JP3861949B2 - クロマノール配糖体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロマノール配糖体およびその製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、抗酸化活性及び放射線防護作用に優れたクロマノール配糖体および糖転移作用を触媒する酵素の存在下で2−置換アルコールに糖を結合させることによる上記クロマノール配糖体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下記一般式で表わされるクロマノール配糖体は、特開平07−118,287号において、優れた抗酸化活性、熱やpH安定性及び水溶性を有する下記一般式で表わされるクロマン環から誘導される化合物であることが報告されている。
【0003】
【化4】
【0004】
(ただし、式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、Xは単糖残基またはオリゴ糖残基を表わし、該糖残基の水酸基の水素原子は低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよく、nは0〜4の整数であり、およびmは1〜6の整数である)
しかしながら、上記公報では、上記一般式で表わされるクロマノール配糖体は確かに抗酸化活性、熱やpH安定性及び水溶性を有することが記載されているものの、実際には、一部のクロマノール配糖体[2−(α−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−(α−D−グルコピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−(α−D−マルトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール及び2−(α−D−マルトピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール]、すなわち、クロマン環にメチルあるいはエチル基を介して糖残基としてα−グルコース残基が結合した物質(以下、「α−グルコピラノシル型クロマノール配糖体」と称する)についてのみ上記したような特性が報告されているのみである。
【0005】
したがって、クロマン環に糖残基としてα−グルコース以外の糖残基が結合した物質については特開平07−118,287号において十分開示されているとはいえない。
【0006】
また、特開平07−118,287号においては、リノール酸メチル、リポソームといったモデル系におけるα−グルコピラノシル型クロマノール配糖体の抗酸化活性が記載されているのみである。
【0007】
クロマノール配糖体の生体への応用を考えた場合、クロマノール配糖体の糖の種類が変わることにより、例えば、その吸収、分布及び代謝などの、いわゆる薬物動態が大きく変わる可能性は非常に高い。したがって、細胞若しくは動物を用いた系により抗酸化活性を評価する場合には、特開平07−118,287号にに記載されたモデル系では明らかにできないような活性の違いが現れる可能性が高く、その違いは非常に重要な意味を持つものであるといえる。
【0008】
一方、原子力発電における作業者、X線によるレントゲン検査技師または放射線を用いた癌などの診断若しくは治療に携わる技術者や医学者は、作業時には放射線の被爆をある程度防止している。しかしながら、この方法による放射線防護は完全とはいえず、上記したような作業に長期間従事していると全体としてはかなりの量の放射線を被爆する場合もある。また、原子力発電所の事故などの最悪の場合では、放射線を全身に一度に被爆してしまうため、被爆した人が死亡したりあるいは死亡しないまでも一定の潜伏期間後に生殖機能、骨髄機能障害や皮膚障害等の臓器・組織レベル及び細胞レベルでの放射線障害が発現する。
【0009】
このような諸問題を考慮して、現在、放射線管理(防護)を実施するにあたっては、法令や放射線の事業所内における障害予防規定などによって個人の被爆を規制している。しかしながら、このような放射線防護基準をもってしても放射線被爆による障害を完全に防止できるわけではない。また、放射線を被爆しても人体は痛みなどを知覚せず、また上記したような症状が現れるまでには一定の潜伏期間があるため、症状が現れて初めて被爆したことを知るが、現在の医療ではこのような症状を根治することはかなり困難である。
【0010】
また、放射線治療を受ける癌患者に関しても、一度にかなりの量の放射線が治療すべき悪性腫瘍部分に照射されるが、悪性腫瘍部周辺の正常な組織にも放射線が照射される。被爆した正常組織は、放射線によって生体内に発生したフリーラジカルにより細胞膜や染色体などの細胞内分子の酸化的な化学反応が起こって、細胞増殖の停止(細胞死)や突然変異の誘発等の重大な障害が引き起こされる。
【0011】
このような化学反応の発生を防止する薬剤として、従来、水素ラジカル供与性を有するβ−メルカプトエチルアミンなどの数多くの各種アミノチオール類が知られている(菅原努ほか、「放射線と医学」、共立出版社、1986年)が、その強い副作用のため、有効な防護効果が発現するために必要とされる量を投与できず、いまだ実用化には至っていない。
【0012】
また、代表的なビタミンEとして知られているα−トコフェロールは、クロマン環の6位の水酸基から水素原子を供与してフリーラジカルを消去する機能を有する化合物であるが、ビタミンEは、その分子内に長鎖の炭化水素基(フィチル基)を有するために、水に溶けない粘稠性の油状物である。このため、生体のフリーラジカルによる損傷を防ぐ目的でビタミンEを投与する場合には、内服液や注射剤などの溶液の形態での使用はできないという致命的な欠点がある。このような欠点を克服するために、2位のフィチル基をカルボキシル基で置換することにより水溶性が付与された6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸が開発され、トロロックス(Trolox)という名称で水溶性の抗酸化剤として市販されているが、その水溶性は極めて低く(16mg/100ml)、いまだ満足できるものではない。また、同様にして、2位のフィチル基をアルコールで置換した6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−メタノール(以下、「メタノール型2−置換アルコール」と称する)も開発された。このメタノール型2−置換アルコールは、101mg/100mlの水溶性を有し、トロロックスの約6.3倍の水溶性を示すが、このような比較的高い水溶性をもってしても、例えば、患者に1gを投与するためには、1リットルという多量の水に溶解して用いなければならず、水溶性がなお不十分であるという問題があった。
【0013】
したがって、現代および将来を通じて人類は様々な分野で放射線を被爆する可能性が大きく、このため放射線被爆から人類を守る機能を有しかつ水溶性である放射線防護剤の開発が切望されているが、いまだ満足できる放射線防護剤が開発されていないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、優れた抗酸化活性及び放射線防護作用を有するクロマノール配糖体およびその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記諸事情を鑑みて、様々な糖残基がクロマン環に結合した各種クロマノール配糖体について抗酸化活性及び放射線防護作用等の特性を検討した結果、β−グルコース、フルクトース、及びマンノースからなる群より選ばれた単糖残基またはオリゴ糖残基がクロマン環に結合したクロマノール配糖体はα−グルコース残基またはそのオリゴ糖残基がクロマン環に結合したクロマノール配糖体に比べて上記特性に優れていることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、上記目的は、下記一般式(1):
【0017】
【化5】
【0018】
(ただし、式中、R1,R2,R3およびR4は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、Xはβ−グルコース、フルクトース、及びマンノースからなる群より選ばれた単糖残基またはオリゴ糖残基を表わし、該糖残基の水酸基の水素原子は低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよく、nは0〜4の整数であり、およびmは1〜6の整数である)で表わされるクロマノール配糖体により達成される。
【0019】
上記目的は、一般式(2):
【0020】
【化6】
【0021】
(ただし、式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、およびnは0〜4の整数である)で表わされる2−置換アルコールと、セロビオース、カードラン、ラミナラン、メリビオース、ラフィノース、ラクトース、アラビノガラクタン、ショ糖、イヌリン及びメチルマンノピラノシドからなる群より選ばれた糖とを、相当する糖転移作用を触媒する酵素の存在下に反応させることを特徴とする一般式(1):
【0022】
【化7】
【0023】
(但し、R1,R2,R3,R4,R5及びnは前記定義のとおりであり、Xはβ−グルコース、フルクトース、及びマンノースからなる群より選ばれた単糖残基またはオリゴ糖残基を表わし、該糖残基の水酸基の水素原子は低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよく、およびmは1〜6の整数である)で表わされるクロマノール配糖体の製造方法によっても達成される。
【0024】
本発明はまた、該糖がセロビオース、ラクトース、ショ糖またはメチルマンノピラノシドである、前記クロマノール配糖体の製造方法である。
【0025】
本発明はまた、該酵素がβ−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−マンノシダーゼまたはβ−フルクトフラノシダーゼである、前記クロマノール配糖体の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明のクロマノール配糖体は下記一般式(1)で表わされる化合物である。
【0028】
【化8】
【0029】
(ただし、式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は同一または異なる水素原子または低級アルキル基を表わし、R5 は水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表わし、Xはβ−グルコース、フルクトース、マンノース及びガラクトースからなる群より選ばれた単糖残基またはオリゴ糖残基を表わし、該糖残基の水酸基の水素原子は低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよく、nは0〜4の整数であり、およびmは1〜6の整数である)
上記一般式(1)において、R1 、R2 、R3 及びR4 は、同一または異なる水素原子または低級アルキル基であるが、低級アルキル基を表わす際には、炭素原子数が好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6の低級アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基等が挙げられ、これらのうち、メチル基及びエチル基が好ましい。また、Xはβ−グルコース、フルクトース、マンノース及びガラクトースからなる群より選ばれた単糖残基またはオリゴ糖残基を表わすが、この際、糖残基中の水酸基の水素原子は低級アルキル基、好ましくは炭素原子数が1〜8の低級アルキル基または低級アシル基、好ましくは炭素原子数が1〜10の低級アシル基で置換されていてもよい。さらに、nは、0〜6、好ましくは1〜4の整数であり、mは、1〜6、好ましくは1〜3の整数である。
【0030】
本発明のクロマノール配糖体は、上記一般式(1)で表わされる化合物であれば特に制限されないが、具体的には、下記のクロマノール配糖体が挙げられる:2−(β−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)プロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)イソプロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)ブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)イソブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)ペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)イソペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)ヘキシル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)ヘプチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−(β−D−グルコピラノシル)オクチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)プロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)イソプロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)ブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)イソブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)ペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)イソペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)ヘキシル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)ヘプチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−ガラクトピラノシル)オクチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)プロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)イソプロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)ブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)イソブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)ペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)イソペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)ヘキシル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)ヘプチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−マンノピラノシル)オクチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)プロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)イソプロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)ブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)イソブチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)ペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)イソペンチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)ヘキシル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)ヘプチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール;および
2−((αまたはβ)−D−フルクトフラノシル)オクチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール。
【0031】
本発明のクロマノール配糖体は、下記一般式(2):
【0032】
【化9】
【0033】
(ただし、式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 及びnは式(1)と同様である)で表わされる2−置換アルコール及びセロビオース、カードラン、ラミナラン、メリビオース、ラフィノース、ラクトース、アラビノガラクタン、ショ糖、イヌリン及びメチルマンノピラノシドからなる群より選ばれた糖を相当する糖転移作用を触媒する酵素の存在下に反応させ、2−置換アルコールの2位の水酸基に特異的に糖の特定の水酸基を結合させることからなる酵素反応によって製造される(特開平7−118,287号公報参照)。
【0034】
上記反応において原料として用いられる一般式(2)で表わされる2−置換アルコール(以下、単に「2−置換アルコール」と称する)は公知の物質であり、例えば、特公平1−43755号公報や特公平1−49135号公報等に開示された方法により得ることができる。また、例えば、一般式(2)中、R1 、R2 、R3 及びR4 がCH3 であり、nが1である2−置換アルコールはトロロックスを水素化リチウムアルミニウムの存在下においてジエチルエーテル中で加熱還流処理することなどにより容易に得ることができる。
【0035】
本発明において使用される糖は、当然、目的とするクロマノール配糖体の種類によって決まり、セロビオース、カードラン、ラミナラン、メリビオース、ラフィノース、ラクトース、アラビノガラクタン、ショ糖、イヌリン及びメチルマンノピラノシドからなる群より選ばれるが、好ましくは、セロビオース、ラクトース、ショ糖及びメチルマンノピラノシドが挙げられる。
【0036】
本発明において、2−置換アルコールの濃度は、反応液中において飽和濃度若しくはそれに近い濃度にすることが望ましい。また、糖の濃度は、全原料に対して、5〜75(w/v)%、好ましくは10〜65(w/v)%である。
【0037】
本発明において使用される糖転移作用を触媒する酵素(以下、単に「酵素」とも称する)は、反応に用いる糖の種類によって使い分けることが好ましく、その代表例を以下に挙げる。
【0038】
(1)2−置換アルコールにβ結合でグルコース残基を結合させる場合
(a)セロビオース、カードラン、ラミナランなどのβ結合よりなるオリゴ糖に対してはβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase,EC 3.2.1.21)、例えば、オリエンタル酵母工業株式会社製のアーモンド由来のβ−グルコシダーゼを作用させることが望ましい。
【0039】
(b)リン酸存在下のセロビオースに対してはセロビオース ホスホリラーゼ(cellobiose phosphorylase,EC 2.4.1.20)を作用させることが望ましい。
【0040】
(2)2−置換アルコールにα結合でガラクトース残基を結合させる場合
(a)メリビオース、ラフィノースなどに対してはα−ガラクトシダーゼ(α−galactosidase,EC 3.2.1.22)を作用させることが望ましい。
【0041】
(3)2−置換アルコールにβ結合でガラクトース残基を結合させる場合
(a)ラクトースなどに対してはβ−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase,EC 3.2.1.23)、例えば、東洋紡績株式会社製のエシェリキア コリ(Escherichia coli)由来のβ−ガラクトシダーゼを作用させることが望ましい。
【0042】
(b)アラビノガラクタンなどに対してはエンド−1,4−β−ガラクタナーゼ(Endo−1,4−β−galactanase,EC 3.2.1.89)を作用させることが望ましい。
【0043】
(4)2−置換アルコールにβ結合でフルクトース残基を結合させる場合
(a)ショ糖、ラフィノース、メリビオースなどに対してはレバンシュークラーゼ(levansucrase,EC 2.4.1.10)を作用させることが望ましい。
【0044】
(b)ショ糖に対してはβ−フルクトフラノシダーゼ(β−fructofuranosidase,EC 3.2.1.26)、例えば、和光純薬工業株式会社製のベーカーズ イースト由来のインベルターゼを作用させることが望ましい。
【0045】
(c)イヌリンなどに対してはイヌリンフルクトトランスフェラーゼ(inulin fructotransferase,EC 2.4.1.93)を作用させることが望ましい。
【0046】
(5)2−置換アルコールにα結合でマンノース残基を結合させる場合
(a)メチルマンノピラノシドなどに対してはα−マンノシダーゼ(α−mannosidase,EC 3.2.1.24)、例えば、シグマ(SIGMA)社製のジャック ビーンズ(Jack Beans)由来のα−マンノシダーゼを作用させることが望ましい。
【0047】
上記酵素のうち、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−マンノシダーゼ及びβ−フルクトフラノシダーゼが本発明において好ましく使用される。
【0048】
本発明において、糖転移作用を触媒する酵素の添加量は、使用する酵素、糖及び有機溶媒の種類および反応液の量によって異なる。
【0049】
本発明によるクロマノール配糖体の製造において、2−置換アルコールを糖溶液に溶解させることが望ましいが、その際、有機溶媒を添加することが好ましい。本発明において使用できる有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、アセトン、及びアセトニトリルなどが挙げられ、酵素の糖転移活性を高める点を考慮すると、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドやエタノールが好ましく使用される。有機溶媒の添加濃度は、1〜50(v/v)%であり、反応効率を考えると5〜40(v/v)%であることが好ましい。
【0050】
本発明のクロマノール配糖体の製造における反応条件に関しては、pHが5.0〜7.5、好ましくは5.5〜7.0であり、反応温度が20〜60℃、好ましくは30〜50℃であり、および反応時間が2〜40時間、好ましくは10〜30時間である。但し、これらの条件は使用する酵素量等により影響をうけることはいうまでもない。反応終了後、反応液をXAD(オルガノ株式会社)を担体として用いたカラムクロマトグラフィーで処理することにより、目的とするクロマノール配糖体が高純度で得られる。また、一般式(1)におけるmが3以上であるクロマノール配糖体が製造される場合には、製造されたmが1から8位の混合物の形態を有するクロマノール配糖体を、HPLCを用いた分取クロマトグラフィーなどで処理することにより、高純度のクロマノール配糖体が各m毎に得ることができる。
【0051】
このようにして得られたクロマノール配糖体は、一般的に、高い水溶性を有しかつ油溶性にも富むので、細胞膜近傍に局在化したり、また、細胞膜を透過し、さらに細胞内にも入ることができ、放射線照射によって細胞膜内や細胞内に生じたフリーラジカルを捕捉して、細胞膜の損傷及びDNAの突然変異等を防ぐことができる。
【0052】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、これらにより本発明の範囲がなんら制限されるものでないことは言うまでもない。
【0053】
参考例1:β−グルコシダーゼの活性測定
100mM酢酸緩衝液(pH5.0)1mlに20mM p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド水溶液0.5mlを加え37℃で5分間予備加温した後、酵素溶液0.5mlを加え、同温度条件下において15分間反応させた後、0.2M Na2 CO3 溶液2.0mlを加え反応を停止させ、400nmの吸光度を測定した。なお、1Uは、上記条件において1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する酵素量とした。
【0054】
参考例2:β−ガラクトシダーゼの活性測定
100mMリン酸緩衝液(pH7.3)2.5ml、3.36Mメルカプトエタノール溶液0.1ml、30mM MgCl2 溶液(pH7.3)0.1ml、34mM o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド溶液0.2mlをキュベット(d=1.0cm)に入れ、37℃に制御された分光光度計にセットした。5分間インキュベートした後、酵素溶液0.5mlを加え、410nmの吸光度変化を求めた。なお,1Uは、上記条件において1分間に1μmolのo−ニトロフェノールを生成する酵素量とした。
【0055】
参考例3:β−フルクトフラノシダーゼの活性測定
80mM酢酸緩衝液(pH4.5)で調製した5.0%ショ糖溶液1.0mlを20℃で5分間予備加温した後、酵素溶液1.0mlを加え、同温度条件下において3分間反応させた後、生成した還元糖量をFehling−Lehrman−Schoorl変法で測定した。なお、1Uは、上記条件において3分間に1.0mgのグルコース相当還元糖を生成する酵素量とした。
【0056】
参考例4:α−マンノシダーゼの活性測定
100mM酢酸緩衝液(pH4.5)1mlに20mM p−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシド水溶液0.5mlを加え25℃で5分間予備加温した後、酵素溶液0.5mlを加え、同温度条件下において15分間反応させた後、0.2M Na2 CO3 溶液2.0mlを加え反応を停止させ、400nmの吸光度を測定した。なお、1Uは、上記条件において1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する酵素量とした。
【0057】
参考例5:α−グルコシダーゼ(α-glucosidase, EC 3.2.1.20)の活性測定
4(w/v)%マルトース水溶液100μlに100mMリン酸緩衝液(pH6.5)300μlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、酵素液40μlを加え、同温度条件下において20分間反応させた後5分間の煮沸処理により反応を停止させた。次に、上記反応によるグルコースの生成量をグルコース測定キット(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。なお、1Uは上記条件において1分間に1μmolのマルトースの加水分解を触媒する酵素量とした。
【0058】
実施例1
50mM酢酸緩衝液(pH5.5)で調製した30(w/v)%セロビオース1100mlに対し、ジメチルスルホキシドで調製した5%(w/v)の下記一般式(3)で示される2−置換アルコール(メタノール型:上記一般式(2)においてR1 、R2 、R3 及びR4 がCH3 であり、R5 がHであり、nが1である)(以下、単に「メタノール型2−置換アルコール」と称する)溶液220mlおよび5500Uのオリエンタル酵母株式会社製のアーモンド由来のβ−グルコシダーゼを加え、50℃において20時間反応させた。このときの2−置換アルコールのクロマノール配糖体への転移率は約5%であった。なお、この際、転移率は、2−置換アルコールの減少の割合として記載した(以下の実施例においても同様とする)。この反応液を30%メタノール溶液で平衡化したXAD−4(オルガノ株式会社製)カラムにアプライし、非吸着物を30%メタノールで溶出後、80%メタノールでクロマノール配糖体を溶出させた。次に得られたクロマノール配糖体画分をシリガゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール,6:1(v/v))処理することで高純度のクロマノール配糖体である式(4)で示される2−(β−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2-(β-D-glucopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)]を約500mg得た。
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
このようにして得られた2−(β−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0062】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0063】
1H−NMR δ(300MHz, DMSO−d6 ):
1.20および1.23(s,3H)
1.63から1.75(m,1H)
1.86から1.92(m,1H)
1.97(s,3H)
2.01(s,3H)
2.04(s,3H)
2.50(broad t,2H)
2.97から4.39(m,13H)
7.39(s,1H)
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.8
11.9
12.7
19.7および19.9
22.1および22.4
28.0および28.1
61.0
70.0
73.3
73.4
73.9および74.1
76.7
76.8
103.5および103.6
116.8
120.3
120.8
122.6
144.2
145.2
質量スペクトル (FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0064】
【外1】
【0065】
実施例2
50mMリン酸緩衝液(pH6.5)で調製した40(w/v)%ラクトース800mlに対し、ジメチルスルホキシドで調製した2.75%(w/v)の上記一般式(2)においてR1 、R2 、R3 及びR4 がCH3 であり、R5 がHであり、nが2である2−置換アルコール(エタノール型)溶液160mlおよび4000Uの東洋紡績株式会社製のエシェリキア コリ由来のβ−ガラクトシダーゼを加え、40℃において20時間反応させた。このときの2−置換アルコールのクロマノール配糖体への転移率は約30%であった。この反応液を30%メタノール溶液で平衡化したXAD−4(オルガノ株式会社製)カラムにアプライし、非吸着物を30%メタノールで溶出後、80%メタノールでクロマノール配糖体を溶出させた。次に得られたクロマノール配糖体画分をシリガゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール,6:1(v/v))で処理後、メタノール及び酢酸エチルを用い結晶化することで高純度のクロマノール配糖体である式(5)で示される2−(β−D−ガラクトピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2-(β-D-galactopyranosyl)ethyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)] を約1700mg得た。
【0066】
【化12】
【0067】
このようにして得られた2−(β−D−ガラクトピラノシル)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
【0068】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0069】
1H−NMR δ(300MHz, DMSO−d6 ):
1.20(s,3H)
1.70から1.86(m,4H)
1.98(s,3H)
2.01(s,3H)
2.05(s,3H)
2.50(broad t,2H)
3.24から4.73(m,13H)
7.37(s,1H)
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.7
11.7
12.7
20.1
24.0および24.1
31.6
38.0および38.2
60.3および60.4
64.4
68.1
70.5
73.0
73.4
75.0
103.4および103.5
116.6
120.3
120.9
122.6
144.2
145.2
質量スペクトル (FAB):
m/z 412 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0070】
【外2】
【0071】
実施例3
50mM酢酸緩衝液(pH5.0)で調製した70(w/v)%ショ糖1600mlに対し、エタノールで調製した5%(w/v)のメタノール型2−置換アルコール溶液320mlおよび100Uの和光純薬工業株式会社製のベーカーズイースト由来のインベルターゼを加え、50℃において20時間反応させた。このときの2−置換アルコールのクロマノール配糖体への転移率は約4%であった。この反応液を30%メタノール溶液で平衡化したXAD−4(オルガノ株式会社製)カラムにアプライし、非吸着物を30%メタノールで溶出後、80%メタノールでクロマノール配糖体を溶出させた。次に得られたクロマノール配糖体画分をシリガゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール,6:1(v/v))処理することで高純度のクロマノール配糖体である式(6)で示される2−(β−D−フルクトフラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2-(β-D-fuructofuranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)]を約300mg得た。
【0072】
【化13】
【0073】
このようにして得られた2−(β−D−フルクトフラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0074】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0075】
1H−NMR δ(300MHz, DMSO−d6 ):
1.17(s,3H)
1.64から1.70(m,1H)
1.85から1.90(m,1H)
1.97(s,3H)
2.00(s,3H)
2.04(s,3H)
2.50(broad t,2H)
3.15から5.13(m,13H)
7.36(s,1H)
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.8
11.8
12.7
19.8
22.4および22.5
28.2
60.9
62.7および62.9
65.8および65.9
74.0
75.0および75.2
76.4および76.5
81.9および82.1
103.7
117.0
120.3
120.7
122.5
144.4
145.1
質量スペクトル (FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0076】
【外3】
【0077】
実施例4
50mM酢酸緩衝液(pH5.0)で調製した30(w/v)%メチルマンノピラノシド400mlに対し、ジメチルスルホキシドで調製した5%(w/v)のメタノール型2−置換アルコール溶液80mlおよび400Uのシグマ社製のJack Beans由来のα−マンノシダーゼを加え、40℃において20時間反応させた。このときの2−置換アルコールのクロマノール配糖体への転移率は約12%であった。この反応液を30%メタノール溶液で平衡化したXAD−4(オルガノ株式会社製)カラムにアプライし、非吸着物を30%メタノールで溶出後、80%メタノールでクロマノール配糖体を溶出させた。次に得られたクロマノール配糖体画分をシリガゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール,6:1(v/v))処理することで高純度のクロマノール配糖体である式(7)で示される2−(α−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2-(α-D-mannopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol)]を約500mg得た。
【0078】
【化14】
【0079】
このようにして得られた2−(α−D−マンノピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルを図4に示す。
【0080】
また、上記化合物の 1H−NMR、13C−NMR、質量分析及び比旋光度の結果は以下のとおりである。
【0081】
1H−NMR δ(300MHz, DMSO−d6 ):
1.17および1.21(s,3H)
1.65から1.74(m,1H)
1.77から1.91(m,1H)
1.97(s,3H)
2.01(s,3H)
2.04(s,3H)
2.50(broad t,2H)
3.16から4.69(m,13H)
7.39(s,1H)
13C−NMR δ(75MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.7
11.8
12.7
19.7および19.8
21.9および22.1
28.2および28.5
61.0および61.2
66.7および66.9
70.2および70.3
71.0
73.8
73.9
74.1
100.1および100.2
116.7
120.2および120.3
120.9
122.6
144.1および144.2
145.2
質量スペクトル (FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比施光度:
【0082】
【外4】
【0083】
比較例1
50mMリン酸緩衝液(pH6.0)で調製した60(w/v)%マルトース溶液80mlに対し、ジメチルスルホキシドで調製した5(w/v)%のメタノール型2−置換アルコール溶液16mlおよび400Uの東洋紡株式会社製のサッカロマイセス属(Saccharomyces sp.)由来のα−グルコシダーゼを加え、40℃において20時間反応させた。このときの2−置換アルコールのクロマノール配糖体への転移率は約45%であった。この反応液を30%メタノール溶液で平衡化したXAD−4(オルガノ株式会社製)カラムにアプライし、非吸着物を30%メタノール溶液で溶出後、80%メタノール溶液でクロマノール配糖体を溶出させた。次に得られたクロマノール配糖体画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール,5:1,v/v)処理することで高純度のクロマノール配糖体:式(8)で示される2−(α−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2-(α-D-glucopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol] を約300mg得た。
【0084】
【化15】
【0085】
このようにして得られた2−(α−D−グルコピラノシル)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールの赤外線吸収スペクトルを図5に示す。
【0086】
また、上記化合物の 1H−NMR,13C−NMR,質量分析及び比旋光度の結果を示す。
【0087】
1H−NMR δ(270MHz, DMSO−d6 ):
1.23および1.25(s,3H)
1.69から1.76(m,1H)
1.87から1.92(m,1H)
1.97(s,3H)
2.02(s,3H)
2.04(s,3H)
2.51(broad t,2H)
3.05から4.88(m,13H)
7.39(s,1H)
13C−NMR δ(67.8MHz,DMSO−d6 、プロトンデカップリングスペクトル):
11.7
11.7
12.6
19.7および19.8
22.2および22.4
28.2
60.6および60.8
70.0および70.1
71.2および71.5
71.9
72.6および72.9
73.1
73.8および73.9
98.7および98.8
116.6および116.7
120.1および120.2
120.7および120.8
122.5
144.2
145.1
質量スペクトル(FAB):
m/z 398 (分子イオンピーク)
比旋光度:
【0088】
【外5】
【0089】
実施例5:細胞膜酸化障害抑止効果の評価
実施例1から4及び比較例1で得られたクロマノール配糖体を0.4%L−グルタミンを含むDMEM培地(以下、「DMEM培地」と略称する)中に最終濃度が0.5mMになるように溶解し、クロマノール配糖体溶液を調製した。
【0090】
ヒト肝芽腫細胞(以下、「HepG2」と略称する)を6ウェルの細胞培養用マルチプレート(住友ベークライト製)で10%ウシ胎児血清を含んだDMEM培地中で37℃、5%CO2 雰囲気下で継代培養し、コンフルエント(confluent) な状態になるまで増殖させた。このようにして培養されたHepG2の上清を除去し、1ウェル当たりCa及びMgを含まないリン酸緩衝塩類溶液(以下、「CMF−PBS」と略称する)1mlで細胞を2回洗浄した。次に、上記クロマノール配糖体溶液を1ウェル当たり1.5ml添加し、37℃、5%CO2 雰囲気下で18時間インキュベートした。さらに、上清を除去した後、CMF−PBS 1mlで1ウェル当たり細胞を2回洗浄し、DMEM培地を1.5ml加えた。さらに、CMF−PBSに溶かした100mMの2’,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、「AAPH」と略称する)を0.5ml添加し、37℃、5%CO2 雰囲気下で4時間インキュベートした。そして、1ウェル当たりCMF−PBS 1mlで細胞を2回洗浄後、8.1%ドデシル硫酸ナトリウム処理により細胞膜を可溶化し、遠心分離処理により、上清を分離した。上清中のタンパク質量はマックウェル法により測定し、脂質過酸化物質量はチオバルビツール酸(以下、「TBA」と略称する)反応により求めた。また、タンパク質1mg当たりのTBA反応物(以下、「TBARS」と略称する)の量(nmol/mg・タンパク質)を求めた。この際、上記クロマノール配糖体の濃度を0mMとした以外は上記反応を同様に繰り返して得られた比較対照のTBARSの量(nmol/mg・タンパク質)を基準として下記式より細胞膜酸化障害抑制率を計算した。結果を表1に示す。本実施例において、上記細胞は1群4〜5連で実験を行い、結果はこれらの平均値として表わした。
【0091】
【数1】
【0092】
【表1】
【0093】
表1から、実施例1から4で得られた式(4)から(7)で示されるクロマノール配糖体、特に、実施例3及び4で得られた式(6)及び(7)で示されるクロマノール配糖体は、比較例1で得られた式(8)で示されるクロマノール配糖体に比べて、同等またはそれ以下の細胞膜酸化障害抑制率を示すことが分かる。これより、本発明によるクロマノール配糖体は、式(8)で示されるクロマノール配糖体に比べて、有意に優れた抗酸化活性を有することが示される。
【0094】
実施例6:放射線防護作用の評価
実施例1から4及び比較例1で得られたクロマノール配糖体をRPMI−1640+10%牛胎仔血清+HEDES緩衝液(25mM)系培養液(以下、「完全培養液」と略称する)中に最終濃度が1mMになるように溶解し、クロマノール配糖体溶液を予め調製した。
【0095】
次に、マウスのTリンパ腫株EL−4細胞を完全培養液中で37℃、5%CO2 雰囲気下で継代培養し、細胞密度が2×105 個/mlになるように調整した。このようにして培養されたEL−4細胞培養液の上清を除去し、上記クロマノール配糖体溶液をそれぞれ等量加え、X線を照射するまでの30分間、上記と同様の条件下で細胞培養を行った。クロマノール配糖体を含む培養液中で所定時間培養した後、3Gyの放射線を0.92Gy/分の線量率で照射した。放射線照射終了直後、細胞を遠心沈降(400g×5分)させ、RPMI−1640で2回洗浄し、完全培養液で再浮遊させて培養した。これに、サイトカラシンBのDMSO溶液(2mg/ml濃度)を最終濃度が3μg/mlになるように添加し、20時間培養後に2核細胞中の小核保有細胞の頻度(小核誘発頻度)を測定し、細胞の放射線損傷の頻度を表わす尺度とした。また、各放射線照射細胞について、上記クロマノール配糖体溶液の濃度を0mMとした以外は上記操作を同様に繰り返して得られた比較対照の小核誘発頻度を基準として下記式より小核誘発抑制率を計算した。この際、上記細胞は1群4〜5連で放射線照射実験を行い、結果はこれらの平均値として表わした。結果を表2に示す。
【0096】
【数2】
【0097】
【表2】
【0098】
表2より、小核誘発頻度は、実施例1から4で得られた本発明によるクロマノール配糖体は、比較例1で得られた値に比べて有意に小さく、これより、本発明によるクロマノール配糖体は放射線被爆による細胞の損傷を有効に抑制することが示された。
【0099】
【発明の効果】
上述したように、本発明の一般式(1)で表わされるクロマノール配糖体は、抗酸化活性及び放射線防護作用等の様々な特性に優れている。
【0100】
したがって、本発明のクロマノール配糖体は、抗酸化剤として有用であり、化粧品、衣料品、食品及び化成品など様々な分野における原料として有効に利用できる。
【0101】
また、上記利点に加えて、本発明のクロマノール配糖体は、その高い放射線防護効果により、放射線被爆による障害を有効に防止する放射線防護剤において使用でき、さらにこのような用途に使用する際には、その高い水溶性により、錠剤や散剤等の固形製剤の形態のみならず、注射用等の液状の製剤の形態でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明によるクロマノール配糖体の実施例1における赤外線吸収スペクトルである。
【図2】は、本発明によるクロマノール配糖体の実施例2における赤外線吸収スペクトルである。
【図3】は、本発明によるクロマノール配糖体の実施例3における赤外線吸収スペクトルである。
【図4】は、本発明によるクロマノール配糖体の実施例4における赤外線吸収スペクトルである。
【図5】は、本発明によるクロマノール配糖体の比較例1における赤外線吸収スペクトルである。
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