JP3844089B2 - 混紡糸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライタッチ風合い、絹様の光沢、高吸湿性を同時に満足する混紡糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、1.2デニール以下のポリエステル繊維のステープルと1.2デニール以下の再生繊維ステープルとを混紡した混紡糸が知られている(特公平2−38698号公報)。
しかして該再生繊維のステープルは断面が円断面であり、したがって混紡糸はソフトに風合いを呈するものの、ドライタッチな風合に欠けていた。
ところで、最近ドライタッチでしかもさわやかな風合いがあり、ソフトでしかも吸湿性に優れた混紡糸が要求されるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の混紡糸の物性をさらに改良し、ドライタッチでソフトで絹様の光沢を有し、高吸湿性の混紡糸を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために次の手段をとるものである。すなわち、本発明は、繊度が0.7〜3デニールであり、異形度0.1〜0.95の異形断面である平均重合度400以上の再生繊維のステープルと1デニール以下のポリエステルステープルとが均一に混紡されてなることを特徴とする混紡糸である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において、平均重合度400以上の再生繊維がポリノジック繊維であること、異形断面が異形度0.1〜0.95の異形断面であること、三角断面であることは、好ましい発明の実施の形態である。
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、ドライタッチな風合いを出すために平均重合度400以上の再生繊維のうちでも異形断面のものを選ばなければならいない。
この異形断面は、張り、腰を与え、ヌメリ感を解消し、ドライタッチの風合いを与えるためである。
【0007】
異形断面の例としては、図1〜4に示すものが示され、図1はまゆ形断面を、図2は三角断面を、図3は変形四角断面を、図4は四角断面を示す。
【0008】
異形断面の異形度は、異形断面の程度を示すもので、例えば図5に示されるように、外接円直径をT2 、内接円直径をT1としてT1 /T2 で示される。
【0009】
異形度が0.1未満になると、張り、腰が不足しがちになりやすく、且つヌメリ感のある風合いになりやすく、しかもドライタッチ風合いが強くなりすぎ好ましくない。他方、0.95をこえるとドライタッチ風合いが損なわれ好ましくない。それ故、異形度は0.1〜0.95の範囲とするのが好ましい。さらに好ましくは、0.2〜0.95、特に好ましくは0.3〜0.95、最も好ましくは0.3〜0.75である。
【0010】
前記再生繊維は、平均重合度400以上のものでなければならない。これは、洗濯による収縮を少なくして寸法安定性を高めるとともに繊維の強力を高めるためである。
【0011】
また、前記再生繊維は、繊度として0.7〜3デニールが好ましく、1〜3デニールがさらに好ましく、1.2〜2.5デニールが特に好ましい。
他方、平均繊維長としては28〜72mm、さらには32〜51mmが好ましい。
【0012】
0.7デニール未満になると張り、腰が不足しがちで好ましくない。他方、3デニールをこえると風合いが粗硬となって好ましくない。
平均繊維長が28mm未満になると糸強力が低下して好ましくなく、他方、72mmをこえると毛羽長が長くなりすぎて好ましくない。なお、等長カットでも不等長カットでも良い。
【0013】
なお、前記再生繊維としては、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジック繊維などが挙げられるが、ポリノジック繊維が吸湿性の点から好ましい。
【0014】
前記再生繊維のステープルと混紡されるポリエステルステープルは、寸法安定性を出すとともに前記再生繊維と特定割合で混紡されて絹様の光沢を出すもので、特に均一に混紡することが絹様の光沢を出す上で必要となる。
【0015】
ポリエステルステープルは、1デニール以下でなければならない。異形断面の再生繊維と均一に混紡されてポリエステルステープルのしなやかさを出すとともに絹様の光沢を出すためである。
前記ポリエステルステープルは28〜72mmの平均繊維長のものが好ましい。28mm未満であると強力が低下ししなやかさが失われ、他方72mmをこえると絹様の光沢が失われ好ましくない。
【0016】
ここで、ポリエステル繊維とは、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成単位とするポリエステル、好ましくはエチレンテレフタレート単位を85モル%以上含むコポリエステル若しくはホモポリエステル又はこれらの混合物からなる繊維形成性ポリエステルを紡糸することにより得られる繊維をいう。
【0017】
さらに、前記異形断面の再生繊維ステープルとポリエステル繊維のステープルとは均一に混紡されてなるが、加えられる実撚は撚係数(インチ方式)で2.5〜4.5の範囲にあるのが好ましい。
2.5未満であるとしなやかさが得られるものの集束性が低下するために絹様の光沢が得られにくくなり、他方、4.5をこえると粗硬感が出てきて、ドライタッチの風合いが低下して好ましくない。
【0018】
混紡糸の太さは、英式綿番手で40〜200'Sの範囲にあるのが好ましい。40'S未満になると絹様の光沢が得られにくくなり、他方200'Sをこえるとドライタッチの風合いが損なわれやすくなり好ましくない。
【0019】
次に、本発明の混紡糸の製造法について簡単に述べる。
例えば、図6に示すように紡糸ノズル1、2、3を近接して設け、この紡糸ノズルから平均重合度400以上の三角断面の再生繊維を紡出する。紡糸ノズルを2個、3個、又は4個と近接して設けることにより、まゆ形、三角断面、四角断面の再生繊維を紡出する。
ついで、このようにして製造した前記再生繊維のフイラメントの束をスタフアボックスに供給してクリンプを付与し、所定長にカットしてステープルを製造する。
【0020】
前記再生繊維のステープルとポリエステルステープル(1デニール以下)との原綿を混打綿工程、カード、練条、粗紡機に仕掛けて粗糸を製造し、この粗糸を精紡機に仕掛けて所定のドラフトをかけて紡出し、所定の実撚をかけて混紡糸にする。なお、混紡は練条工程で行なっても良い。
【0021】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明する。なお、実施例に用いた測定法を下記に示す。(イ)平均重合度
JIS L1015−1992の7.29の平均重合度にしたがい、王研式粘度計を用い、窒素気流で大気を断ちながら行なう。
【0022】
(ロ)異形度
良く引き揃えた糸状サンプルのメタルセクションを作成し、描画装置付きの顕微鏡で倍率600倍での描画を行なう。なお、描画はN=100とする。100ケ所の描画について、テンプレートを使用して各々の内接円直径T 1 、外接円直径T2 、及びT1 /T2 を求め、平均値を異形度とする。
【0023】
(ハ)ドライタッチ風合い
10人の官能検査によりドライタッチの程度により判断した。◎印は9人以上、○印は6〜8人、△印は4〜5人、×印は3人以下かドライタッチ風合い有り判断した。
【0024】
(ニ)ソフト風合い
10人の官能検査によりソフト風合いの程度により判断した。◎印は9人以上、○印は6〜8人、△印は4〜5人、×印は3人以下がソフト風合い有りと判断した。
【0025】
(ホ)張り、腰(%)
JIS L1096のA法(45°カンチレバー法)により剛軟性を測定した。なお、試験片2cm×15cmをたて、よこ夫々5枚採用し、各々5枚について表面を上にしてすべらせ、たて、よこの平均値であらわした。なお、試験片は手で滑らせた。
【0026】
(ヘ)ドレープ係数(%)
JIS L1096のG法によりドレープ係数を測定した。具体的には直径25.4cmの円形試験片5枚を採取し、各試験片の中心に直径の孔をあけ、次に試験片の測定面を上にしてドレープテスターの試験台(直径12.7cm)の上におき、試料台を3回上下に振動させた後1分間放置してそのときのドレープ状面積を測定して、ドレープ係数=(Ad −S1 )/(S2 −S1 )の式から求めた。なお、Ad は試験片の垂直投影面積(ドレープ形状面積)(mm2 )、S1 は試料台の面積(mm2 )、S2 は試料の面積(mm2 )をあらわす。
【0027】
(ト)防しわ性(%)
JIS L1059 B法(モンサント法)
たて方向及びよこ方向に大きさ15mm×40mmの試験片を夫々10枚採取し、これをモンサント形試験器の金属板ホルダーにはさみ、上側の短いプレートから出ている部分を折り返し、各方面ともに5枚は表と表、残り5枚は裏と裏が接するようにプレスホルダーではさみ、500gの荷重を5分間加えた後、除重する。上記ホルダーを試験器ホルダーに差し込み、試験片の懸垂している部分を絶えず、試験器の中心線に一致させるように回転板をまわし5分間の試験片の開角度xを測定する。たてについて表、裏各5枚の平均値と180に対する割合(%)と、よこについて表、裏各5枚の平均値と180に対する割合(%)との平均で表示した。
【0028】
(チ)寸法安定性(洗濯収縮率(%))
JIS L1042 F−1法により、洗濯機にたて45cm(L1 )×よこ45cm(L2 )のマークをつけた50cm×50cmの2枚の試験片が覆われるのに十分な量の約40℃の水を入れ、試験片2枚と他の布とを合わせて1.36kgになるようにしてその中に投入し、同時にJIS K3303(粉末洗濯石けん)(1種)のものを約0.1%溶液になるように加え、15分間運転する。続いて新しい約40℃の水に替えて5分間運転し、再び新しい約40℃の水に替えて10分間運転する。排水後試験片をとり出し、吊り干し乾燥する。
ついで、乾燥後の試験片たてに相当するマークL1′、よこに相当するマークL2′を測定し、たてについては{(L1−L1′)/L1}×100の式により、よこについては{( L2−L2′)/L2}×100の式により、求めた値を夫々2枚の平均値で求めた。
【0029】
(リ)吸湿性
10人の官能検査により、着用感で判断した。◎は9人以上、○は6〜8人、△印は4〜5人、×印は3人以下が吸湿性ありと判断した。
【0030】
実施例1
図6に示す紡糸口金(子孔1、2、3)を用いて図2に示す3角断面で平均重合度500の繊度が異なるポリノジック繊維を製造した。
このときの製造条件は、0.7デニール、1.2デニール、2.0デニール、3.0デニール、3.2デニールに対して夫々下記のとおりである。
子孔面積総和(mm2)は、夫々0.0020mm2、0.0035mm2、0.0058mm2、0.0087mm2、0.0094mm2で、吐出量( g/min・孔)は、夫々294g/min・孔、504g/min・孔、840g/min・孔、1260g/min・孔、1345g/min・孔で、剪断速度(sec-1)は、夫々4.0×104sec-1、3.1×104sec-1、2.4×104sec-1、1.9×104sec-1、1.8×104sec-1であった。
なお、紡糸速度(m/min)は23m/min、子孔群の孔長(mm)は1.8mm、吐出線速度(m/min)は15.3m/min、ノズルドラフトは1.0倍、L12、L23、L31は0.01mmにし、子孔群の数は27000とした。
【0031】
ついで、このポリノジック繊維を38mmにカットし、他方、0.7デニール、38mmのポリエステルステープルとを表1に示す割合で混打綿機に投入し、ついで梳綿機、練条機、粗紡機、精紡機に通して混紡糸を紡出した。
【0032】
さらに、該混紡糸を経糸および緯糸に使用して経糸密度80本/in.,緯糸密度70本/inの平織モスリンを製織した。
該布を酵素処理を含む染色加工を施して仕上げを行なった。
【0033】
【表1】
【0034】
この表1の結果から次のことが確認された。
No1、2は風合いがソフトになりすぎ、且つドライタッチが得られない。また、No5は、ドライタッチがあるものの、風合いが粗硬でかつペーパーライクな風合いとなって好ましくない。No3、4がドライタッチでかつソフトな風合いとなり好ましい。特に好ましいのはNo3であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は細デニールポリエステルステープルと異形ポリノジックステープルとの混紡糸であるため、この混紡糸を用いることによりドライタッチで且つシルキーな光沢とソフト風合の婦人物に好適な織物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る再生繊維のまゆ形断面である。
【図2】本発明に係る再生繊維の三角断面である。
【図3】 本発明に係る再生繊維の変形四角断面である。
【図4】本発明に係る再生繊維の四角断面である。
【図5】異形度を説明するための説明図である。
【図6】紡糸ノズルの断面図である。
【符号の説明】
1、2、3 子孔
Claims (3)
- 繊度が0.7〜3デニールであり、異形度0.1〜0.95の異形断面である平均重合度400以上の再生繊維のステープルと1デニール以下のポリエステルステープルとが均一に混紡されてなることを特徴とする混紡糸。
- 平均重合度400以上の再生繊維がポリノジック繊維である請求項1に記載の混紡糸。
- 異形断面が三角断面である請求項1又は2に記載の混紡糸。
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