JP3861246B2 - 手乾燥装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄後の濡れた手を高速の空気流の噴射によって乾燥処理する手乾燥装置に係り、より詳しくは、循環流を利用したサブノズルをメインノズルの外側に形成し、低消費電力化、低騒音化を実現することができる手乾燥装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の手乾燥装置では、ヒーターによって加熱された空気流を手挿入空間に設けた吸気口から吸気することによって、熱の再利用を行い、手乾燥装置の低電力化を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−93348号公報(第3−第5頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、洗浄後の濡れた手に高速の空気流を噴射して乾燥処理する手乾燥装置において、快適な手乾燥を行うためには、ノズルから噴射する高速の空気流によってその最適空気出力及び最適温度が定まる。しかしながら、上記のような特許文献1に記載の手乾燥装置においては、熱の再利用を行うので、最適温度を得るためのヒーターの電力は低減できるが、高速の空気流の運動エネルギーを再利用しないので、最適空気出力を得るための高圧空気流発生装置の電力を低減することはできない。また、高圧空気流発生装置による空気出力が低減できないので、騒音を低減することもできない。
【0005】
また、手挿入空間に吸気口を設けたので、手乾燥時に発生する水滴や湿り空気を吸気してしまい、ヒーターや高圧空気流発生装置の故障を引き起こし易い。水滴の吸気を防止することは可能であっても、湿り空気の吸気を防止することは困難である。
【0006】
さらに、それらの水滴や湿り空気は手の油成分や汚れ成分を含んでいるため、吸気口からノズルに至る流路およびその流路内にあるヒーターや高圧空気流発生装置等から悪臭が発生する原因となる。また、悪臭が発生しても流路内全体が発生源であるため、清掃し悪臭を除去することは困難である。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、空気流の運動エネルギーを再利用することによって、最適空気出力を低消費電力で実現する手乾燥装置を得ることを第1の目的とする。
【0008】
また、第1の目的に加えて、ヒーターによって加熱した空気流の熱を再利用することによって、最適空気出力、最適温度を低消費電力で実現する手乾燥装置を得ることを第2の目的とする。
【0009】
さらに、手挿入空間に設けた吸気口から吸気することなく、空気流の運動エネルギーと熱を再利用する構造を備えた手乾燥装置を得ることを第3の目的とする。
【0010】
また、清掃性に優れた空気流の運動エネルギーと熱を再利用する構造を備えた手乾燥装置を得ることを第4の目的とする。
さらに、空気流の運動エネルギーを再利用することによって低騒音化を実現する手乾燥装置を得ることを第5の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吸気口から吸気した空気を高圧空気流発生装置によって加圧した後、メインノズルによって高速の空気流に変換して手挿入空間に噴射させ、この高速の空気流により手に付着した水分を吹き飛ばして手を乾燥させる手乾燥装置であって、メインノズルの外周にサブノズルを形成し、メインノズルとサブノズルから噴射した高速の空気流の一部を手挿入空間からサブノズルへ導く独立した流路によって循環させ、サブノズルから噴射する空気流として再利用する手段を採用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る手乾燥装置を模式的に表した縦断面図である。図に示すように、手乾燥装置の外郭をなす本体箱体1の正面には手挿入口を構成する開放シンク状の手挿入部5が設けられており、また、本体箱体1の内部には高圧空気流発生装置2が組み込まれ、この高圧空気流発生装置2による高圧空気が手挿入口近傍に送られて、手挿入部5内に水分を吹き飛ばす手乾燥のための作動気流としての高速の気流が形成される。
【0013】
手挿入部5は本体箱体1に、正面及び両側面が開放した手の挿抜可能なほぼU字状凹部として構成されており、後部が斜め下方に傾斜した底部6には排水口7が設けられている。この排水口7の下部には、ドレンを受容するドレン容器8が着脱可能に設けられている。
【0014】
高圧空気流発生装置2は、DCブラシレスモーター(通常の整流子モーター又は誘導電動機であってもよい)と、これを駆動させる駆動回路及びDCブラシレスモーターによって回転するターボファンにより構成され、本体箱体1の手挿入部5の真上に、吸気側を背面側にして取付けられている。高圧空気流発生装置2の吸気側は、本体箱体1の背面側の縦方向に設けられた下端部が開放した吸気路9に臨んでいて、吸気路9の下端部の吸気口10から着脱可能のエアーフィルター11を通じて空気を取り込むことができるようになっている。
【0015】
高圧空気流発生装置2の吹出し口3は、円形カップ状のファンケーシング4の外周に周方向に間隔をおいて複数個が半径方向に向かって開設されている。このファンケーシング4の外側は円形カップ状ケーシング12によって覆われ、円形カップ状ケーシング12の下部にはヒーター13が設けられており、高圧空気流発生装置2から送られてくる高圧空気はヒーター13を通過して加熱された後、高圧空気が高速の空気流に変換され、メインノズル14を通過して吹出し口15から手挿入部5に吹き出す。
【0016】
メインノズル14の外周には、メインノズル14を囲むようにサブノズル16が設けられており、メインノズル14の吹出し口15はサブノズル16の吹出し口17より若干手挿入部5側に突出している。また、メインノズル14及びサブノズル16は、共に、手挿入部5の手挿入口近傍の上部に、メインノズル14の吹出し口15とサブノズル16の吹出し口17を下向きにして取付けられ、メインノズル14からの高速の空気流を、サブノズル16からの空気流が包み込むことにより、メインノズル14からの高速の空気流が手挿入部5に吹き出される際に発生する急激な圧力変動にともなう騒音を低減しつつ、手挿入部5内に入れた手に吹き付けられ、手挿入部5内に入れた手をすり合わせることなく、手に付いた水滴を手の表面から剥離し吹き飛ばす。
【0017】
なお、サブノズル16からの空気流の流速は、メインノズル14からの空気流の流速の1/10程度に設定されており、メインノズル14からの空気流が手挿入部5内に入れた手に到達するまでの流速の減衰を最小限にとどめている。
【0018】
このサブノズル16から吹き出す空気流は、メインノズル14とサブノズル16から吹き出した空気流が手挿入部5の底部6にあたるが、手挿入部5の断面形状がほぼ逆C型であるため、手挿入部5の奥側へと流れ、手挿入部5と手挿入部5内に設けられた循環ガイド18によって形成された独立した流路Aを通って、サブノズル16へ導かれたものである。なお、循環ガイド18の独立した流路Aを形成する側の面には、サブノズル16から吹き出す空気流を整流するための整流板(図示せず)が取り付けてあり、サブノズル16から吹き出す空気流の乱れによる騒音の悪化を防止している。
【0019】
また、循環ガイド18は、手挿入部5に容易に着脱可能に取り付けてある。さらに、循環ガイド18はサブノズル16の一部を構成しており、サブノズル16および独立した流路A内が汚れた場合には、循環ガイド18を外すことにより、サブノズル16内および独立した流路A内を簡単に清掃することができるようになっている。
【0020】
サブノズル16から吹き出す空気流は、ヒーター13を通過して加熱されメインノズル14から吹き出した空気流を含んでいるために、吸気口10から吸気される空気の温度よりも高温であり、さらに、手挿入部5の内部を満たす空気の平均温度よりも高温となっている。メインノズル14から吹き出した空気流は、サブノズル16から吹き出した空気流によって包み込まれているため、手挿入部5内部を満たす空気を直接引き込まず、より温度の高いサブノズル16から吹き出された空気流を引き込むことによって、温度低下が少ないまま手挿入部5に入れられた手に到達する。
【0021】
この手乾燥装置では、手挿入口から手挿入部5内に手を入れると、手を検知する手検知センサー19によって手の挿入が検知され、本体箱体1内の制御回路(図示せず)の処理により即座にヒーター13が作動し、予め本体箱体1内の制御回路に設定しておいた手挿入部5内に手全体が入る程度の時間が経過した後、高速空気流発生装置2が作動し、メインノズル14から高い運動エネルギーを持つ高速の空気流が手挿入部5内に吹き出され、挿入した手に当たり、手に付着した水分を手挿入部5の底部6側に吹き飛ばす。さらに、手挿入部5内で手を挿抜させることによって、手全体に付着していた水滴がすべて排除され、手が乾燥処理される。
【0022】
そして、手の乾燥処理終了後、手を手挿入部5から完全に抜くと、手検知センサー19で手を抜いたことが検知され、ヒーター13と高圧空気流発生装置2が停止する。手から吹き飛ばされた水滴は後方が下方に傾斜した底部6において排水口7に流下し、排水口7の下部に備えられたドレン容器8に収容される。
【0023】
次に、上述した手乾燥装置が、快適な手乾燥を低消費電力で行うことができることを説明する。そのため、上述した手乾燥装置から、サブノズル16と循環ガイド18を取り除いた手乾燥装置を考える。快適な手乾燥を行うためのメインノズル14から吹き出す空気流の最適空気出力PA[W]、最適温度Ta[K]を得るためには、全ての空気出力を高圧空気流発生装置2によって行わなければならないため、高圧空気流発生装置2の効率をηBとすると、高圧気流発生装置2の消費電力PBは、PB=1/ηB・PA[W]となる。
【0024】
いま、メインノズル14から吹き出される高速空気流の風速をVa[m/s]、質量流量をWa[kg/s]とし、PA=1/2・Wa・Va 2[W]が成立しているとすると、ヒータ13の吸気口10から吸気する空気の温度T0[K]を最適温度Ta[K]まで加熱するために必要な熱量QHは、空気の定圧比熱をcp[J/(kg・K)]とすると、QH=cp・Wa・(Ta−T0)[W]となり、ヒータ13の効率をηHとすると、ヒータ13の消費電力PHは、PH=1/ηH・QH[W]となる。よって、手乾燥装置全体の消費電力PTは、PT=PB+PH[W]となる。
【0025】
一方、上述したサブノズル16と循環ガイド18を備えた手乾燥装置の場合、快適な手乾燥を行うためのメインノズル14とサブノズル16から吹き出す高速の空気流の最適空気出力はPA、最適温度はTaと変わらないが、サブノズル16の吹出し口17の開口面積を適切に設定することにより、例えばサブノズル16から吹き出す空気流の流速を1/10・Va[m/s]、質量流量を10・Wa[kg/s]とすると、サブノズル16から吹き出される空気流の空気出力PA **は、PA **=1/20・Va 2・Wa=1/10・PA[W]となり、高圧空気流発生装置2の空気出力PA *は、PA *=9/10・PA[W]の空気出力を行えば、メインノズル14とサブノズル16を合計した空気出力は最適空気出力PA[W]となる。よって、高圧空気流発生装置2から発生する騒音の低減が期待できる。高圧空気流発生装置2の効率をηBは変わらないとすると、高圧気流発生装置2の消費電力PB *は、PB *=1/ηB・PA *=9/10・PB[W]となり、高圧空気流発生装置の消費電力を10%低減できる。
【0026】
いま、メインノズル14から吹き出される高速の空気流の風速をVa[m/s]、質量流量が9/10・Wa[kg/s]であったとすると、ヒーター13の吸気口10から吸気する空気の温度T0を最適温度Taまで加熱するために必要な熱量QH *は、QH *=cp・9/10・Wa・(Ta−T0)[W]となり、ヒーター13の効率ηHが変わらないとすると、ヒータ13の消費電力PH *は、PH *=1/ηH・QH *=9/10・QH[W]となり、ヒーター13の消費電力を10%低減できる。よって、手乾燥装置全体の消費電力PT *は、PT *=PB *+PH *=9/10・PT[W]となる。つまり、快適な手乾燥を行うためのメインノズル14とサブノズル16から吹き出す空気流の最適空気出力PA、最適温度Taを維持しつつ10%消費電力を低減し、かつ低騒音化することができる。
【0027】
なお、上記の説明では、手挿入部5は、本体箱体1に、正面及び側面が開放した手の挿入可能なほぼU字状凹部として構成したが、手挿入部は上面等を開放した凹部としてもよい。
【0028】
[実施形態2]
実施の形態2では、実施の形態1で説明したメインノズル14、サブノズル16および循環ガイド18と手挿入部5によって構成される独立した流路Aを、手挿入部5の互いに対向した面にそれぞれ配置したものである(図示せず)。
例えば、実施の形態1では、独立した流路Aは、手挿入部5の手挿入口近傍の上部に、メインノズル14の吹出し口15とサブノズル16の吹出し口17が下向きになるようにして取り付けたが、本実施の形態では、さらに別の独立した流路Bを、手挿入部5の手挿入口近傍の下部に、メインノズルの吹出し口とサブノズルの吹出し口が上向きになるようにして取り付けたものである。
【0029】
こうして、手挿入口から手挿入部5内に手を入れると、上下に位置するそれぞれの独立した流路A、Bが作動して、それぞれから高速の空気流が手挿入部5内に吹き出され、挿入した手の平、手の甲の両側から手に当たり、手に付着した水分を手の両側から確実に乾燥処理することができる。
【0030】
この場合、対向配置したそれぞれの独立した流路A、Bのノズル位置を手挿入方向にずらして配置すると、対向流の衝突を防いで衝突による騒音発生を防止することができる。
その他の作用、効果は、実施の形態1に示した場合と実質的に同様なので、説明を省略する。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る手乾燥装置は、メインノズルの外周にサブノズルを形成し、メインノズルとサブノズルから吹き出した空気流の一部を手挿入部からサブノズルまで導く独立した流路によって循環させ、サブノズルから吹き出す空気流として再利用することにより、低消費電力かつ低騒音で快適な手乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る手乾燥装置を模式的に示した縦断面図である。
【符号の説明】
1 本体箱体、2 高圧空気流発生装置、5 手挿入部、10 吸気口、13ヒーター、14 メインノズル、16 サブノズル、18 循環ガイド、A 独立した流路。

Claims (6)

  1. 吸気口から吸気した空気を高圧空気流発生装置によって加圧した後、メインノズルによって高速の空気流に変換して手挿入空間に噴射させ、この高速の空気流により手に付着した水分を吹き飛ばして手を乾燥させる手乾燥装置であって、
    前記メインノズルの外周にサブノズルを形成し、該メインノズルとサブノズルから噴射した高速の空気流の一部を前記手挿入空間からサブノズルへ導く独立した流路によって循環させ、前記サブノズルから噴射させることを特徴とする手乾燥装置。
  2. 前記独立した流路を、手挿入部の互いに対向した位置にそれぞれ配置したことを特徴とする請求項1記載の手乾燥装置。
  3. 前記サブノズルからの空気流の流速を、前記メインノズルからの空気流の流速のほぼ1/10に設定したことを特徴とする請求項1または2記載の手乾燥装置。
  4. 前記高圧空気流発生装置とメインノズルの間に、ヒーターを備えたことを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の手乾燥装置。
  5. 前記独立した流路を、着脱可能に設置したことを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれかに記載の手乾燥装置。
  6. 前記独立した流路内に、空気流を整流するための整流板を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の手乾燥装置。
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