JP3854692B2 - 押ボタン式点火装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湯沸器やテーブルこんろ等の燃焼器具において使用される押ボタン式点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記押ボタン式点火装置として、出願人は、特開平8−312954号公報に開示される技術を既に提供している。これは、器具本体側と、ガス供給路を開閉するスピンドルを連動させる押圧部材側との何れか一方側に、係合ボスを、他方側に、係合ボスが挿入するガイド部としてのスリットを設けたプレートを回転付勢しながら軸着しており、押圧部材への押圧操作の繰り返し(プッシュプッシュ動作)によって、係合ボスが、揺動するプレートにより係合位置を変えながら、スリット内を相対的に閉鎖順路軌跡運動して一巡することで、始端位置−終端位置−中間係止位置−係止解除位置−始端位置と、押圧部材の前後位置、即ちスピンドルの前後位置を変化させて、消火−着火−燃焼−消火の制御を行わせるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記押ボタン式点火装置においては、中間係止位置(燃焼位置)から係止解除位置へ係合ボスを移動させる押圧部材への2回目の押圧操作により、係合ボスがスリットの端部へ押しつけられ、このとき係合ボスへ最も大きな負荷が加わる。よって、係合ボスにはこの負荷を考慮した強度が必要となるが、強度を得るために断面径(ストローク方向の長さ)を大きくすると、その分スリット内での作動ストローク(特に中間係止位置から係止解除位置間)が多く必要となって、点火装置全体の大型化に繋がってしまう。一方、係合ボスの大きさを変えずに強度を得るためには、係合ボスを押圧部材側と別個に金属材料で形成すれば良いが、反面、部品構成が多くなって、コストアップの問題が生じる。
【0004】
そこで請求項1に記載の発明は、係合ボスの作動ストロークへの影響や材料への考慮の必要がなく、押圧操作で負荷を受ける係合ボスに充分な強度を容易に確保することができる押ボタン式点火装置を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前記係合ボスを複数設け、少なくとも、前記押圧部材に前記中間係止位置を維持させる前記プレートの前記ガイド部との係合と、前記押圧部材の前進を前記係止解除位置で規制する前記プレートの前記ガイド部との当接とを、夫々別個の係合ボスで行うようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、前記始端位置での前記複数の係合ボスと前記ガイド部との係合を確実に行わせるために、前記器具本体側又は前記押圧部材側との何れか一方に、他方と係合して前記押圧部材を前記始端位置で規制するストッパを設けたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は押ボタン式点火装置の全体構成を示すもので、ガス流路を開閉する点滅器1の内部には、メイン弁3を備えたスピンドル2が軸方向へ前後移動可能に収容され、メイン弁3に設けられた圧縮スプリング4により、弁座5を閉塞する後方側(図1の左側)へ付勢されている。このスピンドル2は、メイン弁3の閉弁状態で、点滅器1のガス出口6を閉塞すると共に、後方側に設けられた小径弁部2aが、パイロット出口7を閉塞するもので、ガス出口6及びパイロット出口7は、燃焼部のメインバーナ及び点火用パイロットバーナ(何れも図示略)に夫々接続されている。尚、8,8は、ガスシール用のOリング、9は、Oリング押えである。
又、点滅器1の先端部には、端板10によりOリング11を介して、安全弁としてのマグネット電磁弁12が備えられ、弁座14方向へ付勢される弁体13が、ガス入口15からガス出口6及びパイロット出口7に連通するガス通路16を開閉可能となっている。
【0007】
そして、点滅器1の後部には、下方後端にレバー18を軸着したケーシング17が固着されている。このケーシング17の内部には、レバー18の後方に配置される点火ボタン19の押圧操作により、前方へ回転するレバー18を介して連動する押圧部材としてのボタン軸20が、圧縮スプリング21によって後方側へ付勢されて遊挿されている。このボタン軸20が、点火ボタン19の押圧操作によって前進すると、スピンドル2に当接してこれを前進させ、メイン弁3を開弁させた後に、マグネット電磁弁12の弁体13及び小径弁部2aを開弁させるものである。
【0008】
一方、ケーシング17の下面には、図2にも示す如く、ボタン軸20の軸方向に沿って長孔22が穿設され、ボタン軸20の下面には、長孔22を遊挿する2つの突起23,23と、両突起23,23間を連結して格子状に配される補強用のリブ24,24・・が夫々突設されている。又、ボタン軸20の進退方向の前側の突起23の上面には、第1係合ボス25が、後側の突起23の上面には、第1係合ボスよりやや高さの低い第2係合ボス26が、夫々突設されている。
同じくボタン軸20の下面には、後側の突起23の後方に連設されるストッパ27と、端縁よりでボタン軸20の軸方向と平行に伸びるスライドバー28とが備えられている。ストッパ27は、長孔22の後端と当接して、後方へ付勢されるボタン軸20の後方位置を規制するもので、スライドバー28は、その前進によってケーシング17の下面に設置された後述するイグナイタースイッチ40のON作動に利用されるものである。
【0009】
又、ケーシング17の下面には、支軸29によって合成樹脂製のプレート30の一端が軸着されている。このプレート30は、支軸29に巻装され、一端をケーシング17側に、他端をプレート30側に夫々掛止されたねじりコイルバネ31によって、ケーシング17側への付勢力と共に、図2の矢印方向へも回転力が付与され、ボタン軸20側の2つの係合ボス25,26が、プレート30に形成されたガイド部としての窓32に係合することにより、回転規制がなされている。この窓32は、同図の如く、プレート30の自由端側から、略中央まで緩やかなS字状にカーブする第1スリット33と、略中央から支軸29へ向けて直線状に伸びる第2スリット34と、略中央から斜め前方に伸びる第3スリット35と、同じく略中央からプレート30の回転方向に沿って伸びる第4スリット36と、を夫々分岐形成している。尚、第1スリット33の終端際には、図3の如く、補強板33bが架設され、第4スリット36には、第2係合ボス26が係合可能な係止部37が形成されると共に、第4スリット36の端部には、図4の如く、補強板36aと、第2係合ボス26をプレート30の下面へ案内する傾斜面38とが夫々形成されている。この傾斜面38は、プレート30が比較的薄板状の場合、第4スリット端部を斜め上方に折曲げ形成して得るようにしても良い。
更に、ケーシング17の下面には、図1,2に示すように、取付板39が延設され、そこに、バーナヘッドに設けられた点火電極を連続スパークさせるイグナイター(図示略)のイグナイタースイッチ40が、そのスイッチ板41をボタン軸20側に向けて固着されており、前述したボタン軸20の所定の前進位置で、スライドバー28がスイッチ板41に接触し、イグナイタースイッチ40をONさせるようになっている。
【0010】
以上の如く構成された押ボタン式点火装置においては、消火位置では、点火ボタン19、ボタン軸20は共に、圧縮スプリング21の付勢によって、図2及び図5(イ)の如く、ストッパ27が長孔22の後端に当接する消火位置(始端位置)にあり、第1係合ボス25は、第3スリット35と第4スリット36との間で窓32の中央部にあって、プレート30の回転を規制し、第2係合ボス26は、第1スリット33の始端側(a点)に夫々位置している。
ここから、点火ボタン19が図1の矢印方向へ押圧操作されると、ボタン軸20が圧縮スプリング21に抗して前進し、スピンドル2を押圧してメイン弁3を開弁させる。同時に、第1係合ボス25、第2係合ボス26も直線移動するが、図5(ロ)の如く、第2係合ボス26と第1スリット33のカーブする側縁33aとの摺接によって、プレート30は、第2係合ボス26の前進に連れて、ねじりコイルバネ31の回転付勢に抗して逆方向へ回転する。そして、第2係合ボス26が第1スリット33の側縁33aから離反する際には、第1係合ボス25が第2スリット34内に進入しているから、プレート30の付勢方向への回転勢により、今度は第1係合ボス25が第2スリット34の側縁34aに当接して、プレート30の回転を規制する。ここで同時に前進したスライドバー28が、スイッチ板41に当接してイグナイタースイッチ40をONさせ、イグナイターを作動させる(図5(ハ)の直前)。一方、このボタン軸20の前進に伴い、スピンドル2も更に前進して、小径弁部2a、マグネット電磁弁12の弁体13を夫々開弁させるため、燃料ガスが、ガス出口6及びパイロット出口7を介してメインバーナ及びパイロットバーナに供給され、点火される。その後第1係合ボス25は、スピンドル2の押し切りによるボタン軸20の点火時押込位置(終端位置)での停止によって、第2スリット34の側縁34aに摺接した状態でb点に到達し、第2係合ボス26は、窓32の略中央に位置する(図5(ハ))。
【0011】
次に、点火ボタン19から手を離すと、圧縮スプリング4及び21の付勢により、スピンドル2及びボタン軸20が後退し、同時に後退する第1係合ボス25が第2スリット34の側縁34aから離反すると、プレート30の回転付勢により、第3スリット35内へ進入する。このとき第2係合ボス26は、図5(ニ)の如く、第4スリット36内へ進入して、係止部37に係止され、後退を阻止される(c点)。よってボタン軸20は中間係止位置(燃焼位置)に維持される。この時、ボタン軸20と共にスライドバー28は後退して、イグナイタースイッチ40をOFFにしている。一方、スピンドル2は、メイン弁3の開弁状態を維持しつつ、燃焼によって開弁保持されるマグネット電磁弁12の弁体13が閉弁可能位置にまで後退すると共に、小径弁部2aを閉じてパイロット出口7を閉じるものとなる。
【0012】
そして、消火時には、点火ボタン19が再度押圧操作されると、図5(ホ)に示すように、前進した第2係合ボス26が係止部37から離れると同時に、プレート30が回転して、第2係合ボス26は第4スリット36の終端へ進入する。同時に、第1係合ボス25は第3スリット35の終端(d点)に当接するため、ボタン軸20の前進が規制される(係止解除位置)。ここから点火ボタン19を離すと、ボタン軸20が圧縮スプリング21の付勢力で後退し、プレート30は、図5(ヘ)の如く、第1係合ボス25を第3スリット35の側縁35aに摺接させながら回転付勢の逆方向へ回転して、第1係合ボス25を窓32の中央に復帰させると共に、第2係合ボス26を傾斜面38によって下方へ潜り込ませて、第1スリット33のa点に復帰させる。尚、ここでプレート30が若干浮き上がるが、高さの相違により、第1係合ボス25と第3スリット35の側縁35aとの摺接は維持される。
こうして、点火装置が図5(イ)に示す消火位置に復帰すると、スピンドル2が圧縮スプリング4の付勢によって後退してメイン弁3を開弁させ、メインバーナを消火させるのである。
【0013】
ちなみに、本形態では、ケーシング17に、プレート30の自由端部の上面に近接するL字状の規制部材42が突設されている(図1、2)。これにより、消火操作で強くボタン軸20を前進させた場合、第1係合ボス25がプレート30の第3スリット35の終端(d点)に当接してプレート30が浮き上がっても、プレート30の浮き上り量が規制され、第1係合ボス25の第3スリット35からの脱却が確実に防止される。又、ここでは、ストッパ27によってボタン軸20の作動ストロークを規制しているため、第2係合ボス26が窓32から外れてプレート30の外部へ飛び出したりする虞れがなく、第2係合ボス26を確実に作動ストロークの最後方となる消火位置へ復帰させて、第1スリット33への再挿入を維持するようになっている。
【0014】
このように本形態の押ボタン式点火装置によれば、第1係合ボス25と第2係合ボス26とを設けて、夫々に閉鎖順路軌跡運動をさせ、図5(ニ)の中間係止位置を得る係合を含めたプレート30との係合を、第2係合ボス26に分担させて行うようにしたことで、図5(ニ)の中間係止位置から図5(ホ)の係止解除位置までの第1係合ボス25の押込みストロークを変えないまま、第1係合ボス25のストローク方向の長さを比較的長く設定して、係止解除位置での第3スリット35の終端との当接による負荷に充分耐え得る強度を確保することができる。尚、本形態では、第1係合ボス25を、負荷に対応したストローク方向の長さに加えて、他の方向の強度も確保できるよう、その平面形状を略三角形とし、第2係合ボス26も、突起23との接続部分を長円形状としている。よって、本形態では、係合ボスを1つ追加する簡単な構成で、押圧操作で負荷を受ける係合ボスの強度を確保できることとなり、点火装置の大型化も必要なく、材料も従来と同様に合成樹脂でボタン軸20と一体成形でき、コストアップを抑えることが可能となる。
又、ここでは、複数の係合ボスの採用により、プレート30の窓32が、従来のスリットによるガイド部に比較して狭い部分が少なくて済むのと共に、プレート30の回転規制を専ら第1係合ボス25で行って、従来のようなスリット中央の段部を省略しているため、ガイド部としての窓32が簡略化し、プレート30の成形が非常に容易となる効果も奏される。
【0015】
尚、上記実施の形態では、進退動する側のボタン軸20に2つの係合ボス25,26を、固定側のケーシング17にプレート30を夫々設けたが、これを逆にして、ケーシング17の内面に係合ボス25,26を突設させ、これをボタン軸20の表面に軸支したプレート30と係合させても上記と同様の作用が得られる。
その他、係合ボスの数や形状、配置位置、プレートや窓の具体的形状等は、上記形態に限定するものでなく、例えばプレートのスライドは、一端を軸着して回転付勢することで得る他、四角形状のプレートを直線的にスライド可能に設けて一方側へ付勢する構造とする等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に設計変更可能である。
【0016】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、複数の係合ボスを設けて、少なくとも、前記押圧部材に中間係止位置を維持させるプレートのガイド部との係合と、前記押圧部材の前進を係止解除位置で規制する前記ガイド部との当接とを、夫々別個の係合ボスで行うようにしたことで、押圧部材への2回目の押圧操作でガイド部と当接する係合ボスのストローク方向の長さを比較的長く設定して、ガイド部との当接による負荷に充分耐え得る強度を確保することができる。よって、点火装置の大型化は生じず、材料も従来と同様に合成樹脂で押圧部材と一体成形できるため、コストアップを抑えることが可能となる。又、ガイド部自体の構成も簡略化するため、プレートの成形も低コストで簡単に行える。
又、請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ストッパによって押圧部材を確実に始端位置へ復帰させることができるため、係合ボスとガイド部との脱却がなく、動作の確実性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】押ボタン式点火装置の全体説明図である。
【図2】プレートの詳細を示す斜視図である。
【図3】プレートの第1スリット部分の説明図である。
【図4】プレートの第4スリット部分の説明図である。
【図5】プレートと各係合ボスとの係合作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・点滅器1、2・・スピンドル、3・・メイン弁、6・・ガス出口、12・・マグネット電磁弁、15・・ガス入口、17・・ケーシング、19・・点火ボタン、20・・ボタン軸、21・・圧縮スプリング、25・・第1係合ボス、26・・第2係合ボス、30・・プレート、32・・窓、33・・第1スリット、34・・第2スリット、35・・第3スリット、36・・第4スリット、37・・係止部、40・・イグナイタースイッチ。

Claims (2)

  1. 器具本体側と、ガス供給路を開閉するスピンドルを連動させて進退動し、後退方向へ付勢される押圧部材側との何れか一方側に、係合ボスを、他方側に、前記係合ボスが係合可能なガイド部を有し、前記押圧部材の進退方向と交差する方向へスライド可能で、且つ前記交差方向の一方に付勢されるプレートを設け、前記押圧部材に前進方向への押圧操作を2回繰り返すことにより、前記係合ボスが、前記プレートの前記ガイド部に対して相対的に閉鎖順路軌跡運動をして、始端位置−終端位置−中間係止位置−係止解除位置−始端位置と前記押圧部材の進退方向での前後位置を変更し、前記スピンドルによる前記ガス供給路の開閉制御を行う押ボタン式点火装置であって、
    前記係合ボスを複数設け、少なくとも、前記押圧部材に前記中間係止位置を維持させる前記プレートの前記ガイド部との係合と、前記押圧部材の前進を前記係止解除位置で規制する前記プレートの前記ガイド部との当接とを、夫々別個の係合ボスで行うようにしたことを特徴とする押ボタン式点火装置。
  2. 前記器具本体側又は前記押圧部材側との何れか一方に、他方と係合して前記押圧部材を前記始端位置で規制するストッパを設けた請求項1に記載の押ボタン式点火装置。
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