JP3855071B2 - 抗hivモノクローナル抗体 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明はウイルス感染の予防、治療、診断、並びに生化学及び組織学の研究に有用な新規物質を提供する免疫学的技術に関する。さらに詳細には、後天性免疫不全症候群(エイズ)の原因ウイルスと認められるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して広範囲の中和スペクトルを有するモノクローナル抗体及び該抗体を分泌するハイブリドーマ及びその製法に関する。
さらには該抗体を臨床に応用するためにヒト型化した組換えモノクローナル抗体に関する。
背景技術
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)およびエイズ関連症候群(ARC)等の一連の疾患の原因であるヒトレトロウイルスである。今日、これらの疾患は世界的に大きな問題となっているが、これらに有効なワクチンや確固とした治療法はまだ提供されていない。
HIVに対する抗ウイルス剤としては、核酸アナローグの逆転写酵素阻害剤3'-azido-2',3'-dideoxythymidin(AZT)や2',3'-dideoxyinosin(ddI)が用いられており、ウイルスの増殖抑制効果、CD4陽性細胞数の増加、延命等の治療効果が観察されている。しかしながら、これらの薬物によるエイズの治療効果は部分的或いは一時的である場合も多く、また造血系の細胞に対する毒性や増殖抑制を示す事から、結果として不全に陥った免疫系を再構築するのを制限している場合も少なくなく、この様な観点から、一層有効な抗HIV剤の開発が望まれている。
抗体は、ヒトをはじめ哺乳動物の免疫反応をつかさどる重要なタンパク質であり、外部から侵入してくる異物やその生体が異物として認識する物質を除去(中和)する機能を有することから、感染症治療薬としての期待も大きい。
カーパス(Karpas)らは、健常HIV感染患者由来の抗HIV抗体をエイズ患者に投与することによって、臨床症状の緩和を認めた(Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 85, p.9234(1989), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, p.7613(1990))。また、ジャクソン(Jackson)らも同様の結果を得ている(Lancet, 2, p.647(1988))。これらの結果は、エイズにおける抗体療法の有用性を示している。
このような受動免疫療法とは別に、HIVのコンポーネントワクチンを感染者に能動免疫し、免疫能力を上げる治療方法も試みられている(AIDS Res. Hum. Retroviruses,8,P1051(1992))。この場合、病状の進展していない患者においては治療効果が認められたが、CD4陽性細胞が減少しエイズが進行した患者においては能動的な免疫応答ができないために有意な効果は認められなかった。従って、エイズのように病状の進展した患者においては受動免疫療法に頼らざるを得ず、ここに中和抗体が大きな意味を持つことになる。
HIVを中和する抗体の認識するエピトープは、HIVの外皮膜に存在する分子量約12万ダルトンの糖蛋白質抗原(gp120)、分子量約41000ダルトンの膜貫通糖蛋白質抗原(gp41)及び分子量約17000ダルトンの核蛋白質抗原(p17)に存在している。なかでも、gp120の第3可変領域(V3)に存在するエピトープ(アミノ酸番号303〜338)は主要中和領域(Principal NeutralizationDeterminant;PND)とも呼ばれ、強力な中和抗体を誘導するエピトープであり、治療薬或いはワクチン開発の主要なターゲットとなっている。
ウイルス感染におけるPND領域の正確な役割についてはまだ不明な点も多いが、gp120とCD4が結合した後に、ウイルスが侵入するのを助ける領域ではないかと推察されており、またCD4陽性細胞の多核巨細胞形成にも重要な役割を演じている。従って、この領域に特異的に結合しウイルスの感染と増殖を抑制する抗体を作製すれば効果的な抗HIV剤となる可能性がある。
しかしながらPND領域はgp120の中でもアミノ酸変異が大きいため、この領域を認識するモノクローナル抗体は特定のHIV株しか中和しないウイルス株特異的中和抗体である場合が多い。このような株特異的なモノクロナール抗体を治療もしくは予防に用いる場合には、その有効性はその抗体によって中和されるHIVに感染した患者のみに限定される。しかも、一人のHIV感染患者の中に存在しているHIV株の種類も決して1種類ではなく、数%のアミノ酸変異を持つ多くのウイルス変異株が集合体(quasispecies)として共存しているのが通常である。
従って、モノクローナル抗体の治療薬としての可能性は、このような各患者及び同一患者中に多種類存在しているHIV変異株のうちのどれだけの範囲の変異株に結合し中和できるか、すなわち抗体の中和スペクトルの広さと密接に関係しており、臨床的に有効なHIV治療薬を得るためには、できるだけ広い中和スペクトルを有するモノクロナール抗体の確立が望まれている。
発明の開示
本発明の目的は、HIVの上記PND領域を認識し、かつ広い中和スペクトルを有するモノクロナール抗体及び該抗体を産生する能力を持つハイブリドーマを提供することであり、さらに該モノクロナール抗体からヒト投与に適するように作製されたキメラもしくはヒト型化抗体及びその調製法を提供することにある。本発明者らは、多くのHIV感染者から得られたウイルスのPND領域を調べた結果、この領域は一部のアミノ酸の変異は激しいが、PND領域の中央部に存在するGly-Pro-Gly-Arg配列を含む、いわゆるPNDチップ領域(PND-Tip)は比較的保存性が高いことを明らかにした(AIDS Res. Human Retroviruses, 7 p.825(1991))。従って、この保存された領域を認識する抗体を作製することができれば、多種類のウイルス株を中和することができる臨床的に効果的なモノクローナル抗体となり得るであろう。
しかしながら、この領域を認識する抗体は作製効率が低いことが予想される。ブデット(Boudet)ら(Int.Immunol.,4,p.283(1992))によるとPND領域内でも免疫原性の高い領域は上記Gly-Pro-Gly-Arg(GPGR;以下同様)配列の外側の塩基性アミノ酸で、GPGR配列の免疫原性は低いことが示唆されている。また、PND領域を認識する抗体の多くが株特異的であるという事実は、HIV感染患者あるいはHIV抗原で免疫された動物(マウス等)の生体内において、前述のような中和スペクトルの広い抗体を産生する抗体産生細胞が非常に少ないことを示している。従って、何らかの方法によって、該抗体を産生する細胞を増やす必要がある。
そこで、本発明者らは以下に示す新規な免疫方法を考案し、PND-チップ領域を認識する抗HIV抗体を積極的に誘導することに成功した。すなわち、まず被験動物をGPGR配列をその配列の一部に含むHIVの1つの株で免疫する。次にHIVのPND領域のGPGR配列を共通に含有するが該配列のN末側、C末側のアミノ酸配列は異なる他のHIV株で2次免疫以降を連続的に行う。免疫に用いる抗原としてはウイルス粒子、感染細胞、精製gp120、適当な処理を行った(例えば酵素処理などを施した)gp120あるいはPND領域のアミノ酸配列をもとに合成したペプチドおよびその誘導体などが挙げられるが、PND領域に限定した免疫誘導を行うという意味から、PND領域のアミノ酸配列からなる合成ペプチドもしくはこれを血清アルブミンやキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等にコンジュゲーションしたものが好ましい。免疫用マウスとしては、BALB/c、C57BL/6、C3H/HeNおよびこれらのマウスのF1マウスなどが用いられる。免疫はマウス(4〜8週齢、20〜30g)1匹に対して抗原20〜200μgを用いて1〜2週間ごとに4〜7回行なう。
このような免疫方法を行えば2次免疫以降のブースター効果によって、免疫動物の生体内に誘導されてくる抗体産生細胞のポピュレーションは1次及び2次免疫以降に用いた抗原の重なりあった領域、即ちPND-チップ領域を認識する抗体を産生するものが増えるはずである。この免疫マウスの脾臓細胞を細胞融合の材料に用いれば効率的に目的の抗体産生細胞を作製し得る。
細胞融合によらないモノクローナル抗体産生細胞の作製法としては、HIV感染患者のB細胞をエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)で形質転換し抗体産生細胞をモノクローン化する方法がある。しかしながら、本発明の方法の場合、抗体産生細胞のソースがHIV感染者の末梢血となるため原材料の調達が困難である場合が多く汎用ではない。さらに、HIV感染者に存在する中和抗体の大部分は株特異的抗体であり、上述のPND-チップ領域を認識する抗体は非常に希である場合が多いため効率的な作製法ではない。これに対しハイブリドーマ法はマウスなどの実験動物を用いるために免疫原が入手容易であり、前述のような免疫方法を工夫したりすることができる。従って、本発明では、目的のモノクローナル抗体産生細胞(PND-チップ領域を認識する)を積極的に誘導するという観点からみればハイブリドーマ法が効率的である。
【図面の簡単な説明】
図1.多種類のPNDペプチド(SP-1、SP-17、SP-11、SP-12、SP-14、SP-30)で連続的に免疫したマウスより得られた抗血清の各V3ペプチドとの反応性を示す。
図2.単一のPNDペプチド(SP-1)で連続的に免疫したマウスより得られた抗血清の各V3ペプチドとの反応性を示す。
図3.本発明によるモノクローナル抗体C25及び株特異的な中和抗体μ5.5、α64による各種HIV変異株の感染(遊離ウイルスによる感染及び細胞間感染)阻害活性を示している。
図4.C25抗体の各種PNDペプチドに対する反応性を示している。
図5.μ5.5抗体の各種PNDペプチドに対する反応性を示している。
図6.C25抗体のMN由来のIHIGPGRAFY、NI54-2由来のIRVGPGRAIY及びNI53由来のIRVGPGRTLYのデカペプチドから1つずつアミノ酸を欠落させた各々10種のノナペプチドに対する反応性を示す。
図7.MN由来のペプチドIHIGPGRAFYをもとに作製された、3〜10個のアミノ酸からなるオーバーラップペプチド群(N末端から1つずつアミノ酸がずれた一連のペプチド)とC25の反応性を示している。
図8.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の1番目のIを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図9.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の2番目のHを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図10.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の3番目のIを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図11.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の4番目のGを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図12.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の5番目のPを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図13.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の6番目のGを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図14.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の7番目のRを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図15.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の8番目のAを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図16.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の9番目のFを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図17.C25抗体のMN由来のペプチドIHIGPGRAFYのアミノ酸の10番目のYを他のアミノ酸に置換したデカペプチドとの反応性を示している。
図18.日本におけるHIV感染者由来のコンセンサスPNDペプチドとC25抗体の反応性をμ5.5及びα64のそれと比較した結果である。
図19.C25抗体のH鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列を示す。
図20.C25抗体のL鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列を示す。
図21.ヒト型化C25抗体(RC25)のH鎖可変領域の5'側遺伝子の核酸配列及びN末端側のアミノ酸配列を示す。
図22.ヒト型化C25抗体(RC25)のH鎖可変領域の3'側遺伝子の核酸配列及びC末端側のアミノ酸配列を示す。
図23.ヒト型化C25抗体(RC25)のL鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列を示す。
図24.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染細胞に対する抗体依存性補体媒介性細胞障害活性(ACC)をC25抗体、正常ヒト免疫グロブリンと比較して示す。
図25.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞障害活性(ADCC)をC25抗体、正常ヒト免疫グロブリンと比較して示す。
図26.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染患者(YHI)血漿由来ウイルスに対する中和活性を示す。
図27.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染患者(ASA)末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性を示す。
図28.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染患者(HHA)末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性を示す。
図29.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染患者(MNI)末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性を示す。
図30.ヒト型化C25抗体(RC25)のHIV感染患者(MOK)末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性を示す。
図31.CD8再構成後のHIV感染患者(KMO)末梢血単核細胞由来ウイルスに対するヒト型化C25抗体(RC25)有効濃度の低減効果を示す。
発明を実施するための最良の形態
図1は上述の方法によって免疫されたマウス血清の各種PND領域ペプチドに対する反応性を調べた結果である。すなわち、GPGR配列は同じであるが、それ以外のアミノ酸配列は異なる多種のPNDペプチドで連続的に免疫したマウスの抗血清は免疫に用いたPNDペプチドのすべてに反応した。さらに驚いたことに、抗血清は免疫に用いたペプチドのみならず、GPGR配列が共通である他のPNDペプチドとも反応した。また免疫原のPNDペプチドに共通したアミノ酸配列であるGPGRが5連続で並んだペプチド(SP-30)とも強く反応した。さらに、この抗血清は多くのHIV株を中和することが確かめられた。
一方、図2に示したように、同一ペプチド(SP-1)を用いて5〜6回免疫を行なったマウスの抗血清は、免疫原のPNDペプチドには反応したが、その他のPNDペプチドとの反応性は低かった。またGPGR合成ペプチドとの反応性を調べたがほとんど反応しなかった。すなわち、同一のペプチドで免疫したマウスは、たとえ高度免疫されようとも株特異的な抗体の応答しか示さなかった。
このことから、いくつかの異なるHIVのPNDペプチドを連続的に免疫したマウスは種々のHIV株に対して広い中和スペクトルを有する抗PND-チップ抗体を誘導していることが明かとなり、このマウスの脾臓細胞を用いて細胞融合を行えば効率的に広い中和スペクトルを有するモノクローナル抗体産生細胞を作製できるものと考えられた。
ハイブリドーマの調製に関しては、ケーラー(Kohler)とミルシュテイン(Milstein)の方法(Nature 256, p.495(1975))を基に行なう。ミエローマ細胞としては、MOPC-21NS/1(Nature 256, p.495 (1975))、SP2/0-Ag14(Nature 276,p.269(1979))、p3X63Ag8-U1(Eur.J.Immunol.6,p.511 (1976)), p3X63-Ag8(Nature, 256, p.495(1975)), p3X63-Ag8.653(J.Immunol. 123, p.1548(1979))等が好適に用いられる。脾臓細胞とミエローマ細胞は1対1〜10対1の割合で混合し、融合はNaCl(約0.85%)、および分子量1,000〜6,000のポリエチレングリコールを含有するリン酸緩衝液(pH7.2〜7.4)中で行なう。融合は両細胞の混合物を35〜37℃で1〜5分間インキュベートすることによって行なう。融合細胞(ハイブリドーマ)の選択は、ヒポキサンチン(1.3〜1.4mg/dl)、アミノプテリン(18〜20μl/dl)、チミジン(375〜4,000μl/dl)、ストレプトマイシン(50〜100μg/ml)、ペニシリン(50〜100単位/ml)、グルタミン(3.5〜4.0g/l)、牛胎児血清(10〜20%)を含有する基礎培地を用い、生育してくる細胞として選択する。基礎培地としては、動物細胞の培養に一般に使用されているRPMI1640培地、イーグル(Eagle)のMEM培地などが用いられる。融合細胞のクローン化は限界希釈法にて少なくとも2回以上繰り返して行なう。
モノクローナル抗体の作製におけるもう一つの重要な点は、どのような抗体を産生するハイブリドーマを選択するかである。すなわち細胞融合によって多くのハイブリドーマができるが、その中から望まれる抗体を産生するハイブリドーマをクローン化せねばならない。通常、選択はHIV-MN等の研究室で用いられているHIV株もしくはその株由来の中和エピトープであるPNDペプチド等との反応性を指標に行われるが、ここで用いられる株はin vitroで継代された株であるため、実際に患者の体内に存在しているHIV株を必ずしも反映しているとは限らない。我々の目的は患者の体内に在って、実際に流行しているHIVを駆逐することにあるので、そのための中和抗体を産生するハイブリドーマの選択には感染患者由来のHIV株を用いて行なう方が好ましい。そこでHIV感染者から直接PND領域のアミノ酸をコードする遺伝子を単離し大腸菌で発現させ、この組換えPNDペプチドとの反応性を指標にハイブリドーマを選別することによって、患者の生体内に存在するHIVと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択した。さらに、広い中和スペクトルをもつ抗体を確立するために、できるだけ多くのHIV感染者由来の組換えPNDペプチドを調製し、これらのペプチドのほとんどに反応し得る抗体を選択した。
この様な方法を用いて本発明者らは種々のHIV変異株を広く中和するモノクローナル抗体C25を確立した。C25抗体は、in vitroでの遊離のウイルスによる感染および細胞間感染を強く阻害した。また、免疫原に用いたほとんどのPNDペプチドと反応し、さらに多くのHIV株を中和したことから、C25抗体の認識エピトープは株間で保存された領域、即ちGPGRとその周辺であることが示唆された。合成ペプチドを用いた詳細なエピトープ解析の結果、本発明のC25抗体はPND領域内のPND-チップ周辺の配列が
Figure 0003855071
からなる一連のペプチドと反応することがわかった。
さらに本発明のC25抗体は、
Figure 0003855071
のペプチドと反応することがわかった。
すなわち、本発明のC25抗体はGPGRを結合の核とし、そのN末、C末側に1個ずつのアミノ酸を加えた6アミノ酸によって形成されるエピトープを認識していた。
以上のことからC25抗体はHIVのPND領域内の保存性の高いアミノ酸を認識し、多くのHIVの感染を阻害したことから、広い中和スペクトルを有することが明らかとなった。
次に、本発明者らはC25抗体の実際の臨床における有用性について、実際のHIV感染者由来のHIVに対するC25抗体の中和スペクトルを調べることによって検討した。
臨床的有用性とは、第1には、C25抗体が実際に流行しているHIV変異株のうちのどれだけの範囲のものに結合し中和できるかということである。そこで先ず、各感染者の生体内に存在するHIV変異株のPND領域を調べ、最も存在頻度の高いHIVのアミノ酸配列をコンセンサス配列とし、その配列を有するPNDペプチドとC25抗体との反応性を調べた。その結果、C25抗体は個々の患者由来HIV変異株のコンセンサスペプチドの約8割と反応した。本発明者らが以前に確立した株特異的中和モノクローナル抗体μ5.5の場合、その結合率は3割であり、C25抗体は非常に広い中和スペクトルを有していることがわかった。
第2は、一人の患者に存在するHIV変異株の集合体のうちのどれだけの範囲の変異株に対して効力を有するかという点にある。個々のHIV感染者中に存在するウイルス変異株のアミノ酸配列を調べてみると全く同一の配列を有しているというわけではなく、ある程度のアミノ酸配列が異なっているウイルス変異株が集合体として患者に感染している。従って、抗体を治療用として投与し感染ウイルスを体内から排除しようとする場合は、患者個体内に存在するほとんどのHIV変異株に反応する必要がある。そこで、C25抗体と一人の患者より分離されたHIV由来PND領域ペプチドとの反応を調べた。株特異的抗体μ5.5の場合は反応できないHIV変異株が感染者の体内にいくらか残存するが、C25抗体は感染者内に存在するHIV変異株の全部もしくは殆どと結合し得た。
このように本発明のC25抗体はPND領域の保存性の高いPND-チップ領域を認識し、強力な中和活性を示すモノクローナル抗体であり、HIVの多様性に広く対応できることが明らかとなった。事実、感染者の生体内に潜む大多数のHIV変異株と反応したことからC25抗体の臨床における有用性は大きく、該抗体の臨床応用への可能性が示唆された。
なお、本発明のモノクローナル抗体C25を産生するハイブリドーマの代表例は、ブダペスト条約に基づき、1994年2月10日付工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP-4561として寄託されている。
本発明のC25抗体は、上記のように広い中和スペクトルを有し、臨床的有用性が示唆されたが、マウス由来の抗体であるために、安全性(抗原性の惹起)或いは有効性(半減期の短縮)の観点からヒトに投与することは現実的には不可能である。従って、C25抗体を遺伝子工学的手法を用いて抗原結合能を変化させずにヒトの抗体のアミノ酸配列を有する分子に改変する必要がある。
そこでC25抗体の抗原結合部をヒト抗体定常領域と連結させたいわゆるキメラあるいはヒト型化抗体を作製するため、まずC25抗体の可変(V)領域遺伝子をクローニングし、塩基およびそれによってコードされているアミノ酸配列を決定した。
V領域遺伝子は通常の遺伝子操作技術により単離することができる。例えば、その細胞の染色体DNAから常法(例えば、マニアティス(T. Maniatis) "Molecular Cloning" Cold Spring Harbor Lab.(1982)参照)に従ってV領域遺伝子をクローニングする方法、あるいは、その細胞のmRNAを材料として常法(例えば、グローバー(D.M.Glover)編 "DNA cloning Vol.I" IRL press (1985))によりcDNAを合成しV領域遺伝子をクローニングする方法を利用することができる。いずれの方法も、V領域遺伝子クローニングの為のプローブとして、すでに報告されているマウス免疫グロブリン遺伝子の核酸塩基配列(例えば、坂野ら、Nature,286,p.676(1980);マックス(E.E.Max)ら、J. Biol. Chem., 256,p5116,(1981))を参照して合成したDNAプローブ等を利用することができる。また、PCR(ポリメレース連鎖反応)を利用したクローニングも可能である(オーランディ(R.Orlandi)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 3833 (1989);ヒューズ(W. D. Huse)ら、Science, 246, 1275 (1989))。
これらの方法によりC25抗体の可変領域遺伝子を単離し、塩基およびアミノ酸配列を解析した結果、C25抗体の可変領域はこれまでに報告されている抗体のそれとは異なる、全く新規な配列を有することが明かとなった。図19及び図20中のCDR1〜3領域は実際に抗原と結合する領域であり、この配列がC25抗体の広い中和スペクトルに密接に関係しているものと推察される。
そこで、この領域のアミノ酸配列をコードしている遺伝子断片をヒト抗体定常領域の遺伝子断片の上流に連結させてキメラC25抗体遺伝子を、あるいは前述のCDR領域のみをヒト抗体可変領域のCDRに移植することによってヒト型化C25抗体遺伝子を作製した。この遺伝子を発現させ、発現産物の性状を解析した結果、キメラ及びヒト型化C25抗体はマウスC25抗体と同等の中和スペクトルと中和活性を有していた。特に、CDR領域のみを移植したヒト型化C25抗体がPNDと反応した事実は、抗体のV領域のうち、CDRこそが結合における重要なアミノ酸であることを意味している。また、該抗体は抗マウスIgGとは反応せず抗ヒトIgGとのみ反応したことからヒト抗体としての抗原性を示すことが明かとなった。従って、キメラ及びヒト型化C25抗体が人体へ投与された場合、重篤な抗原性を惹起しないことが示唆された。
キメラ及びヒト型化抗体を作製した場合のもう一つの利点は、ヒト抗体定常領域に由来した抗体依存性補体媒介性細胞障害(ACC)や抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)などのエフェクター活性を有することである。C25抗体は遊離のHIV粒子および感染細胞を介しての感染を阻害することは前述のとおりである。しかしながら、これに加えて感染細胞を破壊することができるかどうかも治療薬としての重要な要素である。一般に抗体単独では感染細胞を殺滅することはできないが、補体やFcRを有したエフェクター細胞を介して感染細胞を破壊できる。これらの補体やFcRと結合する領域は抗体定常領域である(Mol.Immunol,22,p161(1985))。
そこで、本発明のキメラ化及びヒト型化したC25抗体の抗体定常領域に依存したACCおよびADCC活性を調べた。その結果、キメラ化及びヒト型化したC25抗体は補体あるいはエフェクター細胞の存在下でHIV持続感染細胞を有意に破壊した。このことから本発明のキメラもしくはヒト型化C25抗体は、遊離のウイルス粒子あるいは感染細胞表面上のウイルス抗原による感染を阻害するだけでなく、感染細胞を破壊することもできることが示唆された。
また、前述したように、実際のHIV感染患者に存在するHIVウイルス変異株は、全く同一の配列を有するわけではなく、アミノ酸配列が異なる多種の変異株の集合体である。従って、抗体を治療用として投与し、感染ウイルスを体内から排除するには、この変異株の集合体のほとんどを中和する必要がある。そこで、該ヒト型化C25抗体の患者血漿及び末梢血単核細胞由来のウイルスに対する中和活性を測定したところ、多くの患者由来ウイルスに対して明らかな中和活性を示した。これにより、該ヒト型化C25抗体は、実際の患者に対して臨床的に有用であることが示された。
以上の様に本発明者らは感染者由来の多種類のHIV株を広く中和することのできるモノクローナル抗体C25を作製した。更にそれをヒト型化することによりヒトにおける抗原性を低減させると同時に、感染細胞破壊等のエフェクター活性を賦与することができた。かくして本発明はHIV感染症の予防、治療及び診断に有用な抗体を供与するものである。
実施例1:モノクローナル抗体の調製
1−1)抗原(合成PNDペプチド)の調製
表1に示したgp120のアミノ酸配列第303〜322番目に対応する合成PNDペプチドを免疫抗原及びアッセイ用抗原として使用した。
Figure 0003855071
上記ペプチドの化学合成にはABI430Aペプチドシンセサイザー(アプライドバイオシステム社)を用いた。その結果、粗生成物が得られ、TFMSA法によりレジンからペプチドを切り出した後、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製を行なった。逆相HPLCによる精製を3回繰り返し、得られたピーク画分を集めた。
次に、得られたそれぞれの合成ペプチドを凍結乾燥し、免疫用担体としてのKLHと結合させ、ペプチド-KLHコンジュゲートを作製した。まず、上記ペプチド10mgを10mMPBS(pH7.0)2mlに溶解し、MBS型架橋剤のジメチルホルムアミド溶液(40mg/100μl)を添加して室温で30分間撹拌した。次に反応液をジクロルメタン2mlで3回洗浄し、得られた水層を分取した(溶液A)。一方、KLH20mgを0.2M Tris-HCl(pH8.6、8M尿素)5mlに溶解し、ジチオトレイトール(DTT)を添加して室温で1時間撹拌した。反応液に10%トリクロロ酢酸3mlを加え、沈澱物を吸引濾過し、蒸留水2mlで洗浄した後、20mM NaPB(pH7.0 6M尿素)5mlに溶解した(溶液B)。溶液Aと溶液Bとを室温にて3時間混合撹拌し、反応生成物を透析した後、凍結乾燥した。
以上のようにしてPNDペプチド及びPNDペプチド-KLHコンジュゲートを調製し、免疫用抗原及びアッセイ用抗原として用いた。
1−2)マウスの免疫感作
一例として、前記で調製した合成ペプチドによる免疫感作を以下に示すが、免疫されるペプチドの順番を変えることは可能である。
4〜8週齢のBALB/c及びC3H/HeNマウス群を使用した。免疫感作は腹腔内経路で5回接種した後、静脈内経路で1回接種するものとした。すなわち0日目にフロイントの完全アジュバント存在下でSP-1-KLHを腹腔内(i.p.)投与し、7日目にフロイントの不完全アジュバント存在下でSP-17-KLHをi.p.、14日目にフロイントの不完全アジュバント存在下SP-11-KLHをi.p.、21日目にフロイントの不完全アジュバント存在下SP-12-KLHをi.p.、28日目にフロイントの不完全アジュバント存在下SP-14-KLHをi.p.、35日目にアジュバント非存在下でSP-30-KLHを静脈内投与した。
1−3)免疫マウス抗血清における抗体価の測定
EIA法により行なった。96穴のマイクロテストプレートに前記のごとく作製した合成ペプチド抗原(2μg/ml)を100μl/穴で加え、4℃で一晩インキュベートすることにより固相化した。さらに、1%BSA(ウシ血清アルブミン)溶液150μlを加え、同様にインキュベートしてマスキングを行なった。このようにして作製した抗原固相化プレートに細胞融合法によって得られたハイブリドーマおよびクローニング後のハイブリドーマの培養上清を加えて、4℃で1.5時間インキュベート後、0.1%Tween20/PBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体溶液(カッペル社製、5,000倍希釈)を100μl/穴加えた。4℃で1時間インキュベート後、0.1%Tween20/PBSにて5回洗浄し、その後TMBZ基質溶液を加え、常法により発色させ、その吸光度を波長450nmにて測定した。
図1から明らかなように最終免疫後の抗血清は免疫抗原に用いたSP-1,SP-17,SP-11,SP-12,SP-14及びSP-30の全てに反応した。さらに驚いたことに、抗血清は免疫に用いたペプチドのみならず、それ以外のHIV株由来のPNDペプチドSP-6,SP-9及びSP-20とも反応した。これに対し、単一ペプチドSP-1で5〜6回免疫を行ったマウスにおいては免疫原のペプチド(SP-1)には著しく反応したが、その他のペプチドとの反応性は低かった(図2)。SP-30との反応性については、同一ペプチドで免疫したマウスの抗血清はほとんど反応しなかったが(図2)、異なるPNDペプチドで免疫したマウスの抗血清は強く反応した(図1)。また、抗血清による中和試験を行なった結果、SP-1でのみ免疫したマウスはHIV-MN株のみしか中和しなかったが多種類のPNDペプチドで免疫されたマウスのそれは多くのHIV株を中和した。このことから免疫されたマウスは様々なHIV株に対する広い中和スペクトルを持つ抗GPGR抗体を誘導していることがわかった。また、種々のHIV株を中和することも確認された。そこで、このマウスの脾臓細胞を用いて細胞融合を行なった。
1−4)細胞融合及びハイブリドーマの培養
最終免疫の3日後に、常法によりマウスから脾臓細胞を採取した。
脾臓細胞をミエローマ細胞p3X63Ag8-U1と細胞数1対5の割合で混合して、遠心処理(1,200r.p.m/5分)して上清を除き、沈澱した細胞塊を充分ほぐした後、撹拌しながら、1mlのポリエチレングリコール液(ポリエチレングリコール-4000(2g),RPIM1640(2ml))を加えた。5分間37℃にてインキュベートした後、液の全量が50mlになるようにゆっくりとRPMI1640を加えた。遠心分離後(900r.p.m.にて5分)、上清を除き、ゆるやかに細胞をほぐした。これに正常培地(RPMI-1640培地に牛胎児血清10%を加えたもの)100mlを加え、メスピペットを用いてゆるやかに細胞を懸濁した。
懸濁液を24穴の培養プレートに分注し(1ml/穴)、5%の炭酸ガスを含む培養器中で温度37℃にて24時間培養した。次に、1ml/穴のHAT培地(正常培地にヒポキサンチン(1.3〜1.4mg/dl)、チミジン(345〜4,000μl/dl)及びアミノプテリン(18μl/dl)を加えた培地)を加え、さらに24時間培養した。その後、2日間、24時間毎に、1mlの培養上清を同量のHAT培地と交換し、前記と同様にして10〜14日間培養した。
コロニー状に生育した融合細胞(約300個)の認められたそれぞれの穴について、1mlの培養上清を同量のHT培地(上記HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)と交換し、その後、2日間、24時間毎に、同様の交換を行なった。HT培地で3〜4日培養した後、培養上清の一部を採り、以下に述べるスクリーニング法にて目的のハイブリドーマを選別した。
1−5)ハイブリドーマのスクリーニング
目的のハイブリドーマの選別には下記のEIA法、ウエスタン・ブロット法を組み合わせて行なった。このようにして選別されたクローンについて中和活性を測定した。
(1)EIA法
96穴のマイクロテストプレートに前記のごとく作製した合成PNDペプチド抗原、もしくは実施例2の2−5記載の大腸菌発現PNDペプチド(蛋白質濃度1〜10μg/ml)を100μl/穴で加え、4℃で一晩インキュベートすることにより固相化した。さらに、1%BSA(ウシ血清アルブミン)溶液150μlを加え、同様にインキュベートしてマスキングを行なった。このようにして作製した抗原固相化プレートに細胞融合法によって得られたハイブリドーマ及びクローニング後のハイブリドーマの培養上清を加えて、4℃で1.5時間インキュベート後、0.1%Tween20/PBSで3回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体溶液(カッペル社製、5,000倍希釈)を100μl/穴加えた。4℃で1時間インキュベート後、0.1%Tween20/PBSにて5回洗浄し、その後TMBZ基質溶液を加え、常法により発色させ、その吸光度を波長450nmにて測定した。PND領域のGPGR配列が保存されているペプチド群と共通に反応するハイブリドーマを選び、クローニングした。クローニング後のハイブリドーマクローンについても同様の手法で選別した。
(2)ウエスタン・ブロッティング法
トービン等の方法に準じて行なった(Towbin et al., Proc. Natl. Acad.Sci.U.S.A., 76, p.4350(1979))。
HIV-MN、HIV-LAV、HIV-RF等の実験室株及びNI61、NI23、NI54-2、NI53、NI18及びNI63等の臨床分離株のウイルス粒子、または、実施例2の2−5記載の大腸菌発現PNDペプチドを調製し、これを10%のSDS-PAGEを用いて電気泳動し、ゲルをニトロセルロース膜に乗せてウイルスを膜上に移行させ、膜を0.4〜0.5cm幅に切断した。各細片をハイブリドーマ培養上清液に浸し、一晩インキュベートした。その後、細片をPBSで3回洗浄した後、ビオチン標識抗マウスIgG(TAGO社製)の1:750希釈液中で2時間保温した。細片をPBSで3回洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼを結合させたアビジン(シグマ社製)(1:1000希釈)に浸し、1時間保温した。PBSで3回洗浄後、4-クロロ-1-ナフトールを用いる発色試薬(Bio-Rad社製)で発色させ、PND領域のGPGR配列が保存されているウイルスのgp120及び大腸菌発現PNDペプチドのバンドと共通に反応するハイブリドーマを選びクローニングした。クローニング後のハイブリドーマクローンについても同様の手法で選別した。
(3)中和活性測定法
中和活性測定には、各PNDアミノ酸配列を有する各種実験室ウイルス及び患者からの各種分離ウイルス及びそのクローン化ウイルスの培養上清をウイルス原液(104.5〜105 TCID50)として使用した。ウイルスのクローニングは、限界希釈法、または、CD4-HeLaの細胞でのプラーク法を用いた。
まず、10TCID50/50μlに調製したウイルス液とハイブリドーマクローン培養上清または腹水精製液の50μl(種々の段階希釈したもの)とを96穴の平底プレートに播種し、37℃で1時間インキュベートした。その後、MT4細胞を104個/100μl/穴(10%FCS、L-グルタミン3.5〜4.0g/l、ペニシリン50U/ml及びストレプトマイシン50μl/mlを含むRPMI1640の培地に浮遊したもの)で添加し、5日間培養した。
感染時に生じる合胞体形成(シンシチウムフォーメーション)を抗体が抑制するか否かで中和活性を判定した。また、中和力価は合胞体形成を100%抑制する抗体の最低有効濃度として表した。
上記の選別方法によってモノクローナル抗体C25を産生するハイブリドーマが得られた。
1−6)C25モノクローナル抗体の製造
プリスタン処理した8週齢のSPF雌マウス(BALB/c、C3H/HeN、及びそれらのF1マウス)に上記1−5で得られたハイブリドーマC25抗体株の5×106個/匹を各々のマウスの腹腔内に投与した。10〜21日後に、腹水癌が誘発された。マウスから腹水を採り、3000r.p.m.にて5分の遠心処理により固形成分を除去した後、アフィゲルプロテインA MAPS-IIキット(Bio-Rad社製)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにて精製した。
実施例2:C25モノクローナル抗体の性状解析
2−1)C25抗体のウイルス中和活性
C25抗体のHIVに対する中和活性を様々なHIV株を用いて行った。図3に、用いたウイルス株とウイルスのPND領域のアミノ酸配列を示す。中和試験は実施例1に示した方法で行った。比較対照として、HIV-MN株を株特異的に中和するμ5.5、NI53株を株特異的に中和するα64のそれぞれのモノクローナル抗体を用い、比較検討した。
図3の左側は遊離のウイルスによる感染を100%阻害する抗体の最低有効濃度(μg/ml)を示している。C25抗体の中和活性は、μ5.5やα64とほぼ同程度であり、非常に強い。HIV株に対する特異性に関してはμ5.5やα64の株特異的抗体と比較して、はるかに多くのHIV株を中和しており広い中和スペクトルを有していることがわかった。
図3の右側は感染細胞による細胞間感染を80%以上阻害する抗体の最低有効濃度(μg/ml)を示している。C25抗体の細胞間感染の阻害活性も、μ5.5やα64とほぼ同程度であり、非常に強い。また、μ5.5やα64の株特異的抗体と比較して、はるかに多くのHIV株による細胞間感染を阻害しており広い中和スペクトルを有していた。
2−2)各種合成ペプチドとの反応性
中和試験の結果からC25抗体抗体が広い中和スペクトルを持つことがわかった。そこで、実施例1の1−1に示した各種のPNDペプチド(20アミノ酸)にC25抗体がどのように反応するかをEIA法で検討した。
図4から明らかなようにC25抗体はSP-1、SP-6、SP-9、SP-11、SP-12、SP-20、及びSP-30と反応した。このことからC25抗体はそれぞれのペプチドに共通の配列であるPND-Tip領域を認識しているものと推察された。一方、株特異的抗体であるμ5.5は免疫抗原であるSP-1とのみ結合し、他のペプチドとは反応しなかった(図5)。
2−3)C25抗体の認識するエピトープ解析
C25抗体の認識するエピトープがPND領域のGPGR近傍のチップ配列にあることが示唆されたため、以下の方法によって認識エピトープを同定した。
(1)特定のアミノ酸を欠落させたPNDペプチドとの結合性試験
C25抗体は上記2−2の実験からHIV-MN由来のペプチドSP-1(YNKRKRIHIGPGRAFYTTKN-C)、NI53由来のペプチドSP-12(NNTKKAIRVGPGRTLYATRR-C)、及びNI54-2由来のペプチドSP-11(NNTRKGIRVGPGRAIYATEK-C)と反応することがわかっている。いまこれらのペプチドからアミノ酸を1つずつ欠落させたペプチドを合成しC25抗体との反応性を調べれば、どのアミノ酸が結合に寄与しているかが明らかとなる。そこで、C25抗体と結合することがわかっているMN由来のIHIGPGRAFY及びNI53由来のIRVGPGRTLYのデカペプチドから1つずつアミノ酸をディリーションさせた10個のノナペプチドをポリエチレンロッド上で合成し、実施例1の1−3に述べたEIA法によってC25抗体との反応性を調べた(図6)。
HIV-MN由来のIHIGPGRAFYを用いた場合、該ペプチドの第3〜第8番目のアミノ酸I、G、P、G、R及びAが欠落するとC25抗体はほとんど反応しなくなる。また、NI53由来のIRVGPGRTLYを用いた場合は、該ペプチドの第3〜第8番目のアミノ酸V、G、P、G、R及びTが欠落すると反応しない。さらに、NI54-2由来のIRVGPGRAIYを用いた場合は該ペプチドの第3〜第8番目のアミノ酸、V、G、P、G、R及びAが欠落すると反応しなかった。
これらのことから、C25抗体とHIV-MNとの結合にはIGPGRAの配列が、NI63との結合にはVGPGRTの配列が、さらにNI54-2との結合にはVGPGRAの配列が不可欠であることが明かとなり、それゆえ、C25抗体の認識エピトープはGPGRを核とする前後1個のアミノ酸を含む6アミノ酸であることが示唆された。
(2)オーバーラッピングヘキサペプチドとの結合性試験
次に、C25抗体が反応するHIV-MN由来のペプチドIHIGPGRAFYをもとに、3〜10個のアミノ酸からオーバーラップペプチド群(N末端から1つずつアミノ酸がずれた一連のペプチド)を(1)と同様に固相で合成した。これらのペプチド群とC25抗体の反応性をEIAで調べ、どの部分がエピトープとなり得るかを検討した(図7)。
その結果、ペンタペプチド以下の短いペプチドとは反応性が低かったが、ヘキサペプチド以上の長いペプチドとは十分な反応性を示した。また、オーバーラップヘキサペプチド群中、最も強く反応したペプチドはIGPGRAであり、その次に強く反応したのはGPGRAFであった。しかしながら、HIGPGR及びPGRAFYは顕著に反応性が低下したことにより、C25抗体の認識するエピトープは(1)の結果と同様にIGPGRAの6アミノ酸配列であることが示唆された。
2−4)アミノ酸置換分析
次に、C25抗体のHIV変異株に対する中和の広さ(中和スペクトル)を調べる目的で、アミノ酸を1つずつ他の19種類のアミノ酸に置換したPNDペプチドとの反応性を調べた(図8〜17)。ここでは、一例としてHIV-MN由来のデカペプチドIHIGPGRAFYをベースとして使用した。
I1HI2G1PG2RAFYにおけるG1,P及びRを他のアミノ酸に置換した場合、C25抗体はほとんど結合しなかった。また6番目のG2はAと特に強く反応したことから、G2はAと置換可能であることが明らかとなった。従って結合に最も寄与しているアミノ酸はGPGRであると考えられた。GPGRのN端側に位置するI2はA,L,M,N,P,Q,S,T,V及びYと、C端側に位置するAはP以外の全てのアミノ酸とそれぞれ置換が可能であった。このことからGPGR両端のアミノ酸も決定的に重要ではないが結合に幾らか寄与していることが証明された。これらアミノ酸のさらにN末端側及びC末端側に存在するI1、H、F及びYは他のアミノ酸に置換しても結合性を失わなかった。
以上の2−3及び2−4の実験結果から、C25抗体はGPGRを結合の核とし前後1個ずつのアミノ酸を含む以下に示す6アミノ酸によって形成されるエピトープを認識していることが証明された。
さらに、2−4のアミノ酸置換解析の結果から、以下の多くのアミノ酸変異に対応し得る抗体であった。
Figure 0003855071
2−5)HIV感染者ウィスル由来PNDペプチドとC25抗体の反応性
次に、実際のHIV感染者の体内に存在しているHIVとC25抗体の結合を以下の方法で調べた。
まず、HIV感染者の末梢血リンパ球(PBL)を1×RSBバッファーに浮遊させ、SDS(最終濃度1%)、Proteinase K(最終濃度1mg/ml)を加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、フェノール抽出、エタノール沈澱を繰り返し、高分子量DNA(ゲノムDNA)を得た。また、感染者の血清よりHIV粒子を沈降させ逆転写酵素でcDNAを合成した。これらの高分子量DNAあるいはcDNAを鋳型にして以下のA,Cプライマーを用い感染患者HIVのgp120/PND領域をPCR法で増幅した。
Figure 0003855071
増幅はTaqポリメラーゼを用い、30〜35サイクル行なった。
このようにして得た増幅DNAフラグメントをpUC18プラスミドにてクローニングし、ダイデオキシ法により増幅DNAフラグメントのシークエンスを行なった。更に、このクローン化DNAフラグメントをpUEX2発現ベクターに組み込み、大腸菌にトランスフェクトして42℃で加熱誘発を行ない発現させた。発現した蛋白はβ-ガラクトシダーゼとの融合蛋白となっており、大腸菌封入体として以下の精製を行なった。発現した大腸菌をグラスビーズにて破砕した後、リゾチーム処理(最終濃度0.1mg/ml)を4℃にて行ない、得られた遠心沈査物をTriton X-100(最終濃度0.5%)にて処理した。得られた遠心沈査物を8M尿素に可溶化した後、C25抗体と反応させた。抗体との結合性は実施例1の1−5記載のEIA法及びウエスタンブロッティング法で確認した。
図18は各患者において最も高頻度で存在するHIVのPND領域のアミノ酸配列とこれに対するC25抗体の反応性を検討した結果である。今回30人のHIV感染者を調べたが、このうち25人の患者由来のコンセンサス配列にC25抗体は結合した。すなわちC25抗体の結合スペクトルは83%と非常に広いものであった。これに対し従来の株特異的なモノクローナル抗体であるμ5.5やα64は約30%のスペクトルしか持たなかった。
またHIV感染者のウイルスのアミノ酸配列を調べてみると全く同一の配列というわけではなく、ある程度のアミノ酸配列が異なっているウイルスが集合体として患者に感染している。抗体を感染者に投与しウイルスを体内から排除する場合は、患者個体内に存在するほとんどのHIVに反応する必要がある。表2と表3に、C25抗体と一人の患者より分離されたHIV由来PND領域ペプチドとの反応を調べたものを示す。
Figure 0003855071
Figure 0003855071
感染者TIWの場合、C25抗体は全てのHIVと結合するが、μ5.5では結合し得るHIVは1つも見あたらなかった(表2)。感染者NI230の場合も、C25抗体は全てのHIVと結合することができたが、抗体μ5.5においては反応できないHIVがいくらか残存することがわかった(表3)。このようなHIV感染者13人についてその結果を表4にまとめた。C25抗体の場合、殆ど全ての感染者において高率に反応しており、100%反応する感染者は8人、90%以上と反応する感染者では11人と非常に多い。一方、株特異的なμ5.5抗体の場合、反応性は低く、90%以上と反応する感染者はわずか1人である。これらのことから、C25抗体はHIVの変異の激しさに十分対応でき、臨床応用が現実的に可能な抗体であることが証明された。
Figure 0003855071
実施例3:キメラC25抗体(CC25)の作製
3−1)C25抗体V領域遺伝子の単離
マウス免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子の単離については以下のように行なった。C25細胞から常法[グローバー編”DNA cloning Vol.I”IRL press(1985)]に従って全RNAを抽出し、cDNA合成システム・プラス(アマシャム)を用いて1本鎖cDNAを合成した。この1本鎖cDNAを鋳型に、カバット(Kabat)ら(Sequences of Proteins of Immunological Interest 4th ed.,Public HealthService, NIH, Washington DC, 1987)の分類したV領域とJ領域の核酸塩基配列をもとにして合成したDNAプライマーを用いてポリメレース連鎖反応(PCR)を行なった。V領域プライマーとJ領域プライマーにはそれぞれHindIIIとBamHIサイトが付加されている。PCRはCETUS社のプロトコールに従って行なった。すなわち、これらのプライマーはともに100pmol使い、PCRの試薬はCETUS社のキットを使用した。PCRの条件は、94℃1分、55℃1分、72℃1分で25サイクル行なった。PCR後、得られたDNA断片をpUC18(宝酒造(株)製;以下本実施例で使用した試薬は特に断りのない限り宝酒造(株)製あるいは東洋紡(株)製を使用した)のHincIIサイトへサブクローニングした。
3−2)C25抗体マウスV領域遺伝子の核酸塩基配列
東洋紡社のシークナーゼVer.2キットを用いて、pUC18に組み込まれたV領域遺伝子をシークエンスした。その結果得られたC25抗体の核酸塩基配列を図19及び図20に示す。また、その核酸塩基配列から得られるアミノ酸配列についても同様に図19及び図20に示す。C25抗体の核酸塩基配列はいずれもV領域遺伝子特有の再配列を起こしており、しかも発現可能なオープンリーディングフレーム(ORF)をとっていた。
3−3)キメラC25抗体発現遺伝子(CHC25,CLC25)の構築
単離されたC25抗体V領域遺伝子が本当に抗HIV活性を担うV領域をコードする遺伝子であるかどうかを確認するために、マウス−ヒトキメラ抗体を作製した。キメラ抗体の発現のためにβ-アクチン(AG)のプロモーターを持った発現ベクターAG-κ,AG-γ1がそれぞれ使われた。AG-κは、ヒトκ鎖定常領域遺伝子と選択マーカーとしてDHFR遺伝子を持ち、AG-γ1はヒトγ1鎖定常領域遺伝子と選択マーカーとしてneo遺伝子を持つ。前述の調製されたC25抗体V領域をHindIIIとBamHI制限酵素で消化し、VH、VL断片をそれぞれAG-γ1、AG-κのHindIII-BamHIサイトに組み込んだ(CHC25及びCLC25)。
3−4)キメラC25抗体(CC25)の発現
上記のように構築したキメラC25抗体遺伝子の持つ抗体活性をCOS7細胞[ATCCCRL 1651]を用いた一時的発現系で検討した。CHC25及びCLC25プラスミドDNAの混合物をBio-Rad社製のエレクトロポーレーション装置を用いて、Bio-Rad社のプロトコールにしたがってCOS7細胞に導入し、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(GIBCO社)で培養した。3日後その培養上清を回収し、抗ヒトIgGあるいは各種HIV由来のPNDペプチドを用いたELISA法によりその培養上清に存在する抗体の活性を測定した。その結果、CHC25及びCLC25プラスミドDNAの混合物の発現産物は抗ヒトIgGに結合性を示した。また、各種PNDペプチドに対する反応性をオリジナルのC25抗体と比較したところ同様の反応スペクトルを示した。更に、HIV-MN株に対する中和活性を確認したところ、マウスC25抗体と同様に1μg/mlの最低有効濃度でウィルス感染を100%阻害することが明らかになった。従って上記の単離したC25抗体V領域遺伝子が間違いなく中和活性を持った抗体のV領域をコードしている遺伝子であることが確認された。
3−5)キメラC25抗体高産生細胞株の作製
キメラC25抗体(CC25)を産生する安定形質細胞株を作製する為に、前述のプラスミドDNA CLC25とCHC25をPvuIで線状化し、リポフェクチンとの混合物にしてCHO-DG44細胞及びP3-653細胞に形質転換した。そして、キメラ抗体の一時発現の場合と同様にしてNeo耐性及びDHFR耐性の遺伝子導入細胞の培養上清を回収、抗ヒトIgGと各種PNDペプチドを用いたELISA法により、その培養上清に存在する抗体の活性を測定した。CLC25及びCHC25プラスミドDNAの共形質転換による発現産物が、各種PNDペプチドと結合したので、この形質転換細胞のクローニングを行った。更に、MTXを4〜32×10-7Mの濃度範囲で添加することによって、DHFR遺伝子の増幅操作を繰り返した。その結果、MTX耐性で且つCC25抗体を50〜70μg/mlのレベルで産生する安定形質細胞株を作製した。
実施例4:ヒト型化C25抗体(RC25)の作製
4−1)PCR突然変異誘発によるC25抗体V領域遺伝子のCDR移植
クローニングしたC25抗体のVH、VL領域の中で、抗原結合に関して重要な領域を調べるために、C25抗体のCDR(相補性決定)領域をそれぞれヒトV領域へ移植した。方法は、ヒト型化抗体作製方法(特開平4-141095)に従った。C25抗体のVH領域のCDR領域をヒトサブグループIIのフレームワーク(FR)領域を持ったVH領域(New:英国MRC Collaborative Centreのベンディッヒ博士より分与されたもの)へ移植し、C25抗体のVL領域のCDR領域をヒトκ鎖のFR領域を持ったVL領域(REI:パーム(W. Palm)及びヒルスクマン(N. Hilscmann)、Z.Physiol. Chem., 356, 167 (1975))に移植した。具体的には、我々が以前に作製したヒト型化抗体μ5.5あるいは0.5βをPCR(サイキ(Saiki, R. G.)ら、Science, 239, 487 (1988))によって変異を導入するPCR-突然変異誘発法により行なった。図21、22及び23は突然変異誘発に用いた合成プライマーが、それぞれPCRの鋳型となるヒト型化抗体VH、VL領域にアニーリングしているところを示したものである。
PCRの条件は、94℃1分、55℃1分、72℃1分で25サイクル行なった。
VHの場合、ヒト型化抗体μ5.5(特開平4-152893号)のVH遺伝子を鋳型としプライマー#1と#2を用いて、VH遺伝子の5'側を増幅した(図21)。これをヒト型化抗体0.5β(Hum. Antibod. Hybridomas, 2, p124 (1991))のVH遺伝子を鋳型として#3と#4で増幅した遺伝子断片(図22)と中央のBglIIサイトでつないで作製した。一方、VLにおいてはプライマー#5とM13-M14プライマーを用いてVLの5'側を、プライマー#8とM13-リバースプライマーを用いて3'側を増幅し、両増幅遺伝子を連結することによって形成されるKpnIサイトに合成DNA#6と#7をセルフアニーリングさせて挿入して作製した(図23)。
このようにしてヒト型化されたC25抗体のV領域(それぞれRHC25、RLC25:配列表2及び配列表4参照)を得た。これらのヒト型化V領域断片をキメラ抗体の作製(実施例3参照)と同様にしてHindIIIとBamHI制限酵素で消化し、VH、VL断片をそれぞれAG-γ1、AG-κのHindIII-BamHIサイトに組み込んだ。このようにしてヒト型化C25抗体遺伝子発現ベクター(それぞれRHC25、RLC25)が調製された。
4−2)ヒト型化C25抗体(RC25)の発現
このヒト型化C25抗体遺伝子によって得られる抗体活性を前述のCOS7細胞における一時的発現系で検討した。キメラ抗体の一時的発現の場合と同様にして遺伝子導入細胞の培養上清を回収、抗ヒトIgGあるいは各種HIV由来のPNDペプチドを用いたELISA法によりその培養上清に存在する抗体の活性を測定した。その結果、RHC25及びRLC25プラスミドDNAの混合物の発現産物が各種PNDペプチドに結合した。更に、HIV-MN株に対する中和活性を確認したところ、C25マウス抗体及びキメラ抗体と同様に1μg/mlの最低有効濃度でウィルス感染を100%阻害することが明らかになった。従って、図19、図20で示されたC25抗体のアミノ酸配列の中で移植CDR領域は、抗HIV活性を担う重要な領域であり、これらの領域をコードする遺伝子は組換え抗体を作製するにあたり、最も重要な遺伝子である。
4−3)ヒト型化C25抗体高産生細胞株の作製
ヒト型化C25抗体(RC25)を産生する安定形質細胞株を作製する為に、前述のプラスミドDNA RLC25とRHC25をPvuIで線状化し、リポフェクチンとの混合物にしてCHO-DG44細胞及びP3-653細胞に形質転換した。そして、キメラ抗体の一時発現の場合と同様にしてneo耐性及びDHFR耐性の遺伝子導入細胞の培養上清を回収、抗ヒトIgGと各種PNDペプチドを用いたELISA法により、その培養上清に存在する抗体の活性を測定した。RLC25及びRHC25プラスミドDNAの共形質転換による発現産物が、各種PNDペプチドと結合したので、この形質転換細胞のクローニングを行った。更に、MTXを4〜32×10-7Mの濃度範囲で添加することによって、DHFR遺伝子の増幅操作を繰り返した。その結果、MTX耐性で且つRC25抗体を80〜100μg/mlのレベルで産生する安定形質細胞株が作製された。
実施例5:キメラ及びヒト型化C25抗体のエフェクター活性
5−1)抗体依存性補体媒介性細胞障害活性(ACC)
最終濃度0.1〜50μg/mlになるようにC25抗体、キメラC25抗体(CC25)、ヒト型化C25抗体(RC25)及び正常ヒトIgG(NHG)を5%FCS含有RPMI1640に希釈し50μlを96穴プレートに加えた。次に、HIV-MN株が持続感染したH9細胞2.5×105を100μl、及び新鮮ヒト血清30μlを加えて37℃で1時間放置した。1時間後、細胞をトリパンブルーで染色し生細胞数と死細胞数をカウントした。
図24に見られるように、10μg/mlのCC25抗体及びRC25抗体は約70%のターゲット細胞を破壊したが、C25抗体及びNHGの細胞障害活性は低かった。このことから、キメラ及びヒト型化C25抗体は強いACC活性を有していることが証明された。
5−2)抗体依存性細胞媒介性細胞障害活性(ADCC)
NK細胞耐性のCEM細胞(CEM-NKR)を用いてHIV-MN持続感染細胞を樹立し、ADCC試験のターゲット細胞に用いた。3×106細胞の感染細胞を10%FCS含有RPMI1640(1ml)に浮遊させ、51Crを加え90分間ラベリングした。その104細胞を96穴プレートにまきこみ、0.1〜10μg/mlのC25抗体,CC25抗体,RC25抗体及びNHGを添加した後、健常人末梢血リンパ球5×105細胞を加えて4時間インキュベーションした。細胞破壊%は常法により求めた。
図25に見られるように、エフェクター細胞/ターゲット細胞=50の条件下において、1μg/mlのCC25抗体及びRC25抗体は約50%のターゲット細胞を破壊したが、C25抗体の細胞障害活性は低くNHGと同程度であった。このことからC25抗体及びNHGの細胞障害活性は低かった。このことから、キメラ及びヒト型化C25抗体は強いADCC活性を有していることが証明された。
実施例6:ヒト型化C25抗体(RC25)の患者由来ウイルスに対する有効性
6−1)RC25抗体の患者由来ウイルスとの結合性
HIVは同一患者内において変異ウイルスの集団(クワサイスピーシス)として存在していることが知られているため、実施例2の2−5の方法に従い、抗HIV抗体陽性患者の血漿中ウイルスRNAおよび末梢血単核細胞内プロウイルスDNAのPND領域塩基配列を1検体当り複数のクローンで解読し、得られた配列に基づき作製した組換えPNDタンパク質とRC25抗体との結合性を調べた。各種患者由来末梢血単核細胞のPNDとRC25抗体との結合性を、HIV−IIIB型ウイルス特異的キメラ抗体(Cβ1)及びMN型ウイルス特異的ヒト型抗体(Rμ5.5)と比較して表5に示す。表5から明らかなように、RC25抗体は91〜100%の高率で各種患者のPND組換え蛋白質と結合した。
Figure 0003855071
6−2)RC25抗体の患者血漿由来ウイルスに対する中和活性
上記6−1で用いた患者血漿50μlに対し、5μlの2mg/ml RC25抗体と室温で30分間反応せしめた。あらかじめウイルスの産生を促進するために単核細胞の10倍量の抗CD8抗体結合磁気ビーズ(ダイナル社製)を用いてCD8陽性細胞を除去し、さらに10μg/mlのフィトヘマグルチニンにて3日間活性化後、インターロイキン-2を含む培地で4日間培養した健常人末梢血単核細胞系(50μl)内に、RC25抗体と混合した血漿を添加し培養を開始した。4日後細胞を新鮮培地にて洗浄後、さらに培養を継続し、その後5〜7日ごとに上清採取および培地交換を行なった。採取した培養上清中のHIV-1 p24抗原濃度をHIV抗原検出用キット(ダイナボット社製)を用い定量した。患者血漿から健常人末梢血単核細胞へのウイルス感染が成立した試験例のすべてにおいて、図26に示すように対照抗体として用いたHIV-IIIB型ウイルス特異的キメラ抗体(Cβ1)およびMN型ウイルス特異的ヒト型化抗体(Rμ5.5)では無効であったのに対し、RC25抗体を添加した群ではp24抗原産生は検出限界以下であり、RC25抗体による明らかな感染阻止効果が確認された。
6−3)RC25抗体の患者末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性
前述患者の末梢血20〜40mlより単核細胞を調製し、ウイルスの産生を促進するために前述の方法を用いてCD8陽性細胞を除去後、0.5μg/mlの抗CD3モノクローナル抗体存在下にて3〜5日間培養することによりウイルスを産生させた。60、120および240μg/mlのRC25抗体存在下で培養を継続し、5〜7日ごとに上清採取および培地交換を行ない、培養上清中のHIV-1 p24抗原濃度を前述と同様の方法で定量した。RC25抗体と末梢血単核細胞内プロウイルスDNAを基に作製したPNDタンパク質との結合性が90%以上である患者の末梢血単核細胞を用いた試験例のすべてにおいて、RC25抗体は図27〜図30のように濃度依存性を示しながらウイルス抗原の産生を抑制した。
6−4)RC25抗体のCD8再構成後の患者末梢血単核細胞由来ウイルスに対する中和活性
本発明の有効性を確認するために行なった上記試験法は、患者の感染細胞内に潜在するプロウイルスを活性化させウイルス感染を誘導させることによる生体内でのHIV感染様式を反映した方法であるが、CD8陽性細胞を除去すると同時に抗CD3抗体により人為的にウイルス活性化を生じせしめた極めて過酷な条件下で行なわれたものである。従って、本法により著効が確認されたRC25抗体は、患者体内では臨床的に本実施例を上回る有効性が期待される。
そこで、除去したCD8陽性細胞の10分の1量を抗体と同時に再構成させ、前述と同様の試験を行なった。その結果、図31に示すように有効RC25抗体濃度は30μg/mlまで低減し、RC25抗体が臨床的に極めて有効であることが示唆された。
産業上の利用可能性
HIVは高度の変異性を有しているウイルスで一人の感染者の体内にもアミノ酸配列の異なる変異ウイルスが集合体として感染している。このような変異ウイルスの集合体に対応し治療効果を発揮するためにはHIV株間で保存された領域を同定し、該保存領域を認識する中和抗体を確立することが必須である。HIVのV3−PND領域は、強い中和抗体を誘導する重要な部位であり、その保存配列GPGRを含むPNDチップ(PND-Tip)領域に対するモノクローナル抗体は広い中和スペクトルを有するものと考えられる。
本発明者らは、この各株間で保存された領域を認識する中和モノクローナル抗体を効率よく作製できる新規な免疫方法を確立し、この手法を用いて感染者由来の多くのHIV分離株を中和するC25モノクローナル抗体を確立した。さらに該抗体をヒト型化することによってヒトにおける抗原性の低減とFc領域に依存した感染細胞の破壊能力を賦与した。さらに、従来のHIV中和モノクローナル抗体は実験室で分離された単一のウイルスに対してのみの有効性しか示さなかったが、本発明の抗体は広い中和スペクトルを有するがゆえに患者個体内の多種の変種ウイルスの集合体に対しても明らかな有効性が確認された。従って、本発明の抗体は種々のHIVの多様性と変異に対応し、エイズの予防あるいは治療及び診断薬として、臨床応用に貢献できるものである。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:355
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to genomic RNA
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:2
配列の長さ:354
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(変異核酸)
起源 生物名:マウスおよびヒト
配列
Figure 0003855071
配列番号:3
配列の長さ:340
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to genomic RNA
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:4
配列の長さ:339
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(変異核酸)
起源 生物名:マウスおよびヒト
配列
Figure 0003855071
配列番号:5
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:6
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:7
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:8
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:9
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:10
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源 生物名:ヒト免疫不全ウイルス
配列
Figure 0003855071
配列番号:11
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:12
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:13
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:14
配列の長さ:17
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:15
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071
配列番号:16
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント:中間部フラグメント
起源 生物名:マウス
配列
Figure 0003855071

Claims (13)

  1. HIVを中和する能力を有するモノクローナル抗体であって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の外皮膜にある分子量約12万ダルトンの糖蛋白質抗原(gp120)の第3可変領域(V3)に存在する主要中和領域(PND)内にあるXa1-Gly-Pro-Xa2-Arg-Xa3(Xa1:Ala,Ile,Leu,Met,Asn,Pro,Gln,Ser,Thr,Val,Tyr、Xa2:Gly,Ala、Xa3:Ala,Cys,Asp,Glu,Gly,His,Ile,Lys,Leu,Met,Asn,Gln,Arg,Ser,Thr,Val,Trp,Tyr)のアミノ酸配列で規定される領域に結合し、当該抗体のH鎖可変領域の相補性決定基(CDR1〜CDR3)のアミノ酸配列が下記の配列:
    Figure 0003855071
    であり、当該抗体のL鎖可変領域の相補性決定基(CDR1〜CDR3)のアミノ酸配列が下記の配列:
    Figure 0003855071
    であることを特徴とする、モノクローナル抗体。
  2. 該主要中和領域(PND)内にあるXaa-Gly-Pro-Gly-Arg-Ala(Xaa:Ala,Ile,Leu,Met,Asn,Pro,Gln,Ser,Thr,Val,Tyr)、Ile-Gly-Pro-Gly-Arg-Xaa(Xaa:Ala,Cys,Asp,Glu,Gly,His,Ile,Lys,Leu,Met,Asn,Gln,Arg,Ser,Thr,Val,Trp,Tyr)、Val-Gly-Pro-Gly-Arg-Thr、Val-Gly-Pro-Gly-Arg-SerまたはIle-Gly-Pro-Ala-Arg-Alaのアミノ酸配列で規定される領域に結合する請求項1記載のモノクローナル抗体。
  3. 該H鎖可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号1記載のアミノ酸配列である請求項1または2記載のモノクローナル抗体。
  4. 該L鎖可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号3記載のアミノ酸配列である請求項1または2記載のモノクローナル抗体。
  5. 工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP-4561として寄託されたハイブリドーマより調製される請求項1から4記載のモノクローナル抗体。
  6. Gly-Pro-Gly-Arg配列をその配列の一部に含むペプチドで1次免疫を行なった後、2次免疫以下の追加免疫を、Gly-Pro-Gly-Arg配列をその配列の一部に含む他の異なるペプチドを用いて行なうことによって得られる脾臓細胞を細胞融合材料として用いて細胞融合を行なうことを特徴とする、請求項1記載のモノクローナル抗体の調製方法
  7. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の外皮膜にある分子量約12万ダルトンの糖蛋白質抗原(gp120)の第3可変領域(V3)に存在する主要中和領域(PND)内にあるXa1-Gly-Pro-Xa2-Arg-Xa3(Xa1:Ala,Ile,Leu,Met,Asn,Pro,Gln,Ser,Thr,Val,Tyr、Xa2:Gly,Ala、Xa3:Ala,Cys,Asp,Glu,Gly,His,Ile,Lys,Leu,Met,Asn,Gln,Arg,Ser,Thr,Val,Trp,Tyr)のアミノ酸配列で規定される領域に結合し、かつHIVを中和する能力を有する組換え抗HIV抗体であって、
    可変領域の少なくとも相補性決定基(CDR1〜CDR3)がマウス抗体由来のアミノ酸配列であって下記の配列:
    Figure 0003855071
    を有し、残りの領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列であることを特徴とするH鎖と
    可変領域の少なくとも相補性決定基(CDR1〜CDR3)がマウス抗体由来のアミノ酸配列であって下記の配列:
    Figure 0003855071
    を有し、残りの領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列であることを特徴とするL鎖からなる組換え抗HIV抗体。
  8. 該PND内にあるXaa-Gly-Pro-Gly-Arg-Ala(Xaa:Ala,Ile,Leu,Met,Asn,Pro,Gln,Ser,Thr,Val,Tyr)、Ile-Gly-Pro-Gly-Arg-Xaa(Xaa:Ala,Cys,Asp,Glu,Gly,His,Ile,Lys,Leu,Met,Asn,Gln,Arg,Ser,Thr,Val,Trp,Tyr)、Val-Gly-Pro-Gly-Arg-Thr、Val-Gly-Pro-Gly-Arg-SerまたはIle-Gly-Pro-Ala-Arg-Alaのアミノ酸配列で規定される領域に結合する請求項7記載の組換え抗HIV抗体。
  9. 該H鎖がキメラ抗体H鎖であって、H鎖可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号1に記載のアミノ酸順位1から118のアミノ酸配列である請求項7または8記載の組換え抗HIV抗体。
  10. 該H鎖がヒト型化抗体H鎖であって、可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号2に記載のアミノ酸順位1から118のアミノ酸配列である請求項7から9のいずれかに記載の組換え抗HIV抗体。
  11. 該L鎖がキメラ抗体L鎖であって、可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号3に記載のアミノ酸順位1から113のアミノ酸配列である請求項7または8記載の組換え抗HIV抗体。
  12. 該L鎖がヒト型化抗体L鎖であって、可変領域のアミノ酸配列が配列表配列番号4に記載のアミノ酸順位1から113のアミノ酸配列である請求項7から9のいずれかに記載の組換え抗HIV抗体。
  13. 請求項7〜12のいずれかに記載の組換え抗HIV抗体を発現可能な発現ベクターを構築し、これを動物細胞内で発現させ、該抗体を回収することを特徴とする組換え抗HIV抗体の調製方法。
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