JP3852737B2 - 杭頭半固定接合による高靭性杭及びその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本願発明は、地震時における地盤と地上構造物との相対的な移動に起因する水平力による杭頭部の破壊防止に有効な杭頭半固定接合による高靭性杭および高靭性杭の施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤等に建築構造物を建設する場合、該建築構造物を支持するために鋼杭や鉄筋コンクリ−ト杭等の既成杭、或いは場所打ちコンクリ−ト杭が使用されているが、阪神淡路大震災において杭の損傷事例が多数報告され、地震時における杭および建築構造物を支持する基礎構造体の耐震安全性を確保することが耐震設計上の重要課題となってきている。
【0003】
ところで、杭と基礎構造体の接合は、杭頭を基礎構造体に固定する剛接合によるものと、杭頭で基礎構造体をピン支承するピン接合により行われている。
図3は従来技術で、場所打ちコンクリ−ト杭31と基礎構造体32の接合部を剛接合により施工されたものが示されており、地盤33中に場所打ちコンクリ−ト杭31が形成され、該場所打ちコンクリ−ト杭31の杭頭34に基礎構造体32が設けられ、該場所打ちコンクリ−ト杭31の主筋35を該基礎構造体32の中に定着させてコンクリ−トを打設することにより、場所打ちコンクリ−ト杭31と基礎構造体32が剛接合された構造になっている。
このように、杭頭34と基礎構造体32との接合部を剛接合による構造とすると、地震等の外力が作用した場合、杭頭結合部には曲げモ−メント等の荷重が集中し、杭頭の曲げモ−メントを基礎梁で抵抗させる必要があるので該基礎梁の断面も大きなものになっている。
【0004】
図4は他の従来技術で、地震時における地盤と地上構造物との相対的な移動に起因する水平力による杭頭部の曲げモ−メントを極力小さくするため、地盤41中に埋設された既成コンクリ−ト杭42における杭頭部分のコンクリ−トを削り取り、露出したPC鋼材43を切除して杭頭44の外周に補強体45が外嵌される。
次いで、該補強体45上に、上面が突曲球面のフ−チング支持体46を載置して両者を溶接連結し、凹曲球面を有する受け金具47をフ−チング支持体46に被せ、受け金具47の下部フランジ近くを下面にする状態でフ−チング48となるコンクリ−トを打設することにより、既成コンクリ−ト杭42の杭頭44にフ−チング48が結合された構造となっている。
このように、フ−チングと既成コンクリ−ト杭の杭頭部との結合をピン接合の構造になるよう、フ−チングと杭頭部とは互いの球状部に沿って全方向に相対的にすべり回転可能にしてあるので、杭頭結合部における曲げモ−メントの発生を無くすことはできるが、突曲球面および凹曲球面を現場において施工されるので施工時間が多く必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、杭頭と基礎構造体との接合部をピン接合に近づけ、地震時に生じる杭頭の曲げモ−メントを小さくすることで、杭と基礎構造体の断面を小さくしながら杭の靭性を高めることを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は上記課題を解決するため、杭頭と基礎構造体との間に鋼管と発泡ポリエチレンシ−ト等による摩擦低減部材を介在し、杭頭と基礎構造体との接合部を半固定接合としたものである。
【0007】
課題を解決するための具体的手段の1は、コンクリ−ト杭頭と基礎構造体との接合部において、該杭頭側には、均しモルタル上面の中心部に鋼管及びその周辺部に鉄筋貫通孔を設けた摩擦低減部材が各々載置され、該鉄筋貫通孔にはコンクリ−ト杭からの杭鉄筋を貫通させ、上面に露出した鉄筋にはコンクリ−トと鉄筋との付着を切るためのキャップを被せて構成し、該杭頭上面の中心部の鋼管、周辺部のキャップ付鉄筋及び摩擦低減部材上の基礎構造体となるコンクリ−トとはその中心部は鋼管及び鋼管中のコンクリ−トによりコンクリ−ト杭と一体化され、周辺部に間隙を形成して回転可能な状態としてなることを特徴とするコンクリ−ト杭頭と基礎構造体とを半固定接合とした高靭性杭である。また、課題を解決するための具体的手段の2は、上記摩擦低減部材を発泡ポリエチレンとしたことを特徴とする高靭性杭である。更に、課題を解決するための具体的手段の3は、地中を掘削して縦孔を形成し、該縦孔内には杭頭側にコンクリ−トと鉄筋との付着を切るためのキャップを被せた鉄筋を建て込んでコンクリ−トを打設し、該コンクリ−トが硬化した後、杭頭の余盛り部分を削り取って均しモルタルを敷き、中央部には鋼管、その周辺部には鉄筋貫通孔に杭鉄筋を貫通させた摩擦低減部材を各々載置し、その後、杭頭上に基礎構造体の鉄筋を配筋して型枠を組み立て、次いで、該型枠内に基礎構造体となるコンクリ−トを打設してなることを特徴とする半固定接合の高靭性杭の施工方法とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本願発明を図面に示した実施例に基いて説明する。
【実施例1】
図1は、場所打ちコンクリ−ト杭1と、該場所打ちコンクリ−ト杭1に支持された基礎構造体2との接合部を示す縦断面図である。
地中に縦孔を掘削し、該縦孔に鉄筋籠3を挿入することにより鉄筋が建て込まれ、杭頭部の鉄筋4にテンプレ−ト5と杭頭定着部の付着を切るため合成樹脂等からなるキャップ6を取り付け、該縦孔内にコンクリ−トが打設されて場所打ちコンクリ−ト杭1が形成される。また、場所打ちコンクリ−ト杭1に引張抵抗を期待する場合には杭頭部の鉄筋4に定着板などを取り付けておく。
【0009】
打設されたコンクリ−トが硬化した後、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭に余盛りされた部分を削り取り、この作業により杭頭部に鉄筋4が露出し、削り取られた場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭に均しモルタル7が敷かれ、該均しモルタル7中央に環状の鋼管8が載置される。
場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭に余盛りされた部分を削り取る際、杭頭鉄筋4に取り付けたキャップ6が破損した場合には、キャップ6が再度取り付けられる。
【0010】
次に、環状鋼管8の外側に、環状で且つ鉄筋貫通孔10を設けた摩擦低減材としての発泡ポリエチレンシ−ト9を均しモルタル7上面に載置し、該発泡ポリエチレンシ−ト9の鉄筋貫通孔10に、キャップ6を被せた鉄筋4が貫通された状態となる。
該均しモルタル7の上面に載置される発泡ポリエチレンシ−ト9および鋼管8は、均しモルタル7上面に発泡ポリエチレンシ−ト9を載置した後環状鋼管8を載置してもよい。
【0011】
次いで、基礎構造体2であるフ−チング等の鉄筋11を配筋した後型枠が組み立てられ、該型枠内にコンクリ−トを打設することにより、該場所打ちコンクリ−ト杭1上面から露出した鉄筋4、上面に設けた発泡ポリエチレンシ−ト9および環状鋼管8がコンクリ−ト内に埋設され、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭と基礎構造体2が接合される。
【0012】
発泡ポリエチレンシ−ト9より突出した鉄筋4に合成樹脂等からなるキャップ6が被せられるのは、上部に打設されるコンクリ−トと鉄筋との付着を切るためであり、多少とも定着状態になるとその部分に曲げモ−メントが作用することになる。
このように、発泡ポリエチレンシ−ト9より突出し、キャップ6を被せた鉄筋4を上部コンクリ−ト体である基礎構造体2の中へ埋設することにより、横方向への滑りはダボ効果で押さえることができる。
【0013】
この接合による構造物の軸力は、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭より突出した環状鋼管8と、該鋼管中のコンクリ−トで受けることになり、それ以外の部分は発泡エチレンシ−ト9により隙間ができるので回転可能な接合部となる。
しかし、構造物の軸力を受ける中央部に設けた環状鋼管8はある程度の面積を備えているので完全なピン接合ではなく、半固定接合の状態で接合されている。このように軸力は中央のコンクリ−ト部分で受け、せん断力は杭頭外周に延びる基礎構造体2aにより、曲げモ−メントは比較的柔らかい発泡ポリエチレンシ−ト9を設けることで杭頭の回転バネを0に近づけている。
【0014】
【実施例2】
図2は、場所打ちコンクリ−ト杭1と、該場所打ちコンクリ−ト杭1に支持された基礎構造体2との接合部を示す縦断面図である。
地中に縦孔を掘削し、該縦孔に鉄筋籠3を挿入することにより鉄筋が建て込まれ、杭頭部の鉄筋4にテンプレ−ト5を取り付け、該縦孔内にコンクリ−トが打設されて場所打ちコンクリ−ト杭1が形成される。また、場所打ちコンクリ−ト杭1に引張抵抗を期待する場合には、杭頭部の鉄筋4に定着板などを取り付けておくとよい。
【0015】
打設されたコンクリ−トが硬化した後、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭に余盛りされた部分を削り取り、杭頭部に露出した鉄筋4を切断により除去し、削り取られた場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭に均しモルタル7が敷かれ、該均しモルタル7上に、環状体からなる天然ゴムと鉄板を互層したせん断変形部材としての積層ゴム12が載置される。該積層ゴム12は、天然ゴム→鉄板→天然ゴムという順序で均しモルタル7上に敷設したり、或いは一体となった積層ゴムを敷設してもよい。
【0016】
次いで、該積層ゴム12の中央に設けた貫通部13に、摩擦低減部材である発泡ポリエチレン14を設け、基礎構造体であるフ−チング等の鉄筋11を配筋した後型枠が組み立てられ、該型枠内にコンクリ−トを打設することにより、該場所打ちコンクリ−ト杭1上面に設けた積層ゴム12および発泡ポリエチレン14がコンクリ−ト内に埋設され、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭部と基礎構造体2が接合される。
【0017】
この接合による構造物の軸力は、場所打ちコンクリ−ト杭1の杭頭周辺部に載置された積層ゴム12で受けるもので、積層ゴム12の中央に設けた貫通部13には可撓性のある摩擦低減部材としての発泡ポリエチレン等14が充填されているので回転可能な接合部となる。
【0018】
そして、構造物の軸力を受けるせん断変形部材としての積層ゴム12は、杭頭周辺部に載置される環状体からなり、ある程度の面積を備えているので完全なピン接合ではなく、実施例1と同様に半固定接合の状態となる。
また、積層ゴム12をゴム単体により成形すると、クリ−プによるへこみが生じて回転ができなくなるので、積層ゴム12は、天然ゴムと鉄板の互層から形成している。
このように、軸力は杭頭周辺部に載置した積層ゴム12で受け、せん断力は杭頭外周に延びる基礎構造体2aにより、曲げモ−メントは適切な剛性をもつ積層ゴム12を設けることで杭頭の回転バネを0に近づけている。
【0019】
図5は、杭径1600φ、杭長さ22mの杭を使用し、杭頭を半固定接合した本願発明の高靭性杭と、杭頭を固定接合したもの、或いは杭頭をピン接合したものと比較した解析結果が示されている。
【0020】
曲げモ−メントを比較してみると、杭頭固定に比べ本願発明の高靭性杭の方がが小さく、深度0m地点における曲げモ−メントを比較すると、杭頭を固定接合した場合400tmであるが、本願発明である半固定接合とした場合300tmになって3/4減少されており、使用される鉄筋量がかなり変わることになる。
【0021】
また、せん断力を比較してみると、杭頭を固定接合した場合に比べ、半固定接合した本願発明の高靭性杭の方が少なくなっている。
また、変形について比較してみると、杭頭をピン接合した場合は曲げモ−メントは小さくなるが変形が大きく、また杭頭を固定接合した場合は曲げモ−メントは大きいが変形は小さくなっており、本願発明のように半固定接合とした場合はその中間となっている。
【0022】
【表1】
表1は、杭頭に載置される鋼管径400mm、高さ50mmを使用した杭の断面算定結果が示されており、本願発明の半固定接合した高靭性杭をみると、最大曲げモ−メントは303tm、主筋本数は、上杭18−D32、下杭12−D32で、杭頭を固定接合した場合は、最大曲げモ−メント430tm、上杭33−D32、下杭22−D32、杭頭をピン接合した場合は、最大曲げモ−メント281tm、上杭18−D32、下杭12−D32で、高靭性杭の必要主筋本数は、杭頭が完全なピン接合になった場合と同程度になっている。
【0023】
【発明の効果】
本願発明は、以上の構成から成っているので、杭頭をピン接合に近づけ、地震時に生じる杭頭の曲げモ−メントを小さくすることで、基礎梁と杭の断面を小さくしながら杭の靭性を高めることができる。
【0024】
また、杭頭をピン接合に近づけることで杭の変形能力が向上し、地震時に生じる可能性がある地盤の液状化などによる杭の強制変形に対して追随し易くなる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】場所打ちコンクリ−ト杭と基礎構造体との接合部を示す縦断面図である。
【図2】場所打ちコンクリ−ト杭と基礎構造体との接合部を示す縦断面図である。
【図3】従来技術の場所打ちコンクリ−ト杭と基礎構造体の接合部を示す縦断面図である。
【図4】従来技術の場所打ちコンクリ−ト杭と基礎構造体の接合部を示す縦断面図である。
【図5】半固定接合した高靭性杭と、固定接合、ピン接合との比較を示すものである。
【符号の説明】
1 場所打ちコンクリ−ト杭
2 基礎構造体
2a 杭頭外周の基礎構造体
3 鉄筋籠
4 鉄筋
5 テンプレ−ト
6 キャップ
7 モルタル
8 鋼管
9 発泡ポリエチレンシ−ト
10 鉄筋貫通孔
11 鉄筋
12 積層ゴム
13 貫通部
14 発泡ポリエチレン
31 場所打ちコンクリ−ト杭
32 基礎構造体
33 地盤
34 杭頭
35 主筋
41 地盤
42 既成コンクリ−ト杭
43 PC鋼材
44 杭頭
45 補強体
46 フ−チング支持体
47 受け金具
48 フ−チングのコンクリ−ト
Claims (3)
- コンクリ−ト杭頭と基礎構造体との接合部において、該杭頭側には、均しモルタル上面の中心部に鋼管及びその周辺部に鉄筋貫通孔を設けた摩擦低減部材が各々載置され、該鉄筋貫通孔にはコンクリ−ト杭からの杭鉄筋を貫通させ、上面に露出した鉄筋にはコンクリ−トと鉄筋との付着を切るためのキャップを被せて構成し、該杭頭上面の中心部の鋼管、周辺部のキャップ付鉄筋及び摩擦低減部材上の基礎構造体となるコンクリ−トとはその中心部は鋼管及び鋼管中のコンクリ−トによりコンクリ−ト杭と一体化され、周辺部に間隙を形成してなることを特徴とするコンクリ−ト杭頭と基礎構造体とを半固定接合とした高靭性杭。
- 摩擦低減部材を発泡ポリエチレンとしたことを特徴とする請求項1に記載の高靭性杭。
- 地中を掘削して縦孔を形成し、該縦孔内には杭頭側にコンクリ−トと鉄筋との付着を切るためのキャップを被せた鉄筋を建て込んでコンクリ−トを打設し、該コンクリ−トが硬化した後、杭頭の余盛り部分を削り取って均しモルタルを敷き、中央部には鋼管、その周辺部には鉄筋貫通孔に杭鉄筋を貫通させた摩擦低減部材を各々載置し、その後、杭頭上に基礎構造体の鉄筋を配筋して型枠を組み立て、次いで、該型枠内に基礎構造体となるコンクリ−トを打設してなることを特徴とする半固定接合の高靭性杭の施工方法。
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JP2000105886A JP3852737B2 (ja) | 2000-04-07 | 2000-04-07 | 杭頭半固定接合による高靭性杭及びその施工方法 |
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