JP3857374B2 - 感光材料処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、閑散処理などの低処理時にも安定した処理性能を得ることができる感光材料処理装置に係り、例えば、プリンタプロセッサ、フィルムプロセッサなどに適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
写真感光材料を処理する処理槽に貯留されている現像液は空気と接触して、炭酸ガスを吸収しpHが変化したり、空気によって酸化し現像液内の保恒剤が減少するなどで組成が変化したりする。さらに、現像液等の処理液は写真感光材料の処理に適した温度に温調されているために、熱による劣化が生じ、これに伴う処理液の変質によって写真処理品質が低下することが、知られている。
【0003】
特に、処理すべき写真感光材料が少ない場合には、処理槽内において処理剤の成分の更新が進まず、また新しい処理剤が補充されないまま長期間保持されることになる。このため、処理槽に貯留された処理液の劣化が著しく進み、写真処理品質を一層悪化する。
【0004】
また、1日当たりの平均的な写真現像処理量に応じた処理能力を有する小型の感光材料処理装置(一般にミニラボと称する)が一般的に使用されているが、写真現像処理量が少ない場合には、1日当たりの処理によって感光材料処理装置に補充される新しい処理剤の量も少なくなるため、処理液の成分の更新も進み難い状況になる。従って、低処理量の感光材料処理装置では、通常の感光材料処理装置以上に貯留中の処理液を劣化し難くする工夫が必要になってくる。尚、感光材料処理装置を以下適宜、処理機と言う。
【0005】
従来から、こうした低処理量の処理機においては、処理槽等のタンクに貯留される処理液や補充液が空気と接触する開口部の面積をできるだけ小さくして、劣化を防ぐ工夫がされている。
【0006】
例えば、処理機の補充液用の補充液槽に、補充液の界面に浮上する浮き玉を入れて、補充液のpH変化や蒸発などを防止する対策がなされたものがある。
【0007】
さらに、このような処理機では、落とし蓋構造と称して、処理液の界面上部に位置する樹脂成形製の処理槽の天井部分を、処理液に没するまで低くして、処理液が空気と接触する面積を小さくする工夫がされている。また、処理槽と処理槽に入れられた処理ラックとの間の処理液が空気とできるだけ接触しないように、浮き蓋を処理ラックの回りに設けた構造のものもある。
【0008】
一方、成型品の処理ラック内に貯留される処理液の界面部分にあたる処理ラックの部分の肉厚を厚くしたり、処理ラックに詰め物をしたりして、処理液が空気と接触する面積を小さくするための工夫が行われているものもある。
【0009】
上記のように、処理槽や補充液槽内の処理液や補充液が空気と接触する開口面積をできるだけ小さくし、感光材料が処理液に出入りする部分以外の全てを外気から遮断するのが最も好ましいが、完全に空気を遮断することは困難である。また、処理液の劣化は熱によっても進行する。
【0010】
こうしたことから、処理液が使いきりでなくて処理量に応じた補充を行って処理液を適切な状態に維持するシステムにおいては、良好に処理液を維持できる感光材料の最低処理量が定められてくる。
【0011】
近年、さらに低処理量の処理機でも処理液を良好に維持するために、処理槽に補充される補充液によって処理液の成分の更新を一層進めるように、処理槽に貯留されている処理液の量をできるだけ少なくする工夫が考えられている。
【0012】
つまり、処理槽に貯留できる処理液の量を少なくすれば、補充薬剤が新たに投入されてから処理槽内に留まっている滞留時間が短くなり、結果として、処理槽が比較的新しい処理液で満たされるため、処理品質を良好に保つことができる。そして、従来からこの原理は知られており、母液量を少なくするために処理槽を感光材料が搬送される通路のみの形状にした、いわゆるスリット状の処理機として実現されている。
【0013】
一方、最近は処理の迅速化に伴って、処理液の温度を40℃近辺の高い温度として、処理が行われたり、低補充低廃液化のために補充薬剤の量の低減化が進みつつある。このため、ますます貯留液は劣化し易く、滞留時間が長くなる方向にある。
【0014】
その対応として、開口面積を一層低減するための構造や処理液の量を一層低減するための構造が、以下のように提案されている。
【0015】
第1の先行技術として、特公平7−74895、特公平7−74896、特公平7−109503、特開平6−83014、特開平6−83017、特開平6−289567、特開平6−332139、特開平8−171188号等の公報が知られている。
【0016】
これらの公報には、処理液がポンプで入れられる処理槽及び、処理槽より外せる処理ラックを有し、これら処理ラックと処理槽との間で小液量を保持し、処理ラックと処理槽の間を感光材料が移動する構造とされ、感光材料の搬送路にある処理液が、全処理液の4割以上を占めるものが開示されている。また、US5418592のように、感光材料の搬送路の厚さが感光材料の厚さの100倍以下の狭いものもある。
【0017】
第2の先行技術として、特開平8−160588号公報が知られている。
この公報には、現像処理槽に貯留されている液量が循環流路にある液量より少なくされ、処理槽の内壁の一部が感光材料の搬送ガイドを兼ねており、さらに、処理槽の液を外気から遮断する蓋部材が感光材料の搬送路の一部を構成している構造が、開示されている。
【0018】
通常の処理機は、処理液が貯留された処理槽内に、感光材料を搬送する機能を持たせた処理ラックを浸漬して、処理液中の搬送を行う構造となっているが、これらはいずれも感光材料を通過させるためのガイド部材を処理槽の一部が兼ねる構造である。
【0019】
そして、処理ラックと処理槽の双方に搬送機能を持たせて処理槽全体の構造を簡略化し、感光材料が搬送されながら処理される部分以外に貯留された不要な処理液をできるだけ少なくし、処理液を低減したものである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図28及図29に示すように、感光材料の搬送に寄与する部分であるガイド片23、25を処理槽54に設けた場合、処理槽54に高い寸法精度が要求されるようになる。つまり、取り外しが可能な部材である処理ラック52と処理槽54との間に、ジャミングすることなく安定して感光材料を通過させるためには、極めて高い寸法精度が必要である。尚、図上、処理ラック52に、搬送ローラ13、13a及び搬送ローラ13、13aを駆動回転するギヤ15が配置されている。
【0021】
そして、処理ラックや処理槽は樹脂材料で通常造られ、処理液を温調した時に生じる樹脂の熱膨張をも考慮しなければならないが、処理ラックのサイズが大きくなると、熱膨張の影響はより大きくなる。さらに、処理ラックと処理槽の材質が異なれば熱膨張率も異なるため、使用時の寸法精度を高めることは容易ではない。
【0022】
従って、熱膨張を小さくするために、処理ラックや処理槽に採用される樹脂に、ガラス繊維などの各種繊維で強化された樹脂や各種フィラーが添加された樹脂を使用しても良いが、このようなガラス繊維等が含まれた樹脂材料を使用して高い寸法精度を得ようとすると、コストアップになるという問題がある。
【0023】
さらに、感光材料が通過する部分の処理液の量を限られた量にすることは、感光材料と接触した反応済みの処理液の拡散を阻害し、処理ムラや処理進行速度の低下を生じ易くなる。
【0024】
この対策として、処理液用のノズルの工夫、処理液の循環流量の増加、処理時間の調整、処理液成分の改良、処理温度などの処理条件の改良など、処理機のみならず処理剤の改善が必要になってくる。この為、処理機のコストアップや現行の処理剤とのコンパチビリティーが失われるなどの問題を生じてくる。
【0025】
この一方、第1の先行技術では、感光材料の搬送路の厚さが感光材料の厚さの100倍以下で、感光材料の搬送路にある処理液が全処理液の4割以上を占めるという条件がある。すなわち、感光材料の厚さが決定されれば、全処理液(母液)の量の最大値が決まり、より少ない処理液が適していることを示している。
【0026】
また、第2の先行技術では、現像主薬の酸化物が蓄積されにくい条件として、母液容量と補充容量の比が100未満という指摘が示されている。補充される液量は処理の処方によって決定されるため、おのずと母液容量の最大量が限定され、例えば10mlの補充量で母液1000ml未満になる。
【0027】
これらが指摘するように、母液容量(循環流路や処理槽に連通している部分を含む処理槽に貯留される液量)が、補充液量に対してあまり大き過ぎると、新液との置換に長期間かかり、母液の状態を良好に保つことができなくなる。
【0028】
このことは、従来から処理量に応じて適切な母液量の処理機が造られてきた現状を言い換えているに過ぎない。すなわち、現行の処理機より低処理量の処理機を造ろうとした場合、より少ない母液量にしなければ、処理液を良好な状態に維持できないことになり、近年、前記公報のような出願が多くなってきた。
【0029】
しかし、さらに低処理量の処理機は、母液量が一層少なくなるため、処理液の滞留時間が短く熱劣化の影響を受けにくいという長所を有するが、補充液注入時の温度変動や母液濃度の変動を受け易い、処理槽に液が少ないため均一な処理液の攪拌がし難い、蒸発やキャリーオーバーなどによる処理槽の液面変動が大きくなり易く処理時間を一定に維持するのが難しくなるため、感光材料の搬送速度が遅いと液中時間が不安定になる、などの問題点を生じる。
【0030】
本発明は上記事実を考慮し、全体としては処理液量を低減し、かつこれらの問題点をも解消することができる感光材料処理装置を得ることを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
請求項1による感光材料処理装置は、処理液が貯留される処理槽と、
処理槽内に設置されて処理液が内部を流通し感光材料を搬送し得る処理ラックと、
処理ラックに設けられ且つ処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を直接に処理槽の外部に送り出す通路と、
通路を経由した処理液を処理槽の外部との間で循環する循環系と、
を備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項2による感光材料処理装置は、処理槽と処理ラックとが一体的に形成されたことを特徴とする。
【0033】
請求項3による感光材料処理装置は、処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと一体に形成されているか、もしくは処理ラックに取り付けられたことを特徴とする。
【0034】
請求項4による感光材料処理装置は、処理液が貯留される処理槽と、
処理槽内に設置されて処理液が内部を流通し感光材料を搬送し得る処理ラックと、
処理ラックが処理槽の壁部と部分的に緊密に接する構造において、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成され且つ処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を処理槽の外部に送り出す流路となる循環経路と、
循環経路を経由した処理液を処理槽の外部との間で循環する循環系と、
を備えたことを特徴とする。
【0035】
請求項5による感光材料処理装置は、処理ラックの内部に貯留された処理液の液面の高さが、処理ラックと処理槽の壁部で囲まれる部分に貯留された処理液の液面の高さよりも、1mm以上高くされたことを特徴とする。
【0036】
請求項6による感光材料処理装置は、処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと一体に形成されているか、もしくは処理ラックに取り付けられたことを特徴とする。
請求項7による感光材料処理装置は、処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成された循環経路に設けられたことを特徴とする。
【0037】
請求項1に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
処理液が貯留される処理槽内に感光材料を搬送する処理ラックが設置され、この処理ラックに処理液が内部を流通し感光材料を搬送する。また、処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を直接に処理槽の外部に送り出す通路が、処理ラックに設けられ、通路を経由した処理液を循環系が処理槽の外部との間で循環する。
【0038】
つまり、従来の処理機では、感光材料が搬送される搬送路内にある処理液をできるだけ低減し、結果として、処理液の滞留時間を小さくしようというものであった。一方、循環経路内の処理液量を液循環に必要な量以上に多くすることは、液の滞留時間が長くなる為、好ましいことではない。
【0039】
そこで、本請求項では、処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を直接に処理槽の外部に送り出す通路が、処理ラックに設けられ、通路を経由した処理液を循環系が処理槽の外部との間で循環する構成となっているので、安定して良好な処理が行えるだけの十分な液量を処理槽内に確保し、全体の液量も現行より少な目にし、液の滞留時間も短縮して、処理液を良好な状態に保持するようにした。
【0040】
すなわち、これまでの処理機は、感光材料の処理槽と循環経路とが個々に独立していて、それぞれ液量を求められる構造になっていたが、本請求項は、処理槽の中の感光材料を搬送するための構造部材が、循環経路の一部を有する構成とした。
【0041】
また、本請求項は、前記公報と異なって、処理槽の内壁の一部を感光材料の搬送ガイドにすることはなく、処理ラックを出し入れできる構造になっていて、処理槽に別途入れられた処理ラックの内部を感光材料が搬送されるようにした。
【0042】
つまり、処理ラックと処理槽の間の隙間を寸法精度よく成形加工により作ることは、量産適性がなくコストアップになる。このため、従来通り処理ラックを処理槽に沈めてこの処理ラック内で感光材料を搬送する構造とした。
【0043】
さらに、従来の特にフィルムプロセッサの処理ラックでは、循環される処理液が感光材料に到達するまでは、アジテーションと称して専用のダクトやノズル流路を設けて循環ポンプから処理液を移送して、感光材料に吹き付けを行っている。しかし、この場合、処理液が感光材料と接触した後は、処理ラックの隙間など処理ラックに設けられた複数の開口部から処理ラックの外部に押し出されることになる。
【0044】
前記公報のように処理ラックと処理槽とで挟まれる空間内を感光材料が搬送される構造の処理機では、処理槽側に別途設けられた空間を処理液が循環するようになっている。
【0045】
これに対して本請求項の処理機では、処理ラックを処理槽に浸漬した時に、処理ラックと処理槽との間に生じるデッドスペースが、処理液の循環ルートとして有効に活用されることになる。さらに、処理ラックから処理槽に処理液が直接漏れ出ないように処理ラックを形成した場合、処理ラック内の予め決められたルートを通って処理液が循環ポンプに戻っていくようになる。
【0046】
本請求項のような構造の処理ラックにすることで、従来デッドスペースに溜められていた処理液を減らすことができるばかりか、感光材料と接触した後の処理液の拡散や循環を効率良く行うことが可能になり、先の短所を解消することができるようになった。
【0047】
また、前記公報に示される処理機の構造のように、処理槽側に複雑な処理液の循環ルート及び、感光材料を搬送するためのガイド部材や機構を、設けなくてもよい。
【0048】
請求項2に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
請求項1と同様の構成を有し同様に作用する。但し、本請求項は、処理槽と処理ラックとが一体的に形成される構成を有する。この為、処理機から個々に処理槽の取り外しが可能になる。
【0049】
請求項3に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
請求項1及び請求項2と同様の構成を有し同様に作用する。但し、本請求項は、処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと一体に形成されているか、もしくは処理ラックに取り付けられた構成であるので、処理液量を低減できるようになった。この構造には、例えばY型ストレーナーも考えられる。
【0050】
すなわち、従来の処理機では、循環フィルタを処理槽と別途設けられたサブタンクに装備したり、循環フィルタを処理槽と循環流路に繋がる温調槽との間に設けるなどの構造とされていた。これに対して、本請求項の場合は、処理ラックの一部に処理液の流路となる通路を形成しているため、この部分に循環フィルタを直接設置することができる。従って、循環フィルタを取り付けるサブタンクが不要になり、処理液量を低減できるようになった。
【0051】
請求項4に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
請求項1と同様の構成を有し同様に作用する。但し、本請求項は、通路の替わりに、処理ラックが処理槽の壁部と部分的に緊密に接する構造において、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成され且つ処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を処理槽の外部に送り出す流路となる循環経路を有する構成とされる。従って、ポンプへの戻り液は、処理槽と処理ラックとによって形成された空間を通るため、処理槽外の配管が少なくなり、放熱が抑制されて、母液量を低減しても処理液の温度を一定に維持し易くなった。
【0052】
請求項5に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
請求項4と同様の構成を有し同様に作用する。但し、本請求項は、処理ラックの内部に貯留された処理液の液面の高さが、処理ラックと処理槽の壁部で囲まれる部分に貯留された処理液の液面の高さよりも、1mm以上高くされた構成を有する。
【0053】
処理槽と処理ラックとの間で挟まれる隙間が、処理液の循環流路とされ且つ、この部分の液面が解放状態とされる場合、感光材料が通過する部分の液面を、この液面より1mm以上、好ましくは2mm以上高くすることで、処理液の循環がスムースになる。つまり、界面差が1mm未満の場合、感光材料の通路側へ逆流する液が多く、液の攪拌や分散が不十分になり、先に指摘した問題点が解消できない。
【0054】
尚、十分な液面差を生じさせるには、必要な液面差が生じるまで循環流量を増加させても良く、感光材料の搬送側と循環流路側の間の開口面積や両者の容量のバランスを適切に調節することでも良い。
【0055】
また、請求項6に係る感光材料処理装置は請求項3と同様に作用する。
請求項7に係る感光材料処理装置の作用を以下に説明する。
請求項4とほぼ同様の構造を有するが、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成された循環経路に、処理液を濾過する循環フィルタを設けた。これによって、処理ラックが処理槽に入ったままで循環フィルタを直接引き抜くことができる。
【0056】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態に係る感光材料処理装置を図1に基づき説明する。
【0057】
本実施の形態では、処理液が内部を流通し感光材料を搬送し得る処理ラック52の両サイドが、処理槽54に部分的に緊密に接し(図示せず)、処理液を循環する循環経路56を処理ラック52と処理槽54との間に形成する構造になっており、そして、処理液を濾過する循環フィルタ58は処理ラック52の両サイドにそれぞれ取り付けられている。
【0058】
また、一対の循環経路56は処理ラック52の下部に位置するヒーター60にそれぞれ繋がっている。さらに、このヒーター60の中央部から延びる循環系であるパイプ62が、循環ポンプ64及び処理槽54の中央部を通過して、処理ラック52の中央部に繋がっている。
【0059】
以上より、本実施の形態では、従来技術の構造に比べて、温度センサ、フロートスイッチ、循環フィルタなどを装備したサブタンクがなくなり、母液容量を低減することができる。さらに、サブタンク内の処理液が外気に接触する開口面積も、低減することができた。
【0060】
尚、サブタンクに設置されていた温度センサはパイプ62に直接設置され、同じくフロートスイッチは循環ポンプ64の空回し防止用とされていたが、本実施の形態では循環ポンプ64自身に空運転検出機構を設けた構造とした。例えば、循環ポンプ64の空回し検出は、モーターのトルク検出やインピーダンスプロテクト機構を用いても良いが、循環ポンプ64の近傍に液の有無を検出する液センサを設けてもよい。つまり、液センサとしてホットサーミスタを用いても良く、直径1mm程度のサーミスタ素子のプローブを取り付けるだけで液の有無を検出することができる。ホットサーミスタは、例えば(株)芝浦電子製作所のものが使用できる。
【0061】
また、処理液を加熱する為のヒーター60はパイプ式のヒーターを使用した。ここでヒーター60には鋳込みヒーターが用いられ、過熱時や空炊き防止用の安全サーモは鋳込みヒーターに直接設けた。さらに、液面高さの検出が必要な場合、小型で設置面積を必要としないホットサーミスタセンサによる液面検出センサを用いることができる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る感光材料処理装置を図に基づき説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0063】
本実施の形態に係る感光材料処理装置は、図2に示すように、処理ラック52の中に形成された通路66を通って処理槽54の外部の循環系であるパイプ62に接続される構造になっている。そして、循環フィルタ58は処理ラック52の両サイドにそれぞれ取り付けられている。
【0064】
以下、本実施の形態の具体的な構造を説明する。
図3から図6に示すように、処理ラック52を構成する内箱12内には、感光材料であるフィルムLを浸漬処理しながら搬送する処理室14が形成され、処理室14には一対のガイド溝15が形成されている。一対のガイド溝15は、フィルムLの両端部、即ちパーフォレーションの形成位置の近傍を囲むようにしてガイドするためのものである。
【0065】
一対のガイド溝15は、フィルムLのガイドを行うものの矢印A、B方向に搬送する機能は有していない。そこで、駆動ローラ16aとこの駆動ローラ16aにフィルムLを圧接させるローラ16b、16cとにより構成した3組のフィルム搬送手段が縦方向に設けられている。
【0066】
フィルムLは回転する駆動ローラ16aとローラ16bとに挟持されることにより、矢印A方向に搬送され、回転する駆動ローラ16aとローラ16cとにより矢印B方向に搬送される。
【0067】
また、内箱12を収納する外箱13と内箱12との間には、ゴム、エラストマー等により構成されるパッキン70が配置されており、外箱13と内箱12との間に形成された通路66に処理室14内から処理液を流す流通孔25が内箱12に形成されている。
【0068】
そして、この流通孔25を覆うように循環フィルタ58が配置されており、この循環フィルタ58の上部に循環フィルタ58を取り出すためのハンドル58Aが形成されている。
【0069】
次に、処理室14内への処理液の供給について説明する。
外箱13の下端には処理液供給口21が設けられ、この処理ラック52を現像槽54に収容する際に、図4に示すように、現像槽54の下端に形成した処理液供給口22に連通するように嵌め込まれる。この結果、処理液は矢印Cで示すように、処理液供給口22、21を介して外箱13と内箱12との間の空間、即ち、処理液供給路23内に流入するようになる。処理液は、図示を省略したポンプ等により加圧状態で給液される。
【0070】
一方、内箱12にはフィルムLの幅方向に延びる処理液噴出用スリット24が所望間隔で形成され、処理液供給路23内に流入した処理液を搬送中のフィルムLの表面に噴出させるようになっている。
処理液噴出用スリット24は、図3に示すように、フィルムLに向けて言わば弓形に形成されているので、中央部から噴出した処理液はフィルムLの表面に直角に衝突するように流動する。これに対し、処理液噴出用スリット24の両端から噴出した処理液は、フィルムLの両端部に向けて斜めに衝突することにより両端方向に逃げ易くなる。
【0071】
そして、流通孔25及び循環フィルタ58を通過して通路66に送られるようになる。
【0072】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る感光材料処理装置を図に基づき説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0073】
本実施の形態に係る感光材料処理装置は、図7及び図8に示すように、処理ラック52の一方の側板に駆動ローラ等を回転するための駆動伝達機構74が配置され、循環フィルタ58が処理ラック52の他方の側板に取り付けられている。
【0074】
本実施の形態のように、最初からある程度の処理液が処理槽54に漏れ出してもかまわない構造の場合は、単に、処理ラック52と処理槽54が緊密に接して液の流れの抵抗になるようにL字形やU字形に双方のガイドを成形して、嵌め込むようにしてもよい。また、処理ラック52の出し入れ時に、処理ラック52と処理槽54との接合部で処理液の出入口がある場合は、Oリングなどのパッキンを使用することができる。
【0075】
本構造では、感光材料に吹き付けられた処理液が感光材料の幅方向に全て拡散するようになる。また、処理ラック52の側板を処理液の流路にした為、感光材料に吹き付けられた処理液が効率よく循環する。
【0076】
さらに、同側板に設けた穴の大きさや形状、配列を調節することにより、処理ムラや階調などの処理品質を調節することが可能になった。
【0077】
従来技術の構造では、感光材料に吹き付けられた処理液が、最終的に処理ラック52の片側に設けたサブタンク側へと流れるようになっているが、感光材料に吹き付けられた直後の処理液は、四方八方へと拡散して処理ラック52のさまざまな隙間や開口部から流れ出ることになる。
【0078】
本構造を従来技術の構造に比べると、サブタンクがなくなり、処理液の循環部分の配管も大幅に簡略化されると共に短縮された為、母液容量を大きく削減することができた。また、母液容量を削減しても、感光材料が通過する部分の容量を必要があれば、従来技術の構造並にすることができる。
【0079】
これによって液の攪拌を阻害することなく、スリット状の処理機に見られる問題点を解消することができた。
【0080】
つまり、スリット状の処理部では、搬送される感光材料に吹き付けられた処理液が、感光材料の搬送方向など感光材料の移動方向に拡散するか、或いは感光材料の幅に沿って移動して感光材料の端部にて感光材料の裏側に回り込んで感光材料の反対側から循環流路に送られることになる。そして、感光材料の搬送方向に沿って拡散する場合は、吹き付けられる処理液を阻害するため、処理効率の低下になる。また、感光材料の裏側まで吹き付けられた処理液が回り込む場合は、抵抗が大きくなってポンプに高い能力が要求される。
【0081】
本実施の形態では、感光材料の裏側にまで回り込むことなく、感光材料の幅方向に沿って拡散し、循環流路へ送られる構造である。この構造によって、配管抵抗も少なく、処理効率も高く極めて良好な処理を実現することができた。
【0082】
また、従来技術の構造と同様に処理ラック52の中を感光材料が搬送されるため、処理ラック52と処理槽54の間に設けた隙間を搬送する構造と異なって、製作が容易であった。
【0083】
本実施の形態によれば、従来全くデッドスペースになっていた部分を合理的に循環や処理液拡散、均一化、フィルタ58などの機能をもったスペースとして利用でき、別途用意されていたサービススペースの容積の減少が可能になった。
【0084】
尚、リーダーを処理ラック52の中央部に設けたベルトやスプロケットで駆動する方式のフィルムプロセッサの場合は、第1及び第2の実施の形態のように、処理ラック52の両サイドに処理液の戻り用の配管を形成することができる。しかし、本実施の形態のように、処理ラック52の片側よりギヤ等で駆動を伝達する方式のフィルムプロセッサの場合、駆動を伝達する側には循環フィルタ58を設置し難いため、駆動の伝達機構のない側に循環フィルタ58を設置することが好ましい。
【0085】
この場合に、駆動伝達側では処理ラック52の側板に設けられた回転軸の軸受け部分を完全にシールすることはコストアップになる。このため、通常の公差の軸受けを用いたが、通常の公差の軸受けでも、循環フィルタ58側のように故意に流路用の穴を設けなければ、処理ラック52内に噴射された循環処理液の多くは抵抗の少ない循環フィルタ58側へと循環する。そして、軸受けや処理ラック52の隙間より漏れた少量の液も、処理ラック52と処理槽54の間にプールされて少しづつ循環路へ戻っていくことになる。
【0086】
このように、循環フィルタ58は循環される処理液の一部が通過する処理ラック52のいずれかの部分に取り付けても良い。また、循環フィルタ58は処理ラック52を処理槽54から引き抜いてから処理ラック52にはめ込む方式でも良いが、処理ラック52が処理槽54に入ったまま直接引き抜けるようにしてもよい。
【0087】
さらに、処理ラック52と処理槽54の間の液戻り部分に設けることもできる。
【0088】
本実施の形態の処理ラック52と処理槽54の内壁との間のシール面は、ゴムやエラストマー等の軟質材料のパッキン70を処理ラック52側もしくは処理槽54側に設けて、密着するようにした。
【0089】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る感光材料処理装置を図に基づき説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0090】
本実施の形態に係る感光材料処理装置は、第3の実施の形態とほぼ同様の構造を有するが、図9に示すように、処理ラック52が処理槽54に入ったままで循環フィルタ58を直接引き抜けるような構造で、処理ラック52と処理槽54の間の液戻り部分にこの循環フィルタ58を設けるようにした。
【0091】
次に、本発明の第5の実施の形態に係る感光材料処理装置を図に基づき説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0092】
本実施の形態に係る感光材料処理装置は、図10に示すように処理ラック52の内部の循環部分を完全にシールした構造にされている。このように完全にシールした構造にすると、実質的に処理槽54はなくなり、処理ラック52のセット位置を決定したり保持するためのガイドのみの構造にすることができ、処理液を循環する処理ラック52自身を処理槽54と呼ぶこともできる。
【0093】
すなわち、複数の処理槽54が設けられている従来の処理機の場合は、隣接する処理槽54同士が相互に固定されていたが、本実施の形態によれば個々に取り外しが可能になる。
【0094】
また、本実施の形態の場合では、循環ポンプ64とヒーター60に接続されるパイプ62の3箇所のジョイント部より個々の処理槽54とも言える処理ラック52を取り外すことができる。こうした構造が可能になったのも、個々の処理ラック52に処理液の循環流路である通路66を設けたためである。
【0095】
本実施の形態の駆動系は処理ラック52の中心部分に設け、処理ラック52の上部に外部の駆動源(図示せず)が接続する構造にしたが、図11に示すように、第3の実施の形態や第4の実施の形態のような構造で、処理ラック52を処理槽54と一体とした構造にすることもできる。この場合は、外部の循環系と2箇所で接続することになる。
【0096】
次に、図12を参照して上記実施の形態の第1変形例を説明する。
本変形例は流通孔41の形状に関するものであり、本変形例における流通孔41は内箱12を構成する板体12内に形成されている。この場合、処理液は一対のガイド溝15から直ちに排出されないので、一対のガイド溝15の近傍に処理液の複雑な動きがなく、処理液の流れが円滑になり、処理むらの防止効果が向上する。
【0097】
次に、図13を参照して上記実施の形態の第2変形例を説明する。
本変形例においては、処理液供給路23から一対のガイド溝15に連通する噴出路42が設けられている。この場合、処理液がフィルムLの両端部に直接噴出されるので、処理むらの改善と搬送性能の向上(搬送抵抗の減少)とを図ることができる。
【0098】
次に、図14を参照して上記実施の形態の第3変形例を説明する。
本変形例においては、一対のガイド溝15に連通して形成された噴出流路44は処理液供給路23と連結されている。従って、処理液を供給すると、一対のガイド溝15にガイドされているフィルムLの両端の表面と裏面、言い換えれば乳剤面と支持体面とに処理液が噴出する。
【0099】
そして、噴出した処理液は、前記実施の形態の場合とは逆に処理室14内に流れ、処理液供給路23からスリット24を介して噴出する処理液と混合する。この結果、フィルムLの両端部における乳剤面の境膜破壊が良好に行われる。
【0100】
その上、フィルムLの両端部は両側面から処理液により押されるので、一対のガイド溝15の内壁面から離れているようになる。この結果、フィルムLの搬送が容易になり、前記境膜破壊と相まって処理速度を向上させることができる。
【0101】
次に、図15を参照して上記実施の形態の第4変形例を説明する。
本変形例の噴出流路45は一対のガイド溝15の外側に沿うように形成され、処理液供給路23から処理液を給液されるようになっている。一対のガイド溝15と噴出流路45とは流通路25により連通しているので、処理液は矢印で示したように噴出流路45から流通路25を介して処理室14内に流れ込む。従って、フィルムLの両端部における乳剤面の境膜破壊が良好に行われる。
【0102】
また、処理液はフィルムLの両側面に分流するので、フィルムLを両側面から押すような力が作用し、フィルムLを一対のガイド溝15の内壁面から離している。従って、フィルムLの搬送が容易となり、境膜破壊と相まって処理速度を向上させることができる。
【0103】
次に、図16を参照して上記実施の形態の第5変形例を説明する。
図16(a)は処理槽の概略断面図であり、図4の処理槽を変形したものである。図16(b)は処理槽の一部切り欠いた斜視図、図16(c)は処理液噴出部の斜視図である。
【0104】
本変形例においては、フィルムLの乳剤面を内側にして底部で反転して搬送される。処理槽内には、上下に移動するフィルムLの間に位置して、フィルムLの乳剤面に処理液を噴出する中空の処理液噴出部150が設けられている。
【0105】
処理液噴出部150は直方体形状であり、フィルムLの乳剤面に対向する面にフィルム幅方向に延びる処理液噴出用スリット152が形成されている。処理液噴出部150の両側面には図16(b)及び(c)に示すように給液パイプ43が設けられており、矢印Aで示すように、スリット152の両端方向から処理液噴出部150内に同時に処理液を供給できるようになっている。
【0106】
次に、図17を参照して上記実施の形態の第6変形例を説明する。
図17(a)はガイド溝15内を搬送されるフィルムLを支持体面側から見た部分断面図、図17(b)は図17(a)のX部拡大図、図17(c)、(d)、(e)はX部を変形した拡大図である。
【0107】
フィルムLの両端を案内するガイド溝15に形成した処理液の流通孔(処理液逃げ孔又は処理液噴出孔)25は、感光材料搬送方向下流側に位置する角部が、その接線と感光材料搬送方向Bとのなす角度θが10°≦θ≦90°のテーパ面又は曲面であることが好ましい。
【0108】
図17(b)、(c)、(d)は流通孔25の搬送方向下流側角部にテーパ面を形成した例であり、図17(e)は角部に曲面を形成した例である。
【0109】
このような構成によりフィルムLが矢印B方向に搬送された際に、フィルムLの先端角部が流通孔25内に入ってしまっても、フィルムLの先端角部が孔のテーパ面又は曲面により脱出方向に案内される。
【0110】
従って、フィルムLの先端角部が流通孔25の縁部に引っ掛かることなく、フィルムLが搬送される。
【0111】
さらに、具体的な実施例をつぎに説明する。
フィルムを搬送するためのリーダーを用いないリーダレス搬送方式であって、ローラによる搬送を採用したフィルムプロセッサ(FP360LL)を、本発明の実施例が採用された試作機とし、従来機である富士写真フィルム(株)製のリーダ搬送方式のフィルムプロセッサ(FP360B)と比較した。
【0112】
両者はいずれもCN−16L処方の処理液を使って処理を行うようにし、表1に両者の各処理槽のデータを示した。そして、試作機の処理ラックは第3の実施の形態の構造とした。そのため、FP360Bは2列処理であるが、FP360LLは1列処理とした。
【0113】
【表1】
【0114】
その結果、処理能力を同じレベルにするために搬送速度を速くしてある。試作機は処理ラック内に設けたフィルム幅カイドに沿ってフィルムをローラでニップして搬送する。
【0115】
また、処理ラックを第3の実施の形態の構造としたため、循環フィルタをセットするサブタンクがなくなり、母液容量および開口面積を大幅に低減することができた。
【0116】
処理ラック内においても極力不要なスペースはガイド部材で塞いで液量低減に努めた。その結果、従来機である上市機と比べて処理速度が2倍になったにもかかわらず、母液量および開口面積を約半分にすることが可能になった。
【0117】
本実施例ではCN−16L処方を用いたが、さらに迅速処理が可能な処理処方を用いると、その分、液中での処理時間を短くできる。このため、搬送距離を短縮し、さらに母液量を減らすことが可能になる。
【0118】
また、感光材料処理装置の試作機の処理ラックの幅ガイドを交換して、135フィルムの他に新システムのIX240フィルムを処理できるようにした。
【0119】
図18はこの感光材料処理装置の一例であるカラーネガフィルムの自動現像装置100の概略構成を示すものであり、ハウジング101内には、左方から右方に向けて現像槽54、漂白槽106、定着槽107、4個の水洗槽108、乾燥部109が順に配置されている。そして、現像槽54から水洗槽108に到る各槽に、処理ラック52が使用される。
【0120】
現像槽54の左上方には、パトローネ2をセットしフィルムLを供給するオートローディング装置が設けられているが、図18にはパトローネ2からフィルムLを引き出す一対のローラ30、フィルムLを切断するカッタ31、フィルムLを現像槽54に搬送するガイド32とを模式的に図示した。
【0121】
尚、ガイド32には、搬送ローラ等が設けられているのであるが、図示及び説明を省略する。
【0122】
図18に示すように、この試作機は、フィルム供給部にはデタッチャー機構212を内蔵し、さらに、フィルム供給部及び乾燥部109の出口にリシェーパー214、216を装備した。
試作機はリーダレス搬送方式を用いているため、フィルムLの両サイドに設けられた幅ガイドに沿って安定してフィルムLが搬送される必要がある。そのため、フィルムLの先端形状を、図19(a)の状態から図19(b)の状態のように変更して、フィルムLを安定に搬送できる形状にカットする必要がある。そして、135フィルムの場合はベロ部分を、IX240フィルムの場合は先端部分を、それぞれ処理機のフィルム供給部にセットした時に適当な形状にカットするようにした。
【0123】
また、IX240フィルムの場合は、カートリッジにフィルムを戻す必要から、乾燥部109の出口にて処理済みフィルムの先端形状を元の形状に再カットするためのリシェーパー216を装備するようにした。
【0124】
まず、図20に示すように、135フィルムの場合、135フィルムのパトローネ2をフィルム供給部のフォルダー220に装填してフィルム供給部のカバーを閉めると、フォルダー220にあるバーコードリーダー222がフィルムの種類や状態を識別する。
【0125】
この識別により搬送可能であると判断された場合、自動的にベロだしが行われ、フィルム先端が一定の位置(リシェーパー214)まで搬送される。そして、リシェーパー214のカッター224が動作してベロを落とすとともに、先端形状を搬送に適した形状にカットする。先端カットが行われている間に搬送ローラ226Aは搬送ローラ226Bより速い速度でフィルム全量をフィルムサーバー228に引き出しフィルム後端をカットする。
【0126】
135フィルムの場合は、フィルム後端のカットと先端のベロカットは同時に行ってもよい。フィルムサーバー228に引き出す間にフィルムの異常の有無(目切れやパー214フォレーション切れ)をフォトセンサ230で検出してもよい。カットが終了すると、フィルムは処理部へ搬送され処理が行われる。通常リシェーパー214のカッター224までは、処理部より速い搬送速度で引き出しが行われる。
【0127】
IX240フィルムの場合も、フィルム供給部のフォルダー220に装填してフィルム供給部のカバーを閉めると、フォルダー220にあるバーコードリーダー222がフィルムの種類や状態を識別する。
【0128】
この識別により搬送可能であると判断された場合、カートリッジにドライバーがセットされシャッターをオープンするとともに、スプールを回転してフィルムを引き出す。フィルム先端が一定の位置(リシェーパー214)まで搬送されるとリシェーパー214のカッター224が動作してベロを落とすとともに、先端形状を搬送に適した形状にカットする。先端カットが行われている間に搬送ローラ226Aは搬送ローラ226Bより速い速度でフィルム全量をフィルムサーバー228に引き出しフィルム後端をデタッチする。
【0129】
IX240フィルムの場合は、フィルム後端のデタッチと先端のリシェープは同時に行ってもよい。フィルムサーバー228に引き出す間にフィルムの異常の有無(目切れやパーフォレーション切れ)をフォトセンサ230で検出してもよい。カットが終了すると、フィルムは処理部へと搬送され処理が行われる。
【0130】
両方のフィルムともに処理が完了して乾燥されると、処理機の出口に設けられたリシェーパー214によって必要な形状に再カットすることができる。IX240はもとの形状にカットするが、135フィルムの場合はそのままでもよい。
【0131】
また、この際の135フィルムの例を図21に示し、IX240フィルムの例を図22に示す。尚、ガイドローラ250によりこれらフィルムは搬送される。さらに、上記実施の形態が適用される処理ラックの例を図23及び図24に示す。
【0132】
次に、処理ラックの具体的な構造を説明する。
図25に示すように、A部及びB部にギヤをよけて複数の孔を形成して循環路を設け、さらに、A部に循環フィルタ58を嵌め込む。また、上部であるC部は蓋で閉じ、D部及びE部である側面及び底面は樹脂板を接着して閉じる。そして、液面付近には、エラストマーのシール材を貼り付ける。
【0133】
このように改造された図26に試作機の処理ラックの平面図を示し、図27に上市機の処理ラックの平面図を示す。
【0134】
ここで試作機の全周囲はスチレン系のエラストマにて形成されたシール材260によりシールされており、図の上部寄りの位置に駆動伝達軸252が配置されている。
【0135】
また、上市機は、図の上部及び下部にそれぞれ開口部254、256が設けられており、これらの開口部254、256に温度センサ及びフロートスイッチ等が設置されるようになり、また、図の下部に循環フィルタ258が配置されるようになる。
【0136】
さらに、FP360LLとFP360Bの両者で同時にランニング処理評価を行った。
【0137】
両者ともに、135フィルムを1日5本づつ処理を行った。両者ともにCN−16L処方に従った補充液を、処方に従った補充量で補充を行った。母液の蒸発補正もFP360Bに内蔵された蒸発補正システムと同じ方法にて両者ともに補正を行って、蒸発による処理液の濃縮が生じないように管理した。
【0138】
1カ月のランニング処理を行った結果、上市機では水洗不良や処理液中の保恒剤(硫酸ヒドロキシルアミンや亜硫酸ナトリウムなど)量が通常にランニング処理液に比べて著しく低下しているのがわかった。
【0139】
一方で、試作機は通常よりやや保恒剤量が少なくなる傾向はあるものの、通常にランニング処理液に比べて変化は少なく、フィルム処理品質にも何等の影響はなく良好に処理を継続することができた。
【0140】
以上より、上市機では現像液のpHの低下による現像不良(コントラストの低下)の兆候が見られ処理性能が悪化していることがわかった。
【0141】
次に、富士写真フィルム(株)製のペーパープロセッサPP720Wの処理ラック及び処理槽の構造を第4の実施の形態のような構造にして、同様に低処理量のランニング試験を行った。
【0142】
PP720Wは、処理ラックの周囲を薄板で覆い処理液が漏れないように接着した。内部の樹脂製のガイド部材の空間(樹脂成形品の肉逃げ部分)にも、ポリオレフィン系の液を吸収しない独立発泡のフォーム部材を充填して、母液の体積を減少させた。
【0143】
処理ラックの周囲を覆った板の感光材料の幅方向には、処理液が循環するための穴を複数設けた。さらに、処理ラックの上部の周囲に処理ラックと処理槽の間をシールするためのエラストマー製パッキンを配置した。サブタンク側は、廃液やカスケードのためのオーバーフローの配管を残して全て塞いだ。
【0144】
サブタンクの処理液温度センサは循環配管であるパイプの途中に設置した。フロートスイッチは廃止してホットサーミスターセンサによる液面センサを処理槽の内壁に貼り付けた。補充液はギヤポンプにて循環系のパイプに直接入れるように改造した。
【0145】
さらに、処理槽と処理ラックの駆動系を伝達する側と反対側の隙間にポリプロピレン球を焼結して作成した直方体の循環フィルタを配置した。
【0146】
こうした改造によって下表に示すように、母液量と開口面積を低減することが可能になった。
【0147】
【表2】
【0148】
この結果、両者の処理機を同一条件で低処理量のランニング試験を前記フィルムプロセッサと同様に行ったところ、上市機ではリンス槽(水洗槽)の処理液に硫化現象が見られるようになっても、試作機では全く硫化は見られず良好にランニング処理を継続することができるようになった。
【0149】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の感光材料処理装置は上記の構成としたので、母液量が低減でき、低処理能力でも処理液の更新が短時間でできるようになり、安定に処理液を維持できるようになる。この為、処理量が少なくても処理液が劣化し難く、低補充化が可能になる。
【0150】
この結果として、従来のミニラボにあったサブタンクが廃止でき、処理機が小型になる。また、処理品質を維持したまま、コストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に適用される処理ラックの平面断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に適用される処理槽及び処理ラックの縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に適用される処理ラックの要部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に適用される処理ラックの斜視断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に適用される処理槽及び処理ラックの断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態の第1変形例に係る感光材料処理装置の要部の横断面図である。
【図13】本発明の実施の形態の第2変形例に係る感光材料処理装置の要部の横断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の第3変形例に係る感光材料処理装置の要部の横断面図である。
【図15】本発明の実施の形態の第4変形例に係る感光材料処理装置の要部の横断面図である。
【図16】本発明の実施の形態の第5変形例に係る感光材料処理装置を示し、(a)は概略構成図であり、(b)は一部切り欠いた斜視図であり、(c)は要部斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態の第6変形例に係る感光材料処理装置を示し、(a)は部分断面図であり、(b)、(c)、(d)、(e)は要部拡大断面図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る感光材料処理装置の概略構成図である。
【図19】(a)はフィルムの切断前の状態を示し、(b)はフィルムの切断後の状態を示す。
【図20】本発明の実施の形態に係る感光材料処理装置の要部概略構成図である。
【図21】135フィルムを説明する図であり、(a)はフィルムの平面図であり、(b)はガイドを示す。
【図22】IX240フィルムを説明する図である。
【図23】本発明の実施の形態に係る感光材料処理装置に適用される処理ラックの一例を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態に係る感光材料処理装置に適用される処理ラックの他の一例を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態に係る感光材料処理装置に適用される処理ラックの改造を示す斜視図である。
【図26】試作機の処理ラックを示す平面図である。
【図27】上市機の処理ラックを示す平面図である。
【図28】従来技術に係る感光材料処理装置に適用される処理ラック及び処理槽を示す斜視図である。
【図29】従来技術に係る感光材料処理装置に適用される処理ラック及び処理槽の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
52 処理ラック
54 処理槽
66 通路
62 パイプ
56 循環経路
58 循環フィルタ
Claims (7)
- 処理液が貯留される処理槽と、
処理槽内に設置されて処理液が内部を流通し感光材料を搬送し得る処理ラックと、
処理ラックに設けられ且つ処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を直接に処理槽の外部に送り出す通路と、
通路を経由した処理液を処理槽の外部との間で循環する循環系と、
を備えたことを特徴とする感光材料処理装置。 - 処理槽と処理ラックとが一体的に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の感光材料処理装置。
- 処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと一体に形成されているか、もしくは処理ラックに取り付けられたことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれかに記載の感光材料処理装置。
- 処理液が貯留される処理槽と、
処理槽内に設置されて処理液が内部を流通し感光材料を搬送し得る処理ラックと、
処理ラックが処理槽の壁部と部分的に緊密に接する構造において、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成され且つ処理ラックの内部から処理ラックの外部へ流通した処理液を処理槽の外部に送り出す流路となる循環経路と、
循環経路を経由した処理液を処理槽の外部との間で循環する循環系と、
を備えたことを特徴とする感光材料処理装置。 - 処理ラックの内部に貯留された処理液の液面の高さが、処理ラックと処理槽の壁部で囲まれる部分に貯留された処理液の液面の高さよりも、1mm以上高くされたことを特徴とする請求項4に記載の感光材料処理装置。
- 処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと一体に形成されているか、もしくは処理ラックに取り付けられたことを特徴とする請求項4及び請求項5のいずれかに記載の感光材料処理装置。
- 処理液を濾過する循環フィルタが、処理ラックと処理槽の壁部との間に形成された循環経路に設けられたことを特徴とする請求項4及び請求項5のいずれかに記載の感光材料処理装置。
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