JP3861290B2 - ストレス耐性微生物及び発酵生産物の製造法 - Google Patents

ストレス耐性微生物及び発酵生産物の製造法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、発酵生産物の製造法に関し、詳しくは微生物を利用した発酵によるアミノ酸等の有用物質の製造法、及び微生物の生育及び/又は発酵生産物の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与された微生物に関する。
背景技術
細胞を高温、高浸透圧、代謝阻害、重金属の存在、ウイルス感染等のストレスにさらすと、ヒートショックタンパク質(以下、「HSP」という)と呼ばれる一群のタンパク質が短時間に誘導合成され、ストレスに対する防御反応が起こる。このHSPは、原核細胞から真核細胞まで広く相同性があり、大きくいくつかのグループ(HSP60群、HSP70群、HSP90群、TRiC群、その他の群)に分けられている(Hendrick,J.P.and Hartl,F.-V.Annu.Rev.Biochem.,62,349-384(1993))。
HSPによるストレス耐性のメカニズムは、HSPが持つタンパク質の高次構造の形成(タンパク質の折り畳み(folding))機能による。すなわち、ストレスにより変性し、正しい高次構造がとれなくなったタンパク質にHSPが結合し、正しい高次構造に折り畳み直す(refolding)ことにより、そのタンパク質の機能を正常に戻すことができる。
このようなタンパク質の高次構造形成におけるHSPの機能は、変性タンパク質に対してだけではなく、正常な状態の細胞においても、タンパク質の折り畳み、会合(assembly)、および膜透過(transport)等の過程に分子シャペロンとして働くことが明らかとなりその重要性が認識され、注目を集めている(Ellis,R.J.et al.,Science,250,954-959(1990))。シャペロン(chaperon)とは、介添え役を意味し、HSPが種々のタンパク質に結合してその機能を発揮することから名付けられた。
HSPは、上記のようなストレスに細胞がさらされると発現が誘導される。通常、この誘導は一時的であり、まもなく減衰し、新たな定常状態に達する。このHSPの誘導は、転写レベルで行われることが明らかにされている(Cowing,D.C.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80,2679-2683(1985),Zhou,Y.N.et al.,J.Bacteriol.,170,3640-3649(1988))。一群のHSP遺伝子は、ヒートショックプロモーターと呼ばれるプロモーター構造を持ち、このヒートショックプロモーターに特有に機能するσ(シグマ)因子であるシグマ−32(σ32)が存在することが知られている。σ32はrpoH遺伝子によってコードされる半減期が約1分と非常に短いタンパク質であり、HSPの一時的な誘導と密接な関係があることが知られている(Straus,D.B.et al.,Nature.329,348-351(1987))。σ32自身の発現調節は転写レベルおよび翻訳レベルで行われることが明らかにされているが、主たる調節は翻訳レベルで行われている。
ヒートショックによるHSPの誘導は、σ32の合成量の増加と安定化の2つの機構によるものである。これらのうち、σ32の合成量の増加については、σ32の構造が熱により変化し、翻訳が促進されることが既に明らかになっており(Yura,T.et al.,Annu.Rev.Microbiol.,47,321-350(1993))、σ32の安定化については、HSP(DnaK等)がσ32の分解に関与することが示されており、HSPによるフィードバック制御が働いていると考えられている(Tilly,K.et al.,Cell,34,641-646(1983),Liberek,K.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,3516-3520(1994))。
エシェリヒア・コリ(E.coli)では、ストレス存在下における上記のようなHSPと細胞の生育との関係(Meury,J.et al.,FEMS Microbiol.Lett.,113,93-100(1993))や、ヒト成長ホルモンの生産にdnaKが、プロコラゲナーゼの分泌にgroEが影響すること(Hockney,R.C.,Trends in Biotechnology 12,456(1994))は知られているが、アミノ酸や核酸等の発酵生産物の生産性とHSPとの関係は知られていない。さらに、コリネホルム細菌では、HSPと生育との関係は知られておらず、HSPと発酵生産物の生産性との関係も知られていない。
発明の開示
本発明は、HSPと微生物の生育及び発酵生産物の生産性との関係を明らかにし、アミノ酸等の有用物質の発酵生産において、微生物の生育及び/又は発酵生産物の生産を抑制するストレスの影響を減少させ、生産性や収率の低下を改善することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、HSPをコードする遺伝子又はHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子を微生物に導入し、HSPの発現を増強させることによって、生産性や生育を改善させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、微生物を培地中に培養し、その培地中に発酵生産物を生成蓄積させ、該発酵生産物を採取する、微生物を利用した発酵生産物の製造法において、前記微生物が、HSPをコードする遺伝子及びHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるHSPの発現量が増強され、微生物の生育及び/又は発酵生産物の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与されたことを特徴とする方法である。
本発明はまた、発酵生産物を産生する微生物であって、HSPをコードする遺伝子及びHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるHSPの発現量が増強され、微生物の生育及び/又は前記発酵生産物の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与された微生物である。
上記の本発明の方法及び本発明の微生物において、発酵生産物としてはアミノ酸、例えばL−スレオニン、L−リジン、L−グルタミン酸、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−フェニルアラニン;核酸またはヌクレオシド、例えばグアニル酸、イノシン、イノシン酸;その他、ビタミン類、抗生物質等が挙げられる。
また、前記ストレスとしては、微生物の生育に好ましくない温度、培地の浸透圧または高濃度の発酵生産物が挙げられる。
また、ヒートショックタンパク質をコードする遺伝子として具体的にはgroEが、σ因子をコードする遺伝子としてはrpoHが挙げられる。
本発明が適用される微生物としては、エシェリヒア属細菌またはコリネホルム細菌が挙げられる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明が適用される発酵生産物としては、微生物を用いた発酵生産により製造されるものであれば特に制限されないが、例えばL−スレオニン、L−リジン、L−グルタミン酸、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−フェニルアラニン等の種々のL−アミノ酸;グアニル酸、イノシン、イノシン酸等の核酸類またはヌクレオシド;ビタミン類、抗生物質など、微生物により生産されるものが挙げられる。また、現在微生物を利用して生産されていない物質であっても、遺伝子組換え等により生産されるようになった物質についても本発明は適用され得る。上記の物質の中では、特にアミノ酸のように、培地中に分泌され、培地の浸透圧を高めるものについては、本発明の方法は好適に適用され得る。
HSPをコードする遺伝子及びHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるHSPの発現量が増強され、微生物の生育及び/又は前記発酵生産物の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与される微生物としては、発酵により発酵生産物を産生するものであれば特に制限されず、エシェリヒア属細菌、コリネホルム細菌、バチルス属細菌、セラチア属細菌等、従来物質生産に用いられてきたものが挙げられる。好ましくは、その微生物において、プラスミドの複製開始起点を含むDNA断片が取得されていて、HSP遺伝子又はHSP遺伝子に特有なσ因子をコードする遺伝子が機能し、これらの遺伝子のコピー数を上昇させることが可能な微生物である。尚、上記のコリネホルム細菌とは、バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargey's Manual of Determinative Bacteriology)第8版599頁(1974)に定義されている一群の微生物であり、好気性,グラム陽性,非抗酸性,胞子形成能を有しない桿菌であり、コリネバクテリウム属細菌、及び従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属細菌として統合されたブレビバクテリウム属細菌、さらにコリネバクテリウム属細菌と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。
具体的には、例えば、発酵生産物がL−スレオニンの場合はエシェリヒア・コリVKPM B-3996(RIA 1867)(米国特許第5,175,107号参照)、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラムAJ12318(FERM BP-1172)(米国特許第5,188,949号参照)等であり、L−リジンの場合はエシェリヒア・コリAJ11442(NRRL B-12185,FERMBP-1543)(米国特許第4,346,170号参照)、エシェリヒア・コリW3110(tyrA)(同株はエシェリヒア・コリW3110(tyrA)/pHATerm(FERM BP-3653)からプラスミドpHATermを脱落させることにより得られる。WO 95/16042国際公開パンフレット参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12435(FERM BP-2294)(米国特許第5,304,476号)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ3990(ATCC31269)(米国特許第4,066,501号参照)等であり、L−グルタミン酸の場合はエシェリヒア・コリAJ12624(FERM BP-3853)(フランス特許出願公開第2,680,178号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12821(FERM BP-4172)(特開平5-26811号、フランス特許出願公開第2,701,489号)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12475(FERM BP-2922)(米国特許第5,272,067号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ13029(FERM BP-5189)(JP 95/01586号国際公開パンフレット参照)等であり、L−ロイシンの場合はエシェリヒア・コリAJ11478(FERM P-5274)(特公昭62-34397号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ3718(FERM P-2516)(米国特許第3,970,519号参照)等であり、L−イソロイシンの場合はエシェリヒア・コリKX141(VKPM B-4781)(欧州特許出願公開第519,113号参照)、ブレビバクテリウム・フラバムAJ12149(FERM BP-759)(米国特許第4,656,135号参照)等であり、L−バリンの場合はエシェリヒア・コリVL1970(VKPM B-4411)(欧州特許出願公開第519,113号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12341(FERM BP-1763)(米国特許第5,188,948号参照)等であり、L−フェニルアラニンの場合は、エシェリヒア・コリAJ12604(FERM BP-3579)(特開平5-236947号、欧州特許出願公開第488,424号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12637(FERM BP-4160)(フランス特許出願公開第2,686,898号参照)等である。
本発明の方法に用いる微生物は、上記のような微生物であって、HSPをコードする遺伝子及びHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるHSPの発現量が増強され、微生物の生育及び/又は前記発酵生産物の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与された微生物である。前記微生物に導入される遺伝子は、HSPをコードする遺伝子とHSP遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子のいずれか一方でもよく、両方でもよい。
「HSPの発現量が増強される」とは、もともとHSPを産生する微生物のHSP産生量が増加することに加えて、HSPを本来的には実質的に発現しない微生物がHSPを発現するようになることも含む意味である。HSPの発現量の増強は、具体的には、例えば、外来の又は内在性の(endogenous)のHSP遺伝子を微生物細胞内に導入して発現させることにより実現される。その際、微生物細胞内で自律複製可能なベクター、特にマルチコピー型のプラスミドをベクターとして用いると、HSP遺伝子の細胞内コピー数を高めることができる。また、発現効率のよいプロモーターを用いてHSP遺伝子当たりの発現量を高めることによってもHSPの発現を効率的に増強することができる。さらに、HSP遺伝子固有のプロモーターに特有に機能するσ因子遺伝子を微生物細胞内に導入することによっても、HSPを増強することができる。
HSPをコードする遺伝子としては、groE(GroELS遺伝子等)、dnaK(DnaK遺伝子)、dnaJ(DnaJ遺伝子)等が挙げられるが、これらの中ではgroEが好ましい。また、これらの遺伝子に特有に機能するσ因子としてはσ32をコードするrpoHが挙げられる。これらの遺伝子の起源となる微生物としては、各々の遺伝子がエシェリヒア属細菌またはコリネホルム細菌細胞中で機能することができるものであれば特に制限されないが、具体的にはエシェリヒア属細菌及びコリネホルム細菌が挙げられる。
エシェリヒア・コリのrpoH遺伝子およびgroE遺伝子は、その塩基配列が既に報告されており(rpoH:J.Bacteriol.170,3479-3484(1988)、groE:Nature,333,330-334(1988))、その配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR法(ポリメラーゼチェインリアクション)により増幅することによってエシェリヒア・コリ染色体から得られる。rpoH遺伝子増幅用のプライマーの塩基配列としては、配列番号1及び2に記載の配列が、groE遺伝子増幅用のプライマーとしては、配列番号3及び4に記載の配列が挙げられる。
また、ブレビバクテリウム・フラバムのdnaK遺伝子及びgroE遺伝子が、エシェリヒア・コリ及びバチルス・サブチリス由来のdnaK遺伝子間、及びgroE遺伝子間で保存されているアミノ酸配列を基に作成したプライマーを用いたPCR法により、単離されており、これらの遺伝子は、他の微生物由来のdnaK遺伝子又はgroE遺伝子と高い相同性を示すことが報告されている(94年度日本分子生物学会大会講演要旨集第395頁)。この事実から、他のHSPをコードする遺伝子(dnaJ遺伝子及びrpoH遺伝子等)についても同様に、エシェリヒア・コリ由来の各々の遺伝子と相同性が高いことが予想される。したがって、エシェリヒア・コリ由来のHSPをコードする遺伝子を用いたハイブリダイゼーションにより、あるいはこれらの遺伝子の一部の配列を用いたPCR法によって、コリネホルム細菌から各々の遺伝子を単離することは容易であると考えられる。
上記のようにして得られた遺伝子をエシェリヒア属細菌に導入するには、例えば、上記遺伝子を含むDNA断片をエシェリヒア属細菌細胞内において自律複製可能なベクターDNAに接続し、得られた組換えベクターでエシェリヒア属細菌を形質転換すればよい。また、上記遺伝子を、エシェリヒア属細菌以外の微生物に導入するには、その微生物細胞内において自律複製可能なベクターDNAに上記遺伝子を含むDNA断片を接続し、得られた組換えベクターで前記微生物を形質転換すればよい。
本発明において用いることのできるベクターDNAとしては、プラスミドベクターDNAが好ましく、遺伝子が導入される微生物がエシェリヒア属細菌の場合には、例えばpUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG399、RSF1010等が挙げられる。他にもファージDNAのベクターも利用できる。HSPの発現を効率的に達成するために、HSP遺伝子固有のプロモーターに代えてlac、trp、PL等の微生物内で働くプロモーターを用いてもよい。尚、HSP遺伝子又はHSP遺伝子に特有に機能するσ因子を微生物に導入するには、これらの遺伝子を含むDNAをトランスポゾン(Berg,D.E.and Berg,C.M.,Bio/Technol.,1,417(1983))、Muファージ(特開平2−109985)または相同性組換え(Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Lab.(1972))を用いた方法で前記微生物の染色体に組み込んでもよい。
本発明において用いることのできるベクターDNAとしては、遺伝子が導入される微生物がコリネホルム細菌の場合には、コリネホルム細菌で自律複製可能なプラスミドベクター、例えばpAM330(特公平1−11280号公報参照)や、pHM1519(特開昭58−77895号公報参照)等が挙げられる。
形質転換の方法は、通常の微生物の形質転換体の作製と特に変わるところはなく、例えばエシェリヒア属細菌の場合には、D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68,326(1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))等により行うことができる。また、コリネホルム細菌の形質転換は、上記のMandelらの方法、またはバチルス・ズブチリスについて報告されている様に細胞がDNAを取り込み得る様に増殖段階(いわゆるコンピテントセル)に導入する方法(Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1977))により行うことができる。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類および酵母について知られている様に(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec.Gen.,Genet.,168.111(1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75 1929(1978))、DNA受容菌を組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストにして組換えDNAを導入することも可能である。さらに、電気パルス法(杉本ら,特開平2-207791号公報)によっても、組換えDNAをブレビバクテリウム属またはコリネバクテリウム属細菌に導入することができる。
通常の微生物は、培養温度の上昇、発酵生産物や高濃度の培地成分による高浸透圧、あるいは目的とする発酵生産物の産生に伴う代謝異常等によるストレスを受けると、生育が抑制されたり発酵生産物の生産性や収率が低下するが、HSPの発現を増強させることによって、これらのストレスに対する耐性を付与することができる。その結果、前記のようなストレスを微生物が受ける環境下で、発酵生産物の生産性を向上させることができる。尚、ストレスに対する耐性とは、完全な耐性を意味するものではなく、ストレスから受ける影響を減少させる性質も含む。また、導入する遺伝子の種類や宿主微生物の種類によっては、生育の抑制と発酵生産物の生産性や収率の低下の両方が解消されるものとは限らず、生育は抑制されるが発酵生産物の収率が向上する場合がある。本発明の方法により耐性を付与することができるストレスとしては、微生物の生育に好ましくない温度、培地の浸透圧、培地中の高濃度のアミノ酸等が挙げられる。
本発明の方法に用いる発酵生産用の培地は、利用される微生物に応じて従来より用いられてきた周知の培地を用いてかまわない。つまり、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地である。本発明を実施するための特別な培地は必要とされない。
炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物などの糖類、グリセロールやソルビトールなどのアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類等を用いることができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリン、L−チロシンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養は、利用される微生物に応じて従来より用いられてきた周知の条件で行ってかまわない。例えば、好気的条件下で16〜120時間培養を実施するのがよく、培養温度は25℃〜45℃に、培養中pHは5〜8に制御する。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。
培養終了後の培地液からの代謝産物の採取は、本願発明において特別な方法が必要とされることはない。すなわち、本発明は従来より周知となっているイオン交換樹脂法、沈澱法その他の方法を組み合わせることにより実施できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
実施例1 rpoH遺伝子及びgroE遺伝子導入用プラスミドの作製
<1>rpoH遺伝子およびgroE遺伝子のクローニング
エシェリヒア・コリのrpoH遺伝子及びgroE遺伝子を、PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法によりクローニングした。PCR法に用いるプライマーは、既に報告されているエシェリヒア・コリのrpoH遺伝子(J.Bacteriol.,170,3479-3484(1988))およびgroE遺伝子(Nature,333,330-334(1988))の配列をもとに合成した。rpoH遺伝子の増幅用プライマーとしては、配列番号1(5’側)及び配列番号2(3’側)に示すオリゴヌクレオチドを、groE遺伝子の増幅用プライマーとしては、配列番号3(5’側)及び配列番号4(3’側)に示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを、それぞれ合成した。
(rpoH遺伝子増幅用プライマー)
Figure 0003861290
(groE遺伝子増幅用プライマー)
Figure 0003861290
E.coli K-12株から斉藤らの方法(Saito,H.and Miura,K.,Biochem.Biophys.Acta.,72,619(1963))により染色体DNAを抽出し、これを鋳型とし、上記オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、PCR反応を行った。
PCR反応は、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(37℃、2分)、及びポリメラーゼ反応(72℃、3分)からなるサイクルを25サイクル行った。
得られた増幅産物の両末端を、市販のDNA末端平滑化キット(宝酒造社製、Blunting kit)を用いて平滑末端化した後、ベクタープラスミドpSTV28(宝酒造社製)のHincII部位にそれぞれクローニングし、プラスミドpSTV28−rpoHおよびpSTV28−groEを得た。
<2>rpoH遺伝子を含むプラスミドおよびgroE遺伝子を含むプラスミドへのコリネホルム細菌由来の複製起点の導入
pSTV28−rpoHを、コリネホルム細菌細胞内で自律複製可能にするために、既に取得されているコリネホルム細菌で自律複製可能なプラスミドpHM1519(Miwa,k.et.al.,Agric.Biol.Chem.,48(1984)2901-2903)由来の複製起点(特開平5−007491号公報)をpSTV28−rpoHに導入した。具体的には、pHM1519を制限酵素BamHIおよびKpnIで消化し、複製起点を含むDNA断片を取得し、得られた断片をDNA末端平滑化キット(宝酒造社製、Blunting kit)を用いて平滑末端化した後、その末端にKpnIリンカー(宝酒造社製)を連結し、それをpSTV28−rpoHのKpnI部位に挿入してpRPHを取得した。また、対照として、rpoH遺伝子を持たないプラスミドpHSG399を用い、そのSalI部位に同様にSalIリンカー(宝酒造社製)を用いてpHM1519由来の複製起点を挿入してpSAC4を取得した。
実施例2 rpoH遺伝子を導入したL−グルタミン酸生産菌によるL−グルタミン酸生産
L−グルタミン酸生成能を有するブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12821(FERM BP−4172)に、上記の様にして作製したpRPHとpSAC4とを導入し、それぞれのプラスミドが導入された形質転換体のL−グルタミン酸生産性を評価した。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム細胞へのプラスミドの導入は、電気パルス法(特開平2−207791)により行った。
プラスミドが導入された形質転換体は、4μg/mlのクロラムフェニコールを含むCM2Gプレート培地(ポリペプトン10g、酵母エキス10g、グルコース5g、NaCl5g、寒天15gを純水1Lに含む。pH7.2)にて選択した。
得られた形質転換体のL−グルタミン酸の生産性の評価は以下の様にして行った。CM2Gプレート培地にて各形質転換体を培養して細胞のリフレッシュを行い、リフレッシュされた各々の形質転換体を、グルコース80g、KH2PO41g、MgSO4・7H2O0.4g、(NH42SO430g、FeSO4・7H2O0.01g、MnSO4・7H2O0.01g、大豆加水分解液15ml、サイアミン塩酸塩200μg、ビオチン300μg、クロラムフェニコール4mgおよびCaCO350gを純水1L中に含む培地(KOHを用いてpHは8.0に調整されている)中で、35℃で20時間培養した。尚、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの好適な培養温度は、通常31〜32℃である。
培養後、菌体濃度、及び培地中に蓄積されたL−グルタミン酸の量を測定した。L−グルタミン酸の定量は、旭化成(株)製バイオテックアナライザーAS−210を使用して行った。菌体濃度は、0.2N塩酸で51倍に希釈した培養液の660nmにおける吸光度(OD660)により測定した。結果を表1に示す。
Figure 0003861290
この結果から明らかなように、rpoH遺伝子を導入されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL−グルタミン酸生産菌は、生育は抑制されたがL−グルタミン酸生産性が向上した。
実施例3 rpoH遺伝子を導入したL−リジン生産菌によるL−リジン生産
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869から変異誘導された、S−(2−アミノエチル)−L−システインに耐性を示し、L−リジン生成能を有するブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12435(FERM BP−2294)に、上記の様にして作製したpRPHとpSAC4とを導入し、それぞれのプラスミドが導入された形質転換体のL−リジン生産性を評価した。
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム細胞へのプラスミドの導入は、電気パルス法(特開平2−207791)により行った。
プラスミドが導入された形質転換体は、4μg/mlのクロラムフェニコールを含むCM2Gプレート培地(ポリペプトン10g、酵母エキス10g、グルコース5g、NaCl5g、寒天15gを純水1Lに含む。pH7.2)にて選択した。
得られた形質転換体のL−リジン生産性の評価は以下の様にして行った。CM2Gプレート培地にて各形質転換体を培養して細胞のリフレッシュを行い、リフレッシュされた各々の形質転換体を、グルコース100g、KH2PO41g、MgSO4・7H2O0.4g、(NH42SO430g、FeSO4・7H2O0.01g、MnSO4・7H2O0.01g、大豆加水分解液15ml、サイアミン塩酸塩200μg、ビオチン300μg、クロラムフェニコール4mgおよびCaCO350gを純水1L中に含む培地(KOHを用いてpHは8.0に調整されている)中で、31.5℃で60時間培養した。培養後、菌体濃度、及び培地中に蓄積されたL−リジンの量を測定した。L−リジンの定量は、旭化成(株)製バイオテックアナライザーAS−210を使用して、L−リジン塩酸塩の量として行った。菌体濃度は、0.2N塩酸で51倍に希釈した培養液の660nmにおける吸光度(OD660)により測定した。結果を表2に示す。
Figure 0003861290
表2に示されるように、rpoH遺伝子を導入されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL−リジン生産菌は、生育がよく、L−リジン生産性も向上した。この結果は、L−リジンの蓄積による浸透圧の上昇による影響が緩和された結果であると推定される。
実施例4 groE遺伝子を導入したL−フェニルアラニン生産性エシェリヒア・コリによるL−フェニルアラニン生産
エシェリヒア・コリK12株から育種されたフェニルアラニン生産菌AJ12604株(FERM BP−3579)に、上記の様に作成したpSTV28−groEあるいはpSTV28を導入し、それぞれのプラスミドが導入された形質転換体のL−フェニルアラニン生産性を評価した。
プラスミドの導入は、電気パルス法(特開平2−207791)を用いた。プラスミドが導入された形質転換体は、40μg/mlのクロラムフェニコールを含むLプレート培地(ポリペプトン10g、酵母エキス5g、NaCl5g、寒天15gを純水1Lに含む。pH7.2)にて選択した。
得られた形質転換体のL−フェニルアラニンの生産性の評価は以下の様にして行った。40mg/Lのクロラムフェニコールを含むLプレート培地にて培養して細胞のリフレッシュを行い、リフレッシュされた各々の形質転換体を、グルコース20g、Na2HPO429.4g、KH2PO46g、NaCl1g、NH4Cl2g、クエン酸ナトリウム10g、グルタミン酸ナトリウム0.4g、MgSO4・7H2O3g、KCl0.23g、サイアミン塩酸塩2mg、L−チロシン75mgおよびクロラムフェニコール40mgを純水1L中に含む培地(KOHを用いてpHは7.0に調整されている)中で、45℃で40時間培養した。培養後、菌体濃度、及び培地中に蓄積されたL−フェニルアラニンの量を測定した。L−フェニルアラニンの定量は、旭化成(株)製バイオテックアナライザーAS−210を使用して行った。菌体濃度は、純水で51倍に希釈した培養液の660nmにおける吸光度(OD660)により測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0003861290
この結果から、groE遺伝子が導入されたE.coliは、L−フェニルアラニン生産性が向上したことが明らかである。
実施例5 rpoH遺伝子を導入したL−リジン生産性エシェリヒア・コリによるL−リジン生産
L−リジン生産の宿主には、エシェリヒア・コリW3110(tyrA)株を用いた。W3110(tyrA)株は、欧州特許公開92年488424号公報に詳しい記載があるが、その調製方法について簡単にふれると以下の通りである。
国立遺伝学研究所(静岡県三島市)よりE.coli W3110株を入手した。同株をストレプトマイシン含有のLBプレートにまき、コロニーを形成する株を選択してストレプトマイシン耐性株を取得した。選択したストレプトマイシン耐性株と、E.coli K-12 ME8424株を混合して、完全培地(L-Broth:1% Bacto trypton,0.5% Yeast extract,0.5% NaCl)で37℃の条件下、15分間静置培養して接合を誘導した。E.coli K-12 ME8424株は、(HfrPO45,thi,relA1,tyrA::Tn10,ung-1.nadB)の遺伝形質を有し、国立遺伝学研究所より入手できる。その後、培養物を、ストレプトマイシン、テトラサイクリンおよびL−チロシンを含有する完全培地(L-Broth:1% Bacto trypton,0.5% Yeast extract,0.5% NaCl,1.5% agar)にまき、コロニーを形成する株を選択した。この株を、E.coli W3110(tyrA)株と命名した。
欧州特許公開92年488424号公報には、この菌株にプラスミドを導入して形成される株が多く記載されている。たとえば、プラスミドpHATermを導入して得られる株は、エシェリヒア・コリW3110(tyrA)/pHATermと命名され、1991年11月16日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、ブダペスト条約に基づき国際寄託されており、FERM BP−3653の受託番号が付与されている。この菌株からプラスミドpHATermを常法により脱落させることによってエシェリヒア・コリW3110(tyrA)株を取得することができる。
このエシェリヒア.コリW3110(tyrA)株に、リジン生合成遺伝子を持つプラスミドRSFD80を実施例4に示した方法で導入した。RSFD80は、WO 95/16042号国際公開パンフレットに記載されており、L−リジンによるフィードバック阻害が解除されたジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードするDNAと、L−リジンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼをコードするDNAを含んでいる。RSFD80プラスミドを保持するE.coli JM109株は、AJ12396と命名され、1993年10月28日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM P−13936として寄託され、1994年11月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−4859の受託番号で寄託されている。
RSFD80が導入されたW3110(tyrA)株の形質転換体は、50μg/mlのストレプトマイシンを含むプレート培地にて選択した。
一方、rpoH遺伝子導入用のプラスミドは次にように構築した。実施例1の<1>に示した方法によりrpoH遺伝子をPCR法により増幅し、得られた増幅産物の両端を市販のDNA末端平滑化キット(宝酒造社製、Blunting kit)を用いて平滑末端化した後、ベクタープラスミドpMW119(和光純薬社製)のHincII部位にクローニングし、プラスミドpMWrpoHを得た。このプラスミドは上記の方法によりエシェリヒア・コリW3110(tyrA)/RSFD80株へ導入した。プラスミドが導入された形質転換体は50μg/mlのストレプトマイシンと50μg/mlのアンピシリンを含むLプレート培地にて選択した。
以上のようにして得られたエシェリヒア・コリW3110(tyrA)/RSFD80株、エシェリヒア・コリW3110(tyrA)/RSFD80+pMWrpoH株のL−リジン生産性を評価した。
得られた形質転換体のL−リジン生産性の評価は以下の様にして行った。Lプレート培地にて培養して細胞のリフレッシュを行い、リフレッシュされた各々の形質転換体を、グルコース40g、KH2PO41g、MnSO4・7H2O0.01g、FeSO4・7H2O0.01g、酵母エキス2g、L−チロシン0.1g、MgSO4・7H2O1g、CaCO325gを純水1L中に含む培地(KOHを用いてpHは7.0に調整されている)中で37℃で30時間培養した。この時、L−リジン塩酸塩を初添で40g/L加えたものについても培養を行った。L−リジンの定量を、旭化成(株)製バイオテックアナライザーAS210を使用して行った。表4に、L−リジンの増加量(培養後の培地中のL−リジン量から初添L−リジン量を引いたもの)を、L−リジン塩酸塩の量として示した。
Figure 0003861290
この結果から、rpoH遺伝子が導入されたエシェリヒア・コリは高濃度のL−リジン存在下でも、rpoH遺伝子が導入されていない菌株よりL−リジンの生産性が向上していることが明らかである。
産業上の利用可能性
本発明により、HSPと微生物の生育及び発酵生産物の生産性との関係が明らかにされ、アミノ酸等の有用物質の発酵生産において、ストレスの影響を減少させ、生産性や収率の低下を改善することができる。
配列表
(1)一般情報
(i)出願人:味の素株式会社
(ii)発明の名称:ストレス耐性微生物及び発酵生産物の製造法
(iii)配列数:4
(iv)連絡先:
(A)宛名:味の素株式会社
(B)番地:京橋1丁目15−1
(C)市 :中央区
(D)州 :東京都
(E)国 :日本国
(F)ZIP :104
(v)コンピュータ読取り可能形式
(A)媒体:
(B)コンピュータ:
(C)操作システム:
(D)ソフトウェア:
(vi)現行出願データ
(A)出願番号
(B)出願日
(C)分類
(viii)代理人/事務所情報
(A)名前:
(B)登録番号:
(C)整理番号:
(ix)通信情報
(A)電話番号:
(B)ファクシミリ番号:
(2)配列番号1に関する情報
(i)配列の特徴
(A)長さ:20
(B)種類:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)分子タイプ:他の核酸 合成オリゴヌクレオチド
(xi)配列の説明:配列番号1
Figure 0003861290
(2)配列番号2に関する情報
(i)配列の特徴
(A)長さ:20
(B)種類:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)分子タイプ:他の核酸 合成オリゴヌクレオチド
(xi)配列の説明:配列番号2
Figure 0003861290
(2)配列番号3に関する情報
(i)配列の特徴
(A)長さ:20
(B)種類:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)分子タイプ:他の核酸 合成オリゴヌクレオチド
(xi)配列の説明:配列番号3
Figure 0003861290
(2)配列番号4に関する情報
(i)配列の特徴
(A)長さ:20
(B)種類:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)分子タイプ:他の核酸 合成オリゴヌクレオチド
(xi)配列の説明:配列番号4
Figure 0003861290

Claims (6)

  1. 微生物を培地中に培養し、その培地中にアミノ酸を生成蓄積させ、該アミノ酸を採取する、微生物を利用したアミノ酸の製造法において、前記微生物に、ヒートショックタンパク質をコードする遺伝子及びヒートショックタンパク質遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるヒートショックタンパク質の発現量が増強され、アミノ酸の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与されたことを特徴とする方法。
  2. 前記ストレスが、微生物の生育に好ましくない温度、培地の浸透圧、または高濃度のアミノ酸である請求項1記載の方法。
  3. ヒートショックタンパク質をコードする遺伝子が、groEである請求項1又は2記載の方法。
  4. σ因子をコードする遺伝子でrpoHである請求項1又は2記載の方法。
  5. 前記微生物が、エシェリヒア属細菌またはコリネホルム細菌である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. アミノ酸を産生する微生物であって、ヒートショックタンパク質をコードする遺伝子及びヒートショックタンパク質遺伝子に特有に機能するσ因子をコードする遺伝子の少なくとも一方が導入されて細胞内におけるヒートショックタンパク質の発現量が増強され、アミノ酸の生産を抑制するストレスに対する耐性が付与された微生物。
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