JP3851053B2 - コイン型リチウムイオン電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、初期充電時に負極から発生するガスによる電池特性の低下を防止することのできるコイン型リチウムイオン電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の進歩により、携帯電話、カムコーダなどの電子・通信機器の高性能化、小型化が進んでおり、これら電子・通信機器に搭載される二次電池に対しても、小型化と高エネルギー密度化等の要請がある。エネルギー密度の高い二次電池として円筒型や角型のリチウムイオン電池が知られているが、高いエネルギー密度を維持しつつ、さらなる小型化及び薄型化に対応するために、コイン型のリチウムイオン電池の開発が進められている。
【0003】
コイン型リチウムイオン電池(10)は、本発明の一実施例を示す図1を参照して説明すると、密閉された電池缶(12)の内部に正極(22)と負極(20)とをセパレータ(24)を介在させた状態で収容して構成される。正極(22)は、金属酸化物を含んでおり、負極(20)は、電気化学的にリチウムを吸蔵放出可能な炭素系材料を含んでいる。セパレータ(24)は、非水電解液を含浸させた多孔性の薄膜や不織布が用いられる。電池缶(12)は、正極(22)を収容する正極ケース(16)と、負極(20)を収容する負極ケース(14)とを、絶縁ガスケット(18)を介して嵌合して構成される。
【0004】
ところで、リチウムイオン電池の負極に用いられる炭素系材料は、初期充電時に電解液と反応して、ガスを発生する。このガス発生は、放電時および2回目以降の充電時には見られない、初期充電時特有の現象である。発生したガスが電池の内部に溜まると、電極と電解液との接触に悪影響を及ぼし、電池の内部抵抗が上昇したり、放電容量が低下するなどの電池特性の低下を招く。
これを防ぐため、円筒形や角型のリチウムイオン電池では、電池を最終的に密封する前に、電池の一部分を開口した状態で予備的な充電を行い、予めガスを発生させてから最終封口を行なうという方法を採ることによって、初期充電時に発生したガスを電池の外部に放出させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コイン型リチウムイオン電池にはこのような手法を適用することはできない。これは、コイン型リチウム電池の構造が、円筒型電池や角型電池に比べて単純であり、電池の一部分だけを開口した状態にすることはできないためである。つまり、コイン型リチウムイオン電池では、正極ケースと負極ケースとの嵌合前の全く封口が行なわれていない状態か、正極ケースと負極ケースとを嵌合した完全な封口状態のいずれかとなってしまう。
一般的に、コイン型リチウムイオン電池では、後者に示すように完全に封口した状態で初期充電が行なわれている。従って、初期充電時に発生したガスは電池内部に残留し、このガスが電池の性能に悪影響を与えてしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、初期充電時に発生したガスによる性能への悪影響を低減することのできるコイン型リチウムイオン電池を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のコイン型リチウムイオン電池(10)は、正極ケース(16)と負極ケース(14)とを環状の絶縁ガスケット(18)を介して嵌合してなる電池缶(12)と、負極ケース(14)中に収容され、電気化学的にリチウムを吸蔵放出可能な炭素系材料からなる負極(20)と、正極ケース(16)中に収容され、金属酸化物からなる正極(22)と、負極(20)と正極(22)との間に挟まれ、電解液の含浸されるセパレータ(24)と、を具えるコイン型リチウムイオン電池において、負極(20)の直径dを、負極ケース(14)の内径Dの80%以上95%以下としたものである。なお、負極ケース(14)の内径Dとは、負極ケース(14)の底面(15)の内径を意味する。
【0008】
【作用及び効果】
本発明のコイン型リチウムイオン電池(10)は、負極(20)の直径dを負極ケース(14)の内径Dの80%以上95%と小さく構成することにより、負極ケース(14)の内部に負極(20)に占有されない余剰空間(30)を形成することができる。
初期充電時に負極(20)から発生するガスの一部は、この余剰空間(30)に流入するから、発生したガスによって、負極(20)と電解液との接触が阻害されることはなく、インピーダンスの上昇を防止することができる。また、負極ケース(14)に対して負極(20)の直径dを上述のとおり小さくすると、インピーダンスが小さくなるから、放電時の抵抗損失も小さくなり、放電容量の向上を図ることができ、電池特性が低下することはない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のコイン型リチウムイオン電池(10)は、図1に示すように、密閉された電池缶(12)の内部に負極(20)と正極(22)とをセパレータ(24)を介在させた状態で収容して構成される。
【0010】
負極(20)は、電気化学的にリチウムを吸蔵放出可能な炭素系材料を負極活物質とするものであり、該負極活物質と導電材とを結着剤と共に混合し、所定寸法の円盤状に加圧成形することにより作製できる。
負極(20)の直径dは、後述する負極ケース(14)の内径Dの80%以上95%以上、望ましくは85%以上90%以下となるように形成する。負極(20)の直径dが、負極ケース(14)の内径Dの80%よりも小さいと、電池反応に直接寄与しない空間(30)(後述する)が大きくなりすぎて、電池容量の低下を招くためであり、逆に、負極(20)の直径dが、負極ケース(14)の内径Dの95%よりも大きいと、初期充電時に負極(20)から発生するガスを逃すための十分な空間(30)を形成できないためである。
なお、負極活物質として黒鉛、導電材としてアセチレンブラック(AB)、結着材としてポリテトラフルオロエチレン樹脂やポリフッ化ビニリデンを例示できる。
【0011】
正極(22)は、金属酸化物を正極活物質とするものであり、該正極活物質と導電材とを結着材と共に混合し、所定寸法の円盤状に加圧成形することにより作製できる。
正極活物質としてコバルト酸リチウム、リチウムニッケル酸化物を例示でき、導電材としてアセチレンブラック(AB)、結着材としてポリテトラフルオロエチレン樹脂やポリフッ化ビニリデンを例示できる。
【0012】
セパレータ(24)は、ポリプロピレン製不織布や、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性ポリプロピレン不織布などの電解液吸収性の材料から構成する。
セパレータ(24)に含浸される電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを混合した混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム等を溶解することによって調製することができる。
なお、電解液は、上述のように予めセパレータ(24)に含浸させておいてもよいし、電池組立の際に電池缶(12)に注入するようにしてもよい。
【0013】
負極(20)、正極(22)及びセパレータ(24)は、図1に示すように、負極(20)と正極(22)との間にセパレータ(24)を介在させた状態で積層して電池缶の内部に収容される。
【0014】
電池缶(12)は、図1に示すように、負極(20)を包囲する負極ケース(14)と、正極(22)を包囲する正極ケース(16)を、絶縁ガスケット(18)を介在させて嵌合して構成される。
負極ケース(14)は、ステンレス鋼などをプレス加工することによって、内径Dの有底円筒状に作製される。
負極ケース(14)は、ステンレス鋼をプレス加工することによって作製できる。負極ケース(14)の内底面には、負極(20)と負極ケース(14)との導電性を高めるために黒鉛の粉と水ガラスを混合した導電塗料(26)等を塗布したり、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などから作製されたメッシュ状の負極集電体を配備することが望ましい。
【0015】
正極ケース(16)も、ステンレス鋼などをプレス加工することによって、有底円筒状に作製される。正極ケース(16)の内底面には、正極(22)と正極ケース(16)との導電性を高めるために黒鉛の粉と水ガラスを混合した導電塗料(28)を等塗布したり、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどから作製されたメッシュ状の正極集電体を配備することが望ましい。
【0016】
電池の組立は、図1に示すように、負極ケース(14)内に負極(20)、セパレータ(24)及び正極(22)を積層した状態で収容し、負極ケース(14)の外周にガスケット(18)を装着した後、正極ケース(16)に嵌めてプレス金型で封口すればよい。
負極(20)は、負極ケース(14)の内径Dよりも直径dを小さくしているから、負極ケース(14)の内側面と負極(20)との間に、空間(30)を存する。この空間(30)が、初期充電時に負極(20)から発生するガスの流入する余剰空間となる。
【0017】
作製されたコイン型リチウムイオン電池(10)は、負極ケース(14)の内径Dに対する負極(20)の直径dの比率が、80%以上95%以下であり、負極(20)と負極ケース(14)との間に余剰空間(30)が存在するから、初期充電時に負極(20)から発生するガスの一部は余剰空間(30)に流入し、負極(20)と電解液との接触を阻害することはない。従って、インピーダンスの上昇を防止することができる。また、負極ケース(14)に対して負極(20)の直径dを上述のとおり小さくしたことによって、インピーダンスが小さくなるから、放電時の抵抗損失も小さくなり、放電容量の向上が図られる。
【0018】
【実施例】
以下の要領にて、負極ケース内径Dに対する負極直径dの比率(負極直径d/負極ケース内径D)が異なるコイン型リチウムイオン電池を作製し、初期充電前後のインピーダンス変化と放電容量を測定した。
【0019】
《負極の製造》
負極活物質として天然黒鉛90重量%と、導電材としてアセチレンブラック(AB)5重量%と、結着材としてポリテロラフルオロエチレン樹脂5重量%を混合し、負極ケースの内径Dに対して、表1に示すように、75%〜98%の直径dの円盤状に加圧成型した。なお、負極の厚みは同一とした。
《正極の製造》
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)90重量%と、導電材としてアセチレンブラック5重量%と、結着材としてポリテロラフルオロエチレン樹脂5重量%を混合し、円盤状に加圧成型したものを用いた。正極の直径は負極と同じとした。
負極および正極は電池組立てに先立ち、水分を除去するため、120℃、2時間の真空乾燥処理を行った。
《セパレータ》
セパレータとして、電解液を含浸させたポリプロピレン製不織布を使用した。電解液はエチレンカーボネイト(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の1:1混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解させたものを用いた。
《電池の製造》
図1に試作電池(10)の構成図を示す。(14)は、ステンレス鋼材をプレス加工して作成した負極ケースであって、該負極ケース(14)の内底面に、導電塗料(26)を塗布し、負極(20)を収納している。
(22)は、正極であり、(16)のステンレス鋼製正極ケースに導電塗料(28)を介して接触している。
負極(20)と正極(22)との間には、電解液を含浸させたセパレータ(24)を挟んでいる。
(18)はポリプロピレン製ガスケットであって、負極ケース(14)と正極ケース(16)との間の絶縁と、電池缶(12)の密閉状態を維持している。
試作した電池(10)の外形寸法は、直径24.5mm、高さは約3mmである。
《測定》
負極の直径を種々変えた電池を試作し、電池の初期充電前インピーダンス、初期充電後のインピーダンス、及び放電容量を測定した。
充電条件は、3mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまでとし、放電条件は3mAの定電流で電池電圧が3Vに達するまでとした。また、インピーダンスの測定は交流法周波数1kHzで行った。
表1に試作電池における負極ケースの内径Dと負極板の直径dの比率(d/D)と、充電前インピーダンス、充電後のインピーダンス、放電容量の測定結果を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1を参照すると、初期充電前のインピーダンスは大きな差ではないが、負極直径dが小さい方がインピーダンスが大きいことがわかる。これは負極直径dが小さい方が、電極の対向面積が小さくなるためと考えられる。
しかし、充電後のインピーダンスは負極直径dが大きい方が、インピーダンスが著しく大きくなっていることがわかる。これは、炭素系負極はその初期充電過程において、電解液を分解してガスを発生するためであり、電池内部、特に負極ケースの内部に負極が隙間なく充填されていると(比較例1)、分解により発生したガスの逃げ場が無く、ガスは負極表面上に留まり、電解液と負極との接触を妨げてしまい、インピーダンスが上昇したものと考えられる。しかしながら、負極直径dを負極ケースの内径Dよりも小さくして、ガスの溜まるスペースを設けることにより、発生したガスがそのスペースに移動するから、発生したガスが負極と電解液の接触を阻害しにくくなっていることがわかる。また、負極直径dの小さい電池はインピーダンスが下がる結果、放電時の抵抗損失も小さくなり、放電容量が向上している(発明例2〜5)。なお、比較例6に示すように、負極直径dを小さくしすぎると、負極活物質量も小さくなるので、相対的な放電容量は低下してしまう。
以上より、負極ケース(14)の内径Dに対する最適な負極(20)の直径dの比率は、80%以上95%以下とすることが望ましく、85%以上90%以下とすることがより望ましいことがわかる。
【0022】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコイン型リチウムイオン電池の断面図である。
【符号の説明】
(10) コイン型リチウムイオン電池
(12) 電池缶
(14) 負極ケース
(16) 正極ケース
(20) 負極
(22) 正極
Claims (1)
- 正極ケース(16)と負極ケース(14)とを環状の絶縁ガスケット(18)を介して嵌合してなる電池缶(12)と、
負極ケース(14)中に収容され、電気化学的にリチウムを吸蔵放出可能な炭素系材料からなる負極(20)と、
正極ケース(16)中に収容され、金属酸化物からなる正極(22)と、
負極(20)と正極(22)との間に挟まれ、電解液の含浸されるセパレータ(24)と、
を具えるコイン型リチウムイオン電池において、
負極(20)の直径dは、負極ケース(14)の内径Dの80%以上95%以下であることを特徴とするコイン型リチウムイオン電池。
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