JP3846708B2 - 電子部品のめっき方法、及び電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子部品のめっき方法、及び電子部品の製造方法に関し、特に無電解めっきにより電極パターン上にめっき皮膜を形成するセラミック電子部品のめっき方法、及び該めっき方法を使用した電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミック多層基板やプリント基板等の電子部品では、基板の内部又は/及び表面に電極パターン(配線パターン)を形成した後、ボンディング性やはんだ付け性等、種々の用途に応じ、前記電極パターン上にNiやCu等のめっき皮膜を形成している。
【0003】
そして、めっき皮膜の形成方法としては電解めっき法と無電解めっき法とがあるが、電解めっき法では、めっき用リード線を設ける必要があるため配線密度を上げることができず、まためっき膜厚のばらつきが大きいという欠点がある。
【0004】
そこで、最近、還元剤を利用して金属を還元析出させる自己触媒型の無電解めっき法が提案されている(例えば、特開2001−181852号公報;以下「従来技術」という)。
【0005】
図9は、従来技術における無電解めっき法の工程図である。
【0006】
該従来技術では、脱脂工程101で強酸や強アルカリを使用して酸性脱脂又はアルカリ脱脂を行って基板上の電極表面を清浄化した後、続くエッチング工程102では、硫酸等の強酸や強力な酸化剤を使用して電極表面にエッチング処理を施し、電極表面を平滑化又は粗化して表面性状を微調整したり、電極表面に固着した酸化物を除去する。そして、撥水処理工程103では、所定の撥水処理液を使用して撥水処理を施し、これにより触媒が導電部以外の部位に吸着され難くし、次いで、触媒化工程104では被めっき物をPd触媒液に浸漬して電極表面にのみPd触媒を付与し、その後、無電解めっき工程105でホスフィン酸ナトリウム等の還元剤が混入しためっき浴に被めっき物を浸漬して無電解めっき処理を施し、前記被めっき物の電極表面にめっき皮膜を形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来技術では、良好なめっき皮膜を得るために、強酸・強アルカリや強力な酸化剤、還元剤、更には必要に応じて錯化剤等の反応性の高い薬品を使用する必要がある。
【0008】
一方、上記電子部品の基板材料としては、ガラスエポキシ樹脂やポリイミド等の有機樹脂基板とセラミック基板に代表される無機材料基板とに大別されるが、前記有機樹脂基板は、良好な耐薬品性を有しており、化学的安定性に優れているため処理液の選択幅も広い。
【0009】
これに対してセラミック基板は、有機樹脂基板に比べて耐薬品性に劣り、化学的安定性に欠ける傾向があるため、使用する材料の選択にも制約が生じ、したがって基板材料としては有機樹脂基板を使用する方が望ましいと考えられる。
【0010】
ところが、最近、伝送速度の高速化や膨大な情報処理に対処すべく、セラミック多層基板が広範に使用されてきており、また導電材料についても銀系や銅系の低抵抗材料が使用されている。そして、この種のセラミック多層基板では、前記導電材料を基板内部に設ける必要があるため、これら導電材料の融点よりも低温で焼成しなければならず、このため低温での焼成が可能なガラス成分を含有したセラミックス材料(以下、「ガラスセラミックス」という)が使用されている。
【0011】
しかしながら、上記従来技術では、電極表面以外の部位にPd触媒が付与されるのを防止する観点から触媒化工程104を実行する直前に撥水処理工程103を実行しているが、ガラスセラミックス製の基板材料を使用した場合、該撥水処理工程103前のエッチング工程102で基板成分が溶出してしまう虞があるという問題点があった。すなわち、近年、高周波化や低損失化等の高性能なセラミック電子部品が要請されているが、耐薬品性に優れ且つ高性能な電子部品を得ることのできる基板材料としてのガラスセラミックスの選択幅は狭く、前記高性能なセラミック電子部品を得ることのできるガラスセラミックスが耐薬品性に劣っている場合、無電解めっき工程105の前処理であるエッチング工程102で基板成分がエッチング液中に溶出し、基板や電極の機械的強度や誘電特性が低下して電子部品の信頼性を損なう虞があるという問題点があった。
【0012】
また、上述の如く基板のガラス成分が溶出した場合、被めっき物が多孔質化してPd触媒液やめっき液が該被めっき物内に浸入し、被めっき物内にめっき金属が析出するという問題点があった。
【0013】
さらに、上記従来技術では、撥水処理工程103をエッチング工程102後に実行しているため、折角エッチング工程102で電極表面の酸化物を除去しても撥水処理により電極表面には酸化物が再度形成され易く、その結果触媒化工程104でPd触媒が被めっき物に付与され難くなる場合があり、このため所望の均質なめっき皮膜を形成することができなくなる虞があるという問題点があった。
【0014】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、ガラスセラミックスを基板材料に使用した場合であっても、基板成分の溶出を極力回避して電極部上に所望のめっき皮膜を形成することのできる電子部品のめっき方法、及び該めっき方法を使用した電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ガラスセラミックスを基板材料に使用した被めっき物に対し、エッチング処理を施す前にシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を使用して防水処理を施すことより、処理液中での基板成分の溶出を極力回避して電極部上にのみ所望のめっき皮膜を形成することができるという知見を得た。しかも、前記防水処理を施した後に熱処理を施すと防水処理剤であるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤と絶縁体である基板との化学結合がより強固となり、より一層の防水性向上を図ることができるという知見も併せて得た。
【0016】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る電子部品のめっき方法は、基板がガラス成分を含有したセラミックス材料で形成されると共に、前記基板上に電極部が形成された被めっき物に前処理を施し、この後、前記被めっき物に所定のめっき処理を施す電子部品のめっき方法において、前記前処理が、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を使用して防水処理を施す防水処理工程と、前記防水処理を施した後に熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理を施した後にエッチング処理を施すエッチング工程とを含むことを特徴としている。
【0017】
上記めっき方法によれば、エッチング処理前にシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を使用して防水処理を施しているので、基板が、エッチング液やめっき液等の強力な反応性を有する処理液と直接接触するのを回避することができ、基板成分が各種処理液中に溶出するのを抑制することができる。しかも、前記防水処理を施した後に熱処理を施しているので、防水処理剤であるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤と絶縁体である基板との化学結合がより強固となり、防水性をより一層向上させることが可能となる。
【0018】
また、めっき処理を行う前に電極部表面を清浄化すべく脱脂処理を行う必要があり、斯かる脱脂処理はエッチング処理前に行う必要がある。また、強力な酸又はアルカリを使用して脱脂処理を行う場合は基板素体を保護する必要があることから防水処理及び熱処理を行った後に脱脂処理を行うのが望ましい。
【0019】
すなわち、本発明のめっき方法は、前記前処理に脱脂工程を含むと共に、該脱脂処理工程は前記防水処理工程の前又は前記熱処理工程の直後に実行することを特徴と
【0022】
また、低温焼結を可能にするガラス成分としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択された元素のうちの少なくとも1つ以上を含んでいる。
【0023】
また、本発明のめっき方法は、前記シランカップリング剤は、ケイ素原子が、クロム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、又は水酸基の中から選択された少なくとも1種の官能基と結合してなることを特徴としている。
【0024】
上記防水処理剤は、基板素体とは化学結合により強固に吸着する一方、電極部に対しては物理吸着する。したがって、基板素体に結合した防水処理剤は基板素体から脱離し難く、一方、電極部上の防水処理剤は該電極部から容易に脱離する。すなわち、基板素体は、処理液と直接接触することもなく、防水作用を確保することができる。
【0025】
また、前記めっき処理は、無電解めっき処理であることを特徴とし、これにより電極パターン上には均一なめっき皮膜を形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、上記めっき方法を使用して電極部の表面にめっき皮膜を形成することを特徴とし、また前記めっき皮膜は、Ni、Cu、Rh、Pd、Ag、Sn、Pt、又はAuから選択された少なくとも1種を主成分としていることを特徴とし、さらに前記電極部が、Cu、Ag、Pd、Pt、又はAuら選択された少なくとも1種を含有していることを特徴としている。
【0027】
上記電子部品の製造方法によれば、基板成分の溶出が生じることもなく所望金属からなる電極部上に所望の金属種を主成分とするめっき皮膜が形成され、所望の電極パターン及び良好な電気的特性を有する信頼性に優れた電子部品を製造することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0029】
図1は本発明に係る電子部品のめっき方法により製造されたセラミック多層基板の一実施の形態を示す断面図であって、該セラミック多層基板は、複数のセラミックシート(第1〜第5のセラミックシート1a〜1e)が積層されている。
【0030】
具体的には、第1〜第4のセラミックシート1a〜1dは、各々シート素体2(2a〜2d)の表面に内部導体3(3a〜3h)が形成されており、また、第5のセラミックシート1eは、シート素体2eの表面に外部導体4(4a〜4c)が形成されている。さらに、第2〜第5のセラミックシート1b〜1eには導体接続部5(5a〜5k)が設けられ、各々導体接続部5を介して各内部導体3間、又は外部導体4と内部導体3との間が電気的に接続されている。そして、本実施の形態では、第4のセラミック素体2dを介して内部導体3gと内部導体3eとが対向状に配されてコンデンサ部を形成し、外部導体4c及び内部導体3h、3f、3d、3bは導電接続部5k、5g、5e、5cを介して電気的に接続されインダクタ部を形成している。
【0031】
また、図2に示すように、内部導体3は、電極部6の表面にめっき皮膜7が形成され、外部導体4は、電極部8の表面にめっき皮膜9が形成されている。
【0032】
そして、上記セラミック多層基板は、以下のようにして製造される。
【0033】
すなわち、まず、所定形状に成形されたガラスセラミックスからなるシート素体2に対し必要に応じて適宜微細孔を設け、次いで、該微細孔を導電性ペーストで閉塞して導体接続部5を形成し、さらに該導電性ペーストを使用し、印刷法、転写法、薄膜法等任意の方法でシート素体2上に所定の電極パターン(配線パターン)からなる電極部6、8を形成する。次いで、電極部6、8が形成されたシート素体2に無電解めっき処理を施し、これにより電極部6、8上にはめっき皮膜7、9が形成され、セラミックシート1(第1〜第5のセラミックシート1a〜1e)が作製される。そしてこれら第1〜第5のセラミックシート1a〜1eを積層し、所定温度で焼成処理を行い、これにより上記セラミック多層基板が製造される。
【0034】
ここで、シート素体2に使用されるガラス成分としては、低温焼結性の観点からアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)又はアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)を1種以上含有するものを使用することができる。
【0035】
また、電極部6、8は、低抵抗導電材料を含有した導電性ペーストが使用され、具体的にはCu、Ag、Pd、Pt、Au、Ag−Pd、Ag−Ptを使用することができる。この場合、例えば、CuOとして電極部6、8を形成した後、還元処理を施すことによりCu電極を形成してもよい。
【0036】
また、めっき皮膜7、9についても、種々の用途に応じ、Cu、Ag、Pd、Pt、Au、Ag−Pd、Ag−Ptを使用することができる。
【0037】
尚、上記実施の形態では、外部導体4も第1〜第5のシート素体2a〜2e及び内部導体3を同時焼成しているが、第1〜第5のシート素体2a〜2eと内部導体3とを同時焼成した後、導電性ペーストを塗布して焼付処理を施すことにより電極部8を形成し、その後電極部8にめっき皮膜9を被着して外部導体4を形成するようにしてもよい。
【0038】
次に、上記めっき皮膜7、9の形成方法(めっき方法)を詳述する。
【0039】
図3は本めっき方法の処理手順を示す工程図である。
【0040】
まず、脱脂工程11では、シート素体2上に電極部6、8を形成した被めっき物を用意し、該被めっき物から有機物質や無機物質による汚染を除去するため、該被めっき物に脱脂処理を施す。
【0041】
尚、脱脂処理はアセトン等の非水系溶液で実施することが望ましいが、pH4〜10のエマルジョン系脱脂液や水を使用してもよい。
【0042】
続く防水処理工程12では、脱脂処理のなされた被めっき物を防水処理液に数分間浸漬し、防水処理を施す。すなわち、被めっき物を構成するシート素体2はガラスセラミックスで形成されているが、斯かるガラスセラミックスは金属酸化物を主成分としているため多量の酸素を含有しており、シート素体2の表面に露出する酸素原子も多い。したがって、斯かる被めっき物を防水処理液に浸漬すると、水分の作用によりシート素体2の最表層には水酸基が形成され、斯かる水酸基が防水処理液中の防水処理剤と化学結合し、防水処理剤はシート素体2に強固に化学吸着する。一方、金属導体からなる電極部6、8の表面は化学吸着せずに主として物理吸着する。斯かる物理吸着はファン・デル・ワールス力等の弱い分子間力に起因して生じるものであり、このため防水処理剤は電極部6、8の表面から脱離し易い。すなわち、防水処理剤はシート素体2からは脱離し難く、一方、電極部6.8からは容易に脱離する。したがって、被めっき物中、ガラスセラミックスからなるシート素体2のみが防水処理剤により強固に被覆されて防水性を有することとなる。
【0043】
尚、防水処理剤としては、一般式YRSiX3(Y:有機マトリックスと反応する有機官能基、R:アルキル基、X:加水分解性基)で表されるシランカップリング剤や、一般式(RO)mTi−(OR′)4−mで表されるチタネートカップリング剤を使用することができ、またシランカップリング剤を使用する場合は、Siと結合する加水分解性基として、クロム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、又は水酸基の中から選択された少なくとも1種の官能基を使用することができる。
【0044】
次に、熱処理工程13に進み、被めっき物に熱処理を施す。これにより、防水処理剤であるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤と絶縁体であるシート素体2との化学結合がより強固なものとなり、防水性をより一層向上させることが可能となる。
【0045】
次に、エッチング工程14では、被めっき物を所定のエッチング液に浸漬して電極部6、8の表面に固着している酸化物をエッチング除去し、また表面形状を適度に平滑化或いは粗化等して表面形状の微調整を行う。
ここで、エッチング液としては、一般には硫酸塩やクエン酸等の酸性水溶液を使用することができるが、電極材料によってはアルカリ性水溶液も使用可能であり、例えば電極部6、8がCuで形成されている場合は(NH3+H2S2O4)や(NH3+Cu2O)のようなアルカリ性水溶液を使用することができる。
【0046】
このようにしてエッチング工程14が終了した後、触媒化工程15に進み、被めっき物をPd触媒液に浸漬して電極部6、8の表面に触媒を付与する。この場合、被めっき物のシート素体2は防水処理が施されており、防水処理剤がシート素体2上に強固な化学吸着をしているため、電極部6、8のみに効果的にPd触媒が付与される。
【0047】
そして、無電解めっき工程16に進んで還元剤が添加されためっき浴に被めっき物を浸漬し、所定の無電解めっき処理を施してめっき皮膜7、9を形成し、その後水洗・乾燥し、これにより電極部6、8の表面には所望金属種からなるめっき皮膜7、9を有するセラミック多層基板が製造される。
【0048】
ここで、還元剤としては特に限定されるものではなく、ホスフィン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム等、周知の自己触媒型無電解めっきで使用される所望の還元剤を使用することができる。
【0049】
また、めっき浴についても特に限定されるものではなく、要求される析出金属に応じ、Ni、Cu、Rh、Pd、Ag、Sn、Pt、Au、又はこれらの合金種を含有しためっき浴を使用することができる。
【0050】
このように本実施の形態では、無電解めっき処理の前処理としてエッチング工程14を含むと共に、該エッチング工程14前にガラスセラミックスからなるシート素体2に防水処理及び熱処理を行っているので、その後の一連の工程でガラスセラミックス中の基板成分、特にガラス成分が処理液中に溶出するのを極力回避することができ、したがって、セラミックシート1の機械的強度や誘電特性等の電気的特性が低下するのを防止することができ、信頼性に優れたセラミック多層基板を得ることができる。
【0051】
しかも、シート素体2に防水処理を施すことによってPd触媒は電極表面にのみ効果的に付与され、これにより電極表面にはめっき皮膜7、9を効率良く形成することができる。
【0052】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、脱脂工程11を防水処理工程12の前に実施しているが、エッチング工程14の直前、すなわち熱処理工程13の直後に行ってもよい。特に、電極表面を清浄化すべく強力な酸性溶液又はアルカリ性溶液を使用して脱脂を行う場合は、防水処理工程12及び熱処理工程13を行った後に脱脂工程11を実施してシート素体2を構成するガラスセラミックスを保護するのが好ましい。
【0054】
また、上記実施の形態では、電極部6、8の表面に単一層のめっき皮膜7、9を形成しているが、さらに置換めっきや無電解めっきを施し、電極部6、8上に複数層のめっき皮膜を形成してもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、シート素体2をガラスセラミックスで形成したセラミック多層基板について説明したが、本発明は、基板材料が耐薬品性に劣るものであれば、適用可能であり、したがって、多層基板に限定されることはなく、また基板材料もガラスセラミックスに限定されるものではない。
【0056】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0057】
〔第1の実施例〕
本発明者は、Mg3B2O6−Mg2SiO4系ガラス成分を含有したガラスセラミックスに周知の成形処理を施し、縦10mm、横10mm、厚み1mmのセラミック成形体を作製した。そして、該成形体をフッ素系シランカップリング剤に25℃で3分間浸漬して防水処理を施し、その後水洗した。
【0058】
一方、本発明者は、水素イオン指数pHが夫々1、4、7、10、及び13となるように0.2Mクエン酸溶液を水酸化ナトリウム水溶液で調整し、エッチング液を作製した。
【0059】
次いで、前記成形体を前記エッチング液に温度80℃で24時間浸漬し、該エッチング液中に溶出したガラス成分、すなわちMg、B、SiをICP−AES(誘電結合プラズマ発光分光法)により定量分析した。
【0060】
また、本発明者は、比較例として上記ガラスセラミック成形体に防水処理を施すことなく上記エッチング液に浸漬し、上述と同様、エッチング液中に溶出したガラス成分、すなわちMg、B、SiをICP−AES(誘電結合プラズマ発光分光法)により定量分析した。
【0061】
図4〜図6は定量分析の分析結果を示す特性図であって、横軸は水素イオン指数pH、縦軸はMg、B、Siの夫々の溶出量(μg/ml)を示している。
【0062】
この図4〜図6から明らかなように、比較例は水素イオン指数pHが1〜4の酸性領域で、成形体が溶解してガラス成分がエッチング液中に大量に溶出し、しかもB(ホウ素)に関してはpH13のアルカリ性領域でも溶出することが分かった(図5参照)。
【0063】
これに対して本発明実施例は、成形体に防水処理を施しているため、水素イオン指数pH1の強酸性領域では若干ガラス成分の溶出が認められるものの、比較例に比べると大幅に低減しており、また水素イオン指数pHが4を超える領域では溶出量を0又はほぼ0にすることができることが確認された。
【0064】
〔第2の実施例〕
本発明者は、第1の実施例と同様の組成成分を有するガラスセラミックス材料を使用して縦500mm、横500mm、厚み0.5mmのガラスセラミックス成形体を作製し、該成形体の表面にCuを含有した導電性ペーストを使用して印刷処理を施し、電極部を形成して被めっき物を作製した。次いで、斯かる被めっき物をフッ素系シランカップリング剤に25℃で3分間浸漬し、水洗した後、無電解Niめっき液(pH4.6、80℃)200mlに10分間浸漬し、めっき浴に溶出したガラス成分(Mg、B、Si)をICP−AESにより定量分析した。
【0065】
また、共振法を用いて12GHzにおけるめっき処理前後の機械的品質係数Q(誘電率/誘電損失)を測定し、両者の比(Q比)を算出した。
【0066】
また、本発明者は、上記めっき物に防水処理を施すことなく、上述と同様、上記無電解Niめっき液に浸漬してめっき処理を施し、上述と同様、めっき浴中に溶出したガラス成分をICPにより定量分析した。また、上述と同様、めっき処理前後における機械的品質係数Qを測定し、両者の比(Q比)を算出した。
【0067】
表1はその測定結果を示している。
【0068】
【表1】
この表1から明らかなように比較例は防水処理を施していないため、ガラス成分の溶出量が極めて大きいことが分かった。また、比較例はQ比も0.1と小さく、めっき処理前に比べてめっき処理後の機械的品質係数Qが大幅に低下しており、したがってめっき処理後における誘電特性の低下が認められた。
【0069】
これに対して実施例は防水処理を施しているため、比較例に比べて各ガラス成分(B、Mg、Si)の溶出量が大幅に低減することができ、また機械的品質係数Qもめっき処理前に比べ大きく低下することもなく、誘電特性の低下を極力抑制することのできることが確認された。
【0070】
〔第3の実施例〕
次に、本発明者は、第1の実施例と同様のガラスセラミックス材料を使用して縦30mm、横10mm、厚み1mmのガラスセラミックス成形体を作製し、次いでCuを含有した導電性ペーストを使用し膜厚約5μmの所定パターンのCu電極をスクリーン印刷で形成した。
【0071】
前記所定パターンとしては、具体的には図7に示すように、電極の線幅L及び電極間の離間距離Sが異なる4種類の櫛型状電極パターンと、図8に示すように、一片の電極長さDが異なる4種類の正方形状電極パターンとを作製した。
【0072】
そして、これら被めっき物を中性洗剤で脱脂し、水で洗浄した後乾燥させた。次いで斯かる被めっき物をフッソ系シランカップリング剤に温度25℃で3分間浸漬し、その後温度60℃で30分間乾燥した。
【0073】
次いで、前記被めっき物を水洗した後、エッチング液としてペルオキソ2硫酸アンモニウムを使用し、被めっき物を前記エッチング液に温度25℃で1分間浸漬し、水洗した後、該被めっき物をPd触媒液に温度25℃で2分間浸漬して電極パターン上にPd触媒を付与し、この後被めっき物を弱酸性無電解Niめっき液に温度80℃で10分間浸漬し、膜厚2μmのNiめっき皮膜を電極パターン上に形成した。
【0074】
次いで、温度65℃の金めっき浴に10分間浸漬して置換めっきを施し、Niめっき皮膜上にAuめっき皮膜を形成し、セラミックシートを作製した。
【0075】
次に、このようにして作製したセラミックシートを光学顕微鏡(OLYMPUS社製SZ−ST型)で観察し、めっきのパターニング性及び析出性を評価した。
【0076】
また、本発明者らは、比較例として上記実施例で防水処理を行わなかった試験片を作製し、実施例と同様、光学顕微鏡でパターニング性及び析出性を評価した。
【0077】
表2はその評価結果を示している。
【0078】
【表2】
尚、パターニング性評価は図7の電極パターンで行い、めっき皮膜の電極パターン上からの「はみ出し」の有無でその評価を行った。表2中、前記「はみ出し」がない場合を「○」、前記「はみ出し」がある場合を「×」で示している。
【0079】
また、析出性評価は図8の電極パターンで行い、電極パターン上に均一な膜厚でもってめっき金属が析出しているか否かによりその評価を行った。
【0080】
この表2から明らかなように、析出性に関しては実施例及び比較例共、良好であるが、パターニング性に関しては、防水処理を施していない比較例は電極パターンが微細になれば低下するのに対し、防水処理を施している実施例は微細な電極パターンとなっても良好なパターニング性を確保することのできることが分かった。
【0081】
以上詳述したように本発明に係る電子部品のめっき方法は、基板がガラス成分を含有したセラミックス材料で形成されると共に、前記基板上に電極部が形成された被めっき物に前処理を施し、この後、前記被めっき物に所定のめっき処理を施す電子部品のめっき方法において、前記前処理が、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を使用して防水処理を施す防水処理工程と、前記防水処理を施した後に熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理を施した後にエッチング処理を施すエッチング工程とを含むので、エッチング処理やめっき処理を施しても基板成分がこれら処理液中に溶出するのを抑制することができ、したがって、基板の機械的強度や電気的特性が低下するのを回避して信頼性に優れた電子部品を得ることができる。しかも、前記防水処理を施した後に熱処理を施しているので、防水処理剤であるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤と絶縁体である基板との化学結合がより強固となり、防水性はより一層向上したものとなる。また、前記防水処理を施すことにより基板素体と処理液とが直接接触するのを回避することができ、したがって基板成分の溶出を極力回避することができるので、各種処理液の選択幅も広くなり、種々の金属種のめっき皮膜を有する様々な用途に適合した電子部品を容易に得ることができる。
【0082】
また、本発明は、前記前処理に脱脂工程を含むと共に、該脱脂工程は前記防水処理工程の前又は前記熱処理工程の直後に実行するので、基板の清浄性を確保することができ、特に強力な酸又はアルカリを使用して脱脂処理を行う場合は、防水処理及び熱処理が行われた後に脱脂処理が行われることとなり、基板素体を保護することができる。
【0084】
シランカップリング剤は、ケイ素原子が、クロム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、又は水酸基の中から選択された少なくとも1種の官能基と結合してなるので、上記作用効果を容易に奏することができる。
【0085】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、上記めっき方法を使用して電極部の表面にめっき皮膜を形成しているので、基板成分の溶出が生じることもなく所望金属からなる電極部上に所望の金属種を主成分とするめっき皮膜が形成され、所望の電極パターン及び良好な電気的特性を有する信頼性に優れた電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のめっき方法を使用して製造された電子部品としてのセラミック多層基板の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明に係る電子部品のめっき方法の一実施の形態を示す工程図である。
【図4】水素イオン指数とMgの溶出量との関係を比較例と共に示した特性図である。
【図5】水素イオン指数とBの溶出量との関係を比較例と共に示した特性図である。
【図6】水素イオン指数とSiの溶出量との関係を比較例と共に示した特性図である。
【図7】第3の実施例で形成される電極パターンの一例を示す図である。
【図8】第3の実施例で形成される電極パターンの他の例を示す図である。
【図9】従来の電子部品のめっき方法の工程図である。
【符号の説明】
2 シート素体(基板)
6 電極部
7 めっき皮膜
8 電極部
9 めっき皮膜
Claims (8)
- 基板がガラス成分を含有したセラミックス材料で形成されると共に、前記基板上に電極部が形成された被めっき物に前処理を施し、この後、前記被めっき物に所定のめっき処理を施す電子部品のめっき方法において、
前記前処理が、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を使用して防水処理を施す防水処理工程と、前記防水処理を施した後に熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理を施した後にエッチング処理を施すエッチング工程とを含むことを特徴とした電子部品のめっき方法。 - 前記前処理に脱脂工程を含むと共に、該脱脂工程は前記防水処理工程の前又は前記熱処理工程の直後に実行することを特徴とする請求項1記載の電子部品のめっき方法。
- 前記ガラス成分は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択された元素のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品のめっき方法。
- 前記シランカップリング剤は、ケイ素原子が、クロム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、又は水酸基の中から選択された少なくとも1種の官能基と結合してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品のめっき方法。
- 前記めっき処理は、無電解めっき処理であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品のめっき方法。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のめっき方法を使用して電極部の表面にめっき皮膜を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
- 前記めっき皮膜は、ニッケル、銅、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、白金、又は金から選択された少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項6記載の電子部品の製造方法。
- 前記電極部が、銅、銀、パラジウム、白金、又は金から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の電子部品の製造方法。
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