JP3858320B2 - ガラスとポリアミドとの複合体及びその製法 - Google Patents
ガラスとポリアミドとの複合体及びその製法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は界面重縮合反応により得られるガラスとポリアミドとの複合体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドは汎用エンジニアリングプラスチックとして知られ、幅広い用途を有する。ポリアミドは、ガラスその他のフィラーを混合することにより、その機械特性等を向上させることは従来より知られている(「エンジニアリングプラスチック」、共立出版、高分子学会編集、1987年)。
【0003】
この様なガラスとポリアミドとの複合化方法としては、押出し機等を用いて、溶融ポリアミドとチョップドストランド等に代表されるガラス繊維とを混練し、両者の複合体を得る方法が広く用いられている。この方法では、ポリアミドを一旦、製造した後に、ポリアミドの融点以上の高温でガラスと複合化する。この方法は以下の欠点を有する。
【0004】
第一に、複合化工程に押し出し機等の加熱溶融混練装置を必要とし、またポリアミドの融点以上の高温条件を必要とし経済的でない。第二にガラス繊維による押し出し機のスクリュー摩耗を引き起こす。第三に、ガラスの分散が不均一になり易い。第四にガラスの導入によってもナイロン66等に代表されるポリアミドの硬度の上昇や線膨張係数の低下が十分に達成されない。
【0005】
ガラス以外の無機成分として、層状粘土鉱物を用いたポリアミドとの複合体の製造例が、特開昭62−74957号公報、特開昭64−11157号公報及び特開平2−69562号公報、特開平3−62846号公報、特開平6−248176号公報、特開平7−26123号公報に記載されている。
【0006】
これらに開示された製造方法は、層間に有機イオンを導入することによって有機分子との親和性を付与した粘土鉱物を、カプロラクタム等の自己縮合型のモノマーと混合せしめ、次いで得られた混合物を加熱してモノマーを重合して、層状粘土鉱物−有機ポリマー複合体を得るものである。
【0007】
この方法はポリアミドの製造と無機材料との複合化を一工程で終えることが出来るが、それでもポリアミドの高温での重合工程が必要であって、係る高温および/又は高圧下での反応操作は煩雑であり、かつ数時間以上の長い反応時間を要してしまう。更に、ガラスより高価な層状粘土鉱物を用いるために、製品コストを増大させるという欠点がある。また、これらの方法では硬度の上昇や線膨張係数の低下は十分に達成されない。
【0008】
最も安価な無機材料の一つとして、水ガラスが挙げられる。水ガラスは最も単純な形のガラスとされる。水ガラスは古くは中世期から知られ、資源が豊富で供給不安がない為、洗剤、土壌硬化剤、防火剤、耐火セメント材料の他、シリカゲル製造用の原料としても使用されている。
【0009】
しかしながら、水ガラスを従来の方法でポリアミドにフィラー材料として混合しても、アルカリ金属含有率が高いために、アルカリ金属塩としての性格が強く、十分な機械特性や電気絶縁性を与えない等の不具合を生ずる。またガラス組成中にアルカリ金属が存在すると、それが水酸化物もしくは炭酸塩などになり、これらのアルカリがガラスのケイ酸構造を破壊してしまう問題点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、加熱溶融装置を用いることなく、ポリアミドの製造とガラスとの複合化を同時に、常温で経済的に行い、しかも安価な水ガラスを直接に用いて、微細なガラスが均一に複合化してなる、硬度や線膨張係数に優れるガラスとポリアミドとの複合体の製法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水溶液相と有機溶液相の境界面にてモノマーを反応せしめる、いわゆる界面重縮合反応によりポリアミドを生成する際に、水溶液相中に水ガラスを共存させることにより上記の目的が達せられることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(1) 水、水ガラス、ジアミンモノマーを含む水溶液相(A)と、有機溶媒、アシル化したジカルボン酸モノマーを含む有機溶液相(B)とを接触させ、両溶液相の界面にてモノマーの重縮合反応を行わせる、ガラスとポリアミドとの複合体の製法、
【0013】
(2) 水ガラスがM2O・nSiO2の組成式で表わされ、ここで、Mがアルカリ金属であり、かつ、1.2≦n≦4であることを特徴とする(1)に記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法、
【0014】
(3) 水溶液相(A)中の水ガラスの濃度が4〜100g/L、ジアミンモノマーの濃度が0.01〜5モル/Lであり、有機溶液相(B)中のアシル化したジカルボン酸モノマーの濃度が0.01〜5モル/Lであり、−5℃〜40℃の温度で反応を行なうことを特徴とする(1)又は(2)に記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法、
【0015】
(4) ジアミンモノマーとして1,6−ジアミノヘキサンを、アシル化したジカルボン酸モノマーとしてアジポイルジクロライドを用いることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法、
【0016】
(5) ガラス中のアルカリ金属量が2重量%未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、水溶液相(A)と有機溶液相(B)の界面にて、モノマーの重縮合反応を行なってポリアミドを得るものである。この反応は、ショッテン−バウマン反応を有機ポリマー生成に応用したものであり、それぞれの相中の二官能性モノマーを重合させる、いわゆる界面重縮合反応として知られる。
【0019】
この反応により、水溶液相(A)中のジアミンモノマーと、有機溶液相中(B)のアシル化したジカルボン酸モノマーから、ポリアミドが常温で殆ど瞬時に得られる。また、本反応は重縮合反応であるにもかかわらず、実質的に非平衡反応であり、両モノマーのモル比は生成有機ポリマーの重合度にあまり影響しない。従って、両モノマーのモル比の厳密な管理が不要である。
【0020】
本発明に係るポリアミドは、界面重縮合反応で得られるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Journal of Polymer Science XL巻,329頁 1959年、Journal of Polymer Science 61巻,S59頁 1962年に記載の脂肪族鎖族及び/または芳香族環を有するポリアミドをその代表的な例として挙げることが出来る。
【0021】
中でも脂肪族鎖を有するポリアミドが好ましく、代表的なエンジニアリングプラスチックであるナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612が特に好ましい。例えば最も汎用されるナイロン66は、モノマーとして1,6−ジアミノヘキサンとアジポイルジクロライドの組み合わせから得ることが出来る。
【0022】
本発明では、これら界面重縮合反応を行う際に、水溶液相(A)に水ガラスを共存させることにより、ポリアミドの生成ならびにポリアミドとガラスとの均一な複合化を同時に行なうものである。本発明によれば水溶液相(A)と有機溶液相(B)との界面でのポリアミドの生成に伴い、反応系に存在する水ガラスが、常温かつ短時間で生成ポリアミドのマトリックスに均一に取り込まれる。
【0023】
水ガラスは、アルカリ金属(M)と珪素と酸素を主な構成元素とし、一般にM2O・nSiO2の組成式を有するガラスであり、水に対する大きな溶解度のため普通のガラスと区別される。尚、わが国では上記の水ガラスを水に溶解せしめた溶液を、水ガラスと呼称することが多いが、本発明においては水分を含まないガラス成分自身を水ガラスと定義する。
【0024】
係る水ガラスとしては、Mがナトリウムもしくはカリウムといったアルカリ金属であることが好ましく、また水への溶解性に優れる点でnの範囲が1.2≦n≦4であることが好ましい。水ガラスを各種の酸による加水分解や、シリル化といった前処理を一切必要とせずに、直接使用出来ることも本発明の特長の一つである。
【0025】
水溶液相(A)と有機溶液相(B)とは、予め別々に調製される。水溶液相(A)中の水ガラスの濃度としては4〜100g/L(L=リットル)の範囲が好ましい。ガラスの濃度が4g/L未満であると、ポリアミドへの十分な量の複合化が行なわれず、また、80g/Lを超えると溶液が高粘度化したり、あるいはガラスが均一に分散出来なくなる。また複合体中のガラスの含有率はガラスの濃度を調製することにより制御することが可能である。
【0026】
水溶液相(A)中のジアミンモノマーの濃度としては、重縮合反応が十分に進行すれば特に御制限されないが、0.01〜5モル/Lの濃度範囲が好ましい。水溶液相(A)は、水ガラス及びジアミンモノマーを水に添加して得られ、添加の順序は特に制限されないが、水ガラスの添加に際しては、予め水ガラスを水に溶解せしめた水溶液を用いることも可能である。
【0027】
例えば、日本工業規格(JIS K1408−1950)に記載の水ガラス1号、2号、3号、4号といった予め水に溶解せしめた水ガラス(M2O・nSiO2の組成式においてMがナトリウムであり、1.2≦n≦4である)を使用することが出来る。
【0028】
モノマーの重縮合反応を十分に促進させる目的で、水酸化ナトリウム等の酸受容体及び/又はラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤が添加されてもよい。酸受容体は反応により放出されるプロトンを中和し、また界面活性剤はモノマー間の接触効率を上昇させ反応を促進する。ただし、酸受容体、界面活性剤を用いなくともポリアミドの生成は十分に行える場合が多い。尚、水ガラス自身も塩基性であり、酸受容体としての作用も有する。
【0029】
各成分の水へ溶解は室温にて行なうことが可能である。得られた水溶液相(A)は均一透明であることが好ましい。また、有機溶液相(B)に使用する有機溶媒としては、一般的に界面重縮合に使用されるものでよく、例えばトルエン、キシレン、クロロホルム、シクロヘキサンを代表的な例として挙げることが出来る。有機溶液相(A)中のアシル化したジカルボン酸モノマーの濃度としては、重縮合反応が十分に進行すれば特に制限されないが、0.01〜5モル/Lの濃度範囲が好ましい。
【0030】
これら溶液相の調製法は、特に限定されるものではないが、例えば常温で溶媒中に上述の成分を添加、攪拌すれば良い。この際、各成分は予め該溶媒に溶解し溶液状態とした形で添加しても良い。水溶液相と有機溶液相はともに均一透明であることが好ましい。次いで、得られた水溶液相と有機溶液相を接触させて反応を行うが、水溶液相を有機溶液相に添加しても、逆に、有機溶液相に水溶液相を添加しても良い。添加は一度におこなっても、滴下によっても良い。
【0031】
反応温度としては、重縮合反応の速度が極めて速いため、例えば−5℃〜40℃の範囲で行なうことが可能である。従って、特に加熱設備を必要とせずに常温反応させることが出来る。反応時間としては、使用するモノマー種の反応速度にもよるが、通常水溶液相と有機溶液相を接触させることにより瞬時に沈殿が生成し、例えば2分以内で反応操作を終了させることができる。ここで反応時間を長くとることは一向に差し支えない。
【0032】
また、系を攪拌することは両溶液相(A)と(B)の接触効率を高める。前述の通り、水溶液相(A)に存在する水ガラスが、界面重縮合反応にて生成するポリアミドに均一に取り込まれ、ガラスとポリアミドとの複合体が得られる。通常、攪はん条件下では両溶液相(A)と(B)からなる混合溶液中は生成物を含む懸濁液である。
【0033】
本発明の特長のひとつは、水ガラスのポリアミドへの複合化に伴い、化1および化2に示すような、水ガラスの加水分解及び脱水縮合が進行し、アリカリ金属成分の極めて少ない良質のガラスとして複合体中に取り込まれることにある。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
【0036】
かくして得られた複合体は、反応後の混合液から複合体以外の成分を除去して分離される。分離の代表的方法としては、反応後の混合液を濾別する方法が挙げられる。濾別の後に未反応モノマーや副生成物完全に除去する目的で有機溶媒や水で洗浄する工程を導入しても良く、例えば先ずアセトンで洗浄し、次いで水洗後、濾別することも可能である。
【0037】
濾別の後は室温以上の温度で乾燥することが好ましい。乾燥は減圧もしくは真空下でおこなわれても良い。かかる濾別の際に、平面状のろ過器を用いて紙状の複合体を得ることが出来る。こうして得た複合体は通常パルプ様の固型物質として得られるが、ガラス含有率の増大にともない密度が増大する場合が多く、特にガラスの含有率が40重量%以上の複合体においてその傾向が顕著である。
【0038】
ここでいう複合体中のガラスの含有率の測定は、複合体を空気中で600℃以上の温度にて焼成することによりポリアミド成分を除去して灰分を測定することにより行える。焼成後の灰は焼成前と同一の形状を保ち、このことは無機成分であるガラスがポリアミドマトリックスに均一に分布していることを示す。
【0039】
灰分(重量%)は合成時の水溶液相(A)中の水ガラス濃度等の条件を設定することにより制御することが可能である。一般に、高い水ガラス濃度は高い灰分を与え、例えば、水溶液相(A)中の水ガラス濃度を8g/L、15g/L、40g/Lとすることにより複合体中の灰分を各々20重量%以上、40重量%以上、60重量%以上とすることが可能となる。
【0040】
前述の如く水ガラスは酸受容体として作用するため、水ガラス濃度の増大に伴いナイロン66等のポリアミドの収率が上昇する傾向も認められる。
複合体中のガラス成分を10nm〜300nmの球状粒子として得ることも可能であり、例えば灰分が55重量%未満の複合体で、このような複合体を得ることが可能であり、一般に灰分が大きい程、粒径は大きくなる。しかしながら、灰分の大小や形状によらず、複合体中のガラスとポリアミドとの接着性は非常に良好である。
【0041】
本発明の製法により得られた複合体のガラス中のアルカリ金属の量は、原料水ガラスのそれに比し低減されることは既に触れたが、具体的には複合体のガラス中のアルカリ金属量が2重量%未満である複合体を得ることが可能となる。係るガラス中のアルカリ金属量(重量%)は、原子吸光分析に代表されるフレーム分光法にて求まる複合体中のアルカリ金属量と灰分との比から求めることが出来る。
【0042】
アルカリ金属の除去された割合で換算すると、例えば、ガラス濃度を4〜100g/dLとすることにより、ガラス中のアルカリ金属を93%以上除去することが可能である。更に、ジアミンモノマーのモル数が水ガラス中のアルカリ金属のモル数と同数以上であり、かつ水ガラス濃度を7〜20g/dLとするとアルカリ金属を98%以上除去することが可能となる。特に後者の条件においては、ガラス中のアルカリ金属量を0.05重量%未満とすることも可能である。
【0043】
係るアルカリ金属の除去率(R)は、式1で定義した。
【0044】
【式1】
【0045】
式中、Wm=複合体中のアルカリ金属の重量%
Wa=灰分の重量%
Mm=水ガラスを構成するアリカリ金属(M)の原子量
Msi=酸化珪素の式量(=60.1)
n=原料水ガラスのSiO2/M2Oのモル比
【0046】
本発明の製法により得られた複合体の灰分が20重量%以上の複合体は、マトリックスポリアミドの融点以上の温度、例えば融点よりも100℃以上高い温度で、空気中もしくは不活性ガス雰囲気中で処理しても溶融することなく、その形状を維持することが出来る。
【0047】
こうした灰分の高い複合体の成形法としては、ポリアミドの融点以上の温度で10〜900MPaで圧縮成形して成形体を得る方法が挙げられ、このとき複合体は乾燥した状態であっても、複合体100重量部に対して20〜70重量部のアセトンや水等の液体を含む半固型様の状態であっても良い。
【0048】
後者の半固型のものは、特に灰分が40重量%以上の複合体の成形加工に有効であり、例えば上述の洗浄後の乾燥工程を省略することにより得られるが、一旦、乾燥した複合体を再び、アセトンや水等の媒質に分散させ、次いでろ過しても良い。灰分が15重量%以下の場合は、複合体は易溶融性で、圧縮成形性や射出成形性に優れ、例えば圧縮成形により均一なフィルムを得ることも可能となる。
【0049】
係る方法により機械特性、即ち、ダイナミック硬度(圧子を押し込んで行く過程の荷重と押し込み深さから得られる硬さで、塑性変形と弾性変形を共に含んだ硬度特性と定義される)で評価される表面硬度や線膨張係数で評価される線熱膨張特性に極めて優れる均一な複合体の成形体を得ることが出来る。
【0050】
特に、ナイロン66等のポリアミドの平板状の成形体は、汎用のガラスファイバー等による強化によっても線膨張係数、特に厚み方向の線膨張係数が十分に向上しないが、本発明によれば線膨張係数を大きく低下させ得る。また、本発明によれば、圧縮成形にて硬度や引っ張り特性に優れる厚みが50μm以下の薄膜状の複合体を得ることも可能である。
【0051】
本発明では、得られたガラスとポリアミドとの複合体を更にポリアミドと溶融混練して複合体中の灰分を調節することも可能である。例えば、灰分が50重量%以上の複合体と純粋なポリアミドとを溶融混練することにより灰分を15重量%以下の均一な複合体を得ることが出来る。また、ガラスとポリアミドとの複合体を、更に他種のポリマーと溶融混練してガラスとポリマーとの複合体を得ることもできる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、実施例はあくまでも本発明の代表的態様を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
実施例において評価に用いた測定法は以下の通りである。
【0053】
(1)灰分測定
灰分測定は、ガラスとポリアミドとの複合体中のガラスの含有率の評価に用いた。複合体を、空気中、800℃で3時間加熱し、ポリアミド成分を完全に焼失させた後、残量を測定し、重量変化から灰分を重量%として算出した。
【0054】
(2)ナトリウムの定量
複合体を硝酸、ついで塩酸で溶解してなる溶液を原子吸光法により分析し、ナトリウム(Na)量を求めた。Na量は灰分に対する重量%として算出した。
(3)光学顕微鏡観察
ニコン株式会社製 OPTIPHOT−POL を用い、400倍の倍率で観察した。
【0055】
(4)透過型電子顕微鏡観察
マイクロトームを用い、観察用試料を厚み75nmの超薄切片とした。得られた超薄切片を日本電子製JEM−200CXにて100000倍の倍率で観察した。
【0056】
(5)引っ張り特性
3mm幅のフィルム短冊を試験片とし、島津製作所製のオートグラフ2000を用い、初期ゲージ間隔10mm、引張り速度1mm/分で25℃にて引っ張り試験を行い、引っ張り弾性率および引張り強度をそれぞれ4つの測定の平均値として求めた。
【0057】
(6)動的機械特性
セイコー電子工業製のDMS200を用い、2℃/分の昇温速度、ゲージ長15mm、1Hzの引張りモード、窒素雰囲気下、25℃〜255℃の温度範囲で貯蔵弾性率を求めた。
【0058】
(7)硬度
島津製作所製のダイナミック超微小硬度計DUH−200を用いて、25℃での試験荷重10gfにおけるダイナミック硬度を求めた。
(8)線膨張係数
セイコー電子工業製のTMA/SS120Cを用い、空気中で2℃/分の昇温速度にて、−30〜30℃および100〜150℃の平均線膨張係数を各々測定した。該係数の計算は、ASTM、D696に記載の式によった。
【0059】
(実施例1)
水ガラスの水溶液(キシダ化学株式会社製、ケイ酸ナトリウム溶液(3号)組成式、Na2O・3.1SiO2、水分=60重量%)3.76gと、1,6−ジアミノヘキサン4.64gとに、室温で蒸留水を加えながら撹拌し、均一透明な300mLの水溶液相を調製した。また、アジポイルジクロライド7.32gに室温でトルエンを加えて撹拌し均一透明な200mLの有機溶液相を調製した。
【0060】
次いで1Lの容量のブレンダー瓶(Osterizer製)に水溶液相を入れ、付属の撹拌羽根を毎分10000回転で撹拌しながら、25℃にて有機溶液相を一度に加えた。混合溶液から直ちに白色の複合体が析出し、懸濁状態のまま2分間撹拌を続けた。得られた複合体を濾別したのち、沸騰アセトン、次いで蒸留水で洗浄し、引き続き真空中80℃で乾燥して白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。
【0061】
得られた複合体を290℃、20MPaで圧縮成形することにより、厚み120μmの均一なフィルムとした。フィルムの光学顕微鏡観察では、複合体の均一性が良好な為、ナイロン66のフィルムと区別できず、ガラスの存在は確認されなかった。透過型電子顕微鏡観察からは、ガラス成分が直径約100nmの球状のガラス微粒子として存在することが確認された。フィルムの引っ張り特性、硬度、動的機械特性を各々表2、表4及び図1に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1において水ガラスの水溶液3.76gを水ガラスの水溶液6.66gに代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。得られた複合体を290℃、20MPaで圧縮成形し、厚み2mmの複合体の平板を得た。得られた平板の線膨張特性、硬度を各々表3と表4に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1において水ガラスの水溶液3.76gを水ガラスの水溶液13.32gに代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。透過型電子顕微鏡観察からは、ガラス成分が直径約200nmの球状のガラス微粒子として存在することが確認された。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1において水ガラスの水溶液3.76gを水ガラスの水溶液30gに代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。得られた複合体をアセトン中に分散させた後、ろ過を行い、アセトン含有率が45重量%の半固型様の複合体を得た。
次いでこのものを、油圧プレス機にて320℃、800MPaの条件で圧縮成形し、厚み2mmの複合体の平板を得た。得られた平板の線膨張特性、硬度を各々表3と表4に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例1において水ガラスの水溶液3.76gを水ガラスの水溶液60gに代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例6)
実施例1で用いた水ガラスの水溶液3.76gと1,6−ジアミノヘキサン4.64gに室温で蒸留水を加えながら撹拌し、均一透明な40mLの水溶液相を調製した。また、アジポイルジクロライド7.32gに室温でトルエンを加えて撹拌し、均一透明な26.7mLの有機溶液相を調製した。次いで1Lの容量のブレンダー瓶(Osterizer製)に水溶液相を入れ、付属の撹拌羽根を毎分10000回転で撹拌しながら、25℃にて有機溶液相を一度に加えた。
【0067】
混合溶液から直ちに白色の複合体が析出し、懸濁状態のまま2分間撹拌を続けた。得られた複合体を濾別したのち、沸騰アセトン、次いで蒸留水で洗浄し、引き続き真空中80℃で乾燥して白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例7)
実施例1において水溶液相を、水ガラスの水溶液3.76gと1,6−ジアミノヘキサン4.64gと水酸化ナトリウム3.34gに室温で蒸留水を加えながら撹拌して得た均一透明な300mLの水溶液相に代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色の均一なガラスとポリアミドとの複合体を得た。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
(比較例1)
実施例1において水ガラスの水溶液3.76gを水ガラスの水溶液2.00gに代えた以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色のガラスとポリアミドとの複合体を得たが灰分は少量であった。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
ペレット状の純品のナイロン66(宇部興産製2020B)を、実施例1に記載の圧縮成形条件にてフィルム化した。フィルムの引っ張り特性、硬度、動的機械特性を各々表2、表4、図1に示す。また、同ナイロン66を、テクノプラス製射出成形機SIM4749を用い成形温度(シリンダー温度)=270℃、金型温度=80℃、射出圧力=43MPaで、射出成形して厚みが2mmのナイロン66の平板を得た。得られた平板の線膨張特性(厚み方向)を表4に示す。
【0075】
(比較例3)
旭ファイバーグラス製チョップドストランド(ガラス繊維、03−JA404、直径=10μm)と粒状の純品のナイロン66(宇部興産製2020B)とを所定の比率で、ツバコー製小型二軸押し出し機MP2015中で270℃にて溶融混練して、ペレット状のガラス繊維とナイロン66の複合体を得た。複合体の灰分は31.3%であった。次いで、得られたペレットを比較例2に記載の条件にて射出成形して、厚みが2mmの複合体の平板を得た。得られた平板の線膨張特性(厚み方向)、硬度を各々表3、表4に示す。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、加熱溶融装置を用いることなく、ポリアミドの製造とガラスとの複合化を同時に、常温で経済的に行い、しかも安価な水ガラスを直接に用いて、微細なガラスが均一に複合化してなる、硬度や線膨張係数に優れるガラスとポリアミドとの複合体の製法を提供することができる。
【0077】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1と比較例2で得たフィルムの動的機械特性における、温度と貯蔵弾性率の関係を示す図である。
Claims (5)
- 水、水ガラス、ジアミンモノマーを含む水溶液相(A)と、有機溶媒、アシル化したジカルボン酸モノマーを含む有機溶液相(B)とを接触させ、両溶液相の界面にてモノマーの重縮合反応を行わせる、ガラスとポリアミドとの複合体の製法。
- 水ガラスがM2O・nSiO2の組成式で表わされ、ここで、Mがアルカリ金属であり、かつ、1.2≦n≦4であることを特徴とする請求項1に記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法。
- 水溶液相(A)中の水ガラスの濃度が4〜100g/L、ジアミンモノマーの濃度が0.01〜5モル/Lであり、有機溶液相(B)中のアシル化したジカルボン酸モノマーの濃度が0.01〜5モル/Lであり、−5℃〜40℃の温度で反応を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法。
- ジアミンモノマーとして1,6−ジアミノヘキサンを、アシル化したジカルボン酸モノマーとしてアジポイルジクロライドを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法。
- ガラス中のアルカリ金属量が2重量%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のガラスとポリアミドとの複合体の製法。
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