JP3860015B2 - 小型艇の操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、艇体にハンドルホルダを取付け、このハンドルホルダにステアリング軸を貫通させ、このステアリング軸の上端にハンドルを取付けた小型艇の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型艇の操舵装置として、例えば特開平11−11395号公報「小型船舶の操舵装置」が知られている。
上記技術は、同公報の図3及び図5によれば、操舵ハンドル22をステアリング軸21に取付け、ステアリング軸21を筒体20に挿入し、ステアリング軸21に形成したフランジ21aとステアリング軸21に係合させるCクリップ45とで筒体20を挟み込み、筒体20にステアリング軸21を回転可能に取付けたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような小型船舶の操舵装置では、軽量化を図るために又は腐食防止のために筒体20やステアリング軸21を樹脂で形成する。一般的に樹脂製の部品は、金属製の部品に比べて寸法精度は悪い。
上記の小型船舶の操舵装置では、長いスパンを有するとともに寸法のばらつきを有する筒体20を、ステアリング軸21のフランジ21aとステアリング軸21のCクリップ45とで挟み込む構造である。すなわち、筒体20(以下、「ハンドルホルダ」と呼ぶ)の上下間を挟み込む構造では、ステアリング軸21の寸法のばらつきをも有り、ステアリング軸の軸方向のガタは大きくなる。
すなわち、樹脂製の部品で構成する小型艇の操舵装置において、ステアリング軸の軸方向のガタを小さく設定できれる技術が望まれる。
【0004】
すなわち、本発明の目的は、ステアリング軸の軸方向のガタを小さく設定し、操作感を向上させた小型艇の操舵装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、艇体にハンドルホルダを取付け、このハンドルホルダにステアリング軸を貫通させ、このステアリング軸の上端にハンドルを取付けた小型艇の操舵装置において、ステアリング軸に一つの鍔又は溝を設け、この鍔又は溝にハンドルホルダに設ける保持部材を嵌合することのみで、ステアリング軸の軸方向の移動を規制したことを特徴とする。
【0006】
樹脂製の部品で構成する小型艇の操舵装置において、ステアリング軸の軸方向のガタを小さく設定できるとすれば、好ましいことである。
そこで、ステアリング軸に一つの鍔又は溝を設け、この鍔又は溝に保持部材を嵌合することのみで、この保持部材をハンドルホルダに取付けるようにした。
鍔又は溝は、幅を狭く設定できる形状であり、この幅を狭く設定した一つの鍔又は溝を保持部材で位置決めすることで、ステアリング軸の軸方向のガタを小さくすることができる。
すなわち、ステアリング軸に一つの鍔又は溝を設け、この鍔又は溝にハンドルホルダに設ける保持部材を嵌合することのみで、ステアリング軸の軸方向の移動を抑えるようにした。この結果、操作感を向上させた操舵装置を実現することができる。
【0007】
請求項2は、保持部材が、U字状部材であることを特徴とする。
保持部材をU字状部材にすることで、ステアリング軸の鍔又は溝に嵌合させやすい。この結果、操舵装置の組立性の向上を図ることができる。
請求項3は、ハンドルホルダは、艇体に支持させる筒部と、この筒部の上部に形成することで保持部材を支持する支持部と、この支持部から延出することでステアリング軸の軸部を回転自在に支持する軸受部とからなることを特徴とする。
請求項4は、保持部材を、ハンドルホルダにボルトで締付けることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る操舵装置を搭載した小型艇の側面図であり、小型艇10は、艇体11の前部11aに取付けた燃料タンク60と、この燃料タンク60の後方に設けたエンジン15と、このエンジン15の後方に設けたポンプ室16と、このポンプ室16に設けたジェット推進機17と、エンジン15に吸気側を取付けるとともに排気側をポンプ室16に取付けた排気ユニット18と、燃料タンク60の上方に取付けた操舵装置40と、この操舵装置40の後方に取付けたシート29とからなる。
【0009】
ジェット推進機17は、艇底12の開口13から後方へ延びたハウジング21を有し、このハウジング21内にインペラ22を回転自在に取り付け、インペラ22をエンジン15の駆動軸23に連結したものである。
ジェット推進機17によれば、エンジン15を駆動してインペラ22を回転させることにより、艇底12の開口13から吸引した水をハウジング21の後端開口を介して操舵管25から艇体11の後方へ噴射することができる。
【0010】
操舵管25は、ハウジング21の後端に左右方向にスイング自在に取付けた部材であり、操舵装置40の操作で左右方向にスイングすることにより艇体11の操舵方向をコントロールする操舵用のノズルである。
【0011】
すなわち、小型艇10は、燃料タンク60からエンジン15に燃料を供給してエンジン15を駆動し、このエンジン15の駆動力を駆動軸23を介してインペラ22に伝え、インペラ22を回転することにより艇底12の開口13から水を吸引し、吸引した水をハウジング21の後端を通して操舵管25から噴射して推進するジェット推進艇である。
【0012】
図中、11bは艇体11の上部を構成するデッキ、26は艇艇をバックさせるときに操舵管25に被せてジェット水流を前方斜め下方に流すためのリバースバケット、27は艇体11の電源であるバッテリ、33はリバースバケット26を操作する操作ノブ、34はエキゾーストパイプ、35はエキゾーストボディ、36はウォータマフラ、37はウォータロックパイプ、38はテールパイプ、39はレゾネータを示す。
【0013】
図2は本発明に係る操舵装置を搭載した小型艇の平面図であり、小型艇の操舵装置40(以下、「操縦装置40」と略記する)は、艇体11に回転自在に取付けるステアリング軸41と、このステアリング軸41に回転可能に取付けるハンドルホルダ42と、ステアリング軸41の上端に取付けるハンドル43と、このハンドル43の左右端部に取付けた左右のハンドルグリップ44L,44Rと、左のハンドルグリップ44Lの根元に設けたランヤードスイッチ付きメインスイッチ45と、右のハンドルグリップ44Rの根元にスイング自在に取付けたスロットルレバー46と、このスロットルレバー46からスッロトルに延ばしたスロットルケーブル47と、このステアリング軸41を支持するとともにハンドルホルダ42に保持する保持部材48と、から構成したものである。
【0014】
図3は本発明に係る操舵装置の要部を示す分解斜視図であり、ステアリング軸41、ハンドルホルダ42及び保持部材48を示す。
ステアリング軸41は、樹脂製の部材であり、ハンドル43を取付けるハンドル取付け部41aと、保持部材48を嵌合させる溝54と、ハンドルホルダ42に回転自在に嵌合させる軸部41cと、操舵用リンク(不図示)を取付けるリンク取付け部41dと、を備える。
軸部41cは、上部をストレートに形成し、中間にテーパに形成し、下部をストレートを形成することで、ハンドルホルダ42の軸受部57の形状に倣わせるようにした。
【0015】
ハンドルホルダ42は、樹脂製の部材であり、艇体11(図1参照)に支持させる筒部55と、この筒部55の上部に形成することで保持部材48を支持する支持部56と、この支持部56から下方に延出することで軸部41cを回転自在に支持する軸受部57と、からなる。
筒部55は、艇体11(図1参照)に取付けるために下部にフランジ55aを形成するとともにこのフランジ55aに取付け孔55b・・・(・・・は複数個を示す。以下同じ)を形成し、外周に剛性を向上するために複数の縦リブ55c・・・,55d・・・(1個のみ示す)を形成した。
【0016】
支持部56は、保持部材48を固定するためのボルト56a・・・を備える。また、56bはボルト56aに捩じ込むことでハンドルホルダ42に保持部材48を固定するナット、56cはボルト56a及びナット56bに介在させるワッシャである。
【0017】
図4は本発明に係る操舵装置の保持部材の平面図である。
保持部材48は、樹脂製の部材であるとともに平面視にてU字状に形成した部材であり、本体部48aと、この本体部48aに形成することでステアリング軸41の溝54(図3参照)に嵌合させ回転可能に支持する嵌合部48bと、ハンドルホルダ42のボルト56a・・・(図3参照)を貫通させる貫通孔48c,48c及び貫通孔48dと、本体部48aと嵌合部48bを仕切るリブ48eと、を形成したものである。
【0018】
すなわち、操舵装置40(図3参照)は、保持部材48がU字状部材であると言え、保持部材48をU字状部材にすることで、ステアリング軸41の溝54(図3参照)に嵌合させやすい。この結果、操舵装置40の組立性の向上を図ることができる。
【0019】
図5は本発明に係る操舵装置の保持部材の正面図であり、ここで、保持部材48の嵌合部48bの厚みをA1、ステアリング軸41の溝54の幅をA2、溝54と嵌合部48bとのクリアランスをαとすれば、A2=A1+αの関係が成り立つ。
一般的に、嵌合部48bの厚みA1は、保持部材48の剛性を維持できる最小寸法に設定すればよく、嵌合部48bを受ける溝54の幅A2(A2=A1+α)も小さな幅を設定すればよい。従って、寸法精度がばらつく樹脂製品でステアリング軸41やハンドルホルダ42(図3参照)を構成する場合にも、ステアリング軸41の軸方向のガタを小さく設定できる。
すなわち、操舵装置40は、例えば、ハンドルホルダの軸受部の上下間を挟み込む構造に比べ、ステアリング軸41の軸方向のガタを減少させることができる。
【0020】
図6は本発明に係る小型艇の操舵装置の側面断面図であり、操舵装置40の組立て状態を示す。
操舵装置40は、艇体11(図1参照)にハンドルホルダ42を取付け、このハンドルホルダ42にステアリング軸41を貫通させ、このステアリング軸41の上端にハンドル43(図1参照)を取付けた小型艇の操舵装置において、ステアリング軸41に溝54を設け、この溝54にハンドルホルダ42に設ける保持部材48を嵌合することで、ステアリング軸41の軸方向の移動を規制したものであると言える。
なお、57aは軸受部57上端にはめた上部カラー、57bは軸受部57下端にはめた下部カラーを示す。
【0021】
図7は図6の7矢視図であり、操舵装置の平面断面図を示す。
一般的に、樹脂製の部品で構成する小型艇の操舵装置において、ステアリング軸の軸方向のガタを小さく設定できるとすれば、好ましいことである。
そこで、ステアリング軸41に溝54を設け、この溝54に保持部材48を嵌合させ、この保持部材48をハンドルホルダ42に取付けるようにした。
図5に示した通り溝54は、幅を狭く設定できる形状であり、この幅を狭く設定した一つの溝54を保持部材48で位置決めすることで、ステアリング軸41の軸方向のガタを小さくすることができる。
【0022】
すなわち、ステアリング軸41に溝54を設け、この溝54にハンドルホルダ42に設ける保持部材48を嵌合することで、ステアリング軸41の軸方向の移動を抑えることができる。この結果、操作感を向上させた操舵装置40を実現することができる。
【0023】
以上に述べた操舵装置40の作用を次に説明する。
図8(a)〜(c)は本発明に係る小型艇の操舵装置の作用説明図であり、操舵装置の組立て手順を示す。
(a)において、ステアリング軸41の溝54に保持部材48を矢印▲1▼の如く嵌合させる。
(b)において、ステアリング軸41の軸部41cを矢印▲2▼の如くハンドルホルダ42の軸受部57に挿入するとともに、保持部材48の貫通孔48cにボルト56aを矢印▲3▼の如く貫通させ、ステアリング軸41及び保持部材48をハンドルホルダ42にセットする。
(c)において、ボルト56aにナット56bを嵌め込み、ステアリング軸41を保持部材48を介してハンドルホルダ42に回転可能に取付ける。
【0024】
図9は本発明に係る第2実施の形態の小型艇の操舵装置の側面断面図であり、操舵装置40(図6参照)に使用した部品と同一部品は同一符号を用い詳細な説明は省略する。
操舵装置50は、艇体11(図1参照)にハンドルホルダ52を取付け、このハンドルホルダ52にステアリング軸51を貫通させ、このステアリング軸51の上端にハンドル43(図1参照)を取付けた小型艇の操舵装置において、ステアリング軸51に鍔53を設け、この鍔53にハンドルホルダ52に設ける保持部材58を嵌合することで、ステアリング軸51の軸方向の移動を規制したものである。なお、58aは鍔53を嵌合するために保持部材58に形成した凹部である。
【0025】
ステアリング軸51に鍔53を設け、この鍔53に保持部材58を嵌合させ、この保持部材58をハンドルホルダ52に取付けるようにする。
すなわち、ステアリング軸51に鍔53を設け、この鍔53にハンドルホルダ52に設ける保持部材58を嵌合することで、ステアリング軸51の軸方向の移動を抑えることができる。この結果、操作感を向上させた操舵装置50を実現することができる。
【0026】
また、保持部材58は、図4に示す保持部材48と同様にU字状部材であり、保持部材58をU字状部材にすることで、ステアリング軸51の鍔53に嵌合させやすい。この結果、操舵装置50の組立性の向上を図ることができる。
【0027】
尚、実施の形態で図1に示すように、ステアリング軸41、ハンドルホルダ42や保持部材48を樹脂の部品で構成したが、これに限るものではなく、ステアリング軸、ハンドルホルダや保持部材を金属部品で構成したものでもよく、金属部品及び樹脂部品を適宜選択的に用いるものであってもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
鍔又は溝は、幅を狭く設定できる形状であり、この幅を狭く設定するとともに寸法のばらつきを考慮して保持部材を嵌合したとしても、鍔又は溝と保持部材と間のガタを小さくすることができる。
請求項1では、ステアリング軸に一つの鍔又は溝を設け、この鍔又は溝にハンドルホルダに設ける保持部材を嵌合することのみで、ステアリング軸の軸方向の移動を抑えるようにしたので、操作感を向上させた操舵装置を実現することができる。
【0029】
請求項2は、保持部材をU字状部材にしたので、ステアリング軸の鍔又は溝に嵌合させやすい。この結果、操舵装置の組立性の向上を図ることができる。
請求項3は、ハンドルホルダは、艇体に支持させる筒部と、この筒部の上部に形成することで保持部材を支持する支持部と、この支持部から延出することでステアリング軸の軸部を回転自在に支持する軸受部とから構成したので、ハンドルホルダを簡易な構成にすることができる。
請求項4は、保持部材を、ハンドルホルダにボルトで締付けたので、組付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る操舵装置を搭載した小型艇の側面図
【図2】本発明に係る操舵装置を搭載した小型艇の平面図
【図3】本発明に係る操舵装置の要部を示す分解斜視図
【図4】本発明に係る操舵装置の保持部材の平面図
【図5】本発明に係る操舵装置の保持部材の正面図
【図6】本発明に係る小型艇の操舵装置の側面断面図
【図7】図6の7矢視図
【図8】本発明に係る小型艇の操舵装置の作用説明図
【図9】本発明に係る第2実施の形態の小型艇の操舵装置の側面断面図
【符号の説明】
10…小型艇、11…艇艇、40,50…操舵機構、41,51…ステアリング軸、42,52…ハンドルホルダ、48,58…保持部材、53…鍔、54…溝。
Claims (4)
- 艇体にハンドルホルダを取付け、このハンドルホルダにステアリング軸を貫通させ、このステアリング軸の上端にハンドルを取付けた小型艇の操舵装置において、
前記ステアリング軸に一つの鍔又は溝を設け、この鍔又は溝にハンドルホルダに設ける保持部材を嵌合することのみで、前記ステアリング軸の軸方向の移動を規制したことを特徴とする小型艇の操舵装置。 - 前記保持部材は、U字状部材であることを特徴とする請求項1記載の小型艇の操舵装置。
- 前記ハンドルホルダは、艇体に支持させる筒部と、この筒部の上部に形成することで前記保持部材を支持する支持部と、この支持部から延出することで前記ステアリング軸の軸部を回転自在に支持する軸受部とからなることを特徴とする請求項1記載の小型艇の操舵装置。
- 前記保持部材を、前記ハンドルホルダにボルトで締付けることを特徴とする請求項1記載の小型艇の操舵装置。
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