JP3853717B2 - 調理用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、煮物の調理時に使用する灰汁取りシート、さらに詳しくは、調理の際に、煮汁の表面に浮上してくる灰汁や油分などを吸着する調理用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
煮物やスープのように、材料をだし汁や水で煮込む料理では、煮汁の上面に灰汁が浮き、これが材料の味、舌ざわり、外観などを著しく阻害している。また、調理中に灰汁と同時に生じる過剰な油についても、食味上や健康上から敬遠される傾向にある。
【0003】
これらを解決するため、従来からいろいろな発明がなされている。例えば、実開平1−59551号公報、実開平4−77835号公報、実開平7−27434号公報では、ポリプロピレンなどの親油性繊維を円板状にし、これを調理時に使用することによって余分な油を吸い取る灰汁取りシートが発明されている。また、特開平8−24149号公報では、灰汁取りシートの構造をバルキー構造にし、出てきた灰汁を、その不織布シートの中に吸着するような発明がなされている。
【0004】
実際、これらの発明に記載されたシートを用いて調理した場合、玉杓子などを用いて頻繁に灰汁や油を取る手間を省くことができた。
【0005】
しかしながら、これらの発明では、灰汁というより、主に、油分を吸着除去することに主眼が置かれていた。このため、親水性成分の多い灰汁については、有効に除去されなかった。また、従来の灰汁取りを主眼とする調理用シートは、灰汁の発生量が多い場合には、必ずしも十分な性能を有しているとは言えないものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような従来の問題を克服するためになされたものであり、親油性の繊維で形成された不織布を用いているが、灰汁についても十分に吸着除去することができる調理用シートを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の調理用シートは、繊度が2〜30デニールで、繊維長が2〜10mmのポリオレフィン系合成繊維を用いてエアレイド法により製造された不織布からなり、目付けが25〜100g/m 2、厚さが0.5〜2mmで、灰汁捕捉量が50g/m2以上有することを特徴としている。
【0008】
ここで、本発明の調理用シートは、下式で表される繊維末端指数(SI値)が2万〜50万であることが好ましい。
また、本発明の調理用シートは、不織布が、少なくとも1層構造のシートから形成されている。
さらに、本発明の調理用シートは、繊維が、複合繊維で形成されているものが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、この実施の形態では、1層構造の調理用シートを例にする。
【0010】
図1において、10は、本発明の調理用シートであり、所定の直径を有する円板形に形成されている。この調理用シート10は、繊度が2〜30デニールで、繊維長が2〜10mmのポリオレフィン系合成繊維11を用いてエアレイド法により製造された不織布12で形成されており、目付けが25〜100g/m 2、厚さが0.5〜2mmで、灰汁捕捉量を50g/m2以上有している。
【0011】
このように、単糸繊度が2〜30デニールの太い繊維を使用することによって繊維間の空隙が広がり、浮上性凝固物質である灰汁の侵入を容易にすることができる。繊度が2デニール未満では、繊維間の空隙が狭まり、浮上性凝固物質である灰汁の侵入が不十分である。一方、繊度が30デニールを超えると、逆に、繊維間の空隙が広過ぎて調理用シートを調理容器(鍋など)から引き上げる時に灰汁の脱落量が増大する。単糸繊度は、好ましくは2〜20デニールである。
【0012】
繊度が2〜30デニールの範囲であれば、繊度違いの異層複合構造であっても良い。その際、2〜30デニールの繊維は、少なくとも30重量%以上含有させることが望ましい。太い繊維の不織布シートは、剛直性が増し、鍋に入れたり、あるいは、引き上げる時に折れたり、シワになったりするトラブルも無く、取り扱い易いというメリットもある。上記含有量は、さらに好ましくは70〜100重量%である。
【0013】
繊維長としては、上記のように、2〜10mmが好ましい。このような短い繊維で構成することにより繊維末端数が増加する。繊維末端には、凝固物質である灰汁を絡め取る作用がある。これは、丁度、棒状の箸を使用すると、ある程度、灰汁を絡め取ることが可能であるが、輪やループ状になったものでは灰汁を絡め取ることが困難であるのと同様の理屈であり、誰しも容易に理解できる事柄である。
【0014】
繊維長が2mmより短い場合は、不織布を作製するのが困難となるばかりか、不織布からの繊維の離脱および脱落の可能性が生じ、実用性に欠ける。一方、繊維長が10mmを超える場合は、繊維末端数が減ることから繊維末端による灰汁絡め取り効果が十分に発揮され難い。繊維長は、好ましくは3〜7mmである。
【0015】
ところで、繊維を立体的な構造に配置することが灰汁のスムースな侵入と、進入後の灰汁が繊維へ絡み付く作用に必要であり、それには、エアレイド法で製造した不織布が好適である。エアレイド法による不織布の製法は、繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した繊維を、下部に設置された金属またはプラスチックのネットに落とし、ネット下部で空気をサクションしながら、繊維のみをネット上に集積する。このように製造された不織布は、不織布の流れ方向、幅方向および厚み方向へ繊維をランダムに3次元配向させることが可能である。その上、エアレイド法であれば、上記のような太くて短い繊維を好適に使用できる。
【0016】
他の不織布、例えば、スパンボンドは、連続繊維で構成されているので、繊維末端が無い。また、カード機でウエブ形成する乾式不織布(スパンレース不織布も含む)の場合は、繊維長が短くてもせいぜい30mm程度であり、かつ、太い繊維を使用するには、例えば、70〜100mm程度の長い繊維でなければカード工程性が維持できない。湿式不織布の場合は、ペーパーライクな構造となるので、本発明の狙いには、全くそぐわない。しかも、エアレイド法で製造した不織布は、均一性が良好なので、性能のバラツキも少なくなる。
【0017】
その上、繊維交絡点を互いに結合させ、不織布シートとして一体化するには、加熱して繊維どうしを融着させるのが効率的である。このような熱融着繊維としては、ポリオレフィン系以外にポリエステル系も知られているが、撥水性と親油性とのバランスの点でポリオレフィン系が好適である。つまり、有機物である灰汁や、調理材料から発生する油分と親和性を有し、かつ、水には馴染み難い方が好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系熱融着繊維としては、芯鞘型や偏芯サイドバイサイド型の複合繊維が好適である。鞘あるいは繊維外周部を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であり、加熱融着処理温度で変化しないポリマーが好ましい。このような組み合わせとして、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステルなどが挙げられる。これらのポリマーは、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。
【0019】
このような熱融着繊維のウエブを、鞘あるいは繊維外周部のポリマーの融点以上、好ましくは、融点プラス10℃以上の温度で加熱処理することにより繊維間がしっかり融着され、繊維の脱落現象が皆無となる。
【0020】
また、灰汁捕捉量50g/m2は、換算すると、直径20cmの円形シート(面積0.03m2)では、灰汁捕捉量が1.5gとなる。一般に、灰汁の生成量は、水に肉を投入してから煮沸する場合は、1.6〜1.7重量%、沸騰水に投入する場合は、0.35〜0.43重量%と言われており、平均1重量%と考えることが妥当である。つまり、1.5gの灰汁量は、150gの肉を煮たときに生ずる灰汁量に相当する。直径20cm程度の鍋で調理する場合、肉300g程度が鍋に収納可能な限界と考えるのは妥当なところである。
【0021】
従って、50g/m2以上の灰汁捕捉能力を有することが、肉300gから生ずる灰汁の少なくとも50%以上を吸収するために必要であると言える。
【0022】
ここで、灰汁捕捉量W(g/m2)は、次式より算出する。
W=(W2−W1)×100/3 ・・・・・ (1)
ここで、
W1:使用前の直径20cmの円形調理用シート(面積0.03m2)の重量(g)
W2:直径20cm、深さ8.5cmの鍋に水500cc、獣脂(牛)20g、赤身の牛肉180gとを入れ、その上に直径20cmの調理用シート(面積0.03m2)を乗せ、その状態で10分間煮込んだ後、調理シートを取り出し、風乾後の調理用シートの重量(g)である。Wは、さらに好ましくは60〜200g/m2、特に好ましくは60〜100g/m2である。
【0023】
目付けとしては、25〜100g/m 2が好ましい。目付けが25g/m 2未満の低目付けの場合は、シートとしての剛性が低く、煮沸でめくれたり、取り扱い性に欠ける。また、灰汁を取る繊維量が少なければ、効果が少ない。これとは逆に、目付けが100g/m 2を超える高目付けの場合は、柔軟性を失い、煮物表面に沿い難く、灰汁や油取り効果が十分に発揮し難くなる。目付は、さらに好ましくは30〜60g/m 2である。
【0024】
厚さとしては、0.5〜2mmが好ましい。厚さが0.5mm未満の場合は、シートとしての剛性が低くて加熱・煮沸でめくれたり、取り扱い性に欠ける。また、灰汁を取る繊維量が少なければ、効果が少ない。これとは逆に、厚さが2mmを超える場合は、柔軟性を失い、煮物表面に沿い難く、灰汁や油取り効果が十分に発揮し難くなる。厚さは、さらに好ましく0.7〜1.7mmである。
【0025】
この調理用シート10は、所望により孔やスリットを施しても良い。不織布12は、2層構造でもよい。
【0026】
また、本発明の調理用シートを構成する不織布は、下式で表される繊維末端指数(SI値)が、2万〜50万が好ましく、さらに好ましくは3万〜40万である。
ここで、まず単位面積あたりの繊維末端数(S)は、次式により計算される。S=A×9,000×2/(D×L× 10 )
ただし、S・・・繊維末端数(ケ/cm2)
A・・・目付(g/m2)
D・・・デニール(d)
L・・・長さ(mm)
繊維末端数が多いほど、灰汁を絡め取る作用はアップするが、繊維の太さの要因も影響する。この関係について鋭意検討の結果、次式で算出される繊維末端指数(SI値)を大きくすることにより、絡め取り効果がアップすることが判明した。
SI値=S×D2
ただし、デニール違いの層を2層以上複合した場合は、それぞれの層について前記SI値を算出してから合算するものとする。
このSI値が2万未満の場合は繊維末端数が少なく、かつファインデニールの繊維で構成されている状態であって、繊維末端による灰汁を絡め取る作用が小さい、あるいは繊維の間に灰汁が入り込む余地が小さい状態を示す。一方、50万を超える場合は単位面積のなかに極めて密に多くの繊維末端数が存在するか、あるいは非常に太い繊維で構成されている状態を示す。前者の場合は繊維と繊維の間に灰汁が入り込む余地が少ないために、灰汁取り効果が小さくなる。また、非常に太い繊維で構成された場合は、逆に繊維間が拡がり過ぎて、入り込んだ灰汁を引上げる時にドリップしてしまう。
この繊維末端指数(SI値)は、不織布を構成する繊維の長さと繊度を適正化することにより、容易に調整することができる。多くの不織布製造法のなかで、このような適正化にはエアレイド法が最も好適である。
【0027】
上記のように、本発明の調理用シート10は、エアレイド法により製造された不織布で形成されているから、繊維11が不織布の流れ方向、幅方向および厚み方向へランダムに3次元配向され、灰汁のスムースな侵入と、侵入後の灰汁が繊維へ絡み付き易くなり、灰汁捕捉量が増加する。
【0028】
その上、本発明の調理用シート10は、繊度2〜30デニールの太い繊維を用いているから、繊維11間の空隙が適度に広がり、浮上性凝固物質である灰汁の侵入が容易になるとともに、調理用シートを調理容器(鍋など)から引き上げる時に灰汁の脱落量を抑制することができる。
【0029】
さらに、本発明の調理用シート10は、2〜10mmの短い繊維を用いているから、繊維末端数が増加し、凝固物質である灰汁を絡め取る作用が飛躍的に増加する。
【0030】
また、本発明の調理用シート10は、目付けが25〜100g/m 2で、厚さが0.5〜2mmであるから、適度の剛性および柔軟性を有し、取り扱い性に優れているばかりでなく、煮沸でめくれたりすることもなく、灰汁や油取り効果が十分に発揮できる。
【0031】
さらに、本発明の調理用シートは、上記繊維末端指数(SI値)を2万〜50万とすることにより、繊維密度と繊度が適正化され、灰汁を絡め取る効果が向上する。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜3、比較例1〜2
直径20cm、深さ8.5cmのアルミ鍋に水500ccと、獣脂(牛)20g、赤身の牛肉180gとを入れ、さらに、この上に「表1」に示す調理用シート(直径20cm)を乗せた。この状態で10分間煮込んだあと、調理シートを取り出し、風乾して灰汁固形分の付着量を計測後、上記の(1)式により算出した。
ここで、表1における取り扱い性は、実際に調理に使用した時の取り扱い易さを評価し、結果を○,△,×で表示した。
○:シートを乗せる時にきれいに拡げられ、調理中の煮込み沸騰でよじれ、片寄り、丸まりなどがなく、取り出しもスムースであった。
△:きれいに拡げられたが、調理中によじれ、片寄り、丸まりが発生し、灰汁の絡め取りが不十分であった。
×:拡げにくく、よじれ、片寄り、丸まりも発生し、取り扱いが難しかった。
また、繊維末端数および繊維末端指数の測定方法は、本文中に詳記したとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】
「表1」から、本発明である実施例1〜3は、従来例である比較例1〜2に比べて灰汁捕捉量が1.8倍以上あることが分かる。
【0035】
【発明の効果】
上記のように、本発明の調理用シートは、エアレイド法により製造された不織布で形成されているから、繊維が不織布の流れ方向、幅方向および厚み方向へランダムに3次元配向され、灰汁のスムースな侵入と、侵入後の灰汁が繊維へ絡み付き易くなる。その結果、灰汁捕捉量が増加する。
【0036】
その上、本発明の調理用シートは、繊度2〜30デニールの太い繊維を用いているから、繊維間の空隙が適度に広がり、浮上性凝固物質である灰汁の侵入が容易になるとともに、調理用シートを調理容器(鍋など)から引き上げるときに灰汁の脱落量を抑制することができる。
【0037】
さらに、本発明の調理用シートは、2〜10mmの短い繊維を用いているから、繊維末端数が増加し、凝固物質である灰汁を絡め取る作用が飛躍的に増加する。
【0038】
また、本発明の調理用シートは、目付けが25〜100g/m 2で、厚さが0.5〜2mmであるから、適度の剛性および柔軟性を有し、取り扱い性に優れているばかりでなく、煮沸でめくれたりすることもなく、灰汁や油取り効果が十分に発揮できる。
【0039】
さらに、本発明の調理用シートは、該シートを構成する不織布の繊維末端指数を2万〜50万とすることにより、灰汁を絡め取る効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る料理用シートの平面図である。
【符号の説明】
10 調理用シート
11 繊維
12 不織布
Claims (4)
- 繊度が2〜30デニールで、繊維長が2〜10mmのポリオレフィン系合成繊維を用いてエアレイド法により製造された不織布からなり、目付けが25〜100g/m 2、厚さが0.5〜2mmで、灰汁捕捉量が50g/m2以上であることを特徴とする調理用シート。
- 下式で表される繊維末端指数(SI値)が2万〜50万である請求項1記載の調理用シート。
- 不織布が、少なくとも1層構造のシートからなる請求項1または2記載の調理用シート。
- 繊維が、複合繊維からなる請求項1〜3いずれかに記載の調理用シート。
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