JP3855384B2 - 太細を有する合成繊維マルチフィラメントおよび織物 - Google Patents

太細を有する合成繊維マルチフィラメントおよび織物 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製織などの高次工程通過性が良好であり、織編物としたときにドライでさらさらとした風合いを有し、染色した際に太細斑による濃淡色差が小さく、自然な杢調の外観を呈する太細を有する合成繊維マルチフィラメントおよび織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、合成繊維はその優れた繊維特性により衣料用に限らず産業用、インテリア用などさまざまな分野に用いられてきた。しかし、これら合成繊維、特にナイロン6、66などのポリアミド繊維は、絹や麻等の天然繊維と比較してドライ感やさらさらとした肌触りに乏しいものであった。これら合成繊維に対してドライ感を付与する手段として、繊維横断面の異形化、ポリマ改質、ポリマへの粒子添加、太細糸にするなど種々の試みがなされている。
【0003】
また、従来よりポリエステルの太細マルチフィラメントとしては、特公昭51−7207号公報、特開昭52−103523号公報、特開昭55−16930号公報などにより知られている。しかしながら、これら従来の糸条は織編物にしたときの濃淡色差が強調されすぎるため、用途が大幅に制限されるものであった。また、特開平6−81210号公報、特開平6−81238号公報には自然な無地杢調の外観を有するデニールミックスポリエステルマルチフィラメント太細糸が開示されている。しかしながら、これらの糸条はデニールの異なる糸条を同時に紡出して得られるデニールミックス未延伸糸を用いているため、得られる太細糸はデニールミックスとともに伸長時の強・伸度特性がばらついたS−S曲線ミックス糸となり、製織時の単糸の弛み等、高次工程通過性が劣るものであった。
【0004】
また特開平6−81212号公報には自然な無地杢調の外観を有するポリエステルマルチフィラメント太細糸が開示されているが、この糸条は粒径0.9μm以下の粒子を4〜10%含んでいるため、粒子による乱反射により鮮明色が要求される用途には展開できないという問題があった。
【0005】
また、従来のポリアミド系太細マルチフィラメントとしては、特公昭42−22576号公報、特公昭44−7744号公報のように紡糸口金部での異常流動を利用してメルトフラクチャを発生させる方法が開示されている。また、特公昭44−15573号公報、特開昭55−122017号公報、特開昭58−362107号公報には異種ポリマを混合紡糸する方法が開示されている。しかしながら、いずれの方法においても糸切れが発生しやすく製糸が不安定であり、生産性が悪いものであった。
【0006】
また、特開昭62−191510号公報、特開昭63−211335号公報には繊維軸方向に断面積が変動したポリアミド系太細糸が開示されている。しかしながら、これら太細糸は糸長手方向の太細周期長が数十cmに及ぶ長いものしか得られず、さらに染色による濃淡色差が強調されすぎるため、用途が大幅に制限されるものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、染色による濃淡色差が小さく無地に近い自然な斑感を有し、かつ布帛表面に微細な凹凸を有することによって、ドライでさらさらとした風合いを与える素材を得ようとするものである。さらに製織などの高次工程通過性、染色堅牢性が良好な製品を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため本発明の合成繊維マルチフィラメントは、主として次の構成を有する。すなわち、
「繊維軸方向に断面積の変化を有する単繊維から構成されたマルチフィラメントであって、マルチフィラメントの長さ方向のウスター斑がノーマルテストで2〜20%であり、かつマルチフィラメントの横断面方向において単繊維間で断面積が異なり、横断面方向における太細比の最大値が1.2以上であり、さらに試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差が0.26cN/dtex以下であることを特徴とする太細を有する合成繊維マルチフィラメント。」である。
【0009】
また、本発明の織物は主として次の構成を有する。すなわち、
「繊維軸方向に断面積の変化を有する単繊維から構成されたマルチフィラメントであって、マルチフィラメントの長さ方向のウスター斑がノーマルテストで2〜20%であり、かつマルチフィラメントの横断面方向において単繊維間で断面積が異なり、横断面方向における太細比の最大値が1.2以上であり、さらに試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差が0.26cN/dtex以下である合成繊維マルチフィラメントを用いてなることを特徴とする織物。」である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマルチフィラメントは、繊維軸方向に断面積の変化を有する単繊維から構成されたマルチフィラメントであって、自然な斑感やドライ感、さらさら感を付与する一方、染色したときの濃淡色差が強調されすぎたり、さらに太部の繊維構造がルーズとなり十分な強度を持つ繊維を作り得ないために用途が制限されるのを防止する観点から、該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向における太細比は1.2〜3.0、さらには1.3〜2.5であることが好ましい。
【0011】
なお、本発明でいう単繊維の繊維軸方向の太細比とは、繊維軸方向における太い部分と細い部分の横断面積の比(太繊度部/細繊度部)であり、マルチフィラメントから取り出した任意の単繊維の太繊度部と細繊度部の横断面を光学顕微鏡を用いて写真撮影し、面積比で算出する。
【0012】
また、本発明の合成繊維マルチフィラメントは、マルチフィラメントの長さ方向のウスター斑をノーマルテストで2〜20%とするものである。かかるウスター斑がノーマルテストで2%未満の場合には、染色布帛にしたときの外観が斑のない合繊独特の均質なものとなってしまう上に、本発明の目的とするドライ感、さらさら感のある風合いが発現しない。一方、かかるウスター斑がノーマルテストで20%を越える場合には、染色布帛にしたときの濃淡色差が強調されすぎてしまう。
【0013】
さらにドライでさらさらとした風合いをよりよく出すために、ウスター斑の値は3〜15%、さらには、4〜12%が好ましい。
【0014】
また、本発明のマルチフィラメントは、その横断面方向において、単繊維間で断面積が異なるものである。従来の太細糸のように、横断面方向には太細が存在せず糸長手方向にのみ太細が存在すると、マルチフィラメントとしての太細が大きくなり、染色布帛にしたときの濃淡色差が強調されすぎてしまう。
【0015】
本発明のマルチフィラメントは、その横断面方向において、その太細比の最大値を1.2以上とするものである。かかる太細比の最大値が1.2未満の場合には、太細による表面凹凸効果がほとんど発現せず、本発明の目的とするドライ感、さらさら感のある風合いが発現しない。なお、本発明でいう横断面方向の単繊維間の太細比とは、横断面方向における太い単繊維と細い単繊維の横断面積の比(太い単繊維/細い単繊維)であり、マルチフィラメントの長さ方向10cm毎に光学顕微鏡を用いて横断面撮影し、各横断面で太い単繊維と細い単繊維の横断面の面積比で算出する。また、横断面方向の単繊維間の太細比の最大値とは、横断面を構成する全ての単繊維において、最も太い単繊維と、最も細い単繊維との横断面積の比(最も太い単繊維/最も細い単繊維)である。
【0016】
また、本発明において前記の効果をより発揮するためには太細比の最大値が1.3〜3.0、さらには、1.4〜2.5が好ましい。
【0017】
本発明においては、試料長5cmでのS−S曲線(応力−歪み曲線)の40%伸長点応力の標準偏差が0.26cN/dtex以下とするものである。かかる標準偏差が0.26cN/dtexを越える場合には、糸長手方向の強伸度特性のばらつきが大きくなり、製織などの高次工程通過性を向上させることができない。該標準偏差が0.26cN/dtex以下であることは、換言すれば本発明のマルチフィラメントの太細が糸長手方向で短周期で変動しており、さらにマルチフィラメントを構成する単繊維間において、太細の位相が異なっていることを意味している。つまり、40%伸長点応力の標準偏差の値は糸長手方向の強伸度特性の安定性を示すひとつの指標であり、この値が小さいほど糸の均質性が高いことを示す。また、より高次工程通過性を向上させる観点から、40%伸長点応力の標準偏差のレベルは0.20cN/dtex以下、さらには、0.15cN/dtex以下が好ましい。
【0018】
本発明の合成繊維マルチフィラメントの主成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルがいずれも使用可能であるが、短周期での太細形成性が良好である繊維形成性ポリアミドおよび繊維形成性ポリエステルを用いることが好ましい。また、本発明の合成繊維マルチフィラメントには、ポリアクリル酸ソーダ、ポリNビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリメタアクリル酸およびその共重合体、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、架橋ポリエチレンオキサイド系ポリマなどの吸湿・吸水物質やポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の汎用熱可塑性樹脂が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。また、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料のほか従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。
【0019】
本発明において、合成繊維マルチフィラメントの160℃乾熱収縮率は15%以下、さらには12%以下とするのが好ましい。織上がり後の精錬、熱セット、染色等の熱履歴による布帛収縮を小さく押さえることができるため、布帛設計が容易となるからである。
【0020】
また、本発明の合成繊維マルチフィラメントの断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、H型断面、π型断面、C型断面その他公知の異形断面でもよい。その中でも絹様の風合いや光沢、吸水性が高い等の点で3〜8個の凹部と同数の凸部とを有する異形度1.3以上のマルチローバル断面が好ましく、異形度1.6以上がさらに好ましい。ここで、異形度とは図1で示されるように異形断面の外接円R1と、内接円R2の半径比R1/R2を言う。さらに繊維内部に中空部分を設けても良い。また、2種類以上の異形断面を混繊した断面ミックスマルチフィラメントであってもよい。
【0021】
布帛形態は、織物、編物、不織布など目的に応じて適宜選択できるが、太細による表面凹凸を効果的に出すためには、織物とすることが好ましい。
【0022】
次に、本発明のマルチフィラメントの製造方法の一例を図2をもって説明する。
【0023】
まず、溶融紡糸法によって未延伸糸を得、一旦パッケージ1に巻き取る。パッケージ1から解除された糸条を供給ローラー2と延伸ローラー4との間で低倍率延伸する際、仮撚加工用の流体旋回ノズル3を延伸ゾーンに設置し、走行糸条に有節バルーンを発生させる。このとき延伸ローラーの温度を原料ポリマの結晶化開始温度〜200℃に加熱しておく。旋回ノズルによって生じるバルーンと加熱された延伸ローラーとの組み合わせにより、糸条は単繊維がそれぞれ別々に延伸され、さらにバルーンによる振動によって従来技術では成し得なかった短ピッチの太細糸が形成される。すなわち、有節バルーンは周期長の長い大きな太細を消滅させるとともに、バルーン振動によってマルチフィラメントの長さ方向および横断面方向の太部と細部を細かく分散化させる作用がある。このように、マルチフィラメントの太部と細部が短ピッチで混在・分散化するため、染色後の布帛外観は無地に近く、より自然な斑感を与える。
【0024】
図3は、溶融紡糸した未延伸糸を一旦巻取ることなく、直接紡糸延伸して太細糸を得る方法を示したものである。溶融紡糸した未延伸糸6に給油装置7で油剤を付与した後、第1ゴデーローラー8と第2ゴデーローラー10との間に流体旋回ノズル9を設置し、走行糸条に有節バルーンを発生させつつ低倍率延伸する。さらに連続して加熱された第2ゴデーローラー上で熱セットし、太細糸を製造する。
【0025】
【実施例】
以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例中の各特性値は次の方法によって求めた。
A.マルチフィラメント横断面方向の単繊維間の太細比
光学顕微鏡を用いてマルチフィラメントの長さ方向10cm毎に5カ所、横断面の写真撮影をし、各横断面の太い単繊維と細い単繊維の横断面積から次式によって算出した。
【0026】
太細比 = 太い単繊維の横断面積/細い単繊維の横断面積
B.繊維軸方向の単繊維の太細比
光学顕微鏡を用いてマルチフィラメントから取り出した10本の単繊維各々について太繊度部と細繊度部の横断面を写真撮影し、太細比を算出した。
【0027】
C.ウスター斑(ノーマルテスト)
マルチフィラメントの糸長手方向の太さムラは、ツェルベガーウスター(株) 社製USTER TESTER MONITOR Cで測定した。測定条件は、 糸速度8m/分、ツイスト:S1.5、糸張力:1.5、測定時間:1分、測 定モードはノーマルで平均偏差率(U%)を測定する。
【0028】
D.強伸度特性、40%伸長点応力の標準偏差
強伸度はオリエンテック(株)社製TENSILON UCT−100で 測定した。測定条件は、試料長:5cm、引張速度:5cm/分、チャート速度:10cm/分でS−S曲線(応力−歪み曲線)を得て、別に測定した繊度から強度、40%伸長点応力を算出した。また、強度、伸度、40%伸長点応力の各標準偏差は、繰り返し10回の測定結果から算出した。
【0029】
E.乾熱収縮率
日本工業規格、化学繊維フィラメント糸試験方法 L1013に記載のA法に従い測定した。すなわち検尺機で周長1.125mのカセ試料を作成し、2時間放縮・調湿(20±2℃、相対湿度65±2%で調湿)した後、1/34(cN/dtex)の荷重をかけ、30秒後に試料長を測定してL0 とする。この試料を両端フリーでオーブン型乾燥機内に入れ、160℃×15分で熱処理する。次いで乾熱処理後の試料をオーブンより取り出し、室内で2時間放冷・調湿し、再度1/34(cN/dtex)の荷重をかけ、30秒後に試料長を測定してLとし、次式により乾熱収縮率を求めた。また、測定は任意の5カ所でサンプリングして行った。
【0030】
乾熱収縮率(%)=〔(L0 −L)/L0 〕×100
F.沸騰水収縮率
日本工業規格、化学繊維フィラメント糸試験方法 L1013に記載のA法に従い測定した。初荷重および測定荷重は1/34(cN/dtex)とした。
【0031】
G.耐光堅牢度
日本工業規格、染色堅ろう度試験方法 L0842に記載の方法に従い測定した。10時間照射を3級、20時間照射を4級、40時間照射を5級とし、ブルースケールの退色を基準として、グレースケールによりサンプルの退色を等級判定する。
【0032】
H.洗濯堅牢度
日本工業規格、染色堅ろう度試験方法 L0844(A−2)に記載の方法で処理した後、グレースケールにより洗濯前後の退色の程度を次の基準により等級判定する。
【0033】
5級:全く退色が認められない。
【0034】
4級:ほとんど退色しない。
【0035】
3級:少し退色が認められる。
【0036】
2級:退色が認められる。
【0037】
1級:退色がひどい。
【0038】
I.ポリエチレンテレフタレートの極限粘度[η]
オルソクロロフェノール(以下OCPとする)10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0039】
(実施例1)
硫酸中の相対粘度ηrが2.70のナイロン6ポリマを、紡糸温度260℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸して250デシテクス、24フィラメントの3葉断面マルチフィラメント未延伸糸を得た。この未延伸糸の繊維断面の異形度を測定したところ、1.6であった。該未延伸糸を図2の延伸装置を用いて供給ローラー速度300m/分、流体旋回ノズル圧0.2MPa、延伸ローラー温度140℃、延伸ローラー速度630m/分で延伸同時仮撚し、120デシテクス、24フィラメントの太細を有する合成繊維マルチフィラメントを得た。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は2.1であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は8.1%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での単繊維の断面積を全数(24フィラメント)測定したところ図4のようになり、その太細比の最大値は2.0であった。また、160℃乾熱収縮率は8%、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力(測定10回)の標準偏差は0.11cN/dtexであった。
【0040】
次に、該マルチフィラメントを経糸及び緯糸として製織し、180℃で生機セットし、ついで常法で精錬してから市販の酸性染料で約95℃×60分間浸漬して染色後FIX処理し、170℃で仕上げセットすることで羽二重を得た。
【0041】
得られた試料について官能評価を実施した結果、布帛表面は濃淡色差の小さい自然な杢感のある外観を呈し、ドライでさらさらとした手触りを有する優れた製品であった。また、耐光堅牢度、洗濯堅牢度がいずれも4級以上であり、染色堅牢性も良好であった。評価結果を表1に示す。
【0042】
なお、表1中、「太細比」の項で「繊維軸」とは、「マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比」を、「太細比」の項で「横断面」とは、「マルチフィラメントの横断面方向における太細比」を、「ウスター斑」とは、「マルチフィラメントの長さ方向のノーマルテストによるウスター斑」を、「標準偏差」とは、「試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差」を、「乾収率」とは、上記した160℃における乾熱収縮率を、「沸収率」とは、上記した「沸騰水収縮率」をそれぞれ意味する。
【0043】
【表1】
Figure 0003855384
(実施例2、実施例3)
供給ローラー速度を233m/分および350m/分とし、延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様の条件で実施した。供給ローラー速度を233m/分とした実施例2の試料は、実施例1と比較してより無地染めに近い外観であり、ドライ感、さらさら感は若干劣るものの、従来品より優れたものであった。また、供給ローラー速度を350m/分とした実施例3の試料は、実施例1と比較してやや濃淡色差が強い外観であるが、ドライ感、さらさら感のいずれの風合い特性も実施例1より優れたものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0044】
(実施例4)
供給ローラー速度を360m/分とし、延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様の条件で実施した。実施例4の試料は、実施例3と比較してさらに濃淡色差が強い外観であったが、ドライ感、さらさら感のいずれの風合い特性も優れたものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0045】
(実施例5)
流体旋回ノズル圧を0.30MPaとし、延伸ローラー温度を90℃にした以外は実施例1と同様の条件で実施した。実施例5のマルチフィラメントのウスター斑(ノーマルテスト)は15.1%であり、該マルチフィラメントの横断面方向での単繊維の太細比は1.2であった。また、160℃乾熱収縮率は16%、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力(測定10回)の標準偏差は0.25cN/dtexであった。実施例5の試料は、実施例1と比較して太細による濃淡色差がやや強調されているが、ドライ感、さらさら感のいずれの風合い特性も優れたものであった。また、生機セット、染色、仕上げセット等の熱処理により布帛が大きく収縮し、やや粗硬感のある触感であった。評価結果を表1に併せて示す。
【0046】
(比較例1)
供給ローラー速度を210m/分として延伸倍率を変更し、流体旋回ノズルを取り除いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。比較例1のマルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.2であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は2.1%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向の太細比の最大値は1.1であった。該マルチフィラメントからなる試料はほぼ無地染めに近く、合繊独特の均質な外観であった。また、ドライ感、さらさら感がほとんど発現せず、むしろヌメリ感のある手触りであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0047】
(比較例2)
供給ローラー速度を210m/分として延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様の条件で実施した。比較例1のマルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.2であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は1.8%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向の太細比の最大値は1.2であった。該マルチフィラメントからなる試料は比較例1と同様、合繊独特の均質な外観であり、ヌメリ感のある手触りであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0048】
(比較例3)
延伸装置から流体旋回ノズルを取り除いた以外は実施例3と同様の条件で実施した。比較例3のマルチフィラメントの横断面方向での単繊維の太細比は1.3であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は22.3%であった。比較例3の試料はドライ感はあるものの、太細による濃淡色差が強調されすぎており、外観の品位が劣るものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0049】
(比較例4)
延伸装置から流体旋回ノズルを取り除いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。比較例2のマルチフィラメントの横断面方向での単繊維の太細比は1.3であった。また、160℃乾熱収縮率は8%、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力(測定10回)の標準偏差は0.41cN/dtexとバラツキの大きいものであり、高次工程通過性が不良であった。また、比較例4の試料はドライ感はあるものの、布帛表面に弛みがあり、さらに耐光堅牢度、洗濯堅牢度ともに3級といずれの染色堅牢性も悪かった。また、太細周期が長く濃淡色差が強調されすぎており、外観の品位が劣るものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0050】
(実施例6)
極限粘度[η]が0.63であるポリエチレンテレフタレートを、紡糸温度290℃、紡糸速度2800m/分で溶融紡糸して、120デシテクス、36フィラメントの3葉断面マルチフィラメント未延伸糸を得た。この未延伸糸の繊維断面の異形度を測定したところ、1.6であった。該未延伸糸を図2の延伸装置を用いて供給ローラー速度430m/分、流体旋回ノズル圧0.25MPa、延伸ローラー温度140℃、延伸ローラー速度600m/分で延伸同時仮撚し、85デシテクス、36フィラメントの太細を有する合成繊維マルチフィラメントを得た。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.6であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は4.4%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での太細比の最大値は1.5であり、160℃乾熱収縮率は2%、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.11cN/dtexであった。
【0051】
次に、該マルチフィラメントを経糸及び緯糸として製織し、98℃でリラックス精練、180℃で中間セットした後、市販の分散染料で約120℃で染色し、170℃で仕上げセットすることで羽二重を得た。得られた試料について官能評価を実施した結果、布帛表面は濃淡色差の小さい自然な霜降り調の外観を呈し、ドライでさらさらとした手触りを有する優れた製品であった。また、耐光堅牢度、洗濯堅牢度がいずれも4〜5級であり、染色堅牢性も良好であった。評価結果を表1に併せて示す。
【0052】
(実施例7)
紡糸速度を変更して3500m/分とし、延伸同時仮撚時の供給ローラー速度を500m/分(延伸倍率1.2倍)とした以外は実施例6と同様の条件で実施した。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.3であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は2.5%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での太細比の最大値は1.2であった。また、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.05cN/dtexであった。得られた試料について官能評価を実施した結果、布帛表面は濃淡色差の小さい自然な霜降り調の外観を呈し、実施例6と比較してドライ感、さらさら感は若干劣るものの、従来品より優れたものであった。また、耐光堅牢度、洗濯堅牢度はいずれも5級であり、極めて優れていた。評価結果を表1に併せて示す。
【0053】
(比較例5)
紡糸速度を変更して4000m/分とした以外は実施例7と同様の条件で実施した。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.2であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は2.1%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での太細比の最大値は1.1であった。また、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.04cN/dtexであった。得られた試料について官能評価を実施した結果、布帛表面は無地染めに近く、合繊独特の均質な外観であった。また、ドライ感、さらさら感等の触感もほとんど感じられなかった。評価結果を表1に併せて示す。
【0054】
(比較例6)
紡糸速度を変更して1000m/分とした以外は実施例6と同様の条件で実施した。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は3.0であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は21.1%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での太細比の最大値は2.7であった。また、試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.25cN/dtexであった。該マルチフィラメントは製糸性が悪く、さらに得られた試料は太細による濃淡色差がかなり強調されたものであり、外観の品位が劣るものであった。また、耐光堅牢度、洗濯堅牢度がいずれも3級と悪いものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0055】
(比較例7)
延伸装置から流体旋回ノズルを取り除いた以外は実施例6と同様の条件で実施した。該マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比は1.6であり、ウスター斑(ノーマルテスト)は5.9%であった。また、マルチフィラメントの横断面方向での太細比の最大値は1.2であった。試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.33cN/dtexとバラツキの大きいものであり、実施例6、実施例7と比較して高次工程通過性が劣るものであった。比較例6の試料はドライ感はあるものの、太細周期が長く濃淡色差が強調されすぎており、外観の品位が劣るものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0056】
【発明の効果】
製糸工程、高次加工工程での工程安定性に優れ、染色した際に太細斑による濃淡色差が小さく自然な杢調の外観を呈し、かつ布帛表面に微小な凹凸を有することによってドライでさらさらとした触感が得られ、さらに染色堅牢性が良好な素材、製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で好ましい繊維断面の異形度を説明するための繊維の横断面図。
【図2】本発明の太細を有する合成繊維マルチフィラメントを製造するための延伸装置の一例の概略図。
【図3】本発明の太細を有する合成繊維マルチフィラメントを製造するための直接紡糸延伸装置の一例の概略図。
【図4】実施例1でのマルチフィラメントの横断面方向での全単繊維(24フィラメント)の断面積。
【符号の説明】
1:未延伸糸パッケージ
2:供給ローラー
3:流体旋回ノズル
4:延伸ローラー
5:紡糸口金
6:未延伸糸の糸条
7:給油装置
8:第1ゴデーローラー
9:流体旋回ノズル
10:第2ゴデーローラー

Claims (6)

  1. 繊維軸方向に断面積の変化を有する単繊維から構成されたマルチフィラメントであって、マルチフィラメントの長さ方向のウスター斑がノーマルテストで2〜20%であり、かつマルチフィラメントの横断面方向において単繊維間で断面積が異なり、横断面方向における太細比の最大値が1.2以上であり、さらに試料長5cmでのS−S曲線の40%伸長点応力の標準偏差が0.26cN/dtex以下であることを特徴とする太細を有する合成繊維マルチフィラメント。
  2. マルチフィラメントを構成する単繊維の繊維軸方向の太細比が1.2〜3.0であることを特徴とする請求項1記載の太細を有する合成繊維マルチフィラメント。
  3. 合成繊維の主成分が繊維形成性ポリアミドであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の太細を有する合成繊維マルチフィラメント。
  4. 合成繊維の主成分が繊維形成性ポリエステルであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の太細を有する合成繊維マルチフィラメント。
  5. 160℃乾熱収縮率が15%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太細を有する合成繊維マルチフィラメント。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の合成繊維マルチフィラメントを用いてなることを特徴とする織物。
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