JP3848975B2 - 監視装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は地盤における土砂崩れや積雪地域における雪崩等の災害の発生を事前に予知可能な監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大雨などによる地盤の緩みにより発生する土砂崩れや、積雪地域における雪崩などの災害発生を事前に予知可能な地盤や雪崩監視システムの開発が急務となっている。
【0003】
従来、地盤の緩みなどを検出する手段としては、地中にワイヤーを張設しておき、該ワイヤーが地盤の変動で切断されたことをもって検知するようにしたものがある。しかし、この方式は広範囲に亘ってワイヤーを張設しなければならないため、多くの手間と時間がかかるばかりでなく、地盤の変位場所や変位方向を特定することが難しく、しかもその変位度合を予測できないという問題がある。
【0004】
そこで、最近では種々の測定計を用いた地盤検出器が開発され、その一例として重りをスプリングを介して水平にケースに支持するようにしたサーボ傾斜計やパイプ歪計を用いて地盤の変位や地すべり面の深さ及びすべり量を推定するようにしたものがある。
【0005】
上記サーボ傾斜計による地盤検出器は、地中に設けられたボーリング孔にパイプを埋設すると共に、このパイプ内にサーボ傾斜計を巻上げ可能に多段的に挿入し、これらサーボ傾斜計の巻上げを行いながらスプリングの変位により傾斜角を連続的に自動計測するようにしたもので、側方変位を測定することで地盤や連続地中壁の変位、つまり地すべりなどの計測が可能である。
【0006】
また、パイプ歪計による地盤検出器は、地中に設けられたボーリング孔に適宜の部位にひずみゲージを貼付けた多数の塩化ビニールパイプを中間パイプで継ぎ足しながら垂直に順次挿入し、その周囲に砂を充填して固定するようにしたもので、深度毎に各塩化ビニールパイプを検出器として順次切換えて曲げひずみ量を計測することで、その量からすべりの大きさと深さが推定可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような測定計を用いた地盤検出器では、地すべり崩壊などの恐れのある場所に多数の測定計を設置しなければならないため、その設置作業に多くの手間と時間がかかる。特に各箇所に設置された地盤検出器間を電源ケーブルや通信ケーブルにより接続しなければならない。
【0008】
また、前者のサーボ傾斜計による地盤検出器の場合には、可動部が必要となるため、全体の占めるスペースが大きくなり、後者のパイプ歪計による地盤検出器の場合には、塩化ビニールパイプを中間パイプで継ぎ足しながら垂直に順次挿入し、その周囲に砂を充填しなければならないため、山間部など広範囲に亘って多数設置することは困難である。
【0009】
さらに、上記サーボ傾斜計やパイプ歪計を用いた地盤検出器においては、地盤の側方変位や曲げひずみ量の計測は可能であるが、埋設された個々の地盤検出器自身の位置が検出できないため、地盤全体が変位したような場合には検出することができない。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたもので、地中への埋設が簡単且つ容易で、しかも地盤又は積雪部全体に変位がある場合でも的確に検出可能な検出器を用いて、地盤における土砂崩れや積雪地域における雪崩等の災害の発生を事前に予知することができる監視装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により地盤及び雪崩監視装置を構成する。
【0012】
請求項1に対応する発明は、開口端を有し地中又は積雪中に埋設される筒体と、この筒体の前記開口端に設けられ地上又は積雪外に露出される蓋体と、前記筒体内に設置された外力検出素子であって、この外力検出素子は3軸方向の加速度及び外力検出素子自身の傾きに応じて電圧信号を発生する外力検出素子と、前筒体内に設置され前記外力検出素子に電力を供給するバッテリと、前記筒体内に設置され前記外力検出素子からの電圧信号を増幅し演算する演算部と、この演算部からの検出信号が印加され前記蓋体に設置された送信アンテナからなる検出器と、前記検出器からの検出信号に基づいて前記検出信号に変化が認められた場合、この変化が所定時間以上連続するか、又は前記変化の回数が所定回数以上発生するか、又は前記検出信号の変化が所定衝撃値以上の衝撃値の場合、この変化を異常と判定するデータ処理部とを具備したものである。
【0014】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の監視装置において、前記外力検出素子は、三角柱の各外側面に圧電素子がそれぞれ取り付けられており、前記各圧電素子に加えられた外力に応じて電圧信号を発生するものである。
【0015】
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の監視装置において、2個の前記外力検出素子の一方を前記筒体の上部に設置し、他方を前記筒体の下部に設置する。
【0016】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに対応する発明の監視装置において、複数個の前記検出器を線状に配設し、前段に配設されている検出器からの検出信号を受信し、この受信した前段の検出信号を自己の検出信号とともに次段の検出器又は前記データ処理部へ返信する如く構成する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明による監視装置に用いられる検出器の構成例を示すものである。
【0028】
図1において、1は地中に埋設される筒体で、この筒体1は地中への埋設深さに応じて適宜長さの筒部1aを複数本連結したもので、この筒体1内には検出部として3次元ソリッド型ジャイロ2が設けられ、支持板3を介して筒体1の内壁面に取付け固定されている。また、この筒体1内には3次元ソリッド型ジャイロ2を駆動するためのバッテリ4及びジャイロ2より出力される検出信号を増幅して演算する演算部5が設けられている。
【0029】
一方、6は筒体1の上部開口部を閉塞する蓋体で、この蓋体6の上面にはバッテリ4の充電用電源として太陽電池7が取付けられている。また、蓋体6には演算部5で処理された検出信号を図示しない基地局に送信する送信アンテナ8が取付けられている。
【0030】
上記ジャイロ2は図2に示すように三角柱2aの各側面に3軸方向の外力を検出する圧電素子2bがそれぞれ取付けられ、各圧電素子2bに加速度αが加わると、その加速度に応じた大きさの電圧を発生するものであり、この電圧は演算部5に入力される。
【0031】
ここで、演算部5の機能について図3により述べる。
【0032】
各圧電素子2bより加速度αに応じて発生する電圧が入力されると、この電圧信号はアンプにより演算処理に適した信号レベルに増幅され、その電圧信号を基に演算を実行して加速度を求め、これらの値から変位の大きさ、方向、衝撃力、検出器の姿勢を判別する。
【0033】
なお、上記では検出部として設けられたジャイロ2の構成として圧電素子を用いたが、半導体歪みセンサーを用いてもよい。
【0034】
次にこのような構成および機能を有する検出器を用いた地盤監視装置について説明する。
【0035】
まず、土砂崩れの可能性のある山間部などの地中に検出器を適宜の距離を存して図4に示すようにマトリクス状にそれぞれ配し、図5に示すような状態で埋設する。
【0036】
一方、図6は各検出器で検出された変位の大きさ及び方向、衝撃力、検出器の姿勢などのデータを基地局に伝送し、特定範囲の地盤の状態を監視するためのシステム構成を示すブロック図である。
【0037】
図6(a)において、各検出器側はジャイロ2、演算部5及び送信部(送信アンテナ)8から構成され、基地局側は受信部9及びデータ処理部10から構成されている。
【0038】
基地局側のデータ処理部10は、図6(b)に示すように各検出器による測定毎のデータを整理するデータ整理部10a、このデータ整理部10aで整理されたデータに基いて各測定ポイント毎の移動量を求める演算部10b、この演算部10bで求められた移動量の平均を求め、その平均値が所定の基準より大きいときアラーム10dを起動する平均化処理部10c、演算部10bで求めた移動量をもとに変位の大きさ、方向を判別する判別部10e、この判別部10eで判別された変位の大きさ、方向に基づいてベクト処理するベクトル処理部10f、ベクトル処理された各ポイントのベクトルに基いて等移動線を表示する表示手段10g、この表示手段10gにより表示された等移動線と判別部10eで判別された変位の大きさ、方向に基いてマッピング処理するマッピング処理部10hから構成されている。
【0039】
次に上記のような構成の地盤監視装置の作用を述べる。
【0040】
まず、各検出器からのデータを基地局に伝送する手段としてはマイクロ波による通信手段やPHS回線を利用した通信手段などが考えられるが、何ずれにしても各検出器で検出された3軸の加速度、傾きを示すデータを無線により伝送可能なものであればよい。
【0041】
いま、図4に示すようにマトリクス状に配置された各検出器において、地盤の各測定ポイントで図示矢印方向と大きさの変位が発生しているものとすれば、ソリッド型3次元ジャイロ2及び演算部5により加速度とその検出器自身の傾きとを検出し、これらのデータは送信アンテナ8より基地局に伝送される。
【0042】
基地局では、図6に示すように各検出器から伝送されたデータを受信すると、データ処理部10ではデータ整理部10aにより各測定ポイン毎に3軸に対応する加速度及び傾きデータを整理し、演算部10bにて各測定ポイン毎の移動量を求める。そして、この演算部10bで求められた各測定ポイン毎の移動量を平均化処理部10cにより平均化処理してその値が所定値を超えるとアラーム10dを発生して土砂崩れの可能性が高いことを報知する。
【0043】
一方、判別部10eにおいては、各測定ポイン毎の移動量の方向と大きさを判別してマッピング処理部10hに与えると共に、これらはベクトル処理部10fでベクトル処理され、等移動線表示部10gにて等移動線表示信号としてマッピング処理部10hに加えられる。
【0044】
このマッピング処理部10hでは、等移動線表示信号により全体の変化と等移動線よりポイントを検出し、また各測定ポイン毎の移動量の方向と大きさから全体の変化と方向を地図上にマッピング処理して地盤の変位状態を観測する。
【0045】
このように本実施の形態では、圧電素子や半導体歪みセンサーを用いたソリッド型3次元ジャイロ2と演算部5及び太陽電池7を電源とするバッテリ4とを備え、且つ変位の大きさ、方向、衝撃力、検出器自身の姿勢が検出可能な可動部を持たない検出器を監視したい箇所の地中にボーリングされた孔に埋設し、この検出器により検出されたデータを無線により基地局に伝送し、基地局ではその受信データをデータ処理部10によりリアルタイムで処理して各測定ポイント毎の移動量を求め、この移動量を地図上にモニタリングして地盤の状態を監視するようにしたものである。
【0046】
従って、山間部などの広範囲に亘る多数の箇所に孔を掘って検出器を埋めるだけで、電源ケーブルや、通信ケーブルなどの設置が不要となるので、検出器を簡便に設置することができる。
【0047】
また、検出器にソリッド型3次元ジャイロ2を使用しているので、可動部分がなく、且つ太陽電池を電源としているので低消費電力で済み、寿命が半永久的でメインテナンスフリー化を図ることができる。
【0048】
さらに、各検出器を図4に示すようにマトリクス状に配置すれば、地盤の変位の方向、移動量、加速度が層全体として検出でき、しかも層の移動加速度を検出できるので、基地局では各ジャイロ2から無線により伝送されてくる測定データを処理して各測定ポイント毎の移動量を求めると共に、その移動量の平均値を求め、この平均値が所定値を超えるとアラームを出したり、また各測定ポイント毎の移動量の方向と大きさを判別してベクトル化処理し、そのベクトルをもとに等移動線表示すると共にマッピング処理により全体の変化と等移動線よりポイントを検出し、また各測定ポイン毎の移動量の方向と大きさから全体の変化と方向を地図上にマッピング処理して地盤の変位状態を観測することにより、地盤が安定状態なのか、すべりが加速状態で危険な状態なのかを判別できる。
【0049】
ここで、上記実施の形態において、検出器を設置する場所は多岐にわたり、人や動物が検出器の近傍を通過したり、接触したりする可能性があり、このような場合には検出器が異常を誤検出してしまう可能性がある。
【0050】
そこで、検出器による誤検出の防止対策としては、次のような手段を講じることで対応できる。
【0051】
(1)検出器の検出値が大きく変化した場合、基地局側のデータ処理部において、一定時間(例えば5分間程度)データをサンプリングし、さらに継続する場合は地盤に異常があると判断する。
【0052】
(2)検出器の検出値が変化した場合、基地局側のデータ処理部において、同じ程度の値が何回連続して検出されたかをカウントし、一定回数(例えば3回)以上の場合は地盤に異常があると判断する。
【0053】
(3)検出器が一定以上の衝撃値(G値)を検出した場合には、検出回数が少なくとも、落石などの異常として検出する。
【0054】
なお、上記機能は予め検出器の中に組込むことも可能であり、このようにしておけば、基地局側のデータ処理部において、モニタリング装置の簡素化が可能である。
【0055】
上記実施の形態では、ソリッド型3次元ジャイロ2を図5に示すように筒体1内に1段構成として設けた検出器を地中に埋設したが、筒体1内の上部及び下部にソリッド型3次元ジャイロ2を2段構成として設けた検出器を地中に埋設することにより、表層部と浅深部との層間すべりも検出することができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、地盤の変位を検出して土砂崩れなどを観測する場合について述べたが、前述同様の検出器により積雪地域における積雪状態を検出して雪崩の発生の有無を監視する場合にも適用することができる。
【0057】
図7は積雪地域に埋設される検出器の状態を示すものである。
【0058】
この検出器は、図7に示すように複数個の筒部1aを連結する場合、最上部の筒部1bを上下方向に伸縮可能な構成としておき、この筒部1bを降雪量に応じてその長さを調整して設置する。この場合、軸方向の歪み量と積雪との関係を予め試験により求めておけば、積雪量も検出可能である。
【0059】
なお、上記実施の形態では、検出器内に3次元ソリッド型ジャイロとして圧電素子や光半導体を用いる場合について述べたが、光ファイバー方式のセンサを用いたものであっても良い。
【0060】
また、河川や鉄道沿いのように監視すべき地域が線状に延びている場合には、基地局に対して複数個の検出器を適宜の間隔を存して線状に配設し、途中の検出器を介して検出データを逐次転送可能にすることにより、低出力の少数の検出器で効果的な監視を行うことができる。
【0061】
さらに、検出器を耐水型とし、電源として二次電池を用い、データ転送を有線で行うようにすれば、川床、海底等の地盤監視を行うことができる。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、地中への埋設が簡単且つ容易で、しかも地盤や積雪部全体に変位がある場合でも的確に検出可能な検出器を用いて、地盤における土砂崩れや積雪地域における雪崩等の災害の発生を事前に予知することができる監視装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による監視装置の実施の形態における検出器の要部を破断して示す構成図。
【図2】同実施の形態における検出器内に検出部として設けられる圧電素子を用いた3次元ソリッド型ジャイロの構成例を示す斜視図。
【図3】同実施の形態における検出器内に設けられる演算部の機能を説明するためのブロック図。
【図4】同実施の形態における検出器をマトリクス状に配置した状態を示す図。
【図5】同実施の形態における検出器を地中に埋設した状態を示す図。
【図6】本発明による監視装置の実施の形態のデータ処理機能を説明するためのブロック図。
【図7】本発明による監視装置の実施の形態における検出器を積雪部に埋設した状態を示す図。
【符号の説明】
1……筒体
1a,1b……筒部
2……3次元ソリッド型ジャイロ
2a……三角柱
2b……圧電素子
3……支持板
4……バッテリ
5……演算部
6……蓋体
7……太陽電池
8……送信アンテナ
9……受信部
10……データ処理部
10a……データ整理部
10b……演算部
10c……平均化処理部
10d……アラーム
10e……判別部
10f……ベクトル処理部
10g……表示手段
10h……マッピング処理部

Claims (4)

  1. 開口端を有し地中又は積雪中に埋設される筒体と、
    この筒体の前記開口端に設けられ地上又は積雪外に露出される蓋体と、
    前記筒体内に設置された外力検出素子であって、この外力検出素子は3軸方向の加速度及び外力検出素子自身の傾きに応じて電圧信号を発生する外力検出素子と、
    前筒体内に設置され前記外力検出素子に電力を供給するバッテリと、
    前記筒体内に設置され前記外力検出素子からの電圧信号を増幅し演算する演算部と、
    この演算部からの検出信号が印加され前記蓋体に設置された送信アンテナとからなる検出器と、
    前記検出器からの検出信号に基づいて前記検出信号に変化が認められた場合、この変化が所定時間以上連続するか、又は前記変化の回数が所定回数以上発生するか、又は前記検出信号の変化が所定衝撃値以上の衝撃値の場合、この変化を異常と判定するデータ処理部と、
    を具備することを特徴とする監視装置。
  2. 前記外力検出素子は、三角柱の各外側面に圧電素子がそれぞれ取り付けられており、前記各圧電素子に加えられた外力に応じて電圧信号を発生することを特徴とする請求項1記載の監視装置。
  3. 2個の前記外力検出素子の一方を前記筒体の上部に設置し、他方を前記筒体の下部に設置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の監視装置。
  4. 複数個の前記検出器を線状に配設し、前段に配設されている検出器からの検出信号を受信し、この受信した前段の検出信号を自己の検出信号とともに次段の検出器又は前記データ処理部へ返信する如く構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の監視装置。
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