配管などの付帯設備)における付着や析出に伴う種々のトラブルを回避することも出来る。副生ポリマーが反応液中に溶解状態として存在し得る温度は、100℃以上の温度で十分であるが、必要ならば昇温してもよい。
【0039】
また、本発明においては、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおいて、反応液中に触媒成分を分散状態で維持するのが好ましい。一般的に言えば、触媒成分は、副生ポリマー程にプロセスライン内で付着や析出することが少ないと考えられる。
【0040】
しかしながら、本発明においては、反応器の出口から生成物蒸留塔の入口までのプロセスラインにおける反応液中に反応溶媒に可溶で且つクロムに対して配位子形成能を有する化合物を添加することにより、反応液中における触媒成分の分散状態を積極的に維持するのが好ましい。しかも、上記の化合物は、反応液の安定化剤としても作用する。すなわち、クロム触媒は、エチレンの不存在下において1−ヘキセンを異性化する活性を有するが、上記の化合物の添加により、異性化反応の活性を失活させることが出来る。従って、反応液を回分的に蒸留処理する際などにおいては、上記の化合物の添加により、高温度で反応液を長時間安定に保存することが出来る。
【0041】
反応溶媒に可溶で且つクロムに対して配位子形成能を有する化合物(以下、金属可溶化剤と呼ぶ)としては、通常、−X−H官能基を有する低分子化合物(但し、Xはヘテロ原子、Hは水素原子を表す)又は活性メチレン基を有する低分子化合物が使用される。前者の例としては、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類、1級または2級アミン類、アンモニアが挙げられ、後者の例としては、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0042】
上記のアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロパンジオール等が挙げられ、フェノール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン等が挙げられ、カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、フェニル酢酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、サリチル酸などが挙げられ、1級または2級アミン類の具体例としては、触媒の一成分として前述した各アミン類が挙げられる。
【0043】
金属可溶化剤の使用割合は、極微量から溶媒量の範囲に亘る広い範囲から選択することが出来るが、溶媒中の濃度として、通常0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。また、金属可溶化剤の添加時期は、反応液の蒸留分離前の任意の段階を選択することが出来る。そして、蒸留分離工程が複数存在する場合は、金属成分のメタル化が最も惹起され易い最終の蒸留工程の直前に添加してもよいが、反応器から抜き出された直後の反応液に添加するのが好ましい。なお、金属可溶化剤に代えてα−オレフインの重合分野において既に提案されている帯電防止剤を反応液中に添加する方法も好適に使用し得る。
【0044】
本発明の上記の好ましい態様によれれば、副生ポリマー及び触媒成分の同時回収プロセスに至るまでの間の両者の損失を最大限に防止することが出来る。
【0045】
本発明においては、先ず、抜き出された反応液の処理として脱ガスを行うのが好ましい。脱ガス処理は、通常、15kg/cm2 G以下まで降圧して行われるが、高圧容器の取扱上の法規の点からは、第2種高圧容器とされる1.9kg/cm2 G以下まで降圧するのが好ましく、更には、0.2kg/cm2 G以下まで降圧するならば、殆ど常圧と同等の操作を行い得るため、一層好ましい。
【0046】
本発明において、反応液からの副生ポリマー及び触媒成分の濃縮分離は、脱ガスした反応液から低沸点の全成分(主として1−ヘキセン)を単蒸留的に除去すると同時に行うことも出来、また、脱ガスした反応液から逐次に各成分を蒸留分離する際の最後の蒸留分離と同時に行うことも出来る。
【0047】
本発明の場合、反応生成物は主として1−ヘキセンであるため、脱ガス後の反応液から1−ヘキセン及び溶媒を蒸留分離すると共に触媒成分を副生ポリエチレンと共に濃縮して分離する。そして、得られた副生ポリマーと触媒成分を含有する濃縮液をそのまま廃棄することが出来る。
【0048】
上記の通り、本発明方法で採用する触媒系においては、1−ブテンの副生が少なく、1−ヘキセンが高収率で得られるため、脱ガス塔からの反応液を単一の生成物蒸留塔で処理することにより、1−ヘキセンと反応溶媒と副生ポリマー及び触媒成分を含む高沸点成分とに分離することが出来、その結果、抜き出された反応液の後処理工程についても最もコンパクト化された経済性の高いプロセスを実現することが出来る。
【0049】
また、本発明の前述した好ましい態様においては、副生ポリマーと触媒成分の各々の少なくとも一部について同時分離を行うが、好ましくは触媒成分の全部について、より好ましくは副生ポリマーと触媒成分の全部について同時分離を行う。そして、何れの場合も、生成物蒸留塔から回収された副生ポリマー及び触媒成分を含む缶出液を加熱蒸発器に供給し、高沸点成分を回収すると共に、副生ポリマー及び触媒成分を更に濃縮して回収するのが好ましい。
【0050】
上記の加熱蒸発器としては、従来公知の各種のものが使用し得る。例えば、円筒内型の伝熱面に対して回転する掻き取り羽根などを備えた薄膜式蒸発器、プレートフィン型加熱器を内蔵した蒸発器などを使用し得る。プレート・フィン型加熱器を内蔵した蒸発器は、高密度に配置されたフィンによって高粘度流体を瞬時に加熱し、その中に含まれている揮発性物質を効率的に除去することが出来る。
【0051】
上記の様な構造の加熱蒸発器としては、例えば、三井造船(株)製の「ハイビスカスエバポレータ」(商品名)等が挙げられる。この様な加熱蒸発器を使用した場合、内蔵されたプレート・フィン型加熱器で濃縮された副生ポリマー及び触媒成分は、加熱蒸発器の下部から副生ポリマーの可塑性によって流れ落ちて来る。従って、適当に冷却した状態で切断して容易に回収することが出来る。
【0052】
本発明において、特に推奨される加熱蒸発器は、加熱蒸発器が十分な長さを持った加熱管と減圧保持可能な捕集缶とを備えたモノチューブ型蒸発器である。斯かる構造の加熱蒸発器としては、例えば、ホソカワミカロン(株)製の「CRUX SYSTEM」(商品名)等が挙げられる。この様なモノチューブ型蒸発器は、加熱管で加熱・蒸発させた濃縮液を音速程度の高速で捕集缶に噴出してその中に含まれる揮発性物質を効率的に除去する。捕集缶内で濃縮された副生ポリマーと触媒成分は、捕集室の下部から副生ポリマーの可塑性により流れ落ちて来る。従って、適当に冷却した状態で切断して容易に回収することが出来る。
【0053】
本発明の製造方法で得られた1−ヘキセンからは、公知の重合触媒を使用した重合反応により、有用な樹脂であるL−LDPEを製造することが出来る。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
完全混合槽型反応器、気液分離器、単蒸留塔から成り、反応器と気液分離器との間には、気液分離されたエチレンを反応器に循環する圧縮機を備えたプロセスに従って、エチレンの連続低重合反応を行った。完全混合槽型反応器としては、2本の供給管を備えた20Lのオートクレーブを使用した。
【0056】
完全混合槽型反応器の一方の供給管からエチレンと共にクロム(III) −2−エチルヘキサノエート(a)のn−ヘプタン溶液とヘキサクロロエタン(d)のn−ヘプタン溶液とを供給し、他方の供給管から2,5−ジメチルピロール(b)のn−ヘプタン溶液とトリエチルアルミニウム(c)のn−ヘプタン溶液とを供給して反応を開始した。反応条件は、120℃×50kg/cm2 Gとした。
【0057】
そして、反応器の気相から圧力コントロールバルブを介してエチレンガスと共に1−ヘキセンを連続的に反応器外に導出させて気液分離器に供給し、そして、連続的に少量の反応液を抜き出すと共に当該抜き出し量に見合った量の上記の各触媒成分を供給した。
【0058】
反応液の抜き出し量は0.3kg/Hrであり、触媒成分の供給量は、クロム(III) −2−エチルヘキサノエート(a):0.0019mmol/Hr、ヘキサクロロエタン(d):0.0074mmol/Hr、2,5−ジメチルピロール(b):0.0011mmol/Hr、トリエチルアルミニウム(c):0.074mmol/Hr、ヘプタン全量:8リットル/Hrであり、(a):(b):(c):(d)のモル比は1:6:40:4である。また、反応液中の1−ヘキセン/エチレンモル比は0.27である。
【0059】
反応器から抜き出されたガスは、気液分離器において未反応エチレンと凝縮液とに分離された。未反応エチレンは圧縮機にて昇圧されて反応器に循環され、上記の凝縮液は単蒸留塔に供給された。単蒸留塔の塔頂から1−ヘキセン、塔底からn−ヘプタンが抜き出された。n−ヘプタンは循環パイプを経て反応器に循環された。
【0060】
一方、上記の実施例で少量抜き出しを行った反応液は、脱ガス塔において常圧まで降圧され、120℃の温度に保持された貯蔵タンクに供給された。この貯槽タンクには、金属可溶化剤としてオクタン酸(2−エチルヘキサン酸)を濃度が0.022重量%となる様に添加した。気液分離器での1ヘキセンの留出量および少量抜き出しを行った反応液の組成分析の結果を表1に示す。
【0061】
実施例2〜4
実施例1のプロセスに従って、反応液中の1−ヘキセン/エチレンモル比および反応圧力を表1になる様に変更し、実施例1と同様にエチレンの連続低重合反応を行った。気液分離器での1ヘキセンの留出量および少量抜き出しを行った反応液の組成分析の結果を表1に示す。
【0062】
そして、実施例1〜4において少量抜き出しされ且つ貯蔵タンクに供給された反応液は、生成物蒸留塔と蒸発器から成る別途の回収プロセスで定期的に処理した。生成物蒸留塔としては、2ヶ所の側流(サイドストリーム)抜き出し部を備え且つ全段数30段の生成物蒸留塔を使用し、蒸発器としては、8mの長さの加熱管と減圧保持可能な捕集缶とを備えたモノチューブ型蒸発器「CRUX SYSTEM」(ホソカワミカロン(株)製の商品名)を使用した。
【0063】
生成物蒸留塔は、塔頂圧力:3kg/cm2 G、還流比(R/D):18、塔底温度:162℃の条件で運転を行い、生成物蒸留塔の塔底から第8段目の側流抜き出し部から溶媒n−ヘプタンを、第26段目の側流抜き出し部から製品ヘキセンをそれぞれサイドカットとして抜き出して回収し、塔頂からヘキセンよりも低沸点の成分を留出させて回収した。生成物蒸留塔から回収されたn−ヘプタンは循環パイプを経て反応器に循環され、塔底液は蒸発器に供給して濃縮された。
【0064】
蒸発器において、蒸発された高沸点成分は凝縮して回収され、副生ポリエチレンと共に濃縮された触媒成分は、捕集室の下部から回収された。加熱管の温度は200℃、捕集缶の温度は150℃、捕集缶の圧力は200torrであった。上記のプロセスにおける蒸発器の運転は、金属を含む触媒成分が副生ポリエチレンと共に濃縮された混合物として回収されるため、ポリエチレンの可塑性により、捕集室の下部から自重により落下分離し、良好に行われた。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、反応液の蒸留処理コストを低減し且つクロム触媒を有効利用し得る様に改良された工業的有利な1−ヘキセンの製造方法が提供される。
Claims (5)
- クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法であって、槽型反応器中にエチレンガスを連続的に供給し、クロム系触媒の存在および加熱加圧条件下、1−ヘキセンより高沸点の反応溶媒中でエチレンの三量化反応を行い、エチレンガスと共に反応器気相中の1−ヘキセンを連続的に反応器外に導出させ、次いで、当該導出ガスからエチレンガスを分離して1−ヘキセンを回収することを特徴とする1−ヘキセンの製造方法。
- 少なくとも、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用する請求項1に記載の製造方法。
- 少なくとも、クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)、ハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成るクロム系触媒を使用する請求項1に記載の製造方法。
- クロム化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)のモル比(a):(b):(c):(d)は1:1〜50:1〜200:1〜50である請求項2又は3に記載の製造方法。
- 反応溶媒中の1−ヘキセン/エチレンのモル比を0.05〜1.50の範囲に維持する請求項1〜4に記載の製造方法。
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