JP3854133B2 - スキップフロア構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主として木造住宅において、一般床部に対して段差が生じた状態で設けられるスキップフロアの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅内において、一般床部との間に段差を生じるスキップフロアを設ける場合、地震等が発生したときには、一般床部側とスキップフロア側との間で水平力が効率良く伝達されず、それぞれ別々な動きが生じることになり、特に一般床部とスキップフロアの境界部分すなわち段差部分において破損が生じ易いといった問題がある。
【0003】
従って、このような問題を解消するために、構造上種々の補強対策が必要となるが、現状では、スキップフロアに関する公的な設計基準は見当たらず、数少ない指針が参考になる程度である。
【0004】
それらの指針を参照すると、スキップフロアを設ける場合には、図5に示すように、一般床部(31)側の外壁面(32)とスキップフロア(33)側の外壁面(34)とに跨って構造用合板(35)(35)を取り付けて、外壁面(32)(34)同士を一体化することで、一般床部(31)側とスキップフロア(33)側とを連動させるといった提案がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように構造用合板(35)(35)を取り付ける構造では、一般床部(31)側の外壁面(32)とスキップフロア(33)側の外壁面(34)を同一面上に配置する必要がある。しかも、構造用合板(35)(35)があるため、外壁面(32)(34)の境界部分付近に開口部(36)(36)を設けることができないといったように、建物形態における制約が多く、設計の自由度が狭められていた。
【0006】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、一般床部側との間で水平力を効率良く伝達して、地震等の発生時における一般床部との境界部分での破損を抑えることができ、しかも建物形態における制約を少なくして、設計の自由度を高めることができるスキップフロア構造の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明のスキップフロア構造は、一般床部とスキップフロアの境界部分において、一般床部の床梁とスキップフロアの外周床梁とを上下方向に間隔をあけて重ねて、これら床梁と外周床梁との間の要所要所に、外周床梁から床梁へ水平力を伝達するための伝達部材を介在させるとともに、上記境界部分を除くスキップフロアの外周床梁の上方に、それら外周床梁に沿うようにして、一般床部の床梁と同じ高さレベルにその床梁に連結した腹巻梁を架構し、これら腹巻梁と外周床梁との間の要所要所に、外周床梁から腹巻梁へ水平力を伝達するための伝達部材を介在させたことを特徴とする。具体的には、スキップフロアの各辺に対して、少なくとも1本の伝達部材を配置したり、また腹巻梁の上に設けた耐力壁の直下に、伝達部材を配置している。さらに、伝達部材を、ほぞを利用して外周床梁と床梁、外周床梁と腹巻梁に接合している。
【0008】
また、腹巻梁の一部を欠落させた欠落部において、一対の開口用柱を外周梁に立設するとともに、それら開口用柱に対して欠落によって分断した腹巻梁を連結して、開口用柱間に窓や出入口等の開口部を設けている。そして、腹巻梁の欠落部を挟んだ両側に、少なくとも1本の伝達部材を配置している。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るスキップフロア構造を採用した木造住宅の骨組構造を示している。図において、(1)(1)…は、住宅2階の一般床部(2)の床梁、(3)(3)…は、一般床部(2)よりも低い位置に設けられた方形状のスキップフロア(4)の外周床梁を示している。
【0010】
そして、一般床部(2)とスキップフロア(4)の境界部分(6)においては、床梁(1)と外周床梁(3)とが上下方向に間隔をあけて重なった状態となっている。
【0011】
境界部分(6)を除く外周床梁(3)(3)…の直上には、それら外周床梁(3)(3)…に沿うようにして、一般床部(2)の床梁(1)(1)…と同じ高さレベルに腹巻梁(5)(5)…が架構されている。これら腹巻梁(5)(5)…は、コ字形に連結されており、その開放部分には一般床部(2)の床梁(1)が位置している。すなわち、ロ字形に連結された外周梁(3)(3)…の直上には、腹巻梁(5)(5)…と床梁(1)とがロ字形に連結された状態で配置されている。
【0012】
そして、外周床梁(3)(3)…と腹巻梁(5)(5)…との間の要所要所に、外周床梁(3)(3)…から腹巻梁(5)(5)…へ水平力を伝達するための伝達部材(10)(10)…が介在されている。
【0013】
これら伝達部材(10)(10)…は、床梁(1)(1)…、外周床梁(3)(3)…や腹巻梁(5)(5)…と同様に木製の角材からなり、図2に示すように、その上面部分に差し込んだほぞパイプ(11)(11)…の上半分を腹巻梁(5)の下面部分に差し込むとともに、その下面部分に差し込んだほぞパイプ(11)(11)…の下半分を外周梁(3)の上面部分に差し込むことで、腹巻梁(5)と外周床梁(3)とに接合されている。
【0014】
なお、境界部分(6)における外周床梁(3)と床梁(1)との間の要所要所にも、伝達部材(10)(10)が介在されており、上記と同様に、ほぞパイプ(11)(11)…を利用して床梁(1)と外周床梁(3)に接合されている。
【0015】
そして、これら伝達部材(10)(10)…は、壁面施工の妨げにならないように、横方向にはみ出すことなく腹巻梁(5)と外周床梁(3)との間、また床梁(1)と外周床梁(3)との間に夫々収まった状態で、スキップフロア(4)の各辺に対して少なくとも1本配置されている。これにより、外周床梁(3)(3)…にかかる水平力を均等に効率良く伝達することができる。
【0016】
また、腹巻梁(5)の上に筋かい(15)を備えた耐力壁(16)を配置する場合には、その耐力壁(16)の直下に伝達部材(10)を配置させている。
【0017】
さらに、スキップフロア(4)に対して床レベルまでの窓や出入口等の開口部(20)を設ける場合には、図3に示すように、腹巻梁(5)の一部を欠落させて、その欠落部(21)において一対の開口用柱(22)(22)を外周床梁(3)から立設させている。そして、それら開口用柱(22)(22)に対して欠落によって分断した腹巻梁(5)(5)を連結し、さらに欠落部(21)を挟んだ両側には、少なくとも1本の伝達部材(10)(10)を夫々配置させて、欠落部(21)による強度低下を補うようにして、開口用柱(22)(22)間に窓や出入口等の開口部(20)を設けるようにしている。
【0018】
なお、境界部分(6)に開口部(20)を設ける場合には、図1に示すように、床梁(1)を欠落させて、上記と同様に開口用柱(22)(22)を立設するようにしている。
【0019】
上記構成において、地震等が発生したときには、スキップフロア(4)の外周床梁(3)(3)…にかかる水平力が、伝達部材(10)(10)…を介して床梁(1)(1)…と同じ高さ位置にある腹巻梁(5)(5)…、及び境界部分(6)の床梁(1)に伝達され、これによって一般床部(2)側とスキップフロア(4)側との間で水平力が効率良く伝達されるようになり、双方が一体的に連動する。従って、一般床部(2)とスキップフロア(4)との間の境界部分(6)に無理な力がかからず、その境界部分(6)の破損を防止することができる。
【0020】
このように、スキップフロア(4)を設ける場合において、外壁面に構造用合板を取り付ける従来の方法とは異なった新たな補強対策を実現したことから、図4に示すように、一般床部(2)側の外壁面(25)と、スキップフロア(4)側の外壁面(26)とをずらした状態で配置することができ、また外壁面(25)(26)の境界部分(6)付近に開口部(27)(27)を設けることができる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明では、スキップフロアの外周床梁にかかる水平力が、伝達部材を介して、一般床部の床梁と同じ高さレベルに配された腹巻梁へ伝達されて、スキップフロアと一般床部とを一体的に連動させることができる。このため、従来の指針に示すような構造用合板を設けなくても、一般床部とスキップフロアとの間の境界部分の破損を防止することができ、一般床部側の外壁面と、スキップフロア側の外壁面とをずらした状態で配置したり、境界部分付近に開口部を設けることができるといったように、建物形態における制約が少なくなり、設計の自由度を高めることができる新たなスキップフロア構造計画指針を確立することができる。
【0023】
また、スキップフロアの各辺に対して少なくとも1本の伝達部材を配置することで、外周床梁にかかる水平力を均等に効率良く伝達することができ、信頼性の高い耐震性能を発揮することができる。
【0024】
さらに、耐力壁の直下に伝達部材を配置したり、開口部を形成するために生じた腹巻梁の欠落部周りに伝達部材を配置することで、強度補強を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係るスキップフロア構造を採用した木造住宅の骨組構造の斜視図である。
【図2】 外周床梁、伝達部材及び腹巻梁の接合状態を示す縦断面図である。
【図3】 開口部付近の正面図である。
【図4】 建物形態の制約の少ない木造住宅を示す図である。
【図5】 建物形態の制約の多い従来の木造住宅を示す図である。
【符号の説明】
(1)床梁
(2)一般床部
(3)外周床梁
(4)スキップフロア
(5)腹巻梁
(10)伝達部材
(11)ほぞパイプ
(16)耐力壁
(20)開口部
(21)欠落部
(22)開口用柱

Claims (6)

  1. 一般床部とスキップフロアの境界部分において、一般床部の床梁とスキップフロアの外周床梁とを上下方向に間隔をあけて重ねて、これら床梁と外周床梁との間の要所要所に、外周床梁から床梁へ水平力を伝達するための伝達部材を介在させるとともに、上記境界部分を除くスキップフロアの外周床梁の上方に、それら外周床梁に沿うようにして、一般床部の床梁と同じ高さレベルにその床梁に連結した腹巻梁を架構し、これら腹巻梁と外周床梁との間の要所要所に、外周床梁から腹巻梁へ水平力を伝達するための伝達部材を介在させたことを特徴とするスキップフロア構造。
  2. スキップフロアの各辺に対して、少なくとも1本の伝達部材を配置した請求項1記載のスキップフロア構造。
  3. 腹巻梁の上に設けた耐力壁の直下に、伝達部材を配置した請求項1又は2記載のスキップフロア構造。
  4. 伝達部材を、ほぞを利用して外周床梁と床梁、外周床梁と腹巻梁に接合した請求項1乃至3のいずれかに記載のスキップフロア構造。
  5. 腹巻梁の一部を欠落させた欠落部において、一対の開口用柱を外周梁に立設するとともに、それら開口用柱に対して欠落によって分断した腹巻梁を連結して、開口用柱間に窓や出入口等の開口部を設けた請求項1乃至4のいずれかに記載のスキップフロア構造。
  6. 腹巻梁の欠落部を挟んだ両側に、少なくとも1本の伝達部材を配置した請求項5記載のスキップフロア構造。
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