JP3844267B2 - 鋼線の製造方法 - Google Patents

鋼線の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3844267B2
JP3844267B2 JP13138797A JP13138797A JP3844267B2 JP 3844267 B2 JP3844267 B2 JP 3844267B2 JP 13138797 A JP13138797 A JP 13138797A JP 13138797 A JP13138797 A JP 13138797A JP 3844267 B2 JP3844267 B2 JP 3844267B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel wire
wire
twist
diameter
die
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP13138797A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10325089A (ja
Inventor
義和 金子
直彦 尾花
益啓 藤田
英樹 増渕
敏行 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Bridgestone Corp
Original Assignee
Bridgestone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Bridgestone Corp filed Critical Bridgestone Corp
Priority to JP13138797A priority Critical patent/JP3844267B2/ja
Priority to ES98921721T priority patent/ES2310007T3/es
Priority to EP98921721A priority patent/EP1013819B1/en
Priority to PCT/JP1998/002198 priority patent/WO1998053134A1/ja
Priority to US09/424,300 priority patent/US6823706B1/en
Priority to DE69839700T priority patent/DE69839700D1/de
Publication of JPH10325089A publication Critical patent/JPH10325089A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3844267B2 publication Critical patent/JP3844267B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • DTEXTILES; PAPER
    • D07ROPES; CABLES OTHER THAN ELECTRIC
    • D07BROPES OR CABLES IN GENERAL
    • D07B1/00Constructional features of ropes or cables
    • D07B1/06Ropes or cables built-up from metal wires, e.g. of section wires around a hemp core
    • D07B1/0606Reinforcing cords for rubber or plastic articles
    • D07B1/066Reinforcing cords for rubber or plastic articles the wires being made from special alloy or special steel composition
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B21MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21CMANUFACTURE OF METAL SHEETS, WIRE, RODS, TUBES OR PROFILES, OTHERWISE THAN BY ROLLING; AUXILIARY OPERATIONS USED IN CONNECTION WITH METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL
    • B21C1/00Manufacture of metal sheets, metal wire, metal rods, metal tubes by drawing
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B21MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21CMANUFACTURE OF METAL SHEETS, WIRE, RODS, TUBES OR PROFILES, OTHERWISE THAN BY ROLLING; AUXILIARY OPERATIONS USED IN CONNECTION WITH METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL
    • B21C37/00Manufacture of metal sheets, bars, wire, tubes or like semi-manufactured products, not otherwise provided for; Manufacture of tubes of special shape
    • B21C37/04Manufacture of metal sheets, bars, wire, tubes or like semi-manufactured products, not otherwise provided for; Manufacture of tubes of special shape of bars or wire
    • B21C37/045Manufacture of wire or bars with particular section or properties
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D8/00Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment
    • C21D8/06Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of rods or wires
    • DTEXTILES; PAPER
    • D07ROPES; CABLES OTHER THAN ELECTRIC
    • D07BROPES OR CABLES IN GENERAL
    • D07B2205/00Rope or cable materials
    • D07B2205/30Inorganic materials
    • D07B2205/3021Metals
    • D07B2205/3025Steel
    • D07B2205/3046Steel characterised by the carbon content
    • D07B2205/3053Steel characterised by the carbon content having a medium carbon content, e.g. greater than 0,5 percent and lower than 0.8 percent respectively HT wires
    • DTEXTILES; PAPER
    • D07ROPES; CABLES OTHER THAN ELECTRIC
    • D07BROPES OR CABLES IN GENERAL
    • D07B2205/00Rope or cable materials
    • D07B2205/30Inorganic materials
    • D07B2205/3021Metals
    • D07B2205/3025Steel
    • D07B2205/3046Steel characterised by the carbon content
    • D07B2205/3057Steel characterised by the carbon content having a high carbon content, e.g. greater than 0,8 percent respectively SHT or UHT wires
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10TTECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER US CLASSIFICATION
    • Y10T428/00Stock material or miscellaneous articles
    • Y10T428/12All metal or with adjacent metals
    • Y10T428/12431Foil or filament smaller than 6 mils

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Metal Extraction Processes (AREA)
  • Ropes Or Cables (AREA)
  • Tyre Moulding (AREA)
  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム物品の補強材等に用いられる、延性に優れた高強度鋼線およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スチールラジアルタイヤ、高圧ホース等のゴム物品の補強に用いられる鋼線は、0.70から0.90重量%程度の炭素を含む高炭素鋼材を所定の中間線径まで伸線して熱処理と黄銅めっき処理とを施して高炭素鋼線材とし、さらに、この高炭素鋼線材を最終線径まで伸線することにより製造されている。この鋼線をゴム物品の補強に用いる場合には、単線、あるいは撚合わせてスチールコードを形成したものを未加硫ゴム中に埋設し、これを加熱してゴムの加硫及び鋼線とゴムとの接着が行われる。
【0003】
近年、省エネ、省資源に対する要請の高まりを背景として、より高強度な鋼線の発現が望まれている。上記のような製造方法により高強度な鋼線を製造するためには、鋼線材に施す伸線加工量を増加する必要がある。ところが、伸線加工量を増加すると鋼線の延性が低下し、製造中の断線あるいは使用時の耐久性の低下等の問題が生じ易くなる。そして、可能な伸線加工量、すなわち達成可能な強度に対しては、特に表層部の延性低下が支配的要因となることがある。これは、鋼線の内部よりも表層部に伸線加工による歪みが集中し易く、内部よりも表層部の方が先に強加工に堪えなくなるためである。さらに、ダイスとの摩擦による発熱による時効硬化や潤滑不良も加わって、表層部の延性低下を助長する。そこで、このような延性の低下の問題を解決すべく、伸線技術についての改良が行われている。
【0004】
伸線技術の改良手段のひとつとして、伸線中の発熱を抑制し、時効硬化による鋼線の延性低下を抑制する技術がある。例えば、特開平8−24938号公報には、最終ダイスの摩擦係数を規制しつつ減面率を2〜11%としたスキンパス伸線を施すことにより最終ダイスにおける発熱を抑制し、破壊に到るまでに与えることのできる一方向捻り変形量が大きい高強度鋼線の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特開平8−218282号公報には、一方向捻り後、逆方向捻りを与える捻回−トルク試験でのトルクの低下率が7%以内の範囲にある高強度鋼線が開示されており、その製造方法として、▲1▼ダイスのベアリング長さを短めにして引き抜き抵抗を下げ、▲2▼最終引き抜きにはダブルダイスを用いてスキンパス伸線とし、▲3▼伸線下流の数枚のダイスとして焼結ダイヤモンドニブのものを用いて引き抜き力を低減し、▲4▼潤滑液温度を低く保持する伸線方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような伸線方法により時効硬化による延性低下の少ない鋼線を製造しても、表層部の歪み集中については本質的に改善されるものではなく、減面率を過小にした場合、表層部の歪み集中についてはかえって悪化する場合もある。このため、伸線加工直後の鋼線の延性は改善されるものの、撚線等の加工を加えたとき、あるいはゴム中に埋設後の加熱により時効硬化が進行したときの延性の低下がかえって大きくなる場合がある。
【0007】
また、従来、鋼線の延性の試験方法として、鋼線が破断するまでに加えることのできる一方向の捻り量である破断捻回値の大小で評価する方法、あるいは、破断捻回値の大小と破断面の形態とを考慮して延性の優劣を判断する方法等が採用されていた。また、特開平8−218282号公報に開示されている発明においては、一方向に所定回数捻った後、逆方向に捻り返して鋼線が破断するまでの捻回−トルク曲線により延性の優劣を判定する方法が採用されている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の試験において良好な特性を示す鋼線は、試験に供した時点での延性は良好であるものの、鋼線に撚線等の加工を加えた後、あるいはさらに加熱により時効硬化した後の延性が良好であるとは限らず、これを補強材として使用したゴム物品の耐久性の向上が保証されるものではないという問題がある。
【0009】
また、ゴム物品補強用のスチールコードを製造するときに鋼線に施される加工は、鋼線に与えられる最小曲率半径にして鋼線直径の約10倍から150倍程度の範囲であるが、この中でも、特に下記に例示するようなスチールコードの製造においては、最小曲率半径が素線直径の10倍から60倍程度の厳しい形付けとなる。このため、従来の鋼線を素線として用いた場合、形付けに伴う延性の低下が特に著しく、ゴム中での加熱による延性低下も大きいという問題点がある。
(1)素線の形付けを大きくしたいわゆるオープン構造のコード
(2)多角形の螺旋形付けあるいは波形付けを予めを施した素線を撚り合わせてなるコード
(3)波形付けした素線をコアとした層撚り構造のコード
【0010】
一方、高強度化に伴う延性の低下を抑制するための別の手段として、伸線加工によって導入される加工歪みの分布の均一化を図り、加工歪みが最大となる表層部の延性低下を抑制する技術が開示されている。例えば、特開平7−305285号公報には、▲1▼伸線加工歪みε(ε=2・1n(d/d)、d=伸線加工前の鋼線材の直径(mm)、d=ダイス通過後の鋼線の直径(mm)、ln=自然対数)が0.75未満の伸線加工で用いるダイスの減面率を(22.67ε+3)%から29%の範囲に、▲2▼εが0.75以上2.25以下の伸線加工で用いるダイスの減面率を20%から29%の範囲に、▲3▼εが2.25をこえる伸線加工で用いるダイスの減面率を(−6.22ε+43)%から(−5.56ε+32.5)%の範囲に調整して伸線することを特徴とする鋼線の製造方法が開示されている。
【0011】
このような製造方法によれば、表層部の実質的な加工歪みは抑制されるが、伸線加工中の発熱による時効硬化の抑制効果は不十分であり、伸線速度を増加すると、伸線加工時あるいは撚線加工時に断線が生じ易くなり、経済的な生産が困難であるという問題点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点をふまえ、撚線加工時においても断線し難い優れた延性を持ち、かつ撚線等の加工を加えても、あるいはさらに加熱により時効硬化しても延性の低下が少ない高強度鋼線と、それを経済的に製造する方法とを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは種々実験、検討の結果、前記課題を解決するためには、▲1▼鋼線の表層部の実質的な歪みを、特定の繰返し捻り試験値に基づき評価、規定すること、および▲2▼これを経済的に製造するためには、伸線加工によって導入される加工歪みの分布の均一化を図りつつも、最終ダイスの減面率を適性範囲とすることが極めて重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は下記の通りであり、請求項1から6に係る発明は、優れた延性を持ち、かつ撚線等の加工を加えても、あるいはさらに加熱により時効硬化しても延性の低下が少ない鋼線を経済的に製造する方法に関するものである。
【0015】
請求項1に係る発明は、0.70から0.90重量%の炭素を含有する高炭素鋼線材に熱処理と伸線加工を施して得られる直径が0.10から0.40mmの鋼線であり、引っ張り強さTS(N/mm2)が次式、
TS≧2250−1450 log D (1)
(式中、Dは鋼線の直径(mm)、logは常用対数を示す)で表される関係を満足し、
かつ、軸線が直線となるように保持した鋼線に、鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する量の捻りを加えてから元の状態に捻り戻すことを繰り返したときに、鋼線にクラックが発生するまで加えた捻り及び捻り戻しの総量である繰返し捻り試験値RT(回/100D)が、次式、
log RT≧2−0.001{TS−(2250−1450log D)}(2)
で表される関係を満足する鋼線を製造するにあたり、熱処理を施した高炭素鋼線材に、伸線加工歪みεを次式、
ε=2・ln(do/d) (4)
(式中、doは伸線加工前の鋼線材の直径(mm)、dはダイス通過後の鋼線の直径(mm)、lnは自然対数を示す)で表したときに、1)εが0.75未満の伸線加工で用いるダイスの減面率を(22.67ε+3)%から29%に、2)εが0.75以上2.25以下の伸線加工で用いるダイスの減面率を20%から29%に、3)εが2.25をこえる伸線加工で用いる最終ダイス以外のダイスの減面率を(−5.56ε+32.5)%から(−6.22ε+43)%に調整して湿式伸線加工を施し、4)最終ダイスの減面率を4%から(−8.3ε+40.6)%とし、5)最終ダイスにおけるεを3.0から4.3とすることを特徴とする鋼線の製造方法である。
【0016】
請求項2に係る発明は、上記鋼線の製造方法において、引っ張り強さが次式、
TS≧2750−1450 logD (3)
(式中、TS、Dおよびlogは前記のものと同じものを示す)で表される関係を満足するものである。
【0017】
請求項3に係る発明は、表層部への加工歪みの集中が少ない鋼線の製造方法であり、上記鋼線の製造方法において、鋼線の繰返し捻り試験値RTが、体積の10%に当たる表層部を除去したときの同鋼線の繰返し捻り試験値RTの60%以上の値を有するものである。
【0018】
請求項4に係る発明は、特にゴム物品の補強材として好適に使用される鋼線の製造方法であり、上記鋼線の製造方法において、最小曲率半径が鋼線の直径の10倍から60倍となるように形付けしてゴム中に埋設され、加熱により加硫した後にゴム中から取り出された上記鋼線の、一方向の捻りを破断するまで加えたときの捻り量(破断捻回値)が、20回/100D以上であるものである。
【0020】
請求項5に係る発明は、超高強度鋼線を経済的に製造することを可能にする鋼線の製造方法であり、上記鋼線の製造方法において、最終ダイスにおけるεを3.5から4.2とするものである。
【0021】
請求項6に係る発明は、上記鋼線の製造方法をさらに効果的にする発明であり、上記鋼線の製造方法において、最終ダイスでの伸線加工を施した後に張力を加えながら曲げ加工を施すものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において採用する上記繰返し捻り試験を具体的に説明する。この試験は、軸線が直線となるように保持した鋼線に、鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する量の捻りを繰り返し与え、鋼線にクラックを発生させる試験である。試験中の鋼線の軸線を直線に保持するためには、鋼線の軸線方向に軽く張力を掛けておく。この鋼線をまず所定回数N回捻り、この時点から逆方向に同量だけ捻り戻すことによりもとの状態に戻す。これを1サイクルとして繰り返し、鋼線にクラックを発生させる。ここで、所定回数Nとは鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する捻り回数であり、捻りに供される鋼線の長さをL(mm)、鋼線の直線をDmmとすれば、式N=3×(L/100D)で表される値である。
【0023】
また、繰返し捻り試験値RTとは、上記の試験において鋼線にクラックが発生するまでに加えられた捻り及び捻り戻しの総量を、長さ100D当たりの捻り回数で表した値であり、次のようにして求める。すなわち、N回の捻りと捻り戻しサイクルをn回繰返した次のサイクルで、Nf1回(Nf1≦N)捻った時点でクラックが発生したとすれば、繰返し捻り試験値RT(回/100D)は、次式、
RT=(2nN+Nf1)/(L/100D) (5a)
で表される。また、N回の捻りと捻り戻しサイクルをn回繰返した次のサイクルで、N回捻り、ここからNf2回(Nf2≦N)だけ捻り戻した時点でクラックが発生したとすれば、繰返し捻り試験値RT(回/100D)は、次式、
RT={(2n+1)N+Nf2)}/(L/100D) (5b)
で表される。
【0024】
上記繰返し捻り試験の好適条件は下記の通りである。
(1)捻りに供される鋼線の長さは、約50mmとする。
(2)鋼線の軸線方向に掛ける張力は、鋼線の直径が0.25mm以下のときは約1.0kgに、0.25mmを超えるときは約1.5kgとする。
(3)鋼線の捻り速度は、約30回/分とする。
(4)クラック発生の検出は、クラック発生に伴うアコースティックエミッション(AE)波を検出することにより行う。AE波は、固体が変形または破壊する際の歪みエネルギーの解放によって発生する弾性波である。これをAEセンサーを用いて電気信号としてとらえることにより、試験片が破断する以前の微小なクラック発生をも正確に検出することができ、精度よく評価することができる。
【0025】
本発明において、鋼線の延性の指標として前述した繰返し捻り試験値を採用したのは、繰返し捻り試験値の高い鋼線は、試験に供した時点での延性が高いのみならず、これに撚線等の加工を加えても、あるいは加熱により時効硬化させても延性の低下が小さいことを新規に知見したためである。
【0026】
一般に、鋼線の引っ張り強さが高いほど、あるいは鋼線の直径が大きいほど延性の確保が困難となる。このため、従来の鋼線は、次式、
TS≧2250−1450 log D (1)
および次式、
log RT≧2−0.001{TS−(2250−1450 log D)} (2)
を同時に満足するものではなかったが、本発明の鋼線は、これら両者を満足し、実際にゴム物品の補強材等として使用されるときも、高い強度と優れた延性を併せ持つものである。
【0027】
鋼線の強度については、引っ張り強さTS(N/mm )が次式、
TS≧2250−1450 log D (1)
を満足すればゴム物品の補強材として好適に使用することができるが、次式、
TS≧2500−1450 log D (6)
を満足することが好ましい。さらに強度を増して引っ張り強さTS(N/mm)が次式、
TS≧2750−1450 log D (3)
を満足するようにすれば、ゴム物品の軽量化に対して顕著な効果をもたらす。
【0028】
上記のような繰返し捻り試験値が高い鋼線とするためには、鋼線の表層部の延性が、伸線加工に伴う延性低下の少ない鋼線内部の延性に近いことが望ましい。この鋼線の表層部と内部の延性の比較は、鋼線の体積の約10%に当たる表層部を除去した鋼線の繰返し捻り試験値と、表層部を除去しない鋼線の繰返し捻り試験値とを比較することにより行うことができ、表層部を除去しない鋼線の繰返し捻り試験値が、表層部を除去した鋼線の繰返し捻り試験値の60%以上であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の鋼線は厳しい形付け加工を施してから加熱により時効硬化しても延性の低下が少ないため、先に例示したような、最小曲率半径が素線直径の10倍から60倍程度の厳しい形付けが素線に対して施されるスチールコードの素線としても好適に使用することができる。この場合には、あらかじめ最小曲率半径が鋼線の直径の10倍から60倍となるように形付けしてゴム中に埋設し、加熱により加硫した後にゴム中から取り出して従来の捻回試験を行ったときに、破断捻回値が、20回/100D以上であるものを使用することが好ましく、このようにすれば、ゴム中での鋼線の延性が確実に保証される。
【0030】
なお、本発明の鋼線をゴム物品の補強材として使用するときには、表面にゴム接着性の皮膜を設けることができる。ゴム接着性の皮膜を設ける手段としては、熱処理を施した鋼線材の表面に黄銅めっき層を形成してから伸線加工する等の、従来の手段を適用することができる。
【0031】
次に、本発明の鋼線の製造方法について説明する。
引っ張り強さTSと繰返し捻り試験値RTとが本発明に適合する鋼線を製造するためには、伸線加工に伴う鋼線表層部への加工歪みの集中を極力抑制することが肝要である。一般に、ダイスアプローチ角度が小さい程、あるいはダイスの減面率が大きいほど加工歪みの分布は均一となり、鋼線表層部への加工歪みの集中は緩和される。しかしながら、実際の操業においては、ダイス加工精度、潤滑性あるいは鋼線の破断強度等を考慮して伸線条件を設定することが必要である。すなわち、ダイスアプローチ角度を過小にあるいはダイスの減面率を過大に設定すると、良好な潤滑が困難となってかえって表層部の歪みが増加したり、断線が増加したりして、生産性良く経済的に製造することが困難となる。
【0032】
そこで、本発明の鋼線の製造方法においては、熱処理を施した高炭素綱線材を伸線加工して鋼線を製造するにあたり、伸線加工歪みεをε=2・ln(do/d)としたときに、最終ダイス以外のダイスについては、1)εが0.75未満の伸線加工で用いるダイスの減面率を(22.67ε+3)%から29%に、2)εが0.75以上2.25以下の伸線加工で用いるダイスの減面率を20%から29%に、3)εが2.25をこえる伸線加工で用いる最終ダイス以外のダイスの減面率を(−5.56ε+32.5)%から(−6.22ε+43)%に調整するとともに、4)最終ダイスについては、減面率を4%から(−8.3ε+40.6)%の範囲に調整し、5)最終ダイスにおけるεを3.0から4.3とする。すなわち、最終ダイス以外のダイスの減面率については特開平7−305285号公報に開示された条件を採用しつつも、最終ダイスの減面率については、同公報に開示された条件よりも低い範囲に調整することを要する。
【0033】
最終ダイスの減面率を特に上記の範囲としたのは次の理由による。通常の湿式連続伸線機においては、最終ダイス以外のダイスでの伸線は潤滑液中で行われるのに対し、最終ダイスを通過した鋼線は潤滑剤に浸漬されない。このため、最終ダイスの減面率を上流のダイスの減面率と同じ条件で設定すると、最終ダイス通過後の鋼線の温度が高くなって時効による延性低下が大きくなり、伸線速度の増加によってさらにそれが助長される。この問題を解決すべく、本発明者らは最終ダイスの伸線条件について実験、検討したところ、最終ダイスの減面率を4%から(−8.3ε+40.6)%の範囲とすることにより、鋼線表層部への加工歪みを適正範囲に収めつつ伸線時の時効による延性低下を緩和することができることを見出した。最終ダイスの減面率を4%未満とした場合は伸線直後の延性は良好になるが、その後に加熱したときの時効による延性劣化が大くなるため、下限値を4%とした。また、上限値を(−8.3ε+40.6)%としたのは、ε値の増加により鋼線の変形抵抗が増加したときでも加工に伴う発熱を有効に抑制し、鋼線の延性低下や潤滑の劣化による鋼線表層部の損傷を抑制するためである。このようにすることにより、伸線速度の増加あるいは超高強力鋼線の製造が従来よりも容易となる。
【0034】
総伸線加工量、すなわち最終ダイスにおけるε値は3.0から4.3とし、目標とする鋼線の強度に応じて適宜設定するが、εが3.5以上さらには4.0以上の強加工を必要とする超高強力鋼線の製造法として特に好適である。なお、最終ダイスにおけるε値の上限を4.3としたのは、4.3を超えると延性低下を抑制しきれなくなるためであり、好ましくは4.2を上限とする。
【0035】
また、鋼線の延性をさらに改善するために、伸線加工を施した後に張力を加えながら曲げ加工を施すことにより、表層部の加工歪みをさらに低減することができる。このようにすることにより、延性の改善と同時に表面残留応力も低減することができ、ゴム物品補強材として優れた耐久性を持つ鋼線を製造することができる。また、本発明の伸線条件にて伸線した鋼線は、十分な延性を有しているため、厳しい曲げ加工を施すときでも断線し難く、このような加工を容易に付加することができる。
【0036】
なお、ダイスの形状としては、鋼線材の伸線に一般的に使用されている形状が適用でき、例えばアプローチ角が8°から12°、ベアリング長さが0.3Dから0.6D程度のものが使用できる。また、ダイスの材質についても焼結ダイヤモンドダイス等に制限されるものではなく、安価な超硬合金ダイスも使用できる

【0037】
また、伸線加工に供する鋼線材としては、均一性が良好な高炭素鋼線材を用いることが好ましく、鋼線材表層部の脱炭を抑制しつつ、初析セメンタイト、初析フェライトあるいはベイナイト等の混在量が少ない均一なパーライト組織を形成するように熱処理することが好ましい。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づき説明する。
(実施例1,2、比較例1,2)
約0.82重量%の炭素を含有する直径が約5.5mmの高炭素鋼線材を、直径が約1.67mmとなるまで乾式伸線した。この鋼線材にパテンティング熱処理と黄銅めっきを施し、黄銅めっき鋼線材を製造した。この黄銅めっき鋼線材の金属組織はほぼ均一なパーライト組織であり、JIS G3510の引っ張り試験に基づく引っ張り強さTSは約1250N/mmであった。
【0039】
この黄銅めっき鋼線材を、2種類のパススケジュールと伸線後の曲げ加工の有無を組み合わせ、下記の表1に示す4種類の条件で伸線し、直径0.28mmの鋼線を製造した。用いた2種類のパススケジュールAおよびBの詳細を下記の表2に、各々のパススケジュールのεとダイス減面率との関係を図1に夫々示す。図1に示すように、パススケジュールAは本発明の鋼線の製造方法に適合するものである。また、パススケジュールBは各ダイスの減面率を低く設定して発熱を小さくした比較例である。
【0040】
なお、伸線にあたり、アプローチ角が約12°でベアリング長さが約0.5Dの超硬合金ダイスと、スリップ式の湿式連続伸線機を使用した。また、伸線加工後の曲げ加工は、図4に示す装置を用い、約2kgの張力を付加し、直径16mmのローラ9個、カミ量6mmで行った。
【0041】
【表1】
Figure 0003844267
【0042】
【表2】
Figure 0003844267
【0043】
おのおのの条件にて製造した鋼線の、引っ張り強さTS及び繰返し捻り試験値RTを測定した。測定条件は下記の通りである。
引っ張り強さTSは、JIS G3510の引張試験に準拠して測定した。
繰返し捻り試験値RTは、図5に示す装置を用いて行った。図5において、6は試験に供する鋼線1の一端を把持する回転側チャックであり、装置ベース12上に固定された駆動機構8により、把持した鋼線1の軸線回りに回転される。7は固定側チャックであり、鋼線1の他端を回転しないように把持する。固定側チャック7は、鋼線1の軸線方向に移動できるように装置ベース12上に支持されている。固定側チャック7の鋼線1とは反対側には、プーリー10を介して重り11をぶらさげたワイヤ9が接続されており、鋼線1に張力を掛けるようになっている。
【0044】
繰返し捻り試験値RTの測定にあたり、捻りに供される鋼線の長さが50mmとなるように、回転側チャック6と固定側チャック7との間の鋼線1の長さを調整し、鋼線1の端部を回転側チャック6および固定側チャック7で把持した。また、重り11は、重さが約1.5kgのものを用いた。鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する回転数Nは、式N=3×(L/100D)よりN=5.36であり、駆動機構8により、回転側チャック6を時計方向へ5.36回転させてから反時計方向へ5.36回転させて元の位置に戻すことを繰り返し、鋼線1に、鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する量の捻りを繰り返し与えた。なお、回転側チャック6の回転速度は、約30回/分とした。
【0045】
また、クラック発生の検出は、図5において綱線1の直下に配置したAEセンサー4により行った。また、AEセンサー4の上にはグリース5を盛りつけて鋼線1がグリース5中を貫通するようにし、AE波を効率よく検出できるようにした。なお、AEセンサーは、利得が約40dBのプリアンプを内蔵する周波数帯域90〜300kHzのものを用い、50kHzのハイパスフィルタ及び1000kHzのローパスフィルタを通して利得60dBのメインアンプに接続し、メインアンプ出力を記録計に表示させた。試験中のノイズに起因するメインアンプ出力は±数十μVであったのに対し、クラック発生時には±数百μVの出力が得られ、クラック発生の時点を明確に特定することができた。
得られた結果を下記の表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0003844267
【0047】
表3に示すように、実施例1及び2の鋼線は、比較例1及び2の鋼線と同様の引っ張り強さを有し、かつ比較例1及び2の鋼線に比べ大幅に高い繰返し捻り試験値を有していた。また、伸線後に曲げ加工を施した実施例2の鋼線は、実施例1の鋼線よりもさらに高い繰返し捻り試験値を示した。各々の鋼線の引っ張り強さと繰返し捻り試験値との関係を、後述する実施例3及び比較例3、4の結果と共に図3に示す。図3に示すように、実施例1及び2の鋼線は本発明に規定する繰返し捻り試験値を満たすが、比較例1及び2の鋼線はこれを満たすものではない。
【0048】
さらに、鋼線の加工歪みの分布状態を評価するため、鋼線の表層部を硝酸にて溶解除去し、表層部除去体積と繰返し捻回試験値RTとの関係を調べた。その結果を下記の表4に示す。表4に示すように、実施例1及び2の鋼線は、鋼線の表層部を除去しないとき(表層部除去体積比0%)の繰返し捻り試験値が、体積の10%に当たる表層部を除去したときの繰返し捻り試験値の60%以上であり、その中でも、伸線後に曲げ加工を施した実施例2の鋼線は特に高い値であった。一方、比較例1及び2の鋼線の表層部を除去しないとき(表層部除去体積比0%)の繰返し捻り試験値RTは、体積の10%に当たる表層部を除去したときの繰返し捻り試験値RTの60%を大幅に下回る値であった。
【0049】
【表4】
Figure 0003844267
*( )は表層部除去体積比10%を100とした指数である。
【0050】
また、表層部除去体積と、溶解により現れた表層部のフェライトの211面X線回折ピーク半価幅との関係を調査し、フェライトの実質歪みの分布状態を比較評価した。その結果を下記の表5に示す。表5に示すように、実施例1及び2の鋼線は、鋼線の表層部を除去しないとき(表層部除去体積比0%)のフェライト211面X線回折ピーク半価幅が、比較例1及び2の鋼線よりも小さく、かつ、表層部を除去したときのフェライト211面X線回折ピーク半価幅との差が小さい。また、伸線後に曲げ加工を施した実施例2の鋼線は、鋼線の表層部を除去しないとき(表層部除去体積比0%)のフェライト211面X線回折ピーク半価幅が、実施例1の鋼線よりもさらに小さく、かつ、表層部を除去したときのフェライト211面X線回折ピーク半価幅との差がさらに小さい。このことより、本発明の製造方法により、鋼線のフェライトの実質歪みの分布は、表層部への集中度が減少してより均一となり、曲げ加工の付加によりさらに改善されたものと推定できる。
【0051】
なお、表層部のフェライトの211面X線回折ピーク半価幅の測定は、PSPC型の検出器を備えた微小部X線回折装置を用い、下記の表6に示す条件にて行った。また、半価幅の値は、Kα1線によるピークの半価幅を計算により求めた値である。
【0052】
【表5】
Figure 0003844267
【0053】
【表6】
Figure 0003844267
【0054】
さらに、ゴム補強材として使用される場合の延性を評価するため、各々の鋼線にピッチ4.5mm、振幅0.46mmの波形付けを施して、加熱時効前後の破断捻回値(1方向の捻りを鋼線に加えて破断させたときの捻り量)を測定した。この測定は、図5に示す装置を用い、下記条件に従い回転側チャック6を、鋼線1が破断するまで1方向に回転させることにより行った。
試験長:50mm
軸線方向張力:約1.5kg
捻り速度:約30回/分
【0055】
また、形付け前の鋼線の加熱時効前後の破断捻回値も同様に測定した。これらの結果を下記の表7に示す。なお、加熱時効は、145℃に設定したオーブン中で40分間加熱することにより施した。表7に示すように、波形付け及び加熱時効を施していない比較例1および2の鋼線の破断捻回値は、実施例1及び2の鋼線の破断捻回値と同等であったが、波形付け、加熱時効あるいはこの両者を施すことにより大幅に減少し、20回/100Dを下回った。これに対し、実施例1及び2の鋼線の破断捻回値は、波形付け、加熱時効あるいはその両者を施しても減少量は小さく、20回/100Dを越える値を保持した。特に、伸線後に曲げ加工を施した実施例2の鋼線の破断捻回値は、波形付け、加熱時効あるいはこの両者を施してもほとんど減少しなかった。
【0056】
【表7】
Figure 0003844267
【0057】
さらに、各々の鋼線を用いて、下記の表8に示すような、波形付けした素線をコアとした層撚り構造のスチールコードを製造し、ゴムシート中に埋設して145℃で40分間加硫した。その後、このシート中からスチールコードを取り出してほぐし、各々の素線の破断捻回値を測定したところ、表7中の、波形付け有り、かつ加熱時効有りの場合と同様の結果が得られ、比較例1及び2の鋼線の捻回値は20回/100Dを下回ったのに対し、実施例1及び2の鋼線は、20回/100Dを越える破断捻回値を示した。
【0058】
【表8】
Figure 0003844267
【0059】
(実施例3、比較例3,4)
約0.82重量%の炭素を含有する直径が約5.5mmの高炭素鋼線材を、直径が約1.53mmとなるまで乾式伸線した。この鋼線材にパテンティング熱処理と黄銅めっきを施し、黄銅めっき鋼線材を製造した。この黄銅めっき鋼線材の金属組織はほぼ均一なパーライト組織であり、引っ張り強さは約1250N/mmであった。
【0060】
この黄銅めっき鋼線材を下記の表9に示す3種類の条件で伸線し、直径0.19mmの超高強力鋼線を製造した。用いた3種のパススケジュールC、DおよびEの詳細を表10に、各々のパススケジュールのεとダイス減面率との関係を図2に夫々示す。図2に示すように、パススケジュールCは本発明の鋼線の製造方法に適合するものである。パススケジュールDは、最終ダイス以外のダイスの減面率は本発明に適合するが、最終ダイスの減面率を最小に設定した比較例である。また、パススケジュールEは、最終ダイス以外のダイスの減面率は本発明に適合するが、最終ダイスの減面率を過大に設定した比較例である。
【0061】
なお、伸線にあたり、アプローチ角が約9°でベアリング長さが約0.5Dの超硬合金ダイスと、スリップ式の湿式連続伸線機を使用した。また、伸線加工後の曲げ加工は、図4に示す装置を用い、約2kgの張力を付加し、直径12mmのローラ20個、カミ量約3mmで行った。
【0062】
【表9】
Figure 0003844267
【0063】
【表10】
Figure 0003844267
【0064】
おのおのの条件にて製造した鋼線の、引っ張り強さTS、繰返し捻り試験値RTおよび表層部のフェライトの211面X線回折ピーク半価幅を測定した。引っ張り強さTSおよび表層部のフェライトの211面X線回折ピーク半価幅は、実施例1と同様の条件で測定した。また、繰り返し捻り試験値RTは、N=7.89、重り11の重さを約1.0kgとし、その他の条件は実施例1と同じにして測定した。その結果を下記の表11に示す。表11に示すように、最終ダイスの減面率を適正範囲とした実施例3の鋼線は、比較例3及び4の鋼線と同様の引っ張り強さを有し、かつ比較例3及び4の鋼線に比べ大幅に高い繰返し捻り試験値を有していた。また、実施例3の鋼線表層部のフェライトの211面X線回折ピーク半価幅は、比較例3及び4の鋼線に比べ小さい値を示した。各々の鋼線の引っ張り強さと繰返し捻り試験値との関係を、前述の実施例1、2および比較例1、2の結果と共に図3に示す。図3に示すように、実施例3の鋼線は本発明に規定する繰返し捻り試験値を満たすが、比較例3及び4の鋼線はこれを満たすものではない。
【0065】
また、比較例3および4の条件で伸線している最中に、曲げ加工用のローラー通過時に断線を生じたが、実施例3の条件での伸線においては、断線は生じなかった。
【0066】
【表11】
Figure 0003844267
【0067】
【発明の効果】
以上に説明してきたように、本発明の鋼線は、高い強度と優れた延性を併せ持つものであり、形付け加工や加熱時効を施しても延性の低下が少ない。このため、タイヤ用スチールコードの素線等としてゴム製品の補強材として用いるときに、優れた補強効果と耐久性を示す。
【0068】
また、本発明の鋼線の製造方法を適用することにより、上記のような優れた特性の鋼線を、断線や潤滑不良等により生産性を阻害されることなく、経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パススケジュールAおよびBのεとダイス減面率との関係、並びに本発明に適合するダイス減面率の範囲を示すグラフである。
【図2】パススケジュールC,DおよびEのεとダイス減面率との関係、並びに本発明に適合するダイス減面率の範囲を示すグラフである。
【図3】実施例および比較例の鋼線の引っ張り強さと繰返し捻り試験値との関係、並びに本発明に適合する繰返し捻り試験値の範囲を示すグラフである。
【図4】曲げ加工装置の説明図である。
【図5】繰返し捻り試験に用いた装置の説明図である。
【符号の説明】
1 鋼線
2 ローラ
3 カミ量
4 AEセンサー
5 グリース
6 回転側チャック
7 固定側チャック
8 駆動機構
9 ワイヤ
10 プーリー
11 重り
12 装置ベース

Claims (6)

  1. 0.70から0.90重量%の炭素を含有する高炭素鋼線材に熱処理と伸線加工を施して得られる直径が0.10から0.40mmの鋼線であり、引っ張り強さTS(N/mm2)が次式、
    TS≧2250−1450 log D (1)
    (式中、Dは鋼線の直径(mm)、logは常用対数を示す)で表される関係を満足し、
    かつ、軸線が直線となるように保持した鋼線に、鋼線の直径の100倍の長さ当たり3回に相当する量の捻りを加えてから元の状態に捻り戻すことを繰り返したときに、鋼線にクラックが発生するまで加えた捻り及び捻り戻しの総量である繰返し捻り試験値RT(回/100D)が、次式、
    log RT≧2−0.001{TS−(2250−1450log D)}(2)
    で表される関係を満足する鋼線を製造するにあたり、熱処理を施した高炭素鋼線材に、伸線加工歪みεを次式、
    ε=2・ln(d o /d) (4)
    (式中、d o は伸線加工前の鋼線材の直径(mm)、dはダイス通過後の鋼線の直径(mm)、lnは自然対数を示す)で表したときに、1)εが0.75未満の伸線加工で用いるダイスの減面率を(22.67ε+3)%から29%に、2)εが0.75以上2.25以下の伸線加工で用いるダイスの減面率を20%から29%に、3)εが2.25をこえる伸線加工で用いる最終ダイス以外のダイスの減面率を(−5.56ε+32.5)%から(−6.22ε+43)%に調整して湿式伸線加工を施し、4)最終ダイスの減面率を4%から(−8.3ε+40.6)%とし、5)最終ダイスにおけるεを3.0から4.3とすることを特徴とする鋼線の製造方法
  2. 引っ張り強さが次式、
    TS≧2750−1450 logD (3)
    (式中、TS、Dおよびlogは前記のものと同じものを示す)で表される関係を満足する請求項1記載の鋼線の製造方法
  3. 鋼線の繰返し捻り試験値RTが、体積の10%に当たる表層部を除去したときの同鋼線の繰返し捻り試験値RTの60%以上の値を有する請求項1または2記載の鋼線の製造方法
  4. 最小曲率半径が鋼線の直径の10倍から60倍となるように形付けしてゴム中に埋設され、加熱により加硫した後にゴム中から取り出された鋼線の、一方向の捻りを破断するまで加えたときの捻り量(破断捻回値)が、20回/100D以上である請求項1から3のいずれか一項記載の鋼線の製造方法
  5. 最終ダイスにおけるεを3.5から4.2とする請求項1から4のいずれか一項記載の鋼線の製造方法。
  6. 最終ダイスでの伸線加工を施した後に張力を加えながら曲げ加工を施す請求項1から5のいずれか一項記載の鋼線の製造方法。
JP13138797A 1997-05-21 1997-05-21 鋼線の製造方法 Expired - Lifetime JP3844267B2 (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13138797A JP3844267B2 (ja) 1997-05-21 1997-05-21 鋼線の製造方法
ES98921721T ES2310007T3 (es) 1997-05-21 1998-05-20 Metodo de fabricacion de un hilo de acero.
EP98921721A EP1013819B1 (en) 1997-05-21 1998-05-20 Method of manufacturing a steel wire
PCT/JP1998/002198 WO1998053134A1 (fr) 1997-05-21 1998-05-20 Cable acier et son procede de production
US09/424,300 US6823706B1 (en) 1997-05-21 1998-05-20 Steel wire and method of manufacturing the same
DE69839700T DE69839700D1 (de) 1997-05-21 1998-05-20 Verfahren zur herstellung eines stahldrahts

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13138797A JP3844267B2 (ja) 1997-05-21 1997-05-21 鋼線の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10325089A JPH10325089A (ja) 1998-12-08
JP3844267B2 true JP3844267B2 (ja) 2006-11-08

Family

ID=15056778

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13138797A Expired - Lifetime JP3844267B2 (ja) 1997-05-21 1997-05-21 鋼線の製造方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US6823706B1 (ja)
EP (1) EP1013819B1 (ja)
JP (1) JP3844267B2 (ja)
DE (1) DE69839700D1 (ja)
ES (1) ES2310007T3 (ja)
WO (1) WO1998053134A1 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6715331B1 (en) * 2002-12-18 2004-04-06 The Goodyear Tire & Rubber Company Drawing of steel wire
JP2008069409A (ja) * 2006-09-14 2008-03-27 Bridgestone Corp 高強度高炭素鋼線およびその製造方法
JP2008116141A (ja) * 2006-11-06 2008-05-22 Fuji Electric Holdings Co Ltd パルスチューブ冷凍機の位相制御機構
FI121815B (fi) * 2007-06-20 2011-04-29 Outotec Oyj Menetelmä rakennemateriaalin pinnoittamiseksi funktionaalisella metallilla ja menetelmällä valmistettu tuote
CN103540738A (zh) * 2008-08-20 2014-01-29 株式会社普利司通 高强度金属线材的制造方法
JP5701744B2 (ja) 2009-03-02 2015-04-15 株式会社ブリヂストン 鋼線の製造方法
CN103357694A (zh) * 2013-07-25 2013-10-23 张家港市胜达钢绳有限公司 一种胎圈钢丝的生产方法
ITMI20131926A1 (it) 2013-11-20 2015-05-21 Danieli Off Mecc Macchina di trafilatura di tubi
CN103962409B (zh) * 2014-05-20 2016-06-08 王国华 一种铜线的制造方法
CN104001744B (zh) * 2014-06-23 2015-11-04 贵州钢绳股份有限公司 一种录井用钢丝的生产方法
CN104624680A (zh) * 2014-12-28 2015-05-20 鞍钢钢绳有限责任公司 一种制绳用重要用途钢丝生产方法

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US1824568A (en) 1929-10-25 1931-09-22 Nat Standard Co Method of treating wire
FR2603916B1 (fr) * 1986-09-15 1990-11-30 Michelin & Cie Assemblages de fils de renfort pour matieres plastiques et/ou caoutchoucs comportant une ame; articles renforces par ces assemblages
US4960473A (en) 1989-10-02 1990-10-02 The Goodyear Tire & Rubber Company Process for manufacturing steel filament
US5189897A (en) 1991-10-15 1993-03-02 The Goodyear Tire & Rubber Company Method and apparatus for wire drawing
JP3037844B2 (ja) * 1992-12-10 2000-05-08 株式会社ブリヂストン ゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法
JP3273686B2 (ja) * 1993-12-29 2002-04-08 株式会社ブリヂストン ゴム補強用スチールコードの製造方法
JP3388012B2 (ja) * 1994-03-29 2003-03-17 新日本製鐵株式会社 デラミネーション発生を抑えたスチールコード用鋼線の製造方法
JPH07305285A (ja) * 1994-05-09 1995-11-21 Bridgestone Metarufua Kk ゴム物品の補強に供するスチールコード用素線の製造方法
JP3291638B2 (ja) 1994-07-13 2002-06-10 新日本製鐵株式会社 捻回特性の優れた高強度極細鋼線の製造方法
JP2920474B2 (ja) 1995-02-08 1999-07-19 東京製綱株式会社 ゴム補強用超高強度スチールワイヤおよびスチールコード
JP2906025B2 (ja) * 1995-03-17 1999-06-14 東京製綱株式会社 ゴム製品補強用高強度スチールワイヤおよびスチールコード並びに高強度スチールの製造方法
JPH08284082A (ja) * 1995-04-07 1996-10-29 Tokyo Seiko Co Ltd ゴム補強用スチールコード及びラジアルタイヤ
JP2772627B2 (ja) * 1995-05-16 1998-07-02 東京製綱株式会社 ゴム補強用超高強度スチールワイヤおよびスチールコード
WO1997039176A1 (fr) * 1996-04-18 1997-10-23 Bridgestone Corporation Cable d'acier destine au renfort d'article en caoutchouc et pneumatique

Also Published As

Publication number Publication date
WO1998053134A1 (fr) 1998-11-26
EP1013819A4 (en) 2004-04-28
EP1013819A1 (en) 2000-06-28
ES2310007T3 (es) 2008-12-16
US6823706B1 (en) 2004-11-30
EP1013819B1 (en) 2008-07-09
DE69839700D1 (de) 2008-08-21
JPH10325089A (ja) 1998-12-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3844267B2 (ja) 鋼線の製造方法
JP2772627B2 (ja) ゴム補強用超高強度スチールワイヤおよびスチールコード
JPH05200428A (ja) ワイヤの線引き方法と装置
JP5551462B2 (ja) 高炭素鋼線の製造方法およびこれにより得られる高炭素鋼線
JP3938240B2 (ja) 鋼線及びその製造方法
EP3931392A1 (en) A steel cord for rubber reinforcement
JP2920474B2 (ja) ゴム補強用超高強度スチールワイヤおよびスチールコード
JP2012045580A (ja) ゴム物品補強用鋼線の製造方法及び製造装置並びにゴム物品補強用スチールコード及び空気入りタイヤ
JP2021503565A (ja) ゴム補強用スチールコード
JP2906025B2 (ja) ゴム製品補強用高強度スチールワイヤおよびスチールコード並びに高強度スチールの製造方法
JP4152681B2 (ja) 鋼線の製造方法
JP7454499B2 (ja) ゴム物品補強用スチールコード
JPH08226085A (ja) 超高強度スチールコード及びこれを用いたラジアルタイヤ
JP3299857B2 (ja) 疲労特性の優れた高強度極細鋼線およびその製造方法
JP3037844B2 (ja) ゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法
JP3579562B2 (ja) 疲労特性の良好な極細鋼線
JP3101757B2 (ja) ゴム補強用スチールコード及びラジアルタイヤ
JPH01201592A (ja) ゴム製品補強用高強力鋼線およびスチールコード
JP2992809B2 (ja) ゴム補強用スチールコードおよびラジアルタイヤ
JP2989860B2 (ja) ゴム補強体の製造方法
WO2020093507A1 (zh) 一种可提高橡胶软管抗疲劳性的钢丝及其生产工艺
JP2906035B2 (ja) ゴム補強用高強度スチールコード及びラジアルタイヤ
JP2713775B2 (ja) ゴム補強用スチールコードおよびその製造方法
KR101215778B1 (ko) 초고강도 스틸코드용 강선의 제조방법
JPH08260097A (ja) ゴム補強用極超高強度スチールワイヤおよびスチールコード

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060526

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060725

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060811

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060811

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090825

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100825

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110825

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110825

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120825

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120825

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130825

Year of fee payment: 7

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term