JP3849394B2 - 超音波レベル計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、超音波を送信して反射面からのエコー波を受信面で受信し、この反射面のレベルを測定する超音波レベル計に関する。
【0002】
【従来の技術】
図17は、従来の超音波レベル計の一例を示す図である。駆動回路10は、トランスTを介して、数十KHzの駆動周波数fdで1KVP-P〜2KVP-P程度のパルス列駆動信号を出力する。このパルス列駆動信号は、ダイオード回路Dを介して超音波送受信器(圧電素子が使用される例が多いため、以後圧電素子という)20に印加される。
【0003】
圧電素子20は、この駆動信号に応じて超音波信号を送信すると共に反射した超音波を受信するセンサとして働くもので、例えばPZT等が用いられる。
圧電素子20で受信されたエコー信号はダイオード回路Dを介して受信回路30に入力され、その後信号処理回路32に入力される。
【0004】
図18は、従来の超音波レベル計において多重エコー波が発生した状態を示す図である。
従来の超音波レベル計では、圧電素子20が発信した超音波Pは被反射物体で反射してエコー波P1 となって圧電素子20に戻ってくる。そして、このエコー波P1 は、圧電素子20で反射してから被反射物体で再び反射して、エコー波P2 となって圧電素子20に戻ってくる。このような超音波Pの多重反射により発生するエコー波P1 ,P2 ,...は徐々に減衰して小さくなるが、エコー波P1 ,P2 ,...の信号レベルが略同じ大きさになるように、被反射物体までの距離に応じてゲインが上げられる。その結果、図18に示すように、被反射物体までの距離が近い場合には、信号レベルが略同じ大きさである多数のエコー波P1 ,P2 ,...が発生する。例えば、距離Lxが0.5m程度の近距離である場合には、10個程度のエコー波が現れる。
【0005】
従来の超音波レベル計では、エコー波P1 ,P2 ,...の信号レベルの最大値を100%としたときに、この最大値の20%〜25%にしきい値を設定して、測定可能範囲内における最小距離からエコー波P1 ,P2 ,...を順次検索する。そして、最初にしきい値を超えるエコー波P1 が主エコー波に決定されて、圧電素子20が超音波Pを送信してからこのエコー波P1 が到達するまでの時間が計測され、被反射物体までの距離Lxが算出される。
【0006】
エコー波P1 が到達するまでの時間の計測、換言すればエコー波の位置の検出は、通常超音波発信後(測定開始後)から連続して信号の受信と、その受信信号の振幅チェックを行って、エコー位置を検出するようにしている。従来の超音波レベル計では、圧電素子20の送受信面の構造を斜めにカットしたり円錐状に変形して、エコー波P1 ,P2 ,...の減衰を順次大きくしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図19は、従来の超音波レベル計において測定可能範囲外の近距離でエコー波が発生した状態を示す図である。
図19に示すように、超音波レベル計の測定可能範囲が距離Lxa〜Lxbであるときに、主エコー波(第1エコー波)P1 が距離Lxaよりも近くで発生すると、信号処理回路32は第2エコー波P2 を主エコー波として検索する。このように、主エコー波P1 が測定可能範囲外(Lx1<Lxa)であると、第2エコー波P2 を主エコー波として誤って検索する。その結果、実際の距離よりも約2倍も遠い距離を誤って測定してしまう。
【0008】
また、従来の超音波レベル計では、圧電素子20が超音波Pの発信を停止した後に、図19に示すように数msの共振振動が残留波形として存在する。このために、測定可能範囲を距離Lx1以内に設定すると、残留波形が減衰する間に、被反射物体で反射したエコー波P1 が現れて、このエコー波P1 と残留波P'とが重なりこれらの波形を区別することが困難になる。その結果、残留波P'の信号レベルがしきい値を超えていると、この残留波P'を主エコー波として検索するおそれがあり、主エコー波P1 の検索が困難になる。
【0009】
さらに、従来の超音波レベル計では、測定可能範囲を超えて水位が上昇すると、図19に示す第2エコー波P2 や第3エコー波P3 を主エコー波として検索し、増水を未満水として誤って判断するおそれがある。例えば、圧電素子20が浸水したときには、超音波Pの伝搬速度が空間に比べて約5倍増加する。
【0010】
この発明の課題は、反射面のレベルを正確に測定することができるとともに、異常状態を検出することができる超音波レベル計を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定するものではない。
(1)超音波を送信して反射面からのエコー波を受信面で受信し、この反射面のレベルを測定する超音波距離計であって、前記受信面と前記反射面との間で前記超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の間隔を検出し、前記複数のエコー波の継続時間及びレベルを検出する検出手段と、前記複数のエコー波の間隔に基づいて第1エコー波を検索する検索手段と、前記複数のエコー波の継続時間及びレベルに基づいて、前記受信面が浸水した状態であると判定する判定手段とを備えることを特徴とする超音波レベル計。
(2)(1)に記載の超音波レベル計において、前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも大きいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲内にあると判定することを特徴とする超音波レベル計。
(3)(2)に記載の超音波レベル計において、前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも小さいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲外の近距離にあると判定することを特徴とする超音波レベル計。
また、本発明は、超音波(P)を送信して反射面からのエコー波を受信面(20)で受信し、この反射面のレベルを測定する超音波距離計であって、前記受信面と前記反射面との間で前記超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波(P1 ,P2 ,...)の間隔を検出する検出手段(55)と、前記検出手段の検出結果に基づいて、第1エコー波を検索する検索手段(56)とを含む超音波レベル計である。
【0012】
さらに、本発明は前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも大きいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲内にあると判定することを特徴とする超音波レベル計である。
【0013】
また、本発明は前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも小さいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲外の近距離にあると判定することを特徴とする超音波レベル計である。
【0014】
さらに、本発明は前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔に基づいて前記第1エコー波を検索することを特徴とする超音波レベル計である。
【0015】
また、本発明は、超音波(P)を送信して反射面からのエコー波を受信面(20)で受信し、この反射面のレベルを測定する超音波距離計であって、前記超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波(P1 ,P2 ,...)の継続時間及びレベルを検出する検出手段(55)と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記受信面が浸水した状態であると判定する判定手段(55)とを含む超音波レベル計である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計の構成図である。
なお、図17に示す部分と同一の部分には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0017】
この発明の実施形態に係る超音波レベル計は、圧電素子20から送信した超音波が液面で反射して戻ってくるまでの往復時間を計測して、この液面のレベルを測定する装置である。超音波レベル計は、図1に示すように、駆動回路10、圧電素子20、受信回路30、2相同期積分回路40、演算回路50及び表示手段60を備えている。
【0018】
受信回路30は、プリアンプAlと、D/A変換器DACと、メインアンプA2とが直列接続されたものである。プリアンプAlは圧電素子20からのエコー信号を受けるが、圧電素子20に与えられた駆動信号と同時に振幅の影響を取り除くために、ダイオード回路Dにより駆動信号にリミッタをかけて信号を受信する。
【0019】
D/A変換器DACは、デジタル・アナログ変換処理と共に、プリアンプAlから入力された波形信号に対してTVG(Time Variable Gain)処理を行うことができるように構成されている。このTVG処理とは、距離や湿度、反射面の状態などによって変化する超音波の減衰特性に合わせて、ゲインを増加させるようにする処理手段である。D/A変換器DACは、距離や湿度などによってエコー波の減衰量が変化するときに、反射面が遠くにあっても、このエコー波が一定出力になるようにゲインを可変する。
【0020】
メインアンプA2は、D/A変換器DACの信号を受信して適宜に増幅し、その出力を2相同期積分回路40に与えている。
【0021】
2相同期積分回路40は、X位相積分部分41、Y位相積分部分42より構成される。
X位相積分部分41は、第1の同期積分回路とも呼ばれ、フリップフロップ43、X位相側スイッチ44、X位相積分回路45及びA/D変換器46で構成される。Y位相積分部分42は、第2の同期積分回路とも呼ばれ、フリップフロップ43、Y位相側スイッチ47、Y位相積分回路48及びA/D変換器49で構成される。
【0022】
なお、フリップフロップ43には駆動回路10の出力が印加され、P出力がX位相側スイッチ44に印加され、Q出力がY位相側スイッチ47に印加される。P出力とQ出力は、位相が四半周期ずれたもので、オンオフのデューティ比はいずれも50%になっている。
【0023】
これにより、上記第1の同期積分回路41では、圧電素子20を駆動する駆動周波数の位相(これを第1の位相と呼ぶ)でエコー信号が同期積分され、その積分値(これを積分値Xと呼ぶ)はA/D変換して出力される。他方、上記第2の同期積分回路42では、前記第1の位相とは四半周期離れた第2の位相で同期積分され、その積分値(これを積分値Xと呼ぶ)はA/D変換して出力される。
なお、エコー波に重畳するノイズ信号は一般的に正負の領域をランダムに持っており、上記の積分によりこのノイズ成分は除去される。
【0024】
演算回路50は、2相同期積分回路40からの時系列の各積分値X,Yをそれぞれ記憶手段(図示せず)に記憶し、その後積分値X,Yの有極加算、積分値X,Yの合成を行い、その合成信号のピークの位置と大きさからエコーの到来位置を求める。演算回路50は、データ重ね回路51、移動加算回路52、ピーク位置検索回路53、基準化回路54、判定回路55及び主エコー検索回路56を備えている。演算回路50は、受信回路30のDACのTVGを制御する機能も有する。
【0025】
表示手段60は、液面のレベルを表示したり、主エコー波が測定可能範囲外にあるときにオーバーレンジ表示をしたり、圧電素子20が浸水したときに浸水表示をする。
【0026】
次に、この発明の実施形態に係る超音波レベル計の動作を説明する。
駆動回路10は、トランスTを介して、駆動周波数fd=40KHzで0.8KVP-P程度のパルス列駆動信号を出力する。このパルス列駆動信号は、ダイオード回路Dを介して圧電素子20に印加される。駆動回路10は、近距離測定用に圧電素子20を16パルス駆動し、遠距離測定用に圧電素子20を64パルス駆動して超音波を送受信し、演算回路50がエコー位置を検出する。圧電素子20で受信されたエコー信号はダイオード回路Dを介して受信回路30に入力する。
【0027】
図2は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計における主エコー波の判定範囲を示す図であり、図2(a)は16パルス送信時の判定範囲を示し、図2(b)は64パルス送信時の判定範囲を示す。
図2(b)に示す64パルス送信時では、1.5m〜20mを測定可能範囲としており、測定可能範囲内の最小距離が1.5mであって、2番目のエコー波(第2エコー波)は3mの位置にあり、3番目のエコー波(第3エコー波)は4.5mの位置にある。この測定可能範囲内では、第2エコー波、第3エコー波の減衰量が大きいために、1番目のエコー波(主エコー波)の検出を誤ることがない。一方、図2(a)に示す16パルス送信時では、0.5m〜2.5mを測定可能範囲としており、距離が1m以内では第2エコー波の減衰量が少なく、距離が0.5mになると第3エコー波、第4エコー波と高次のエコー波まで減衰量が少ない。このために、この実施形態では、64パルス送信時には主エコーの判定を行わず、16パルス送信時にのみ0.5mから3.6mまでを主エコー波の判定範囲とする。
【0028】
D/A変換器DACは、2相同期積分回路40が処理するエコー波をある程度の一定レベルにするために、エコー波が戻ってくるまでの時間(距離)に応じてゲインをコントロールする。D/A変換器DACは、エコー波のレベルが小さいときにはゲインを上げ、エコー波のレベルが大きいときにはゲインを下げて、エコー波のレベルを検出可能な大きさに調節する。
【0029】
2相同期積分回路40は、所定周期(例えば、12セル周期)で積分を行う。ここで、セルとは、2相同期積分回路40が積分値を計測するときのワンステップの時間幅をいう。2相同期積分回路40は、12セルごとのデータを1つのブロックデータとして扱う。12セルは音速時間距離でほぼ14.4cmに相当する。ただし、12セル目はリセット期間である。
【0030】
この実施形態では、12セルを1ブロックとして扱うため、エコー到達距離の分解能としては約7.2cmとなる。
なお、12セルごとにリセットするのは、エコー位置検出にとってはそれで必要十分であり、また2相同期積分回路40の積分器のドリフト等を考慮すると12セル目でリセットするのが好適であるからである。しかしながら、本願発明は12セル目に限定するものではなく、例えば10セル〜100セル範囲内の任意のセルを採用することができる。ただし、あまり長くすると検出分解能が悪化するばかりでなく、積分器のドリフト等が影響して好ましくない。
【0031】
図3は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計における16パルス駆動時の超音波送信とエコー位置の検出範囲との関係を示す図である。
ここで、パルス駆動は、超音波送受信器のパルス送信に対応するため、パルス送信とも言う。図3に示すように、エコー位置の検出は、パルス駆動直後(送信開始0セル)から幅広く行うのではなく、図示のように意味のある有効な範囲(この範囲をWS(Window Search)と呼ぶ)に限定して行うようにしている。16パルス駆動時では、74セル(約46.25cm)でスタートして578セル(約361cm)で終了する。2相同期積分回路40は、12セル周期毎に積分のセット及びリセット(S/R)を繰り返す。このときに、TVG処理は、WSの全測定範囲において行われる。
【0032】
図4は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計におけるX位相積分部分及びY位相積分部分の動作を説明するための図である。図4(a)はX位相積分回路及びY位相積分回路のON動作を示し、図4(b)はX位相積分回路及びY位相積分回路のRESET動作を示し、図4(c)はX位相積分回路の出力波形を示し、図4(d)はY位相積分回路の出力波形を示す。
【0033】
図4(a)(b)に示すように、X位相積分回路45及びY位相積分回路積分器48は、74セル目(WSスタート点)でON動作(積分開始)して11セル分(積分区間:380.5μs)だけ積分を続け、85セル目から86セル目までの1セル分(リセット区間:34.586μs)だけリセットする。そして、X位相積分回路45及びY位相積分回路積分器48は、86セル目でON動作を再び開始する。このように、X位相積分回路45及びY位相積分回路積分器48は、12セル周期(Interval:415.04μs)を1ブロックとして、WSの全範囲(74セルから578セルまで)でセット及びリセットを繰り返す。その結果、図4(c)(d)に示すように、X位相積分回路45及びY位相積分回路積分器48からそれぞれ鋸刃状波形(積分波形)を得ることができる。
【0034】
図5は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計におけるA/D変換器の動作を説明するための図である。図5(a)はX側A/D変換器による変換データを示し、図5(b)はY側A/D変換器による変換データを示し、図5(c)はこれらの変換データを合成した合成データを示す。
【0035】
A/D変換器46,49は、図4(c)(d)に示す積分波形をセル毎にA/D変換する。ここで、図5(a)(b)に示すB1x,B2x,B3x,...及びB1y,B2y,B3y,...は12セル毎のブロックを意味し、dl〜dllは各ブロック内の11個のA/D変換データである。
【0036】
データ重ね回路51は、図5(c)に示すように、各ブロックごとにA/D変換値を有極加算する。有極加算とは、データの極性を正負そのままで単純に加算(例えば、B1xの有極加算=d1+d2+...+d11)することを言う。有極加算は、同期積分値のノイズを打ち消すための手法であり、ノイズは正負に積分されて有極加算によりキャンセルされ、信号分Bdのみが現れる。そして、各ブロックごとに、X側とY側についてそれぞれ有極加算結果の絶対値をとり、それを合成加算(例えば、Bd1の合成加算=|B1xの有極加算|+|B1yの有極加算|)する。図5(c)に示すBdl,Bd2,Bd3,...は、各ブロック毎の合成データである。
【0037】
図6は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計における移動加算によるピーク値の検出動作を説明するための図であり、図6(a)は図5(c)の合成データを示し、図6(b)は移動加算とエコー波の検索動作を示し、図6(c)は基準化動作を示す。
【0038】
移動加算回路52は、図6(a)(b)に示すように、データ重ね回路51が出力した合成データについて、図5(c)に示すB1からB42(WS終点)まで2ブロックづつ移動加算(例えば、Bd1+Bd2,Bd2+Bd3,Bd3+Bd4,...)を行う。ここでは、2ブロックづつの移動加算とした。2ブロックとしたのは、エコー波形はブロックに対して任意に到来するが、16パルス駆動においては少なくとも2ブロックを合成することで16パルスすべてのエコー波の積分値を捕らえることができるためである。
【0039】
ピーク位置検索回路53は、図6(b)に示すように、全ブロック内でピーク値(合成データ=Bdn+Bd(n+1)の最大値Bdn max)を検出してこのピーク値の20%をしきい値に選び、このしきい値を超えたブロックを検索する。
【0040】
基準化回路54は、図6(c)に示すように、全ブロック内でしきい値20%以上のブロックを「1」とし、しきい値20%以下のブロックを「0」として、B1からB41(約3.6m/23°C)までコンパレートする。基準化回路54は、「1」が続いている場合には最初の「1」を第1エコーBnaとし、一回でも「0」があればリセットして、つぎに現れる「1」を第2エコーBnbとする。図6(c)に示すように、多重エコーでは、第1エコーBna,第2エコーBnb,第3エコーBnc,...と続く。ここで、Bのサフィックスは12セル毎のブロック位置を示す。この実施形態では、12セルを1ブロックとしているために、第1エコーBna,第2エコーBnb,...は12セル(1ブロック)毎の判別となり、個々の距離計算は約7.5cmの分解能となる。
【0041】
判定回路55は、図6(c)に示す第1エコーBnaの「1」が連続して5個以内であって、かつ、nb−naが6以上であるときには、第1エコーBnaが主エコーであると判定する。また、判定回路55は、第1エコーBnaのみが存在し第2エコーBnb以降が存在しないときにも、第1エコーBnaが主エコーであると判定する。なお、判定回路55は、主エコーが第2エコー、第3エコーの場合については判定しない。
【0042】
図7は、測定可能範囲内に主エコー波があるときの図であり、図7(a)は実験データであり、図7(b)は模式図である。図8は、測定可能範囲内に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
図7及び図8に示すように、多重エコーでは、複数のエコー波が略等間隔で続く。主エコー検索回路55は、最初に検出されたエコー波とその次に検出されたエコー波との間の間隔を検出し、この間隔がある程度大きいときには、最初に検出されたエコー波 が測定可能範囲内にあり第1エコー波(主エコー波)であると判定する。具体的には、図7(b)に示すように、最初に検出されたエコー波B1 とその次に検出されたエコー波B2 との間の間隔が、最初に検出されたエコー波B1 と原点0との間隔に略等しい(L2 =2L1 )ときには、最初に検出されたエコー波B1 が第1エコー波であると判定される。
【0043】
一方、第1エコー波が0.5m以下であるときには、naとnbとの間の間隔が狭くなる。また、これらの間隔がさらに狭くなると、残留波同士が重なり全体が大きなエコー波となって現れて、エコー波と残留波との判別が不明確になる。特に、反射の弱い物体の場合には、エコー波と残留波との判別が困難になる。判定回路55は、図6(c)に示す第1エコーBna,第2エコーBnb,...のうち「1」が連続して6個以上続く部分があり、かつ、nb−naが5以下であるときには、第1エコーBnaは第2エコー波又は高次エコー波であると判定し、第1エコー波が測定可能範囲外であると判定する。
【0044】
図9は、測定可能範囲外の近距離に主エコー波があるときの図であり、図9(a)は実験データであり、図9(b)は模式図である。図10は、測定可能範囲外の近距離に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
主エコー検索回路55は、最初に検出されたエコー波とその次に検出されたエコー波との間の間隔を検出し、この間隔が狭いときには最初のエコー波が主エコー波ではなく、主エコー波は残留波と重なっていると判定する。具体的には、図9(b)に示すように、最初に検出されたエコー波B2 とその次に検出されたエコー波B3 との間の間隔が、最初に検出されたエコー波B2 と原点0との間隔に比べて狭い(L3−L2 <L2 )ときには、最初に検出されたエコー波B2 が第1エコー波ではないと判定される。主エコー検索回路55は、エコー波B3 とエコー波B2 との間の間隔を、エコー波B2 と原点0との間隔から減算して、残留波に重なっているエコー波(主エコー波)B1 の位置を検索する。表示手段60は、主エコー検索回路55が検索した主エコー波の位置(レベル)を表示する。
【0045】
図11は、超音波の送信直後に主エコー波があるときの実験データである。図12は、超音波の送信直後に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
図11及び図12に示すように、距離が5cm程度の測定可能範囲外では、残留波同士が重なり合って全体が大きなエコー波となって現れる。この場合には、表示手段60がオーバーレンジ表示する。
【0046】
図13は、開水路流量計内の通常面と浸水面とを示す図である。図14は、超音波送受信面が浸水したときの実験データである。図15は、超音波送受信面が浸水したときの実験データと平均値とを示す図である。図16は、この発明の実施形態に係る超音波レベル計における浸水時の基準化動作を示す図である。
【0047】
図13に示す開水路流量計は、パーマ・ボーラスフリューム(以下、PBフリュームという)である。このPBフリュームは、下水などの円形管路内に設置され、図示しないスロート部と呼ばれる絞り部の上流側水位を超音波レベル計によって測定し流量を演算する流量計である。図13に示すように、PBフリューム内で水位が上昇すると、圧電素子20が浸水することがある。超音波は、伝達媒体が気体(空気)から液体(水)に変化すると、速度が約5倍になるとともに、伝達損失が大幅に減少する。その結果、図14及び図15に示すように、エコー波が大きくなるとともに、多重エコー波となって長時間(距離3m以上)にわたり続く。判定回路55は、多重エコー波の継続時間とレベルとを検出して、これらの値が極端に大きくなったときには浸水と判定する。判定回路55は、D/A変換器DACが狭い範囲でゲインをコントロールしており、かつ、図16に示すように、Bnaの「1」がほとんどであるときには浸水状態であると判定する。
【0048】
この発明の実施形態に係る超音波レベル計には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、圧電素子20と液面との間で超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の間隔を検出し、この間隔に基づいて第1エコー波が測定可能範囲内にあるか否かを判定する。このために、第1エコー波が測定可能範囲外にあるときに、第2エコー波や第3エコー波を誤って主エコー波として測定することがなくなり、主エコー波を正確に捉えることができる。
【0049】
(2) この実施形態では、第1エコー波が測定可能範囲外の近距離にあるときには、複数のエコー波の間隔に基づいて第1エコー波を検索する。このために、測定可能範囲外の近距離において、多重波と重なって検出が困難な第1エコー波を、検出可能な第2エコー波と第3エコー波との間の間隔から演算することができる。
【0050】
(3) この実施形態では、超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の継続時間及びレベルを検出し、この検出結果に基づいて圧電素子20が浸水した状態であると判定する。このために、従来の超音波レベル計では表示せずに放置されていた異常状態(浸水状態)を検出し表示することができるとともに、フィールド機器として超音波レベル計を広く使用することができる。
【0051】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。例えば、この実施形態では、液面のレベルを測定する超音波レベル計を例に挙げて説明したが、反射面からのエコー波を受信してこの反射面までの距離を測定する超音波距離計についても適用することができる。また、この実施形態では、最初に検出されたエコー波とその次に検出されたエコー波との間の間隔を検出しているが、N番目のエコー波とN+1番目のエコー波との間の間隔を検出してもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の間隔に基づいて第1エコー波を検索するので、反射面のレベルを正確に測定することができる。また、この発明によると、超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の継続時間及びレベルに基づいて、受信面が浸水した状態であるか否かを判定するので、以上状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係る超音波レベル計の構成図である。
【図2】この発明の実施形態に係る超音波レベル計における主エコー波の判定範囲を示す図であり、(a)は16パルス送信時の判定範囲を示し、(b)は64パルス送信時の判定範囲を示す。
【図3】この発明の実施形態に係る超音波レベル計における16パルス駆動時の超音波送信とエコー位置の検出範囲との関係を示す図である。
【図4】この発明の実施形態に係る超音波レベル計におけるX位相積分部分及びY位相積分部分の動作を説明するための図である。(a)はX位相積分回路及びY位相積分回路のON動作を示し、(b)はX位相積分回路及びY位相積分回路のRESET動作を示し、(c)はX位相積分回路の出力波形を示し、(d)はY位相積分回路の出力波形を示す。
【図5】この発明の実施形態に係る超音波レベル計におけるA/D変換器の動作を説明するための図である。(a)はX側A/D変換器による変換データを示し、(b)はY側A/D変換器による変換データを示し、(c)はこれらの変換データを合成した合成データを示す。
【図6】この発明の実施形態に係る超音波レベル計における移動加算によるピーク値の検出動作を説明するための図であり、(a)は図5(c)の合成データを示し、(b)は移動加算とエコー波の検索動作を示し、(c)は基準化動作を示す。
【図7】測定可能範囲内に主エコー波があるときの図であり、(a)は実験データであり、(b)は模式図である。
【図8】測定可能範囲内に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
【図9】測定可能範囲外の近距離に主エコー波があるときの図であり、(a)は実験データであり、(b)は模式図である。
【図10】測定可能範囲外の近距離に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
【図11】超音波の送信直後に主エコー波があるときの実験データである。
【図12】超音波の送信直後に主エコー波があるときの実験データと平均値とを示す図である。
【図13】開水路流量計内の通常面と浸水面とを示す図である。
【図14】超音波送受信面が浸水したときの実験データである。
【図15】超音波送受信面が浸水したときの実験データと平均値とを示す図である。
【図16】この発明の実施形態に係る超音波レベル計における浸水時の基準化動作を示す図である。
【図17】従来の超音波レベル計の一例を示す図である。
【図18】従来の超音波レベル計において多重エコー波が発生した状態を示す図である。
【図19】従来の超音波レベル計において測定可能範囲外の近距離でエコー波が発生した状態を示す図である。
【符号の説明】
10 駆動回路
20 圧電素子
30 受信回路
40 2相同期積分回路
50 演算回路
55 判定回路
56 主エコー検索回路
P 超音波
P' 残留波
1 第1エコー波
2 第2エコー波

Claims (3)

  1. 超音波を送信して反射面からのエコー波を受信面で受信し、この反射面のレベルを測定する超音波距離計であって、
    前記受信面と前記反射面との間で前記超音波が多重反射したときに発生する複数のエコー波の間隔を検出し、前記複数のエコー波の継続時間及びレベルを検出する検出手段と、
    前記複数のエコー波の間隔に基づい第1エコー波を検索する検索手段と、
    前記複数のエコー波の継続時間及びレベルに基づいて、前記受信面が浸水した状態であると判定する判定手段とを備える
    ことを特徴とする超音波レベル計。
  2. 請求項1に記載の超音波レベル計において、
    前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも大きいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲内にあると判定する
    こと特徴とする超音波レベル計。
  3. 請求項に記載の超音波レベル計において、
    前記検索手段は、前記複数のエコー波の間隔が所定値よりも小さいときには、前記第1エコー波が測定可能範囲外の近距離にあると判定する
    こと特徴とする超音波レベル計
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