JP3853693B2 - コンバインにおける制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインにおける制御装置に係り、より詳しくは、所定の設定条件に基づいて、エンジン及び作業部の回転数制御を実行する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のコンバインは、走行機体に搭載したエンジンの出力(負荷)を制御する電子式ガバナの燃料噴射量検知センサ(燃料噴射用プランジャの位置調節のためのラック位置の検出センサ)等の各種センサと、燃料噴射ポンプのラック位置を調節するための電磁ソレノイド等の各種アクチュエータとを備えており、前記エンジンの出力を脱穀装置等の作業部と走行クローラ等の走行部とに伝達して、これら各部位に所定の仕事を実行させるようになっている。
【0003】
この場合、前記各機器(センサやアクチュエータ等)はマイクロコンピュータ等の制御手段で制御されており、この種の制御の一例としては、コンバインの状態や作物条件等に応じてエンジンの出力が変動してもその回転数を略一定に保つ定回転制御(アイソクロナス制御)が知られている(特開平7−303414号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、種籾収穫作業(刈取脱穀後の穀粒を種籾として使用する場合の刈取脱穀作業)に際して、処理速度が速いと、穀粒を傷つけて発芽率が低下するおそれがあるので、回転脱穀装置の扱胴や処理胴等の回転数を比較的低速にする必要がある。
【0005】
前記従来のコンバイン(通常の刈取脱穀用コンバイン)では、エンジンの定格回転数を、通常の刈取脱穀作業に最適な値(比較的高速な回転数)に設定しており、また、前記扱胴等の回転数が通常の刈取脱穀作業に適した設定回転数以下に低下すると、刈取脱穀作業に不適切であるとして、例えばランプやブザー等で作業者に警告する装置を備えていた。
【0006】
しかし、前記の従来のコンバインで種籾収穫作業をする場合は、オペレータがアクセルペダル等を操作して、エンジン回転数を低速に保つことによって、扱胴等の回転数を低速にしなければならず、そうすると、実際は扱胴等に支障がないのに、扱胴等の回転数が設定回転数よりも低くなり、ランプやブザー等で不要な報知がされるという問題があった。
【0007】
以上のことから、従来は、種籾収穫作業に際して、エンジンの定格回転数を比較的低い値に設定して扱胴等の回転数を低速に保つように構成された種籾収穫専用のコンバインを使用していたのであった。
【0008】
しかし、種籾収穫専用のコンバインでは汎用性が低いし、これとは別に通常の刈取脱穀用コンバインが必要となるので、ユーザーにとって不経済であるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解消すべくなされたものであり、通常の刈取脱穀作業と種籾収穫作業との両方を、1つのコンバインで実行するための制御装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る制御装置は、走行機体に搭載したエンジンの出力を、脱穀装置等の作業部と走行部とに伝達するように構成する一方、前記エンジン及び前記作業部の回転数を制御するための制御手段と、各種制御モードの情報を表示するための表示手段とを備えたコンバインにおいて、前記制御手段には、前記回転数制御における標準作業仕様の設定条件と、種籾作業仕様の設定条件とを予め記憶させた記憶手段を備えており、前記制御手段は、電源投入時に前記回転数制御における作業仕様が前記種籾作業仕様になっていた場合には、その旨を示す報知情報を前記表示手段の画面に表示し、この状態で第1の操作手段を手動操作することによって、前記両作業仕様のいずれか一方を選択できるように制御するというものである。
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を具体化した実施形態を、コンバインに適用した場合の図面(図1〜図31)に基づいて説明する。
【0015】
コンバインにおける走行機体1は、左右一対の走行クローラ2,2に対して後述する走行部昇降駆動手段を介して昇降可能に構成されている。図1に示すように、走行機体1の進行方向に向かって左側には、作業部としての脱穀装置3が搭載されている。走行機体1の前部に配置した刈取前処理装置4は、走行機体1に対して、昇降フレーム14を介して昇降回動可能に支持されており、この昇降フレーム14と走行機体1との間に装着したアクチュエータとしての刈取部用油圧シリンダ9で昇降調節可能に構成されている。
【0016】
刈取前処理装置4の下部にはバリカン式の刈刃装置5が配置されており、前部には六条分の穀稈引起装置6が配置されている(図3参照)。この穀稈引起装置6と脱穀装置3におけるフィードチェーン7の前端との間には穀稈搬送装置8が配置されており、穀稈引起装置6の下部前方には、走行機体の進行方向に向かって突出する分草体10が取り付けられている。そして、走行機体1の右側前部には運転室11が配置されており、この運転室11の後方には穀粒タンク12が配置されている。
【0017】
図4に示すように、運転室11の後方下部に配置したエンジン15からの出力(動力)の一部は、一つの動力伝達系統として、オーガクラッチ16を介して穀粒タンク12内の底スクリューコンベヤ17と排出オーガ28内の縦横スクリューコンベヤ18a,18bとに伝達される。
【0018】
エンジン15からの残りの動力は、動力分岐ミッション19を介して三つの動力伝達系統に分岐されて伝達される。すなわち、一つは油圧ポンプ油圧モータ式走行駆動部24を経て刈取前処理装置4に動力伝達され、もう一つは脱穀装置3の扱胴13及び処理胴20に動力伝達される。さらに、もう一つの動力伝達系統は、唐箕21、一番受樋のスクリューコンベヤ22a、二番受樋のスクリューコンベヤ22bやフィードチェーン7、穀粒タンク12への揚穀スクリューコンベヤ23、搖動選別機構40、排わらカッタ27等を回転駆動させるようになっている。
【0019】
刈取前処理装置4への動力は、走行速度と同期するときには、走行駆動部24からの出力軸26を介して伝達され、同期しないときには、動力分岐ミッション19からの分岐動力をワンウェイクラッチ25を介して伝達するようになっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク12内の穀粒を機外に排出するための排出オーガ28は、走行機体1の後端に配置した縦筒28aと、この縦筒28aの上端に上下回動可能に連設した横筒28bとからなり、縦筒28a内には縦スクリューコンベア18aが、横筒28b内には横スクリューコンベア18bがそれぞれ内装されている。
【0021】
縦筒28aは、駆動モータ29とギア機構30とで縦軸回りに旋回可能に構成されており、横筒28bは、縦筒28aとの間に装架したオーガ用油圧シリンダ31とリンク機構32とで上下傾斜角度を変更可能に構成されている。
【0022】
そして、駆動モータ29に設けたロータリエンコーダ等の旋回角センサ81(図10参照)により、縦筒28aの水平旋回角度、ひいては横筒28bの水平旋回位置を検出でき、オーガ用油圧シリンダ31またはリンク機構32の箇所に設けたポテンショメータ等の上下回動角センサ82(図10参照)により、横筒28bの上下傾斜角度、ひいては横筒28b先端の排出部の高さ位置を検出できるようになっている。
【0023】
なお、排出オーガ28を使用しないときには、穀粒タンク12の上面に設けたレスト台33等に横筒28bの中途部が載置されるようになっている。このレスト台33には、横筒28bが載置されたか否かを検出する接触センサ等のレスト検出器が取り付けられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、左右各走行クローラ2は、トラックフレーム35の前後端に各々配置した駆動輪36及び従動輪37と、トラックフレーム35の下面中途部に複数個配置した転動輪38との外周に巻回してなるものである。
【0025】
左右各トラックフレーム35と走行機体1とは、走行部用油圧シリンダ39a(39b、図5参照)と、トラックフレーム35の前後位置に設けた側面視L字状の前後レバーを同時に作動させるように連結した連結杆(図示せず)等とからなる走行部昇降駆動手段を介して連結されている。
【0026】
左右の走行部用油圧シリンダ39a,39bは、互いに独立的に作動させることにより、左右各走行クローラ2を、走行機体1の左右に対して独立的に昇降させ得るようになっている。
【0027】
したがって、左右両側の走行部用油圧シリンダ39a,39bのピストンロッドを同時に突出させると、走行機体1は左右両走行クローラ2,2から上方に離れて(上昇し)、走行機体1の走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)は高くなる。逆に、前記ピストンロッドを同時に後退させると、走行機体1は左右両走行クローラ2,2に近付いて(下降し)、走行機体1の走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)は低くなる。
【0028】
そして、左側の走行部用油圧シリンダ39aにおけるピストンロッドを突出させるか、または、右側の走行部用油圧シリンダ39bにおけるピストンロッドを後退させると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、右走行クローラ2に対する走行機体1の車高は低くなり(左走行クローラ2に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は右下がりに傾斜する。
【0029】
逆に、右側の走行部用油圧シリンダ39bにおけるピストンロッドを突出させるか、または、左側の走行部用油圧シリンダ39aにおけるピストンロッドを後退させると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、左走行クローラ2に対する走行機体1の車高は低くなり(右走行クローラ2に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は左下がりに傾斜するのである。
【0030】
左右各走行部用油圧シリンダ39a,39bのピストンロッドの突出量を検出して、走行機体1の左右各走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)を検出するためのロータリエンコーダ等の車高センサ41a,41bは、前記連結杆に連設した連結ロッドやリンク機構(図示せず)を介して連動するように構成されている。走行機体1の左右の傾斜角度を検出するための振り子式(重力式)等の傾斜センサ43(図10参照)は、走行機体1の任意の位置、例えば運転室11内等に配置されている。
【0031】
なお、図3に示すように、刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを検出するための超音波センサ44a,44bは、発信器の発信部(ホーン部)と受信器の受信部とを圃場面に向けた状態で、刈取前処理装置4の左右両側における穀稈引起装置6の裏面側に設けたブラケット(図示せず)に配置されている。
【0032】
超音波センサ44a,44bの設置高さと刈刃装置5の設置高さとが異なる場合には、超音波センサ44a,44bの検出値から所定の換算により刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを求めることができるようになっている。
【0033】
また、昇降フレーム14の基端に取り付けた昇降ポジションセンサ45(図9参照)は、昇降フレーム14の回動角度を検出することにより、走行機体1と刈取前処理装置4との相対的高さを求めることができるようになっている。
【0034】
図5に示すように、油圧シリンダ9,31,39a,39bのための油圧回路は、油圧ポンプ46からの圧油を分流する分流弁47を介して分岐しており、この分流弁47の一方の吐出路からは、オーガ用油圧シリンダ31と左側の走行部用油圧シリンダ39aとに対する第1油圧回路48ヘ圧油を送給し、他方の吐出路からは、刈取部用油圧シリンダ9と右側の走行部用油圧シリンダ39bとに対する第2油圧回路49へ圧油を送給するように構成されている。
【0035】
両油圧回路48,49には、それぞれの油圧シリンダ9,31,39a,39bに対する電磁制御弁50,51,52,53や逆止弁、リリーフ弁等が接続されている。
【0036】
次に、運転室11に備えた各種操作用のレバーやスイッチ類の構成を、図6及び図7を参照して説明する。運転座席56の前方のフロントコラムカバー体57から上向きに突出するハンドル軸(図示せず)には、走行機体1を操向操作する操向丸ハンドル58が取り付けられており、運転座席56から見てフロントコラムカバー体57の右側面には、前後方向に回動可能なアクセルレバー59が設けられている。
【0037】
フロントコラムカバー体57の上端部位には、液晶表示装置60が、平面視で操向丸ハンドル58における略半円形状のハンドルホイル58aの内径側に位置するように取り付けられている。
【0038】
液晶表示装置60は、フロントコラムカバー体57のみに固定されており、操向丸ハンドル58には連結していない。したがって、操向丸ハンドル58を回動させても、液晶表示装置60が動くことはない。また、液晶表示装置60の上面(画面)を操向丸ハンドル58のハンドルホイル58aよりも下方に位置させているので、この操向丸ハンドル58を回動させても、液晶表示装置60に接触することはない。
【0039】
運転座席56の左方には、前後に長いサイドコラム61が配置されており、このサイドコラム61の前端部位には、走行機体1の車高を手動で変更調節できる車高調節レバー62と、車高制御における自動操作と手動操作とを切替えるための車高制御切替スイッチ63と、走行機体1の左右傾斜角度を設定するための傾斜設定器64とが配置されている。
【0040】
サイドコラム61上のうち車高調節レバー62等の後方部位には、車速を無段階変速させる主変速レバー65と、作業状態に応じて走行駆動部24の出力及び回転数を所定範囲に設定保持する副変速レバー66とが左右に平行状に配置されており、これら各レバー65,66は前後回動可能に構成されている。
【0041】
また、サイドコラム61上のうち副変速レバー66の右寄り部位には、刈取自動昇降スイッチ131や、定回転制御モードと手動モードとを切替え操作するための定回転制御切替スイッチ133等の各種スイッチ類が配置されており、副変速レバー66の後方部位には、刈取作業のための刈取レバー67と脱穀作業のための脱穀レバー68とが前後回動可能に配置されている。
【0042】
刈取レバー67は、前傾させると刈取作業を実行するための刈取スイッチ134(図12参照)が切り作動し、後傾させると刈取スイッチ134が入り作動するように構成されている。同様にして、脱穀レバー68も、前傾させると脱穀作業を実行するための脱穀スイッチ135(図12参照)が切り作動し、後傾させると入り作動するように構成されている。
【0043】
主変速レバー65の握り部65aには、右側面に、刈取前処理装置4を強制的に上昇させるオートリフトスイッチ137と、刈取前処理装置4を所定の刈高さまで強制的に下降させるオートセットスイッチ138とが設けられている。握り部65aの前側面のうち右側には、刈取前処理装置4の昇降動を手動操作するための刈取昇降レバー139が配置されており、左側には、穀稈の扱深さ位置を手動で変更調節できる扱深さ調節レバー140が配置されている。
【0044】
図6及び図7に示すように、液晶表示装置60は、文字、記号、画像等の情報を表示できるモノクロのドットマトリクス形の液晶パネル60bと、これを収納するケース60aとにより構成されている。この液晶パネル60bは、本発明における表示手段に相当する。なお、液晶パネル60bはカラー型でもよい。
【0045】
このケース60aの表面のうち液晶パネル60bの外周側には、コンバイン全体の電源を入り切り操作する電源スイッチ142(図12参照)の入り操作時等に点灯する作業ランプ70と、画面表示の切替え等のための左右各2つのスイッチ71,72,73,74とが設けられている。これら各スイッチ71〜74は、スイッチの一回の押下により一つのONパルス信号が出るいわゆるプッシュスイッチで、ノンロックタイプのものである。また、これら各スイッチ71〜74は本発明における操作手段に相当する。
【0046】
ケース60a内であって液晶パネル60bの裏面側には、コンバインの各種モードのうち実行中のモードに対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示するように制御するCAN(Controller Area Network )コントローラC5(図13参照)が内装されている。
【0047】
次に、走行機体1の車速、姿勢及び車高や、排出オーガ28の排出位置等、コンバインの作動全般を制御するとともに、実行中のモード(コンバインの動作状態)に対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示するように制御する制御手段の構成について説明する。
【0048】
図8に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ等の電子式制御装置75は、複数(実施形態では5つ)のCANコントローラC1,C2,C3,C4,C5と、これらの間を相互に接続するCAN通信バス76とで構成されている。CANコントローラC1及びC5には、制御データの反射を抑制する終端抵抗としての抵抗器(図示せず)が内蔵されている。
【0049】
各CANコントローラC1〜C5は、各種演算処理や制御を実行するCPU77、後述する各制御プログラムや各種データを記憶させる不揮発性メモリとしてのEEPROM78、前記各制御プログラムや各種データを一時的に記憶させるRAM79、タイマ機能としてのクロック、センサやアクチュエータ等に接続してデータを伝送する入出力インターフェイス(図示せず)等を備えている。
【0050】
CANコントローラC1〜C5のEEPROM78の各々には、それぞれの作動制御に対応したアプリケーション制御プログラム(ソフト)S1,S2,S3,S4,S5が予め記憶(格納)されている(図8参照)。これら各EEPROM78は本発明における記憶手段(詳細は後述する)に相当する。
【0051】
アプリケーション制御プログラムS1は、脱穀装置3及び刈取前処理装置4の各種アクチュエータ(例えば刈取部用油圧シリンダ9等)を作動させるプログラムとし、アプリケーション制御プログラムS2は、刈取部用油圧シリンダ9及び走行機体1の左右の走行部用油圧シリンダ39a,39bを作動させて、刈取前処理装置4の刈高さ制御や走行機体1の姿勢及び車高制御を実行するためのプログラムとする。
【0052】
アプリケーション制御プログラムS3は、エンジン15の出力(動力)を制御するためのプログラムとし、アプリケーション制御プログラムS4は、排出オーガ28における駆動モータ29及びオーガ用油圧シリンダ31の作動を制御するためのプログラムとする。
【0053】
アプリケーション制御プログラムS5は、各CANコントローラC1〜C5に接続した全ての機器(センサやアクチュエータ等)の制御データ(情報)の入出力を管理・制御して、実行中のモードに対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示する制御を司るプログラムとする。
【0054】
また、EEPROM78の各々には、CAN通信に必要な通信制御プログラムと、センサやアクチュエータ等の各機器間で制御データ(情報)を伝送するための入出力用制御プログラムとについても予め格納しており、アプリケーション制御プログラムに対して入出力用制御プログラムがベースとなるように階層化されている。
【0055】
この実施形態では、各CANコントローラC1〜C5におけるEEPROM78とRAM79との間のデータ転送処理は、例えば以下のように実行される。
【0056】
まず、EEPROM78が記憶している制御プログラムや各種データをRAM79に書き込み(コピーし)、このRAM79上のプログラム及びデータに基づいてCPU77が制御を実行する。制御実行中に検出したデータは、一旦RAM79に書き込まれる。
【0057】
制御終了時には、RAM79に書き込まれたデータのうちEEPROM78上のデータとの差分(RAM79上のデータのうちEEPROM78上のデータと相違する更新データ)のみがEEPROM78にまとめて書き込まれる。
【0058】
この場合、EEPROM78へのデータ転送時には、CPU77による制御が既に終了しており、このデータ転送速度の遅さがCPU77の制御処理速度(応答性)に影響しないので、CPU77の制御処理速度が速くなる。
【0059】
EEPROM78へのデータ転送の途中で電源スイッチ142のOFF信号を検出した場合は、RAM79とEEPROM78とのデータの差分(更新データ)を安全かつ確実に保存するため、この更新データを全てEEPROM78に書き込んだのち、CANコントローラC1〜C5の電源を遮断する。
【0060】
また、EEPROM78へのデータ転送の途中で電源スイッチ142のOFF信号を検出したのち、データ転送が終了するまでに、電源スイッチ142のON信号を検出した場合は、RAM79上にプログラムやデータが残っているので、EEPROM78へのデータ転送処理を中止する。
【0061】
各CANコントローラC1〜C5は、目安として、入出力系機器のハーネスの長さがなるべく短くなるように組み合せてこれらを制御するようにしており、それぞれの配置箇所でコントローラボックス(図示せず)内に格納されている。
【0062】
例えば、CANコントローラC1は、運転室11における床板の下面側に設置されている(図1〜図3参照)。このCANコントローラC1の入力インターフェイスには、昇降ポジションセンサ45、刈取前処理装置4において刈取穀稈を搬送しているか否かを検出する穀稈搬送センサ96、搬送中の刈取穀稈の長さを検出する穀稈長さセンサ97、扱深さセンサ98、オーガクラッチモータスイッチ99、超音波センサ44a,44b、車速センサ100、2番受樋スクリューコンベア回転センサ101、操向丸ハンドルリミットスイッチ102等が各々接続されている(図9参照)。
【0063】
CANコントローラC1の出力インターフェイスには、扱深さ制御モータにおけるリレーユニット等の制御回路部103、オーガクラッチモータにおけるリレーユニット等の制御回路部104、脱穀クラッチを駆動させるための電磁ソレノイド105等が各々接続されている(図9参照)。
【0064】
CANコントローラC2は、刈取前処理装置4の上部でかつ運転室11に近い箇所に設置されている(図1〜図3参照)。CANコントローラC2の入力インターフェイスには、燃料センサ106、傾斜センサ43、車高センサ41a,41b、選別装置の流穀板における籾流量センサ107、選別装置各部での籾の有無を検出する籾センサ108、排藁カッタ詰まりセンサ109、旋回角センサ81、横筒28bの先端部に設けて排出オーガ28の水平旋回等を操作する排出オーガ先端操作部110、上下回動角センサ82、オーガクラッチセンサ111、排出オーガ過負荷センサ112、搖動選別過負荷センサ113、扱胴回転センサ114、処理胴回転センサ115等が各々接続されている(図10参照)。
【0065】
CANコントローラC2の出力インターフェイスには、搖動選別駆動モータ116、FCクラッチ駆動回路部117、排出オーガ28の縦筒28aを水平旋回させるための駆動モータ29、排出オーガブレーキ118、オーガ用油圧シリンダ31に対する電磁制御弁51の電磁ソレノイド51a、走行機体1の左側の走行部用油圧シリンダ39aに対する電磁制御弁52の電磁ソレノイド52a、走行機体1の右側の走行部用油圧シリンダ39bに対する電磁制御弁53の電磁ソレノイド53a、刈取部用油圧シリンダ9に対する電磁制御弁50の電磁ソレノイド50a等が各々接続されている(図10参照)。
【0066】
図1〜図3に示すように、CANコントローラC3は、運転室11における運転座席56の後部に設置されている。CANコントローラC3の入力インターフェイスには、エンジン回転数センサ119、エンジンオイル量センサ120、エンジン水温センサ121、エンジン15の出力(負荷)を制御する電子ガバナ付き燃料噴射ポンプのラック位置を検出するための燃料噴射ポンプラック位置センサ122、エンジンスタータスイッチ123、排出オーガ28の水平旋回位置を予め記憶させるためのオーガセット位置ダイヤル124、運転室11に設けて排出オーガ28の水平旋回等を操作する排出オーガ操作部125、刈取クラッチモータリミットスイッチ126等が各々接続されている(図11参照)。
【0067】
CANコントローラC3の出力インターフェイスには、エンジン15の回転数が所定の回転数となるように燃料噴射ポンプのラック位置を調節するための燃料噴射ポンプラックアクチュエータ127、エンジンスタータリレー128、警報ブザー129等が各々接続されている(図11参照)。
【0068】
CANコントローラC4は運転室11のサイドコラム61内に設置されている(図1〜図3参照)。CANコントローラC4の入力インターフェイスには、アクセルレバー59の操作位置を検出するアクセルレバーセンサ59a、車高調節レバー62、車高制御切替スイッチ63、傾斜設定器64、扱深さ自動制御スイッチ130、刈取自動昇降スイッチ131、定回転制御切替スイッチ133、刈取前処理装置4が所定の刈高さまで下降すると自動的に前記刈取前処理装置4へ動力伝達するための刈取オートクラッチスイッチ132、刈取スイッチ134、脱穀スイッチ135、選別装置における穀粒の選別状態を調節するための選別調節ダイヤル136、オートリフトスイッチ137、オートセットスイッチ138、刈取昇降レバー139、扱深さ調節レバー140、副変速レバー66、走行機体1を後退動させるための後退スイッチ141、電源スイッチ142等が各々接続されている(図12参照)。
【0069】
CANコントローラC4の出力インターフェイスには、車高制御を自動操作に切替えたときに点灯する車高制御切替スイッチランプ143、扱深さ制御を自動操作に切替えたときに点灯する扱深さ自動制御スイッチランプ144等が各々接続されている(図12参照)。
【0070】
ケース60a内に内装したCANコントローラC5の入力インターフェイスには、液晶パネル60bの画面上のカーソルを画面上方向に移動させるためのカーソル上移動スイッチ71、画面下方向に移動させるためのカーソル下移動スイッチ72、液晶パネル60bの画面表示を切替える操作等をするための第1及び第2切替スイッチ73,74等が各々接続されている(図13参照)。
【0071】
そして、CANコントローラC5の出力インターフェイスには、報知手段としての液晶パネル60b、コンバイン全体の電源を入り切り操作する電源スイッチ142の入り操作時等に点灯する作業ランプ70等が各々接続されている(図13参照)。
【0072】
次に、CANコントローラC5によるモードの切替え制御の態様について説明する。図14に示すように、コンバインのモード(動作の状態)は、初期モードM1、路上走行や各種作業をする通常モードM2、コンバイン各部の異常状態を報知する警報表示モードM3、検出エラー等の各種エラーの内容を報知するエラー表示モードM5、及びエンジン15及び脱穀装置3における回転数制御等の設定を行うための環境設定モードM4の5つに大別される。
【0073】
そして、通常モードM2には、路上走行等をする非作業モードM2aと刈取・脱穀作業をする作業モードM2bとがあり、非作業モードM2aからのみ移行できるメンテナンスモードM6も設定されている(図15参照)。
【0074】
まず最初に、電源スイッチ142を入り操作すると、初期モードM1が起動して、液晶パネル60bの画面に図16に示す初期画像情報が表示される。
【0075】
次いで、CANコントローラC5のEEPROM78に予め設定された時間(実施形態では10秒)が経過するか、あるいはエンジン15の回転数が予め設定された回転数(実施形態では240rpm)以上になると、自動的に通常モードM2のうち非作業モードM2aに移行して(図15参照)、液晶パネル60bの画面の表示が、前記初期画像情報からエンジン回転数や燃料の残量等の画像情報(非作業モードM2aに対応した画像データ)に遷移する(図17参照)。
【0076】
この場合、液晶パネル60bの画面には、非作業モードM2aの画像情報として、走行機体1の走行速度(車速)を示す速度計85、エンジン回転数を示す略L字状の回転数グラフ86、穀粒タンク12内のもみの量を知らせるタンクモニタ87、燃料の残量を知らせる燃料計88、副変速レバー66の設定状態を知らせる副変速モニタ89、刈取前処理装置4の速度の設定状態を知らせる刈取変速モニタ90、及びエンジン15の稼動時間を積算した値等を知らせる積算値モニタ91とが表示される。
【0077】
初期モードM1の実行中に、脱穀装置3への動力伝達のための脱穀クラッチが入り状態、すなわち脱穀スイッチ135が入り作動している場合は、後述する警報表示モードM3に移行して、警報ブザー129を鳴動させるとともに、液晶パネル60bの画面に、扱胴詰まりの画像情報が切替え表示される(図21(a)参照)。これは、実際に扱胴詰まりが発生した訳ではないが、前記扱胴詰まりの画像情報を代用して液晶パネル60bの画面に表示することにより、脱穀クラッチが入り状態であることをオペレータに報知して、このままで始動することを防止するようにしたものである。
【0078】
その後、脱穀スイッチ135を切り作動させると、警報ブザー129は鳴動停止するとともに非作業モードM2aに移行して、液晶パネル60bの画面の表示が非作業モードM2aの画像情報に戻る(図17参照)。
【0079】
図15に示すように、通常モードM2のうち非作業モードM2aの実行中に脱穀スイッチ135を入り作動させると、作業モードM2bに移行して、図17の画像情報を示す画面の表示がエンジン負荷や燃料の残量等の画像情報(作業モードM2bに対応した画像データ)に遷移する(図18参照)。作業モードM2bの画像情報は、非作業モードM2aの画像情報のうちエンジン回転数を示す回転数グラフ86の表示領域に、これに代えてエンジン負荷を示す負荷グラフ86′を表示する点が異なるだけであり、その他は非作業モードM2aの場合と同様である。
【0080】
一方、通常モードM2(非作業モードM2aまたは作業モードM2b)の実行中に、液晶表示装置60に設けたカーソル上移動スイッチ71を適宜時間(実施形態では5秒)以上押下すると、液晶パネル60bの画面における積算値モニタ91の表示が、刈取作業時間の積算値モニタ91′に切り替わる(図19参照)。この刈取作業時間とは、エンジン回転数が予め設定された回転数(実施形態では1000rpm)以下でかつ刈取クラッチが入り状態(刈取スイッチ134が入り状態)である時間を積算したものであり、実質的に刈取作業を行った時間を表している。この状態で、カーソル下移動スイッチ72を適宜時間以上押下すると、前記刈取作業時間の積算値がゼロにリセットされる。
【0081】
もう一度カーソル上移動スイッチ71を適宜時間(実施形態では5秒)以上押下すると、前記画面における刈取作業時間の積算値モニタ91′の表示が、エンジン稼動時間の積算値モニタ91に戻る。電源投入後、通常モードM2の画像情報がはじめて液晶パネル60bの画面に表示された場合は、前記画面に、必ずエンジン稼動時間の積算値モニタ91が表示される。
【0082】
図14に示すように、通常モードM2において、コンバイン各部において許容される制御範囲から外れた異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面の表示が、通常モードM2の画像情報から前記異常データに係る異常状態の画像情報、すなわち警報表示モードM3の画像情報に遷移する。図20〜図22は、これら各異常状態の画像情報を表示した画面の例である。
【0083】
なお、各種異常データが発生した場合には、液晶表示装置60のケース60aに設けた作業ランプ70(図7参照)が点灯する。
【0084】
警報表示モードM3の画像情報は、異常状態の内容や異常発生位置等の詳細を示す詳細情報151(図20(a)等参照)と、この異常状態に対する処置情報152(図20(b)等参照)とからなり、これら両情報が各々単独で液晶パネル60bの画面に表示されるようになっている。前記画面における両情報151,152の切替え表示は、第1切替スイッチ73の押下により実行される。
【0085】
警報表示モードM3で報知される異常状態は、危険性が高いためエンジン15を強制停止させる穀稈詰まり等の緊急状態と、扱胴詰まりに代表される回転数異常等の作業系の異常状態と、エンジン油圧異常に代表されるエンジン系の異常状態との三つに大別される。
【0086】
例えば緊急状態に関する異常データ(以下、緊急データという)が発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、前記緊急状態の画像情報(以下、緊急情報という)を切替え表示する(図20参照)とともに、エンジン15が強制的に停止する。
【0087】
緊急データが検出された場合は、当該緊急データに係る緊急情報のみを液晶パネル60bの画面に表示し、他の異常データが併せて検出されていても、当該他の異常データに関する異常情報には切り替わらないようになっている。この場合は、一旦電源スイッチ142を切り作動させない限り、他のモードへ移行することもできない。
【0088】
なお、複数の緊急データが検出された場合には、後に検出された緊急データに関する緊急情報は、先の緊急状態が解消されたのち、先の緊急情報から切り替わって、液晶パネル60bの画面に表示される。
【0089】
作業系の異常状態とはコンバインの例でいうと脱穀関係であり、作業系の異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報に代えて、前記作業系異常データに係る異常状態の画像情報(図21参照)を切替え表示する。
【0090】
作業系の異常状態だけが発生していた場合には、前記異常状態が解消することにより、警報表示モードM3から通常モードM2に復帰して、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報が切替え表示される。液晶表示装置60の作業ランプ70(図7参照)はこのとき消灯する。
【0091】
なお、複数の作業系異常データが検出された場合にも、前述した緊急データの場合と同様に、後に検出された作業系異常データに関する異常情報は、先の作業系の異常状態が解消されたのちに、先の作業系の異常情報から切り替わって、液晶パネル60bの画面に表示される。
【0092】
エンジン系の異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報に代えて、前記エンジン系異常データに係る異常状態の画像情報(図22参照)が切替え表示されるとともに、警報ブザー129が鳴動する。
【0093】
エンジン系の異常状態だけが発生している場合には、第1切替スイッチ73を押下することにより、警報表示モードM3と通常モードM2との間において、液晶パネル60bの画面に各種情報を切替え表示できる。
【0094】
すなわち、エンジン系の異常状態だけが発生している場合には、第1切替スイッチ73を一回押下すると、通常モードM2に移行して、液晶パネル60bの画面の表示がエンジン系の異常情報から通常モードM2の画像情報に遷移する。
【0095】
この場合は、第1切替スイッチ73の押下に伴って警報ブザー129が鳴動停止し、通常モードM2の画像情報を示した画面における副変速モニタ89の右側部位に、「警報」の文字標識93が点滅表示される(図23参照)。この警報標識93の点滅により、通常モードM2の画像情報を示した画面上でも、オペレータはエンジン系の異常状態が発生していることを視認でき、オペレータの注意を喚起できる。
【0096】
もう一度、第1切替スイッチ73を押下すると、警報表示モードM3に移行して、液晶パネル60bの画面に、エンジン系の異常情報が切替え表示されるとともに、再び警報ブザー129が鳴動する。
【0097】
エンジン系の異常状態が解消すると、警報表示モードM3から通常モードM2に復帰して、警報ブザー129の鳴動を停止させるとともに、液晶パネル60bの画面に通常モードM2の画像情報が切替え表示される。なお、液晶表示装置60の作業ランプ70(図7参照)はこのとき消灯する。
【0098】
作業系の異常状態とエンジン系の異常状態とが発生した場合や、エンジン系の異常状態だけが複数発生した場合には、適宜時間(実施形態では5秒)ずつ順送りで、各異常状態の画像情報が液晶パネル60bの画面に切替え表示される。なお、作業系の異常状態が確認された場合には、第1切替えスイッチ73を押下しても、液晶パネル60bの画面表示は通常モードM2の画像情報に切り替わらない。
【0099】
図15に示すように、非作業モードM2aの実行中に、エンジン回転数が予め設定された回転数(実施形態では1500rpm)以下でかつ車速停止状態(実施形態では車速が0.03m/s以下)の条件で、両カーソル移動スイッチ71,72を同時に適宜時間(実施形態では1秒)以上入り作動させたのち、続けて4つのスイッチ71〜74を同時に適宜時間(実施形態では5秒)以上入り作動させると、警報ブザー129が鳴動するとともにメンテナンスモードM6に移行する。液晶パネル60bの画面には、メンテナンスモードM6における選択メニューの画像情報が切替え表示される(図24参照)。警報ブザー129は前記画面が切り替わった時点で鳴動停止する。
【0100】
メンテナンスモードM6では、各種センサやアクチュエータ等の故障診断をするだけでなく、これら各機器の制御範囲を設定変更できるため、前述した複雑な手順を踏まないとメンテナンスモードM6へ移行しないようにして、いたずらや誤操作で各機器の制御範囲が変更されることを防止している。
【0101】
また、メンテナンスモードM6では、一旦電源スイッチ142を切り作動させない限り、他のモードM1〜M5への移行ができないようになっている。
【0102】
図14に示すように、通常モードM2(非作業モードM2aまたは作業モードM2b)の実行中に、例えばセンサや設定器等の検出エラーや、アクチュエータの作動エラー等の各種エラーが発生した場合には、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に、「エラー」の文字標識92が点滅表示される(図25参照)。このエラー標識92の点滅により、オペレータは、何らかのエラーが生じたことを、通常モードM2の画像情報を示した画面上で迅速に視認できる。
【0103】
この状態で、第1切替スイッチ73を適宜時間(実施形態では5秒)以上押下すると、エラー表示モードM5に移行して、液晶パネル60bの画面の表示がこのとき発生したエラーの内容を示す画像情報に遷移する(図26(a)〜(d)参照)。これにより、オペレータは、エラーの詳細について自らが望むときに確認できるので、作業効率や運転操作時の安全性が向上する。
【0104】
もう一度第1切替スイッチ73を一回押下するか、または、前記エラーが解消されると、エラー表示モードM5から通常モードM2に戻って、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報が切替え表示される。
【0105】
次に、図14のモード間遷移図と、図27及び図28の画面図とを参照しながら、環境設定モードM4における制御態様について説明する。
【0106】
図14に示すように、通常モードM2の実行中に第1切替スイッチ73を一回押下した場合は、環境設定モードM4に移行して、液晶パネル60bの画面の表示が、通常モードM2の画像情報から環境設定モードM4における設定メニューの画像情報(以下、設定メニュー情報という)に遷移する(図27(a)(b)参照)。
【0107】
環境設定モードM4には、コンバインの作業仕様(コンバインの作業に応じた設定)を選択・決定する仕様選択モードや、圃場条件の変化によるエンジン15の負荷状態に応じて車速を調節する快速制御モード等の複数の態様があり、環境設定モードM4における設定メニュー情報を示す画面には、仕様選択モードの情報として「種籾仕様 切り(または入り)」、快速制御モードの情報として「快速制御 切り(または入り)」の文字情報(項目)や、選択する文字情報を指し示すカーソル160とが表示される。
【0108】
また、この画面の四隅部位には、液晶表示装置60の各スイッチ71,72,73,74の機能を示す操作指示標識161,162,163,164が表示されている。当該各操作指示標識161〜164は、その表示位置に対応した各スイッチ71〜74を押下した際の作動内容を、文字や図形等で簡略化して表したものである。
【0109】
例えば図27(a)(b)の画面で説明すると、画面左上隅部の操作指示標識161(上向き矢印)に対応したカーソル上移動スイッチ71を押下すると、カーソル160が画面の上方向に移動し、左下隅部の操作指示標識162(下向き矢印)に対応したカーソル下移動スイッチ72を押下すると、カーソル160が画面の下方向に移動するのである。
【0110】
この実施形態では、エンジン15及び脱穀装置3の回転数制御や快速制御等における設定条件(詳細は後述する)に対応した文字情報を、液晶パネル60bの画面に表示することによって、オペレータの望む設定条件を選択・決定できるようになっている。
【0111】
例えば図27(a)に示すように、液晶パネル60bの画面に、仕様選択モードの情報として「種籾仕様 切り」の文字が表示されている場合は、コンバインの作業仕様が標準作業仕様(通常の刈取脱穀作業用の仕様)となっており、EEPROM78に予め記憶させた二種類の設定条件のうち標準作業仕様のもの(以下、標準条件という)を基準として回転数制御が実行される。
【0112】
画面左側の操作指示標識161,162に対応したカーソル移動スイッチ71,72を押下して、上下方向に移動するカーソル160を「種籾仕様 切り」の文字情報の左寄り部位に位置させると、この文字情報が反転表示(白抜き文字での表示)される。
【0113】
そして、この状態で、画面右下隅部の操作指示標識164(「変更」の文字)に対応した第2切替スイッチ74を押下すると、コンバインの作業仕様を種籾作業仕様(種籾収穫作業用の仕様)に変更でき、液晶パネル60bの画面に、「種籾仕様 入り」の文字情報が切替え表示される(図27(b)参照)。
【0114】
この場合、回転数制御は、EEPROM78に予め記憶させたもう一方の設定条件、すなわち種籾作業仕様の設定条件(以下、種籾条件という)を基準として実行される。
【0115】
したがって、オペレータは、環境設定モードM4における設定メニュー情報を表示した画面を見れば、コンバインにおける現状の作業仕様を簡単に把握できるので、通常の刈取脱穀作業及び種籾収穫作業のどちらの場合であっても、その作業内容に適合した作業仕様を的確に選定でき、コンバインでの作業を効率よく実行できる。
【0116】
なお、もう一度第2切替スイッチ74を押下すると、液晶パネル60bの画面の表示が、「種籾仕様 入り」の文字情報から「種籾仕様 切り」の文字情報に戻る。すなわち、第2切替スイッチ74を一回押下するごとに、「種籾仕様 入り」→「種籾仕様 切り」→「種籾仕様 入り」と、文字情報が循環的に表示される。
【0117】
その後、画面右上隅部の操作指示標識163(「戻る」の文字)に対応した第1切替スイッチ73を押下すると、通常モードM2に移行して、液晶パネル60bの画面の表示が、環境設定モードM4の設定メニュー情報から通常モードM2の画像情報に戻る(図28参照)。
【0118】
この場合、液晶パネル60bの画面のうち副変速モニタ89の右側部位に、「種籾」の文字標識94が点滅表示される。種籾標識94の点滅によって、オペレータはコンバインの作業仕様が種籾作業仕様であることを通常モードM2の画像情報を示した画面上で視認でき、当該オペレータの注意を喚起できる。
【0119】
次に、環境設定モードM4で選択した作業仕様の設定条件と、この設定条件に基づいた回転数制御の態様とについて説明する。
【0120】
回転数制御における設定条件(標準及び種籾条件)は、扱胴13や処理胴20等の詰まりの判断基準となる警報回転数W1〜W6(図29参照)、定回転制御時のエンジン定格回転数RA,RB、エンジン15の回転数と出力との関係を示すエンジン制御マップ(図30参照)等の複数の項目からなっており、実施形態では、これら各項目がCANコントローラC3のEEPROM78に予め記憶されている。
【0121】
ここで、図30にグラフ化して示したエンジン制御マップは、(a)が標準作業仕様かつ手動モード(定回転制御切替スイッチ133が切り状態)の場合、(b)が標準作業仕様かつ定回転制御モード(定回転制御切替スイッチ133が入り状態)の場合、(c)が種籾作業仕様かつ手動モードの場合、(d)が種籾作業仕様かつ定回転制御モードの場合である。
【0122】
この例では、種籾収穫作業に際して、扱胴13等の回転で穀粒を傷つけないように、扱胴13等を比較的低速で回転させるため、種籾作業仕様のエンジン定格回転数RB(実施形態では2500rpm)が、標準作業仕様のエンジン定格回転数RA(実施形態では2600rpm)よりも小さい値に設定されている。
【0123】
また、種籾作業仕様のエンジン定格回転数RBを標準作業仕様のエンジン定格回転数RAよりも低く設定したことに伴って、種籾作業仕様の脱穀装置3の警報回転数W4,W5,W6は、それぞれに対応する標準作業仕様の警報回転数W1,W2,W3よりも小さい値に設定されている。
【0124】
例えば、扱胴13の警報回転数はW1=450rpmに対してW4=432rpm、処理胴20の警報回転数はW2=951rpmに対してW5=914rpm、二番受樋のスクリューコンベア22bの警報回転数はW3=474rpmに対してW6=456rpmとなっている(図29参照)。
【0125】
以上の構成において、エンジン15及び脱穀装置3の回転数制御は次のように行われる。ここで、定回転制御切替スイッチ133は入り状態(定回転制御モード)であり、液晶パネル60bの画面には、通常モードM2の画像情報(図18参照)が表示されているものとする。
【0126】
例えば通常の刈取脱穀作業時のように、コンバインの作業仕様を標準作業仕様としていた場合は、CANコントローラC3のEEPROM78に予め記憶させた二種類の設定条件のうち標準条件を基準として、換言すると、エンジン定格回転数RA、扱胴13等の警報回転数W1〜W3、及び図30(b)のエンジン制御マップ等の条件に基づいて、燃料噴射ポンプの噴射量調節用ラックを、ラックアクチュエータ127で所定の位置に移動させるように制御することによって、エンジン15の回転数をエンジン定格回転数RAに保持する。
【0127】
この場合は、扱胴13、処理胴20及び二番受樋のスクリューコンベヤ22bの回転センサ114,115,101(図9及び図10参照)で検出した回転数が標準作業仕様での警報回転数W1,W2,W3以下であれば、前述の通り、液晶パネル60bの画面に、回転数異常の画像情報(図21参照)を切替え表示するのである。
【0128】
他方、例えば種籾収穫をするために、コンバインの作業仕様を種籾作業仕様に切替える場合は、通常モードM2の実行中に第1切替スイッチ73を一回押下して、液晶パネル60bの画面表示を、環境設定モードM4における設定メニュー情報に遷移させる(図27(a)参照)。
【0129】
次いで、液晶表示装置60の各スイッチ71,72,74を操作して、液晶パネル60bの画面に「種籾仕様 入り」の文字情報を切替え表示すると(図27(b)参照)、アプリケーション制御プログラムS3のサブルーチンにおいて、CANコントローラC3のEEPROM78から種籾条件のデータ(エンジン定格回転数RB、扱胴13等の警報回転数W4〜W6、及び図30(d)のエンジン制御マップ等)が選び出される。
【0130】
そして、この選出された種籾条件に基づいて、燃料噴射ポンプの噴射量調節用ラックをラックアクチュエータ127で所定の位置に移動させるように制御することによって、エンジン15の回転数をエンジン定格回転数RBに保持する。
【0131】
この場合は、回転センサ114,115,101(図9及び図10参照)で検出した回転数が種籾作業仕様での警報回転数W4,W5,W6以下であれば、液晶パネル60bの画面に、回転数異常の画像情報(図21参照)を切替え表示するのである。
【0132】
以上のように制御すると、一台のコンバインで、通常の刈取脱穀作業と種籾収穫作業との両方を支障なく実行できるから、コンバインの汎用性が向上する。しかも、本発明に係る制御装置を備えたコンバインが一台あれば、従来のように種籾収穫専用のコンバインを使用したり購入したりしなくてもよいので、ユーザーにとって非常に経済的である。
【0133】
また、通常の刈取脱穀作業や種籾収穫作業といった作業内容に応じて作業仕様を選択・決定できるので、その作業内容に合ったきめ細かな制御が可能となるのである。
【0134】
ところで、この実施形態において、電源投入時にコンバインの作業仕様が種籾作業仕様となっていた場合は、初期モードM1から通常モードM2における非作業モードM2aに移行する前に、液晶パネル60bの画面に、種籾作業仕様であることを報知するための報知情報170が表示される(図31参照)。なお、報知情報170は、オペレータに種籾作業仕様であることを知らせるようになっていれば、文字、記号、画像またはこれらの組合せ等のいずれのものでもよい。
【0135】
この場合、画面右上隅部には、操作指示標識163として「はい」の文字が表示される一方、右下隅部には、操作指示標識164として「いいえ」の文字が表示される。
【0136】
ここで、「はい」の文字(操作指示標識163)に対応した第1切替スイッチ73を押下すると、そのまま通常モードM2における非作業モードM2aに移行して、液晶パネル60bの画面表示が、報知情報170から非作業モードM2aの画像情報に遷移する(図17参照)。したがって、以後のコンバインの作業仕様はそのまま種籾作業仕様となり、EEPROM78に予め記憶させた二種類の設定条件のうち種籾条件を基準として回転数制御が実行される。
【0137】
一方、「いいえ」の文字(操作指示標識164)に対応した第2切替スイッチ74を押下すると、コンバインの作業仕様が標準作業仕様に変更されて、通常モードM2における非作業モードM2aに移行し、以後のコンバインの回転数制御が、EEPROM78に予め記憶させたもう一方の標準条件を基準として実行されるのである。
【0138】
このように制御すると、電源投入時にコンバインの作業仕様が種籾作業仕様となっていた場合は、各種作業を行う前に、報知情報170を液晶パネル60bの画面に表示するので、オペレータの注意を喚起でき、オペレータは現在のコンバインの作業仕様がどちらであるかを簡単に把握できる。
【0139】
しかも、液晶パネル60bの画面に報知情報170を表示した状態で、液晶表示装置60の切替スイッチ73,74を押下することによって、どちらの作業仕様にするかを選択・決定できるから、コンバインの作業仕様を種籾作業仕様としたままで、換言するとエンジン回転数を低速に保ったままで、通常の刈取脱穀作業をすることがなく、コンバインでの作業を効率よく実行できるのである。
【0140】
なお、液晶表示装置60の各スイッチ71〜74に代えて、液晶パネル60bの画面上に、従来公知のタッチパネルを配設してもよい。この場合は、例えばCANコントローラC5の入力インターフェイスにタッチパネルを接続しておき、オペレータがタッチパネルの表面のうち操作指示標識161〜164の部位を指等で押圧すると、タッチパネルが押圧部位を検出して、この押圧部位情報をCANコントローラC5に伝送し、当該押圧部位に対応した操作指示標識161〜164の内容(例えばカーソル160を画面の上方向に移動させる等)を実行するようにすればよい。
【0141】
この構成によっても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるのである。
【0142】
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本発明に係る記憶手段は、EEPROM78に限らず、通常のROMやPROMであってもよい。
【0143】
また、通信バス(回線)はCANプロトコルのみならず、LAN(Local Area Network) プロトコルを用いてもよく、本発明は、前述したCAN通信環境のみならず、LAN通信環境の制御システムに対しても適用できる。
【0144】
さらに、コントローラは複数であってもよいし、単一のものでもよい。
【0145】
【発明の効果】
請求項1のように構成すると、コンバインの作業仕様として、標準作業仕様及び種籾作業仕様のうちいずれか一方を操作手段で選択することによって、この選択した作業仕様の設定条件に基づいて回転数制御を実行できるから、通常の刈取脱穀作業と種籾収穫作業との両方を、一台のコンバインで行えることとなり、コンバインの汎用性が向上するという効果を奏する。
【0146】
しかも、このコンバインが一台あれば、従来のように種籾収穫専用のコンバインを使用したり購入したりしなくてもよいので、ユーザーにとって非常に経済的であるという効果も奏する。
【0148】
更に、電源投入時に種籾作業仕様の設定条件に基づいて回転数制御を実行する設定となっていた場合は、その旨を示す報知情報を表示手段の画面に表示するから、各種作業を行う前に、コンバインの作業仕様について、オペレータの注意を喚起できるという効果を奏する。
【0149】
特に、前記表示手段の画面に前記報知情報を表示した状態で、前記表示手段の画面近傍または画面上に設けた操作手段を手動操作することによって、前記両作業仕様のいずれか一方を選択できるから、例えばコンバインの作業仕様を種籾作業仕様としたままで、通常の刈取脱穀作業をすることがなく、コンバインでの作業を効率よく実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コンバインの左側面図である。
【図2】 コンバインの右側面図である。
【図3】 コンバインの正面図である。
【図4】 動力伝達系のスケルトン図である。
【図5】 油圧回路図である。
【図6】 運転室の概略平面図である。
【図7】 操向丸ハンドル及び液晶表示装置を示す拡大平面図である。
【図8】 制御装置全体の機能ブロック図である。
【図9】 CANコントローラC1の機能ブロック図である。
【図10】 CANコントローラC2の機能ブロック図である。
【図11】 CANコントローラC3の機能ブロック図である。
【図12】 CANコントローラC4の機能ブロック図である。
【図13】 CANコントローラC5の機能ブロック図である。
【図14】 各モードの遷移図である。
【図15】 通常モードの遷移図である。
【図16】 初期モードの画像情報を示す画面の図である。
【図17】 非作業モードの画像情報を示す画面の図である。
【図18】 作業モードの画像情報を示す画面の図である。
【図19】 刈取作業時間の積算値が表示された通常モードの画面の図である。
【図20】 緊急情報のうち穀稈引起装置の穀稈詰まり情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図21】 作業系異常情報のうち扱胴詰まり情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図22】 エンジン系異常情報のうちエンジン油圧異常情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図23】 警報標識が表示された通常モードの画面の図である。
【図24】 メンテナンスモードの画像情報を示す画面の図である。
【図25】 エラー標識が表示された通常モードの画面の図である。
【図26】 エラー表示モードの画像情報を示す画面の図であり、(a)は扱深さセンサ、(b)は燃料センサ、(c)は燃料噴射ポンプラックアクチュエータ、(d)は刈取スイッチセンサである。
【図27】 環境設定モードの画像情報を示す画面の図であり、(a)は「種籾仕様 切り」の場合、(b)は「種籾仕様 入り」の場合である。
【図28】 種籾標識が表示された通常モードの画面の図である。
【図29】 扱胴等の警報回転数をまとめた表である。
【図30】 エンジンの回転数と出力との関係を示すエンジン制御マップであり、(a)標準作業仕様かつ手動モードの場合、(b)が標準作業仕様かつ定回転制御モドの場合、(c)が種籾作業仕様かつ手動モードの場合、(d)が種籾作業仕かつ定回転制御モードの場合である。
【図31】 報知情報を示す画面の図である。
【符号の説明】
C1〜C5 CANコントローラ
S1〜S5 アプリケーション制御プログラム
M1 初期モード
M2 通常モード
M3 警報表示モード
M4 環境設定モード
M5 エラー表示モード
M6 メンテナンスモード
1 走行機体
2,2 走行クローラ
3 脱穀装置
15 エンジン
60 液晶表示装置
60b 表示手段としての液晶パネル
71 カーソル上移動スイッチ
72 カーソル下移動スイッチ
73 第1切替スイッチ
74 第2切替スイッチ
75 制御手段としての制御装置
77 CPU
78 記憶手段としてのEEPROM
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- 走行機体に搭載したエンジンの出力を、脱穀装置等の作業部と走行部とに伝達するように構成する一方、前記エンジン及び前記作業部の回転数を制御するための制御手段と、各種制御モードの情報を表示するための表示手段とを備えたコンバインにおいて、
前記制御手段には、前記回転数制御における標準作業仕様の設定条件と、種籾作業仕様の設定条件とを予め記憶させた記憶手段を備えており、
前記制御手段は、電源投入時に前記回転数制御における作業仕様が前記種籾作業仕様になっていた場合には、その旨を示す報知情報を前記表示手段の画面に表示し、この状態で操作手段を手動操作することによって、前記両作業仕様のいずれか一方を選択できるように制御することを特徴とするコンバインにおける制御装置。
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