JP3854603B2 - 電着薄刃工具 - Google Patents
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Description
この発明は、金属材料や非金属材料などの切断加工、溝入れ加工、研削加工等に使用される電着薄刃工具に関する。
従来、セラミックスやFRP等の難削材料の切断には、図8に示すように、ダイヤモンドやCBN等の超砥粒2を、メッキ法により電着した薄刃砥石6が用いられていた。この薄刃砥石6は、例えばニッケルメッキ槽中に超砥粒2を分散させ、円盤状の台金4の周縁部に無電解メッキ及び電解メッキ法により超砥粒2を電着したものであった。この薄刃砥石6の超砥粒2が、台金4の外周縁部表面に一層に電着されるものである。
また、特許文献1に開示されているように、円盤状の台金を有し、この台金の周縁部から端面にかけて開放され交互に形成された凹部に、台金の端面及び端縁部から突出した多数の砥粒を固着した電着薄刃工具も提案されている。
特開2002−326166公報
しかしながら、従来の技術の前者の薄刃砥石6は、図8に示すように、台金4の厚みをt、超砥粒2の直径をdとすると、切断または溝切りの研削しろwは、w=t+2dとなる。従って、切断しろwを小さくするには、台金4の厚みを薄くしなければならない。しかし、台金4の強度上の問題から切断しろwをあまり薄くすることができず、従って、被研削材8の切断幅が大きいため切断抵抗が大きく、また高価な材料の切断では、歩留まりが悪いという問題があった。
また、この種の円盤状台金4の周縁部に超砥粒2を電着した切断・溝加工用の砥石の実際の加工部位は、端縁部の最外周面のみであり、両側面部に電着された砥粒には切断作用がない。従って、この最外周面の砥粒が摩耗・脱落してしまうと、台金4の外周面が露出し、切断作用がなくなってしまうものであった。さらに、台金4の外周面の超砥粒2が摩耗または脱落すると、超砥粒2の無い台金4の外周面が露出し、その薄刃砥石6は台金4に問題がなくとも使用できなくなり、高価な台金4の無駄が多く、切断等の作業においても付け替え頻度が多くなるので作業能率が悪いものであった。
一方、上記従来の技術の特許文献1に開示されたものの場合、台金側面の砥粒が交互に設けられているため、継続使用により砥粒が付いていない側、即ち砥粒が付けられた面の反対側の部分が摩耗・変形し、台金周縁部に蛇行歪み現象が生じるという問題があった。
さらに、従来の技術の電着方法の場合、超砥粒を電着しようとする工具全体に電流が流れるため、電着箇所の電流通過断面積が大きく、作業効率を上げるために電流密度を高くしようとすると極めて大きな電流を流す必要があった。従って、例えば電力量に制限があると、多数の電着を同時に行うことができず、しかも不要な箇所の電着が多く発生し、電着効率が悪いものであった。
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたもので、切断しろが小さく、寿命が長く安定した加工が可能であり、電着効率が良く生産性も高い電着薄刃工具を提供することを目的とする。
この発明は、円盤状や細長い長方形板状の金属薄板の台金と、この台金の端縁に開放されて少なくとも幅広部が側面に開口した傾斜面であるテーパを有する凹部と、この凹部内で電着による電着金属により固着され上記台金の側面及び端縁から一部が突出した砥粒とを備え、上記凹部の幅広の開口部は上記台金の両側面に交互に位置し、上記凹部の幅広の開口部の幅は、上記砥粒の直径より大きくその直径の2倍より小さく形成され、上記台金の端縁に対して直角方向に複数の上記砥粒が電着されている電着薄刃工具である。上記砥粒は、ダイヤモンドやCBN等の超砥粒である。
上記テーパ状の凹部は、上記台金の両側面に開口し、上記凹部の幅狭の開口部は上記砥粒の直径よりも小さく、上記台金の両側面で交互に幅広の開口部が位置するように形成され、上記テーパ状の凹部の両開口部から上記砥粒が突出している。上記砥粒は、台金の板厚よりも僅かに大きな砥粒径が望ましい。上記台金の両側面から突出した砥粒の突出量は、両側面でほぼ等しいものである。
また、上記テーパ状の凹部は、上記台金の端縁に対して直角方向に細長く形成され、上記砥粒が一列に上記凹部に電着されているものでも良い。さらに、上記砥粒は、互いに隣接する上記凹部同士で、その砥粒の約半径分だけ段違いになるように電着され、上記台金の端縁に対して直角方向に複数の上記砥粒が電着されている。
この発明の電着薄刃工具は、被研削材の研削しろを最小限に小さくすることができ、しかも、工具加工端の砥粒が摩滅してもその下の砥粒が順次表れ、幅方向または径方向に配置された複数個の砥粒が全て摩滅するまで使用することが可能であり、工具寿命を大幅に延ばすことができ、作業効率の向上にも寄与する。特に、テーパ状の凹部が台金の表裏両側面に開口していることにより、被研削剤の研削しろを砥粒径とほぼ等しい最小にすることができる。
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明の第一実施形態の電着薄刃工具10を示す。この実施形態の電着薄刃工具10は、厚さが0.05〜0.5mm程度、例えば0.2mmの平板状のステンレス等の金属板から成る台金12と、この台金12の端縁部に一定のピッチで形成され、台金12の端縁12aに開放されて、台金12の両側面に交互に形成された凹部14を有している。
凹部14は、台金12の厚み方向にテーパ状に形成された長孔であり、台金12を貫通して開口している。各凹部14は、幅広の開口部14aと幅狭の開口部14bが、台金12の両側面で交互に位置している。凹部14には、幅広の開口部14aから砥粒16が一列に、ニッケル等の電着金属18により電着固定されている。電着金属18は、凹部14の幅広の開口部14a側で砥粒16を保持するように電着している。
砥粒16は、ダイヤモンドやCBN等の高硬度の超砥粒であり、台金12の板厚にもよるが、粒径が台金12よりも大きく、例えば50〜300μm程度、好ましくは台金12の板厚よりも僅かに大きい程度の砥粒径が望ましい。そして、砥粒16は、台金12の両側面に対してほぼ等しい突出量で固定されている。台金12の側面からの突出量は、例えば砥粒16の粒径の5〜20%程度出ていればよく、また台金12の端縁12aからの突出量は、例えば砥粒16の粒径の0〜50%程度で適宜設定すればよい。ここで、端縁12aからの砥粒16の突出量は、研削作業中に被研削材料や加工くずによる砥粒16と台金12の摩耗量の差により自生的にバランスするもので、台金12であるメタル部分がより早く摩耗し、砥粒16部分はその粒径の5〜20%程度突出して安定する。また、砥粒16は、図3に示すように、隣接する凹部14同士で砥粒16がその約半径分だけ段違いになるように配置されている。これにより、台金12の端縁12aに砥粒16の露出が、一定幅以上途切れる状態が発生することを防止している。
この実施形態の電着薄刃工具10の製造方法は、まず台金12の表裏面に、砥粒16の直径Dより大きく、2Dより小さい幅d1の長円状の開口部20aと、開口部20aの幅より小さい幅d2の長円状の開口20bとが交互に形成されたレジストマスク20を施す。この開口部20a,20bは、凹部14の開口部14a,14bを設定するものである。
この後、台金12にエッチング液を噴射し、またはエッチング液中に台金12を漬けてエッチングを行う。これにより、台金12に設けられたレジストマスク20の開口部20a,20bから台金12のエッチングが進行し、図1(a)に示すように、大径の開口部20aから小径の開口部20bにかけてテーパ状を有した凹部14が形成される。なお、エッチング方法は、適宜の方法を用い得るものであり、テーパ状の部分は少なくとも開口部20b付近に形成されていればよい。
次に、凹部14内に仮止め用の接着剤を設け、砥粒16を凹部14内に1列に保持させる。そして、砥粒16が付いた台金12を電極に接続し、公知の電着方法により電着液に接触させて電着を行う。このとき、台金12のレジストマスク20を付けたまま電着を行う。これにより、台金12に流れる電流を電着箇所である凹部14周辺に集中させることができ、少量の電流で効率良く電着を行うことができる。
電着工程が終了すると、除膜剤を用いてレジストマスク20を剥がし、電着後の台金12の一端縁の額縁部12bを研削または化学的処理により削除し、外側の砥粒16を露出させる。このとき、図3に示すように、最も外側の砥粒16が各凹部14の列について1列おきに露出するようにする。この状態で、電着薄刃工具10が出来上がる。
この電着薄刃工具10は、端縁12aから突出した砥粒16のほぼ直径に相当する切断しろで切断や溝加工を行うことができる。すなわち、台金12の厚さtに砥粒16の台金12側面からの突出量2hを加えた幅で切断するもので、このt+2hは砥粒16の直径Dに等しいものである。砥粒16がダイヤモンドの場合、きれいな球ではないが、砥粒16の大きさを篩にかけてほぼ等しい値に揃えることにより、切断しろをほぼ砥粒の16大きさ程度にすることができる。
ここで、砥粒16の台金12からの突出量を設定する方法について説明する。まず、図1において、小さい幅の開口部14bの幅d2は、
(R−h)2+(d2/2)2=R2となる。
従って、d2=2(R2−h2)1/2
=2(2Rh−h2)1/2
=2(Dh−h2)1/2 ・・・(1)
として表される。
また、D=t+2h・・・(2)
の関係式にtとhを与えて、Dを求めた。その結果を表1に示す。
(R−h)2+(d2/2)2=R2となる。
従って、d2=2(R2−h2)1/2
=2(2Rh−h2)1/2
=2(Dh−h2)1/2 ・・・(1)
として表される。
また、D=t+2h・・・(2)
の関係式にtとhを与えて、Dを求めた。その結果を表1に示す。
さらに、式(1)に表1のDとhを入れて、凹部14の開口部14bの値d2を求めた。その結果を表2に示す。ここで、開口部14bの大きさd2は、板厚tとの関係で表2の太枠内の値が有効な数値である。
以上の式および表より、適宜の板厚tと砥粒の突出量hを設定して、所望の大きさの開口部14bを設計することができる。
この実施形態の電着薄刃工具10によれば、切削または研削しろが実質的に砥粒16の径に限定され、極めて少ない研削しろで無駄のない加工が可能となる。特に高価な半導体の切断等においては、歩留まりを向上させ、加工も容易なものとする。また、砥粒16は、使用により摩耗していくが、端縁12aに対して直角方向に配置された長孔状の凹部14に電着された砥粒16は、摩滅とともに順次下の砥粒16が表れ、凹部14に砥粒16がなくなるまで使用可能であり、極めて工具寿命が長いものとなる。従って、工具の取り替え回数も減少し、加工効率を大幅に向上させる。また、砥粒16は、台金12の凹部14内に電着されているため、砥粒16の脱落が生じにくく、この点からも工具寿命が長いものとなる。
また、テーパ状の凹部14の開口部14a,14bを台金12の両側面に交互に形成したので、電着による電着金属18の析出応力が台金12の側面に均等にかかり、台金12のそりやひずみが生じないものである。
さらに、この電着薄刃工具の製造方法において、凹部14を形成するためのレジストマスク20を残した状態で電着を行うので、台金12に流れる電流は、電着を行う凹部14周辺に集中し、極めて少ない電流で効率の良い電着が可能となる。
なお、台金12の板厚が0.2〜0.3mm程度の場合、テーパ状の凹部14の幅広の開口部14aを、台金12の表裏に交互に形成しなくても、一方の側に幅広の開口部14aとし、他方の面を幅狭の開口部14bとしても、台金12にそりやひずみは生じない。また、凹部14の形状や形成方法、電着状態等によりそりやひずみを抑えることができれば、テーパ状の凹部14の開口部14aを一方の面にのみ形成したものでも良い。
次にこの発明の第二実施形態の電着薄刃工具22について、図4、図5を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一符号を付して説明を省略する。この実施形態の電着薄刃工具22は、円盤状の台金24の周面端縁24aに沿って凹部14が等しい角度間隔で設けられたものである。ここでは、凹部14は、台金24の一方の面に凹部14の幅広の開口部14aが位置している。
この実施形態の円盤状の電着薄刃工具22の製造方法も、上記第一実施形態と同様であり、砥粒16の電着後、台金24の外周部の額縁部24bを削除して、台金24の端縁24aから砥粒16を露出させる。なお、この実施形態では、レジストマスク20の開口部20a,20bをほぼ等しい大きさにして設け、エッチングは開口部20a側から行い、凹部14の開口部14bが所望の大きさd2となったところでエッチングを停止するようにしている。この後、砥粒16を凹部14に収容して電着することにより、電着金属18が、レジストマスク20の開口部20bの内側の開口部14bの周囲にも付着し、より強固に砥粒16を凹部14内に電着することができる。
この実施形態の電着薄刃工具22によっても上記実施形態と同様の効果を得ることができ、円盤状の薄刃カッタを容易に製造することができる。さらに、砥粒16は台金24の一方の面の幅広開口部14aから各凹部14に入れるもので、製造が容易であり、電着も確実である。
なお、上述のように、台金24の厚み等の条件により、幅広の開口部14aが一方の側にあっても、台金24にそりやひずみが生じないようにすることが可能である。また、この実施形態の凹部14も、台金12の両面で交互に幅広の開口部14aと幅狭の開口部14bとを形成したものでも良い。
次にこの発明の第三実施形態の電着薄刃工具26について、図6を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一符号を付して説明を省略する。この実施形態の電着薄刃工具26は、円盤状の薄い金属板の台金28に形成されたほぼ円形の凹部30に、砥粒16が1個ずつ収容されるように、円錐面状のテーパを有したものである。この凹部30は台金28の一側面に大径の開口部30aが形成され、他方の面には小径の開口部30bが位置している。従って、台金28のエッチングは、大径の開口部30aが形成される一側面から行えば良い。さらに、砥粒16は台金28の一方の面の開口部30aから各凹部30に入れるもので、製造が容易であり、電着も確実である。
次にこの発明の第四実施形態の電着薄刃工具32について、図7を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一符号を付して説明を省略する。この実施形態の電着薄刃工具32は、凹部34が台金36を貫通したものではなく、テーパ状の有底の凹部となっている。この実施形態の電着薄刃工具32も、矩形または円盤状の台金36の端縁部に沿って凹部34が等間隔で設けられたものである。そして、この凹部34内に、砥粒16が電着されている。
この実施形態の円盤状の電着薄刃工具32の製造方法も、上記第一実施形態と同様であるが、凹部34は台金36を貫通したものではなく、凹部30のエッチングは所定の深さに制御する。この実施形態においても、砥粒16の電着後、台金36の外周部の額縁部を削除して、台金36の端縁で砥粒を露出させる。この実施形態の電着薄刃工具32による切断しろは、台金34の板厚tに台金12から砥出した砥粒16の突出量iを合わせたものとなる。すなわち、切断しろは、t+2iとなる。
また、この実施形態の電着薄刃工具32の製造方法も、上記と同様に、台金36にレジストマスク20を施した状態で電着を行う。これにより、レジストマスク20の開口部20aを経て電流が効率良く凹部34内の台金36に流れ、少ない電流で凹部34に効率良く確実に砥粒16が電着される。
尚、この発明の電着薄刃工具は、切断用薄刃砥石の上記実施形態に限定されず、平面研削を行う工具でも良く、細長い長方形の台金をループ状にしたバンドソーの刃形成端縁部位に、上記と同様の凹部を端縁部に沿って形成し、この凹部に砥粒を電着してもよい。これによっても上記と同様の効果を得ることができ、より大きなものの切断等の加工を行うことができる。また、砥粒の材質や大きさは適宜選択することができる。
さらに、凹部に付ける砥粒は、単粒の一列以外に、研削粒子の焼結体から成る砥粒を所望の形状に形成して凹部に電着してもよい。また、砥粒の材質は、ダイヤモンドやCBN等の適宜の超硬の砥粒を使用することができ、被研削材により適宜選択できるものである。
10 電着薄刃工具
12 台金
14 凹部
16 砥粒
18 メッキ金属
20 レジストマスク
12 台金
14 凹部
16 砥粒
18 メッキ金属
20 レジストマスク
Claims (2)
- 金属薄板の台金と、前記台金の両側面に開口するとともに前記金属薄板の端縁にも開放され、前記金属薄板の厚み方向にテーパを有する凹部と、この凹部内に位置し電着による電着金属により固着され前記台金の両側面及び端縁から一部が突出した砥粒とを備え、前記砥粒は、前記台金の板厚よりも僅かに大きな砥粒径であり、前記台金の両側面から突出した前記砥粒の突出量は両側面でほぼ等しく、前記凹部の幅広の開口部は前記台金の両側面に交互に位置し、前記凹部の幅広の開口部の幅は、前記砥粒の直径より大きくその直径の2倍より小さく形成され、前記台金の端縁に対して直角方向に複数の前記砥粒が前記凹部に電着されていることを特徴とする電着薄刃工具。
- 前記テーパ状の凹部は、前記台金の端縁に対して直角方向に細長く形成され、複数の前記砥粒が一列に前記凹部に電着されていることを特徴とする請求項1記載の電着薄刃工具。
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