JP3845584B2 - バイポーラ型半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、ダイオード等のバイポーラ型半導体装置に関する。特に、ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通するバイポーラ型半導体装置に関する。この種のバイポーラトランジスタには、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下ではIGBTという)や静電誘導型バイポーラトランジスタ(以下ではBSITという)が例示される。
【0002】
【従来の技術】
電力制御用に、前記に例示したIGBTやBSITやサイリスタ等のバイポーラ型半導体装置がよく用いられる。ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通するバイポーラ型半導体装置は、耐圧が高くてオン電圧が低いために電力制御に適している。
【0003】
図22は、従来のIGBTの断面構造の一例を示し、この場合、p+型半導体基板64の裏面にドレイン電極62が形成され、p+型半導体基板64上にn+型バッファ層66が積層され、n+型バッファ層66上にn−型ドリフト層70が積層され、n−型ドリフト層70上にp−型ボディ層72が積層されている。p−型ボディ層72内にn+型エミッタ領域78とp+型ボディコンタクト領域74が形成され、表面にエミッタ電極76が形成されている。図5はトレンチゲートでスイッチングするタイプを例示しており、n−型ドリフト層70とn+型エミッタ領域78の間のp−型ボディ層72に対して、絶縁層80を挟んで向かい合う位置にゲート電極82が形成されている。なお指示線の指示箇所を明瞭にするために、図面の右半分ではハッチングを省略している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のIGBTは、n−型ドリフト層70の高抵抗を利用して耐圧を確保しており、耐圧を高めるためにn−型ドリフト層70の抵抗を高くすると、オン電圧まで高くなってしまう。IGBTでは、ドリフト層70に伝導度変調現象が生じるために、MOS等と比較すると、ドリフト層70の抵抗が高くてもオン電圧が低いという長所を備えているが、IGBT同士を比較すると、ドリフト層70の抵抗が高いほどオン電圧が高くなってしまう。バイポーラ型半導体装置は、MOS等のユニポーラタイプの半導体装置に比べると、耐圧が高くてオン電圧が低いものの、さらに耐圧を高めようとするとオン電圧が高くなり、オン電圧を下げようとすると耐圧が低くなるという限界をもっている。
本発明は、この限界を打ちやぶり、バイポーラ半導体装置の耐圧を高めてオン電圧を低くする課題に挑戦するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用】
この発明では、バイポーラ型半導体装置のドリフト層では伝導度変調現象が生じて電流が流れるために、ドリフト層に反対導電型の層を付加することができ、反対導電型の層を付加することで逆接合面が形成されても導通時の電流の流れに問題を引起さないという知見を利用する。本発明者らの研究によって、逆接合面を形成するためにオン電圧を上昇させると予想される反対導電型層を付加しても、伝導度変調現象が生じて導通する場合にはオン電圧を上昇させないことが確認された。一方、ドリフト層内に逆接合面を形成する反対導電型層を付加すると、半導体装置に逆バイアスが加えられた場合に空乏層が広く広がり、耐圧が高められる。このために、ドリフト層の抵抗を低くしても従来と同じ耐圧を得ることができる。
逆接合面を形成するためにオン電圧を上昇させると予想される反対導電型層を付加すると、実際には、耐圧を損ねることなくドリフト層の抵抗を低くすることができ、その結果かえってオン電圧を低下させることができるのである。
この知見を活用することによって、従来以上に耐圧が高くてオン電圧が低いバイポーラ型半導体装置を実現することができる。
【0006】
本発明で実現される一つの半導体装置は、ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通するバイポーラ型半導体装置のそのドリフト層内に、ドリフト層とは反対導電型の面的に広がる層を付加したことを特徴とする(請求項1)。
このバイポーラ型半導体装置は、典型的にはIGBT、BSIT、サイリスタ、ダイオード等に具体化される。また正負のキャリアがドリフト層の両面から注入されて伝導度変調が生じるタイプと、正負のキャリアがドリフト層の片面から注入されて伝導度変調が生じるタイプの両者に具体化される。
【0007】
ドリフト層内に反対導電型の領域を形成しておけば、半導体装置に逆バイアスがかかったときに、逆接合面から空乏層が伸びるために、耐圧が高まるものと予想される。その反面、導通時には逆接合面が電流の流れを妨げるために、オン電圧を上昇させるものと予想される。そこで、前者の利点を活用して後者の欠点を克服することが求められ、このために、ドリフト層内に反対導電型領域を離隔的に分散配置する技術が開発された。これが特開平9−191109号公報に開示されている。この技術によれば、逆バイアスがかかったときに逆接合面から空乏層が伸びて耐圧が高められ、正バイアスがかかったときには反対導電型領域を避けて電流が流れるためにオン電圧は高くならない。しかしながらこの技術では、ドリフト層内に反対導電型領域を離隔的に分散配置することが求められ、反対導電型の層が面的に広がってしまってはならない。面的に広がってしまうと、その面的に広がる逆接合面によってオン電圧が上昇してしまうはずだからである。このために、従来の技術では、ドリフト層内に反対導電型領域を離隔的に分散配置することが求められ、製造しずらく、製造コストを押し上げていた。
しかるに、本発明者らの研究によって、ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通する場合には、逆接合面が簡単に潰れてしまうことが確認され、ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通する場合に限ってみれば、ドリフト層内の反対導電型層が面的に広がるように形成してもオン電圧を上昇させないことが確認された。ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通する場合に限ってみれば、ドリフト層内に反対導電型領域を離隔的に分散配置することが求められず、広い範囲一様に積層すればよいことが確認された。この場合、反対導電型層が簡単に製造でき、製造コストは大きく低減される。
【0008】
ドリフト層内に追加する反対導電型層の厚みが、その反対導電型のキャリアの拡散長よりも薄いことが好ましい(請求項2)。
この場合、逆バイアスが加えられたときには空乏層が広く広がり、正バイアスが加えられたときには逆接合面が簡単に潰れるのでオン電圧を上昇させないという現象が安定的に得られる。
【0009】
本発明の1つの典型例は、ドリフト層がバッファ層上に積層されているタイプ、即ち、表裏両面に電極を持つタイプのIGBTやサイリスタやダイオード等に実現される(請求項3)。
この半導体装置に逆バイアスが加えられると、反対導電型層の下面とボディ層の下面に電界が分散されてかかり、空乏層が広く広がり、高い耐圧が得られる。このために、耐圧を高めながらドリフト層の抵抗を下げることができ、オン電圧も下げることができる。本発明の特性が顕著に表れる。但し前記したように、本発明はドリフト層がバッファ層上に積層されていて正負のキャリアがドリフト層の両面から注入される形式に限られず、表面注入型のIGBT等のように、正負のキャリアがドリフト層の片面から注入される形式にも有効である。
【0010】
ドリフト層がバッファ層上に積層されている場合、反対導電型層がバッファ層上に直接積層されていることが好ましい(請求項4)。
この場合、バッファ層とドリフト層の接合面と、ドリフト層とボディ層の接合面から空乏層が広く広がり、効率的に耐圧が高められる。
【0011】
反対導電型層をドリフト層の中間高さに形成することもできる(請求項5)。
この場合、逆接合面から空乏層が伸びて耐圧が高められる他、ターンオフ時に他導電型キャリアが他導電型層に蓄積され、それがすみやかにエミッタ側に抜け易く、ターンオフ時のスイッチング時間が短くすることができる。
【0012】
またドリフト層内に、複数層の反対導電型層を付加することもできる(請求項6)。
この場合、複数層の反対導電型層の下面から空乏層が均質に広く広がり、耐圧が効率良く高められる。
【0013】
ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきているバイポーラ型半導体装置の場合、そのトレンチゲートの最深部よりも深い位置に反対導電型層が付加されていることが好ましい(請求項7)。
この場合、ドリフト層の抵抗を低くできることから、トレンチゲートに沿って流れる電流をドリフト層の広範囲に広げて流すことができ、オン抵抗が効果的に低くなる。
【0014】
ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきているバイポーラ型半導体装置の場合、そのトレンチゲートの最深部よりも浅い位置に反対導電型層が付加されていてもよい(請求項8)。
この場合、導通時には、トレンチゲートに向い合うドリフト層にキャリアが集中して流れるためにオン電圧が低く抑えられる。ターンオフ時には、トレンチゲートが他導電型キャリアをエミッタ側に放出するオフゲートとなり、半導体装置を確実にターンオフするのに寄与する。ターンオフ時のスイッチング時間を短くすることもできる。1つのトレンチゲートにオンゲート機能とオフゲート機能を兼用させることもできれば、オンゲートとオフゲートを別々に設けることもできる。
【0015】
反導電型層の厚みが均一に維持されて面的に広がっていてもよいし(請求項9)、厚みが周期的に変化しながら面的に広がっていてもよい(請求項10)。
均一な厚みの層は作成しやすく、生産コストも安価ですむ。面内で厚み分布を持たせる方式では、その厚み分布パターンを選択することで様々な特性に調整し易い。例えば局所的薄い部分を作成すると、キャリアが移動しやすく、スイッチング時間を短くすることができる。他導電型層の厚みが薄いと耐圧向上効果が充分に得られない可能性があるが、厚みが周期的に変動して近傍に厚い部分が存在していれば、厚い部分から広がる空乏層によって薄い部分での耐圧向上効果も得られる。厚み分布パターンを調整することによって、希望されている耐圧、オン抵抗、スイッチング時間といった特性を満足することが可能となる。
【0016】
反導電型層内の不純物濃度は厚み方向に均一であってもよいが(請求項11)、厚み方向に変化していてもよい(請求項12)。濃度分布を与えることで、オン電圧をさらに下げたり、ターンオフ時に発生する逆起電力の大きさを抑制するといったことが可能となる。
反導電型層を含むドレイン層内の不純物濃度が厚み方向に変化していてもよい(請求項13)。反対導電型層以外のドレイン層に濃度分布を与えることで、ターンオフ時に発生する逆起電力の大きさを抑制することが可能となる。必要ならバッファ層にも濃度分布を与えることができる。
【0017】
本発明は表裏両面に電極を持つIGBTに具現化するができる。この場合にはドレイン電極、高濃度第1導電型半導体基板、高濃度第2導電型バッファ層、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層される。第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、第2導電型ドリフト層と第2導電型エミッタ領域の間の第1導電型ボディ層に対して、絶縁層を挟んで向かい合う位置にゲート電極が形成される(請求項14)。
この場合、第1導電型がp型であれば第2導電型はn型であり、第1導電型がn型であれば第2導電型はp型である。
また、第1導電型ドリフト層と第2導電型ドリフト層の積層構造は、複数回繰り返して積層されていても良い。高濃度第2導電型バッファ層と第1導電型ドリフト層の間に、低濃度第2導電型ドリフト層を追加してもよい。
ゲート電極はトレンチゲート型でも、プレーナゲート型であっても良い。プレーナゲート型のIGBTの一例が、特開平7−115189号公報に記載されている。
上記のIGBTは、従来のIGBTよりも耐圧が高く、オン電圧が低く、電力ロスを減少させる。
【0018】
前記したIGBTの場合、高濃度第1導電型半導体基板内に、ストライプ状またはアイランド状に第2導電型領域が分散配置されていることがある(請求項15)。
この場合、高濃度第1導電型半導体基板からバッファ層を介してドリフト層に注入されるキャリア量が抑制され、ターンオフ時にすみやかにキャリアが抜けられるようすることができる。確実にターンオフでき、またターンオフ時間を短くすることができる。
【0019】
本発明は表面からキャリアを注入してドリフト層内で伝導度変調現象を発生させるIGBTにも具現化するができる。この場合には、ドレイン電極、第2導電型半導体基板、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層され、第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、第2導電型ドリフト層と第2導電型エミッタ領域の間の第1導電型ボディ層に対して絶縁層を挟んで向かい合うゲート電極が形成され、第1導電型ボディ層を貫通して第2導電型ドリフト層に達する高濃度第1導電型領域が形成され、その高濃度第1導電型領域に注入ゲート電極が接続されている(請求項16)。
上記のIGBTの場合、ゲート電極に電圧が印加されると、キャリアが注入ゲート電極から注入されてドリフト層内で伝導度変調現象が生じて低いオン電圧が実現される。
【0020】
本発明は表面からキャリアを注入してドリフト層内で伝導度変調現象を発生させる静電誘導トランジスタにも具現化するができる。この場合、ドレイン電極、第2導電型半導体基板、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層され、第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、そのエミッタ領域を挟む両サイドに第1導電型ボディ層を貫通して第2導電型ドリフト層に達する高濃度第1導電型領域が形成され、その高濃度第1導電型領域にゲート電極が接続されている(請求項17)。
この場合には、ゲート電極に電圧が印加されると、そのゲート電極に接続されている高濃度第1導電型領域からキャリアが注入されてドリフト層内で伝導度変調現象が生じて低いオン電圧が実現される。
【0021】
本発明はダイオードにも具現化するができる。この場合、ダイオードを構成する第1導電型層と第2導電型層の積層構造において、第2導電型層内に第1導電型の薄層を挿する。その挿入層の厚みは第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄くする(請求項18)。この場合、第2導電型層内に第1導電型の薄層が挿入されて一見すると4層サイリスタ構造となっているのに、第1導電型層が薄いために電流が順方向に流れる場合には逆接合面が簡単に潰れてダイオードとして作用する。このダイオードは耐圧が高くて順方向抵抗が低い。
【0022】
本発明はサイリスタにも具現化するができる。この場合、サイリスタを構成する第1導電型基板、第2導電型層、第2導電型ドリフト層、第1導電型層、第2導電型層の積層において、第2導電型ドリフト層内に第1導電型の薄層が挿入する。その第1導電型の薄層の厚みが第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄い。
この場合にも、第2導電型ドリフト層内の第1導電型層は薄いために逆接合面が簡単に潰れてサイリスタとして作用する。このサイリスタは耐圧が高くてオン電圧が低い。
【0023】
【実施の形態】
図1は、本発明を、表面電極と裏面電極とトレンチゲートとを有するIGBTに具現化した第1実施例を示す。第1実施例の半導体装置の場合、p+型半導体基板4の裏面にドレイン電極2が形成され、p+型半導体基板4上にn+型バッファ層6が積層され、n+型バッファ層6上にp−型ドリフト層8が積層され、p−型ドリフト層8上にn−型ドリフト層10が積層され、n−型ドリフト層10上にp−型ボディ層12が積層されている。p−型ボディ層12内にn+型エミッタ領域18とp+型ボディコンタクト領域14が形成され、表面にエミッタ電極16が形成されている。n+型エミッタ領域18とp−型ボディ層12を貫いてn−型ドリフト層10に達するトレンチが形成され、そのトレンチ内には、絶縁層20で覆われたゲート電極22が埋設されている。ゲート電極22は、n−型ドリフト層10とn+型エミッタ領域18の間のp−型ボディ層12に対して絶縁層20を介して向かい合っている。トレンチゲート電極22の最深部よりもp−型ドリフト層8は深い位置にある。なお、p+型半導体基板4、n+型バッファ層6、p−型ドリフト層8、n−型ドリフト層10、p−型ボディ層12のそれぞれの不純物濃度分布はほぼ一様であり、p−型ドリフト層8は均一な厚みで水平方向に一様に伸びている。p−型ドリフト層8の厚みは正孔の拡散長よりも薄い。図1の断面構造は紙面垂直方向に連続し、図示しない断面でゲート電極22は外部配線に接続されている。図1に示す断面構造は紙面左右方向周期的に繰り返されている。
【0024】
図1と図22を対比すると明らかに、本実施例では、n−型ドリフト層70に正孔の拡散長よりも薄い反対導電型層(p−型ドリフト層)8が付加されている。ドリフト層70の層厚に対して、ドリフト層10と8の合計層厚は薄くなっている。さらにドリフト層10と8の不純物濃度は、従来のドリフト層70の不純物濃度よりも高く、抵抗が下げられている。
【0025】
この半導体装置に逆バイアスがかかると、n+型バッファ層6とp−型ドリフト層8間のpn接合と、n−型ドリフト層10とp−型ボディ層12間のpn接合から空乏層が伸びる。
n+型バッファ層6とp−型ドリフト層8間のpn接合から伸びる空乏層は主としてp−型ドリフト層8側に伸び、n−型ドリフト層10にパンチスルーする。p−型ドリフト層8とn−型ドリフト層10の全体が空乏化し、ドリフト層の全体が耐圧を向上させるのに利用される。n−型ドリフト層10とp−型ボディ層12間のpn接合から伸びる空乏層は主としてp−型ボディ層12側に伸び、p−型ボディ層12の全体に広がる。
逆バイアスがかかると、空乏層がドリフト層8、10とボディ層12に広く広がるために、このIGBTの耐圧は従来に比して高い。
この場合、ドリフト層8と10の抵抗を高くしなくても、高い耐圧が得られるために、ドリフト層8と10の不純物濃度を高めて抵抗を下げ、さらに、層厚を薄くすることができる。このために、オン時には、矢印に示すように、ゲート電極22に沿って形成されるチャネルを流れる電流は、n−型ドリフト層10で広く広がり、ドレイン電極2側に均一に流れる。これもまた、オン電圧を小さく押さえることに寄与する。
【0026】
本実施例のIGBTは、n+型バッファ層6上に、n−型ドリフト層10とは反対導電型のp−型ドリフト層8を積層し、その上にn−型ドリフト層10を積層しているので、従来のIGBTよりも耐圧が高い。p−型ドリフト層8の厚みは正孔の拡散長よりも薄く、正バイアスがかかると逆接合が簡単に潰れるためにオン電圧は低い。ドリフト層8と10の不純物濃度が高くて低抵抗であり、しかも層厚が薄いことから、オン電圧は低く抑えられる。
【0027】
図2において、横軸はオン電圧であり、縦軸はゲート電圧をオフしてからトランジスタを流れる電流が実際にオフされるまで時間を示す。図中の丸印は図1のIGBTの測定結果を示し、四角と三角は図22のIGBT(従来のIGBT)の測定結果を示す。
従来に比して、同じオン電圧であれば応答時間を高速化することができ、同じ応答時間であればオン電圧を低くできることが確認される。ターンオフ時にp−型ドリフト層8がキャリアを効果的に排出するのに寄与していることが確認される。
【0028】
図3は、図1のIGBTの製造過程を経時的に示している。(A)の状態までは通常の工程を経て製造されるので図示を省略している。(A)の段階で、n−型ドリフト層10よりも表面側の構造が完成している。n−型ドリフト層10はn+型半導体基板24上に形成されている。
(B)の段階では、n+型半導体基板24の裏面を研磨して所定の厚みとなるまで薄くする。(C)の段階では裏面からボロンイオンを高エネルギで打ち込んで、n−型ドリフト層10の下面にp−型ドリフト層8を形成する。(D)では、裏面からBF2イオンを低エネルギで打ち込んで、n+型半導体基板24の裏面側をp+型4に変える。(E)ではp+型4の下面にドレイン電極2を完成する。これによって図1のIGBTが完成する。反対導電型層(p−型ドリフト層8)は面的に広がっているために、ボロンイオンを一様に注入することで製造でき、安価に簡便に製造することができる。
【0029】
図4は第2実施例のIGBTを示し、反対導電型層(p−型ドリフト層8)が下側のn−型ドリフト層10xと上側のn−型ドリフト層10yの中間に追加されている。この場合にも、逆バイアスがかけられると下側のn−型ドリフト層10xとp−型ドリフト層8の接合面からp−型ドリフト層8に空乏層が大きく伸び、高い耐圧が得られる。また導通時には正孔がp−型ドリフト層8に集中しており、ターンオフ時にその正孔がすみやかにエミッタ側に抜け出るために、スイッチング時間が短くなるという利点が得られる。
【0030】
図5は第3実施例を示し、n+型バッファ層6上に、p−型ドリフト層8とn−型ドリフト層10の互層を2回繰り返したIGBTを示している。図3では、下側の互層を添字aで示し、上側の互層を添字bで示している。互層の繰返し回数は2回に限られず、3回以上であっても良い。
反対導電型のドリフト層を複数枚用いると、均質な空乏層を広い範囲に亘って形成することができ、一層効果的に耐圧が高められる。
反対導電型の複数のドリフト層8a、8bは、トレンチゲート22の最深部よりも深い領域に形成されており、IGBTの基本構成を維持している。
【0031】
図6は第4実施例を示し、バッファ層6αの不純物濃度が厚み方向に勾配を持っている。この場合、n型不純物濃度が下側で濃く、上側で薄い。この場合ターンオフ時に空乏層がスムースに広がり、ターンオフ時に生じる逆起電力を低くおさえることができる。なおスムースに広がるとは、突発的に広がることに対比するものであって、スイッチング速度を遅らせるほどゆっくりと空乏層が広がるということではない。スムースかつ迅速に空乏層が広がるために、スイッチング速度を遅らせないようにしながら逆起電力を低くおさえることができる。
【0032】
図7は第5実施例を示し、バッファ層6αのみならず、p−型ドリフト層8αとn−型ドリフト層10αも厚み方向に濃度勾配を有する場合を示している。この場合p型基板4αまでもが濃度勾配を持っている。厚み方向の濃度分布を調整することによって、耐圧を維持しながらオン電圧を下げたり、空乏層の広がる速度を調整してターンオフ時に生じる逆起電力の大きさを調整したり、スイッチング時間を調整することができ、半導体素子の特性が調整しやすくなる。例えば、n−型ドリフト層10αの厚み方向の一部に不純物の高濃度領域を作ると、耐圧を維持しながらオン電圧を下げることができ、p−型ドリフト層8αの不純物濃度を上に行くほど濃くすると、ターンオフ時に空乏層の広がる速度を遅らせて発生する逆起電力の大きさを抑制することができる。
【0033】
図8は第6実施例を示し、p−型ドリフト層が、低濃度層8yと中濃度層8xが水平方向に交互に繰返されて形成されている。ターンオフ時には低濃度層8yを通過してキャリアが短時間に排除され、スイッチング時間は短い。逆バイアスがかかっている間は、中濃度層8xからの空乏層が広い範囲に広がり、低濃度層8yで耐圧が低下するのを防止する。
【0034】
図9は第7実施例を示し、p−型ドリフト層8βが水平方向に周期的に厚みを変えている。ターンオフ時には厚みの薄い領域を通過してキャリアが短時間に排除され、スイッチング時間は短い。逆バイアスがかかっている間は、厚みの厚いp−型ドリフト層8βからの空乏層が広い範囲に広がり、薄い部分で耐圧が低下するのを防止する。
【0035】
図10は第8実施例を示し、n−型ドリフト層10x、10yの中間に位置するp−型ドリフト層8γが水平方向に周期的に厚みを変えている。図9の第7実施例とほぼ同様の作用を得ることができる。
【0036】
図9と図10に示した、水平方向に周期的に厚みを変えるp−型ドリフト層8β、8γは、下記のようにして製作することができる。最初に厚い部分の厚みを持つp−層を面方向に一様に作成し、次いで厚みを薄くしたい部分にプロトン(H+)、重水素、あるいは3重水素イオンを注入し、次いで300〜550℃に加熱して熱処理してドナー化することによってp−層の一部をn型化することによってp−層の厚みを薄くする。あるいは、厚い部分の厚みを持つp−層を面方向に一様に作成し、次いで厚みを薄くしたい部分にリンイオン注入して不純物をドナー化してp−層の一部をn型化することによってp−層の厚みを薄くする。イオンを注入して不純物をドナー化する位置を周期的に選択することによって、水平方向に周期的に厚みを変えるp−型ドリフト層8β、8γが製造される。
【0037】
図11は第9実施例を示している。前記したように図示の断面構造は紙面左右方向に繰り返され、ドリフト層10内に複数のトレンチゲートが伸びてきている。そしてそのトレンチゲートとトレンチゲートの間隙の下方位置にのみ、反対導電型のドリフト層8dが付加されている。トレンチゲート22の直下位置には、反対導電型のドリフト層8dは存在しない。
反対導電型のドリフト層8dは必ずしも全面的に広がっている必要はなく、必要な部分に局所的に存在していても良い。
【0038】
図12は第10実施例を示している。この実施例では、p+型半導体基板4に周期的なピッチでn+領域3が形成されている。先に説明したように、図12の構造は紙面垂直方向に連続しており、n+領域3はストライプ状に伸びている。また、図12の断面構造は紙面左右方向に繰り返され、n+領域3は、トレンチゲートの直下位置に図示左右方向に規則的な周期で複数本が形成されている。
n+領域3は、このIGBTの導通時に、p+型半導体基板4から過剰な正孔が注入されるのを禁止する作用を果たすために、n+領域3を設けることによってIGBTが確実にターンオフするようにできる。スイッチング時間を短くするのにも有効である。n+領域3はストライプ状に伸び代りに、p+型半導体基板4内で周期的なピッチでアイランド状に分散配置されていてもよい。
【0039】
図13は第11実施例を示す。n+領域3はp+型半導体基板4を貫通していなくてもよい。
【0040】
図14は第12実施例を示す。この実施例では、トレンチゲートが深く、ゲート電極22aと絶縁膜20aが、p−型ドリフト層8に達している。
トレンチゲートがp−型ドリフト層8に達していると、IGBTの導通時には、n−型ドリフト層10のアキュムレーション領域を電流が流れるために抵抗が下がってオン電圧を下降する。ターンオフ時には、ゲート電極22aがオフゲートとして機能し、p−型ドリフト層8内の正孔を迅速に引き抜くことができ、確実にターンオフさせることができる。また、スイッチング時間も短くなる。
【0041】
図15は第13実施例を示す。この実施例では、ターンオンさせるゲート電極22とは別に、オフゲート電極26が形成されている。オフゲート電極26は、n−型ドリフト層10、p−型ドリフト層8、n+型バッファ層6を貫通してp型半導体基板4に達している。オフゲート電極26は、絶縁層27,28で絶縁されている。
オフゲート電極26は、ターンオフ時に、p−型ドリフト層8内の正孔を迅速に引き抜くことができ、確実にターンオフさせることができる。また、スイッチング時間を短くする。
【0042】
図16は第14実施例を示す。この実施例では、オフゲート電極26aが短く、p−型ドリフト層8でとどまっている。このオフゲート電極26aは、ターンオフ時に、p−型ドリフト層8内の正孔を迅速に引き抜くことができ、確実にターンオフさせることができる。また、スイッチング時間を短くする。
【0043】
図17は第15実施例を示す。この実施例では、p−型ボディ層12を貫通してn−型ドリフト層10に達するp+型ホール注入領域52が形成されている。p+型ホール注入領域52の上面には注入ゲート電極50が形成されている。この場合、ターンオン時には、注入ゲート電極50とp+型ホール注入領域52からn−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8にホールを注入して活発な伝導度変調現象を発生させる。この場合、n+型バッファ層6の下面にp+型層は要らない。n+型層6の下面には直接にドレイン電極2が形成されている。
図17の半導体装置は、表面注入型IGBTであり、図1に示したIGBTと同様の特性を持つ。
【0044】
図18は第16実施例を示す。この実施例では、ゲート電極が存在しない。代りに、n+型エミッタ領域56の両サイドに、p−型ボディ層12を貫通してn−型ドリフト層10に達するp+型ホール注入領域59が形成されている。p+型ホール注入領域59の上面にはゲート電極58が形成され、n+型エミッタ領域56の上面にはエミッタ電極54が形成されている。この場合にも、n+型層6の下面にp+型層は設けられていない。n+型層6の下面には直接にドレイン電極2が形成されている。
この場合、ゲート電極58に正電圧が印加されると、p+型ホール注入領域59からn−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8にホールを注入して活発な伝導度変調現象を発生させる。このためにオン電圧は低い。
図18の半導体装置は、表面から正孔を注入してオンするBSIT(Bipolar-mode Static Induction Transistor)として作動する。
【0045】
図19は第17実施例を示す。この実施例は、本発明をサイリスタに具現化したものである。p−型ドリフト層38は正孔の拡散長よりも薄く、サイリスタの順方向に電圧が印加されると、逆接合面が簡単に潰れるためにサイリスタとして作動する。この場合にも、p+型ホール注入領域44から正孔が注入されると、活発な伝導度変調が生じてオンし、低いオン電圧(ないしオン抵抗)を実現する。活発な伝導度変調を利用してオン電圧を低くするので、n−型ドリフト層40とp−型ドリフト層38の不純物濃度を下げることができ、オフ時には高い耐圧を実現する。逆バイアス時には、n+型層36とp−型ドリフト層38の接合面と、n−型ドリフト層40とp−型層42の接合面から空乏層が広く伸び、これもまた耐圧を高める。
【0046】
図20は第18実施例を示す。この実施例は、本発明をダイオードに具現化したものである。p−型ドリフト層8は正孔の拡散長よりも薄く、ダイオードの順方向に電圧が印加されると、逆接合面が簡単に潰れるためにダイオードとして作動する。この場合にも、n−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8で活発な伝導度変調が生じるために順方向の電圧降下は小さい。活発な伝導度変調を利用して順方向の抵抗を低くするので、n−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8の不純物濃度を下げることができ、オフ時には高い耐圧を実現する。逆バイアス時には、n+型層6とp−型層8の接合面と、n−型層10とp−型層1の接合面から空乏層が広く伸び、これもまた耐圧を高める。
【0047】
図21は第19実施例を示す。この実施例も、本発明をダイオードに具現化したものである。p−型ドリフト層8は正孔の拡散長よりも薄く、ダイオードの順方向に電圧が印加されると、逆接合面が簡単に潰れるためにダイオードとして作動する。この場合にも、n−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8で活発な伝導度変調が生じるために順方向の電圧降下は小さい。活発な伝導度変調を利用して順方向の抵抗を低くするので、n−型ドリフト層10とp−型ドリフト層8の不純物濃度を下げることができ、オフ時には高い耐圧を実現する。逆バイアス時には、n+型層6とp−型層8の接合面から空乏層が広く伸び、これもまた耐圧を高める。
【0048】
上記では、本発明をIGBTや、サイリスタや、ダイオオード等に具現化した例を示したが、通常のバイポーラトランジスタに具現化することもできる。また上記の実施例で、導電型のpとnを完全に入れ替えることができる。上記の多くの実施例ではトレンチゲート構造を採用しているが、プレーナゲート構造の場合にも適用することができる。n−型ドリフト層10やp−型ドリフト層8はエピタキシャル層を利用して形成することが好ましいが、その他の結晶成長技術を用いることができる。また導電型の付与にあたっては様々なイオン注入技術が利用できる。
【0049】
【発明の効果】
請求項1のバイポーラ型半導体装置は、図1等に例示されるように、面的に広がる反対導電型のドリフト層8が積層されていることから空乏層が広く広がり、オフ時の耐圧を高くすることができる。このために、耐圧を損ねることなくドリフト層の不純物濃度を上げて抵抗を下げることができる。この半導体装置によると、電力ロスを抑制しながら高電圧の電力を制御することができる。
ドリフト層内の反対導電型層の厚みが、その反対導電型のキャリアの拡散長よりも薄いと、反対導電型層を挿入することで形成される逆接合面が正バイアスによって簡単に潰れるために、反対導電型層を挿入することによって生じるはずの悪影響が実際的には生じないようにすることができる。
図1に例示されているように、下面に反対導電型層4が形成されているためにバッファ層となる層6の上にドリフト層8、10が積層されていると、裏面からキャリアを注入して伝導度変調現象を生じさせる半導体装置の伝導度変調現象を活発化させることができ、オン電圧を降下させて耐圧を上げることができる。
図1に例示されているように、バッファ層6上に反対導電型のドリフト層8が積層されていると、空乏層が広く広がり、効果が高い。
図4に例示されているように、ドリフト層10x、10yの中間に反対導電型のドリフト層8が積層されていると、ターンオフ時にキャリアが抜けやすく、確実のターンオフするともにスイッチング時間が短くなる。
図5に例示されるように、ドリフト層内に複数層の反対導電型の層8a、8bが付加されていると、オン電圧を降下させて耐圧を上げることができてスイッチング時間を短くすることができる。
ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきているバイポーラ型半導体装置の場合、そのトレンチゲートの最深部よりも深い位置に反対導電型層が付加されていると、ドリフト層の抵抗を低くできることから、トレンチゲートに沿って流れる電流をドリフト層の広範囲に広げて流すことができ、オン抵抗が効果的に低くなる。
ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきているバイポーラ型半導体装置の場合、そのトレンチゲートの最深部よりも浅い位置に反対導電型層が付加されていると、導通時には、トレンチゲートに向合うドリフト層にキャリアが集中して流れるためにオン電圧が低く抑えられる。ターンオフ時には、確実にターンオフすることができ、スイッチング時間を短くすることもできる。
反導電型層の厚みが均一に維持されて面的に広がっていてもよいし、厚みが周期的に変化しながら面的に広がっていてもよい。均一な厚みの層は作成しやすく、生産コストも安価ですむ。面内で厚み分布を持たせる方式では、その分布を選択することで様々に特性に調整し易い
反導電型層内の不純物濃度は厚み方向に均一であってもよいが、厚み方向に変化していてもよい。濃度分布を与えることで、オン電圧をさらに下げたり、ターンオフ時に発生する逆起電力の大きさを抑制するといったことが可能となる。さらに、反導電型層を含むドレイン層内の不純物濃度が厚み方向に変化していてもよい。反対電型層以外のドレイン層に濃度分布を与えることで、ターンオフ時に発生する逆起電力の大きさを抑制することが可能となる。あるいは、バッファ層に濃度分布を与えることによっても、ターンオフ時に発生する逆起電力の大きさを抑制することが可能となる。
本発明は表裏両面に電極を持つIGBTに具現化するができる。この場合には図1に例示されるように、ドレイン電極2、高濃度第1導電型半導体基板4、高濃度第2導電型バッファ層6、第1導電型ドリフト層8、第2導電型ドリフト層10、第1導電型ボディ層12の順で積層される。第1導電型ボディ層12内に第2導電型エミッタ領域18が形成され、第2導電型ドリフト層10と第2導電型エミッタ領域18の間の第1導電型ボディ層12に対して、絶縁層20を挟んで向かい合う位置にゲート電極22が形成される。ゲート電極はトレンチゲート型でも、プレーナゲート型であっても良い。導電型は全く逆にすることもでき、第1導電型がp型であれば第2導電型はn型であり、第1導電型がn型であれば第2導電型はp型である。
図4に例示するように、高濃度第2導電型バッファ層6と第1導電型ドリフト層8の間に、第2導電型低濃度ドリフト層10xを追加してもよい。あるいは、図5に例示するように、第1導電型ドリフト層8と第2導電型ドリフト層10の積層構造を複数回繰り返して積層しても良い。上記のIGBTは、従来のIGBTよりも耐圧が高く、オン電圧が低く、電力ロスを減少させる。
前記したIGBTの場合、図12と図13に例示するように、高濃度第1導電型半導体基板4内に、ストライプ状またはアイランド状に第2導電型領域3が分散配置されていると、高濃度第1導電型半導体基板4からバッファ層6を介してドリフト層に注入されるキャリア量が抑制され、ターンオフ時にすみやかにキャリアが抜けられるようすることができる。確実にターンオフでき、ターンオフ時間を短くすることができる。
本発明は表面からキャリアを注入してドリフト層内で伝導度変調現象を発生させるIGBTにも具現化することができる。この場合には、図17に例示するように、ドレイン電極2、第2導電型半導体基板6、第1導電型ドリフト層8、第2導電型ドリフト層10、第1導電型ボディ層12の順で積層され、第1導電型ボディ層12内に第2導電型エミッタ領域18が形成され、第2導電型ドリフト層10と第2導電型エミッタ領域18の間の第1導電型ボディ層12に対して絶縁層を挟んで向かい合うゲート電極22が形成され、第1導電型ボディ層12を貫通して第2導電型ドリフト層10に達する高濃度第1導電型領域52が形成され、その高濃度第1導電型領域52に注入ゲート電極50が接続されている。ゲート電極はトレンチゲート型でも、プレーナゲート型であっても良い。
上記のIGBTの場合、ゲート電極に電圧が印加されると、キャリアが注入ゲート電極から注入されてドリフト層内で伝導度変調現象が生じて低いオン電圧が実現される。
本発明は表面からキャリアを注入してドリフト層内で伝導度変調現象を発生させる静電誘導トランジスタにも具現化するができる。この場合、図18に例示するように、ドレイン電極2、第2導電型半導体基板6、第1導電型ドリフト層8、第2導電型ドリフト層10、第1導電型ボディ層12の順で積層され、第1導電型ボディ層12内に第2導電型エミッタ領域56が形成され、そのエミッタ領域56を挟む両サイドに第1導電型ボディ層12を貫通して第2導電型ドリフト層10に達する高濃度第1導電型領域59が形成され、その高濃度第1導電型領域59にゲート電極58が接続されている。この場合には、ゲート電極に電圧が印加されると、そのゲートからキャリアが注入されてドリフト層内で伝導度変調現象が生じて低いオン電圧が実現される。
本発明はダイオードにも具現化するができる。この場合、図20,21に例示するように、ダイオードを構成する第1導電型層と第2導電型層の積層構造において、第2導電型層内に第1導電型の薄層8を挿入する。その挿入層8の厚みは第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄くする。この場合、第2導電型層内に第1導電型の薄層8が挿入されて一見すると4層サイリスタ構造となっているのに、第1導電型層8が薄いために電流が順方向に流れる場合には逆接合が簡単に潰れてダイオードとして作用する。このダイオードは耐圧が高くて順方向抵抗が低い。
本発明はサイリスタにも具現化するができる。この場合、図19に例示するように、サイリスタを構成する第1導電型基板34、第2導電型層36、第2導電型ドリフト層40、第1導電型層42、第2導電型層46の積層において、第2導電型ドリフト層40内に第1導電型の薄層38を挿入する。その第1導電型の薄層38の厚みが第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄い。この場合にも、第2導電型ドリフト層内の第1導電型層38は薄いために逆接合が簡単に潰れてサイリスタとして作用する。このサイリスタは耐圧が高くてオン電圧が低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の半導体装置の断面を示す。
【図2】 第1実施例の半導体装置のオン電圧とスイッチング時間を従来装置と対比して示す。
【図3】 第1実施例の半導体装置の製造過程を経時的に示す。
【図4】 第2実施例の半導体装置の断面を示す。
【図5】 第3実施例の半導体装置の断面を示す。
【図6】 第4実施例の半導体装置の断面を示す。
【図7】 第5実施例の半導体装置の断面を示す。
【図8】 第6実施例の半導体装置の断面を示す。
【図9】 第7実施例の半導体装置の断面を示す。
【図10】 第8実施例の半導体装置の断面を示す。
【図11】 第9実施例の半導体装置の断面を示す。
【図12】 第10実施例の半導体装置の断面を示す。
【図13】 第11実施例の半導体装置の断面を示す。
【図14】 第12実施例の半導体装置の断面を示す。
【図15】 第13実施例の半導体装置の断面を示す。
【図16】 第14実施例の半導体装置の断面を示す。
【図17】 第15実施例の半導体装置の断面を示す。
【図18】 第16実施例の半導体装置の断面を示す。
【図19】 第17実施例の半導体装置の断面を示す。
【図20】 第18実施例の半導体装置の断面を示す。
【図21】 第19実施例の半導体装置の断面を示す。
【図22】 従来の半導体装置の断面を示す。
【符号の説明】
2:ドレイン電極
4:p+型半導体基板(高濃度第1導電型半導体基板)
6:n+型バッファ層(高濃度第2導電型バッファ層)
8:p−型ドリフト層(第1導電型ドリフト層:反対導電側ドリフト層)
10:n−型ドリフト層(第2導電型ドリフト層)
12:p−型ボディ層 (第1導電型ボディ層)
14:p+型ボディコンタクト領域
16:エミッタ電極16
18:n+型エミッタ領域(第2導電型エミッタ領域)
20:絶縁層
22:トレンチゲート
Claims (19)
- ドリフト層内で伝導度変調現象が生じて導通するバイポーラ型半導体装置のそのドリフト層内に、ドリフト層とは反対導電型の面的に広がる層を付加したことを特徴とするバイポーラ型半導体装置。
- 前記反対導電型層の厚みが、その反対導電型のキャリアの拡散長よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記ドリフト層がバッファ層上に積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反対導電型層が前記バッファ層上に積層されていることを特徴とする請求項3に記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反対導電型層が前記ドリフト層の中間高さに形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記ドリフト層内に複数層の前記反対導電型層が付加されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきており、そのトレンチゲートの最深部よりも深い位置に前記反対導電型層が付加されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記ドリフト層内にトレンチゲートが伸びてきており、そのトレンチゲートの最深部よりも浅い位置に前記反対導電型層が付加されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反導電型層の厚みが均一で面的に広がっていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反導電型の層の厚みが周期的に変化しながら面的に広がっていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反導電型層内の不純物濃度が厚み方向に均一であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反導電型層内の不純物濃度が厚み方向に変化していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- 前記反導電型層を含むドレイン層内の不純物濃度が厚み方向に変化していることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のバイポーラ型半導体装置。
- ドレイン電極、高濃度第1導電型半導体基板、高濃度第2導電型バッファ層、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層され、第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、第2導電型ドリフト層と第2導電型エミッタ領域の間の第1導電型ボディ層に対して絶縁層を挟んで向かい合うゲート電極を有する絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ。
- 前記高濃度第1導電型半導体基板内に、ストライプ状またはアイランド状に第2導電型領域が分散配置されていることを特徴とする請求項14に記載のバイポーラトランジスタ。
- ドレイン電極、第2導電型半導体基板、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層され、第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、第2導電型ドリフト層と第2導電型エミッタ領域の間の第1導電型ボディ層に対して絶縁層を挟んで向かい合うゲート電極が形成され、第1導電型ボディ層を貫通して第2導電型ドリフト層に達する高濃度第1導電型領域が形成され、その高濃度第1導電型領域に注入ゲート電極が接続されている表面注入型IGBT。
- ドレイン電極、第2導電型半導体基板、第1導電型ドリフト層、第2導電型ドリフト層、第1導電型ボディ層の順で積層され、第1導電型ボディ層内に第2導電型エミッタ領域が形成され、そのエミッタ領域を挟む両サイドに第1導電型ボディ層を貫通して第2導電型ドリフト層に達する高濃度第1導電型領域が形成され、その高濃度第1導電型領域にゲート電極が接続されているBSIT。
- 第1導電型層と第2導電型層が積層されているダイオードであり、第2導電型層内に第1導電型の薄層が挿入されており、その厚みが第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄いことを特徴とするダイオード。
- 第1導電型基板、第2導電型層、第2導電型ドリフト層、第1導電型層、第2導電型層が積層されたサイリスタであり、その第2導電型ドリフト層内に第1導電型の薄層が挿入されており、その厚みが第1導電型のキャリアの拡散長よりも薄いことを特徴とするサイリスタ。
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