JP3857107B2 - 廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物(ごみ)を焼却炉にて酸素等を吹き込んで燃焼させるときに炉内で発生し排出される可燃性の熱分解ガスが保有する廃熱(エネルギー)を回収するための、廃熱回収装置の一部を構成する廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1.基本事項:直溶炉のように廃棄物を焼却したり、間接加熱したりすると、廃棄物からガスが発生する。このガスは熱分解ガスと呼ばれ、可燃性である。一般に、このような熱分解ガスは空気を混合して完全燃焼させることにより、顕熱を発生するが、その熱を水に吸収させて蒸気を発生させることにより熱回収されている。この場合、熱分解ガスを空気と混合させて燃焼させる装置は燃焼室と呼ばれているが、こうした燃焼室が具備すべき基本機能は下記のとおりである。すなわち、
機能▲1▼:ダストが燃焼室内壁に付着・成長しないこと。
【0003】
機能▲2▼:熱ロスが極力少ないこと。
【0004】
機能▲3▼:燃焼室内で850℃以上のガスの滞留時間が2秒間以上であること。
【0005】
機能▲4▼:熱分解ガス中に含まれる固形可燃物(例えば、チャー)が完全に燃焼し尽くすこと(最終的に分離されるダスト中に可燃物を殆ど含まないこと)。
【0006】
機能▲5▼:燃焼室出口ガス中に含まれるCOとNOxの量は極力少ないこと。
【0007】
機能▲6▼:他関連設備を含めた全体の設備費が過大でないこと。
【0008】
機能▲7▼:廃棄物の質、例えば、廃棄物保有燃焼潜熱(低位発熱量、LHV)が大きく変動しても上記▲1▼〜▲6▼の基本機能を常に発揮できること。
【0009】
しかしながら、従来技術にかかる燃焼室では、上記基本機能を全て満足し得ない。以下、典型的な従来技術を述べ、それらの技術では上記機能が満足されない理由等について具体的に説明する。
【0010】
2.従来技術(先行技術)
1)従来技術−A(単純耐火物張り内壁構造形再燃焼室:図7参照)
本技術では、再燃焼室内のどの部分でもガス温度がコントロールされないため、700kcal/Nm3(ノーマル立方メートル)程度のLHVが小さい可燃性熱分解ガスを処理する場合は問題ないが、LHVが大きくなると、再燃焼温度が1200℃以上の高温になり、燃焼ガス中に含まれるダストが溶融して再燃焼室の局部的な内壁面や出口部の内壁面に衝突して付着・成長し、やがてガス流れを阻害したり脱落したりしてプラントの連続操業を不可能にする。また、再燃焼ガス温度が高いために多量のサーマルNOx(高温で燃焼させるとNOxが発生し、このようなNOxをサーマルノックスと呼ぶ)を発生する。すなわち、上記1の基本事項のうち基本機能▲1▼と▲5▼と▲7▼とが満足されない。
【0011】
2)従来技術−B(水噴射式耐火物張り内壁構造形再燃焼室:図8参照)
本技術では、燃焼ガス中に冷却水を直接噴霧して再燃焼室のガス温度を適正な低い温度にコントロールできるため、上記Aのような欠点はない。また、可燃性熱分解ガスのLHVが変動しても冷却水噴霧量を変えることにより、再燃焼室内ガス温度を適正に保つことができる。しかし、冷却水を燃焼ガス中に吹き込むことにより燃焼ガスの保有熱から水が蒸発する際の潜熱分の熱が奪われれるため、熱ロスを生じ、下流側に設置するボイラで吸収する熱量が減少する。すなわち、上記1の基本事項のうちの基本機能▲2▼が満足されない。なお、本技術では燃焼ガス中に吹き込まれる冷却水によって燃焼出口ガス中に含まれるH2O分が増加し、集じん器(バグフィルター式)にてバグ表面に捕捉したダストが潮解し、バグフィルターを正常に運転できなくなるおそれがあるという欠点がある。
【0012】
3)従来技術−C(旋回溶融炉:図9参照)
本技術は、再燃焼室で多量の空気を吹き込み一気に完全燃焼させ、燃焼ガス温度を1300℃以上にし、燃焼ガス中に含まれるダストや他の場所で発生した灰を溶融して底部からスラグとして取り出す方式である。この方式では、多量のサーマルNOxが発生し、かつ溶融スラグにより内壁面の耐火物が損耗するか、または壁面用の耐火物として極めて高価な高級耐火材を使用することが必要である。さらに、処理する廃棄物量が少ないか、または廃棄物のLHVが小さい場合には、燃焼室は供給熱量が不足(燃焼ガスを1400℃以上にするには熱量が不足)するために外部から燃料(LPGや重油)を吹き込まねばならない欠点も有する。さらにまた、スラグが燃焼室内面やスラグ排出口に付着しないように適正に運転しなければならず、運転温度の調整を厳密にしたりスラグ排出口のメンテナンスを要したりする。
【0013】
4)従来技術−D(循環排ガス吹き込み式耐火物張り内壁構造形再燃焼室:図10参照)
本技術では、燃焼ガス中に温度の低い循環排ガスを吹き込み混合して、再燃焼室のガス温度を適正な低い温度にコントロールできるため、上記Aのような欠点はない。また、廃棄物のLHVが変動しても吹き込む排ガス量を変えることにより再燃焼室内ガス温度を適正に保つことができる(例えば、ガス量が40%増加)。しかし、排ガスを吹き込むことにより燃焼ガス全体の流量が増大するため、下流側に位置するボイラ、集じん器(バグフィルター)、ガス中の有毒ガス処理装置、ガス誘引通風機および煙突などが大型化してそれらの設備費が増大するという欠点がある。さらに、排ガス流量が増大することによってボイラ出口からの持ち出し熱量が増大し、熱ロスが増大する。すなわち、上記1の基本事項の基本機能▲2▼と▲6▼が満足されない。
【0014】
5)従来技術−E(耐火物張りなし冷却壁構造形再燃焼室:図11参照)
本技術では、壁面が耐火物でライニングされておらず、ボイラ蒸発管等で構成されるために壁面が常に冷却されており、そのために、耐火物壁の場合よりも本技術の冷却壁の方が溶融ダストの付着・成長は少ない。したがって、燃焼ガスの温度が1200℃を大きく超えない場合には、冷却壁への溶融ダストの付着は避けられる。また本技術では壁面でガスの熱を吸収可能なため、熱ロスは少ない。このため、上記した従来技術のような問題はないが、一方で、次の問題がある。すなわち、再燃焼室内で燃焼ガスの滞留時間を2秒間以上確保するには、再燃焼室の容積を大きくしなければならず、冷却壁の面積も大きくなる。例えば、燃焼ガス流量が10,000Nm3/hで、燃焼直後のガス温度が1200℃の場合は、再燃焼室の内容積は35m3以上であり、ガス速度を約5m/sとすると、冷却壁面積は約64m2以上になる。この結果、再燃焼室出口ガス温度は850℃となり、上記1の基本事項の基本機能▲3▼は満足される。
【0015】
しかし、再燃焼室は熱分解ガスが持ち込む最大総熱量で設計されるため、その最大総熱量よりも少ない熱量を再燃焼室に供給する操業がなされる場合には、出口ガス温度が850℃以下となり、基本機能▲3▼が満足されない。すなわち、廃棄物処理量が減少したり、廃棄物の有するLHVが小さかったりする場合がそれに該当する。さらに、一般に温度が高く、その時間が長い程(さらに燃焼ガス中の酸素濃度が大きい程)可燃性固体物の燃焼ガス化率は高くなる傾向があり、このために本技術の場合には、燃焼ガスが冷却され過ぎるため、ガス中に含まれる可燃性固体物が完全にはガス化燃焼しない(図12参照)。
【0016】
もちろん、上記の従来技術Bのように少量の冷却水を加えたり、上記の従来技術Cのように少量の循環排ガスを加えたりすることにより、最大ガス量時(再燃焼室設計時)の燃焼直後のガス温度を下げ、廃棄物のLHVが減少した場合には冷却水または排ガス量を減らすことにより、燃焼直後のガス温度を上昇させて再燃焼室内での温度低下を補うことが可能であるので、従来から実際のプラントで採用されている。しかし、この解決策にも問題がある。すなわち、燃焼直後のガス温度が1200℃よりも遙かに高い温度、例えば1300〜1400℃となることがある。この場合には、燃焼ガス中に含まれるダストが溶融して内壁面に付着・堆積する量が増大し、サーマルNOxが増加し、かつ少ないとは言え、冷却水かまたは循環排ガスを加えることから熱ロスが増大する(図13参照)。
【0017】
以上の結論として、本技術ではガスが冷却され過ぎるために広範囲の廃棄物のLHV変動に対応して適正な運転を行うことは困難であると言える。
【0018】
さらに、この従来技術では冷却金属壁面に直接燃焼ガスが接触するために、燃焼ガス中に含まれている塩酸成分(HCl)が金属壁を腐食するという欠点がある。例えば、鋼材が300℃以上になる状態でダストおよびHClが接触すると鋼材が急激に腐食することが研究で明らかになって公表されているが、もし壁面をボイラ循環水で冷却する場合、ボイラ圧力は80kg/cm2以上にすることはできない(金属表面温度が300℃をオーバーするからである)。いいかえれば、ボイラで発生させた蒸気を蒸気タービンへ送り込んで発電する場合、蒸気圧が高い程、高効率を得られるが、上述の理由により高圧にはできない。
【0019】
そのほかの先行技術として、特開昭56−127110号、特開昭57−67719号、特開平8−121726号ならびに特開平8−121727号の各公報に記載の装置がある。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
解決すべき従来技術(先行技術)の課題と課題解決のための基本方針
1)従来技術の課題「▲1▼:ダストが燃焼室内壁に付着・成長しないこと」
・燃焼直後のガス温度を1200℃以下にする。
【0021】
このためには燃焼させるべき熱分解ガスを一段で一気に燃焼させずに、二段以上(複数段)に分けて徐々に燃焼させる。したがって、燃焼段の前半部では、完全燃焼させずに不完全燃焼(すなわち、燃焼空気比<1)させる。このようにすると、燃焼室全体でのガス温度が総て1200℃以下となり、燃焼ガス中に含まれるダストの壁面への融着を軽減できる。
【0022】
・内壁面の表面温度を1050℃以下にする。
【0023】
これによって、万一ダストが柔らかくなって内壁面に接触しても壁面にダストが付着して成長することはない。一方、このためには、壁面を冷却する必要がある。
【0024】
2)従来技術の課題「▲2▼:熱ロスが極力少ないこと」
・吹き込まねばならない水を汚水等に限定するなどして、吹き込むべき冷却水の量を極力少なくすること。
【0025】
・排ガス循環を行わないこと。
【0026】
・水や空気等の流体で冷却された壁面の外側に耐火物をライニングした壁構造を採用する。
【0027】
3)従来技術の課題「▲3▼:燃焼室内で850℃以上のガスの滞留時間が2秒間以上であること」
・各段で吹き込む空気量を調整して各段出口ガス温度を適正にコントロールし、850℃以上の時間を2秒間以上とすること。
【0028】
4)従来技術の課題「▲4▼:熱分解ガス中に含まれる固形可燃物(例えば、チャー)が完全に燃焼し尽くすこと」
・ガス中に吹き込まれる空気の含有酸素%が0より大きい段以降において、吹き込む空気量を調整して各出口ガス温度と含有酸素%を適正にコントロールし、ガス温度と含有酸素%をできるだけ高く、かつ長い時間とすること。
【0029】
5)従来技術の課題「▲5▼:燃焼室出口ガス中に含まれるCOとNOx量は極力少ないこと」
・燃焼直後のガス温度を1200℃以下としてサーマルNOxの発生を防止する。このためには、燃焼させるべき熱分解ガスを一段で一気に燃焼させずに二段以上(複数段)に分けて徐々に燃焼させること。
【0030】
・ガスと空気をよく混合し、未燃ガスを残さないこと。
【0031】
・未燃固形物を残さず燃焼し尽くすこと。そのためには、ガス中に吹き込まれる含有酸素%が0より大きい段以降において、吹き込む空気量を調整して各段出口ガス温度と含有酸素%を適正にコントロールし、ガス温度と含有酸素%をできるだけ高く、かつ長い時間とすること。
【0032】
6)従来技術の課題「▲6▼:他設備を含めた全体の設備費が過大でないこと」
・排ガス循環を行わないこと。
【0033】
7)従来技術の課題「▲7▼:廃棄物の質、例えば、廃棄物保有燃焼潜熱(低位発熱量、LHV)や廃棄物処理量が大きく変動しても上記1)〜6)の課題に対処可能であること」
・燃焼させるべき熱分解ガスを、一段で一気に燃焼させずに、つまり複数段に分けて徐々に燃焼させる。したがって、廃棄物のLHVが高い場合、あるいは廃棄物の処理量が多い場合は、燃焼段の前半部(上流側)では完全燃焼させずに、不完全燃焼(すなわち、燃焼空気比<1)させ、後流段(下流側)で完全燃焼させる。一方、廃棄物のLHVが低い場合または廃棄物処理量が少ない場合は、燃焼直後のガス温度を極力低く保ち(例えば、1000℃)、各段にて空気を吹き込んで850℃以上に保ち、2秒間のガス滞留時間を確保した後は、必要ならガス温度を850℃以下に下げてもよい。いいかえれば、完全燃焼や不完全燃焼に拘ることなく「850℃以上で2秒間」を確保することが重要であり、最終的に完全燃焼状態であれば良い。
【0034】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高温燃焼ガスの発生に伴い種々の問題が発生する従来の熱分解ガス一段完全燃焼方式に代り、再燃焼室内で先ず一段か複数段で空気を吹き込み不完全燃焼をさせ、最終段(または複数段)で完全燃焼させることによって問題の大きい高温燃焼を避け、かつ熱ロスの少ない、廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置を提供することである。
【0035】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明について、その基本的な技術思想をロータリーキルンを例に挙げて説明する。従来の一般的廃熱回収方法では、直溶炉から送られてきた高カロリーを有する熱分解ガスは再燃焼室内で空気と混合することにより一気に完全燃焼されているが、このように一室で一気に完全燃焼させると、燃焼ガス温度が非常に高くなるため、有毒ガスのNOxが多量に発生すること、高温のためガス中に含まれているダストが溶融して壁面に付着・成長し、炉の操業を阻害すること、大きい熱回収ボイラを設けると、低カロリーのごみを処理する場合にはガスが冷え過ぎるため、ガス中に含まれる可燃性固形分が燃焼し尽くさなかったり、ダイオキシンが十分分解しなかったりすること、などの問題があるのは上記のとおりである。
【0036】
ところで、製鉄法として周知のロータリーキルン法は、図14(a)に示すように鉄鉱石と石灰をロータリーキルン内で攪拌させながら移動させ、その過程で石灰から発生する可燃性ガスを燃焼させながら熱量を与えるとともに、石灰石で脱硫して還元鉄を得る方法であるが、従来、エンドバーナで多量の燃料を吹き込んで還元に必要な熱を与えていたが、この場合には、図14(b)に示すような炉内ガス温度分布となる。このため、炉内ガス中のダストは規定温度(例えば1100℃)を越えると溶融して炉内壁に付着するので、従来は、図14(b)から明らかなように、1100℃を越える部分があるために内周壁面に溶融ダストが付着・成長するという不都合が生じていた。
【0037】
これに対し、図15(a)に示すようにロータリーキルンの長手方向に間隔をあけて配備した複数のシェルファンによる吹き込みノズルからの、段階的に吹き込む空気との混合による部分燃焼方式を導入することによって、ロータリーキルン法は飛躍的に改善されている。この改善法は炉全体で必要な熱をエンドバーナーですべて与えるのではなく、複数のシェルファンにより炉内全体に亘って空気を部分的に吹き込み、炉内温度がダスト溶融温度以下になるように制御するとともに、炉内温度をできるだけ高く保って、ガスが保有する熱を有効に鉄鉱石層に与える方法であるが、この改善法によると、炉内ガス温度分布が図15(b)に示すように、1100℃よりも低い温度域で上下することになる。本発明はこのロータリーキルン式製鉄法の基本的考え方を廃棄物焼却プロセスに応用・発展させたもので、十分な高さを有する再燃焼室内で先ず一段か複数段で空気を吹き込み不完全燃焼をさせ、最終段又はその上流側で完全燃焼させることを基本的な技術思想としている。
【0038】
請求項1に記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置は、a)一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物を部分燃焼(直接溶融方式など)するか、または間接加熱(キルン方式など)するか、あるいは間接加熱すると共に部分燃焼するかのいずれかにより上記廃棄物が熱分解して発生する、低位発熱量(LHV)が700kcal/Nm3以上の熱量を有する可燃性熱分解ガスから廃熱を回収するための廃棄物焼却時に発生する熱分解ガスの再燃焼装置であって、b)上記再燃焼装置の再燃焼室内における前記熱分解ガスの入り口から出口にかけて、燃焼用の空気または酸素富化空気あるいはこれらの混合気体からなる、複数段で構成される空気の吹き込み装置を、つぎの1) 〜 4)の要件、つまり、1) 少なくとも第一段目では完全燃焼しないこと、2) 複数段のうち上流側の段から吹き込まれた空気にて熱分解ガスが燃焼した後の燃焼ガスが可燃性ガスであること、3) それらの下流側の段から吹き込まれた空気にて上記燃焼ガスが完全燃焼すること、4) 前記各段の吹き込み口から空気にて再燃焼された燃焼排ガス温度が概ね700℃〜1200℃であること、を全て満たすように設けるとともに、上記再燃焼室を二つに分け、上流側再燃焼室内に、その燃焼ガス出口のガス温度が700℃〜950℃で、かつ可燃性ガスになるように調整可能な空気の吹き込み装置を設け、下流側再燃焼室内に、その燃焼ガスが完全燃焼するように調整可能な空気吹き込み装置を設けることを特徴とするものである。
【0039】
上記の構成を有する請求項1にかかる再燃焼装置によれば、燃焼直後のガス温度を1200℃以下にするため、サーマルNOxの発生が防止される。また、最終的に燃焼ガスと空気をよく混合して完全燃焼させるので、未燃ガスが残らないから、COおよびNOxの排出量が極めて少ない。
【0040】
ところで、燃焼直後のガス温度を1200℃以下にするためは、燃焼させるべき熱分解ガスを一段で一気に完全燃焼させずに複数段に分けて徐々に燃焼させればよい。一方、部分燃焼温度を700℃以上にするために、再燃焼室内に導入する可燃性熱分解ガスを低位発熱量(LHV)が700kcal/Nm3以上の熱量を有するものに制限している。また、再燃焼室の高さを十分に採って上記再燃焼された燃焼ガスを温度850℃以上で総時間2秒間以上再燃焼室内に滞留させるので、ダイオキシンがほぼ完全に分解される。
【0041】
また、低位発熱量が700kcal/Nm3以上の熱量を有する可燃性熱分解ガスを再燃焼室内に導入して廃熱を回収するから、供給熱量が不足することがなく、外部からLPGや重油などの燃料を吹き込む必要がない。つまり、段階的に空気を混合して燃焼させるだけでよく、また最終的には完全燃焼させるので、熱分解ガス中に含まれるチャーなどの固形可燃物が完全に燃焼する。しかも、部分燃焼温度が700℃以下ではタール分など付着や閉塞の問題が、また1200℃以上では飛灰の溶融付着やNOxが急激に発生して高温腐食の問題が生じるが、上記b)の4)の構成により、そのような問題が生じない。さらに、後段の構成により、再燃焼室の高さを低く(10m以下に)抑えられるとともに、燃焼ガス温度850℃以上で滞留時間2秒以上をはじめ、前段の上記 1) 〜 4) の要件を確実にかつ容易に達成できる。
【0042】
請求項2に記載のように、上記再燃焼室内に導入された前記熱分解ガスが燃焼したガスの顕熱の一部が流体へ移るように、該再燃焼室内周壁の内部の一部を流体が流通する構造にするとともに、該流体の流通する位置の上記内周壁外側の少なくとも一部を耐火物で被覆することが好ましい。
【0043】
この構成により、水や空気等の流体で冷却される壁面の外側に耐火物をライニングした壁構造を採用しているから、熱ロスが少ない。また、耐火物内側の壁面を流体で冷却することにより、内壁面の表面温度を例えば1050℃以下などに保つことができ、万一ダストが柔らかくなって内壁面に接触しても壁面にダストが付着して成長することはない。この結果、燃焼ガス中に含まれるダストの壁面への融着が軽減される。
【0044】
請求項3に記載のように、上記全複数段の空気吹き込み装置のうち、少なくとも二段(つまり、複数段)の空気吹き込みの下流側に温度計測装置を設けるとともに、上記空気吹き込み装置の空気送り込みラインに流量調整弁を介設することができる。
【0045】
この構成により、空気を吹き込んで熱分解ガスあるいは燃焼ガスを再燃焼したのちのガス温度を検出し、空気送り込みラインに流量調整弁を調整して確実に1200℃以下になるように調整できる。
【0046】
請求項4に記載のように、上記再燃焼室内の熱分解ガスまたは燃焼ガス中に、汚水等の水を直接吹き込めるようにすることができる。
【0047】
この構成によれば、処理の困難な汚水等を燃焼ガス中に吹き込むことにより燃焼処理でき、また燃焼ガスの保有熱から熱を奪うので、燃焼ガス温度を調整できるが、汚水等の水処理が必要な場合だけ行え、汚水等の吹き込み量を最小限に抑えることで熱ロスの発生も極力少なくできる。
【0050】
請求項5に記載のように、二つに分けられた上記各再燃焼室の内周壁の大部分を、流体が内部を流通する金属製冷却管壁とこの金属製冷却管壁の外側を被覆する耐火物壁とからなる二重壁構造とし、この耐火物壁の外側表面温度が約1100℃以下になるように、上記耐火物壁の厚さおよび流通させる流体をそれぞれ選択することができる。
【0051】
この構成によれば、耐火物壁内側の冷却管壁を流体で冷却することにより、耐火物壁面の外側表面温度を1100℃以下、好ましくは1050℃以下にでき、万一ダストが柔らかくなって耐火物壁に接触しても壁面にダストが付着して成長することがないので、燃焼ガス中に含まれるダストの壁面への融着が軽減される。
【0052】
請求項6に記載のように、上記流体を水または蒸気混合の熱水または空気にすることができる。
【0053】
この構成により、燃焼ガスの保有熱を水、熱水あるいは空気に吸収させ、ボイラなどに使用することができ、同時に燃焼ガスを冷却できる。
【0054】
請求項7に記載のように、上記再燃焼室内の熱分解ガスの入口付近に同熱分解ガスを燃焼させる一段目の空気吹き込み装置の吹き込み口(ノズル)を設けるとともに、該空気吹き込み口(ノズル)を、吹き込まれた空気がコリオリの力に逆らわない方向に上記再燃焼室内を旋回するように傾斜させることが好ましい。
【0055】
この構成により、空気吹き込み口から室内に吹き込ませる空気を地球の自転力に逆らわないようにすることで、燃焼ガスのもつ慣性に従うことにより偏流等が生じることなくスムーズに空気を混合させて燃焼でき、また吹き込んだ空気とともに燃焼ガスを室内で旋回させることで、再燃焼室内周壁に沿って燃焼ガスを流通させて有効に冷却(熱交換)を行うことができる。
【0056】
請求項8に記載のように、二段目以降の空気吹き込み装置の各吹き込み口を、そこから吹き込まれる空気がコリオリの力に逆らわない方向に上記再燃焼室内を旋回し、かつ燃焼ガスの流れ方向とは逆方向に空気が吹き出すように傾斜させることが好ましい。
【0057】
この構成により、二段目以降に吹き込む空気についても室内にスムーズに吹き込み、燃焼ガスの流れと逆方向とすることで、空気を燃焼ガスに効率よく混合させられる。
【0058】
請求項9に記載のように、上記燃焼ガスの温度を微調整するために、冷却した熱分解ガスを循環させて上記再燃焼室内に吹き込む装置を設けることができる。
【0059】
この構成により、燃焼ガスの温度上昇を抑制し、微調整できる。
【0060】
請求項10に記載のように、上記内周壁の一部を(耐火物で外側を被覆していない)ボイラ用水管にすることができる。
【0061】
この構成により、熱交換効率が高く、燃焼ガスの保有熱をボイラ水に吸収させてガス温度を有効に冷却できる。
【0062】
請求項11に記載のように、上記金属製冷却管壁を空冷式管壁にすることができる。
【0063】
この構成により、空気を流通させて燃焼ガスの保有熱を吸収させ、予熱させたりできる。
【0064】
請求項12に記載のように、上記耐火物と上記金属製冷却管壁を併せた壁の熱貫流速度が5,000〜20,000kcal/m2・hであるとよい。
【0065】
上記金属製冷却管壁の内側を上記耐火物で断熱して燃焼ガスの保有熱を吸収させる場合に、たとえば耐火物の厚さが65mm前後でかつ金属製冷却管壁がボイラの水管壁であって耐火物を支持するためのスタッドが設けられる場合、熱貫流速度を約10,000kcal/m2・hとすることができる。またスタッドのピッチ・太さ・断熱厚さを変更することで伝熱速度を変更できるが、耐火物などの断熱材の標準的な保持力を有する上記の構成では、熱貫流速度が10,000kcal/m2・h前後、すなわち5,000〜20,000kcal/m2・hが妥当な範囲である。そこで、熱貫流速度が20,000kcal/m2・hを超えると、排ガスの温度降下が大きくなり過ぎる結果、再燃焼装置の出口付近の温度を850℃に維持しようとすれば、再燃焼装置の入口すなわち燃焼火焔の温度を高くすることになるため、かえってNOxが多く発生したりクリンカー付着のトラブルなどが起きたりするなどの不都合を生じる一方、熱貫流速度が5,000kcal/m2・h未満になると、熱回収量が少なくなって設備投資による経済効果が期待できないが、請求項12記載の再燃焼装置ではそのような不都合がない。
【0066】
請求項13に記載のように、上記第一段目の空気吹き込み口内に上記水を吹き込むとよい。
【0067】
このように燃焼した後のガスに汚水等を吹き込むのではなく、第一段目の空気吹き込み口内にあらかじめ汚水等を吹き込むことによって、汚水などを効率よく焼却処理できる。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【0069】
◎ 実施例−1(処理する廃棄物のLHVが大きいか、処理量が多い場合)
図1に示す本例の再燃焼装置1は二つに分かれた再燃焼室2と再燃焼室3を備え、各再燃焼室2・3はそれぞれ略円筒状に形成されている。再燃焼室2の頂部中央には熱分解ガスGの入り口4が設けられ、廃棄物焼却炉(図示せず)から排出される熱分解ガスの導入路5の一端が接続されている。各再燃焼室2・3の下部はそれぞれ円錐状に形成され、その下端中央部にダスト排出口6・7が設けられている。なお、とくに限定するものではないが、廃棄物焼却炉には直接溶融方式のシャフト炉が用いられている。
【0070】
また、二つの再燃焼室2・3は、下部(円錐状部のすぐ上)で接続路8によって相互に接続され連通状態になっている。下流側再燃焼室3の頂部の一側方に排気口(出口)9が設けられ、ボイラ(図示せず)へ排ガス(燃焼ガス)を送るための排気管10の一端が接続されている。
【0071】
さらに、各再燃焼室2・3の内壁はそれぞれ三層構造からなり、図1の一部拡大断面図に示すように、金属製の冷却管(水冷管)群11の内周側を耐火物壁12で覆うとともに、冷却管群11の外周側を保温材13(厚さ35mm)で覆っている。その耐火物壁12の厚さは、冷却管群11のガス側(内側)表面温度が1050℃以下になるように決定される(例えば、厚さ100mm)。冷却管群11の各管内には、本例ではボイラ循環水(蒸気混合の熱水)を流通させており、耐火物壁12を経て冷却管群11に伝わる熱が循環水の一部を蒸気に変換する。
【0072】
上流側再燃焼室2内の頂部には、入り口4から流入しようとする熱分解ガスGに空気Aを混合するための複数の空気吹き込みノズル(吹き込み口)15が配備され、そのすぐ下流側に複数の汚水吹き込みノズル(吹き込み口)14と、熱分解ガスGに空気Bを混合するための複数の空気吹き込みノズル(吹き込み口)16とが上からこの順に配備されており、また、接続路8の長さ方向の中間位置にも(部分)燃焼ガスG’に空気を混合するための多数の空気吹込みノズル(吹き込み口)17がリングヘッダー17bを介して接続路8の周囲に周状に取り囲むように配備されている。そして、各ノズル15・16・17への空気供給ライン15a・16a・17aの途中には、空気流量調整弁18・19・20が介設されている。さらに、再燃焼室2内において空気吹き込みノズル16のすぐ下流側「イの位置」に温度計測装置21が、接続路8の入り口付近「ロの位置」に温度計測装置22がそれぞれ配備され、また再燃焼室3内において接続路8の出口付近「ハの位置」に温度計測装置23が、排気口9のすぐ上流側「ニの位置」に温度計測装置24がそれぞれ配備されている。なお、空気吹込みノズル15〜17、空気供給ライン15a・16a・17a、空気流量調整弁18〜20および電動ファン(図示せず)などから空気吹き込み装置が構成される。
【0073】
上記のようにして構成される本発明の実施例にかかる再燃焼装置1について、その動作を説明する。
【0074】
図1において、廃棄物を焼却炉内で加熱することによって発生する熱分解ガスGは、入り口4の空気吹き込みノズル15にて空気Aと混合されたのち、空気吹き込みノズル16から吹き込まれた空気(2次燃焼空気)Bにより良好に攪拌されることによって、ガス中の可燃分の一部が燃焼(完全燃焼せず)し、高温(例えば温度1200℃程度)の燃焼ガスG’となって再燃焼室2内を流下する。燃焼ガスG’は再燃焼室2内を上方から下方へ流通する過程で耐火物壁12を通じて冷却管群11に熱を伝えて冷却され、温度が約700℃程度まで低下する。再燃焼室2から接続路8を通って下流側再燃焼室3へ流入しようとする700℃程度の燃焼ガスG’には、接続路8内を通る際に、空気吹き込みノズル17から吹き込まれる空気Cと混合され、下流側再燃焼室3に流入しながら燃焼ガスG’中に含まれる可燃分が完全に燃焼されて、高温(例えば温度1100℃程度)の燃焼ガスG”となる。
【0075】
この燃焼ガスG”は再燃焼室3内を上方へ流通する過程で耐火物壁12を通じて冷却管群11に熱を伝えて冷却され、850℃前後まで低下したのち、排気口(出口)9から排出される。再燃焼室3から排出された燃焼ガスG”は後流(下流)に位置するボイラ(図示せず)等にてさらに冷却されたのち、集じん器(図示せず)にて脱塵されるなどして排ガス処理が施されたのち、煙突(図示せず)から大気中に放散される。なお、ごみ処理施設内で発生する汚水Fは、汚水吹き込みノズル14から再燃焼室2内に吹き込まれ、蒸発するとともに汚水F中に含まれている可燃物が燃焼して処理される。汚水は水処理して放流するのが厄介であるが、本例では汚水は蒸気になって含有されている臭気分が分解されるので、大気中に放散できる。
【0076】
再燃焼室2・3の各位置から吹き込まれる空気量は、各吹き込みノズル15〜17のすぐ下流側に設けられた温度計測装置21〜23にて計測される温度が所定の値になるようにコントロールされる。この結果、再燃焼室2・3内の燃焼ガス温度は移動するのにつれて図2に示すように、700℃〜1200℃(乃至1100℃)の範囲内で上下するパターンとなる。このような燃焼が行われる過程で、熱分解ガスG中に含まれている可燃性ガスはもちろんであるが、可燃性固形分も完全燃焼される。
【0077】
また、本例では、下流側再燃焼室3内において接続路8を通って流入した燃焼ガスG”の温度が1100℃から850℃前後まで低下する間に2秒以上滞留する、いいかえれば温度850℃以上の燃焼ガスG”の滞留時間が2秒間以上あるので、熱分解ガスG中に含まれていたダイオキシンはほぼ完全に分解される。
【0078】
さらに、燃焼ガスG’・G”の最高温度が常に1200℃以下に保たれるために、燃焼ガス中に含まれるダストは殆ど溶融せず、仮に一部が軟化しても耐火物壁12の表面温度が1050℃以下に保たれるので、ダストは壁面に付着したり成長したりしない。
【0079】
なお、再燃焼室2と3の接続部8の内径を小さくしている(絞っている)が、これは空気吹き込みノズル17群から接続路8内に吹き込まれる空気が、そこを通過する燃焼ガスG’と良好に撹拌されるようにしたためである。
【0080】
以上のような運転の結果、得られるガス流量とガス組成の一例をつぎの表1に示す。
【0081】
【表1】
◎ 実施例−2(処理すべき廃棄物のLHVが実施例−1よりも小さいか、または処理すべき廃棄物量が実施例−1よりも少ない場合)
再燃焼装置1の構成については、上記実施例−1と共通するので、共通する部材は同一の符号を用いて図3に示し、説明を省略する。ただし、動作(運転態様)が相違するので、動作について詳しく説明する。
【0082】
図3において、本実施例では再燃焼室2へ供給される熱分解ガスGの総熱量が実施例−1よりも小さいことから、実施例−1と同じように運転すると、燃焼ガスG’・G”の温度が低くなり過ぎて実施例−1と同じ温度パターン(図2参照)が得られず、燃焼ガスを温度850℃で2秒間以上滞留するという必須条件が満足されない。このために、本実施例の場合には次のような運転を行う。
【0083】
すなわち、下流側再燃焼室3の最終出口ガス温度が850℃以下に低下すれば、自動的に空気吹き込みノズル15・16からの空気Aの量と空気Bの量を減らし、燃焼ガスG’の燃焼直後(空気吹き込みノズル群16下流側)のガス温度を下げ、耐火物壁12から冷却管群11への伝熱量を抑えることによって燃焼ガスG’の温度を850℃に上げる。また、空気吹き込みノズル群17からは、燃焼ガスG’を完全燃焼させるように空気を十分に吹き込む。
【0084】
また、廃棄物処理量が非常に少ないか、または廃棄物のLHVが非常に小さい場合には、下記のような運転が可能である。すなわち、空気吹き込みノズル15と空気吹き込みノズル16から吹き込む空気Aの量と空気Bの量とをそれぞれ増量し、熱分解ガスGを完全燃焼させると同時に空気量を大幅に増量することによって燃焼ガスG’の温度を約1000℃まで下げ、かつ空気吹き込みノズル17から吹き込む空気Cの量を極力抑える。なお、本実施例では、廃棄物の処理量が多く、かつ廃棄物のLHVも大きい場合にも対応可能な設備になっているため、空気吹き込みノズル15・16から吹き込む空気Aの量と空気Bの量をそれぞれ増量しても増量分は空気供給設備が保有する容量で十分賄える。このような運転を行うと、燃焼ガスG’・G”の温度が低く(もちろん、700℃以上ではあるが)抑えられ、かつガス流量も多いため、ダストの耐火物壁12への融着が防止できるとともに、基本要件である「温度850℃以上で少なくとも2秒間のガス滞留時間」を確実に達成できる。なお、再燃焼室2・3内の燃焼ガス温度は移動するのにつれて図4に示すように、700℃〜1050℃の範囲内で上下するパターンとなる。
【0085】
◎ 実施例−3(実施例−2よりも処理すべき廃棄物のLHVが小さいか、または処理すべき廃棄物量が小さい場合)
図5は実施例−3にかかる再燃焼装置を示すもので、本例の再燃焼装置1’が上記実施例1および2と相違するところは次の構成である。すなわち、
図5に示すように、空気Bの吹き込みノズル群16とは別にその下方(下流側)に空気B2の吹き込みノズル26が複数配備され、これらの空気吹き込みノズル26のすぐ下方(すぐ下流側)「イ−2の位置」に温度計測装置27が配備されている。いいかえれば、空気B(B2)について吹き込みノズル16と吹き込みノズル26の上下二段に分かれて配備されており、それぞれの下流側に温度計測装置21・27が設けられている。その他の構成については、上記実施例−1、2の再燃焼装置1と共通するので、共通する部材については同一の符号を用いて示し、説明を省略する。なお、図中の符号28は流量調整弁で、空気B2の吹き込みライン26aに介設されている。
【0086】
次に、本例の再燃焼装置1’についてその動作を説明する。図5において、本例の再燃焼装置1’は実施例−2よりも処理すべき廃棄物のLHVが小さいか、または処理すべき廃棄物量が小さい場合に適切である。すなわち、再燃焼装置1’は通常、廃棄物のLHVが大きく、かつ処理量が大きい場合をベースに設計されており、廃棄物処理量が大きい場合は上記した実施例−1と同じような運転が行われるので、その場合には空気吹き込みノズル26群からは殆ど空気B2が吹き込まれない。一方、廃棄物の処理量が減少するなど再燃焼室2へ供給される熱分解ガスGの熱量が減少した場合には、空気吹き込みノズル15・16・26・17からの空気A・B・B2およびCの空気量をコントロールし、燃焼ガスG’・G”が温度850℃以上で2秒間以上の滞留時間が得られるように運転する。
【0087】
図6はそのような運転結果の一例を示す、燃焼ガスの温度パターンである。この温度パターンから明らかなように、本例の再燃焼装置1’では実施例−1の再燃焼装置1の場合よりも燃焼ガスG’・G”の全体的な最高温度が低下するために、ダストの軟化および耐火物壁12への付着・成長はさらに軽減されるという利点を有する。
【0088】
上記に実施例−1〜3の三例について説明したが、本発明の再燃焼装置はそれら以外にも下記のような実施形態での実施ができる。
【0089】
1) 例えば、実施例−3の下流側燃焼室3の高さ方向(上下方向)の中間部に空気吹き込みノズル群を新たに配備することができる。
【0090】
2) 上流側燃焼室2にさらに別の空気吹き込みノズル群を配備することができる。
【0091】
上記の1)および2)の実施形態では、制御系がやや複雑になるとは言え、燃焼ガスの温度コントロールが他の実施例の場合よりも遙かに容易となる。
【0092】
3) 再燃焼室内の空気吹き込みノズル群15と同ノズル群16の近傍に少量の冷却水や循環排ガス(熱分解ガス)を吹き込むノズルを設けることができ、これにより燃焼ガスの温度を一層容易にコントロールできるようになる。もちろん、この場合には熱ロスを少なくするために加える冷却水や熱分解ガスの量は、最小限に抑えなければならない。
【0093】
4) 再燃焼室を分けずに一つの十分な高さ(例えば10m以上)を備えた炉形式にし、熱分解ガスを頂部から供給し、下部から排出する間に上下方向に間隔をあけて配備した複数団の空気吹き込みノズルから空気を吹き込んで、段階的に部分燃焼させ、最終的に完全燃焼させて排出するようにすることができる。炉の形状は円筒形に限るものではなく、角筒形にすることもできる。
【0094】
5) 本発明は直溶炉のみならず、ロータリーキルン等他方式の廃棄物焼却炉から発生する高カロリーの熱分解ガスを発生する他方式のごみ焼却炉用ボイラにも適用できることは言うまでもない。
【0095】
6) 低温排ガスを再循環させて再燃焼室に段階的に吹き込むことにより、再燃焼室内のガス温度を制御することもできる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置には、つぎのような優れた効果がある。
【0097】
1.ダストが燃焼室内の壁面に付着・成長しない。
【0098】
2.熱ロスが少ない。
【0099】
3.廃棄物の成分や廃棄処理量が変動しても、常に燃焼室内で850℃以上の温度の燃焼ガスの滞留時間を2秒間以上確保できる。この結果、ダイオキシンが分解するとともに、熱分解ガス中に含まれる固形可燃物(例えば、チャー)が完全に燃焼し尽くす(最終的に分離されるダスト中に可燃物を殆ど含まない)。
【0100】
4.再燃焼室の最終出口から排出される燃焼ガス中に含まれるCOとNOxの量が非常に少ない。
【0101】
5.再燃焼装置の下流側に設置する集じん器や誘引通風機などの排ガス処理備を含めた全体の設備費が安価である。
【0102】
6.廃棄物の質や廃棄物処理量が変動しても上記1〜5の効果を達成できる。
【0103】
7.金属製冷却管壁の内側を耐火物で被覆している(冷却管壁のガス側に耐火物がライニングされている)ため、冷却管内を通過するボイラ循環水などの圧力を高めて飽和温度が300℃をオーバすることがあっても、燃焼ガス中に含まれる塩化水素ガスで腐食したりしない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置を概念的に示す断面図とその一部を拡大した断面図である。
【図2】図1の再燃焼装置による各再燃焼室内における各位置の燃焼ガス温度分布を示す線図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置を概念的に示す断面図とその一部を拡大した断面図である。
【図4】図3の再燃焼装置による各再燃焼室内における各位置の燃焼ガス温度分布を示す線図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置を概念的に示す断面図とその一部を拡大した断面図である。
【図6】図5の再燃焼装置による各再燃焼室内における各位置の燃焼ガス温度分布を示す線図である。
【図7】再燃焼装置の従来例(単純耐火物張り内壁構造形再燃焼室)を概念的に示す断面図である。
【図8】再燃焼装置の従来例(水噴射式耐火物張り内壁構造形再燃焼室)を概念的に示す断面図である。
【図9】再燃焼装置の従来例(旋回溶融炉)を概念的に示す断面図である。
【図10】再燃焼装置の従来例(循環排ガス吹き込み式耐火物張り内壁構造形再燃焼室)を概念的に示す断面図である。
【図11】再燃焼装置の従来例(耐火物張りなし冷却壁構造形再燃焼室)を概念的に示す断面図である。
【図12】図7に示す再燃焼装置の従来例による廃棄物低位発熱量(LHV)が大きい場合と小さい場合の温度分布をそれぞれ示す線図である。
【図13】図8または図9に示す再燃焼装置の従来例による廃棄物低位発熱量(LHV)が大きい場合と小さい場合の温度分布をそれぞれ示す線図である。
【図14】図14(a)は従来のロータリーキルン法を概念的に示す断面図、図14(b)は同炉内ガス温度分布を示す線図である。
【図15】図15(a)は改善したロータリーキルン法を概念的に示す断面図、図15(b)は同炉内ガス温度分布を示す線図である。
【符号の説明】
1・1’ 再燃焼装置
2 再燃焼室(上流側)
3 再燃焼室(下流側)
4 入り口
5 熱分解ガス導入路
6・7 ダスト排出口
8 接続路
9 排気口(出口)
10 排気管
11 冷却管群
12 耐火物壁
14 汚水吹き込みノズル(吹き込み口)
15〜17 空気吹き込みノズル(吹き込み口)
15a〜17a 空気供給ライン
18〜20 空気流量調整弁
21〜23 温度計測装置
Claims (13)
- 一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物を部分燃焼するか、または間接加熱するか、あるいは間接加熱すると共に部分燃焼するかのいずれかにより上記廃棄物が熱分解して発生する、低位発熱量700kcal/Nm3以上の熱量を有する可燃性熱分解ガスから廃熱を回収するための廃棄物焼却時に発生する熱分解ガスの再燃焼装置であって、
上記再燃焼装置の再燃焼室内における前記熱分解ガスの入り口から出口にかけて、燃焼用の空気または酸素富化空気あるいはこれらの混合気体からなる、複数段で構成される空気の吹き込み装置を、つぎの1)〜4)要件、つまり、1) 少なくとも第一段目では完全燃焼しないこと、2) 複数段のうち上流側の段から吹き込まれた空気にて熱分解ガスが燃焼した後の燃焼ガスが可燃性ガスであること、3) それらの下流側の段から吹き込まれた空気にて上記燃焼ガスが完全燃焼すること、4)前記各段の吹き込み口から空気にて再燃焼された燃焼排ガス温度が概ね700℃〜1200℃であること、を全て満たすように設けるとともに、
上記再燃焼室を二つに分け、上流側再燃焼室内に、その燃焼ガス出口のガス温度が700℃〜950℃で、かつ可燃性ガスになるように調整可能な空気の吹き込み装置を設け、下流側再燃焼室内に、その燃焼ガスが完全燃焼するように調整可能な空気吹き込み装置を設けることを特徴とする廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。 - 上記再燃焼室内に導入された前記熱分解ガスが燃焼したガスの顕熱の一部が流体へ移るように、該再燃焼室内周壁の内部の一部を流体が流通する構造にするとともに、該流体の流通する位置の上記内周壁外側の少なくとも一部を耐火物で被覆したこと、を特徴とする請求項1記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記全複数段の空気吹き込み装置のうち、少なくとも二段の空気吹き込みの下流側に温度計測装置を設けるとともに、上記空気吹き込み装置の空気送り込みラインに流量調整弁を介設したこと、を特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記再燃焼室内の熱分解ガスまたは燃焼ガス中に、汚水等の水を直接吹き込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 二つに分けられた上記各再燃焼室の内周壁の大部分を、流体が内部を流通する金属製冷却管壁とこの金属製冷却管壁の外側を被覆する耐火物壁とからなる二重壁構造とし、上記耐火物壁の外側表面温度が約1100℃以下になるように、上記耐火物壁の厚さおよび流通させる流体をそれぞれ選択したことを特徴とする請求項1記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記流体が水または蒸気混合の熱水または空気であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記再燃焼室内の熱分解ガスの入口付近に同熱分解ガスを燃焼させる一段目の空気吹き込み装置の吹き込み口を設けるとともに、該空気吹き込み口を、吹き込まれた空気がコリオリの力に逆らわない方向に上記再燃焼室内を旋回するように傾斜させていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 二段目以降の空気吹き込み装置の各吹き込み口を、そこから吹き込まれる空気がコリオリの力に逆らわない方向に上記再燃焼室内を旋回し、かつ燃焼ガスの流れ方向とは逆方向に空気が吹き出すように傾斜させていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記燃焼ガスの温度を微調整するために、冷却した熱分解ガスを循環させて上記再燃焼室内に吹き込む装置を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記内周壁の一部が耐火物で被覆していないボイラ用水管であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記金属製冷却管壁が空冷式管壁であることを特徴とする請求項5記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記耐火物と上記金属製冷却管壁を併せた壁の熱貫流速度が5,000〜20,000kcal/m2・hであることを特徴とする請求項5記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
- 上記第一段目の空気吹き込み口内に上記水を吹き込むことを特徴とする請求項4記載の廃棄物焼却用熱分解ガスの再燃焼装置。
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