JP3847102B2 - 構造部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車及びトラック等の車体フレーム又はバンパ等として使用される構造部材及びその製造方法に関し、特に、容易に十分な強度を得ることができる構造部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラック等の輸送機器のフレームを構成するサイドメンバ及びクロスメンバとして、閉口断面及び開口断面のものが使用されている。一般に、車載ケーブル等の配線及び配管はこれらのサイドメンバ及びクロスメンバに沿って引き回されるため、その内部に配線及び配管を容易に配置することが可能な開口断面のものが好ましい。このような開口断面の部材としては、例えば横断面の形状が「コ」の字型となっているチャンネル形の開口断面のものがあり、Cチャンネルとよばれる。また、Cチャンネルの両フランジ面の端部から外側に延出する部分を備えたハット形のものも開口断面の部材として使用されている。
【0003】
しかし、開口断面の部材は、閉口断面の部材と比較すると同寸法では強度の点において劣るという欠点がある。特に、車体の軽量化のために鋼製フレームに替わるものとして導入が検討されているアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム及びアルミニウム合金を総称してアルミニウムという)においては、強度の確保は重要である。そこで、開口断面の部材をフレームに使用する場合、そのままでは強度が不足する箇所に補強部材が設けられている。また、自動車のバンパにおいても、高い強度が必要とされる箇所に、このような補強部材が設けられている。図8(a)及び(b)は開口断面部材用の従来の補強部材を示す斜視図である。
【0004】
従来の補強部材としては、図8(a)に示すように、チャンネル形のフレーム51と同様に、横断面の形状が「コ」の字型となっている補強部材52がある。このような補強部材52は、フレーム51の内側に嵌合され、更にリベット又は溶接によりフレーム51に接合される。また、図8(b)に示すように、平板状の補強部材53もある。このような補強部材53は、フレーム51の開口部を塞ぐようにして配置され、溶接等によりフレーム51に接合される。更に、単純にウェブ面又はフランジ面の肉厚を増加させることを目的として板材又は横断面が「L」の字型の部材を溶接等により接合する方法もある。
【0005】
また、特開平11−29063号公報には、取付ボスをフレームに接合する場合に、補強部材自体の取り付けを容易にすると共に接合部の剛性を向上することを目的とした補強部材が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リベットにより補強部材を押出形材に接合した場合には、完全には補強部材が押出形材に一体化されておらず、両部材間にすべりが生じて十分な強度を得にくいという問題点がある。これに対し、十分な強度を得ようと押出形材の全体にわたって補強部材を接合したのでは、重量が増加してしまう。
【0007】
一方、溶接により接合する場合には、部材の配置を反転する工程が必要になる等、その作業が煩雑なものとなる。また、補強される押出形材自体が溶融するため、その寸法が変動する虞があり、高い寸法精度が必要とされる部位へ適用する場合には好ましくない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、簡便な工程により十分に高い強度を得ることができる構造部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る構造部材は、互いに対向する1対の板部を有し前記1対の板部に夫々孔が形成された第1の部材と、前記両孔に挿入され電磁拡管されて前記第1の部材を補強する補強部材と、を有し、前記補強部材は円筒状をなし、その外表面にその長手方向に沿って延びる突起が形成されており、前記補強部材における前記板部から突出した部位が前記板部の外面に密着し、前記1対の板部間の部位が拡管することにより、前記補強部材が前記1対の板部を互いに連結していることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、第1の部材の1対の板部に夫々孔が形成され、そこに補強部材又は連結部材が挿入されて電磁拡管されているので、補強部材又は連結部材と第1の部材との一体性が極めて高い。また、電磁成形は、溶接と比較すると極めて簡便な作業により行うことが可能である。従って、容易に強度が高く軽量の構造部材が得られる。なお、本発明の構造部材は、例えば乗用車及びトラック等の車体フレーム(サイドメンバ、クロスメンバ、バンパステイ、サイドフレーム、サスペンションサブフレーム)若しくはバンパ等の自動車用構造部材、鉄道車両用構造部材又は船舶用構造部材等として使用することができる。
【0011】
本発明においては、前記補強部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。また、前記第1の部材は、前記1対の板部の側縁間を側板が連絡するCチャンネル構造を有することが好ましい。更に、前記構造部材は、例えば、バンパーステイである。
【0012】
本発明に係る構造部材の製造方法は、互いに対向する1対の板部を有し前記1対の板部に夫々孔が形成された第1の部材の前記両孔内に、円筒状をなしてその外表面にその長手方向に沿って延びる突起が形成された補強部材を挿入する工程と、前記補強部材の内部に電磁拡管コイルを挿入する工程と、前記電磁拡管コイルに通電することにより、前記補強部材における前記板部から突出した部位が前記板部の外面に密着し、前記1対の板部間の部位が拡管して前記補強部材が前記1対の板部を互いに連結する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
なお、前記補強部材又は連結部材の少なくとも一方の端部と前記第1の部材とを溶接する工程を有することが好ましい。このように溶接を行うことにより、接合の信頼性をより一層向上させることができる。この場合の溶接としては、例えばアーク溶接及びレーザ溶接だけでなく、摩擦撹拌接合(FSW)等を行ってもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に係るアルミニウムフレーム(構造部材)及びその製造方法について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1の実施例により製造されたアルミニウムフレームを示す斜視図、図2は本発明の第1の実施例に使用するアルミニウム部材を示す図であって、(a)はチャンネル形押出形材を示す斜視図、(b)は補強部材を示す斜視図である。また、図3は本発明の第1の実施例において各アルミニウム部材を組み合わせた状態を示す断面図、図4は本発明の第1の実施例において電磁成形を行った状態を示す図であって、(a)は上面図、(b)は模式的断面図である。
【0015】
本実施例においては、図1並びに図2(a)及び(b)に示すように、アルミニウム製のチャンネル形押出形材1をアルミニウム製で円筒形状を有する円筒補強部材2により補強してフレームを製造する。チャンネル形押出形材1のフランジ面(板部)1aの幅は、例えば70mmであり、ウェブ面1cの幅は、例えば100mmである。また、チャンネル形押出形材1の肉厚は、フランジ面1a及びウェブ面1cのいずれにおいても、例えば4mmである。
【0016】
先ず、チャンネル形押出形材1の両フランジ面1aの補強が必要とされる箇所に孔1bを形成する。各孔の大きさは特に限定されるものではないが、全て同じ大きさであれば、工具の交換等の手間が省けるので、好ましい。本実施例では、各孔の直径は、例えば30mmである。
【0017】
チャンネル形押出形材1に孔1bを形成する一方で、次のようなフレーム組立治具11を準備しておく。フレーム組立治具11には、押出形材支持具14が設けられている。押出形材支持具14は、おおよそ「L」の字型の形状を有しており、その水平部分14aの「L」の字の屈曲部から若干離間した位置に溝14cが形成されている。更に、「L」の字の屈曲部の内側及び溝14cの隅部には、夫々丸く削られた曲面14d、14eが形成されている。そして、押出形材支持具14の溝14cの中央部から上方に延びる電磁拡管コイル15が押出形材支持具14に設けられている。電磁拡管コイル15の長さは、例えば160mmである。なお、溝14bは、深さがその側面と電磁拡管コイル15との間隔よりも浅くなるようにして形成されている。各押出形材支持具14の各部位の寸法は、その水平部分14aの内側面にチャンネル形押出形材1の下側に位置するフランジ面1aが倣い、その垂直部分14bの内側面にチャンネル形押出形材1のウェブ面1cが倣うように定められている。
【0018】
上述のようにチャンネル形押出形材1の所定位置に孔1bを形成し、フレーム組立治具11を準備した後、図3に示すように、孔1bに円筒補強部材2を嵌挿する。円筒補強部材2の外径は孔1b等の直径(例えば、30mm)とほぼ等しく、円筒補強部材2の内径は、例えば電磁拡管コイル15の外径より0.1mm程度大きい。また、円筒補強部材2の長さは、フランジ面1aの外面の間隔より長く、後述の電磁拡管により端部が倒れてその倒れた部分がフランジ面1aに密着する程度のモーメントが作用し得るものであればよい。そして、各円筒補強部材2内に電磁拡管コイル15を挿入する。
【0019】
続いて、図4(b)に示すように、ケーブル16に接続されたスイッチSWを閉じることにより、電磁拡管コイル15にケーブル16から電源を供給する。この結果、円筒補強部材2のフランジ面1aの内部に収まっている部位は、瞬間的に拡管される。また、図4(a)及び(b)に示すように、円筒補強部材2のフランジ面1aから突出した部位は瞬間的に外側に倒れてフランジ面1aの外面に密着する。なお、図4(b)に示すように、円筒補強部材2の下端部は、スイッチSWの導通前は溝14cの底に当接しており、スイッチSWの導通により浮上することになるが、その変形は瞬間的なものであるため、円筒補強部材2の落下量は無視し得る程度のものである。また、前述のように、溝14cの深さは、電磁コイル15と溝14cの側面との間隔よりも小さいので、円筒補強部材2の下端部は押出形材支持具14による抵抗を受けずに変形することが可能である。一方、チャンネル形押出形材にはその孔2b等を拡げる力が作用するのみであり、その寸法の変動はほとんど発生しない。
【0020】
このようにして作製されたアルミニウムフレームにおいては、押出形材に補強部材が完全に一体化されているので、従来の中実リベットを使用して押出形材に補強部材が接合されているものと比較すると、リベット挿入する孔1bとリベット(円筒補強部材2)との間の空隙が極めて少なく十分な補強効果が得られる。また、従来の溶接により押出形材に補強部材が接合されているものと比較すると、上述の実施例では電磁成形により接合が行われているので、接合作業が極めて簡易なものとなっている。更に、電磁成形が行われる対象の部材は円筒補強部材2であるため、チャンネル形押出形材1の寸法の変動はほとんど発生せず、アルミニウムフレームの寸法精度が極めて高い。更に、信頼性向上のために、円筒補強部材2のフランジ面1aと密着している密着部2aの端部とを重ねすみ肉溶接し、円環状にビードを形成してもよいが、この溶接は同一平面内で行われるので、溶接姿勢の制約が少ない。
【0021】
なお、円筒補強部材2は、例えば押出形材として得ることが可能である。また、チャンネル形押出形材及び円筒補強部材の材質は特に限定されるものではなく、例えば5000系アルミニウム合金又は6000系アルミニウム合金を使用することができる。特に、円筒補強部材にあっては、電磁成形に関して導電性が高い6000系アルミニウム合金を使用することが好ましい。
【0022】
また、第1の実施例においては、円筒補強部材2の外表面は平滑面となっているが、チャンネル形押出形材の孔の側面及びフランジ面との摩擦を高めるために凹凸が形成されていることが好ましい。図5は円筒補強部材の一例を示す断面図である。この円筒補強部材6においては、横断面の形状が三角形となる複数の突起6aが外表面の長手方向に沿って延びるようにして形成されている。この円筒補強部材6を使用した場合、電磁成形により突起6aがチャンネル形押出形材の孔の側面及びフランジ面に食い込むため、摩擦抵抗が増加し、より一層高い結合強度を得ることができる。一方、円筒補強部材の内表面は、できるだけ平滑になっていることが好ましい。これは、電磁拡管コイルを挿入するときの摩擦をより低減するためである。なお、このような外表面及び内表面の円筒補強部材も、押出形材として得ることが可能である。
【0023】
また、アルミニウムフレームを輸送機器等に適用する場合、その機器に必要とされる電気配線及び配管等を円筒補強部材の中空部分を通してもよい。
【0024】
更に、電磁成形を行う際の円筒補強部材をT1状態のものとし、電磁成形後に、例えば200℃程度に加熱することにより、円筒補強部材をT5状態として、その強度を向上させてもよい。例えば、電磁成形後に自動車の塗装工程におけるベークハードが加熱工程を兼ねるようにしてもよい。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、自動車のアルミニウム製のサスペンションサブフレームを製造する方法に係るものである。図6は本発明の第2の実施例に係るサスペンションサブフレームの主構造の製造方法を示す斜視図であり、図7は第2の実施例により製造されたサスペンションサブフレームにおけるマウント部23を示す断面図である。
【0026】
第2の実施例に係る自動車のサスペンションサブフレーム主構造21は、例えば断面が「コ」の字型の2個の部材22a及び22bが互いに接合されて構成されている。また、サスペンションサブフレーム主構造21には、例えば4個のマウント部23が設けられている。各マウント部23においては、第1の実施例と同様に、部材22a及び22bに互いに対向する孔24が形成されている。そして、第1の実施例における円筒補強部材2と同様の円筒連結部材25が各孔24に嵌挿される。その後、円筒連結部材25を、第1の実施例と同様に拡管する。図6には、3個の円筒連結部材25の拡管が終了し、残りの1個が拡管される前の状態を示している。
【0027】
全ての円筒連結部材25の拡管が終了して完成したサスペンションサブフレームの円筒連結部材25内には、金属管31の周囲に円筒状のゴム(緩衝材)32が取り付けられて構成されたブッシュ33が圧入される。そして、各マウント部23上に車体26が載せられる。車体26のマウント部23に接する部位には金属管31に整合する孔29が形成されており、この孔29及び金属管31内にボルト27が挿入され、ナット38で締め付けることにより車体26がサスペンションサブフレーム主構造21に固定される。
【0028】
なお、振動の吸収等を目的としてゴムブッシュ等の緩衝材が圧入されるサブフレームのカラー部(孔)としては、上述のような車体が搭載されるボディマウント部の他に、エンジンが搭載されるエンジンマウント部、デファレンシャルギアボックスが搭載されるデファレンシャルギアボックスマウント部、タンク等の器物が搭載される器物マウント部、アーム取り付けブラケット部及びアームのジョイント部等が挙げられる。
【0029】
このようにして構成された車体フレームにおいては、円筒連結部材25内でゴム32が変形しやすいので、外部から負荷がかかった場合でも、ゴム32の変形によりその負荷を吸収して金属製の部材の変形を防止することが可能である。
【0030】
なお、第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、円筒連結部材25の形状、組成及びその加工方法については、適宜選択することが可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、第1の部材の2面に孔が形成され、そこに補強部材が挿入されて電磁拡管されているので、補強部材と第1の部材との一体性を極めて高いものとすることができる。また、電磁成形は、溶接と比較すると極めて簡便な作業により行うことが可能である。従って、強度が高く軽量の構造部材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例により製造されたアルミニウムフレームを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に使用するアルミニウム部材を示す図であって、(a)はチャンネル形押出形材を示す斜視図、(b)は補強部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例において各アルミニウム部材を組み合わせた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例において電磁成形を行った状態を示す図であって、(a)は上面図、(b)は模式的断面図である。
【図5】円筒補強部材の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係るサスペンションサブフレームの製造方法を示す斜視図である。
【図7】第2の実施例により製造されたサスペンションサブフレームにおけるマウント部23を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は開口断面部材用の従来の補強部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
1;チャンネル形押出形材
1a;フランジ面
1b;孔
1c;ウェブ面
2、6;円筒補強部材
2a;密着部
6a;突起
14;サイドメンバ支持具
15;電磁拡管コイル
21;サスペンションサブフレーム主構造
22a、22b;部材
23;マウント部
24;孔
25;円筒連結部材
26;車体
27;ボルト
28;ナット
29;孔
31;金属管
32;ゴム(緩衝材)
33;ブッシュ
Claims (5)
- 互いに対向する1対の板部を有し前記1対の板部に夫々孔が形成された第1の部材と、前記両孔に挿入され電磁拡管されて前記第1の部材を補強する補強部材と、を有し、前記補強部材は円筒状をなし、その外表面にその長手方向に沿って延びる突起が形成されており、前記補強部材における前記板部から突出した部位が前記板部の外面に密着し、前記1対の板部間の部位が拡管することにより、前記補強部材が前記1対の板部を互いに連結していることを特徴とする構造部材。
- 前記補強部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の構造部材。
- 前記第1の部材は、前記1対の板部の側縁間を側板が連絡するCチャンネル構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造部材。
- 前記構造部材は、バンパーステイであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造部材。
- 互いに対向する1対の板部を有し前記1対の板部に夫々孔が形成された第1の部材の前記両孔内に、円筒状をなしてその外表面にその長手方向に沿って延びる突起が形成された補強部材を挿入する工程と、前記補強部材の内部に電磁拡管コイルを挿入する工程と、前記電磁拡管コイルに通電することにより、前記補強部材における前記板部から突出した部位が前記板部の外面に密着し、前記1対の板部間の部位が拡管して前記補強部材が前記1対の板部を互いに連結する工程と、を有することを特徴とする構造部材の製造方法。
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