JP3861191B2 - 廃水回収再利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガラス基板、液晶、半導体工業等の電子工業で排出され、シリカを多量に含む廃水の回収再利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の廃水は凝集沈殿法により処理され、液成分は性状によりそのまま放流されるか、または更に生物処理されて放流され、固形物は脱水機でスラッジとして取り出され、産業廃棄物処理業者に引き取り処分されていた。
【0003】
半導体のCMP(chemical mechanical polishing )廃水の一般的な処理方法を図5に示す。この処理方法では、廃水は、薬品注入装置(51)からH2 SO4 等の酸あるいはNaOH等のアルカリの添加により中和されるとともに、凝集剤注入装置(52)から高分子凝集剤あるいは無機系凝集剤の添加によって反応槽(53)内でフロックを生成する。発生したフロックは沈降槽(54)で沈降分離され、上澄み液は、必要に応じて更に廃水処理施設で生物処理され、排水として放流される。沈降槽(54)で分離されたフロック(フロック)は槽底部から引き抜かれ、フィルタープレス等の脱水機(55)で脱水され、ケーキ(スラッジ)として産業廃棄物処理業者に引き取られ処分される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境問題への関心の高まりから、工場からの産業廃棄物排出ゼロ化が求められており、特に半導体製造工場ではその意識が高い。また、ISO14001 (環境管理システムの国際規格)を満足するため、発生源である製造プロセスでの廃水対策が重要であり、排水についても有効利用(再利用化)による低減が望まれている。さらに、新規工場設置に当たっては、取水条件・排水条件とも厳しく規制されており、全体の水の有効利用が求められている。
【0005】
上述した従来の処理方法では、使用された水は排水として放流されている。
【0006】
ガラス基板、液晶、半導体とも生産性および歩留りを向上させるために、製造対象品はサイズの大きなものとなってきており(例えば液晶用ガラスは60mm×60mmのものが100mm×100mmに、ウエハは200mmφのものが300mmφになりつつある)、それに伴い使用される純水量が多くなっている。
【0007】
さらに、半導体分野では、製品の高度化に対応するため、CMP処理適用の対象範囲が広くなっていて、シリカを多量に含む排水の量が多くなりつつある。
【0008】
本発明の目的は、多量に使用されている水を回収して、純水製造の原水や、冷却塔補給水等の雑用水として再利用し、水を有効利用することができる廃水の回収再利用方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、シリカとSS成分を含む廃水を処理するに当たり、該廃水を中性にして溶解シリカが析出し易くするとともに、凝集剤を添加してSS成分をフロック化し、沈降槽でフロックを分離し、フロック分離後の上澄み液をアルカリ性に望ましくはpH9.5以上に調整し、蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を冷却器で冷却した後廃水側へ返送して処理する廃水回収再利用方法である。この方法は、廃水を中性にするpH調整装置と凝集剤を添加する凝集剤注入装置、これらの下流の凝集反応槽、上記フロックを分離する沈降槽、上記澄み液をアルカリ性にする薬品注入装置、上記蒸発器、上記冷却器から構成される廃水回収装置で実施され得る。
【0011】
請求項2記載の発明は、シリカとアンモニアを含む廃水を処理するに当たり、廃水をアルカリ性に望ましくはpH9以上に調整し、アンモニアストリッピング塔でアンモニアを除去し、アンモニア除去後の液を蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を廃水設備で処理する廃水回収再利用方法である。この方法は、廃水をアルカリ性にするpH調整槽、該廃水を熱回収する熱交換器、上記アンモニアストリッピング塔および上記蒸発器から構成される廃水回収装置で実施され得る。
【0012】
請求項3記載の発明は、シリカ、アンモニアとSS成分を含む廃水を処理するに当たり、廃水を中性にして溶解シリカが析出し易くするとともに、凝集剤を添加してSS成分をフロック化し、沈降槽でフロックを分離し、フロック分離後の上澄み液をアルカリ性に望ましくはpH9.5以上に調整し、アンモニアストリッピング塔でアンモニアを除去し、アンモニア除去後の液を蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を冷却器で冷却した後廃水側へ返送して処理する廃水回収再利用方法である。この方法は、廃水を中性にするpH調整装置と凝集剤を添加する凝集剤注入装置、これらの下流の凝集反応槽、上記フロックを分離する沈降槽、上記澄み液をアルカリ性にする薬品注入装置、該廃水を熱回収する熱交換器、上記アンモニアストリッピング塔、上記蒸発器、上記冷却器から構成される廃水回収装置で実施され得る。
【0013】
請求項4記載の発明は、蒸発器として多重効用蒸発器を用いる請求項1〜3のいずれか1項記載の廃水回収再利用方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
参考例1
図1はシリカを含む廃水の回収再利用方法を示すものである。
【0015】
pHが酸性あるいは中性でありシリカを飽和溶解度に近い濃度まで含む廃水を対象液として、これに薬品注入装置(1) からNaOHを添加し、pHを9以上に調整する。廃水中のシリカは、pHをアルカリにすることにより溶解度を増す。廃水の1/2量を回収再利用したい場合はpH9.1、2/3量を回収したい場合はpH9.7、3/4量を回収したい場合はpH10にそれぞれpHを調整する。
【0016】
こうしてpH調整した廃水を蒸留器(2) に供給する。蒸留器(2) として、この例では蒸気エジェクター式の3効用蒸発器を使用するが、これ以外の多段フラッシュ、単効用蒸発器等を用いても良い。蒸発器(2) の蒸留水は処理水槽(3) に貯えられ、その一部はボイラ(4) へ送られ、ここで得られた蒸気が蒸発器(2) の蒸気エジェクターに供給される。蒸発器(2) における蒸気の凝縮は冷却塔(5) から来る冷却水によって行われる。蒸発器(2) の蒸留水は、1/2量回収の場合、導電率10μS/cm以下の高純度であるので、これを純水製造の原水として再利用する。回収率が高くなっても水質的にはある程度高純度が保たれるので、上記蒸留水は純水製造の原水や、冷却塔補給水等の他の雑用水に再利用される。
【0017】
蒸発器(2) の濃縮水は、既設の排水処理設備へ送られて他の廃水と混合された後、適切に処理され放流される。
【0018】
実施例1
図2はシリカとSS成分を含む廃水の回収再利用を示す。
【0019】
pHがアルカリ性でありシリカを飽和溶解度に近い濃度まで含む廃水を対象液として、これに集水槽(6) において後述する蒸発器(12)の濃縮水が混合される。この混合液に薬品注入装置(7) からNaOHまたはH2 SO4 を添加し、pHを中性に調整する。pHを中性にすることによりシリカの溶解度を小さくし、シリカを凝集沈殿し易くするとともに、後工程への溶解シリカの持ち込み量をできるだけ少なくする。ついで、この混合液に凝集剤注入装置(8) から凝集剤例えば高分子凝集剤(PAC)、無機系凝集剤(塩化第二鉄)を注入し、全体を反応槽(9) で攪拌しSSフロックを生成させる。SSフロックを含む廃水を沈降槽(10)に送り、SSフロックを沈降分離する。沈降槽(10)で分離されたSSフロックは槽底部から引き抜かれ、脱水機(14)で脱水されスラッジ(ケーキ)として取り出される。このスラッジは、産業廃棄物処理業者により引き取り処分される。
【0020】
沈降槽(10)の上澄み液に薬品注入装置(11)からNaOHを添加し、pHを9.5以上に調整する。pH調整した上澄み液を蒸発器(12)に供給する。
【0021】
蒸発器(12)として、この例では蒸気エジェクター式の3効用蒸発器を使用するが、これ以外の多段フラッシュ、単効用蒸発器等を用いても良い。
【0022】
蒸発器(12)の蒸留水としてその1/2量が回収される。その水質は導電率10μS/cm以下の高純度であるので、これを純水製造の原水あるいは雑用水として再利用される。
【0023】
蒸発器(12)の濃縮水は、冷却器(13)へ送られて35℃に冷却される。冷却器(13)は、この例では冷却塔タイプのものであるが、シェル・アンド・チューブ式、プレート式のものであっても良い。
【0024】
廃水から持ち込まれるBOD、COD、TOC成分や添加薬品の塩濃度が系内である濃度以上にならないように、冷却された濃縮水の一部が強制的にブローされる。ブロー量は廃水中の不純物の量によって決まるが、例えば廃水流量の1/10量がブローされる。このブロー液は廃水タンク(18)に集められ、既設の廃水処理設備へ送られて他の廃水と混合された後、適切に処理され放流される。冷却され一部ブローされた残りの濃縮水は、集水槽(6) に返送される。
【0025】
実施例2
図3はシリカとアンモニアを含む廃水の回収再利用を示す。
【0026】
シリカを飽和溶解度に近い濃度まで含みしかもアンモニアを数百ppmまで含む廃水を対象液とし、これに薬品注入装置(19)からNaOHを添加し、pHを9以上に調整する。廃水中のアンモニアは、pHをアルカリにすることにより液中の気体成分の比率が大きくなるため、蒸気ストリッピングで除去し易くなる。
【0027】
pH調整した廃水を熱交換器(20)で熱回収し、アンモニアストリッピング塔(21)に供給する。同ストリッピング塔(21)は、下部からストリッピング蒸気を供給し、減圧下で操作する。減圧操作するために真空ポンプ(23)が設けてある。
【0028】
アンモニアストリッピング塔(21)でアンモニアを除去する。アンモニアを含む蒸気は塔頂から出て、熱交換器(20)で凝縮される。ストリッピング蒸気が多い場合は、これは更に熱交換器(22)で凝縮される。
【0029】
アンモニアを含むこの凝縮液は蒸発器(24)の濃縮水とともに廃水タンク(28)に貯えられた後、他の廃水と混合され、既設の排水処理設備で適切に処理され放流される。
【0030】
このアンモニアストリッピング塔でアンモニアを1ppm以下まで取り除いた廃水が蒸発器(24)に供給される。蒸発器(24)としてはこの例では蒸気エジェクター式の3効用蒸発器を使用するが、これ以外の多段フラッシュ、単効用蒸発器等を用いても良い。蒸留水として蒸発器(24)の供給水の1/2量が回収される。この回収蒸留水は、導電率10μS/cm以下の高純度であるので、純水製造の原水や他の雑用水(冷却塔補給水等)として再利用される。
【0031】
蒸発器(24)の濃縮水は、上述のようにアンモニアを含む凝縮液とともに既設の排水処理設備へ送られて他の廃水と混合された後、適切に処理され放流される。
【0032】
実施例3
図4は、シリカ、アンモニア、SS成分を含む廃水の回収再利用を示す。
【0033】
シリカとSS成分を多量に含みしかもアンモニアを数百ppmまで含む廃水を対象液とし、これを集水槽(29)で後述する蒸発器(39)の濃縮水と混合する。この混合液に薬品注入装置(30)からNaOHまたはH2 SO4 を添加し、pHを中性に調整する。こうしてpHを中性にすることにより、シリカの溶解度を小さくし、シリカを凝集沈殿し易くするとともに、後工程への溶解シリカの持ち込み量をできるだけ少なくする。
【0034】
上記混合液に凝集剤注入装置(31)から凝集剤例えば高分子凝集剤(PAC)、無機系凝集剤(塩化第二鉄)を注入する。凝集剤と廃水を反応槽(32)で攪拌しSSフロックを生成させる。SSフロックを含む廃水を沈降槽(33)に輸送し、SSフロックを沈降分離する。沈降槽(33)で分離されたSSフロックは引き抜かれ、脱水機(45)で脱水されスラッジとして取り出される。このスラッジは、産業廃棄物処理業者により引き取り処分される。
【0035】
沈降槽(33)の上澄み液に、薬品注入装置(34)からNaOHを添加し、pH9.5上に調整する。
【0036】
アンモニアは、pHをアルカリにすることにより液中の気体成分の比率が大きくなるため、蒸気ストリッピングで除去し易くなる。
【0037】
pH調整した上澄み液を熱交換器(35)で熱回収し、アンモニアストリッピング塔(36)に供給する。同ストリッピング塔(36)は、下部からストリッピング蒸気を供給し、減圧下で操作する。減圧操作するために真空ポンプ(38)が設けてある。
【0038】
アンモニアストリッピング塔でアンモニアを除去する。アンモニアを含む蒸気は熱交換器(35)で凝縮される。ストリッピング蒸気が多い場合は、更に熱交換器(37)で凝縮される。
【0039】
アンモニアを含むこの凝縮液は、後述の強制ブロー水とともに既設の排水処理設備へ送られて他の廃水と混合された後、適切に処理され放流される。
【0040】
このアンモニアストリッピング塔でアンモニアを1ppm以下まで取り除いた廃水が蒸発器(24)に供給される。蒸発器(39)としてはこの例では蒸気エジェクター式の3効用蒸発器を使用するが、これ以外の多段フラッシュ、単効用蒸発器等を用いても良い。
【0041】
蒸留水として蒸発器(39)の供給水の1/2量が回収される。この回収蒸留水は、導電率10μS/cm以下の高純度であるので、純水製造の原水や、冷却塔補給水等の他の雑用水として再利用される。
【0042】
蒸発器(39)の濃縮水は、冷却器(40)へ送られて35℃に冷却される。冷却器(40)は、この例では冷却塔タイプのものを使用しているが、シェル・アンド・チューブ式、プレート式のものを用いても良い。
【0043】
廃水から持ち込まれるBOD、COD、TOC成分や添加薬品の塩濃度が系内である濃度以上にならないように、冷却された濃縮水の一部が強制的にブローされる。ブロー量は廃水中の不純物の量によって決まるが、例えば廃水流量の1/10量がブローされる。このブロー液は、廃水タンク(44)に集められ、既設の排水処理設備へ送られて他の廃水と混合された後、適切に処理され放流される。冷却され一部ブローされた残りの濃縮水は、集水槽(29)に返送される。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、シリカを含む廃水を純水製造の原水や雑用水として再利用することができる。この再利用率は、実施例1では90%、実施例2では50〜75%、実施例3では60%である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1(シリカを含む廃水の回収再利用例)を示すフローシートである。
【図2】 実施例1(シリカとSS成分を含む廃水の回収再利用例)を示すフローシートである。
【図3】 実施例2(シリカとアンモニアを含む廃水の回収再利用例)を示すフローシートである。
【図4】 実施例3(シリカ、アンモニア、SS成分を含む廃水の回収再利用例)を示すフローシートである。
【図5】 CMP廃水の一般的な処理方法を示すフローシートである。
【符号の説明】
6,29:集水槽
1,7,11,19,,30,,34,51:薬品注入装置
8,31,52:凝集剤注入装置
9,32,53:反応槽
10,33,54:沈降槽
2,12,20,22,24,35,37:熱交換器
5,17,27,:冷却塔
13,40:冷却器
14,55:脱水機
3,15,25:処理水槽
4,16,26:ボイラ
18,28:廃水タンク
21,36:アンモニアストリッピング塔
23,38:真空ポンプ
39:蒸発器
Claims (4)
- シリカとSS成分を含む廃水を処理するに当たり、該廃水を中性にして溶解シリカが析出し易くするとともに、凝集剤を添加してSS成分をフロック化し、沈降槽でフロックを分離し、フロック分離後の上澄み液をアルカリ性に調整し、蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を冷却器で冷却した後廃水側へ返送して処理する廃水回収再利用方法。
- シリカとアンモニアを含む廃水を処理するに当たり、廃水をアルカリ性に調整し、アンモニアストリッピング塔でアンモニアを除去し、アンモニア除去後の液を蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を廃水設備で処理する廃水回収再利用方法。
- シリカ、アンモニアとSS成分を含む廃水を処理するに当たり、廃水を中性にして溶解シリカが析出し易くするとともに、凝集剤を添加してSS成分をフロック化し、沈降槽でフロックを分離し、フロック分離後の上澄み液をアルカリ性に調整し、アンモニアストリッピング塔でアンモニアを除去し、アンモニア除去後の液を蒸発器で処理し、蒸留水を回収再利用し、濃縮液を冷却器で冷却した後廃水側へ返送して処理する廃水回収再利用方法。
- 蒸発器として多重効用蒸発器を用いる請求項1〜3のいずれか1項記載の廃水回収再利用方法。
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