JP3857660B2 - 収納部付きバルコニー隔壁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集合住宅のバルコニーを住戸間で仕切り、火災発生等の緊急時においては、避難経路を確保できるようにしたバルコニー隔壁、特に、収納部付きバルコニー隔壁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
実開昭55−85401号公報
【特許文献2】
特開2000−328647号公報
【0003】
火災発生等の緊急時に、破壊することによって避難経路を確保するボードの上部に、収納庫を設けた収納部付きバルコニー隔壁は、上記の特許文献1,2によって既に知られている。
【0004】
しかしながら、上記の収納部付きバルコニー隔壁は、何れも、バルコニーにおける未利用空間を収納スペースとして活用する点では優れているが、背の高いバルコニー隔壁の上部を収納スペースとして利用するものであり、バルコニーの天井高さも限られているので、長尺物の収納が可能な縦長の収納庫を構成できないという問題点があった。
【0005】
また、集合住宅のバルコニーには、火災発生等の緊急時における避難経路としての役割があるため、大きな収納庫を設置できないし、管理組合の規約等で美観を損ねる物の設置が制限されることが多く、単体では体裁の良い物品であっても、手摺り高さを遙かに越えるような物品を住戸によってバルコニーに設置したり、設置しなかったりすると、集合住宅の全体としての意匠性が損なわれることになるから、背の高い収納庫を設置することもできないという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点と、バルコニー隔壁が、機能上、背の高いものであることを考慮してなされたもので、その目的とするところは、長尺物の収納を可能にしながらも集合住宅の全体としての意匠性を損なうことがない収納部付きバルコニー隔壁を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、集合住宅のバルコニー隔壁を、建物にレリーズ機構を介して固定され、当該レリーズ機構を作動させることより前後何れの方向にも縦軸芯周りで揺動自在な且つバルコニー隔壁としての必要な高さを備えた壁状収納庫によって構成している(請求項1)。
【0008】
尚、レリーズ機構としては、緊急時に前後何れの側からも手動で作動でき、一旦作動させると元には戻らず、証拠が残るようになっており、このことによって防犯機能を果たすものであれば、任意の具体構造を採用でき、例えば、従来のバルコニー隔壁に使用されている珪酸カルシウムボードのような打ち破りボードを採用できる。
【0009】
前後何れの方向にも縦軸芯周りで揺動自在な壁状収納庫としては、請求項2に記載の発明のように、外壁側又は手摺り側の一側部を支点にして揺動自在なドア式に構成されているもの、請求項3に記載の発明のように、手摺り側の一側部を支点にして揺動自在な第1収納庫と外壁側の一側部を支点にして揺動自在な第2収納庫とにより観音開き式に構成されているもの、請求項4に記載の発明のように、幅方向の中央部を支点にして揺動自在な回転扉式に構成されているものの3タイプがあり、何れを採用してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、火災発生等の緊急時には、例えば、レリーズ機構を破壊して、壁状収納庫を押し動かす或いは引き動かすか、壁状収納庫を押し動かす或いは引き動かして、レリーズ機構を破壊し、壁状収納庫を縦軸芯周りで揺動させることにより、隣家への避難経路が確保できる。この場合、壁状収納庫は、ドア式、観音開き式、回転扉式の何れにおいても、前後何れの方向にも揺動開放させることが可能であるから、避難者の都合の良い方向に開放させればよく、避難経路の確保が容易であり、また、避難経路の高さ(上下幅)も十分あるので、避難が容易である。
【0011】
壁状収納庫は、バルコニー隔壁としての必要な高さ(一般的には、1800mm以上)を備えた縦長の収納庫となるので、ほうき、スポーツ用具等の長尺物を収納することが可能であり、それでいて、ビルトインタイプの収納庫となり、全戸に共通した設備となるので、集合住宅の全体としての意匠性が損なわれることがなく、外観上、問題にならない。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、本発明に係る収納部付きバルコニー隔壁Aの一例を示す。この収納部付きバルコニー隔壁Aは、集合住宅のバルコニー1の隔壁を、建物にレリーズ機構2を介して固定され、当該レリーズ機構2を作動させることより前後何れの方向にも縦軸芯周りで揺動自在な壁状収納庫3によって構成したものであり、具体的には、次のように構成されている。
【0013】
即ち、前記壁状収納庫3は、例えば塗装鋼板のような耐候性、耐久性がある不燃材により作製されたもので、図6に示すように、高さHと幅Wは、集合住宅のバルコニー隔壁として要求される高さ(例えば1800mm程度)と幅(例えば1000mm程度)に設定されており、厚さTは、収納庫として役立つ範囲で可及的に薄く(例えば200〜300mm程度)設定されている。壁状収納庫3の一側部は、外壁W側、つまり、戸境の位置にある柱4の外面に、双方向ヒンジ5によって取り付けられており、他側部は、レリーズ機構2によって手摺り6の立ち上がり部分(例えば、手摺り支柱や手摺り壁)に固定されている。そして、レリーズ機構1を作動させた状態においては、壁状収納庫3は双方向ヒンジ5を支点にして前後何れの方向にも揺動できるドア式とされている。
【0014】
レリーズ機構2としては、緊急時に前後何れの側からも手動で作動でき、一旦作動させると元には戻らず、証拠が残るようになっており、このことによって防犯機能を果たすものであれば、任意の具体構造を採用できるが、この例では、従来のバルコニー隔壁に使用されている珪酸カルシウムボードのような打ち破りボードによってレリーズ機構2を構成してある。
【0015】
双方向ヒンジ5は、図5(A),(B),(C)に示すように、固定側部材(柱4)に取り付けられる板片5aと、可動側部材(壁状収納庫3)に取り付けられる板片5bと、それらの間に位置する上下に分離した中間板片5c,5dと、上の中間板片5cの一端と固定側の板片5aの上半分とを枢着する軸5eと、上の中間板片5cの他端と可動側の板片5bの上半分とを枢着する軸5fと、下の中間板片5dの一端と固定側の板片5aの下半分とを枢着する軸5gと、下の中間板片5dの他端と可動側の板片5bの下半分とを枢着する軸5hとによって構成され、可動側の板片5bが固定側の板片5aに対して、縦軸芯P1 (軸5fと軸5g)周りで矢印a方向に揺動することと、縦軸芯P2 (軸5eと軸5h)周りで矢印b方向に揺動することとが可能な既知の構造のものであり、縦軸芯P1 ,P2 間に位置する各板片の幅T’は、前記壁状収納庫3の厚さTと等しく設定されている。尚、上下の中間板片5c,5dには、板片5a,5bに形成されたビス孔よりも大きなビス頭部挿通用の貫通孔が形成されている。
【0016】
図1〜図4の例では、壁状収納庫3として、図6に示すように、内部空間を中央で左右に区画し、各区画ごとに互いに反対側から開く扉3a,3bを設けて、隣接する2住戸で、半分ずつ使用するように構成したものを用いているが、図7に示すように、前面のみに扉3a,3bを設けて、内部空間の全部を1住戸で使用するように構成したものであってもよい。何れの場合も、壁状収納庫3の内部空間は、小物を収納できるように複数段に仕切るだけでなく、縦長の空間を併設するか、仕切りを取り外すことによって縦長の空間が形成されるようにするかして、ほうき、スポーツ用具等の長尺物を収納できるように構成してある。
【0017】
上記の構成によれば、平常時には、図1、図4の実線で示すように、バルコニー1が壁状収納庫3によって住戸ごとに区画されているが、火災発生等の緊急時には、例えば、レリーズ機構2を破壊して、壁状収納庫3を押し動かす或いは引き動かすか、壁状収納庫3を押し動かす或いは引き動かして、レリーズ機構2を破壊し、図3、図4の二点鎖線と破線とで示すように、壁状収納庫3を縦軸芯周りで揺動させることにより、隣家への避難経路が確保できる。この場合、ドア式の壁状収納庫3は、前後何れの方向にも揺動開放させることが可能であるから、避難者の都合の良い方向に開放させればよく、避難経路の確保が容易である。
【0018】
壁状収納庫3は、バルコニー隔壁としての必要な高さを備えた縦長の収納庫となるので、図2に示すように、ほうき、スポーツ用具等の長尺物7を収納することが可能であり、それでいて、ビルトインタイプの収納庫となり、全戸に共通した設備となるので、集合住宅の全体としての意匠性が損なわれることがなく、美麗な外観が得られるのである。
【0019】
尚、図1〜図4では、壁状収納庫3が外壁W側の一側部を支点として揺動する例を示したが、これとは逆に、手摺り6側の一側部を支点として揺動するように構成してもよい。
【0020】
図8、図9は、他の実施形態を示し、前記壁状収納庫3が、手摺り側の一側部を支点にして揺動自在な第1収納庫3Aと外壁側の一側部を支点にして揺動自在な第2収納庫3Bとにより観音開き式に構成されている点に特徴がある。レリーズ機構2は、第1収納庫3Aと第2収納庫3Bとの間に設けられているが、作動の痕跡(破壊)を前後何れの住戸からも確認できるように、前後両面に夫々設けられている。その他の構成、作用は図1〜図4の例と同じであるから、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0021】
図10、図11は、他の実施形態を示し、前記壁状収納庫3が、幅方向の中央部を支点にして揺動自在な回転扉式に構成されている点に特徴がある。この例によれば、壁状収納庫3の幅方向の中央部を同芯の縦軸(又は1本の縦軸)8で支持することにより、壁状収納庫3の揺動支点を構成できるので、複雑な構造の双方向ヒンジが不要であるが、壁状収納庫3が90度回転した状態において、壁状収納庫3の両側に避難経路として必要な幅(600mm程度)を確保できるだけのバルコニー幅が必要である。
【0022】
図示しないが、上述した各々の実施形態において、壁状収納庫3の下面にキャスターを設けて、実施してもよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、上述した構成よりなり、長尺物の収納を可能にしながらも集合住宅の全体としての意匠性を損なうことのない収納部付きバルコニー隔壁を実現できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る収納部付きバルコニー隔壁の一例を示す斜視図である。
【図2】 収納庫として使用した状態における斜視図である。
【図3】 避難経路を形成した状態における斜視図である。
【図4】 平面図である。
【図5】 双方向ヒンジの説明図である。
【図6】 壁状収納庫の一例を示す斜視図である。
【図7】 壁状収納庫の他の例を示す斜視図である。
【図8】 他の実施形態を示す正面図である。
【図9】 平面図である。
【図10】 他の実施形態を示す正面図である。
【図11】 平面図である。
【符号の説明】
A…収納部付きバルコニー隔壁、2…レリーズ機構、3…壁状収納庫。
Claims (4)
- 集合住宅のバルコニー隔壁を、建物にレリーズ機構を介して固定され、当該レリーズ機構を作動させることより前後何れの方向にも縦軸芯周りで揺動自在な且つバルコニー隔壁としての必要な高さを備えた壁状収納庫によって構成したことを特徴とする収納部付きバルコニー隔壁。
- 請求項1に記載の収納部付きバルコニー隔壁であって、前記壁状収納庫が、外壁側又は手摺り側の一側部を支点にして揺動自在なドア式に構成されている収納部付きバルコニー隔壁。
- 請求項1に記載の収納部付きバルコニー隔壁であって、前記壁状収納庫が、手摺り側の一側部を支点にして揺動自在な第1収納庫と外壁側の一側部を支点にして揺動自在な第2収納庫とにより観音開き式に構成されている収納部付きバルコニー隔壁。
- 請求項1に記載の収納部付きバルコニー隔壁であって、前記壁状収納庫が、幅方向の中央部を支点にして揺動自在な回転扉式に構成されている収納部付きバルコニー隔壁。
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