JP3855415B2 - 被膜形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品や機械部品などの基材表面に絶縁性の被膜や潤滑性の被膜を形成する被膜方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、電子式時計の駆動機構の分解組立図の一例を示したものである。この電子式時計10は、回路ブロック12が回路受け14を介して回路受けねじ16により地板18に固定されるようになっている。回路受けねじ16は、地板18の上部に配置されるステータ20を貫通する。また、回路ブロック12の下部に位置するコイルブロック22は、+側の電池端子24とともにステータ20を貫通するコイルねじ26によって地板18に取り付けられる。そして、コイルブロック22の下方には、輪列受けねじ27によって地板18に取り付けられる輪列受け28が配設される。
【0003】
輪列受け28は、3番歯車30や5番歯車32、4番歯車34、さらには日ノ裏歯車36の軸上端を回転自在に支持する。そして、これらの歯車30、32、34、36の軸下端は、地板18に回転自在に支持される。また、4番歯車34の軸下部は、軸下端が地板18に回転自在に支持される2番歯車38の軸を貫通するようになっている。さらに、地板18は、正規レバー40、おしどり42、かんぬき44などが揺動自在に支持する。そして、ステータ20には、ロータ孔が設けてあって、このロータ孔にロータ46が挿入される。また、地板18の上部には、地板18の面と平行にリューズ・巻真48が配設される。このリューズ・巻真48の先端は、かんぬき44を作動するつづみ車50に挿入される。なお、図6に示した符号52は日ノ裏歯車36の小径歯車部と噛み合う小鉄歯車であり、符号54は−側の電池端子である。
【0004】
このように時計10の駆動部は、数多くの歯車などの回転部品や揺動部品が使用されている。そして、時計10は、粘度の小さな油が封入され、回転部品や揺動部品などの構成部品の摩耗を防止している。ところが、油は、気温が低下すると周知のように粘度が上昇する。従って、時計10は、低温状態においても正確に駆動するように大きな動力、すなわち大きな電流を必要とする。このため、電池の寿命が短くなったり、容量の大きな電池を使用するために時計10が大型、重量化したりする。そこで、時計10の回転部品や枢着部、摺動部などに潤滑性の膜を被膜してオイルレスにすることが考えられる。
【0005】
従来、機械部品や電子部品などの基材の表面に潤滑性の膜を被膜する場合、一般に次のような方法がある。
【0006】
その1つはメッキによるもので、メッキ液の中にフッ素樹脂などの潤滑性を有する樹脂の微粒子を分散させておき、基材にメッキを施した際に、メッキ液中の潤滑性樹脂の微粒子をメッキ膜中に取り込む方法である。また、チオール処理と称する方法は、潤滑性を有するチオールの溶液に基材を浸漬して乾燥させ、基材表面にチオールの被膜を形成する方法がある。さらに、潤滑性の成分を含有させたワックス状のものを塗布して潤滑性被膜を形成する方法が採られることもある。
【0007】
そして、近年は、大気圧または大気圧に近い状態において放電を発生させ、この放電領域中に基材を配置するとともにフッ素を含む有機物を供給し、有機物を基材の表面で重合させて潤滑性の被膜を形成することが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したメッキによる潤滑性被膜の形成は、基材が金属でなければ適用することができず、プラスチックなどに潤滑性の被膜を形成できない。このため、歯車等をプラスチックにより形成した時計10には適用することができない。すなわち、電子式の時計10などは、コストの低減や小型軽量化を図るためなどのにより、歯車等の構成部品の多くがプラスチックによって形成してあり、金属と同様のメッキをすることができないため、メッキにより潤滑性被膜を形成できない。
【0009】
このことは、チオール処理についても動揺である。すなわち、チオール処理は、基材が金の場合にだけしか適用することができない。そして、ワックス状のものを塗布して形成した潤滑性被膜は、摺動したりすると容易に損耗してしまい、信頼性が乏しい。さらに、大気圧放電下における潤滑性被膜の形成は、プラスチックなどにも適用することができるが、放電により生じたプラズマが基材を損傷する欠点を有している。
【0010】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、プラスチックなどにも容易に被膜を形成できるようにすることを目的としている。
【0011】
また、本発明は、基材との密着性と潤滑性とに優れた被膜を形成することを目的としている。
【0012】
さらに、本発明は、基材に損傷を与えることなく被膜を形成することなどを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、基材の表面に不飽和炭化水素を付着させて酸化性ガスと接触させ、前記基材を予め定めた温度以上に加熱し、前記不飽和炭化水素を重合させて前記基材の表面に被膜を形成することを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、基材の表面において不飽和炭化水素と酸化性ガスとを直接反応させ、不飽和炭化水素を重合するようにしているため、基材が金属であってもプラスチックであっても容易に被膜を形成することができる。しかも、複数の基材の表面に同時に被膜を形成するバッチ処理が可能となる。また、基材表面で重合させるため、基材と被膜との密着性が高まる。加熱する温度は、重合反応が生ずる温度、すなわち60℃以上が望ましく、重合した被膜が炭化しないような温度である。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記基材表面への前記不飽和炭化水素の付着は、液状の前記不飽和炭化水素を通過させたキャリアガスを前記基材の表面に接触させて凝結させることを特徴としている。この発明によれば、気化させた不飽和炭化水素をキャリアガスによって基体に供給するようになっているため、基体の表面に形成される被膜の厚さを均一にすることができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記酸化性ガスは、前記キャリアガスとともに前記基材の表面に供給することを特徴としている。このように構成した本発明は、基体表面への不飽和炭化水素の付着が完了すると同時に基体の温度を高めることができ、不飽和炭化水素が乾燥するのを防止できるとともに、処理時間の短縮を図ることができる。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明は、基材を予め定めた温度以上に保持し、前記基材の表面に不飽和炭化水素と酸化性ガスとを供給し、前記不飽和炭化水素を重合して前記基材の表面に被膜を形成することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、基材を不飽和炭化水素の重合可能温度以上に保持して不飽和炭化水素と酸化性ガスとを供給するため、被膜の形成を迅速に行なうことができるとともに、被膜が連続的に形成されるため、任意の厚さの被膜を容易に得ることができる。
【0019】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項4の発明において、前記基材表面への前記不飽和炭化水素の供給は、液状の前記不飽和炭化水素を通過させたキャリアガスを前記基材の表面に供給して行なうことを特徴としている。この構成によれば、請求項2に係る発明と同様に、被膜の厚さを均一にすることができる。
【0020】
請求項2、3または5の発明において、前記キャリアガスは、不活性ガスであることを特徴としている。このように構成した本発明は、キャリアガスと不飽和炭化水素との反応を防止するとともに、不飽和炭化水素が発火したりするのを防止できる。
【0021】
請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記酸化性ガスは、フッ素ガスまたはオゾンであることを特徴としている。不飽和炭化水素と反応する酸化性ガスとしてフッ素ガスを用いると、不飽和炭化水素が重合した際にフッ素原子が被膜内に取り込まれるため、極めて潤滑性、撥水
性に優れた被膜を形成することができる。
【0022】
請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記酸化性ガスは、オゾンであることを特徴としている。酸化性ガスとしてオゾンを使用すると、酸素原子が被膜の中に取り込まれるため、基材と被膜との密着性が非常によくなる。
【0023】
本発明の請求項6に係る発明は、基材の表面に不飽和炭化水素を付着させてオゾンと接触させ、前記基材を予め定めた温度以上に加熱し、前記不飽和炭化水素を重合して前記基材の表面に第1の被膜を形成する工程と、前記第1の被膜を形成した前記基材を予め定めた温度より低い温度に冷却する工程と、前記第1の被膜の上に不飽和炭化水素を付着させてフッ素ガスと接触させ、前記基材を前記予め定めた温度以上に加熱し、前記不飽和炭化水素を重合して前記第1の被膜の上に第2の被膜を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0024】
このように形成した本発明は、第1の被膜が密着性に優れた被膜となり、その上に撥水性、潤滑性に優れた第2の被膜が形成されるため、撥水性、潤滑性に優れた被膜の密着性を上げることができ、剥離などに強い撥水性、潤滑性の被膜を得ることができる。この場合においても、キャリアガスを介して不飽和炭化水素を基材の表面に供給することにより、均一な膜付けが可能となる。また、オゾンまたはフッ素ガスをキャリアガスとともに供給することにより、不飽和炭化水素の乾燥を防止し、処理時間の短縮を図ることができる。
【0025】
本発明の請求項9に係る発明は、基材を予め定めた温度以上に保持し、前記基材の表面に不飽和炭化水素とオゾンとを供給し、前記不飽和炭化水素を重合して前記基材の表面に第1の被膜を形成する工程と、前記第1の被膜の表面に不飽和炭化水素とフッ素ガスとを供給し、前記不飽和炭化水素を重合して前記第1の被膜の上に第2の被膜を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0026】
この構成に係る発明は、請求項6に係る発明と同様に密着性のよい撥水性、潤滑性に優れた被膜を得ることができるとともに、任意の厚さの被膜を容易に形成することができる。この場合においても、不飽和炭化水素をキャリアガスによって供給し、被膜の厚さの均一化を図ることができる。
【0027】
本発明の請求項11に係る発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の被膜形成方法において、前記第2の被膜を形成する前記不飽和炭化水素は、前記第1の被膜を形成する前記不飽和炭化水素と異なっていることを特徴としている。
【0028】
このようにすると、使用する不飽和炭化水素の選択の自由度を高めることができるとともに、より密着性のよい被膜とより撥水性、潤滑性に優れた被膜を形成することが可能となる。
【0029】
本発明の請求項12に係る発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の被膜形成方法において、前記不飽和炭化水素は、2以上の二重結合を有していることを特徴としている。二重結合が2以上形成されている不飽和炭化水素を使用すると、重合が良好に行なわれ、被膜を容易に形成することができる。なお、不飽和炭化水素は、アセチレン系炭化水素やジアセチレン系炭化水素などの三重結合を有するものであってもよい。
【0030】
本発明の請求項13に係る発明は、基材を配置する処理室と、この処理室内に配置した前記基材を所定の温度に制御する温度制御手段と、前記処理室に不飽和炭化水素を供給する炭化水素供給手段と、前記処理室に前記不飽和炭化水素を重合させる酸化性ガスを供給する反応ガス供給手段とを有することを特徴としている。
【0031】
このように構成した本発明は、不飽和炭化水素と酸化性ガスとを基材の表面において反応させ、金属やプラスチックなどの基材表面に被膜を形成することができる。
【0032】
本発明の請求項14に係る発明は、請求項13の発明において、前記反応ガス供給手段は、供給された四フッ化炭素ガスまたは酸素ガスを励起してフッ素ガスまたはオゾンを発生する放電部を有していることを特徴としている。このように構成すると、反応性の強いフッ素ガスやオゾンを容易に得ることができる。そして、貯溜槽内の液状不飽和炭化水素をキャリアガスによって搬送して処理室に供給することにより、基体表面に均一な厚さの被膜を形成することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の被膜形成方法および被膜形成装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施の形態に係る被膜形成装置の構成説明図である。図1において、被膜形成装置60は、複数の基材を一度に処理するバッチ処理が可能な装置であって、時計部品や電子部品などの被膜を付けようとする複数の基材62を配置可能な処理室64を有している。この処理室64には、ファン66が設けてあって、適宜の間隔をおいて配置した各基材62間に、後述する被膜の原料となる気化した不飽和炭化水素を送り込み、不飽和炭化水素が各基材62の表面全体に均一に付着させることができるようにしてある。また、処理室64には、温度制御器68が設けてあって、処理室64内の温度を制御して基材62を所望の温度に保持できるようになっている。
【0035】
さらに、処理室64には、フッ素ガス(F2 )やオゾン(O3 )などの酸化性ガスからなる反応ガス70を処理室64内に導入するための反応ガス供給管72が接続してある。この反応ガス供給管72には、反応ガス生成部を構成している放電部74が設けてあり、管路76を介して供給された原料ガス78である四フッ化炭素ガス(CF4)や酸素ガス(O2)を大気圧またはその近傍の圧力下において放電させ、反応ガス70となるフッ素ガスやオゾンを生成して処理室64に送り込むことができるようになっている。
【0036】
また、被膜形成装置60は、貯溜槽80を有している。この貯溜槽80には、被膜の原料となる液体のモノマー82が貯溜してある。モノマー82は、デカトリエン、デカジエンなどの二重結合を2以上有する不飽和炭化水素、またはアセチレン系炭化水素やジアセチレン系炭化水素のように三重結合を有する不飽和炭化水素からなっている。そして、貯溜槽80の底部には、ガス導入管84が接続してある散気器86が配設してあって、ガス導入管84を介してキャリアガス88をモノマー82中に導入できるようにしてある。キャリアガス88は、反応性乏しい窒素ガスや希ガスなどの不活性ガスからなっていて、モノマー82がキャリアガス88と反応したりしないようにしている。そして、貯溜槽80の上部には、先端を処理室64に接続した原料供給管路90が取り付けてあって、モノマー82を通過して気化したモノマー82を有するキャリアガス88を処理室64に供給できるようにしてある。なお、処理室64には、排気口92が設けてあって、処理室64内に供給されたガスを排気できるようにしてある。
【0037】
放電部74は、図2に示したように、チャンバ94の内部に電極96、98が配設してある。これらの電極96、98は、高周波電源100に接続してあり、高周波電圧が印加され、電極96、98間を通過する原料ガスを放電させて励起し、フッ素ガスまたはオゾンを生成するようにしてある。
【0038】
このように構成した第1実施の形態においては、処理室64に複数の基材62を配置し、温度制御器68によって処理室64内の温度を制御して基材62を所定の温度に保持する。この基材62の温度は、キャリアガス88によって搬送されてくるモノマー82の蒸気が凝結するような温度、すなわちキャリアガス88の温度より低くしてある。
【0039】
次に、導入管84、散気器86を介して貯溜槽80内のモノマー82に窒素ガスなどのキャリアガス88を吹き込む。このキャリアガス88は、モノマー82の気化が良好に行なわれるように30〜50℃に加熱してある。ただし、この加熱温度は、モノマー82の発火点以下の温度にすることが望ましい。そして、キャリアガス88は、散気器86から気泡として放出され、気化したモノマー82を含んで原料供給管路90から処理室64内に供給される。キャリアガス88とともに処理室64に導入された気体のモノマー82は、冷たい基体62と接触すると供結して液体になり、基体62の表面に付着する。このとき、ファン66が駆動されているため、キャリアガス88は撹拌され、各基体62との接触が良好に行なわれるとともに、個々の基体62の表面全体とほぼ一様に接触し、モノマー82がほぼ均一に付着する。
【0040】
一方、放電部74には、四フッ化炭素ガスまたは酸素ガスの原料ガス78が供給される。これらの原料ガス78は、放電部74の電極96、98間を通過する際の気体放電によって、フッ素ガスまたはオゾンを生成し、反応ガス70として処理室64に供給され、基体62の表面と接触する。
【0041】
このようにして処理室64にキャリアガス88と反応ガス70とが供給され、基体62の表面にモノマー82が凝結したならば、温度制御器68により基体62を加熱して60℃以上の予め定めた温度に昇温する。基体62の温度が60℃以上に加熱されると、モノマー82と反応ガス70とが反応し、基体62の表面にモノマー82の重合体による被膜が形成される。加熱温度の上限は基本的にはないが、重合体が炭化されない温度以下にする必要がある。この被膜は、反応ガス70がフッ素ガスである場合、極めて摩擦係数の小さな潤滑性および撥水性に優れるとともに、電気抵抗の大きな絶縁膜となり、反応ガス70がオゾンである場合、基体62との密着性が大きい絶縁膜となる。
【0042】
なお、基体62の昇温は、基体62の表面に付着したモノマー82が乾燥しないうちに行なう必要がある。また、基体62を昇温し被膜を形成するとき、キャリアガス88と反応ガス70との供給を継続してもよいし、排気口92を閉じて供給を停止してもよい。また、厚い被膜を形成する場合、一度被膜を形成した基体62を初期温度に冷却し、再度モノマー82を付着させて昇温する操作を繰り返すことにより、任意の厚さを被膜を形成することが可能である。
【0043】
フッ素ガスを反応ガス70として使用した場合、基体62の表面に形成した被膜は撥水性、潤滑性に優れているが、基体62との密着性がやや弱い。そこで、密着性に優れた潤滑性の被膜を形成する場合、次のようにする。
【0044】
まず、反応ガス70にオゾンを使用し、前記したようにして基体62の表面に密着性に優れた第1の被膜を形成する。その後、第1の被膜を形成した基体62を初期状態に冷却し、第1の被膜の上にモノマー82を凝結させるとともに、処理室64にフッ素ガスからなる反応ガス70を供給する。そして、第1の被膜の上にモノマー82が凝結したならば、上記したように基体62を60℃以上に加熱して撥水性、潤滑性に優れた第2の被膜を形成する。
【0045】
このようにして形成した第1の被膜と第2の被膜とは、同じモノマー82から形成されるために相互の密着性がきわめてよい。このため、第1の被膜と基体62との密着性が良好であるところから、撥水性、潤滑性に優れた第2の被膜が基体62から剥離するのを防止することができる。そして、このような密着性と撥水性、潤滑性とに優れた被膜を時計の歯車や摺動部材などの回転部や摺動部に形成すれば、オイルレスの時計を実現することができ、消費電力の少ない、小型軽量の時計を得ることができる。
【0046】
なお、前記実施の形態においては、モノマー82をキャリアガス88を介して基体62の表面に付着させる場合について説明したが、処理室64内に噴霧するようにしてもよい。また、前記実施の形態においては、キャリアガス88を加熱した場合について説明したが、モノマー82を加熱してもよいし、モノマー82とキャリアガス88との両方を加熱してもよい。さらに、前記実施の形態においては、第1の被膜と第2の被膜とを同じモノマーによって形成した場合について説明したが、これらを異なったモノマーを用いて形成してもよい。
【0047】
図3は、第2実施の形態に係る被膜形成装置の説明図である。この実施形態の被膜形成装置102は、枚葉処理用であって、処理室64の下部に温度制御手段であるヒータ104が配設してあり、基体62を60℃以上の所定温度に加熱できるようになっている。そして、キャリアガス88を処理室64に供給するための原料供給管路90は、反応ガス供給管72とともに供給管106に接続してあって、キャリアガス88と反応ガス70とが混合ガス108となって処理室64に流入するようにしてある。他の構成は、前記第1実施形態とほぼ同様である。
【0048】
このように構成した第2実施の形態においては、ヒータ104によって基体162を、反応ガス70によりモノマー30を重合できる60℃以上の所定温度に加熱保持しておく。そして、気化したモノマー30を含んだキャリアガス88と反応ガス70との混合ガス108を処理室64に供給する。処理室64に流入した混合ガス108は、基体62に接触すると気体状態のモノマー30が反応ガス70によって重合し、基体62の表面に被膜を形成する。
【0049】
なお、密着性に優れた撥水性、潤滑性の被膜を形成する場合、最初に原料ガス26として酸素ガスを放電部74に供給し、反応ガス70となるオゾンを生成して処理室64に供給し、基体62の表面に密着性に優れた第1の被膜を所定の厚さ形成する。その後、酸素ガスの供給を停止して四フッ化炭素を原料ガスとして放電部74に供給する。そして、放電部74において生成されたフッ素ガスを反応ガスとして処理室64に供給し、撥水性、潤滑性の第2の被膜を第1の被膜の上に形成する。
【0050】
図4、図5は、反応ガス70の生成方法の他の実施形態を示したものである。
【0051】
図4に示した反応ガス70の生成方法は、チャンバ110に紫外線を放射する光源112を配設し、供給管76を介してチャンバ110に導入した四フッ化炭素または酸素からなる原料ガス78に紫外線を照射し、フッ素ガスまたはオゾンを発生させるようにしたものである。
【0052】
また、図5に示した方法は、電気分解によって反応ガス70を得る方法で、反応ガス70がフッ素ガスのときに有用である。すなわち、電解槽114に入れたフッ酸116中に、直流電源118に接続した電極120、122を配置する。
【0053】
また、両電極120、122の間には、発生すりフッ素ガスと水素ガスとが混じるのを防止する遮蔽板124を配設する。このようにして電極120、122間に直流電圧を印加すると、+側の電極122からフッ素ガス126が発生するので、これを反応ガス70として使用する。
【0054】
なお、反応ガス70の供給方法は、これらの限定されるものでないことは勿論である。
【0055】
【実施例】
図1および図2に示した被膜形成装置10を用いてプラスチック板の表面に被膜を形成する実験を行なった。いずれもプラスチックは歯車などを形成するポリアミド系樹脂を使用し、不飽和炭化水素モノマーとしてデカトリエンを使用している。また、放電部は、電極間隔が約1.5mm、流路面積が約3cm2であって、印加周波数が13.56MHz、放電出力が150Wである。
【0056】
《実施例1》
キャリアガスとなる35℃の窒素ガスを35℃に保持したデカトリエンにバブリングしたのち、25℃に保持した基材であるプラスチック板を立てて配置した処理室に供給するとともに、放電部に50cc/分の四フッ化炭素を供給してフッ素ガスを発生させ、これを反応ガスと処理室に供給した。そして、キャリアガスとフッ素ガスとを約1分間供給してプラスチック板の表面にデカトリエンを凝結させたのち、キャリアガスとフッ素ガスとの供給を継続したまま、プラスチック板を約20秒で80℃に昇温して約30秒間保持した。
【0057】
その後、プラスチック板を処理室から取り出して顕微鏡で観察したところ、てプラスチック板の表面に厚さ約0.5μmの被膜が形成されていた。そして、被膜の上に水を滴下したところ、水の接触角が116度であった。また、被膜の動摩擦係数を測定したところ、0.05が得られ、形成した被膜は、非常に優れた撥水性および潤滑性を有することが確認された。
【0058】
《実施例2》
実施例1と同様にしてデカトリエン中をバブリングさせた窒素ガスを処理室に供給するとともに、放電部に酸素ガスを50ccm/分を供給してオゾンを生成し、処理室に供給した。そして、キャリアガスとオゾンとを約1分間供給して25℃に保持したプラスチック板の表面にデカトリエンを凝結させたのち、キャリアガスとオゾンとの供給を継続したまま、プラスチック板を約20秒で80℃に昇温して約30秒間保持した。
【0059】
その後、プラスチック板を処理室から取り出して顕微鏡で観察したところ、てプラスチック板の表面に厚さ約0.5μmの被膜が形成されていた。そして、被膜の電気抵抗を測定したところ、体積抵抗率が300GΩ・cmであり、極めて良好な電気絶縁性を示した。また、このオゾンを用いて形成した被膜は、プラスチック板との密着性が大変良好であった。
【0060】
なお、プラスチック板の表面にオゾンを用いてデカトリエンによる第1の被膜を形成したのち、この第1の被膜の上にフッ素ガスを用いたデカトリエンによる撥水性、潤滑性に優れた第2の被膜を形成したところ、プラスチック板に直接撥水性、潤滑性の被膜を形成した場合に比較して、密着性を大幅に向上することができ、剥離試験において剥離などを生ずることがなかった。
【0061】
すなわち、プラスチックからなる時計の回転部品(歯車など)に、実施例1のように直接潤滑性の膜を形成したものを実際に時計に組み込んで加速試験(時計の早回し試験)を行なったところ、2年分の回転によって潤滑性膜が剥離し、時計が止ってしまったのに対し、実施例2のようにオゾンを用いて形成した重合膜の上に上記の潤滑性膜を重ねて形成し、同様の試験を行なったところ、5年分の回転によっても膜の剥離が生ぜず、時計は正常に動作し続けた。
【0062】
【発明の効果】
上記に説明したように、請求項1に係る発明によれば、基材の表面において不飽和炭化水素と酸化性ガスとを直接反応させ、不飽和炭化水素を重合するようにしているため、基材が金属であってもプラスチックであっても容易に被膜を形成することができる。しかも、複数の基材の表面に同時に被膜を形成するバッチ処理が可能となる。また、基材表面で重合させるため、基材と被膜との密着性が高まる。
【0063】
また、請求項4に係る発明によれば、発明によれば、基材を不飽和炭化水素の重合可能温度以上に保持して不飽和炭化水素と酸化性ガスとを供給するため、被膜の形成を迅速に行なうことができるとともに、被膜が連続的に形成されるため、任意の厚さの被膜を容易に得ることができる。
【0064】
さらに、請求項9および請求項12に係る発明によれば、第1の被膜が密着性に優れた被膜となり、その上に撥水性、潤滑性に優れた第2の被膜が形成されるため、撥水性、潤滑性に優れた被膜の密着性を上げることができ、剥離などに強い撥水性、潤滑性の被膜を得ることができる。
【0065】
そして、請求項16に係る発明によれば、プラスチックなどに対しても密着性の強い被膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る被膜形成装置の構成説明図である。
【図2】実施の形態に係る放電部の詳細説明図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係る被膜形成装置の構成説明図である。
【図4】反応ガスの生成方法の他の実施形態の説明図である。
【図5】反応ガスのさらに他の実施形態の説明図である。
【図6】電子式時計の分解組立図である。
【符号の説明】
60、102 被膜形成装置
62 基体
64 処理室
66 ファン
68、104 温度制御手段(温度制御器、ヒータ)
70 酸性ガス(反応ガス)
72、74 反応ガス供給手段(反応ガス供給管、放電部)
78 原料ガス
80、86、88、90 炭化水素供給手段(貯溜槽、散気器、
キャリアガス、原料供給管路)
82 モノマー

Claims (6)

  1. 基材の表面に不飽和炭化水素を付着させてオゾンと接触させ、前記基材を予め定めた温度以上に加熱し、前記不飽和炭化水素を重合して前記基材の表面に第1の被膜を形成する工程と、
    前記第1の被膜を形成した前記基材を予め定めた温度より低い温度に冷却する工程と、
    前記第1の被膜の上に不飽和炭化水素を付着させてフッ素ガスと接触させ、前記基材を前記予め定めた温度以上に加熱し、前記不飽和炭化水素を重合して前記第1の被膜の上に第2の被膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする被膜形成方法。
  2. 請求項1に記載の被膜形成方法において、前記基材表面への前記不飽和炭化水素の付着は、液状の前記不飽和炭化水素を通過させたキャリアガスを前記基材の表面に供給して凝結させることを特徴とする被膜形成方法。
  3. 請求項1または2に記載の被膜形成方法において、前記オゾンまたは前記フッ素ガスは、液状の前記不飽和炭化水素を通過させたキャリアガスとともに前記基材に供給することを特徴とする被膜形成方法。
  4. 基材を予め定めた温度以上に保持し、前記基材の表面に不飽和炭化水素とオゾンとを供給し、前記不飽和炭化水素を重合して前記基材の表面に第1の被膜を形成する工程と、
    前記第1の被膜の表面に不飽和炭化水素とフッ素ガスとを供給し、前記不飽和炭化水素を重合して前記第1の被膜の上に第2の被膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする被膜形成方法。
  5. 請求項4に記載の被膜形成方法において、前記基材表面への前記不飽和炭化水素の供給は、液状の前記不飽和炭化水素を通過させたキャリアガスを前記基材の表面に供給して行なうことを特徴とする被膜形成方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の被膜形成方法において、前記第2の被膜を形成する前記不飽和炭化水素は、前記第1の被膜を形成する前記不飽和炭化水素と異なっていることを特徴とする被膜形成方法。
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