JP3856963B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドを有し、印刷データに基づいてインク滴を記録用紙に向かって吐出することで、記録用紙上に印字を行うインクジェット式記録装置に関し、特に記録ヘッドのノズル形成面をクリーニングするクリーニング部材を具備したインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータの発達によりグラフィック処理が比較的簡単に実行できるようになったため、ディスプレイに表示される例えばカラー画像のハードコピーを高品質で出力できる記録装置が求められている。このような要求に応えるためにインクジェット式記録ヘッドを搭載した記録装置が提供されている。
【0003】
このインクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、カラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。
【0004】
このようなインクジェット式記録装置は、インク貯蔵手段からのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、印字信号に応じて記録ヘッドを移動させながら記録用紙にインク滴を吐出させてドットを形成することで記録が行われる。
【0005】
そしてキャリッジにブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクの吐出が可能な記録ヘッドを設け、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0006】
このようなインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化によるノズル開口の目詰まりを発生したり、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出異常となり、印刷不良を起こすという問題がある。
【0007】
このために、インクジェット式記録装置は通常、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面であるノズルプレートを封止するためのキャッピング手段と、ノズルプレートを清掃するクリーニング部材を備えている。
【0008】
このキャッピング手段は、前記したノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じたり、気泡の混入により吐出異常に陥った場合には、キャップ部材によりノズルプレートを封止し、負圧発生手段としての吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引してノズル開口の目詰まりを解消したり、混入した気泡をノズル開口から排出する機能をも備えている。
【0009】
また、ノズルプレートを清掃する前記クリーニング部材は、一般にシリコンやウレタン等のゴムを主材にした弾性ブレードにより構成され、記録ヘッドによる印字領域とキャッピング手段を配置した非印字領域との間における記録ヘッドの移動経路上に進退可能に配置されている。そして、記録ヘッドの移動に伴い、クリーニング部材の端面が記録ヘッドのノズルプレートに摺接することで、記録ヘッドのノズルプレートを払拭するように構成されている。
【0010】
一方、記録ヘッドのノズルプレートには、液状のインクが付着するだけでなく、インク溶媒の蒸発による固化したインク染料や、塵埃または繊維質などの乾燥被着等も発生する。従ってこのような状況に対処するために、前記した弾性ブレードによるクリーニング部材の他に、インクを吸収する性質を有する例えば繊維質を織布した擦り部材を添接させた構成も提案されている。この構成によると、湿潤状態の擦り部材によりノズルプレート上に固化したインク染料や繊維質などを効果的に除去することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、クリーニング部材として繊維質を織布した擦り部材を採用した従来の構成によると、ノズルプレートに摺接して一時的に変形される度に、各繊維の間に存在する空気が押し出されて、吸引したインクによって泡を発生させるという問題が生ずる。
【0012】
図12は、その状況を拡大して模式的に示したものであり、クリーニング部材17はゴム等の材質により形成されたブレード部材(ワイパ)17aに、繊維質を織布した擦り部材17bを貼り合わせて構成されている。この構成によるとノズルプレート8aに摺接して擦り部材17bが一時的に変形される度に、擦り部材17bを構成する各繊維の間に存在する空気が押し出されて、吸引したインクによって多数の泡Buを発生させて、これがノズルプレート8aに付着する。
【0013】
このように、擦り部材17bより発生した泡Buが、ノズルプレートに付着した場合には、この泡がノズル開口より侵入して、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊し、インクの吐出不良を発生させるという問題に発展する。
【0014】
これは、前記した繊維質を織布した擦り部材に代えて、例えば発泡ゴム等により形成された連続気孔多孔質体を用いた場合においても同様である。この連続気孔多孔質体においては、気孔が連続しているために内部に存在する空気が気孔を通じて外部に押し出され、吸引したインクによって多数の泡を発生させるという問題が発生する。
【0015】
また、前記したように繊維質を織布した擦り部材は耐久性が劣るために、長期の使用によって繊維が序々にほずれて、これが記録ヘッドのノズルプレートに付着し、かえってノズルプレートを汚染させるという問題も抱えている。
【0016】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、前記したようにノズルプレートを払拭する際の泡の発生を防止することができると共に、耐久性の高いクリーニング部材を提供しようとするものであり、これにより印字の信頼性を長期にわたって確保することができるインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置は、ノズル開口からインク滴を吐出すると共にノズル形成面が下向きに形成されたインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドによる印字領域と記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャップユニットを配置した非印字領域との間における記録ヘッドの移動経路上に進退可能に配置され、記録ヘッドのノズル形成面を摺接してクリーニングすると共にその自由端が上となる向きで配設されているクリーニング部材と、を備えたインクジェット式記録装置であって、前記クリーニング部材は、弾性力を有する平板状ワイパと、弾性力および独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材とで、互いの対向面を接触させて構成され、前記独立発泡気孔は、当該擦り部材の表面に存在してそれぞれにインクが含浸して湿潤状態に保持されるものであり、前記キャップユニットによって記録ヘッドからインク吸引動作がなされた後の前記記録ヘッドの往復移動に伴い、前記擦り部材および前記平板状ワイパの前記自由端側の端面が前記下向きのノズル形成面に下方から摺接することにより、往動時には前記擦り部材および前記平板状ワイパの一方の隅角部がノズル形成面に摺接し、復動時には前記擦り部材および前記平板状ワイパの他方の隅角部がノズル形成面に摺接して記録ヘッドのノズル形成面のクリーニングがなされるように構成される。
【0018】
この場合、好ましくは前記クリーニング部材は、非印字領域側に位置する弾性力を有する平板状ワイパと、印字領域側に位置する弾性力を有する独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材とで構成され、前記記録ヘッドの印字領域側から非印字領域側への移動に伴い、前記擦り部材によりノズル形成面のクリーニングがなされ、記録ヘッドの非印字領域側から印字領域側への移動に伴い、前記平板状ワイパによりノズル形成面のクリーニングがなされるように構成される。
【0019】
そして、本発明の好ましい1つの実施の形態においては、前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、互いに分離した状態で配置される。
【0020】
また、本発明の好ましい他の実施の形態においては、前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、互いに接合されて配置される。
【0021】
この場合、前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とが一体に形成された構成が採用し得る。また、前記平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、両者の間で部分的に接合された構成も採用し得る。
【0022】
さらに、前記平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側において両者が分離され、固定端側において両者が接合された構成も採用し得る。
【0023】
そして、前記したいずれの構成においても、前記平板状ワイパにおける記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の突出長さに対して、擦り部材における記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の突出長さが小となるように構成されたクリーニング部材が採用し得る。
【0024】
また、前記多孔質体よりなる擦り部材における記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の端面が、固定端側から自由端側に延びる側面と直交する面に対して所定の傾斜角をもって形成され、該所定の角度は、前記擦り部材によりノズル形成面のクリーニングがなされ際には該ノズル形成面に接触し、一方、前記平板状ワイパによりノズル形成面のクリーニングがなされる際には該擦り部材はノズル形成面に接触しないように形成されているクリーニング部材も採用し得る。
【0025】
以上のように構成されたクリーニング部材を備えたインクジェット式記録装置によると、記録ヘッドが往復移動するに伴い、前記擦り部材および前記平板状ワイパとが記録ヘッドのノズル形成面に択一的に接するようになされる。
【0026】
すなわち、好ましい形態においては、記録ヘッドが印字領域側から非印字領域側に移動するに際し、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材により、記録ヘッドのノズル形成面に擦り動作が与えられる。これにより表面部分の気孔にインクが含浸した湿潤状態の擦り部材によって、記録ヘッドのノズル形成面に固化したインク染料等が効果的に除去される。
【0027】
また、記録ヘッドが非印字領域側から印字領域側に移動するに際し、平板状ワイパによって記録ヘッドのノズル形成面がワイピングされる。これによりキャップユニットによりインクが吸引された直後のノズル形成面がワイピングされ、ノズル形成面に付着したインク滴を除去することができる。
【0028】
この場合、平板状の擦り部材は、独立発泡気孔を有する多孔質体により構成されており、従って擦り部材の表面に存在する独立発泡気孔のそれぞれにはインク滴が浸入して保持された状態となる。しかしながら各気孔は独立して形成されているために、各気孔間において空気の流通はなく、従ってノズルプレートに摺接して一時的に変形される度に、各気孔に存在する空気がその都度押し出されて、インクによる泡を発生するという問題は生じない。
【0029】
これにより、擦り部材として繊維質または連続気孔多孔質体を用いた従来の構成における問題点を解決することができ、インクによる泡がノズル開口より侵入して、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊するという問題を解決することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用されたインクジェット式記録装置の全体構成を示すものである。図1において符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はタイミングベルト2の一部に結合されてキャリッジモータ3の往復回転により駆動され、ガイド部材4に案内されてプラテン5に沿って平行に移動するように構成されている。
【0031】
キャリッジ1の記録用紙6と対向する下面にはブラックインクを吐出する記録ヘッド7およびカラーインクを吐出する記録ヘッド8が搭載され、各記録ヘッド7,8は、それぞれブラックインクカートリッジ9、カラーインクカートリッジ10からそれぞれインクの供給を受けて記録用紙6に対してインク滴が吐出できるように構成されている。
【0032】
非印刷領域側に配置された11はキャッピンク装置であり、ブラックインク用記録ヘッド7を封止するキャップユニット12と、カラーインク用記録ヘッド8を封止するキャップユニット13が同一のキャップホルダに搭載されている。
【0033】
前記キャップユニット12,13はそれぞれ記録ヘッド7,8のノズル開口面を1つの空間で封止できるサイズを備え、非印字時には記録ヘッド7,8のノズル開口を封止し、また吐出能力回復操作時(クリーニング操作時)にはポンプユニット16から負圧の供給を受けて記録ヘッド7,8からインクを強制的に排出させることができるように構成されている。
【0034】
そして、記録ヘッド7,8により記録用紙6に印字を行なう印字領域と、キャッピング装置11が配置された非印字領域との間には、後述するクリーニング部材17が記録ヘッドの移動経路上に進退可能となるように配置されており、キャリッジのキャッピング装置11側への往復移動に伴い、各記録ヘッド7,8におけるノズル形成面、すなわちノズルプレートのクリーニングが実行できるように構成されている。
【0035】
図2は、図1に示す記録装置に搭載されたキャップユニット12,13のうちの1つ、例えばカラーインク用のキャップユニット13の一例と、これに接続されたポンプユニット16などの構成を示したものである。なお、他方のブラックインク用のキャップユニット12においても、以下の説明と同様の構成になされている。
【0036】
キャップユニット13は、上面が開放された方形状のキャップケース13aと、キャップケース13a内に収納されたゴム材料などの可撓性物質よりなるキャップ部材13bとにより構成さており、キャップ部材13bはその上測縁がキャップケース13aよりも若干突出した状態に形成されている。そしてキャップ部材13bの内底部には多孔質材料により形成されたインク吸収材13cが収納されており、このインク吸収材13cはキャップ部材13bに一体に形成された保持体13dにより保持されている。
【0037】
またキャップケース13aの下底部には、キャップケース13aおよびキャップ部材13bをそれぞれ貫通するようにして、吸引口13eおよび大気開放口13fが配置されている。
【0038】
そして、キャップケース13aの吸引口13eにはチューブT1を介してポンプユニットとしてのチューブポンプ16が接続されており、チューブポンプ16の排出側には排インクタンク15が配置されている。さらに、キャップケース13aの大気開放口13fには、チューブT3を介して大気開放バルブ19が接続されている。
【0039】
一方、図2における符号8はカラーインク用記録ヘッドを示しており、この記録ヘッド8はキャップユニット13が上部に移動した時、ノズル形成面としてのノズルプレート8aが前記キャップユニット13によってキャッピングされるように構成されている。ノズルプレート8aにはノズル開口8bが形成されており、各ノズル開口8bに対応して配置された圧電振動子8cの作用によってイエロー、シアン、マゼンタなどの各インクが吐出されるように構成されている。
【0040】
以上の構成において、記録ヘッド内の残留気泡の排出およびノズル開口の目詰まりを解消させるためのインクの吸引作用は、図2に示すようにキャップ部材13bを記録ヘッド8のノズルプレート8aに密着させると共に、大気開放バルブ19を閉弁した状態で行われる。
【0041】
すなわち、この状態でチューブポンプ16を作動させることで、キャップ部材13bの内部に負圧が与えられ、ノズル開口8bからインクが排出される。インクの排出に伴いキャップ部材内部の負圧がある程度減少した時点で、前記大気開放バルブ19を開弁させると、キャップ部材内に大気が導入され内部の負圧は解除される。
【0042】
そして、大気開放バルブ19を開弁させた状態でチューブポンプ16を再び作動させることにより、キャップ部材内に排出されたインクをチューブT1を介して排インクタンク15に送り込む動作がなされる。
【0043】
図3はクリーナ駆動ユニット31を具備したポンプユニット(チューブポンプ)16の構成を分解斜視図によって示したものである。
【0044】
まず、ポンプユニット16は、その両外側にそれぞれ円筒部16a,16bが形成されたポンプフレーム16cを具備しており、この円筒部16a,16bにはそれぞれポンプホイル16d,16eが、図示しない給紙モータの駆動力を得て、正転および逆転可能となるように配置されている。
【0045】
各ポンプホイル16d,16eには、一端が中心方向に、他端が外周方向に向けて伸びる2本の軸孔16fがそれぞれ設けられていて、ポンプホイル16d,16eの回転方向に応じてこれらの軸孔16fに軸支されたローラ16gを、中心方向に片寄らせるか、または外周方向に片寄らせるかできるように構成されている。そしてローラ16gによりチューブT1を円筒部16a,16bとの間で加圧してしごく作用を行うポンプ作用と、チューブT1を加圧しないレリース作用とを行わせるように構成されている。
【0046】
なお、前記各チューブT1の一端は、図2において説明したようにカラー記録ヘッド用のキャッピング装置13におけるインク吸引口13eおよび同様にブラックインク用記録ヘッド7のキャッピング装置におけるインク吸引口に接続されている。
【0047】
この構成において、クリーニング指令を受けた場合においてポンプユニット16の駆動による負圧が、キャップ部材13bによって囲まれた内部空間に印加されるように作用する。
【0048】
またクリーナ駆動ユニット31は、ポンプホイル16dの回転軸にクラッチ板31aを介してクリーナカム13bが遊嵌されており、圧縮バネ13cによってクリーナカム13bがクラッチ板13aに圧接されるように構成されている。
【0049】
そして、上部にクリーニング部材17が樹立されたスライドレバー31eがフレーム31dに対して水平方向に摺動できるように取り付けられており、このスライドレバー31eの一部に形成された凸部(図示せず)に前記クリーナカム13bに形成された台形状の通孔31fが係合されている。
【0050】
前記クリーナカム13bは、ポンプホイル16dの一方向の回転によりクラッチ板31aを介して同方向に引きずられ、前記スライドレバー31eを一方の水平方向に移動させるように作用する。またクリーナカム31bは、ポンプホイル16dの他方向の回転によりクラッチ板31aを介して他方向に引きずられ、前記スライドレバー31eを他方の水平方向に移動させるように作用する。
【0051】
従って、スライドレバー31eの上部に取り付けられた前記クリーニング部材17は、ポンプユニット16を駆動する紙送りモータの正転および逆転駆動により、記録ヘッド7,8の移動経路上のクリーニング位置に対して進入または退避できるように作用し、クリーニング部材17のクリーニング位置への進入状態において記録ヘッド7,8のノズルプレートを払拭するようにされる。
【0052】
図4は、前記クリーニング部材17の構成を拡大断面図によって示したものである。図4に示すようにクリーニング部材17は、非印字領域側、すなわちキャッピングユニットに位置する弾性力を有する例えばゴム部材により形成された平板状ワイパ17aと、記録用紙6が装填される印字領域側に位置する弾性力を有する独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材17bとで構成されている。
【0053】
そして、平板状ワイパ17aと平板状の擦り部材17bとは、共にクリーナ駆動ユニット31におけるスライドレバー31eに、その自由端側が上部に向くように取り付けられており、これにより記録ヘッド7,8の移動経路に進退できるように構成されている。
【0054】
図5は、前記記録ヘッド8が非印字領域側から印字領域側に向かって矢印A方向に移動する場合における図4に示すクリーニング部材17によるワイピング作用を説明するものである。この場合においては、記録ヘッド8の矢印A方向への移動によって、平板状ワイパ17aの自由端側(先端)の隅角部が記録ヘッド8のノズルプレート8aに摺接し、平板状ワイパ17aおよび擦り部材17bの2つの復元弾性力により、ノズルプレート8aを払拭する。
【0055】
この工程は、後述するように主にキャッピング装置によって記録ヘッドからインクの吸引動作がなされた後において、ノズルプレートに付着したインク滴を払拭(ワイピング)する場合になされる。
【0056】
また、図6は記録ヘッド8が印字領域側から非印字領域側に向かって矢印B方向に移動する場合における図4に示すクリーニング部材17によるノズルプレートの擦り作用を説明するものである。この場合においては、記録ヘッド8の矢印B方向への移動によって、擦り部材17bの自由端側の隅角部が記録ヘッド8のノズルプレート8aに摺接し、擦り部材17bおよび平板状ワイパ17aの2つの復元弾性力により、ノズルプレート8aの擦り作用を実行する。
【0057】
この工程は、後述するように主にインク溶媒の蒸発によるインク染料や繊維質などの乾燥被着物を除去するためになされ、インクを吸収した湿潤状態の擦り部材17bにより、固化したインク染料や塵埃はノズルプレートから効果的に除去される。
【0058】
図8は、前記した図5および図6に示すクリーニング動作の流れを示すフローチャートである。図8(a)はインク吸引後に図5に示すように平板状ワイパによりノズルプレートをワイピングする場合を示しており、また図8(b)はインク吸引後に図6に示すように擦り部材によってノズルプレートに擦り作用を与える場合を示している。
【0059】
先ず図8(a)おいて、クリーニング動作が開始されると、ステップS11において記録ヘッドは非印字領域側である待機位置に移動する。これは図1に示すキャリッジモータ3の駆動により実行される。なおこの場合、クリーニング動作が開始された時に、記録ヘッドがすでに待機位置に移動済みである場合においては、この動作は行なわれない。
【0060】
続いてステップS12において、記録ヘッドのインクの吸引動作が行なわれる。これは図2に示したようにキャップユニット13が記録ヘッド8のノズルプレート8aを封止し、ポンプユニット16よりキャップユニット13内に負圧を与えることで実行される。
【0061】
このインク吸引動作が終了すると、ステップS13においてクリーニング部材17が記録ヘッドの移動経路上に進行する。これは図3で説明したように、ポンプユニットを駆動する紙送りモータ(図示せず)の駆動により、クリーナ駆動ユニット31のスライドレバー31eが記録ヘッドの移動経路上に進入することで実行される。
【0062】
この状態でステップS14に移行し、キャリッジモータの駆動により、記録ヘッドが印字領域側に移動する。これによって図5に示すように平板状ワイパ17aの自由端側の隅角部が記録ヘッド8のノズルプレート8aに摺接し、平板状ワイパ17aによってノズルプレート8aのワイピングが行なわる。この後、ステップS15において、クリーナ駆動ユニット31の動作により、クリーニング部材17は記録ヘッドの移動経路上から退避してワイピング動作は終了する。
【0063】
次に図8(b)に示した擦り部材17bによるクリーニング(擦り)動作については、次のようになされる。すなわちステップS21において、キャリッジモータの動作により、記録ヘッドは非印字領域側である待機位置に移動する。そして、ステップS22において記録ヘッドよりインクの吸引動作が行なわれる。これは、前記したステップS12と同様である。
【0064】
続いてステップS23において、記録ヘッドは印字領域側に移動する。そしてステップS24においてクリーニング部材17が記録ヘッドの移動経路上に進入する。そしてステップS24に移行し、記録ヘッドが印字領域側に移動する。
【0065】
これによって、図6に示すように擦り部材17bの自由端側の隅角部が記録ヘッド8のノズルプレート8aに摺接し、擦り部材17bにより、ノズルプレート8aの擦り作用が実行される。
【0066】
そして、ステップS25において記録ヘッドは再び非印字領域側である待機位置に移動した後、ステップS26においてクリーニング部材17は、記録ヘッドの移動経路上から退避して記録ヘッドのワイピング動作は終了する。
【0067】
図8に示したフローは、ワイピング動作および擦り動作をそれぞれ1回だけ行なう例を示したものであるが、1回のクリーニング中にワイピング動作または擦り動作を複数回行なうこともできる、例えば1回のクリーニング動作中に、2回の擦り動作と1回のワイピング動作を行なう場合には、図8(b)において、ステップS26の後、ステップS21、ステップS23、ステップS24、ステップS25と、これに続いてステップS23、ステップS26の順に実行させることで達成される。
【0068】
ここで、平板状擦り部材17bは、独立発泡気孔を有する多孔質体により構成されており、従って図11に模式的に示すように、部材17bの表面に存在する独立発泡気孔17dのそれぞれにインク滴Inが浸入して保持され、その表面が一定の湿潤状態になされる。しかしながら各気孔17dは独立して形成されているために、ノズルプレートに摺接して一時的に変形される度に、各気孔に存在する空気がその都度押し出されて、インクによる泡を発生するという問題は生じない。
【0069】
これにより、擦り部材として繊維質または連続気孔多孔質体を用いた従来の構成における問題点を解決することができ、インクによる泡がノズル開口より侵入して、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊するという問題を解決することができる。
【0070】
なお、図4乃至図6に示すクリーニング部材17の構成においては、平板状ワイパ17aと擦り部材17bとは、クリーナ駆動ユニット31におけるスライドレバー31eに互いに添接するように分離状態で配置されている。この構成によると、例えば図5に示すように平板状ワイパ17aによりノズルプレート8aをワイピングした直後に、平板状ワイパ17aの単独による復元弾性力によって直立状態に戻り、また続いて擦り部材17bの単独による復元弾性力によって直立状態に戻るという作用を呈するため、それぞれによる復元力は弱く、ワイパ17a、並びに擦り部材17bに付着したインク滴の飛び散りの程度を抑制させることができる。
【0071】
これに対して図7に示す例は、クリーニング部材17を構成する平板状ワイパ17aと平板状擦り部材17bとは、両者の間で接着剤により接合されている状態を示している。この図7においては、両者の間で部分的に接着剤17cにより接合されており、より具体的には記録ヘッドのノズルプレートに接する自由端側において両者が分離され、クリーナ駆動ユニット31におけるスライドレバー31e側の固定端において両者は接着剤17cにより接合されている。
【0072】
このように接着剤による両者の接合関係を調整することによって、クリーニング部材全体の固さを調整することができ、これによってクリーニング部材によるノズルプレートに対する摺接力を調整することができる。
【0073】
次に図9に示す例は、平板状ワイパ17aにおける記録ヘッドのノズルプレートに接する自由端側の突出長さに対して、擦り部材17bにおける記録ヘッドのノズルプレートに接する自由端側の突出長さが小となるように構成した例を示す。すなわち図9に示すように両者の間には、寸法hに相当する突出長さの差を持たせるように構成されている。
【0074】
この構成によると、平板状ワイパ17aにおいてノズルプレートをワイピングする際に、擦り部材17bの先端がノズルプレートに接するのを有効に回避することができる。すなわち、擦り部材17bを構成する多孔質体がノズルプレートに接触した場合、多孔質体の接触面が不均一なために、ノズルに侵入してメニスカスを破壊するという問題が発生する。したがって前記の構成により、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊するという問題を効果的に回避させることができる。
【0075】
また図10に示す例は、擦り部材17bにおける記録ヘッドのノズルプレートに接する自由端側の端面が、固定端側から自由端側に延びる側面と直交する面に対して所定の傾斜角αをもって形成された構成を示す。前記所定の角度αは、平板状ワイパ17aによるワイピング時において、多孔質体からなる擦り部材17bがノズルプレートに接触せず、また擦り部材17bによるラビング時において、擦り部材17bがノズルプレートに接触する程度に構成される。
【0076】
このうち図10(a)は、擦り部材17bの先端面が、外側方向に向かって角度αをもって下降する傾斜面を構成しており、また図10(b)は、擦り部材17bの先端面が、平板状ワイパ17aに向かって同様に傾斜面を構成した状態を示している。
【0077】
このように構成することで、図9に示した例と同様に平板状ワイパ17aにおいてノズルプレートをワイピングする際に、擦り部材17bの先端がノズルプレートに接するのを有効に回避することができ、さらに擦り部材17bによってノズルプレートを擦り動作を行なう場合において、擦り部材によるノズルプレートの摺接度合いを調整することができる。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明にかかるインクジェット式記録装置に用いられるクリーニング部材は、弾性力を有する平板状ワイパと、弾性力を有する独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材とで構成され、記録ヘッドの往復移動によって、擦り部材およびワイパが記録ヘッドのノズル形成面に択一的に接触してノズル形成面をクリーニングするようになされる。
【0079】
そして、非印字領域側に平板状ワイパを、印字領域側に擦り部材を配置することで、記録ヘッドの印字領域側から非印字領域側への移動に伴い、前記擦り部材によりノズル形成面に固化したインク染料や繊維質などを効果的に除去し、また記録ヘッドの非印字領域側側から印字領域側への移動に伴い、平板状ワイパによりノズル形成面に付着したインクを効果的に払拭させることができる。
【0080】
そして、平板状の擦り部材として弾性力を有する独立発泡気孔を有する多孔質体を用いているので、ノズルプレートに摺接して一時的に変形される度に、各気孔に存在する空気がその都度押し出されて、インクによる泡を発生するという問題を回避することができる。
【0081】
従って、擦り部材として繊維質または連続気孔多孔質体を用いた従来の構成における問題点を解決することができ、印字の信頼性を長期にわたって確保することができるインクジェット式記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したインクジェット式記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す記録装置に搭載されるキャッピングユニットの一例を示した断面図である。
【図3】 図1に示す記録装置に搭載されるポンプユニットおよびクリーナ駆動ユニットの一例を示した分解斜視図である。
【図4】 図1に示す記録装置に搭載されるクリーニング部材の第1の構成を示した断面図である。
【図5】 図4に示したクリーニング部材における平板状ワイパを用いて記録ヘッドのノズルプレートをクリーニングする状態を示した断面図である。
【図6】 図4に示したクリーニング部材における擦り部材を用いて記録ヘッドのノズルプレートをクリーニングする状態を示した断面図である。
【図7】 図1に示す記録装置に搭載されるクリーニング部材の第2の構成を示した断面図である
【図8】 図4乃至図6に示すクリーニング部材によるクリーニングシーケンスの例を示したフローチャートである
【図9】 図1に示す記録装置に搭載されるクリーニング部材の第3の構成を示した断面図である。
【図10】 図1に示す記録装置に搭載されるクリーニング部材の第4および第5の構成を示した断面図である。
【図11】 本発明にかかる記録装置におけるクリーニング作用を説明する拡大断面図である。
【図12】 従来の記録装置におけるクリーニング作用を説明する拡大断面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ、 5 プラテン、 6 記録用紙、
7 ブラックインク用記録ヘッド、 8 カラーインク用記録ヘッド、
8a ノズルプレート、 8b ノズル開口、 8c 圧電振動子、
9 ブラック用インクカートリッジ、 10 カラー用インクカートリッジ、
12 キャップユニット(ブラックインク用)、
13 キャップユニット(カラーインク用)、
16 ポンプユニット(チューブポンプ)、 17 クリーニング部材、
17a 平板状ワイパ、 17b 擦り部材、 17c 接着剤、
17d 独立発泡気孔、 31 クリーナ駆動ユニット、
31e スライドレバー

Claims (9)

  1. ノズル開口からインク滴を吐出すると共にノズル形成面が下向きに形成されたインクジェット式記録ヘッドと、
    前記記録ヘッドによる印字領域と記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャップユニットを配置した非印字領域との間における記録ヘッドの移動経路上に進退可能に配置され、記録ヘッドのノズル形成面を摺接してクリーニングすると共にその自由端が上となる向きで配設されているクリーニング部材と、
    を備えたインクジェット式記録装置であって、
    前記クリーニング部材は、弾性力を有する平板状ワイパと、弾性力および独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材とで、互いの対向面を接触させて構成され、
    前記独立発泡気孔は、当該擦り部材の表面に存在してそれぞれにインクが含浸して湿潤状態に保持されるものであり、
    前記キャップユニットによって記録ヘッドからインク吸引動作がなされた後の前記記録ヘッドの往復移動に伴い、前記擦り部材および前記平板状ワイパの前記自由端側の端面が前記下向きのノズル形成面に下方から摺接することにより、往動時には前記擦り部材および前記平板状ワイパの一方の隅角部がノズル形成面に摺接し、復動時には前記擦り部材および前記平板状ワイパの他方の隅角部がノズル形成面に摺接して記録ヘッドのノズル形成面のクリーニングがなされるように構成したことを特徴とするインクジェット式記録装置。
  2. 前記クリーニング部材は、非印字領域側に位置する弾性力を有する平板状ワイパと、印字領域側に位置する弾性力を有する独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状の擦り部材とで構成され、前記記録ヘッドの印字領域側から非印字領域側への移動に伴い、前記擦り部材によりノズル形成面のクリーニングがなされ、記録ヘッドの非印字領域側から印字領域側への移動に伴い、前記平板状ワイパによりノズル形成面のクリーニングがなされるように構成した請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  3. 前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、互いに分離した状態で配置された請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  4. 前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、互いに接合されて配置された請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  5. 前記クリーニング部材を構成する平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、一体に形成されている請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  6. 前記平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、両者の間で部分的に接合されている請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
  7. 前記平板状ワイパと、独立発泡気孔を有する多孔質体よりなる平板状擦り部材とは、記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側において両者が分離され、固定端側において両者が接合されている請求項6に記載のインクジェット式記録装置。
  8. 前記平板状ワイパにおける記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の突出長さに対して、擦り部材における記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の突出長さが小となるように構成した請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
  9. 前記多孔質体よりなる擦り部材における記録ヘッドのノズル形成面に接する自由端側の端面が、固定端側から自由端側に延びる側面と直交する面に対して所定の傾斜角をもって形成され、該所定の角度は、前記擦り部材によりノズル形成面のクリーニングがなされ際には該ノズル形成面に接触し、一方、前記平板状ワイパによりノズル形成面のクリーニングがなされる際には該擦り部材はノズル形成面に接触しないように形成されている請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
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